(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】水門開閉装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/36 20060101AFI20240527BHJP
E02B 7/20 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
E02B7/36
E02B7/20 104
(21)【出願番号】P 2023077849
(22)【出願日】2023-05-10
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】595131411
【氏名又は名称】株式会社乗富鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】中橋 久寿
(72)【発明者】
【氏名】山城 忠栄
(72)【発明者】
【氏名】乘冨 賢蔵
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-085417(JP,A)
【文献】特開2011-219915(JP,A)
【文献】特開平11-173455(JP,A)
【文献】特開平10-082035(JP,A)
【文献】特開2022-018400(JP,A)
【文献】特開2002-309557(JP,A)
【文献】登録実用新案第3025296(JP,U)
【文献】特開2014-001610(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0079419(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/36
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路に隣接して設けられたベース構造物に設置され、前記水路を横切る位置に配置された扉体に下端が連結されて上方に延びたスピンドルを上下方向に移動させることで前記扉体を昇降させる水門開閉装置であって、前記スピンドルの外周面に形成された雄螺子部に螺合し、前記スピンドルに沿った上下軸線まわりに回転自在かつ上下方向に移動不能に支持されたナットと、前記ナットに結合されて前記上下軸線まわりに回転自在な第1の傘歯車と、水平方向に延びた第1の回転軸と、前記第1の回転軸に結合されて前記第1の傘歯車と噛合し、前記第1の回転軸の回転を前記第1の傘歯車に伝達する第2の傘歯車と、前記第1の回転軸の上方または下方に前記第1の回転軸とほぼ平行に延びて設けられ、端部に取り付けられたハンドルによって回転操作される第2の回転軸と、前記第2の回転軸の回転を前記第1の回転軸に伝達する回転伝達機構と、を備えた水門開閉装置の設置方法であって、
前記ベース構造物に設置されている他の水門開閉装置を、前記扉体から分離した前記スピンドルとともに撤去する第1工程と、
前記第1工程の後、前記撤去したスピンドルまたは新たなスピンドルを前記ナットに取り付けた状態の前記水門開閉装置を前記ベース構造物に固定する第2工程と、
前記第2工程の後、前記スピンドルの下端を前記扉体に連結する第3工程と、
を有する水門開閉装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉体を昇降させることにより水門を開閉する水門開閉装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水門開閉装置は、水路を横切る位置に配置された扉体を有する水門に隣接して設置され、扉体を昇降させることにより水門を開閉して水路を流れる水量を調整等する装置である。水門の構成は水路の規模等に応じて異なるが、小川や農業用水路等の比較的小規模の水路に設けられるものでは、端が扉体に連結されて上方に延びたスピンドルの雄螺子部にナットが螺合された構成を有し、ナットをスピンドルに沿った上下軸線まわりに回転させてスピンドルを上下方向に移動させることで、扉体を昇降させるようになっている。
【0003】
