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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】半導体装置の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240527BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H01L21/52 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022546789
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2020033336
(87)【国際公開番号】W WO2022049685
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0083193(US,A1)
【文献】特開2002-368021(JP,A)
【文献】特開2004-303757(JP,A)
【文献】特開平06-177179(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157134(WO,A1)
【文献】特開2012-028587(JP,A)
【文献】特開2011-040489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/52
H05K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されるステージと、
チップを保持して鉛直方向に移動可能なボンディングツールを有し、互いに独立して水平に移動可能な複数のボンディングヘッドと、
前記複数のボンディングヘッドそれぞれに、水平方向に位置決めする位置決め処理と、前記チップが前記基板または他のチップに接地するまで下降する接地処理と、接地させた前記チップにボンディングのための荷重を付加する加圧処理と、を実行させるコントローラと、
前記複数のボンディングヘッドに、新たな前記チップを順番に供給する単一のピックアップヘッドと、
を備え、前記コントローラは、いずれのボンディングヘッドも前記加圧処理を実行していない非加圧期間中に、前記複数のボンディングヘッドに前記位置決め処理および前記接地処理を互いに独立して実行させ、前記位置決め処理および前記接地処理を終えた少なくとも二つのボンディングヘッドに、前記加圧処理を、その実行期間が少なくとも部分的に重複するように、並行して実行させ、
前記コントローラは、前記複数のボンディングヘッドによる、新たなチップを受け取る受取処理の実行時間が、互いに重複しないように、前記複数のボンディングヘッドの前記受取処理の実行タイミングをずらす、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記コントローラは、前記少なくとも二つのボンディングヘッドを、それぞれ、自身の接地処理が完了した後、他のボンディングヘッドによる接地処理が完了するまで、接地状態のまま待機させる、ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
基板が載置されるステージと、
チップを保持して鉛直方向に移動可能なボンディングツールを有し、互いに独立して水平に移動可能な複数のボンディングヘッドと、
前記複数のボンディングヘッドそれぞれに、水平方向に位置決めする位置決め処理と、前記チップが前記基板または他のチップに接地するまで下降する接地処理と、接地させた前記チップにボンディングのための荷重を付加する加圧処理と、を実行させるコントローラと、
前記複数のボンディングヘッドそれぞれに対応して設けられ、対応するボンディングヘッドに、新たな前記チップを供給する複数のピックアップユニットと、
を備え、前記コントローラは、いずれのボンディングヘッドも前記加圧処理を実行していない非加圧期間中に、前記複数のボンディングヘッドに前記位置決め処理および前記接地処理を互いに独立して実行させ、前記位置決め処理および前記接地処理を終えた少なくとも二つのボンディングヘッドに、前記加圧処理を、その実行期間が少なくとも部分的に重複するように、並行して実行させ、
前記コントローラは、前記複数のボンディングヘッドそれぞれに、新たなチップを受け取る受取処理と、前記位置決め処理と、前記接地処理と、前記加圧処理とを、互いに並行して実行させるとともに、前記接地処理と前記加圧処理との間に前記接地処理の終了タイミングのズレを吸収する所定の待機時間を設けている、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項5】
