(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】短繊維用処理剤及び不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 13/46 20060101AFI20240527BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20240527BHJP
D06M 15/27 20060101ALI20240527BHJP
D06M 13/207 20060101ALI20240527BHJP
D04H 1/46 20120101ALI20240527BHJP
D04H 1/435 20120101ALI20240527BHJP
【FI】
D06M13/46
D06M13/17
D06M15/27
D06M13/207
D04H1/46
D04H1/435
(21)【出願番号】P 2023201687
(22)【出願日】2023-11-29
【審査請求日】2023-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 一輝
(72)【発明者】
【氏名】松永 光晴
(72)【発明者】
【氏名】二宮 彰紀
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-186352(JP,A)
【文献】特許第7319748(JP,B1)
【文献】特開2020-073741(JP,A)
【文献】特開2021-172927(JP,A)
【文献】特開2023-010233(JP,A)
【文献】国際公開第2023/282285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有することを特徴とする短繊維用処理剤。
成分(A):ヒドロキシ酸及びヒドロキシ酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一つ。
成分(B):
下記の第四級アンモニウム化合物(B1)、及び
下記のイミダゾリン化合物(B2)から選ばれる少なくとも一つ。
成分(C):炭素数8以上22以下の1又は2価の脂肪酸に対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を付加させた化合物、及び炭素数3以上22以下の1価以上3価以下の脂肪族アルコールに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を付加させた化合物から選ばれる少なくとも一つ。
第四級アンモニウム化合物(B1):下記のイミダゾリニウム型第四級アンモニウム(B1a)、下記のモノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b)、下記のジ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1c)、及び下記のポリオキシアルキレン脂肪族アミン型第四級アンモニウム(B1d)から選ばれる少なくとも一つ。
イミダゾリニウム型第四級アンモニウム(B1a):イミダゾリン化合物を四級化した化合物、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
モノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b):分子中に、炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を一つ有する第四級アンモニウム、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
ジ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1c):分子中に、炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を二つ有する第四級アンモニウム、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
ポリオキシアルキレン脂肪族アミン型第四級アンモニウム(B1d):分子中に、炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を一つ、及びオキシアルキレンを構成単位とするポリオキシアルキレン骨格を二つ有する第四級アンモニウム、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
イミダゾリン化合物(B2):炭素数1~24のアルケニル基を有するイミダゾリン、及び炭素数1~24のアルキル基を有するイミダゾリンから選ばれる少なくとも一つ。
【請求項2】
前記成分(A)が、グルコン酸及びグルコン酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の短繊維用処理剤。
【請求項3】
前記成分(C)が、炭素数12以上20以下の1又は2価の脂肪酸1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物、及び炭素数8以上18以下の1価以上3価以下の脂肪族アルコール1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の短繊維用処理剤。
【請求項4】
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を1質量%以上20質量%以下、前記成分(B)を1質量%以上60質量%以下、及び前記成分(C)を30質量%以上90質量%以下の割合で含有する請求項1に記載の短繊維用処理剤。
【請求項5】
下記の工程1~3を経ることを特徴とする不織布の製造方法。
工程1:請求項1~
4のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤を、合成繊維に対し付着させる工程。
工程2:工程1で短繊維用処理剤を付着させた合成繊維を、カード機に通過させてウェブを得る工程。
工程3:工程2で得られたウェブにニードルパンチ処理を施して不織布を得る工程。
【請求項6】
前記合成繊維が、ポリエステル系合成繊維である請求項
5に記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短繊維用処理剤及び不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不織布の原料繊維として合成繊維が用いられている。例えば、不織布は、合成繊維の短繊維であるステープルを作製した後、ステープルをカード機に通してウェブを作製する。そのため、合成繊維に短繊維用処理剤を塗布することによって、摩擦低減等の機能が付与される。ステープルをカード機に通して得られたウェブは、車内装材等の産業用分野、農業分野、衛材分野、医療分野、建築・土木分野等、幅広い分野で活用されている。
【0003】
