(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】排水ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 1/14 20060101AFI20240527BHJP
F04D 29/044 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F04D1/14
F04D29/044
(21)【出願番号】P 2021151071
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久米 義之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 永
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-107893(JP,A)
【文献】特開2019-103363(JP,A)
【文献】特開2016-023635(JP,A)
【文献】特開2019-015283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
B29C 33/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定シャフトを備えたハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられたステータユニットと、
前記固定シャフトに対し回転可能に保持され、前記ステータユニットにより回転駆動されるロータ組立体と、
前記ロータ組立体と共に回転する回転羽根と、を有し、
前記ロータ組立体を構成するロータ基部と前記回転羽根は樹脂製であり、前記ロータ組立体の回転軸線に同軸である金属製の連結シャフトを介して相互に連結されており、
前記回転羽根の軸部が前記ロータ基部の端部に突き当てられる、
ことを特徴とする排水ポンプ。
【請求項2】
前記ロータ組立体は、樹脂製のロータ基部および前記ロータ基部を前記固定シャフトに対して回転自在に保持する軸受を備え、
前記ロータ基部は、樹脂成形品であり、前記軸受を保持する内周面と、前記連結シャフトを保持する受け面と
が画定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の排水ポンプ。
【請求項3】
前記連結シャフトの一端側は、前記ロータ基部に連結され、前記連結シャフトの他端側は、前記回転羽根を構成する軸部の孔に嵌合しており、
前記ロータ基部において、前記連結シャフトを保持する受け面が画定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の排水ポンプ。
【請求項4】
前記連結シャフトは外周面に凹部を有し、前記連結シャフトが嵌合する前記ロータ基部の受け面は、前記凹部に嵌入する凸部を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の排水ポンプ。
【請求項5】
前記軸受は、前記固定シャフトの上部と下部をそれぞれ保持する上部軸受と下部軸受とを含み、
前記回転羽根の軸部は、その周面に羽根部が連設された下部領域と、当該下部領域よりも前記ロータ組立体側に位置し、前記羽根部の連設を受けていない上部領域を有し、
前記上部領域の高さは、前記上部軸受の中心位置と前記下部軸受の中心位置との間の距離よりも短い、
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の排水ポンプ。
【請求項6】
前記ロータ基部は、前記受け面を有する孔を有し、
前記連結シャフトの一端側は、前記回転羽根を構成する軸部に連結され、前記連結シャフトの他端側は、前記ロータ基部の孔に嵌合している、
ことを特徴とする請求項2に記載の排水ポンプ。
【請求項7】
前記連結シャフトは外周面に凹部を有し、前記連結シャフトが嵌合する前記軸部の受け面は、前記凹部に嵌入する凸部を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載の排水ポンプ。
【請求項8】
前記ロータ基部は、前記受け面を有する孔を有し、
前記回転羽根は、回転軸線に沿って形成された孔を有し、
前記連結シャフトの一端側と他端側とのそれぞれが、前記ロータ基部の孔および前記回転羽根の孔に圧入により嵌合している、
ことを特徴とする請求項2に記載の排水ポンプ。
【請求項9】
前記固定シャフトと前記連結シャフトの対向する端部のうち少なくとも一方は、球面状を有する、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の排水ポンプ。
【請求項10】
前記固定シャフトと前記連結シャフトの対向する端部間に、円板が摺動可能に配設されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の排水ポンプ。
【請求項11】
前記ロータ基部と前記回転羽根は、ポンプ室内で相互に連結されており、