ステージに載置された基板に、チップをボンディングして半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
前記チップを保持して鉛直方向に移動可能なボンディングツールを有し、互いに独立して水平に移動可能な複数のボンディングヘッドそれぞれが、水平方向に位置決めする位置決めステップと、前記チップが前記基板または他のチップに接地するまで下降する接地ステップと、接地させた前記チップにボンディングのための荷重を付加する加圧ステップと、を実行し、
前記複数のボンディングヘッドは、いずれのボンディングヘッドも前記加圧ステップを実行していない非加圧期間中に、前記位置決めステップおよび前記接地ステップを互いに独立して実行し、
前記位置決めステップおよび前記接地ステップを終えた少なくとも二つのボンディングヘッドは、前記加圧ステップを、その実行期間が少なくとも部分的に重複するように、並行して実行し、
前記複数のボンディングヘッドは、新たなチップを受け取る受取処理の実行時間が、互いに重複しないように、前記受取処理の実行タイミングを互いにずらす、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数のボンディングヘッドを有する半導体装置の製造装置、および、当該製造装置を用いた半導体装置の製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板が載置されるステージと、チップを保持するボンディングヘッドと、を備え、ボンディングヘッドを駆動して、チップを基板に押圧して接合させる半導体装置の製造装置が知られている。かかる半導体装置の製造装置の中には、チップのボンディング効率を高めるために、ボンディングヘッドを複数設けたものがある。複数ヘッド型の製造装置では、通常、一部のボンディングヘッドが、チップを基板に押圧する加圧処理を実行している期間中に、他のボンディングヘッドに、別の処理、例えば、ボンディングヘッドの水平方向位置決めを行う位置決め処理や、チップを基板に接地させる接地処理等を行っていた。かかる構成とすることで、ボンディングヘッドの待機時間を低減でき、ボンディング処理を効率化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-216201号公報
【文献】特開2002-324821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一部のボンディングヘッドによる加圧処理が実行されている期間中に、他のボンディングヘッドによる位置決め処理または接地処理を実行した場合、チップの位置精度が損なわれるおそれがあった。すなわち、加圧処理では、ボンディングヘッドにより、ステージに、大きな荷重が付与されるが、この荷重を受けて、ステージに撓みが生じる。そして、ステージが撓むと、基板に設けられた電極の水平位置が、本来の水平位置からずれてしまう。この場合、電極の正確な水平位置が検出できないという問題や、ボンディングヘッドを本来の水平位置に位置決めしても、電極とチップとの相対位置がズレてしまう、といった問題が生じる。
【0005】
なお、特許文献1には、二つの熱圧着素子(ボンディングヘッドに対応)で、二つのフィルムキャリア(チップに対応)を表示デバイスに押圧した状態で、他の二つの熱圧着素子を、他の二つのフィルムキャリアに接地させ、押圧開始する技術が開示されている。かかる技術の場合、上述した通り、ステージの撓みに起因する位置ずれが生じる恐れがあった。
【0006】
また、特許文献2には、複数のチップを、複数の圧着ツールで同時に押圧する技術が開示されている。ただし、この特許文献2の圧着ツールは、予め基板に対して仮接合されたチップ、すなわち、適正な位置に配置済みのチップを押圧しており、チップを、適切な位置にどのように配置するかについては、何ら言及されていない。
【0007】
以上の通り、従来の技術では、ステージの撓みに起因して、チップの位置精度が低下するおそれがあった。そこで、本明細書では、チップの位置精度をより向上できる半導体装置の製造装置、および、製造方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する半導体装置の製造装置は、基板が載置されるステージと、チップを保持して鉛直方向に移動可能なボンディングツールを有し、互いに独立して水平に移動可能な複数のボンディングヘッドと、前記複数のボンディングヘッドそれぞれに、水平方向に位置決めする位置決め処理と、前記チップが前記基板または他のチップに接地するまで下降する接地処理と、接地させた前記チップにボンディングのための荷重を付加する加圧処理と、を実行させるコントローラと、を備え、前記コントローラは、いずれのボンディングヘッドも前記加圧処理を実行していない非加圧期間中に、前記複数のボンディングヘッドに前記位置決め処理および前記接地処理を互いに独立して実行させ、前記位置決め処理および前記接地処理を終えた少なくとも二つのボンディングヘッドに、前記加圧処理を、その実行期間が少なくとも部分的に重複するように、並行して実行させる、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記コントローラは、前記少なくとも二つのボンディングヘッドを、それぞれ、自身の接地処理が完了した後、他のボンディングヘッドによる接地処理が完了するまで、接地状態のまま待機させてもよい。