従来より、特許文献1に開示される短繊維用処理剤が知られている。特許文献1には、成分(A):グルコン酸、成分(B):アルキルホスフェート、アルキルホスフェート塩等、成分(C):1価アルコール、多価アルコールおよびこれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種と脂肪族カルボン酸とのエステルで含有する不織布の製造に用いられる繊維の透水性付与剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、短繊維用処理剤には、短繊維に対して摩擦低減の機能付与に加えて、使用時に調製される短繊維用処理剤を含有するエマルジョンの安定性を向上させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、所定の有機酸、第四級アンモニウム化合物、及びポリオキシアルキレン化合物を配合した構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の短繊維用処理剤は、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有することを特徴とする。
【0008】
成分(A):ヒドロキシ酸及びヒドロキシ酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一つ。
成分(B):下記の第四級アンモニウム化合物(B1)、及び下記のイミダゾリン化合物(B2)から選ばれる少なくとも一つ。
【0009】
成分(C):炭素数8以上22以下の1又は2価の脂肪酸に対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を付加させた化合物、及び炭素数3以上22以下の1価以上3価以下の脂肪族アルコールに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を付加させた化合物から選ばれる少なくとも一つ。
【0010】
第四級アンモニウム化合物(B1):下記のイミダゾリニウム型第四級アンモニウム(B1a)、下記のモノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b)、下記のジ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1c)、及び下記のポリオキシアルキレン脂肪族アミン型第四級アンモニウム(B1d)から選ばれる少なくとも一つ。
【0011】
イミダゾリニウム型第四級アンモニウム(B1a):イミダゾリン化合物を四級化した化合物、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
モノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b):分子中に、炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を一つ有する第四級アンモニウム、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
【0012】
ジ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1c):分子中に、炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を二つ有する第四級アンモニウム、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
【0013】
ポリオキシアルキレン脂肪族アミン型第四級アンモニウム(B1d):分子中に、炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を一つ、及びオキシアルキレンを構成単位とするポリオキシアルキレン骨格を二つ有する第四級アンモニウム、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
【0014】
イミダゾリン化合物(B2):炭素数1~24のアルケニル基を有するイミダゾリン、及び炭素数1~24のアルキル基を有するイミダゾリンから選ばれる少なくとも一つ。
態様2は、態様1に記載の短繊維用処理剤において、前記成分(A)が、グルコン酸及びグルコン酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一つである。
【0015】
態様3は、態様1又は2に記載の短繊維用処理剤において、前記成分(C)が、炭素数12以上20以下の1又は2価の脂肪酸1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物、及び炭素数8以上18以下の1価以上3価以下の脂肪族アルコール1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物から選ばれる少なくとも一つである。
【0016】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の短繊維用処理剤において、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記成分(A)を1質量%以上20質量%以下、前記成分(B)を1質量%以上60質量%以下、及び前記成分(C)を30質量%以上90質量%以下の割合で含有する。
【0017】
態様5の不織布の製造方法では、下記の工程1~3を経ることを特徴とする。
工程1:態様1~4のいずれか一態様に記載の短繊維用処理剤を、合成繊維に対し付着させる工程。
【0018】
工程2:工程1で短繊維用処理剤を付着させた合成繊維を、カード機に通過させてウェブを得る工程。
工程3:工程2で得られたウェブにニードルパンチ処理を施して不織布を得る工程。
【0019】
態様6は、態様5に記載の不織布の製造方法において、前記合成繊維が、ポリエステル系合成繊維である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、短繊維用処理剤を含有するエマルジョンの安定性を向上できるとともに、短繊維用処理剤が付与された繊維の摩擦低減性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
本発明に係る短繊維用処理剤(以下、単に処理剤という。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0022】
本実施形態の処理剤は、成分(A)としてヒドロキシ酸及びヒドロキシ酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一つ、成分(B)として第四級アンモニウム化合物(B1)、及びイミダゾリン化合物(B2)から選ばれる少なくとも一つ、成分(C)として炭素数8以上22以下の1又は2価の脂肪酸に対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を付加させた化合物、及び炭素数3以上22以下の1価以上3価以下の脂肪族アルコールに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を付加させた化合物から選ばれる少なくとも一つを含有する。
【0023】
(成分(A))
本実施形態の処理剤に供される成分(A)は、上述したようにヒドロキシ酸及びヒドロキシ酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一つである。処理剤中に成分(A)が含有されることにより、処理剤を含有するエマルジョンの安定性を向上できる。
【0024】
ヒドロキシ酸としては、ヒドロキシ基を有する有機酸、ヒドロキシ基を有する脂肪族カルボン酸が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、分岐の有無等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有するカルボン酸であってもよい。また、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。ヒドロキシ酸の炭素数は、特に制限はないが、好ましくは1以上20以下、より好ましくは2以上18以下、さらに好ましくは3以上12以下である。