前記回転羽根の軸部の外周と前記ロータ基部の外周とは、段差なく接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の排水ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の冷房運転時に、空気中の水分が冷やされて室内ユニットの熱交換器にて結露し、その水滴が熱交換器の下方に設けられるドレンパン内に滴下する。ここで、壁掛け型の室内ユニットの場合、ドレンパン内に溜まったドレン水は、重力により排水管を通じて屋外に排出される。一方、天井埋込型のような室内ユニットの場合、重力を利用して排水を行えるように排水管を取り廻すことが一般的に困難である。そこで、このようなタイプの室内ユニットにおいては、モータを動力源として排水を行う排水ポンプが配設されている。
【0003】
特許文献1には、ステータ組立体とロータ組立体とを備えた排水ポンプが開示されている。この排水ポンプにおいて、ステータ組立体に取付けたシャフトが、ロータ組立体のロータ中心体内に設けた軸受に挿入して組み付けられており、またロータ中心体は回転羽根に連結され、回転羽根と一体でステータ組立体によりシャフト回りに回転駆動され、それにより排水が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータ中心体と回転羽根は、いずれも樹脂成形品であり、例えば金型を用いた射出成形により形成することができる。射出成形においては、第1の型と第2の型を型締めした後に、型内部に形成された空洞内に溶融した樹脂を射出し、樹脂が固化した後に離型して成形品を取り出すことができる。
【0006】
ここで、成形されたロータ中心体の内面には、第1の型の形状が転写される一方、ロータ中心体の外面には、第1の型とは異なる第2の型の形状が転写される。同一である型の形状が転写されたロータ中心体の内面と外面とは、それぞれ精度良く形成されるが、ロータ中心体の内面と外面との間には、型締め精度に応じてずれ(偏心)などが生じうる。したがって、たとえロータ中心体の外面と回転羽根とを精度よく連結できたとしても、ロータ中心体の内面と回転羽根との間には偏心が残存するおそれがある。ロータ中心体の内面には、固定シャフトに対してロータ中心体を回転可能に保持する軸受が配置されるため、ロータ中心体の内面と回転羽根との間に偏心が残存すると、回転羽根の振れ回りにより振動を招くおそれがある。
【0007】
これに対し、ロータ中心体と回転羽根を接合した後に、回転バランス取りを行うことも一案であるが、それにより製造工数の増大を招き、また部品自体が小さいためバランス取りの作業も困難となる。
【0008】
そこで本発明は、製造工数の増大を抑えつつ、動作時の振動が抑制された排水ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の排水ポンプは、
固定シャフトを備えたハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられたステータユニットと、
前記固定シャフトに対し回転可能に保持され、前記ステータユニットにより回転駆動されるロータ組立体と、
前記ロータ組立体と共に回転する回転羽根と、を有し、
前記ロータ組立体を構成するロータ基部と前記回転羽根は樹脂製であり、前記ロータ組立体の回転軸線に同軸である金属製の連結シャフトを介して相互に連結されており、
前記回転羽根の軸部が前記ロータ基部の端部に突き当てられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造工数の増大を抑えつつ、動作時の振動が抑制された排水ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる排水ポンプの縦断面図である。
【
図3】
図3は、ロータ基部の製造工程を示す模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態にかかるロータ組立体と回転羽根とを分解して示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態にかかるロータ組立体と回転羽根とを分解して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる排水ポンプの縦断面図である。なお、ここではステータ組立体側を上側、回転羽根側を下側として説明する。また、回転羽根の回転軸線をXとする。
【0013】
排水ポンプ1は、合成樹脂製のハウジング2と、ステータユニット3と、ロータ組立体4と、回転羽根5とを有する。ハウジング2は、有底円筒状の上部ハウジング21と、下部ハウジング22とを有する。なお、後述するように、ステータユニット3は、ハウジングの一部(蓋部)としての機能を持ち合わせている。
【0014】
上部ハウジング21は、周壁21aと、周壁21aの下端に連設された底壁21bと、底壁21bの中央に連設された中央円筒部21cとを有する。中空の中央円筒部21cは、上端が絞られており、中央円筒部21cの内側を介して底壁21bの上方空間と下方空間とが連通する。
【0015】