【0010】
また、さらに、前記複数のボンディングヘッドに、新たな前記チップを順番に供給する単一のピックアップユニットを備え、前記コントローラは、前記複数のボンディングヘッドによる、新たなチップを受け取る受取処理の実行時間が、互いに重複しないように、前記複数のボンディングヘッドの前記受取処理の実行タイミングをずらしてもよい。
【0011】
また、さらに、前記複数のボンディングヘッドそれぞれに対応して設けられ、対応するボンディングヘッドに、新たな前記チップを供給する複数のピックアップユニットを備え、前記コントローラは、前記複数のボンディングヘッドそれぞれに、新たなチップを受け取る受取処理と、前記位置決め処理と、前記接地処理と、前記加圧処理と、を互いに並行して実行させるとともに、前記接地処理と前記加圧処理との間に所定の待機時間を設けてもよい。
【0012】
本明細書で開示する半導体装置の製造方法は、ステージに載置された基板に、チップをボンディングして半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、前記チップを保持して鉛直方向に移動可能なボンディングツールを有し、互いに独立して水平に移動可能な複数のボンディングヘッドそれぞれが、新たな前記チップを受け取る受取ステップと、水平方向に位置決めする位置決めステップと、前記チップが前記基板または他のチップに接地するまで下降する接地ステップと、接地させた前記チップにボンディングのための荷重を付加する加圧ステップと、を実行し、前記複数のボンディングヘッドは、いずれのボンディングヘッドも前記加圧ステップを実行していない非加圧期間中に、前記位置決めステップおよび前記接地ステップを互いに独立して実行し、前記位置決めステップおよび前記接地ステップを終えた少なくとも二つのボンディングヘッドは、前記加圧ステップを、その実行期間が少なくとも部分的に重複するように、並行して実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本明細書で開示する技術によれば、チップの位置精度をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】製造装置の構成を示す概略図である。
図2】接地処理および加圧処理におけるボンディングツールの位置および付加荷重の推移を示すグラフである。
図3】ボンディング処理の様子を示すイメージ図である
図4】ボンディング処理のタイミングチャートの一例を示す図である。
図5】ボンディング処理のタイミングチャートの他の例を示す図である。
図6】ボンディング処理のタイミングチャートの他の例を示す図である。
図7】比較例のボンディング処理の様子を示すイメージ図である。
図8】比較例のボンディング処理のタイミングチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して半導体装置の製造装置10の構成について説明する。図1は、製造装置10の構成を示す概略図である。この製造装置10は、基板110に複数の半導体チップ100をボンディングすることで半導体装置を製造する。
【0016】
製造装置10は、ピックアップユニット12と、二つのボンディングヘッド14f,14sと、ステージ16と、コントローラ18と、を有している。ピックアップユニット12は、ダイシングテープ120に載置された半導体チップ100を突き上げる突き上げピン19と、突き上げられた半導体チップ100をその底面で保持するピックアップヘッド20と、を有する。ピックアップヘッド20は、水平方向に延びる回転軸Oを中心に回転可能となっている。ピックアップヘッド20が、180度回転することで、ピックアップした半導体チップ100を厚み方向に180度反転させることができる。これにより、半導体チップ100のうちダイシングテープ120に接着されていた面が上方に向く。
【0017】
ステージ16には、基板110が載置されるものである。このステージ16の内部には、基板110を吸着保持するための吸引機構や、基板110を加温するヒータ等が組み込まれている。基板110の表面には、半導体チップ100と電気的かつ機械的に接合される電極(図示せず)が複数形成されている。