【0025】
ヒドロキシ酸の具体例としては、例えばグルコン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、リシノール酸、ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸等が挙げられる。また、ヒドロキシ酸として天然由来の脂肪酸を用いても良いが、ヒドロキシ酸以外の脂肪酸も含まれる場合には、全脂肪酸に対して80質量%以上がヒドロキシ酸であればよい。天然由来の脂肪酸の具体例としては、例えばリシノール酸を含有するひまし油、硬化ひまし油等が挙げられる。
【0026】
アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。
これらの成分(A)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0027】
これらの成分(A)の中で、溶媒として硬水を使用した場合の安定性をより向上できる観点からグルコン酸、グルコン酸のアルカリ金属塩が好ましい。
溶媒を含まない処理剤の不揮発分中における成分(A)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合が0.5質量%以上の場合、溶媒として硬水を使用した場合の安定性をより向上できる。かかる成分(A)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。かかる含有割合が30質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維のカード通過性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。また、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0028】
(成分(B))
本実施形態の処理剤に供される成分(B)は、上述したように第四級アンモニウム化合物(B1)、及びイミダゾリン化合物(B2)から選ばれる少なくとも一つである。処理剤中に成分(B)が含有されることにより、処理剤が付与された短繊維に対して摩擦低減性を向上できる。特に、繊維/金属間摩擦を低減できる。
【0029】
第四級アンモニウム化合物(B1)としては、下記のイミダゾリニウム型第四級アンモニウム(B1a)、下記のモノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b)、下記のジ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1c)、及び下記のポリオキシアルキレン脂肪族アミン型第四級アンモニウム(B1d)から選ばれる少なくとも一つを含む。これらの第四級アンモニウム化合物(B1)が用いられることにより、制電性をより向上できる。
【0030】
イミダゾリニウム型第四級アンモニウム(B1a)は、イミダゾリン化合物を四級化した化合物、及びその塩から選ばれる少なくとも一つである。
イミダゾリニウム型第四級アンモニウム(B1a)は、例えば、下記一般式(1)で表される4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0031】
【0032】
一般式(1)において、R1は、炭素数が1~24のアルキル基又はアルケニル基であり、R2は、炭素数が1~24のアルキル基又はアルケニル基である。nは、1~20の整数を示す。X-は、例えばアルキル硫酸イオン等の硫酸イオン、アルキルリン酸イオン等のリン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン、塩素イオン等の陰イオンが挙げられる。
【0033】
イミダゾリニウム型第四級アンモニウム(B1a)の原料として用いられるイミダゾリン化合物としては、上記一般式(1)で表される化合物において置換基R2のないイミダゾリン化合物型第三級アミンが挙げられる。
【0034】
イミダゾリン化合物(B2)としては、炭素数1~24のアルケニル基を有するイミダゾリン、及び炭素数1~24のアルキル基を有するイミダゾリンから選ばれる少なくとも一つである。
【0035】
イミダゾリン化合物(B2)の具体例としては、例えば1-(2-ヒドロキシエチル)-2-オレイルイミダゾリン等の1-(2-ヒドロキシエチル)-2-アルケニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ステアリルイミダゾリン等の1-(2-ヒドロキシエチル)-2-アルキルイミダゾリン等が挙げられる。
【0036】
イミダゾリン化合物を四級化した化合物又はその塩は、例えばイミダゾリン化合物とジアルキル硫酸、トリアルキルリン酸、又はアルキルスルホン酸との反応物が含まれる。ジアルキル硫酸の具体例としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。
【0037】
イミダゾリニウム型第四級アンモニウム(B1a)の具体例としては、例えば1-エチル-2-(ヘプタデセニル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのアルキル硫酸塩、1-メチル-2-(ヘプタデセニル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのアルキル硫酸塩、1-エチル-2-(ヘプタデシル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのアルキル硫酸塩、1-エチル-2-(イソヘプタデシル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのアルキル硫酸塩、1-エチル-2-(ペンタデシル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのアルキル硫酸塩等が挙げられる。
【0038】
モノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b)は、分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を一つ有する第四級アンモニウム、及びその塩から選ばれる少なくとも一つである。塩態を構成するイオンとしては、例えばアルキル硫酸イオン等の硫酸イオン、アルキルリン酸イオン等のリン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン、塩素イオン等の陰イオンが挙げられる。
【0039】
炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格としては、例えば飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、直鎖の炭化水素基、分岐鎖を有する炭化水素基が挙げられる。
炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格の具体例としては、例えば(1)ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基等の直鎖の飽和炭化水素基、(2)イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基、イソドコシル基等の分岐鎖を有する飽和炭化水素基、(3)ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、ドコセニル基等の炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基等が挙げられる。
