(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】無段変速装置
(51)【国際特許分類】
F16H 15/22 20060101AFI20240527BHJP
F16H 9/12 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F16H15/22 Z
F16H9/12 B
(21)【出願番号】P 2021146631
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020152940
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021085942
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598092498
【氏名又は名称】小山田 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】小山田 昌弘
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-309241(JP,A)
【文献】特公昭45-010850(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 15/22
F16H 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する円錐面の母線方向に沿って回転部材が相対的に移動することで変速比を変更する伝達部材を有する無段変速装置であって、
前記伝達部材は、前記伝達部材の軸線を中心とした円周方向に回転軸線が沿って配置され、円周面に並べられたローラーを備え
、
かつ、前記伝達部材は、対向させた状態で一対設けられ、変速比に応じて間隔が調整され、
前記一対の伝達部材の間に掛け回された前記回転部材としての無端の伝達ベルトを備えた無段変速装置。
【請求項2】
前記一対の伝達部材は、入力側となる第1伝達部と、出力側となる第2伝達部とを備え、
前記伝達ベルトは、前記第1伝達部と、前記第2伝達部とに掛け回された請求項1記載の無段変速装置。
【請求項3】
前記ローラーは、円錐形状に形成された部材本体に配置され、
前記円周面に並べられたローラーは、前記部材本体の母線方向に沿って並べられ、
かつ、前記ローラーは、前記部材本体の母線方向に沿って放射状に延びるスロットに並べられ、
かつ、前記ローラーは、円柱状のローラー本体と、前記ローラー本体の両方の端面から互いに離れる方向に向かって突出する一対の凸部とを備え、
前記スロットの開口縁部は、前記凸部を覆うように、前記スロットの開口中心に向かって突出して形成され、
前記スロットの一方の端部は、開放端に形成され、閉鎖部材により封鎖される請求項1
または2記載の無段変速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段階で連続的に変速比が切り替えられる無段変速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無段変速装置は、無段階で連続的に変速比を切り替えられるため、変速ショックが無いので、自動二輪車や自動車のエンジンだけでなく、各種の工作機械などにも採用されている。このような無段変速装置について、例えば、特許文献1,2が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の歯数可変円錐歯車式無段変速装置は、円錐歯車を回転軸に沿って3ケ、互いに径の大きさが反対になるように並べ、その間に径の変化する歯先に対し互いに常に噛み合い移動可能な両端逆やまば型伝達歯車を変速兼伝達用の歯車として配置したものである。
【0004】
特許文献2に記載の無段変速装置は、入力軸および出力軸と、入力軸と出力軸の各軸に設けた入力コーンおよび出力コーンと、双方のコーンの円錐面に当接して配置し、支軸の軸心廻りに回転可能に設ける動力伝達部材とを有し、動力伝達部材の支軸が入力軸および出力軸の軸心を含む平面において所定の角度に傾動可能であるとともに、動力伝達部材に当接する双方のコーンの円錐面が凹曲面をなすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-7317号公報
【文献】特開2001-355699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の歯数可変円錐歯車式無段変速装置は、円錐歯車に変速兼伝達用の歯車が噛み合っているため、しっかりと回転させることができる。