水門開閉装置としては、例えば、下記の特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1の水門開閉装置では、スピンドルに螺合したナットに第1の傘歯車(ベベルギヤ)が結合されており、この第1の傘歯車に噛合した第2の傘歯車(ベベルピニオン)に、水平方向に延びたハンドル軸が結合されている。ハンドル軸に結合されたハンドルを回転させてハンドル軸を回転させると、そのハンドル軸の水平な軸線まわりの回転が第2の傘歯車と第1の傘歯車との間で上下軸線まわりのナットの回転に変換され、ナットと螺合したスピンドルが上下方向に移動して扉体が昇降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来における水門開閉装置では、ハンドルの高さはナットが設けられる高さによってほぼ決まってしまうため、場合によってはハンドルの回転操作が行いにくいという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、扉体の昇降作業に伴うハンドルの回転操作を行い易くすることができる水門開閉装置の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水門開閉装置の設置方法は、水路に隣接して設けられたベース構造物に設置され、前記水路を横切る位置に配置された扉体に下端が連結されて上方に延びたスピンドルを上下方向に移動させることで前記扉体を昇降させる水門開閉装置であって、前記スピンドルの外周面に形成された雄螺子部に螺合し、前記スピンドルに沿った上下軸線まわりに回転自在かつ上下方向に移動不能に支持されたナットと、前記ナットに結合されて前記上下軸線まわりに回転自在な第1の傘歯車と、水平方向に延びた第1の回転軸と、前記第1の回転軸に結合されて前記第1の傘歯車と噛合し、前記第1の回転軸の回転を前記第1の傘歯車に伝達する第2の傘歯車と、前記第1の回転軸の上方または下方に前記第1の回転軸とほぼ平行に延びて設けられ、端部に取り付けられたハンドルによって回転操作される第2の回転軸と、前記第2の回転軸の回転を前記第1の回転軸に伝達する回転伝達機構と、を備えた水門開閉装置の設置方法であって、前記ベース構造物に設置されている他の水門開閉装置を、前記扉体から分離した前記スピンドルとともに撤去する第1工程と、前記第1工程の後、前記撤去したスピンドルまたは新たなスピンドルを前記ナットに取り付けた状態の前記水門開閉装置を前記ベース構造物に固定する第2工程と、前記第2工程の後、前記スピンドルの下端を前記扉体に連結する第3工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、扉体の昇降作業に伴うハンドルの回転操作を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る水門開閉装置を水門とともに示す側面図
【
図2】実施の形態1に係る水門開閉装置を水門とともに示す斜視図
【
図5】他の水門開閉装置がベース構造物に設置されている状態を示す図
【
図6】他の水門開閉装置をベース構造物から撤去している状態を示す図
【
図7】実施の形態1に係る水門開閉装置を設置する過程を示す図
【
図8】実施の形態1に係る水門開閉装置を設置した状態を示す図
【
図9】本発明の実施の形態2に係る水門開閉装置の側面図
【
図10】本発明の実施の形態2に係る水門開閉装置を水門とともに示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1および
図2は、本発明の実施の形態1に係る水門開閉装置1を水門2ととともに示している。
【0012】
先ず、水門2について説明する。
図1および
図2に示すように、水門2は、水路3を横切る位置に配置された扉体4と、扉体4の上端部に下端が連結されたスピンドル5を備えている。水門2の近傍には門型のベース構造物6が水路3を跨いで設けられている。
【0013】
ベース構造物6は、例えばコンクリートから構成された堅固な構造物から成り、
図1および
図2に示すように、水路3の両側から上方に延びた一対の脚部6aと、一対の脚部6aの上端同士を繋ぐように設けられた本体部6bを備えている。本体部6bは水路3の上方に位置し、扉体4は本体部6bの下方に位置している。一対の脚部6aそれぞれには、扉体4の幅方向の両端部をガイドする上下方向に延びた一対のガイド溝6cが設けられている。
【0014】
スピンドル5は、下端が扉体4の上端部に連結されており、上方に延びている。スピンドル5は、ベース構造物6の本体部6bを厚さ方向(上下方向)に貫通して設けられたスピンドル挿通孔6Hを貫通しており、上端側の外周面には雄螺子部5Sが形成されている。スピンドル5は扉体4に対し、スピンドル5に沿った上下軸線J0まわりには相対回転できない構成となっている。
【0015】
次に、水門開閉装置1について説明する。水門開閉装置1はベース構造物6の本体部6bの上面に設置されている。水門開閉装置1は、
図3および
図4に示すように、ベースプレート11、ナット支持部12、ナット13、第1の傘歯車14、ケーシング15、第1の回転軸16、第2の傘歯車17、第2の回転軸18、回転伝達機構19およびカバー部材20を備えている。
【0016】
ベースプレート11は平板状の部材から成る。ベースプレート11はベース構造物6の本体部6bの上面に、複数のベースプレート固定ボルトBT0によって取り付けられている。
【0017】
