(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】楽器等の音質ないし品質制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G10G 7/00 20060101AFI20240527BHJP
G10K 15/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G10G7/00
G10K15/00 Z
(21)【出願番号】P 2023539917
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2022041430
(87)【国際公開番号】W WO2023080244
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2021181031
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514139511
【氏名又は名称】エバートロン ホールディングス ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100207066
【氏名又は名称】米山 毅
(72)【発明者】
【氏名】田中 久雄
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/132046(WO,A1)
【文献】特開2020-204567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 7/00
G10K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電極と、
前記電極に対して印加する電圧又は電流の電圧値、電流値、周波数又は位相の少なくとも1つを制御するコントローラと、
を備える
音響機器の品質ないし物質の音質の制御装置であって、
前記電極
が、前記音響機器ないし物質自体に設置され、又は、前記音響機器ないし物質に対向する部材に設置され、
前記音響機器ないし物質が、内部又は表面に液体を有する、木、革、金属、無機材料、有機材料、動植物由来材料又は複合材料のいずれか少なくとも1つを含
み、
前記音響機器ないし物質の態様に応じて、前記電極に対して印加する直流成分及び/又は交流成分を有する電圧ないし電流の電圧値、電流値、周波数又は位相の少なくとも1つを調整し、前記電極から発生させる電場、磁場、電磁場、電磁波、音波又は超音波の中の少なくともいずれか1つを制御することにより、前記電極に対向して配置された前記
音響機器又は物質の内部又は周囲に存在する液体の状態を制御することにより、前記
音響機器の品質ないし物質の音質を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記電極に対して印加する直流成分及び/又は交流成分を有する電圧ないし電流の電圧値、電流値、周波数又は位相の少なくとも1つを、
前記音響機器ないし物質の種類、
前記音響機器ないし物質の状態、
前記音響機器ないし物質周囲の温度、又は、
前記音響機器ないし物質周囲の湿度、
のいずれか少なくとも1つに応じて調整することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記電極に対向して配置された
前記音響機器ないし物質の内部又は表面に存在する液体について、
(1)液体の界面張力を低下させた状態となるように制御すること、
(2)液体が連珠配列となるように結合状態となるように制御すること、
(3)液体粒子を微細化するように制御すること、又は、
(4)液体の分子ないし液体の粒子の配向を制御すること、
のいずれか少なくとも1つの制御を実行することを特徴とする請求項1
又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記液体の界面張力を低下させた状態となるように制御することにおける液体の界面張力には、液体と他の液体との界面張力、液体と気体との界面張力、又は、液体と固体との界面張力の少なくともいずれか1つが含まれることを特徴とする請求項
1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記電極から前記音響機器ないし物質へ向けて発生された電場、磁場、電磁場、電磁波、音波又は超音波が解除された後にも前記音響機器の有する性質を向上する効果が所定期間にわたり持続されることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記電極は、前記
音響機器ないし物質の収納容器に設置されていることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記
音響機器ないし物質が動植物由来材料である場合には前記コントローラが、直流成分又は交流成分の少なくとも一方の成分を有する電圧又は電流の少なくとも一方を前記電極に印加して、前記
音響機器ないし物質の周波数特性、歪率、SN比、ノイズ、ダイナミックレンジ、サスティーン、音の鳴り、アタック音、弦の滑り、音色、音のバランス、質量のバランス、スピード、フロー、マニューバー、水との抵抗、機械抵抗、摩擦抵抗、燃費、耐久性、射程距離、精度、方向安定性、打撃効率、衝撃の伝達特性、球に加える力や回転、打球の方向性、打球速度、飛距離、打撃感、投てき距離、機械抵抗、雪面接触性、剛性、強度、振動特性、柔軟性、硬度、クッション性、肌触り、審美性、糖度、酸度、硬度、AGEsスコア、糖濃度、細胞濃度味、香り、食感、鮮度、熟成度、腐敗防止、ぬめり防止、濁り防止、カビ防止、錆防止、防藻、又は、ひび割れ防止の中のいずれか少なくとも1つの音質ないし品質を所定の状態に制御することを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記電圧又は電流の少なくとも一方は、連続的又はステップ状に増加ないし減少するか、あるいは、所定の値となるように制御されることを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記コントローラが、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、携帯端末、又は、PCの少なくともいずれかに接続されることを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記コントローラが、管理サーバと通信可能に接続され、
前記管理サーバが、前記コントローラのプログラムの更新ないしメンテナンス、前記コントローラの使用状況の監視ないし見守り、前記コントローラの位置情報ないし環境情報の収集ないし分析、前記コントローラからの改善要求情報の収集ないし分析、前記コントローラのメンテナンス、前記コントローラからの制御情報及び/又はデータベースからの情報の収集、前記コントローラ用の学習モデル情報の生成及び提供、前記学習モデル情報に基づく制御情報の提供、又は、前記コントローラの制御パラメータの提供の少なくともいずれか1つを行うことを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
少なくとも1つの電極と、
前記電極に対して印加する電圧又は電流の電圧値、電流値、周波数又は位相の少なくとも1つを制御するコントローラと、
を用いる
音響機器の品質ないし物質の音質の制御方法であって、
前記電極
が、前記音響機器ないし物質自体に設置され、又は、前記音響機器ないし物質に対向する部材に設置され、
前記
音響機器ないし物質が、内部又は表面に液体を有する、木、革、金属、無機材料、有機材料、動植物由来材料又は複合材料のいずれか少なくとも1つを含
み、