しかし、変速比(回転比)を変えるときには、円錐歯車と変速兼伝達用の歯車とが噛み合った状態で、変速兼伝達用の歯車が円錐の径が変わる方向(増減速方向)に移動する。
従って、特許文献1に記載の歯数可変円錐歯車式無段変速装置では、円錐歯車と変速兼伝達用の歯車とが大きく摩擦しながら移動することなり、スムーズな変速比の変更が難しい。
【0007】
また、特許文献2に記載の無段変速装置は、歯車同士が噛み合って回転していないので、動力伝達部材が入力コーンの円錐面に高い圧力で接することで、入力コーンからの回転が動力伝達部材に伝達される。そのため、動力伝達部材が増減速方向に移動させるためには、動力伝達部材が入力コーンの円錐面への高い圧力に抗って移動させなければならない。従って、特許文献2に記載の無段変速装置においても、スムーズな変速比の変更が難しい。
【0008】
そこで本発明は、効率よく回転を伝達することができ、スムーズな変速比の変更が可能な無段変速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無段変速装置は、回転する円錐面の母線方向に沿って回転部材が相対的に移動することで変速比を変更する伝達部材を有するものであり、前記伝達部材は、前記伝達部材の軸線を中心とした円周方向に沿って回転軸線が配置され、円周面に並べられたローラーを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の無段変速装置によれば、伝達部材の軸線を中心とした円周方向に回転軸線が沿って並べられたローラーが、円周面に並べられている。従って、伝達部材が相対的に回転部材の母線方向に移動するときには、ローラーが回転するため、伝達部材が高い圧力で回転部材に接した状態で伝達部材が回転していても、伝達部材をスムーズに回転部材の母線方向に移動させることができる。
【0012】
前記伝達部材は、対向させた状態で一対設けられ、変速比に応じて間隔が調整され、前記一対の伝達部材の間に掛け回された前記回転部材としての無端の伝達ベルトを備えたものとすることができる。
変速比に応じて間隔が調整される一対の伝達部材を対向させた状態で、その間に伝達ベルトが掛け回されている。伝達部材の間隔が拡がれば、伝達ベルトが軸心に近い位置に移動し、間隔が狭くなれば、大径側へ移動する。このとき伝達ベルトはローラーを回転させながら移動するため、伝達ベルトは回転しながらスムーズに伝達部材の母材方向を移動することができる。
【0013】
前記一対の伝達部材は、入力側となる第1伝達部と、出力側となる第2伝達部とを備え、前記伝達ベルトは、前記第1伝達部と、前記第2伝達部とに掛け回されたもののとすることができる。
第1伝達部と、第2伝達部と、その間を繋ぐ伝達ベルトとにより、第1伝達部が変速比を変えながら第1伝達部からの回転を、伝達ベルトを介して第2伝達部へ伝達することができ、また、第1伝達部からの回転を、伝達ベルトを介して、第2伝達部が変速比を変えながら第2伝達部へ伝達することができる。
【0014】
前記ローラーは、円錐形状に形成された部材本体に配置され、前記円周面に並べられたローラーは、前記部材本体の母線方向に沿って並べられたものとすることができる。
円周面に並べられたローラーは、円錐形状に形成された部材本体の母線方向に沿って並べられているため、ローラーを円錐形状の入力コーンの円錐面に幅広く接触させることができる。
【0017】
前記ローラーは、母線方向に沿って放射状に延びるスロットに並べられたものとすることができる。ローラーを、部材本体の母線方向に沿って円周面に並べる際に、部材本体の母線方向に沿って放射状に延びるスロットに並べる。そうすることで、部材本体にスロットを形成することでローラーを円周面に並べることができる。
【0018】
前記ローラーは、円柱状のローラー本体と、前記ローラー本体の両方の端面から互いに離れる方向に向かって突出する一対の凸部とを備え、前記スロットの開口縁部は、前記凸部を覆うように、前記スロットの開口中心に向かって突出して形成され、前記スロットの一方の端部は、開放端に形成され、閉鎖部材により封鎖されるものとすることができる。
スロットの一方の端部は、開放端に形成されているため、一方の端部からローラーを挿入するだけで、容易にローラーを並べることができる。