下部ハウジング22は、皿状の下部本体22aと、下部本体22aの中央下端に連設された入口円筒部22bと、下部本体22aの側壁に連設された出口円筒部22cとを有する。下部本体22aの上端は、底壁21bにより覆われており、下部本体22aの内部空間と外部とは、入口円筒部22bと出口円筒部22cを介して連通する。下部本体22aの内部空間が、ポンプ室PCを形成する。
【0016】
上部ハウジング21の周壁21aの下端と、下部ハウジング22の下部本体22aの上端とが連結され、両者の隙間に配設されたO-リングORにより封止されている。上部ハウジング21は、下部ハウジング22の上端外周から突出して形成される弾性変形可能な係止爪(不図示)を利用して、下部ハウジング22に対してスナップフィット機能により着脱自在に取り付けられる。
【0017】
ステータユニット3は、有頂円筒状である樹脂製のハウジング蓋部31と、ハウジング蓋部31内のコア周囲に配置されたボビン32と、ボビン32に巻回されたコイル33とを有している。ハウジング蓋部31の側面に、配線Hに接続されたコネクタ34が装着されており、外部の電源(不図示)より配線H及びコネクタ34を介してコイル33に給電が行われる。
【0018】
ハウジング蓋部31の下端外周は、上部ハウジング21の周壁21aの上端内周に嵌合している。ハウジング蓋部31は、その下端外周から突出して連設される弾性変形可能な係止爪(不図示)を利用して、上部ハウジング21に対してスナップフィット機能により着脱自在に取り付けられる。
【0019】
ハウジング蓋部31の上壁下面中央に袋孔31aが形成されており、袋孔31aには金属製である固定シャフト35の上端が圧入により嵌合固定され、固定シャフト35はハウジング蓋部31から下方に向かって延在している。固定シャフト35の下端は、球面状となっている。
【0020】
ロータ組立体4は、中空円筒状の樹脂成形品としてのロータ基部41と、連結シャフト42と、環状のロータマグネット43と、環状の上部軸受44と、環状の下部軸受45とを有する。上部軸受44及び下部軸受45は、滑り軸受である。
【0021】
図2は、ロータ基部41の縦断面図である。ロータ基部41の外周面は、上方より、環状外周面41aと、環状外周面41aより小径の大円筒外側面41bと、大円筒外側面41bから下方に向かうにしたがって縮径する大円錐外側面41cと、大円錐外側面41cに対して段部を介して繋がる大円錐外側面41cより小径の中円筒外側面41dと、中円筒外側面41dから下方に向かうにしたがって縮径する小円錐外側面41eと、小円錐外側面41eに繋がる小円筒外側面41fとを有する。
【0022】
また、ロータ基部41は、大円筒外側面41bと大円錐外側面41cとの境界付近から径方向外方に延在する大鍔部41gと、大鍔部41gの外周から軸線方向下方に延在する鍔円筒部41hと、鍔円筒部41hの下端から径方向外方に延在する小鍔部41iとを連設してなる。
【0023】
さらにロータ基部41の内周面は、上方より、大円筒内側面41jと、大円筒内側面41jに対して段部を介して繋がる大円筒内側面41jより小径の大円錐内側面41kと、大円錐内側面41kに繋がる中円筒内側面41mと、中円筒内側面41mに対して段部を介して繋がる中円筒内側面41mより小径の小円筒内側面41nと、小円筒内側面41nに対して段部を介して繋がる小円筒内側面41nより小径の円筒状である受け面41pとを有する。
【0024】
連結シャフト42は、金属製であって円柱状であり、中央部外周面の一部に、周方向に連続せずまた軸線方向にも連続しない凹部42aを有する。連結シャフト42の上端は、平面状となっているが、球面状となっていてもよい。連結シャフト42は、受け面41pに凸部41qが形成されており、それにより連結シャフト42がロータ基部41に回転方向及び軸線方向に対して固定される。連結シャフト42の下端側は、ロータ基部41の下方に突出し、また連結シャフト42の上端側は、小円筒内側面41nの径方向内側に位置する。
【0025】
(ロータ基部及び回転羽根の製造)
図3は、樹脂成形品としてのロータ基部41の製造工程を示す模式図である。
図4は、ロータ組立体4と回転羽根5とを分解して示す縦断面図である。
図3において、第1の型MD1は、中央に略円筒状のコアCRを備える。コアCRの下端中央に、第1袋孔BH1が形成されている。ここで、第1の型MD1において、コアCRおよび第1袋孔BH1とは同軸加工により形成されており、コアCRと第1袋孔BH1との同軸性は高精度(少なくとも、第2の型MD2、第3の型MD3との型締めによる誤差未満となる精度)に確保されている。またコアCRの根元周囲に、環状体を半割りした一対の第2の型MD2が配置され、第1の型MD1に対して水平方向にスライド可能に配置されている。
【0026】
第3の型MD3は、中央にキャビティCVを備える。キャビティCVの底部中央に、第2袋孔BH2が形成されている。
【0027】
本実施形態においては、インサート成形により、ロータ基部41、ロータマグネット43および連結シャフト42を一体に組み付けて形成する。ロータ基部41、ロータマグネット43および連結シャフト42の組み付け工程を以下に示す。なお、連結シャフト42には、予め凹部42aが形成されているものとする。
【0028】