【0018】
ステージ16の上方には、二つのボンディングヘッド14f、14sが設けられている。以下では、二つのボンディングヘッドのうち、一方を「第一ヘッド14f」、他方を「第二ヘッド14s」と呼ぶ。また、両者を区別する必要がない場合は、添え字アルファベットを省略し、「ボンディングヘッド14」と呼ぶ。
【0019】
第一ヘッド14fおよび第二ヘッド14sは、基本的に同じ構造であるため、すなわち、各ボンディングヘッド14は、それぞれ対応するXYテーブル22に連結されており、ステージ16の上面と平行な水平方向に、互いに独立して移動可能となっている。また、各ボンディングヘッド14は、ボンディングツール24と、昇降機構と、ヘッドカメラ26と、を有している。ボンディングツール24は、半導体チップ100を吸引保持するものであり、昇降機構により、鉛直方向に移動可能となっている。ボンディングツール24が、基板110に向かって下降することで、半導体チップ100が基板110に接地され、加圧される。また、ボンディングツール24には、保持している半導体チップ100を加熱するためのヒータも設けられている。
【0020】
ヘッドカメラ26は、光軸が下方に延びる姿勢でボンディングヘッド14に取り付けられており、ステージ16に載置された基板110等を撮像する。コントローラ18は、このヘッドカメラ26で撮像された画像等に基づいて、ボンディングヘッド14と基板110と、の相対位置関係を算出し、その算出結果に基づいてボンディングヘッド14を位置決めする。
【0021】
コントローラ18は、製造装置10の各部の駆動を制御する。このコントローラ18は、物理的には、プロセッサ28およびメモリ30を有したコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ28とは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。また、以下に述べるプロセッサ28の動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。同様に、メモリ30も、物理的に一つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のメモリで構成されてもよい。また、メモリ30は、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。
【0022】
半導体装置を製造する際には、半導体チップ100の底面に設けられた接合端子(例えばバンプ等、図示せず)を、基板110の表面に形成された電極(図示せず)に接合する。本例では、この接合端子を、TCB(Thermal Compression Bonding:熱圧着)技術により、基板110の電極に接合している。TCBは、半導体チップ100の接合端子を、基板110の電極に、それぞれの融点未満の温度条件で、高圧で圧着させ、接合面間に生じる原子の拡散を利用して原始的に接合する技術である。このTCBの場合、半導体チップ100に付加する接合荷重Fbが比較的大きく、また、ボンディングヘッド14で半導体チップ100を基板110に押圧する加圧処理の時間が比較的、長くなる。
【0023】
ここで、本例では、第一ヘッド14fによる加圧処理と並行して、第二ヘッド14sによる加圧処理を実行する。また、一方のボンディングヘッド14f,14sによる加圧処理に起因して、他方のボンディングヘッド14s,14fの位置決め精度が低下しないように、両ボンディングヘッド14f,14sの各処理の実行タイミングを調整している。
【0024】
これについて、比較例と本例とを比較して説明する。図2は、接地処理および加圧処理におけるボンディングツール24の位置および付加荷重の推移を示すグラフである。図3は、本例のボンディング処理の様子を示すイメージ図であり、図4は、本例のボンディング処理のタイミングチャートの一例を示す図である。また、図7は、比較例のボンディング処理の様子を示すイメージ図であり、図8は、比較例のボンディング処理のタイミングチャートの一例を示す図である。比較例は、ボンディング処理の処理時間短縮を重視した処理となっている。
【0025】
半導体チップ100を基板110にボンディングするボンディング処理では、コントローラ18は、各ボンディングヘッド14に、受取処理と、位置決め処理と、接地処理と、加圧処理と、を順番に実行させる。受取処理は、新たな半導体チップ100をピックアップユニット12から受け取る処理である。受取処理が完了すれば、コントローラ34は、ボンディングツール24で保持する半導体チップ100の接合端子が、基板110の対応する電極の真上に位置するように、ボンディングツール24を水平方向に位置決めする位置決め処理を実行する。この位置決め処理では、図3(a)または図7(a)に示すように、基板110をヘッドカメラ26で撮像し、得られた撮像画像に基づいて、ボンディングヘッド14の基板110に対する水平方向位置を取得する。