円柱状のローラー本体の両方の端面から凸部が互いに離れる方向に向かって突出しており、スロットの開口縁部は、スロットの開口中心に向かって突出して形成されて凸部を覆っている。また、スロットの一方の端部は、開放端に形成されており、閉鎖部材により封鎖される。従って、一方の端部から挿入されたローラーは、凸部がスロットの開口縁部に引っ掛かると共に、開放端が閉鎖部材により封鎖されているので、スロットからローラーが外れることを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の無段変速装置によれば、伝達部材が高い圧力で入力コーンに接した状態で伝達部材が回転していても、伝達部材をスムーズに入力コーンの母線方向に移動させることができるので、効率よく回転を伝達することができ、スムーズな変速比の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
無段変速装置の一部を省略した側面図である。
【
図2】
図1に示す無段変速装置の一部を省略した正面図である。
【
図3】
図1に示す無段変速装置の伝達部材の側面図である。
【
図5】
図1に示すガイド部における台部と台部を支持する内筒部の斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形
態に係る無段変速装置を示す図であり、(A)は無段変速装置を上方から見た図、(B)は無段変速装置の第1伝達部を側方から見た図、(C)は無段変速装置の第2伝達部を側方から見た図である。
【
図7】
図6に示す無段変速装置の片側の伝達部材を省略した正面図である。
【
図8】本発明の
他の実施の形
態に係る無段変速装置を示す図であり、(A)は無段変速装置を上方から見た図、(B)は(A)のA-A線断面図である。
【
図9】
図8に示す無段変速装置の伝達部材を説明するための図であり、(A)は伝達部材を円錐面側から見た図、(B)は(A)に示す伝達部材のB-B線を断面とした側面図、(C)は(A)に示す伝達部材のC-C線を断面とした一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
無段変速装置を図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示す無段変速装置10は、連続的に変速比を変えることができるものである。無段変速装置10は、設置面に装置支持部11により支持されている。
無段変速装置10は、入力部20と、出力部30と、伝達部材40と、変速部50とを備えている。
【0022】
入力部20は、装置支持部11に回転可能に支持された入力軸21と、入力軸21により駆動される回転部材である入力コーン22とを備えている。
入力軸21は、入力コーン22の軸線A1の位置に接続されている。入力コーン22は、切頭円錐形状(円錐台形状)に形成されている。
【0023】
図1に示す出力部30は、変速部50からの出力により回転するユニバーサルシャフト31と、ユニバーサルシャフト31の軸回転により駆動される出力歯車32と、出力歯車32の軸線A2に接続された出力軸33とを備えている。
ユニバーサルシャフト31は、伝達部材40にボールジョイント31aにより連結され、入力コーン22の軸線A1からずれた位置に配置される伝達部材40から、入力コーン22の軸線方向F11に向かって延びてユニバーサルジョイント31bを介して出力歯車32の軸線A2と平行に延びている。ユニバーサルシャフト31の先端部には、出力歯車32に噛み合う歯車部31cが形成されている。
出力歯車32は、歯車部31cが周囲に配置されている。
【0024】
伝達部材40は、入力コーン22の円錐面に接して回転することで、入力コーン22の回転を出力部30に伝達するものである。伝達部材40は、入力コーン22の母線方向F13に沿って移動することで変速比を変える。伝達部材40は、入力コーン22の軸線A1を中心とした円周方向F12に沿って等間隔に配置されている。本実施の形態1では、伝達部材40が入力コーン22の周囲に60度間隔で6個配置されている。
【0025】
ここで、伝達部材40について、
図3および
図4に基づいて詳細に説明する。
図3および
図4に示す伝達部材40は、本実施の形態1では、切頭円錐形状(円錐台形状)に形成された部材本体41と、部材本体41の円周面に母線方向F22に沿って並べられたローラー42とを備えている。
部材本体41は、ローラー42を収容する細長の凹部43が、円錐面の円周方向F21に沿って並べて形成されていると共に、母線方向F22にも沿って形成されている。部材本体41には、軸線A3の位置に、回転軸44が形成されている。
ローラー42は、凹部43の長手方向の対向壁同士に跨るように配置された支軸45であり、部材本体41(伝達部材40)の軸線A3を中心とした円周方向F21に沿って配置された支軸45を中心に回転する。
【0026】
従って、ローラー42は、部材本体41の円錐面の円周方向F21に回転軸線(支軸45)が沿って並べられていると共に、母線方向F22にも沿って並べられている。なお、回転軸線とは、回転中心となる仮想線を示す。