前記音響機器ないし物質の態様に応じて、前記電極に対して印加する直流成分及び/又は交流成分を有する電圧ないし電流の電圧値、電流値、周波数又は位相の少なくとも1つを調整し、前記電極から発生させる電場、磁場、電磁場、電磁波、音波又は超音波の中の少なくともいずれか1つを制御することにより、前記電極に対向して配置された前記
音響機器ないし物質の内部又は周囲に存在する液体の状態を制御することにより、前記
音響機器の品質ないし物質の音質を制御することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
前記電極に対して印加する直流成分及び/又は交流成分を有する電圧ないし電流の電圧値、電流値、周波数又は位相の少なくとも1つを、
前記音響機器ないし物質の種類、
前記音響機器ないし物質の状態、
前記音響機器ないし物質周囲の温度、又は、
前記音響機器ないし物質周囲の湿度、
のいずれか少なくとも1つに応じて調整することを特徴とする請求項11に記載の制御方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の
音質制御方法をコンピュータにより実行することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器等の音質ないし品質制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
楽器の音質を向上する試みとして、特許文献1には、響板を木製、フレームを金属製とすることにより、異なる音色の音を重ね合わせて、自然で豊かな音響を発生させるピアノの技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、エレキギターのダブルコイルピックアップにおけるノイズ処理のための構造が開示されている。
【0004】
また、物質の品質に関して、特許文献3には、電磁波による液体の影響を検討する試みが報告されている。
【0005】
また、特許文献4には、ゴルフクラブに関して、フェース面の上側領域及び下側領域にそれぞれ水平仮想線に対して特定の角度を有するスコアラインを配置することにより、下側領域のスコアラインについてはボールに食い付き易くしてスピン量の増大効果を高める一方で、上側領域のスコアラインについては水分等の排除を容易にしてスピン量を維持しようとする効果を高めることが開示されている。
【0006】
また、特許文献5には、テニスのガットに吸湿率が0.6%の全芳香族ポリエステルを用いて、吸湿による反発力の低下や耐摩耗性を改善し、さらにガットのゆるみを小さくするクリープ性能を保持することが開示されている。
【0007】
また、非特許文献1には、木材の音波伝ぱ特性の含有水分依存性について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-142409
【文献】特開2005-208659
【文献】WО2019/132046
【文献】特開2002-291949
【文献】実開昭64-042069号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】小玉 泰義、木材の音波伝ぱ特性の含有水分依存性、材料(J.Soc.Mat.Sci.,Japan)、Vol.41,No.461,P144-147,1992年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1にはピアノの材質によってピアノの音色を調整することが記載されているが、音色調整のためにはピアノの構造を大きく変更する必要が生じてしまい、既存のピアノへの応用が困難である。
【0011】
上記特許文献2にはノイズ処理のための構造を変更することにより、エレキギターの音質を調整することが記載されているが、音質調整のためにはダブルコイルピックアップの構造を変更するという大幅な改修が必要となるという問題がある。
【0012】
上記特許文献3には電磁波によって食品中の水分の状態に影響を及ぼすことは記載されているが、例えば食品の糖度や酸度等の品質を制御することまでは開示されていない。
【0013】
上記特許文献4には、ゴルフクラブのスコアラインの形状を改善することによりスピン量を調整することが記載されているが、スピン量はゴルフクラブ使用時の湿度や水分量なに依存するため、スコアラインの形状等のゴルフクラブの構造を変更せずにスピン量や飛距離等の品質を制御することまでは記載されていない。
【0014】
上記特許文献5には、テニスのガットに吸湿率が0.6%の全芳香族ポリエステルを用いることにより、吸湿による反発力の低下や耐摩耗性を改善することが記載されているが、ガットやテニスラケットの構造を変更することなく、ガットの反発力、耐摩耗性、クリープ性能等の品質についての対策までは記載されていない。
【0015】
上記非特許文献1には、木材の音波伝ぱ特性について記載されているが、木材の音質ないし品質制御の観点までは明示されていない。
【0016】
本発明の目的は、内部又は表面に液体を有する物質に対して、電極から発生させた電場、磁場、電磁場、又は、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させることにより、前記物質の音質ないし品質を自在に制御する音質ないし品質制御装置、音質ないし品質制御方法又は音質ないし品質制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の各実施態様の目的は、以下の構成によって達成できる。すなわち、本発明の一つの態様の制御装置は、少なくとも1つの電極と、前記電極に対して印加する電圧又は電流の電圧値、電流値、周波数又は位相の少なくとも1つを制御するコントローラと、を備える音響機器の品質ないし物質の音質の制御装置であって、前記電極が、前記音響機器ないし物質自体に設置され、又は、前記音響機器ないし物質に対向する部材に設置され、前記音響機器ないし物質が、内部又は表面に液体を有する、木、革、金属、無機材料、有機材料、動植物由来材料又は複合材料のいずれか少なくとも1つを含み、前記音響機器ないし物質の態様に応じて、前記電極に対して印加する直流成分及び/又は交流成分を有する電圧ないし電流の電圧値、電流値、周波数又は位相の少なくとも1つを調整し、前記電極から発生させる電場、磁場、電磁場、電磁波、音波又は超音波の中の少なくともいずれか1つを制御することにより、前記電極に対向して配置された前記音響機器又は物質の内部又は周囲に存在する液体の状態を制御することにより、前記音響機器の品質ないし物質の音質を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施態様によれば、例えば、木、革等を含む物質に対して、電極から発生させた電場、磁場、電磁場、又は、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させることにより、前記物質の品質を自在に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】水分子の模式図であり、
図2Aは自由に活動している状態の水分子であり、
図2Bは連珠配列のときの水分子である。
【
図3】自由水の顕微鏡写真であり、
図3Aは電場を印加する前の自由水の状態を示し、
図3Bは電場を印加した際の自由水の状態を示す。
【
図4】水粒子の電位のシミュレーション結果であり、
図4Aはシミュレーションモデルの説明図であり、
図4Bは電位シミュレーションの結果である。
【
図5】印加電圧の周波数と電圧値(0~75V)を変化させた際の食用油と水の界面張力のグラフである。
【
図6】電極への印加電圧の周波数と電圧値(0~150V)を変化させた際の食用油と水の界面張力のグラフである。
【
図8】油中での水滴周囲の微粒子についての写真である。
【
図9】実施形態1の変形例1に係る電極の概念図である。
【
図10】実施形態1の変形例1の異なる電極の概念図であり、
図10Aは1つの電極を用いる例であり、