【0026】
位置決め処理が完了すれば、コントローラ34は、図3(b)または図7(b)に示すように、ボンディングツール24を下降させ、半導体チップ100を基板110に接地させる接地処理を実行する。そして、接地処理が完了すれば、コントローラ34は、ボンディングツール24で半導体チップ100に所定の接合荷重Fbを付加する加圧処理を実行する。この接合荷重Fbの付加により、半導体チップ100の接合端子が、基板110の電極に接合される。なお、この荷重付加の際には、ステージ16およびボンディングツール24に設けられたヒータで、基板110および半導体チップ100を、電極および接合端子の溶融温度未満の温度に加熱してもよい。
【0027】
この接地処理および加圧処理について、図2を参照して、より詳細に説明する。図2の上段は、この接地処理および加圧処理におけるボンディングツール24のZ位置の推移を、図2の下段は、接地処理および加圧処理における付加荷重の推移を、それぞれ示している。図2に示すように、接地処理では、ボンディングツール24を基板110に向かって下降させる。時刻taにおいて、半導体チップ100が基板110に接触し始めると、荷重が徐々に上昇する。そして、半導体チップ100に所定の接地荷重Faを付加した状態で、ボンディングツール24の変位が停止すれば、接地が完了したと判断される。図2の例では、時刻tbにおいて、接地が完了したと判断される。接地が完了すれば、コントローラ18は、ボンディングヘッド14に設けられた昇降機構を駆動して、所定の接合荷重Fbを半導体チップ100に付加する加圧処理を開始する。この加圧が一定時間経過した時刻tcになれば、コントローラ34は、ボンディングツール24を上昇させ、加圧処理を終了させる。
【0028】
ここで、本例では、ボンディングヘッド14を二つ設けているが、ピックアップユニット12は、一つしか設けていない。この場合、当然ながら、第一ヘッド14fによる受取処理と第二ヘッド14sによる受取処理と、を並行して実行できない。かかる場合において、処理時間の短縮を優先するのであれば、図8に示す比較例のように、第一ヘッド14fによる受取処理の実行期間t10~t11に、第二ヘッド14sは、受取処理以外の処理(図示例では加圧処理)を実行し、第二ヘッド14sによる受取処理の実行期間t11~t12に、第一ヘッド14fは、受取処理以外の処理(図示例では位置決め処理および接地処理)を実行すればよい。かかる構成とすれば、ボンディングヘッド14が、何もせずに待機する待機時間をなくすことができ、半導体装置の製造に要する時間を短縮できる。
【0029】
しかし、比較例の構成では、一方のボンディングヘッド14による加圧処理に起因して、他方のボンディングヘッド14の位置決め精度が低下する恐れがあった。すなわち、比較例では、図8に示すように、第一ヘッド14fが加圧処理を実行している期間中(t12~t14)に、第二ヘッド14sが位置決処理(格子ハッチングの領域)および接地処理(横線ハッチングの領域)を行っている。加圧処理では、上述した通り、比較的、大きな接合荷重Fbを基板110、ひいては、ステージ16に付加する。これにより、ステージ16および基板110が、図7(b)に示すように、押圧個所を中心として、撓むことがあった。ステージ16が撓んだ状態では、ステージ16が水平な状態に比べて、基板110に対する第二ヘッド14sの水平方向位置がズレてしまう。そのため、第一ヘッド14fの加圧処理に起因してステージ16が撓んだ状態で、第二ヘッド14sによる位置決め処理または接地処理を行った場合、第二ヘッド14sで保持する半導体チップ100を適正な位置に接地させることができず、チップ接合の位置精度が低下する。
【0030】
そこで、本例では、第一ヘッド14fの加圧処理の実行期間と第二ヘッド14sの加圧処理の実行期間とを少なくとも部分的に重複させる一方で、位置決め処理および接地処理は、いずれのボンディングヘッド14も加圧処理を実行していない非加圧期間中にのみ許容する構成としている。すなわち、図4に示すように、第一ヘッド14fは、時刻t3において、接地処理が完了したとしても、第二ヘッド14sの接地処理が完了する時刻t4までは、加圧処理を開始することなく、待機している。そして、第二ヘッド14sの接地処理が完了した時刻t4以降に、第一ヘッド14fの加圧処理を開始する。換言すれば、本例では、第一ヘッド14fの加圧処理の実行期間中(t4~t5)には、第二ヘッド14sの位置決め処理および接地処理を実行せず、第二ヘッド14sの加圧処理の実行期間中(t4~t5)には、第一ヘッド14fの位置決め処理および接地処理を実行しない。かかる構成とすることで、位置決め処理および接地処理の実行期間中、加圧処理に起因するステージ16の撓みが生じないため、位置決めおよび接地を正確に行うことができ、チップ接合の位置精度を向上できる。