ナット支持部12は全体として上下方向に延びた円錐台形状を有しており、下端のフランジ部(ナット支持部フランジ部12F。
図3および
図4)が複数のナット支持部固定ボルトBT1によってベースプレート11の上面に取り付けられている。
【0018】
ナット13はスピンドル5の雄螺子部5Sに螺合しており、ナット支持部12に支持されている。詳細には、ナット13は、ナット支持部12によってスピンドル5に沿った上下軸線J0まわりに回転自在、かつ、上下方向に移動不能に支持されている。
【0019】
第1の傘歯車14は、ナット13に外嵌されて結合されている。このため第1の傘歯車14はナット13とともに、スピンドル5に沿った上下軸線J0まわりに回転自在になっている。
【0020】
第1の傘歯車14が上下軸線J0まわりに回転すると(
図3中に示す矢印R0)、第1の傘歯車14に結合されたナット13が第1の傘歯車14と一体となって上下軸線J0まわりに回転する。前述したように、ナット13はナット支持部12によって上下方向の移動が規制されているので、ナット13が上下軸線J0まわりに回転すると、スピンドル5はナット13に対して上下方向に移動する(
図3中に示す矢印S)。第1の傘歯車14の(すなわちナット13の)回転方向とスピンドル5の移動方向は対応しており、第1の傘歯車14が一の方向に回転するとスピンドル5が上方に移動し、第1の傘歯車14が他の方向に回転するとスピンドル5が下方に移動する。
【0021】
ケーシング15は全体として中空の直方体形状を有している。ケーシング15は、下端に設けられたフランジ部(ケーシングフランジ部15F。
図3および
図4)が、複数のケーシング固定ボルトBT2によってベースプレート11に取り付けられている。ケーシング15の形状はここでは直方体形状であるが、直方体形状に限定されるわけではない。
【0022】
第1の回転軸16は、その中間部がケーシング15内を水平方向に延びるように、ケーシング15の対向する2面(前面15aと後面15b)それぞれに設けられた一対(2つ)の第1ベアリングBR1によって支持されている。第1の回転軸16は、一対の第1ベアリングBR1によって支持されることによって、第1の回転軸16の水平な中心軸線(第1水平軸線J1)まわりに回転自在となっている。第1の回転軸16の前端部は、
図3および
図4に示すように、ケーシング15の前面15aから前方に突出して延びている。
【0023】
第2の傘歯車17は、第1の回転軸16に結合されている。詳細には、第2の傘歯車17は、ケーシング15の前面15aから前方に(すなわちケーシング15の外部に)突出して延びた部分の端部(第1の回転軸16の前端部)に結合されている。すなわち第2の傘歯車17は、ケーシング15の外部に突出した第1の回転軸16の端部(前端部)に結合された構成となっている。第2の傘歯車17は第1の回転軸16と一体となって、第1水平軸線J1まわりに回転する(
図3中に示す矢印R1)。
【0024】
第2の傘歯車17は第1の傘歯車14と噛合している。このため第1の回転軸16が第1水平軸線J1まわりに回転すると(
図3中に示す矢印R1)、その第1の回転軸16の回転が第2の傘歯車17から第1の傘歯車14に伝達されて、ナット13が上下軸線J0まわりに回転する(
図3中に示す矢印R0)。すなわち第1の回転軸16の水平な軸線(第1水平軸線J1)まわりの回転が、第2の傘歯車17と第1の傘歯車14との間で上下軸まわりJ0の回転に変換されて、第1の傘歯車14と結合されたナット13が、上下軸線J0まわりに回転する。
【0025】
第2の回転軸18は、その中間部がケーシング15内を水平方向に延びるように、ケーシング15の前面15aと後面15bそれぞれに設けられた一対(2つ)の第2ベアリングBR2によって支持されている。第2の回転軸18は、一対の第2ベアリングBR2によって支持されることによって、第2の回転軸18の水平な中心軸線(第2水平軸線J2)まわりに回転自在となっている(
図3中に示す矢印R2)。
【0026】
このように、第1の回転軸16と第2の回転軸18はそれぞれ、ケーシング15(詳細にはケーシング15に取り付けられた一対の第1ベアリングBR1と一対の第2ベアリングBR2)によって回転自在に支持されている。第1の回転軸16の中心軸線である第1水平軸線J1と第2の回転軸18の中心軸線である第2水平軸線J2はほぼ平行であり、同一の垂直面内に位置している。
【0027】
回転伝達機構19は、第2の回転軸18の回転を第1の回転軸16に伝達する。回転伝達機構19は、
図3および
図4に示すように、第1の回転軸16に結合された第1のスプロケット21と、第2の回転軸18に結合された第2のスプロケット22と、第1のスプロケット21と第2のスプロケット22との間に掛け渡されたチェーン23を有しており、これら第1のスプロケット21、第2のスプロケット22およびチェーン23はケーシング15内に位置している。すなわち回転伝達機構19はケーシング15内に収納されている。