図10Bは1つの電極と当該電極に対向する2つの電極を用いる例である。
【
図11】実施形態1の変形例2に係る異なる周波数の電圧を用いた場合の波形図である。
【
図12】実施形態1の変形例2の係る異なる位相の電圧を用いた場合の波形図である。
【
図13】実施形態1の変形例3に係る水分制御装置のブロック図である。
【
図14】実施形態1の変形例4に係る電圧値、電流値及び周波数のスイープを説明するグラフである。
【
図15】ギター又はギターケースに適用した説明図である。
【
図16】アコースティックギターの官能試験結果である。
【
図17】エレキギターをアンプにつないだ音色についての官能試験結果である。
【
図22】実施形態3の品質制御装置によるイチゴの品質制御処理についての説明図である。
【
図23】実施形態4の品質制御装置によるタバコの葉の品質制御処理についての説明図である。
【
図24A】実施形態4の品質制御装置における糖濃度と細胞濃度の制御データの説明図である。
【
図24B】実施形態4の品質制御装置における暴露時間毎の成長の促進及び抑制の制御データの説明図である。
【
図24C】実施形態4の品質制御装置における培養期間に対する成長の促進及び抑制の制御データの説明図である。
【
図24D】実施形態4の品質制御装置における比消費速度の制御データの説明図である。
【
図24E】実施形態4の品質制御装置におけるばらつき抑制の制御データの説明図である。
【
図25】実施形態7に係る食品解凍装置の斜視図である。
【
図26】実施形態7に係る食品解凍装置の比較結果の説明図である。
【
図27】実施形態7に係る食品解凍装置で解凍したマグロの比較写真である。
【
図29】実施形態8に係るワゴンの効果比較図である。
【
図30】実施形態9に係るさくらの花の保存の説明図である。
【
図31】実施形態10に係るしその栽培実験の説明図である。
【
図32】実施形態11に係る錆防止の実験の説明図である。
【
図33】実施形態12に係る電極を既存の冷蔵庫に設置した例である。
【
図34】実施形態12に係る電極を既存のコンテナに設置した例である。
【
図35】実施形態12に係る電極を既存のフライヤーに設置した例である。
【
図37】電極の配置に関するさらなる別実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る楽器等の音質ないし品質制御装置、制御方法及びプログラムについて説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための楽器等の音質ないし品質制御装置、制御方法及びプログラムを例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。なお、各実施形態では物質の内部又は表面に含まれる液体としては、自由水等の「水分」を例に挙げて説明しているが、本発明では物質の内部又は表面に含まれる液体としては、水に限定されるものではなく、例えば水溶液、エマルション、油、電解液、有機溶剤、イオン流体、粘性流体、非粘性流体、圧縮性流体、非圧縮性流体等のあらゆる液体に広く適用可能である。また、各実施形態において「水分」という表現を用いることがあるが、これは液体を水だけに限定することを意図したものでは無く、あらゆる液体に広く適用可能である。
【0021】
[実施形態1]
図1~
図19を参照して、実施態様1に係る制御装置、制御方法、プログラム、記憶媒体について説明する。
【0022】
図1は品質制御装置1の概念図である。品質制御装置1は、コントローラ10と、一対の電極13、14とを、備えている。コントローラ10は、電流電圧制御部33、制御部36、通信部35及び記憶部37を備えている。電極13、14には、電流電圧制御部33により制御される電流電圧印加部11から、直流電圧または交流電圧の少なくともいずれか一方が供給される。電極13、14に印加された電流及び/又は電圧は、検出部38により検出され、制御部36にフィードバックされる。また、電極13、14の間の空間に配置されている物質の種類や大きさを検出する物質検出部32(例えばカメラ等)が設けられている。なお、コントローラ10の実際の回路構成においては、電流電圧印加部11及び検出部38をコントローラ10と一体に設けるようにしてもよい。また、例えば、コントローラ10、電流電圧印加部11を一体として、1つの筐体内に収容することも可能である。
【0023】
検出部38は、電極13、14に設けることにより発生される電磁波の状態を検出するようにすることもできる。この場合、電磁波の状態を検出する検出部38は電極13、14に一体として設けるようにしてもよい。検出部38用のケーブルは、電極13、14のケーブルと一体化することも可能であり、この場合、ケーブルの取り回しがし易くなる。また、電磁場の発生状況の検出手段を電極13、14で兼ねるようにしてもよい。また、検出部38は、電流及び/又は電圧検出手段を備えるが、この場合、電流電圧印加部11において電流及び/又は電圧を検出することも可能であるので、検出部38の電流及び/又は電圧検出手段は、電流電圧印加部11に一体化することが可能であり、さらに、コントローラ等の筐体に一体に組み込むことも可能である。また、検出部38の電流及び/又は電圧検出手段によって、検出されたデータには、電磁波発生に伴う数値が重畳されていることになるため、当該検出データから電極13、14において発生した電磁波を検出することも可能である。
【0024】
物質検出部32はコントローラに一体化させることもできるが、カメラ等の付加による大型化を防ぐため、またカメラ等の配置の都合から、物質検出部32をコントローラ10と別体に構成することもできる。
図1では、電極13、14が一対設けられている例を説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、後述のように電極は1個以上であれば、その個数は問わず、また、その形状も様々なものを採用できる。例えば、電極13、14が1個の場合には、その電極に対向するように物質を配置すればよい。物質検出部32によって電極13、14に対向して配置された物質の種類、状態、大きさ等が検出されると、この物質の検出に応じて制御部36は制御指令値が演算される。この制御指令値に応じて、電流電圧制御部33が電流電圧印加部11を制御することにより電極13、14に印加される電流及び電圧が制御され、電極に対向して配置された物質に対して、電場、磁場、電磁場又は電磁波の中の少なくともいずれか1つが印加される(以下、単に「電磁場が印加される」、「電磁波が照射される」「電界が印加される」等という表現を用いることがあるが、これらの表現は電磁場や電磁波や電界の限定を意図したものではなく、電場、磁場、電磁場又は電磁波を包含するものである)。この時、物質に対して印加される電磁場は、制御部36において検出部38からの検出値に基づくフィードバック制御により演算された制御指令に応じて所望の状態に制御されている。
【0025】
通信部35は管理サーバ40、データベース43、他のPC31a~31n、及び、他の品質制御装置1a~1nと通信することにより、制御パラメータや制御値を管理サーバ40から受信する。記憶部37にはプログラムが記憶されており、CPU等を備える制御部36は記憶部37に記憶されているプログラムにより動作し、管理サーバ40から受信した制御パラメータや制御値に基づいて、コントローラ10に内蔵された電流電圧制御部33を介して電流電圧印加部11を制御することにより、電極13、14に印加する電流及び/又は電圧を制御する。このプログラムは、通信部35を介して管理サーバ40から書き換え可能である。なお、プログラムをフラッシュメモリ等のリムーバブルメモリに記憶させておき、リムーバブルメモリを用いてコントローラ10のプログラムを書き換えることも可能である。また、通信部35に接続されているマンマシンインターフェイス31によって、プログラムの設定や書き換えを行うことも可能である。
【0026】