ロータ基部の成形前において、第1の型MD1の第1袋孔BH1に、連結シャフト42の上端側を嵌合させる一方で、一対の第2の型MD2をコアCRの径方向外側から接近させるようにスライドさせてロータマグネット43を挟み込む。その後、第1の型MD1に対して第3の型MD3を下方から接近させると、第3の型MD3の第2袋孔BH2に、連結シャフト42の下端側が嵌合する。このとき、連結シャフト42の凹部42aは、キャビティCVに対して径方向内側に位置する。かかる型締め状態が、
図3に示される。同図から明らかのように、型締め状態において、第1の型MD1と第3の型MD3とは、連結シャフト42が介在することによって同軸性が高精度に確保されることになる。
【0029】
その後、不図示のスプルー及びランナーを介して溶融した熱可塑性樹脂を、型MD1~MD3により形成される空洞内に注入する。樹脂が固化した後、第1の型MD1に対して第2の型MD2を矢印Bに示すように下方に離間させ、また一対の第3の型MD3をコアCRから矢印Aに沿って離間するように第1の型MD1に対してスライドさせる。第1の型MDから成形品を取り外すと、
図2に示すように、回転軸線Xと同軸となる連結シャフト42が一体となったロータ基部41を得ることができる。尚、ロータ基部の成形材料としては、上記の熱可塑性樹脂に代え、熱硬化性樹脂、その他の重合性樹脂を用いてもよい。
【0030】
成形されたロータ基部41の内周面において、中円筒内側面41mに嵌合するようにして下部軸受45が圧入により取付けられ、また大円筒内側面41jに嵌合するようにして上部軸受44が圧入により取付けられる。これによりロータ組立体4が完成する。
【0031】
回転羽根5は、円筒状の軸部51と、軸部51の周囲に配置された皿状部52と、軸部51と皿状部52とを連結する複数の羽根部53とを連設してなり、射出成形によって形成できる。各羽根部53は、軸部51の軸線を含む面に沿って径方向外方に延在するように、放射状に等角度で形成されている。軸部51の上端中央には、袋孔51aが形成され、皿状部52の中央には、軸部51が貫通する円形開口52aが形成されている。
上記構成を有する回転羽根5において、回転中心である軸部51のうち袋孔51aが形成された領域51bにおける成形精度が回転羽根5の回転精度に特に影響するため、当該領域51bの成形精度を確保することは重要である。同領域51bのうち羽根部53が連設された下部領域51baは、羽根部53が補強リブとして作用するため、成形精度は比較的高く保つことが可能である。他方、羽根部53が連設された領域より上の上部領域51bbは、金型からの離形後に樹脂材の変形による影響を受ける虞がある。そこで、本実施形態においては、この上部領域51bbが短くなるよう設計している。具体的には、この上部領域51bbの高さが、ロータ組立体4の上部軸受44の高さ方向の中心位置と下部軸受45の高さ方向の中心位置との間の距離(中心位置間距離)よりも短く設定されており、より好ましくは中間位置間距離の20%~80%の範囲に設定される。また、上部領域51bbの高さは、下部領域51baの高さよりも短く、回転羽根5の外径の10%~30%の範囲となるよう設計されている。
【0032】
(排水ポンプの組付)
排水ポンプ1の組付態様について説明する。ハウジング蓋部31には、コイル33や固定シャフト35等が予め組み付けられているものとする。まず、ロータ組立体4の上部軸受44および下部軸受45に、ハウジング蓋部31から下方に延在する固定シャフト35を挿通するようにして、ロータ組立体4をハウジング蓋部31に組み付ける。このとき、ロータ組立体4の内部に、固定シャフト35の先端に対応し、摺動性に優れた素材からなる円板46を配置しておく。円板46の外径は、連結シャフト42または固定シャフト35の外径よりも大きいと好ましい。固定シャフト35がハウジング蓋部31に組付けられることにより、円板46は、固定シャフト35の下端と連結シャフト42の上端との間に配置される。
【0033】
ハウジング蓋部31に組み付けられたロータ組立体4は、ロータマグネット43とコイル33内のコアとの間で磁気的吸引力が生じるため、ハウジング蓋部31から落下することがない。なお、小鍔部41iは、ロータ組立体4とハウジング蓋部31との間に異物が侵入しないようにカバーとして機能する。
【0034】
次いで、ロータ組立体4を組み付けた状態で、ハウジング蓋部31の下端を、上部ハウジング21の上端側から嵌合させて組み付ける。上部ハウジング21に組み付けられた状態で、連結シャフト42は、底壁21bの中央円筒部21cを貫通し、その下端が底壁21bの下方に露出する。
【0035】
さらに、連結シャフト42の露出した下端を、軸部51の袋孔51aに圧入により挿入し、連結シャフト42に回転羽根5を連結する。その後、上部ハウジング21にО-リングORおよび下部ハウジング22を取り付けると、回転羽根5の周囲に下部本体22aが配置され、軸部51が入口円筒部22b内に位置することとなる。これにより排水ポンプ1の組み付けが完了する。
【0036】
(排水ポンプの動作)