母線方向F22に並ぶローラー42は、隣接するローラー42との間の位置が、長さ方向(円周方向F21)でずれた位置に配置されている。本実施の形態1では、ローラー42の長さの半分の位置が母線方向F22において交互にずれている。
【0027】
そして、ローラー42における入力コーン22との接触面42aは、伝達部材40の円周方向F21に並ぶローラー42の軸線方向の曲率が、部材本体41の曲率に合わせて形成されている。従って、それぞれのローラー42の接触面42aを延長して繋いだ円周方向F21の仮想線S2は、部材本体41の直径より大きい部材本体と同心円となる。
また、部材本体41は、ローラー42の支軸45の両端部が支持される一対の支持部46が形成されている。
この一対の支持部46の天面46aは、ローラー42の接触面42aより低く形成されている。
【0028】
次に、変速部50について、
図1および
図2に基づいて説明する。
変速部50は、入力コーン22の母線方向F13に沿って案内するガイド部51と、伝達部材40を入力コーン22の軸線方向F11に沿って移動させる変速駆動部52とを備えている。
【0029】
ガイド部51は、伝達部材40を、入力コーン22の母線方向F13に案内するものである。ガイド部51は、伝達部材40を入力コーン22の円周面S1に高圧で押し付けながら伝達部材40を支持する車輪支持部511と、車輪支持部511を案内するガイドレール512と、ガイドレール512を傾斜させる台部513と、円筒形状に形成され、入力コーン22を内部に位置させると共に、台部513を支持する内筒部514とを備えている。
【0030】
車輪支持部511は、伝達部材40の回転軸44に両端が回転可能に連結されている。
ガイドレール512は、車輪支持部511の基端がスライド自在に連結されている。
台部513は、ガイドレール512が斜辺に配置されることで、入力コーン22の母線方向F13に沿って傾斜させる台形状に形成されている。
内筒部514は、入力コーン22の軸線A1を中心に位置させ、台部513を円周方向に沿って等間隔に固定されている。内筒部514には、後述する腕部がスライドするためのスリット514a(
図5参照)が、伝達部材40に対応させて円周面に沿って等間隔に形成されている。
【0031】
変速駆動部52は、円筒形状に形成され、内筒部514を内部に収納する外筒部521と、外筒部521から内筒部514のスリット514aを介して内側方向に延びて車輪支持部511に連結された腕部522と、腕部522をスライドさせるスライド機構部523とを備えている。
外筒部521は、内筒部514に対して軸線方向F11に沿って移動する。
腕部522は、伝達部材40と入力コーン22との入力コーン22の母線方向F13における接触位置に応じて伸縮する。本実施の形態1では、第1腕部522aから第3腕部522cによる3つのパーツを繋ぎ合わされており、一方のパーツが他方のパーツに入り込んだり、出てきたりすることで、長さが調整される。
スライド機構部523は、外筒部521に設けられたラック523aと、ラック523aに噛み合う平歯車523bと、平歯車523bと噛み合うラック523cとを備えている。ラック523cは軸線A1に沿って移動するように形成され、平歯車523bは固定位置で回転するように形成されている。
【0032】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る無段変速装置10の動作および使用状態を図面に基づいて説明する。なお、伝達部材40は、入力コーン22の小径側に位置していたものとする。
図1および
図2に示すように、まず、入力部20の入力軸21が軸回転することで、入力コーン22が回転する。入力コーン22が回転することで、円周面S1に接する伝達部材40は、入力コーン22の回転に伴って回転する。
【0033】
図4に示す伝達部材40の接触面には、ローラー42が配置されているが、ローラー42が部材本体41の円錐面の円周方向F21に沿って並べられているため、
図1に示す入力コーン22の回転方向(円周方向F12)がローラー42の回転軸線(支軸45)と一致する。従って、伝達部材40が入力コーン22に接していても、ローラー42が回転しないため、入力コーン22の回転に応じて伝達部材40を回転させることができる。
伝達部材40が回転することで、出力部30のユニバーサルシャフト31が軸回転する。ユニバーサルシャフト31が軸回転することで、先端の歯車部31cが回転する。
歯車部31cが回転することで、出力歯車32が回転して、出力軸33により回転が出力される。
【0034】
このように、伝達部材40が高い圧力で入力コーン22の円錐面に接して回転することで、入力コーン22の回転を忠実に伝達部材40が出力部30に伝達することができる。