管理サーバ40は、コントローラ10のプログラムの更新ないしメンテナンス、コントローラ10の使用状況の監視ないし見守り、コントローラ10の位置情報ないし環境情報の収集ないし分析、コントローラ10からの改善要求情報の収集ないし分析、コントローラ10のメンテナンス、コントローラ10からの制御情報及び/又はデータベース43からの情報の収集、コントローラ10のための学習モデル情報の生成及び提供、学習モデル情報に基づく制御情報の提供、又は、コントローラ10の制御パラメータの提供等の機能を有している。
【0027】
コントローラ10の使用状況の監視ないし見守りについて、管理サーバ40はコントローラ10における制御情報を常に収集することができるため、管理サーバ40は、コントローラ10の使用状況を常時把握し、監視ないし美見守りを行う機能を有する。ここで、見守りの機能には、コントローラ10に対応する品質制御装置1を利用しているユーザが、どのような時間帯に、どの程度、どのように該品質制御装置1を使用しているかを分析することにより、ユーザの状態を把握することが含まれる。例えば、ある飲食店で品質制御装置が利用される場合には、その飲食店の営業状況、来客状況、調理状況、仕込み状況等を管理サーバ40において把握することができる。また、例えば個人のユーザである場合には、品質制御装置の使用状況から、そのユーザである個人の生活状況、安否状況等を管理サーバ40において把握できる。このため、管理サーバ40において、品質制御装置1が異常であると判断した場合には、対応するユーザに報知すると共に、登録された連絡先、警察や消防等の緊急連絡先に、異常を報知することも可能である。
【0028】
コントローラ10の位置情報ないし環境情報の収集ないし分析について、管理サーバ40は、コントローラ10から品質制御装置1が配置されている位置情報、気候情報、地域情報等を収集し、品質管理装置1が使用されている位置情報ないし環境状況を把握することができるので、例えば、管理サーバ40からコントローラ10に対して、使用環境に応じた制御情報等を送信すること等ができる。
【0029】
コントローラ10からの改善要求情報の収集ないし分析について、管理サーバ40は、コントローラ10に対してPC31から入力された改善要求情報をコントローラから収集し、または、該コントローラ10と通信するPC31から入力された改善要求情報を直接PC31から収集することができる。改善要求情報には、品質制御装置1のユーザからの改善希望や、制御結果に対する評価や、要望事項等の情報が含まれている。これらの改善要求情報は管理サーバ40において分析され、各品質制御装置1の制御パラメータの設定に用いられる。
【0030】
コントローラ10のメンテナンスについて、管理サーバ40は、コントローラ10の運転状況、プログラムの状況、装置制御パラメータの状況、記憶部37に記憶されている情報、機器の状況、品質制御装置の環境状況等の情報を収集・監視し、コントローラ10のプログラム、制御パラメータ、検出情報、制御結果情報、各種設定パラメータ、記憶部の記憶内容についてのメンテナンスを行うことができる。メンテナンスの内容としては、特に限定されるものではないが、プログラムの設定ないし更新、制御パラメータや設定パラメータの設定ないし更新、後述の学習モデルの設定ないし更新等が含まれる。コントローラ10からの収集された各種運転状況の情報、制御情報等、及び/又は、データベース43からの情報の収集は、後述のように管理サーバ40における深層学習に用いられる。また、深層学習により訓練された学習モデル情報及び/又は該学習モデルによって算出された制御パラメータ等が、各品質制御装置1のコントローラ10に提供される。
【0031】
また、コントローラ10には電極間に配置される物質の種類及び/又は状態を検出するための物質検出部32が接続されており、コントローラ10は、物質の種類及び/又は状態を把握することにより、物質の種類、状態、大きさ等に応じて適切な出力電圧及び/又は出力電流となるように内蔵された電流電圧印加部11を制御する。なお、電流電圧印加部11は、後述のように直流-直流変換、直流-交流変換、交流-直流変換、及び、交流-交流変換の少なくとも一つの機能を有している。例えば、電流電圧印加部11は、VVVF(VARIABLE VOLTAGE VARIABLE FREQUENCY)インバータとすることができる。また、電流電圧印加部11は、交流電圧・電流に直流電圧・電流を重畳した電圧・電流を電極13、14に印加することができる。
【0032】
また、マンマシンインターフェイス31がコントローラ10と通信を行うことにより、ユーザは、マンマシンインターフェイス31からの入力によって、コントローラの設定、操作を行うことができる。マンマシンインターフェイス31としては、例えばディスプレイ、タッチパネル、キーボード及びマウス等が含まれる。なお、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、携帯端末、又は、ノート型パソコン等のパーソナルコンピュータ(以下マンマシンインターフェイス31を、単に「PC」ということもある。)等によりコントローラ10を操作する場合には、スマートフォン等がマンマシンインターフェイス31及び通信部35等の機能を兼ねることが可能である。
【0033】
PC31はコントローラ10と通信することにより、制御パラメータの設定、制御プログラムの更新等を行うことができると共に、コントローラ10の稼働状況、制御状況等をPC31で監視することができる。また、PC31とコントローラ10とを通信ネットワークを介して接続すれば、PC31は遠隔地からコントローラ10の設定、操作、監視等を行うことができる。
【0034】
また、品質制御装置1は外部電源(図示省略)に接続されている。外部電源としては、交流電源とすることも、直流電源とすることもでき、また直流電源としては、一次電池及び二次電池等を含む電池とすることもできる。品質制御装置1が移動、搬送又は携帯が可能な場合には、外部電源39を電池とすると電源を確保する上で便利である。
【0035】
また、コントローラ10は後述の検出器38からの検出信号に基づいて電極に印加される電流値、電圧値、周波数又は位相の少なくとも1つをフィードバック制御する。
【0036】
電極13、14の間には、処理対象とする物質が配置されるようにする。処理対象とする物質としては、個体、液体及び気体の少なくとも1つものであれば、特に限定されるものではなく、後述のとおり多様な物質を対象とすることができる。
【0037】
コントローラ10は、通信部35を介して、あるいは、PC31を介して、通信ネットワーク45に接続されており、この通信ネットワーク45は管理サーバ40、データベース43、品質制御装置1a~1n、PC31a~31nに接続されている。管理サーバ40は、コントロータ10から、物質検出部32及び/又は検出部38の検出データを含む制御情報を通信部35又はPC31を介して、収集することができる。管理サーバ40では、データベース43のデータ、各品質制御装置1、1a~1nからの情報、各PC31、31a~31nからの情報に基づき、例えば深層学習等の機械学習により、コントローラの制御パラメータを求めるための学習モデルを演算する。管理サーバ40は訓練済みの学習モデルや、学習済みモデルにより求められた演算パラメータを各品質制御装置1、1a~1nのコントローラ10に送信する。コントローラ10は、制御部36において学習モデルを用いて物質検出部32及び/又は検出部38からの検出データに基づいて電極13、14に対向して配置された物質に適応するパラメータを演算し、あるいは、制御部36において管理サーバ40から送信された適応するパラメータを用いて、電流電圧印加部11から電極13、14に印加する電流及び/又は電圧を電流電圧制御部33によって制御するための演算を行う。記憶部37には、制御プログラムが記憶されている。コントローラ10は、制御プログラムに基づいて制御される。この制御プログラムは、管理サーバ40から書き換え可能であるため、適時プログラムを更新し、バージョンアップすることが可能である。また、PC31から制御プログラムの設定、変更、更新も可能である。さらに、PC31によってコントローラ10の各種制御パラメータを設定・変更することも可能である。ここでは、コントローラ10が制御プログラムにより制御されるものとして説明したが、本実施形態はこれに限定するものではない。例えば、マイクロコンピュータを備えていないコントローラ10により物質に応じた電磁場を物質に印加することにより品質制御を行うこともできる。また、コントローラ10による制御はフィードバック制御に限定されるのではなく、例えば一定出力を得られるようなオープンループ制御であってもよい。また、設定値を手動で入力、設定、切り替えするようなコントローラ10を用いることもできる。