【0040】
モノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b)は、例えば炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を一つ有する三級アミンとジアルキル硫酸、トリアルキルリン酸、又はアルキルスルホン酸との反応物が含まれる。ジアルキル硫酸の具体例としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。
【0041】
炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を一つ有する三級アミンの具体例としては、例えばN-ステアリル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミン、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ステアルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ラウロイルアミド等が挙げられる。
【0042】
分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を一つ有する第四級アンモニウムの具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、エイコセニルトリエチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、ジ(ヒドロキシエチル)ステアリルメチルアンモニウム、ジ(ヒドロキシエチル)オレイルメチルアンモニウム、エチルジメチル(ステアロイルアミノ)プロパンアンモニウム、エチルジメチル(ラウロイルアミノ)プロパンアンモニウム、牛脂アルキルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0043】
モノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b)の具体例としては、例えばN-ステアリル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアンモニウムのアルキル硫酸塩、N-オレイル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアンモニウムクロライド、N-エチル-N,N-ジメチル-3-(ステアロイルアミノ)プロパンアンモニウムのアルキル硫酸塩、N-エチル-N,N-ジメチル-3-(ラウロイルアミノ)プロパンアンモニウムのアルキル硫酸塩、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0044】
ジ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1c)は、分子中に、炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を二つ有する第四級アンモニウム、及びその塩から選ばれる少なくとも一つである。塩態を構成するイオンとしては、例えばアルキル硫酸イオン等の硫酸イオン、アルキルリン酸イオン等のリン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン、塩素イオン等の陰イオンが挙げられる。
【0045】
炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格としては、例えば飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、直鎖の炭化水素基、分岐鎖を有する炭化水素基が挙げられる。それらの具体例は、モノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b)欄において説明したものと同様である。
【0046】
ジ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1c)は、例えば炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を二つ有する三級アミンとジアルキル硫酸、トリアルキルリン酸、又はアルキルスルホン酸との反応物が含まれる。ジアルキル硫酸の具体例としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。
【0047】
炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を二つ有する第四級アンモニウムの具体例としては、例えばジラウリルジメチルアンモニウム、ジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジメチルジオレイルアンモニウム等が挙げられる。
【0048】
ジ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1c)の具体例としては、例えばジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン脂肪族アミン型第四級アンモニウム(B1d)は、分子中に、炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格を一つ、及びオキシアルキレンを構成単位とするポリオキシアルキレン骨格を二つ有する第四級アンモニウム、及びその塩から選ばれる少なくとも一つである。塩態を構成するイオンとしては、例えばアルキル硫酸イオン等の硫酸イオン、アルキルリン酸イオン等のリン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン、塩素イオン等の陰イオンが挙げられる。
【0049】
炭素数12以上22以下の脂肪族炭素骨格としては、例えば飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、直鎖の炭化水素基、分岐鎖を有する炭化水素基が挙げられる。それらの具体例は、モノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b)欄において説明したものと同様である。
【0050】
炭素数12以上22以下の脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加した化合物からなる三級アミンと、ジアルキル硫酸、トリアルキルリン酸、又はアルキルスルホン酸との反応物が含まれる。ジアルキル硫酸の具体例としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。
【0051】
脂肪族アミンの具体例としては、例えばラウリルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。
三級アミンとジアルキル硫酸との反応物の具体例としては、例えばステアリルアミン1モルに対してエチレンオキサイド5モルを付加した化合物と、ジメチル硫酸との反応物、オレイルアミン1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド3モルを付加した化合物と、ジエチル硫酸との反応物等が挙げられる。