【0035】
次に、変速比を変更する場合を説明する。本実施の形態1では、変速比を低下させる場合を説明する。
変速比を低下させる場合には、伝達部材40を入力コーン22の小径側から大径側に移動させる。
【0036】
まず、スライド機構部523のラック523cを入力コーン22の大径側から小径側にスライドさせる。ラック523cのスライドに伴って平歯車523bが回転するため、ラック523aが押され、ラック523cと反対方向にスライドする。
従って、外筒部521が小径側から大径側へ移動することで、外筒部521に連結された腕部522が、内筒部514のスリット514a(
図5参照)の中で移動しながら車輪支持部511を介して伝達部材40を移動させる。
【0037】
車輪支持部511が台部513の斜辺に配置されたガイドレール512に案内されて移動するので、伝達部材40の移動は、入力コーン22の母線方向F13に沿って移動する。そのため、台形状の台部513の高さが高い位置から低い位置へ伝達部材40が移動することで、伝達部材40と外筒部521の内周面との距離が短くなるので、腕部522が縮小する。
【0038】
このとき、
図3に示すように、伝達部材40の接触面には、ローラー42が配置されており、ローラー42は、部材本体41の円錐面の円周方向F21に沿って並べられていると共に、軸線A3を中心とした円周方向F21に沿って配置された支軸45(
図4参照)を中心に回転している。
【0039】
そのため、
図1に示す伝達部材40が入力コーン22の母線方向F13に移動するときには、
図3に示すローラー42が回転するので、伝達部材40が高い圧力で入力コーン22に接した状態で伝達部材40が回転していても、伝達部材40をスムーズに入力コーン22の母線方向F13に移動させることができる。
【0040】
従って、この無段変速装置10は、効率よく回転を伝達することができ、スムーズな変速比の変更が可能である。
【0041】
また、円周面に並べられたローラー42は、円錐形状に形成された部材本体41の母線方向F22に沿って並べられているため、ローラー42を円錐形状の入力コーン22の円錐面に幅広く接触させることができる。従って、更に効率よく回転を伝達することができる。
【0042】
図3に示すように伝達部材40では、ローラー42が円周方向F21にリング状に並んでいるが、ローラー42同士の間には、ローラー42を取り付けるための間隔が必要であり、そのため、この間隔が、ローラー42が無いギャップとなる。しかし、母線方向F22に並ぶローラー42が、隣接するローラー42と長さ方向(円周方向F21)においてずれた位置に配置されている。
従って、伝達部材40が回転しながら、入力コーン22の母線方向F13に移動するときに、入力コーン22の円周面がいずれかのローラー42に接するため、更に伝達部材40をスムーズに移動させることができる。
【0043】
また、
図4に示すように、ローラー42における入力コーン22との接触面42aは、軸線方向の曲率が、部材本体41の曲率に合わせて形成されているため、ローラー42の接触面42aが入力コーン22(
図1参照)の円錐面を転がるときに、それぞれのローラー42ががたつき無く転がるので、伝達部材40を入力コーン22にスムーズに回転させることができる。
【0044】
本実施の形
態では、伝達部材40が円錐台形状に形成されているが、車輪状に形成されていてもよい。
また、本実施の形
態では、
図1に示すように、入力コーン22の母線方向F13に沿って案内するガイド部51と、伝達部材40を入力コーン22の軸線方向F11に沿って移動させる変速駆動部52とにより、伝達部材40を入力コーン22の母線方向F13に沿って移動させているが、伝達部材40を母線方向F13に沿って移動させることができれば、移動させる手段は、他の手段でもよい。
【0045】
本発明の実施の形
態に係る無段変速装置を図面に基づいて説明する。
なお、
図6および
図7においては、
図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図6(A)から同図(C)に示す無段変速装置10xは、連続的に変速比を変えることができる、ベルト式のCVT(Continuously Variable Transmission)である。
【0046】
無段変速装置10xは、入力部20xおよび出力部30xと、伝達ベルト60と、変速部(図示せず)とを備えている。
入力部20xは、プライマリプーリーである第1伝達部70により形成されている。第1伝達部70は、入力軸21と一体的なシャフト23と可動シーブ24とが一対の伝達部材40により形成されている。