【0038】
[電極について]
図1では一対の電極13,14として板状電極が例示されているが、電極13,14の態様は板状に限定されるものではなく、箔状、膜状又は層状とすることもでき、さらに、棒状、球状、半球状、円柱状、半円柱状、円錐状、半円錐状、略L字状、略コ字状、多角形状、多角柱状、多角錐状、曲面状、又は、屈曲状等、多様な形状を採用可能である(後述の
図33~
図41等を参照)。また、電極13,14が箔状及び膜状の場合には、電極の厚みを非常に薄くできるため、電極の設置スペースを小さくすることができると共に、形状を自由に設定することができ、軽量化することもでき、さらに、電極の設置が容易である。層状の場合には、例えば所定の基体に対して重ねるように薄膜状の電極を設けられているもの等も含まれる。
【0039】
電極13,14の形状は、平板状に限られるものではなく、どのような形状であってもかまわない。箔状の電極13,14を用いる場合には、設置場所の形状に沿って、電極を任意の形状に成形することができるので、例えば電極を曲面状とすることも可能である。
【0040】
電極13,14には複数の貫通孔を設けることもできる。電極に複数の貫通孔を設けると電極から電磁波を発生させる際の特性を改善することが可能であると共に、通気性を有し、さらに、電極を通して視認性を確保することもできる。孔の形状は、円形、楕円形、多角形、スリット状、線分状、これらの組み合わせ等、多様なものを採用でき、例えば6角形の孔を設けることもできる。
【0041】
電極13、14の材質は、導電性を有する材質であれば特に限定されるものではないが、例えば銅、鉄、ステンレス、アルミニウム、チタン、金、銀、プラチナ等の導電性金属等、これらの金属の合金等、あるいは、導電性酸化物、導電性ガラス等の導電性材料等が採用される。また、電極13,14の表面を絶縁材により被覆することもできる。なお、例えば電極をフライヤーに配置する場合には、フライヤーの内面と電極との間は絶縁される。また、例えばコンテナの内面に電極を配置する場合には、コンテナの内面と電極との間には絶縁を施すことが望ましい。一対の電極13,14の一方と他方を別の材質とすることも可能である。例えば電極13の材質をステンレスとし、電極14の材質をチタンとすることができ、この他、ステンレスとアルミニウム、ステンレスと銅との組み合わせ等も可能である。電極13,14の材質を変更することによって、その電極から発生させる電磁波の特性を調整することが可能である。この場合、電極13と電極14との材質を取り換えることによっても、電磁波の特性を調整することが可能である。後述のとおり、電極の数は、一対に限らず、1枚の場合、3枚以上の場合、二対以上の場合等、適宜設定することが可能であり、この場合にも、各電極の材質を適宜選択することにより、その電極から発生させる電磁波の特性を調整することが可能である。例えば、二対の電極を用いる場合に、一対の電極の材質をステンレスとし、もう一対の電極の材質を銅にすることによって、これら電極から発生させる電磁波の特性を調整することが可能である。電極13,14は、電場、磁場、電磁場、電磁波、音波及び超音波の中の少なくとも1つを発生するものであるが、音波又は超音波のみを発生させる場合には、電極13,14の材質は導電性材料に限られるものではなく、例えば樹脂等の導電性のない材料を用いることができる。
【0042】
品質制御装置1を設置するために専用の筐体を設けることもできるが、これに限定されるものではなく、例えば既存の筐体に設置することも可能である。品質制御装置1を設置できる既存の筐体としては、冷蔵庫、冷凍庫、冷蔵倉庫、冷凍倉庫、貯蔵庫、倉庫、冷蔵車、冷凍車、クーラーボックス、搬送用コンテナ、保管用コンテナ、ショーケース、棚、引き出し、フライヤー、栽培容器(水耕栽培用等)、燃料タンク、パソコン、携帯電話、椅子ベッド、家具、寝具、家電機器、工場内の各種製造機器、加工機器、医療機器、健康機器、美容機器、調理機器、研磨機器、乗り物、半導体の洗浄機器、製錬工程、焼き付け工程、乾燥工程で冷却時に出る水蒸気の制御機器等多様な筐体を選択することができる。
【0043】
冷蔵庫の場合には、一対の電極13,14を例えば冷蔵庫内の天井面と底面に沿って、対向する側壁面に沿って、天井面や棚板や底面に沿って、天井面や底面と側面とに沿って、又は、扉側内面と奥側側面とに沿って配置することができる。フライヤーの場合には、例えば油容器の内側の両側面に沿って配置される。すなわち、一対の電極13,14が対向するように配置されていれば、どのように配置しても構わない。また、一対の電極が平行になるように配置する必要なく、例えば両電極が垂直となる位置関係とすることも可能であり、両電極の間に処理対象となる物質を配置できる空間を設けることができれば両電極はどのような配置としても構わない。電極の個数、配置、形状は、特に特定されるものではなく、その個数は一対に限定されるものではく、1枚でも、3枚以でも、2対以上でもよく、例えば後述の
図9、10、23~30等を参照されたい。
【0044】
品質制御装置1を設置する対象としては、筐体である必要はなく、一対の電極13,14が配置できる場所であれば、どのような場所にでも配置することができる。例えば、棚や壁等、一対の電極13,14が対向して配置できれば、どのような場所であっても設置可能であり、また、電極13,14を固定するために例えば衝立状の部材を用いることも可能である。例えばまな板として構成することもできる。また、例えば電極の個数は一対に限定されるものではく、1枚でも、3枚以でも、2対以上でもよく、例えば後述の
図9、10、23~30等を参照されたい。
【0045】
[電極に印加される電圧について]
コントローラ10から一対の電極13,14には、直流成分電圧又は交流成分電圧の少なくともいずれか一方が印加される。直流成分電圧は特に限定されるものではないが、コントローラ10の出力電圧、電極の電位、あるいは、電極間電圧が、例えば0Vから5000Vの間で調整可能であり、例えば0Vから2000Vの間で調整可能であり、例えば0V~500Vの間で調整することも可能であり、例えば0V~200Vの間で調整することも可能であり、例えば0V~100Vの間で調整することも可能であり、また、例えば5V~20Vの間で調整することも可能であり、さらに、例えば10V~15Vの間で調整することも可能である。対象に応じて、低い電圧で使用する場合も、高い電圧で使用する場合もあり、低い電圧では、例えば1.5V~50V程度の電圧を使用する場合もある。また、極性は正とすることも負とすることもできる。すなわち、例えば0V~200Vの間で調整する場合、正負両極性を考慮した場合には、-200V~+200Vの間で調整することができる。したがって、正負両極性を考慮した場合には、例えば-5000V~+5000Vの間で調整可能であり、例えば-2000Vから2000Vの間で調整可能であり、例えば-500V+500Vの間で調整することも可能であり、例えば-200V~+200Vの間で調整することも可能である。電源電圧については、直流電源を用いるようにしてもよいし、交流電源を用いるようにしてもよい。直流電源を用いるようにした場合には、電源として例えば電池を用いることができるため、可搬性に優れる。また、交流電源を用いるようにした場合には、例えば商用電源を用いることができるため、容易に電源を確保することができる。電源電圧については、例えば交流100V~400Vとすることができる、例えば直流5V~20Vとすることができ、また、例えば直流10V~15Vとすることができる。また、空間電場で表現した場合には、例えば-2000V/cm~+2000V/cmの間で調整可能であり、また、例えば-500V/cm~+500V/cmの間で調整することも、-200V/cm~+200V/cmの間で調整することも可能である。