【0031】
また、TCBの場合、加圧処理に要する時間は、受取処理から接地処理完了までに要する時間に比べて、数倍から十数倍長い。このように所要時間が長い加圧処理を、複数のボンディングヘッド14で並行して実行することで、ボンディングヘッド14の待機時間を短くでき、半導体装置の製造に要する時間の増加を小さく抑えられる。なお、図4の例では、第一ヘッド14fの加圧処理と、第二ヘッド14sの加圧処理と、を同時に開始している。しかし、二つのボンディングヘッド14の加圧処理の開始タイミングは、第一ヘッド14fおよび第二ヘッド14sの双方の接地処理が完了した後であれば、必ずしも、同時である必要はない。すなわち、半導体チップ100は、一度、適正な位置に接地すれば、そのあと、ステージ16の撓みが生じたとしても、位置ずれは生じにくい。したがって、接地した後であれば、他のボンディングヘッド14による加圧処理の開始、ひいては、ステージ16の撓みが生じても、問題は少ないため、二つのボンディングヘッド14の加圧処理の開始タイミングは一致していなくてもよい。ただし、ステージ16にかかる荷重の偏りは少ないほうが望ましいため、二つのボンディングヘッド14の加圧処理の開始タイミングは、ほぼ同じにすることが望ましい。
【0032】
いずれにしても、本明細書で開示する半導体装置の製造装置10によれば、半導体チップ100の位置精度をより向上できる。なお、これまで説明した構成は、一例であり、いずれのボンディングヘッド14も加圧処理を実行していない非加圧期間中に、複数のボンディングヘッド14に位置決め処理および接地処理を互いに独立して実行させ、位置決め処理および接地処理を終えた少なくとも二つのボンディングヘッド14に、加圧処理を、その実行期間が少なくとも部分的に重複するように、並行して実行させるのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。
【0033】
例えば、一つの製造装置10に設けられるボンディングヘッド14の個数は、2つに限らず、より多数でもよい。図5は、一つの製造装置10が三つのボンディングヘッド14を有する場合のタイミングチャートの一例である。図5の例では、三つのボンディングヘッド14全ての接地処理が完了した時刻t2以降に、各ボンディングヘッド14の加圧処理を開始している。また、図5に示すように、複数のボンディングヘッド14の加圧処理の開始タイミングは、同時である必要はなく、ズレていてもよい。
【0034】
また、上述の例では、ボンディングヘッド14に、新たな半導体チップ100を渡すピックアップユニット12を一つのみ設けているが、ピックアップユニット12は、ボンディングヘッド14と同数、設けられてもよい。図6は、ピックアップユニット12およびボンディングヘッド14がともに二つ設けられている場合のタイミングチャートの一例である。この場合、ピックアップユニット12は、それぞれ、対応するボンディングヘッド14に、新たな半導体チップ100を供給する。かかる構成の場合、二つのボンディングヘッド14は、受取処理を並行して実行でき、その後に行う、位置決め処理、接地処理、加圧処理の開始タイミングを、ほぼ同じにすることができる。ただし、複数のボンディングヘッド14における各処理の実行時間を完全に同じにすることは難しく、接地処理の終了タイミングは、微小にズレる。そこで、図6に示すように、接地処理と加圧処理との間に所定の待機時間(白抜き箇所)を設けてもよい。かかる待機時間を設けることで、接地処理の終了タイミングのズレを当該待機時間で吸収することができ、各ボンディングヘッド14が、他のボンディングヘッド14の進捗状況を考慮せずに、処理を進めることができる。その結果、複数のボンディングヘッド14の制御を簡易化できる。また、上述の説明では、半導体チップ100を基板110にボンディングする場合を例に挙げて説明したが、本明細書で開示の技術は、一つの半導体チップ100を、他の半導体チップ100の上にボンディングする場合に適用してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 製造装置、12 ピックアップユニット、14 ボンディングヘッド、16 ステージ、18 コントローラ、19 突き上げピン、20 ピックアップヘッド、22 XYテーブル、24 ボンディングツール、26 ヘッドカメラ、28 プロセッサ、30 メモリ、34 コントローラ、100 半導体チップ、110 基板、120 ダイシングテープ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8