【0052】
ポリオキシアルキレン骨格を構成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは2モル以上60モル以下、より好ましくは3モル以上50モル以下、さらに好ましくは4モル以上50モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0053】
ポリオキシアルキレン脂肪族アミン型第四級アンモニウム(B1d)の具体例としては、例えばN-ステアリル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアンモニウムのアルキレンオキサイド付加物のアルキル硫酸塩、N-オレイル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-エチルアンモニウムのアルキレンオキサイド付加物のアルキル硫酸塩等が挙げられる。
【0054】
これらの成分(B)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
溶媒を含まない処理剤の不揮発分中における成分(B)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合が1質量%以上の場合、処理剤が付与された短繊維に対して摩擦低減性をより向上できる。特に、繊維/金属間摩擦をより低減できる。かかる成分(B)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。かかる含有割合が65質量%以下の場合、カード通過性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0055】
(成分(C))
本実施形態の処理剤に供される成分(C)は、炭素数8以上22以下の1又は2価の脂肪酸に対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を付加させた化合物、及び炭素数3以上22以下の1価以上3価以下の脂肪族アルコールに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を付加させた化合物から選ばれる少なくとも一つである。処理剤が付与された短繊維に対して摩擦低減性を向上できる。特に、繊維/金属間摩擦を低減できる。
【0056】
成分(C)の原料として用いられる脂肪酸の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オレイン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、エルカ酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)12-ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(5)セバシン酸等の多価カルボン酸等が挙げられる。これらの中で、処理剤を含有するエマルジョンの安定性をより向上できる観点から、炭素数12以上20以下の1又は2価の脂肪酸が好ましく適用される。
【0057】
成分(C)の原料として用いられる1価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えば、(1)プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール等の分岐アルキルアルコール、(3)オレイルアルコール、テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール等が挙げられる。
【0058】
成分(C)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、1,10-デカンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0059】
これらの中で、処理剤を含有するエマルジョンの安定性をより向上できる観点から、炭素数8以上18以下の1価以上3価以下の脂肪族アルコールが好ましく適用される。
成分(C)の原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは1モル以上60モル以下、より好ましくは3モル以上50モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0060】
これらの中で、成分(C)は、炭素数12以上20以下の1又は2価の脂肪酸1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物、及び炭素数8以上18以下の1価以上3価以下の脂肪族アルコール1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。これらの化合物を使用することにより、処理剤を含有するエマルジョンの安定性をより向上できる。
【0061】
非イオン界面活性剤の具体例としては、例えばオレイン酸に対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、炭素数12,13の分岐アルキルアルコールに対してエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダム付加させた化合物、ラウリルアルコールに対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、ステアリン酸に対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、ラウリン酸に対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、炭素数8~10の分岐アルキルアルコールに対してエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをブロック付加させた化合物、ミリスチン酸に対してプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドをブロック付加させた化合物、2-エチルヘキサノールに対してプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドをブロック付加させた化合物、12-ヒドロキシステアリン酸に対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、オレイルアルコールに対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、1,10-デカンジオールに対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、セバシン酸に対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、2-エチルヘキサン酸に対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、エルカ酸に対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、1-ドコサノールに対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、グリセリンに対してエチレンオキサイドを付加させた化合物、プロピレングリコールに対してエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダム付加させた化合物、プロピレングリコールに対してプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドをブロック付加させた化合物、オレイン酸に対してエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをブロック付加させた化合物、2-エチルヘキサノールに対してエチレンオキサイドを付加させた化合物等が挙げられる。