【0046】
一対の電極13,14には、少なくとも直流成分電圧を印加し、例えば交流成分電圧を0Vとし、直流成分電圧のみを印加することも可能である。
【0047】
直流成分電圧の向きは、プラス(+)とすることも、マイナス(-)とすることもできる。本実施形態では、電極14の電位が電極13(アース電位)の電位よりも高くなるときの直流成分電圧の向きをプラスとし、逆に、電極14の電位が電極13の電位よりも低くなるときの直流電圧の向きをマイナスとする。直流成分電圧がプラスの場合でも、マイナスの場合でも、物質の性質を向上する効果を奏する。
【0048】
また、一対の電極13,14には、直流成分電圧に加えて、交流成分電圧を印加することができる。また、直流成分電圧を0Vとして、交流成分電圧のみを印加することもできる。交流成分電圧の周波数は特に限定されるものではないが、例えば0~1MHzの間で調整可能であり、例えば0Hz~500kHzの間で調整可能であり、例えば0Hz~200kHzの間で調整可能であり、また、例えば0Hz~100kHzの間で調整可能である。なお、交流成分0Hzの時には、実質的に直流電圧となる。対象に応じて、低い周波数帯で使用する場合も、高い周波数帯で使用する場合もある。低い周波数帯では、例えば1Hz~50Hz程度の周波数帯を使用する場合もある。
【0049】
また、交流成分電圧の電圧は特に限定されるものではないが、1cm当たりの空間電場がピーク間において、例えば0~2000Vpp/cmの間で調整可能であり、また、0~500Vpp/cmの間で調整することも可能であり、また、例えば0~200Vpp/cmの間で調整することも可能である。電圧の単位とした場合には、コントローラ10の出力電圧、電極の電位、あるいは、電極間電圧を、例えば電極に対して、0~5000Vppの間で調整することが可能であり、例えば0~2000Vppの間で調整することが可能であり、例えば0~500Vppの間で調整することも可能であり、さらに、例えば50~250Vppの間で調整することも可能である。また、例えば上記電極に対する印加電圧は例えば0~5000Vppの間で電圧を供給することが可能であり、例えば0~2000Vppの間で調整することも可能であり、例えば0~500Vppの間で調整することも可能であり、さらに、例えば50V~250Vppの間で調整することも可能である。対象に応じて、低い電圧で使用する場合も、高い電圧で使用する場合もあり、低い電圧では、例えば1.5Vpp~50Vpp程度の電圧を使用する場合もある。
【0050】
なお、直流成分電圧を印加すると物質の性質を向上する効果が高まる場合もあるが、交流成分電圧のみを印加した場合でも効果は得られ、この場合、直流成分電圧は0Vとされる。以下、交流電圧成分について、原則、電圧値のピークトゥーピークを表す場合には単位として[Vpp]を用い、電圧の実効値をあらわすためには[V]を用いる。
【0051】
上述のとおり、外部電源の電圧は直流電圧であっても、交流電圧であっても外部電源としては、交流電源とすることも、直流電源とすることもできる。交流電源としては、例えば商用電源を利用可能である。また直流電源としては、例えば一次電池及び二次電池等を含む電池とすることができ、例えば12Vバッテリーや乾電池等、様々な電池を利用可能である。
【0052】
コントローラ10において直流成分電圧の電圧値を調整するためには、直流電源をDC-DCコンバータによって電圧を制御する方法、交流電源をAC-DCコンバータにより整流する際に、または、整流後に、DC-DCコンバータによって電圧を制御する方法等がある。また、コントローラ10において交流成分電圧の電圧値及び周波数を調整するためには、直流電源をDC-ACコンバータ(インバータ)によって制御する方法、交流電源をAC-DCコンバータにより整流した後にDC-ACコンバータ(インバータ)によって制御する方法、交流電源をAC-ACコンバータにより制御する方法等がある。
【0053】
なお、直流成分電圧の目標電圧値が直流電源の電源電圧と等しい場合には、直流成分電圧として直流電源の電源電圧をそのまま用いることも可能である。同様に、交流成分電圧の目標電圧及び目標周波数が交流電源の電源電圧と等しい場合には、交流成分電圧として交流電源の電源電圧をそのまま用いることも可能である。
【0054】
そして、直流成分電圧と交流成分電圧とが加算されて、すなわち、交流成分電圧に対してオフセット電圧として、直流成分電圧が加算されて、この加算された電圧が、一対の電極13,14間に印加される。また、例えばDC-ACコンバータでの電力変換において交流成分電圧を制御する際に、直流成分電圧を併せて制御することも可能である。
【0055】
電極に印加する電圧の交流成分としては、正弦波状電圧が挙げられるが、本実施形態の交流電圧成分は正弦波状に限定されるものではく、例えば矩形波状、PWM波形等、あらゆる波形のものを含む。なお、正弦波及び矩形波とは、厳密な意味の正弦波や矩形波だけを意味するのではなく、ノイズ、歪み等を考慮した上での波形を意味している。また、電極に印加する電圧の直流成分としては、一定電圧だけを意味するものではなく、時間と共に変化する直流成分電圧を用いることも可能である。
【0056】
コントローラ10における電圧を制御手段としては、アナログ式の回路、デジタル式の回路、及び、アナログ回路とデジタル回路とを組み合わせた回路のいずれでも構わない。例えば、正弦波状の電圧をアナログ回路で発生させることもできるし、また、PWM波形により等価的な正弦波を発生させることもできる。また、例えば、矩形波状の電圧を発生する回路としては、デジタル式の回路を用いることもできるが、アナログ式の回路を用いることもできる。
【0057】
また、コントローラ10は電極13、14に印加する電圧ないし電流を次のように制御する。
(1)物質の界面張力を低下させる電圧ないし電流であること、
(2)飲食物、液体の腐食を防止する電圧ないし電流であること、
(3)生花保存、飲料水保存、水耕栽培の育成促進ないし環境良化、発芽率向上、孵化率向上、アクアリウムの防汚ないし浄化、水質良化、氷砂糖成長促進、燃料改質、又は、燃費向上のいずれか少なくとも1つに資する電圧ないし電流であること、
(4)血液ないし血液成分の保存、糖尿病改善、慢性腎臓病改善、人工透析の改善、血流改善、血管再生、末梢神経障害改善、関節症ないしリウマチ改善、臓器保存、抗腫瘍効果、虚血改善、リンパ浮腫改善、褥瘡改善、壊死予防ないし改善、循環器系疾患改善、又は、感染症対策のいずれか少なくとも1つに資する電圧ないし電流であること、
(5)蓄電器の充電ないし放電、発電機、又は、送電設備のいずれか少なくとも1つの効率を向上させる電圧ないし電流であること、
(6)エマルションの乳化ないし生成を促進する電圧、又は、エマルションの状態維持期間を向上する電圧ないし電流であること、
(7)空気清浄器又はイオナイザーの効果を向上する電圧ないし電流であること、
(8)原子ないし分子を種類ごとに分離させる電圧ないし電流であること、
(9)空間の温度ないし湿度を制御する電圧であること、及び、
(10)バクテリア、細菌、ウイルス、又は、微生物のいずれか少なくとも1つと、水分とを分離させる電圧ないし電流であること、
(11)ケミカルポリッシング、メカニカルポリッシング、ケミカルメカニカルポリッシング、又は、磁気研磨を促進する電圧ないし電流であること、