外部の電源よりコイル33に給電しロータマグネット43に磁気力が作用し、固定シャフト35の周囲をロータ組立体4が回転する。これにより回転羽根5が回転駆動されると、遠心力により入口円筒部22bからポンプ室PC内にドレン水が吸い上げられて出口円筒部22cを通じて排出される。ロータ組立体4は、固定シャフト35に対して、上部軸受44、下部軸受45、及び円板46により低フリクションで回転可能に支持されるため、省電力が図られる。
【0037】
本実施形態によれば、下部軸受45が取付けられる中円筒内側面41mと、上部軸受44が取り付けられる大円筒内側面41jとを形成する第1の型MD1のコアCRに対して、連結シャフト42が精度よく同軸に位置決めされ、また連結シャフト42に対して回転羽根5が精度よく同軸に位置決めされる。したがって、連結シャフト42を介して、ロータ基部41と回転羽根5とを容易に且つ精度よく同軸に連結することができるため、ロータ組立体4と回転羽根5の組立体における回転バランスを高めることができ、それにより回転時の低振動を確保できる。
【0038】
(第1実施形態の変形例)
以上の実施形態において、連結シャフト42はインサート成形によりロータ基部41と連結され、ロータ組立体4の一部を成している。これに対し、インサート成形を行うことなく、ロータ基部の射出成形時に、第1の型MD1によって同軸の貫通孔(例えば後述する貫通孔41Ap)を形成し、射出成形後に該貫通孔の内周面である受け面に、円形軸(すなわち外周に凹部を有しない)である連結シャフトを圧入により嵌合させることによって、ロータ組立体を形成してもよい。それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0039】
本変形例においても、ロータ基部と回転羽根の軸部の対向する孔に連結シャフトの両端側を嵌合させることにより、ロータ基部と回転羽根とを精度よく同軸に連結することができるため、ロータ組立体と回転羽根の組立体における回転バランスを高めることができ、それにより回転時の低振動を確保できる。
【0040】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態にかかるロータ組立体4Aと回転羽根5Aとを分解して示す縦断面図である。本実施形態では、回転羽根5Aに連結シャフト54Aが一体に形成される。ロータ組立体4Aと回転羽根5A以外の構成は、第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0041】
ロータ組立体4Aのロータ基部41Aは、小円筒内側面41nに対して段部を介して繋がる円筒状の貫通孔41Apを有する。それ以外のロータ基部41Aの構成は、第1実施形態と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0042】
回転羽根5Aの軸部51Aは、上端に円形袋孔状の受け面51Aaを有する。受け面51Aaに、径方向内側に突出した凸部51Abが形成されている。それ以外の回転羽根5Aの構成は、第1実施形態と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0043】
連結シャフト54Aは、金属製であって円柱状であり、下端近傍の外周面の一部に、周方向に連続せずまた軸線方向にも連続しない凹部54Aaを有する。連結シャフト54Aは、インサート成形により、回転羽根5Aと一体的に構成されている。インサート成形においては、回転羽根5Aを構成する樹脂材により、連結シャフト54Aとの境界である受け面51Aaが形成される。また、樹脂材が連結シャフト54Aの凹部54Aaに充填されることにより、凸部51Abが形成され、それにより連結シャフト54Aが軸部51Aに回転方向及び軸線方向に対して固定される。連結シャフト54Aの上端側は、軸部51Aの上方に突出し、ロータ基部41Aの貫通孔41Apに圧入により嵌合する。
【0044】
本実施形態によれば、第1の型のコアにより、ロータ基部41Aの内周面(下部軸受45が取付けられる中円筒内側面41mと上部軸受44が取り付けられる大円筒内側面41j、貫通孔41Ap)が精度よく同軸に位置決めされ、また、インサート成形により連結シャフト54Aが軸部51Aに対して精度よく同軸に成形される。したがって、連結シャフト54Aを介して、ロータ基部41Aと回転羽根5Aとを容易に且つ精度よく同軸に連結することができるため、ロータ組立体4Aと回転羽根5Aの組立体における回転バランスを高めることができ、それにより回転時の低振動を確保できる。
【0045】
上記した本発明による排水ポンプは、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス形式により、物の発明が特定されているという見方もできる。ここで、連結シャフトがインサート成形により樹脂成形品に結合されたか否かを、製品としての排水ポンプから判別することが困難な場合がある。したがって、請求項において物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するものである。
【符号の説明】
【0046】
1 排水ポンプ
2 ハウジング
3 ステータユニット
35 固定シャフト
4、4A ロータ組立体
41、41A ロータ基部
42、54A 連結シャフト
44 上部軸受
45 下部軸受
5、5A 回転羽根
51、51A 軸部