出力部30xは、セカンダリプーリーである第2伝達部80により形成されている。第2伝達部80は、出力軸33と一体的なシャフト23と可動シーブ24とが一対の伝達部材40により形成されている。
【0047】
図6(A)から同図(C)に示す第1伝達部70と第2伝達部80とを構成する伝達部材40は、同じ直径であるが、用途に応じて異なる直径のものとしてもよい。
【0048】
伝達部材40は、実施の形態1と同様に、円錐面に配置され、母線方向F3に並ぶローラー42同士の位置が、円周方向F21でずれた位置に配置されている。また、ローラー42における伝達ベルト60との接触面は、ローラー42の軸線方向の曲率が、部材本体41の曲率に合わせて形成されている。
【0049】
ローラー42は、円周が長い方から短い方に向かって長さが短くなるように形成されている。そうすることで、ローラー42を規則的にずらすことができ、常にどこかのローラー42が伝達ベルト60に接触しているので、確実に、伝達ベルト60を周回させることができ、伝達ベルト60を母線方向F3に移動させることができる。
【0050】
図示しない変速部は、第1伝達部70と第2伝達部80とにおける可動シーブ24を移動させることで、一対の伝達部材40の間隔Lを変更する。
伝達ベルト60は、断面が台形状に形成された無端ベルトである。伝達ベルト60は、耐摩耗性の高いゴム製とする他に、金属ベルト製とすることができる。
【0051】
以上のように構成された本発明の実施の形態2に係る無段変速装置の動作および使用状態を図面に基づいて説明する。
入力軸21が回転すると、第1伝達部70が回転する。第1伝達部70を形成する一対の伝達部材40の間には、伝達ベルト60が巻かれている。
伝達ベルト60の回転方向(周回方向)は、ローラー42の回転軸線と一致する。従って、伝達部材40が伝達ベルト60に接していても、ローラー42が回転しないため、伝達部材40の回転に応じて伝達ベルト60を回転させ、周回させることができる。
【0052】
また、伝達ベルト60が周回することで、第2伝達部80を形成する一対の伝達部材40が回転する。
第2伝達部80においても、伝達ベルト60の回転方向(伝達部材40の円周方向)は、ローラー42の回転軸線と一致しているので、伝達部材40が伝達ベルト60に接していても、ローラー42が回転しないため、伝達ベルト60の周回によって、伝達部材40が回転する。このようにして、入力軸21の回転が出力軸33へ伝達される。
【0053】
次に、変速比を変更する場合を説明する。
例えば、第1伝達部70の伝達部材40同士の間隔Lを拡げると、伝達ベルト60が大径側から小径側へ移動する。
伝達部材40の接触面には、ローラー42が配置されており、ローラー42は、部材本体41の円錐面の円周方向F21に沿って並べられていると共に、軸線を中心とした円周方向F21に沿って配置された支軸45(
図4参照)を中心に回転している。
【0054】
そのため、伝達ベルト60が伝達部材40の母線方向F3の小径方向に移動するときには、ローラー42が回転するので、伝達部材40が高い圧力で伝達ベルト60に接した状態で伝達部材40が回転していても、伝達ベルト60をスムーズに伝達部材40の母線方向F3に移動させることができる。
【0055】
また、第2伝達部80の伝達部材40同士の間隔Lを狭くすると、伝達ベルト60が小径側から大径側へ移動する。
そうすると、第2伝達部80の場合も同様に、伝達部材40が高い圧力で伝達ベルト60に接した状態で伝達部材40が回転していても、ローラー42が回転するので、伝達ベルト60を、スムーズに伝達部材40の母線方向F3の大径方向に移動させることができる。
このようにして、この無段変速装置10xは、効率よく回転を伝達することができ、スムーズな変速比の変更が可能である。
【0056】
本実施の形態では、無段変速装置10xは、ベルト式のCVTであったが、チェーン式、トロイダル式でもよい。
【0057】
本発明の
他の実施の形
態に係る無段変速装置を図面に基づいて説明する。
図8(A)および同図(B)に示す無段変速装置10yは、
図6および
図7に示す無段変速装置10xと同様に、連続的に変速比を変えることができるベルト式のCVTである。
無段変速装置10yは、入力部20および出力部30と、伝達ベルト60と、変速部(図示せず)とを備えている。
入力部20は、プライマリプーリーである第1伝達部70により形成されている。第1伝達部70は、一対の伝達部材40yにより形成されている。
出力部30は、セカンダリプーリーである第2伝達部80により形成されている。第2伝達部80は、一対の伝達部材40yにより形成されている。
【0058】
ここで、第1伝達部70および第2伝達部80を形成する伝達部材40yについて、