【0062】
これらの成分(C)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
溶媒を含まない処理剤の不揮発分中における成分(C)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。かかる含有割合が5質量%以上の場合、処理剤が付与された短繊維に対して摩擦低減性を向上できる。特に、繊維/金属間摩擦を低減できる。かかる成分(C)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。かかる含有割合が95質量%以下の場合、処理剤が付与された短繊維に対して摩擦低減性を向上できる。特に、繊維/金属間摩擦を低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0063】
溶媒を含まない処理剤の不揮発分中において、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、好ましくは成分(A)を1質量%以上20質量%以下、成分(B)を1質量%以上60質量%以下、及び成分(C)を30質量%以上90質量%以下の割合で含有する。かかる範囲に規定することにより、カード通過性をより向上できる。また、処理剤が付与された短繊維に対して摩擦低減性をより向上できる。特に、繊維/金属間摩擦をより低減できる。また、処理剤の硬水に対する安定性をより向上できる。
【0064】
(溶媒)
本実施形態の処理剤は、必要により溶媒と混合することにより短繊維用処理剤含有組成物(以下、「処理剤含有組成物」という)を調製し、処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。かかる構成により、使用時に溶媒でさらに希釈する際、混合物の均質性及び安定性を向上させる。
【0065】
溶媒は、1気圧における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、各成分の分散性又は溶解性に優れる観点から水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましく、ハンドリング性に優れる観点から水がより好ましい。
【0066】
処理剤含有組成物中において、処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、処理剤を10質量部以上で含有することが好ましい。
(本実施形態の効果)
上記第1実施形態の処理剤の効果について説明する。
【0067】
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、上述した成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有する。したがって、処理剤を含有するエマルジョンの安定性を向上できるとともに、処理剤が付与された繊維の摩擦低減性を向上できる。特に、繊維/金属間摩擦を低減できる。また、処理剤が付与された繊維の制電性及びカード通過性を向上できる。また、処理剤の硬水に対する安定性を向上できる。それにより、スカムを低減できる。
【0068】
<第2実施形態>
本発明に係る不織布の製造方法を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態において得られる不織布は、第1実施形態の処理剤が付着している。
【0069】
本実施形態の不織布の製造方法は、下記の工程1~3を経る。
工程1:第1実施形態の処理剤を、合成繊維に対し付着させる工程。
工程2:工程1で処理剤を付着させた合成繊維を、カード機に通過させてウェブを得る工程。
【0070】
工程3:工程2で得られたウェブにニードルパンチ処理を施して不織布を得る工程。
(合成繊維)
合成繊維の具体例としては、(1)ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリブテン繊維等のポリオレフィン系合成繊維、(2)ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート・イソフタラート、ポリエーテルポリエステル等のポリエステル系合成繊維、(3)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系合成繊維、(4)複合繊維のうち、芯鞘構造の複合繊維であって芯、鞘部のいずれか又は両者がポリオレフィン系繊維である複合繊維、例えば鞘部がポリエチレン繊維であるポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維、若しくはサイドバイサイド構造を有するポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維等が挙げられる。ここで、ポリオレフィン系合成繊維とは、オレフィンやアルケンをモノマーとして合成された合成繊維を意味するものとする。
【0071】
(繊維の用途)
処理剤が付着している繊維の用途は、短繊維である。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下、好ましくは30mm以上70mm以下である。
【0072】
(処理剤の付着処理)
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、溶媒を含まない処理剤として合成繊維に対し0.1質量%以上2質量%以下となるように付着させることが好ましく、0.3質量%以上1.2質量%以下となるように付着させることがより好ましい。
【0073】
処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えば、第1実施形態の処理剤、及び水を含有する処理剤含有組成物又はさらに溶媒で希釈した希釈液を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。
【0074】
(本実施形態の効果)
上記第2実施形態の不織布の製造方法の効果について説明する。
(2-1)第2実施形態では、上述した成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有する処理剤が付着した繊維を用いて不織布を製造している。そのため、処理剤が付与された繊維の繊維/金属間摩擦を低減できる。また、処理剤が付与された繊維のカード通過性を向上できる。そのため、ニードルパンチ処理により得られる不織布の製造特性及び品質を向上できる。
【0075】
(変形例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0076】
・上記実施形態の不織布の製造方法は特に限定されず、上記以外の摩擦の低減が必要とされるカード機を用いた不織布の製造方法を採用してもよい。