からなる群の中から選択される少なくとも1つの電圧ないし電流である。
【0058】
[コントローラの制御について]
品質制御装置1は、コントローラ10により駆動され、一対の電極13,14間に電場が発生する。このとき、電極13,14は、アンテナとして機能し、両電極13,14間に電磁波が放射されることにより、電磁場が発生する。また、電極13,14に対して、電気的、磁気的あるいは機械的な手段により振動を与えることにより、電極間に音波及び/又は超音波を発生させることもできる。電極間に音波及び/又は超音波を発生させる手段としては例えばピエゾ素子等の圧電素子を用いることができる。したがって、両電極13,14間には、電場、磁場、電磁場、電磁波、音波及び超音波の中の少なくとも1つが発生する。電場、磁場、電磁場又は電磁波に加えて、音波及び/又は超音波を用いることにより、物質の特性を向上する効果が増大する。
【0059】
コントローラ10は検出器38からの検出信号に基づいて電極に印加される電流値、電圧値、周波数及び位相の少なくとも1つをフィードバック制御する。検出器38は電極に印加される電圧を検出する電圧センサ、電極に印加される電流を検出する電流センサ、電極に印加される電圧及び/又は電流の周波数を検出する周波数センサ、電極に印加される電圧及び/又は電流の位相を検出する位相センサ、両電極13,14間の磁場を検出する磁場センサ、両電極13,14間の電場を検出する電場センサ、両電極13,14間の音波の大きさや周波数を検出する音波センサ、及び、両電極13,14間の超音波の大きさや周波数を検出するや超音波センサの少なくとも1つを含む。
【0060】
また、電極にセンサを設けることもできる。電極自体をセンサとして用いることも可能である。電極にセンサを設けた場合には、電極へ電力を供給する電源線に加え、センサのための配線(例えば2本)が必要となる。コントローラ10と電極との間の配線数は少ない方が望ましいため、電源線とセンサ線とをまとめて単一のコードとするとよい。この場合の単一コードは少なくとも絶縁性を有する素材で被覆されているものを利用する。さらに、耐久性や耐熱性があることも望ましい。さらに、冷凍室での使用も考慮すると低温にも耐えられることが望ましい。例えばフライヤーでの使用を考慮すると絶縁性に加え、耐久性及び耐熱性が求められるため、コードの被覆素材としては、例えばフッ素樹脂等を採用することができる。一対の電極を設ける場合には、一方の電極のみにセンサを設けるようにすることも可能である。あるいは、両方の電極にセンサを設けた場合には、一方の電極のセンサにより他方の電極が発生する物理量を検出することが可能である。3個以上の電極の場合には、少なくとも1個の電極にセンサを設けるようにすることができるが、これに限定されるものではなく、複数の電極、あるいは、全ての電極にセンサを設けることも可能である。
【0061】
コントローラ10における電流値、電圧値、周波数及び位相の少なくとも1つの制御目標値は、対象とする物質の種類や状態に応じて設定される。この制御目標値の設定は、図示されない通信器を介して、遠隔で設定することが可能である。また、コントローラ10の制御パラメータや制御量を遠隔制御することも可能である。これにより、複数の品質制御装置1のコントローラ10を遠隔地にあるサーバ40で集中管理し、各コントローラ10を適切に制御することが可能である。ただし、コントローラ10の制御の態様は、サーバ40からの遠隔制御に限定されるものではなく、例えば各コントローラ10に直接、制御目標値を設定したり、制御パラメータを設定したりすることにより、各品質制御装置1のコントローラ10を個別に制御することも可能である。
【0062】
なお、コントローラ10には記憶部37が設けられており、当該記憶部37には制御プログラムが記憶されている。コントローラ10はこの制御プログラムに基づいて制御される。この制御プログラムは通信又は記憶媒体を介して書き換え可能であるため、適時プログラムを更新し、バージョンアップすることが可能である。さらに、コントローラ10とサーバ40は通信可能であり、サーバ40から送られてくる制御パラメータ、制御量、制御プログラムないし各種設定値は、記憶部37に記憶される。また、制御プログラムは適宜の記憶媒体に記憶することが可能である。
【0063】
図2は水分子の模式図であり、
図2Aは自由に活動している状態の水分子であり、
図2Bは連珠配列のときの水分子である。
【0064】
対象となる物質、例えば、肉、魚、野菜等の食品等、飲料、動植物細胞、及び、油等は、自由水等の水分としての水分子を含んでいる。
【0065】
通常、水分子(H2O)は、
図2Aに示すように、不規則に配列している。そのため、水素原子Hが活性酸素30を取り込んだり、水素結合を発生したりし、水分子のサイズが大きくなり、水分子の動きが鈍くなる。そして、水分子の酸化が始まる。
【0066】
これに対して、一対の電極13,14間に電場が発生すると、水分子は、一定の向きに配列しようとする。なぜならば、水分子は、電子を引っ張る力が強い酸素原子Oが少しマイナスに、電子を出しやすい水素原子Hが少しプラスなり、それぞれが一対の電極13,14との間の電場の方向に向こうとするからである。
【0067】
コントローラ10により交流成分電圧を発生させると、水分子は交互に向きを変える。この時、水分子は交流成分電圧と同じ周波数で向きを変え、振動しているような状態となる。そして、この振動を繰り返すうち、水分子は、
図2Bに示すように、活性酸素30又は他の成分との水素結合が切り離されて、徐々に水分子がそれぞれ規則的に細粒化して配列するようになる。
【0068】
物質内に存在する自由水等の水分としての水粒子(微細な水滴)間についても同様の作用があるため、一対の電極13,14間の電場によって、水粒子同士が引き合うようにして連珠配列を形成する。
【0069】
一対の電極13,14間に直流成分電圧が印加される場合には、この直流成分電圧による電場の向きに沿って、水分子が配列しようとする力の成分が存在する。このため、直流成分電圧のみを一対の電極13,14間に印加した場合にも、水分子は規則的に配列するようになる。さらに、直流成分電圧に対して交流成分電圧が印加されると、水分子は交流成分電圧と同じ周波数で向きを変え、かつ、一方向に水分子が配列しようとする力の成分も存在するため、水分子がより規則的に配列しやすくなる。水粒子の状態についても、これと同様に、一対の電極13,14間の電場によって、自由水等の水分としての水粒子同士が引き合うようにして連珠配列を形成する。
【0070】
なお、一対の電極13,14間に印加する電圧に直流成分電圧が含まれていない場合にも、交流成分電圧によって、水分子は交流成分電圧と同じ周波数で向きを変え、振動しているような状態となる。そして、この振動を繰り返すうち、水分子は、活性酸素30又は他の成分との水素結合が切り離されて、徐々に水分子がそれぞれ規則的に細粒化して配列するようになる。また、一対の電極13,14間に印加する電圧に直流成分電圧が含まれていない場合に、交流成分電圧による作用は、水粒子の状態についても同様に、一対の電極13,14間の電場によって、自由水等の水分としての水粒子同士が引き合うようにして連珠配列を形成する。
【0071】
なお、音波又は超音波には水分子を振動させる作用があるため、一対の電極13,14間に直流成分電圧及び/又は交流成分電圧を印加する際に、さらに所定の周波数及び強度の音波及び/又は超音波を電極間に発生させることにより、水分子の配列を促進する効果を奏する。また、所定の音波及び/又は超音波により水分子を振動させた場合には、電極間に電圧を印加しない場合であっても、水分子を整列させることが可能である。本実施形態の品質制御装置1によって電極から発生させる電場、磁場、電磁場、電磁波、音波又は超音波を制御することにより、キャビテーションを発生させることができ、キャビテーションにより、液体中に多数の微細気泡が生成される。
【0072】