図9に基づいて説明する。
図9(A)から同図(C)に示す伝達部材40yは、ローラー42yが、円錐台状の部材本体41の円錐面に、伝達部材40の軸線を中心とした円周方向に回転軸線42Lが沿って配置されている。
ローラー42yは、伝達ベルト60(
図8参照)の周回により摺動する円周面(接触面42a)を有する円柱状のローラー本体42bと、ローラー本体42bの両方の端面から互いに離れる方向に向かって突出する一対の凸部42cとを備えている。
本実施の形態3に係るローラー42yの凸部42cは、
図4に示すローラー42の支軸45と同様にローラー本体42bより突出しているが、部材本体41には支持されていない。
【0059】
図9(A)から同図(C)に示すように、このローラー42yは、スロット47に並べられている。本実施の形態3では、7個のローラー42yがスロット47に挿入されて並べられている。従って、ローラー42y同士の間には仕切りが無いため、隣接したローラー42同士は接触した状態である。
【0060】
本実施の形態3では、伝達ベルト60がローラー42yに摺動して母線方向に沿って移動するため、ローラー42yの円周面である接触面42aは、スロット47の開口より外側に露出しているが、ローラー42yと接触するものによっては、ローラー42yの接触面42aがスロット47の開口と同じ位置としてもよい。
【0061】
スロット47は、入力軸21および出力軸33(伝達部材40の軸線)を中心にして、母線方向F3に沿って放射状に延びるように形成されている。
図9(C)に示すように、スロット47の開口縁部が、ローラー42yの凸部42cを覆うように、スロット47の開口中心に向かって突出していることで、ローラー42yの円周面からの抜けを防止している。
【0062】
また、
図9(B)に示すように、スロット47における母線方向F3の一方の端部47aには、開放端を封鎖する閉鎖部材48が配置されている。従って、スロット47の一方の端部47aからローラー42yをスロット47に挿入して閉鎖部材48により開放端を封鎖することで、ローラー42yがスロット47から排出されることが防止できる。
また、ローラー42yは、伝達部材40の部材本体41の円錐面に、放射状にスロット47を形成して、挿入するだけなので、伝達部材40の製造が容易である。
【0063】
図8(A)および同図(B)に示す伝達ベルト60が一対の伝達部材40の間で、小径側から大径側へ、反対に大径側から小径側に移動するときに、ローラー42yの円周面である接触面42aを摺動しながら移動する。ローラー42yは、伝達ベルト60の移動方向に応じて回転しようとする。このとき、隣接するローラー42y同士は接触しているので、接触した状態の接触面42a同士は互いに反対方向に回転しようとする。しかし、ローラー42yの接触面42aは円周面であるため摺動しながら回転する。そうすることで、伝達ベルト60が母線方向に移動する際の抵抗を、ローラー42yが無い従来の伝達部材(従来のCVTのプーリー)よりも低減することができる。
【0064】
また、ローラー42yは放射状に並んでいるため、伝達ベルト60は、放射状に並ぶローラー42が配置されていない部材本体41の円錐面と摩擦が得られるので、伝達ベルト60をしっかりと周回させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、無段階で連続的に変速比が切り替えられる、車両用、工作機械用、電動リール等のその他の様々な無段変速装置に好適である。
【符号の説明】
【0066】
10,10x,10y 無段変速装置
11 装置支持部
20,20x 入力部
21 入力軸
22 入力コーン
23 シャフト
24 可動シーブ
30,30x 出力部
31 ユニバーサルシャフト
31a ボールジョイント
31b ユニバーサルジョイント
31c 歯車部
32 出力歯車
33 出力軸
40,40y 伝達部材
41 部材本体
42,42y ローラー
42a 接触面
42b ローラー本体
42c 凸部
42L 回転軸線
43 凹部
44 回転軸
45 支軸
46 支持部
46a 天面
47 スロット
47a 端部
48 閉鎖部材
50 変速部
51 ガイド部
511 車輪支持部
512 ガイドレール
513 台部
514 内筒部
514a スリット
52 変速駆動部
521 外筒部
522 腕部
522a~522c 第1腕部~第3腕部
523 スライド機構部
523a ラック
523b 平歯車
523c ラック
60 伝達ベルト
70 第1伝達部
80 第2伝達部
F11 軸線方向
F12 円周方向
F13 母線方向
F21 円周方向
F22 母線方向
F3 母線方向
A1,A2,A3 軸線
S1 円周面
S2 仮想線