【0028】
カバー部材20は、第1の傘歯車14を上方から覆って設けられている。カバー部材20は、
図3および
図4に示すように、ケーシング15の前面15aから前方に張り出して設けられたブラケット部15Bに、複数の螺子SCによって着脱自在に取り付けられている。カバー部材20は第1の傘歯車14とナット13が露出状態になるのを防ぐ機能を有する。
【0029】
図1、
図2および
図3において、第2の回転軸18の後端18Kは、ケーシング15の後面15bから後方に突出して延びている。この第2の回転軸18の後端18Kには、クランク状のハンドル30が取り付けられている。ハンドル30は、
図3および
図4に示すように、円筒状の基部31と、基部31から基部31に対して直交する方向に延びたアーム部32と、アーム部32の端部に設けられてアーム部32に対して直交する方向に延びた操作部33を有する。ハンドル30の操作部33は、アーム部32の端部に回動自在に取り付けられている。
【0030】
第2の回転軸18の後端18Kの外面は、多角形形状に形成されている。ハンドル30の基部31には、アーム部32とは反対側の端部に開口する空洞部31aが形成されており、その空洞部31aの内面は、第2の回転軸18の後端18Kの形状に対応した多角形形状に形成されている。このため作業者OP(
図1)は、空洞部31aに第2の回転軸18の後端18Kに挿入させることで、ハンドル30を第2の回転軸18に取り付けることができる。このようにハンドル30は第2の回転軸18の端部(後端18K)に着脱自在に取り付けることができ、第2の回転軸18の後端18Kは、ハンドル30が取り付けられるハンドル取付部となっている。
【0031】
作業者OPは、第2の回転軸18の後端18Kに取り付けられたハンドル30の操作部33を手で握り、ハンドル30の全体を第2の回転軸18の中心軸線である第2水平軸線J2を中心に手回しによる回転操作することで、第2の回転軸18を第2水平軸線J2まわりに回転させることができる。ハンドル30の操作によって第2の回転軸18が第2水平軸線J2まわりに回転すると、回転伝達機構19を介して、第2の回転軸18の下方に所定量のオフセット量OF(
図1)だけオフセットして位置する第1の回転軸16が、その中心軸線である第1水平軸線J1まわりに回転する。これにより第2の傘歯車17とこれと噛合した第1の傘歯車14を介してナット13が上下軸線J0まわりに回転し、スピンドル5が上下方向に移動する。
【0032】
このように実施の形態1に係る水門開閉装置1は、スピンドル5の外周面に形成された雄螺子部5Sに螺合し、スピンドル5に沿った上下軸線J0まわりに回転自在かつ上下方向に移動不能に支持されたナット13、ナット13に結合されて上下軸線J0まわりに回転自在な第1の傘歯車14、水平方向に延びた第1の回転軸16、第1の回転軸16に結合されて第1の傘歯車14と噛合し、第1の回転軸16の回転を第1の傘歯車14に伝達する第2の傘歯車17、第1の回転軸16の上方(下方でもよいがここでは上方)に第1の回転軸16とほぼ平行に延びて設けられ、端部(後端18K)に取り付けられたハンドル30によって回転操作される第2の回転軸18および第2の回転軸18の回転を第1の回転軸16に伝達する回転伝達機構19を備えた構成となっている。
【0033】
前述したように、スピンドル5の下端は扉体4の上端部に対して相対不能である一方、扉体4は両端がベース構造物6に形成された一対のガイド溝6cにガイドされて上下方向の移動のみが許容された状態となっている。このため作業者OPがハンドル30を回転操作し、その回転がナット13に伝達されてスピンドル5が上下方向に移動すると、扉体4はガイド溝6cに沿って昇降し、水門2が水路3に対して開閉する。このように水門開閉装置1は、作業者OPがハンドル30を手回し操作することで扉体4を昇降させて水門2を開閉できるようになっている。
【0034】
上述のような水門開閉装置1において、作業者OPが操作するハンドル30は、スピンドル5を上下方向に移動させるナット13を第1の傘歯車14と第2の傘歯車17を介して直接回転させる第1の回転軸16に取り付けられているのではなく、第1の回転軸16の下方(上方であってもよいがここでは下方)に第1の回転軸16とほぼ平行に延びて設けられた第2の回転軸18に取り付けられている。ここで第2の回転軸18は、第1の回転軸16に対してオフセット量OFだけオフセットして設けられているので、ハンドル30の回転軸となる第2の回転軸18の高さを、ナット13あるいは第1の回転軸16よりも低い位置(あるいは高い位置)に設定することができる。
【0035】
このため、例えば