・上述した処理剤又は組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤又は組成物の品質保持のための安定化剤や制電剤、平滑剤、上記以外の界面活性剤、帯電防止剤、多価アルコール等の制電補助剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の通常処理剤に用いられる成分を含有してもよい。なお、溶媒以外の通常処理剤に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から各処理剤中において40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0078】
試験区分1(処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、成分(A)としてグルコン酸ナトリウム(A-1)5部(%)、成分(B)として1-エチル-2-(ヘプタデセニル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのエチル硫酸塩(B-1)10部(%)、成分(C)としてオレイン酸1モルに対し、エチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(C-1)77部(%)、ラウリルアルコール1モルに対し、エチレンオキサイドを7モル付加させた化合物(C-3)5部(%)、その他成分(D)としてエチレングリコール(D-1)3部(%)を秤量して容器に加えた。容器に20℃の水を加えながら撹拌して均一に混合し、合計500部として、実施例1の処理剤の20%水性液(処理剤含有組成物)を調製した。
【0079】
(実施例2~47、比較例1~8)
実施例2~47、比較例1~8の処理剤は、実施例1の処理剤含有組成物と同様にして成分(A)、成分(B)、成分(C)、及びその他成分(D)を表1,2に示した割合で含むように調製した。
【0080】
成分(A)の種類と含有量、成分(B)の種類と含有量、成分(C)の種類と含有量、その他成分(D)の種類と含有量を、表1,2の「成分(A)」欄、「成分(B)」欄、「成分(C)」欄、「その他成分(D)」欄にそれぞれ示す。
【0081】
【0082】
【0083】
表1,2に記載する成分(A)、成分(B)、成分(C)、及びその他成分(D)の詳細は以下のとおりである。
<成分(A):ヒドロキシ酸又はそのアルカリ金属塩>
A-1:グルコン酸ナトリウム
A-2:グルコン酸カリウム
A-3:グルコン酸
A-4:クエン酸ナトリウム
A-5:クエン酸
A-6:乳酸カリウム
A-7:乳酸
a-1:グルコン酸亜鉛
a-2:グルコン酸クロルヘキシジン
<成分(B):第四級アンモニウム化合物(B1)又はイミダゾリン化合物(B2)>
(イミダゾリニウム型第四級アンモニウム(B1a))
B-1:1-エチル-2-(ヘプタデセニル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのエチル硫酸塩
B-2:1-メチル-2-(ヘプタデセニル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのメチル硫酸塩
B-3:1-エチル-2-(ヘプタデシル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのエチル硫酸塩
(ポリオキシアルキレン脂肪族アミン型第四級アンモニウム(B1d))
B-4:N-ステアリル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアンモニウムのエチレンオキサイド3モル付加物のメチル硫酸塩
B-5:N-オレイル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-エチルアンモニウムのエチレンオキサイド3モル/プロピレンオキサイド3モル付加物のエチル硫酸塩
(モノ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1b))
B-6:N-ステアリル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアンモニウムのメチル硫酸塩
B-7:N-オレイル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアンモニウムクロライド
B-8:N-エチル-N,N-ジメチル-3-(ステアロイルアミノ)プロパンアンモニウムのエチル硫酸塩
B-9:N-エチル-N,N-ジメチル-3-(ラウロイルアミノ)プロパンアンモニウムのエチル硫酸塩、
B-10:牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド
(ジ長鎖骨格型第四級アンモニウム(B1c))
B-11:ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド
(イミダゾリン化合物(B2))
B-12:1-(2-ヒドロキシエチル)-2-オレイルイミダゾリン
B-13:1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ステアリルイミダゾリン
<成分(C):ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤>
C-1:オレイン酸1モルに対し、エチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
C-2:炭素数12,13の分岐アルキルアルコール1モルに対し、エチレンオキサイド6モル、プロピレンオキサイド2モルをランダム付加させた化合物
C-3:ラウリルアルコール1モルに対し、エチレンオキサイドを7モル付加させた化合物
C-4:ステアリン酸1モルに対し、エチレンオキサイドを40モル付加させた化合物
C-5:ラウリン酸1モルに対し、エチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
C-6:炭素数8~10の分岐アルキルアルコール1モルに対し、エチレンオキサイド3モル、プロピレンオキサイド4モルをブロック付加させた化合物
C-7:ミリスチン酸1モルに対し、プロピレンオキサイド4モル、エチレンオキサイド3モルをブロック付加させた化合物
C-8:2-エチルヘキサノール1モルに対し、プロピレンオキサイド3モル、エチレンオキサイド12モルをブロック付加させた化合物
C-9:12-ヒドロキシステアリン酸1モルに対し、エチレンオキサイドを8モル付加させた化合物
C-10:オレイルアルコール1モルに対し、エチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
C-11:1,10-デカンジオール1モルに対し、エチレンオキサイドを15モル付加させた化合物
C-12:セバシン酸1モルに対し、エチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
C-13:2-エチルヘキサン酸1モルに対し、エチレンオキサイドを4モル付加させた化合物
C-14:エルカ酸1モルに対し、エチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
C-15:1-ドコサノール1モルに対し、エチレンオキサイドを25モル付加させた化合物
C-16:グリセリン1モルに対し、エチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
C-17:プロピレングリコール1モルに対し、エチレンオキサイド30モル、プロピレンオキサイド30モルをランダム付加させた化合物
C-18:プロピレングリコール1モルに対し、プロピレンオキサイド30モル、エチレンオキサイド30モルをブロック付加させた化合物