図1に示すように、ベース構造物6に取り付けた状態の水門開閉装置1の第1の回転軸16の高さが、地面JMに立った作業者OPの顔の当たりにくるような場合であっても、ハンドル30の回転操作の中心位置(第2の回転軸18に高さ位置)を、作業者OPがハンドル30を操作し易い作業者OPの胸の当たりにくるように製造(設計)することができる。すなわち水門開閉装置1では、ハンドル30の位置(高さ)を作業者OPにとって操作容易な位置に設定することができ、作業者OPが扉体4の昇降(すなわち水門2の開閉)作業を行い易くなるようにすることができる。
【0036】
次に、水門開閉装置1をベース構造物6に設置する手順(水門開閉装置1の設置方法)を説明する。ここでは、
図5に示すように、ベース構造物6に、水門開閉装置1とは異なる他の水門開閉装置として、水平面内で輪状ハンドルRHを操作する水平ハンドルタイプ水門開閉装置101が備え付けられている場合に、この水平ハンドルタイプ水門開閉装置101を撤去したうえで、上述の水門開閉装置1を設置する手順を示す。
【0037】
水平ハンドルタイプ水門開閉装置101は、水門開閉装置1のナット支持部12に相当するナット支持部相当部材112と、ナット13に相当するナット相当部材113を備えている。そして、輪状ハンドルRHの中心に位置する貫通孔部RHH(
図5)をナット相当部材113に係合させたうえで、作業者OPが輪状ハンドルRHを水平面内で手回し操作すると、輪状ハンドルRHに係合したナット相当部材113がスピンドル5に沿った上下軸線J0まわりに回転し、ナット相当部材113と螺合したスピンドル5が上下方向に移動して扉体4が昇降するようになっている。
【0038】
このような水平ハンドルタイプ水門開閉装置101では、輪状ハンドルRHはベース構造物6の本体部6bから比較的低い位置に位置する。このため作業者OPは、
図5に示す階段KDを使用してベース構造物6の本体部6bに上がり、しゃがんだ姿勢で輪状ハンドルRHを水平面内で回転させる操作をする必要がある。
【0039】
このような姿勢で行う扉体4の昇降作業は作業者OPにとって重労働であり、作業性がよくない。このため水平ハンドルタイプ水門開閉装置101を垂直ハンドルタイプの上述の水門開閉装置1に置き換えると、作業者OPはハンドル30の操作を立ち姿勢で楽に行うことができ、しかもベース構造物6の上に上がらずに作業を行うことができるので、作業性が各段に向上する。
【0040】
水門開閉装置1をベース構造物6に設置する場合には、先ず、ベース構造物6に設置されている他の水門開閉装置である水平ハンドルタイプ水門開閉装置101を撤去する(第1工程)。水平ハンドルタイプ水門開閉装置101の撤去には、移動式クレーン等を用い、水平ハンドルタイプ水門開閉装置101の全体を引き揚げていく。水平ハンドルタイプ水門開閉装置101を引き揚げる前にはスピンドル5の下端を扉体4の上端部から分離させておき、水平ハンドルタイプ水門開閉装置101をナット相当部材113に螺合したスピンドル5ごと引き揚げていく(
図6中に示す矢印A)。
【0041】
水平ハンドルタイプ水門開閉装置101を撤去したら、スピンドル5をナット13と螺合させた状態の水門開閉装置1を、移動クレーン等を用いてベースプレート11の上方から下ろしていく。このときナット13と螺合されるスピンドル5は、撤去したスピンドル5または新たなスピンドル5である。水門開閉装置1を下ろすときには、スピンドル5が、ベース構造物6の本体部6bに形成されたスピンドル挿通孔6Hを上方から挿通するようにする(
図7中に示す矢印B)。
【0042】
水門開閉装置1を下ろすことによって、ベースプレート11がベース構造物6(詳細には本体部6b)の上面に接地したら、複数のベースプレート固定ボルトBT0によって、ベースプレート11をベース構造物6に固定する(第2工程)。ベースプレート11をベース構造物6に固定したら、スピンドル5の下端を扉体4の上端部に連結する(第3工程。
図8)。これにより水門開閉装置1のベース構造物6への設置が終了する。
【0043】
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2に係る水門開閉装置1Aを示している。水門開閉装置1Aは、実施の形態1に係る水門開閉装置1と構成要素は同じであるが、第2の回転軸18が第1の回転軸16の下方ではなく上方に位置している。このため実施の形態2に係る水門開閉装置1Aでは、
図10に示すように、作業者OPがベース構造物6の本体部6bに上がった状態において、立ち姿勢でハンドル30を操作することができる。
【0044】