C-19:オレイン酸1モルに対し、エチレンオキサイド10モル、プロピレンオキサイド45モルをブロック付加させた化合物
C-20:2-エチルヘキサノール1モルに対し、エチレンオキサイドを2モル付加させた化合物
<その他成分(D)>
D-1:エチレングリコール
D-2:プロピレングリコール
D-3:ジメチルシリコーン(10cst,30℃)
D-4:ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)
D-5:1,3-プロパンジオール
D-6:グルコース
D-7:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン
D-8:オクチルホスフェートカリウム塩
D-9:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩
D-10:ソルビタントリオレアート1モルに対し、エチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
D-11:硬化ヒマシ油1モルに対し、エチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
試験区分2(合成繊維及び不織布の製造)
試験区分1で調製した処理剤含有組成物を用いて、合成繊維及び不織布を製造した。
【0084】
合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維を用いた。この合成繊維は、繊度6.6dtex、長さ64mmの短繊維(ステープル)である。
この合成繊維100gに対して、調製した処理剤の20%水性液をさらに蒸留水で希釈して0.3%希釈液としたものをスプレー法で付着させた。この際、ステープルに対して固形分付着量が0.3%(溶媒を含まない)となるように付着させた。処理剤が付着した合成繊維を、80℃の熱風乾燥機で1時間乾燥することにより短繊維試料を作成した。上記のように得られた各例の処理剤含有組成物を用いてエマルジョン安定性を評価した。また、処理剤が付着した短繊維試料を用いて制電性、カード通過性、及び繊維/金属間摩擦を評価した。また、各成分を均一に混合することにより得られた各例の処理剤を用いて硬水安定性を評価した。
【0085】
尚、処理不織布への処理剤の付着量は、該処理不織布を迅速抽出機を用いてメタノールにより抽出することで算出した。
試験区分3(制電性の評価)
前記の短繊維試料20gを温度25℃、湿度40%の条件下でミニチュアローラーカード機に通してウェブとし、カード機出口のウェブに発生した静電気の電圧を測定して、下記の基準で制電性を評価した。結果を表1,2に示す。
【0086】
・制電性の評価基準
◎(良好):発生静電気の電圧が300V未満
○(可):発生静電気の電圧が300V以上1kV未満
×(不良):発生静電気の電圧が1kV以上
試験区分4(カード通過性の評価)
前記の短繊維試料20gを温度25℃、湿度65%の条件下で24時間調湿した。その後、ミニチュアローラーカード機に通し、投入量に対してカード機からの排出量の割合を算出し、下記の評価基準で評価した。結果を表1,2に示す。
【0087】
・カード通過性の評価基準
◎(良好):排出量が80%以上の場合
○(可):排出量が60%以上80%未満の場合
×(不良):排出量が60%未満の場合
試験区分5(安定性の評価)
調製した各例の処理剤の20%水性液をさらに蒸留水で希釈して5%希釈液を調製した。各希釈液を20℃、60%RHの恒温室内にて24時間温調した。外観を以下の基準により評価した。結果を表1,2に示す。
【0088】
・安定性の評価基準
◎(良好):希釈液に析出物及び分離が見られない場合
○(可):希釈液に析出物又は分離がごく僅かに見られる場合
×(不良):希釈液に析出物又は分離が見られる場合
試験区分6(硬水安定性の評価)
純水1Lに対し、炭酸カルシウム300mgを溶解させ、硬度300の硬水を調製した。これに各例の処理剤を加えて、不揮発分の濃度1%の硬水希釈液を調製した。また、イオン交換水でも同じ濃度の希釈液を調製した。調製後、温度25℃、湿度65%の条件下で6時間放置した後、希釈液の状態について、硬水の場合とイオン交換水の場合とで外観の差の有無を確認し、各々以下の基準で評価した。結果を表1,2に示す。
【0089】
・硬水安定性の評価基準
◎(良好):硬水で調製したものとイオン交換水で調製したもので外観の差がみられない場合
○(可):硬水で調製したものとイオン交換水で調製したもので外観の若干差がみられるが、硬水で調製したものに沈殿が見られない場合
×(不良):硬水で調製したものに沈殿が見られる場合
試験区分7(繊維/金属摩擦(F/M摩擦)の評価)
ニードルパンチ工程における、繊維と金属との摩擦特性を以下の方法により評価した。
【0090】
・F/M摩擦評価用ニードルパンチ不織布の作成
制電性、カード通過性評価用に作成したポリエチレンテレフタレート短繊維を、カード処理し、150g/m2のウェブを形成したのち、45回/cm2のニードルパンチ処理を施し、試験用の不織布を作成した。
【0091】
・F/M摩擦評価
縦30mm×横90mm×高さ45mmで、重さ1kgの矩形板状の重りを用意した。この重りの底面に、両面テープを用いて、底面と同じサイズのニードルパンチ不織布を貼り付けた。表面が梨地加工されたSUS304製のステンレス板を用意し、上記重りを、不織布を貼り付けた底面側が下側となるようにして置いた。最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ型式AGS-X)を用いて、20℃×60%RHの雰囲気下、水平速度100mm/minの条件で重りを引っ張る引張試験を行った。成分(B)を含まない比較例1の処理剤で処理剤された繊維を用いて測定した摩擦力Nと、各実施例の処理剤で処理された繊維を用いて測定した摩擦力Mとの比であるM/N比を求めた。数字が大きいほど、ニードルパンチ工程での通過性が悪いことを意味する。下記の基準でF/M摩擦を評価した。結果を表1,2に示す。
【0092】
・F/M摩擦の評価基準
◎(良好):M/N比が、0.98以下である場合
○(可):M/N比が、0.98より大きく、0.99以下である場合
×(不可):M/N比が、0.99より大きい場合
表1,2の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤は、エマルジョン安定性及び硬水安定性を向上できる。また処理剤が付与された合成繊維は、制電性、及びカード通過性を向上できる。また、処理剤が付与された合成繊維は、F/M摩擦を低減できる。
【要約】
【課題】短繊維用処理剤を含有するエマルジョンの安定性を向上できるとともに、短繊維用処理剤が付与された繊維の摩擦低減性を向上できる短繊維用処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明の短繊維用処理剤は、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有することを特徴とする。成分(A)は、ヒドロキシ酸及びヒドロキシ酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一つである。成分(B)は、第四級アンモニウム化合物(B1)、及びイミダゾリン化合物(B2)から選ばれる少なくとも一つである。成分(C)は、炭素数8以上22以下の1又は2価の脂肪酸に対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を付加させた化合物等である。
【選択図】なし