このような実施の形態2に係る水門開閉装置1Aにおいても、実施の形態1に係る水門開閉装置1と同様に、作業者OPが操作するハンドル30が、スピンドル5を昇降させるナット13を第1の傘歯車14と第2の傘歯車17を介して直接回転させる第1の回転軸16に取り付けられているのではなく、第1の回転軸16と上下方向(ここでは下方)に第1の回転軸16とほぼ平行に延びて設けられた第2の回転軸18に取り付けられた構成となっている。そして、ここでも第2の回転軸18は、第1の回転軸16に対してオフセット量OFだけオフセットして設けられているので、ハンドル30の回転軸となる第2の回転軸18の高さを、ナット13あるいは第1の回転軸16よりも高い位置に設定することができる。このため作業者OPはハンドル30を操作し易く、扉体4の昇降作業が容易である。
【0045】
以上説明したように、実施の形態1に係る水門開閉装置1または実施の形態2に係る水門開閉装置1Aは、スピンドル5を昇降させるナット13を、ナット13に結合された第1の傘歯車14と噛合した第2の傘歯車17を直接回転させる第1の回転軸16ではなく、第1の回転軸16に対して上下方向にオフセットして設けられた第2の回転軸18をハンドル30で操作するようになっている。このためベース構造物6に取り付けられた状態での水門開閉装置1,1Aのハンドル30の高さが作業者OPの操作し易い高さとなるように第2の回転軸18を配置(設計)することで、扉体4の昇降操作(水門2の開閉操作)に伴うハンドル30の回転操作を行い易くすることができ、作業者OPの作業負担を軽減することができる。
【0046】
これまで本発明の実施の形態1,2について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態1,2では、第2の回転軸18の回転を第1の回転軸16に伝達する回転伝達機構19は、スプロケットとチェーン(第1のスプロケット21、第2のスプロケット22およびチェーン23)から構成されていたが、プーリとベルトから成る機構やギヤ機構等から構成されていてもよい。また、上述の実施の形態1,2では、第2の回転軸18に取り付けられるハンドル30はクランク状のハンドルであったが、クランク状のハンドルに限られず、輪状のハンドル等であってもよい。また、ハンドル30は第2の回転軸18に着脱自在でなくてもよく、第2の回転軸18に固定して設けられていてもよい。
【0047】
また、上述の実施の形態1,2では、門型のベース構造物6はコンクリート製のものであったが、ベース構造物は鋼製のものであってもよい。この場合、鋼製のベース構造物は水路3に対して着脱式とすることができ、さらには、本発明の水門開閉装置、鋼製のベース構造物、スピンドルおよび扉体をひとつのユニットとして構成し、これを水路3に取り付けて使用するようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
小川や農業用水路等の水路を開閉する装置として利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1,1A 水門開閉装置
2 水門
3 水路
4 扉体
5 スピンドル
5S 雄螺子部
6 ベース構造物
6a 脚部
6b 本体部
6c ガイド溝
6H スピンドル挿通孔
11 ベースプレート
12 ナット支持部
12F ナット支持部フランジ部
13 ナット
14 第1の傘歯車
15 ケーシング
15a 前面
15b 後面
15F ケーシングフランジ部
16 第1の回転軸
17 第2の傘歯車
18 第2の回転軸
18K 後端
19 回転伝達機構
20 カバー部材
21 第1のスプロケット
22 第2のスプロケット
23 チェーン
30 ハンドル
31 基部
31a 空洞部
32 アーム部
33 操作部
101 水平ハンドルタイプ水門開閉装置(他の水門開閉装置)
112 ナット支持部相当部材
113 ナット相当部材
OF オフセット量
BT0 ベースプレート固定ボルト
BT1 ナット支持部固定ボルト
BT2 ケーシング固定ボルト
BR1 第1ベアリング
BR2 第2ベアリング
J0 上下軸線
J1 第1水平軸線
J2 第2水平軸線
【要約】
【課題】扉体の昇降作業に伴うハンドルの回転操作を行い易くすることができる水門開閉装置およびその設置方法を提供することを目的とする。
【解決手段】扉体4に下端が連結されて上方に延びたスピンドル5に螺合したナット13、ナット13に結合されてスピンドル5に沿った上下軸線J0まわりに回転自在な第1の傘歯車14、水平方向に延びた第1の回転軸16、第1の回転軸16に結合されて第1の傘歯車14と噛合し、第1の回転軸16の回転を第1の傘歯車14を介してナット13に伝達する第2の傘歯車17、第1の回転軸16の上方または下方に第1の回転軸16とほぼ平行に延びて設けられ、端部に取り付けられたハンドル30によって回転操作される第2の回転軸18および第2の回転軸18の回転を第1の回転軸16に伝達する回転伝達機構19を備える。
【選択図】
図3