水分子ないし水粒子の配列方向は、電磁場の印加方向に沿う方向となるため、印加する電磁場を制御することにより、水分子ないし水粒子の配列方向を制御することが可能である。例えば一対の電極13、14から印加する電磁場は一定方向であるが、後述の
図9では、直交する2対(電極13、14、及び、電極15、16)の電極から電磁場を印加しているため、各電極に印加する電流ないし電圧を制御することにより、各電極間に発生する電磁場の強さに加え、電磁場の向きも調整することができるので、水分子ないし水粒子の配列方向を制御することが可能である。
【0073】
水は、「結合水」と「自由水」とに分けることができる。結合水は、他の成分と水素結合により結びつき安定した状態である。これに対して、自由水は、自由に活動している状態であり、物質が食品である場合には食品が新鮮でみずみずしい状態である。しかしながら、自由水は、分子が他の成分と結合しやすく、自由水を含む食品は腐敗しやすい。すなわち、雑菌、ウィルス、微生物又は、活性酵素が自由水と結合することで腐食が進みやすい。また、結合水の状態においても時間経過や温度上昇、乾燥環境の中では結合水が自由水になり、その時、水素結合していた細胞の成分の一部をもぎ取ることで腐敗しやすくなる。そこで、自由水を連珠配列した結合状態(上記「結合水の状態」とは区別される。)または他の細胞等に結合した状態にすることで鮮度維持を可能にする。
【0074】
本実施形態の品質制御装置1によって連珠配列された水分子は、自由水同士が結合して結合水のような安定した状態となる構造を形成すると考えられる。すなわち、本実施形態の品質制御装置1によって規則的に配列された水分子は、物質内に保持されながら、他の成分と結合しないため、食品を新鮮でみずみずしい状態に保つことができる。
【0075】
したがって、本実施形態の品質制御装置1を容器に設置しておけば、容器内の物質の自由水の配列を制御することができ、物質が食品、薬品、細胞である場合には、食品、薬品、細胞の鮮度を維持することが可能となる。例えば、品質制御装置1を輸送容器として使用することで、従来よりも長距離の輸送でも鮮度を維持したまま食品を輸送することができる。なお、容器は例えば発泡スチロール等でもよく、本実施形態の品質制御装置1を既存の発泡スチロール等に取り付けることで、輸送容器を構成することができる。
【0076】
また、本実施形態の品質制御装置1によって一度規則的に配列した水分子は、数日~数十日間、規則的に配列した状態で保持される。したがって、対象となる物質が食品、薬品、細胞である場合、本実施形態の品質制御装置1により自由水を連珠配列の状態にした後に、別の容器に移して保存しても、食品、薬品、細胞の鮮度を維持することが可能となる。また、本実施形態の品質制御装置1によって上述のように物質中の水分を微細化することができるが、水分を含む細胞について、その細胞自体を連珠配列することや、あるいは、細胞自体を微細化する(例えば複数細胞からなる塊を微細化する)ように制御することも可能である。
【0077】
また、電極13,14に所定の電圧が印加されると、物質の水分中の水分子は、電気的に整列し、略一定方向(電場の向き)に配向する。この時、水分子が整列することによって、物質の導電率が増大する。物質が液体の場合にも水分子を整列させることが可能であり、これにより例えば純水の場合にも、導電率を上昇させることができる。また、水分子は電場中では一定の周波数で微振動するため、0℃付近では結晶化しない。
【0078】
また、電極13,14に所定の電圧が印加されると、物質中の水分子の水素結合が抑制されるため、水素結合が少なくなるため、例えば生理的な水を得ることが可能である。さらにこの水に対して、マイクロバルブ、マイクロナノバブル又はナノバブル等の微小気泡を添加することにより、より高機能な水を得ることができる。このような電場及び微小気泡による液体の高機能化は水だけに限定されるものではなく、例えば水溶液、エマルジョン、油等にも適用可能である。
【0079】
また、電極13,14に所定の電圧が印加されると、物質の水分中の水分子の水和が促進される。例えば、物質に含まれる蛋白質等が水和され、水分子と結合して蛋白質等が水分子で囲まれた状態となると、物質の劣化を抑制することができる。
【0080】
図3は自由水の顕微鏡写真であり、
図3Aは電場を印加する前の自由水の状態を示し、
図3Bは電場を印加した際の自由水の状態を示す。
図3Bに示すように、電場を印加した際の自由電子では、白色の下線でマーキングした箇所において、水粒子の連珠配列が確認できる。これに対して、
図3Aに示すように、電場を印加する前の自由水では、水粒子の連珠配列は確認できない。
図3より、本実施形態の品質制御装置1により自由水を連珠配列の状態にすることができることが確認できた。
図3では、油相中における水相の連珠配列の様子を示したが、印加する電界を制御することにより同様に液体の連珠配列を制御することは、他の種類の液体間でも可能である。
【0081】
図4は水粒子の電位のシミュレーション結果であり、
図4Aはシミュレーションモデルの説明図であり、
図4Bは電位シミュレーションの結果である。
図4Aに示すようにシミュレーションモデルは自由水として、中央部に4個の連珠配列の水粒子が存在し、その左側には独立した2個の水粒子が存在するものである。
【0082】
図4Bでは水粒子の縦方向に沿った鉛直方向断面における等電位の領域が3箇所示されている。一番右側の断面において、水粒子が連珠配列している箇所では、連珠配列内の水粒子内は等電位であることが示されている。また、図面の中央部に存在する4個の連珠配列の水粒子の領域は略同じ色によって着色されていることから、4個の連珠配列の水粒子の領域の電位は略等しいことが分かる。
【0083】
連珠配列している4個の水粒子には電気力線が走っていることから、この4個の水粒子が引き付け合っていること分かる。さらに、連珠配列している4個の水粒子から左側に離れて存在する2個の独立した水粒子に対しても連珠配列している4個の水粒子からの電気力線が走っていることから、これら2個の独立した水粒子に対しても、連珠配列している4個の水粒子へ引き付ける方向の力が作用していることが考えられ、2個の独立した水粒子にが、連珠配列している4個の水粒子の配列に加わる可能性が考えられる。
【0084】
[界面張力の低下について]
W/Oエマルション(例えば食用油中の微小水滴)において、本実施形態の品質制御装置1によって電磁場を印加した場合に、界面張力を低下させることができる。この場合、界面張力の低下は例えば10%以上を実現することができ、また電磁場の条件によっては20%以上を実現することができ、さらに、例えば直流成分電圧及び交流成分電圧を適切に制御すると、界面張力を60%以上低下させることができる。これは、電磁場の印加によって形成される界面分極の増大によるものと考えられる。
【0085】
例えば食用油中で食物を調理するとき、食物に含まれる水分が食用油中で水蒸気となる際に、食物から食用油中に離脱する水滴は、微小水滴であり。このような微小水滴に、界面張力を低下させるのに十分な界面分極が生じていると、双極子間引力による微小水滴の連珠配列が形成される。
【0086】
フライヤーを用いて食用油で食物を揚げる場合に、フライヤーに対して本実施形態の品質制御装置1の一対の電極13,14を設置しておくと、油/水界面の界面張力を低下させることができる。一般に、食物の加熱調理を行うと、食物に内包される水分は、食用油中で水蒸気となって、突沸が発生する。本実施形態の品質制御装置1によれば、所定の電磁場を発生させることにより、油/水界面の表面張力を低下させることができる。これにより、食物に内包される水分が離脱する際に、食用油中で粒径の小さな微小水滴となって分散しやすくなるため、加熱されている食用油中で水蒸気となって気化しても、発生する突沸は小さくなる。また、食物に内包される自由水は印加される電磁場によって連珠配列されることにより、食材から水分が離脱しにくくなる。このように食物に内包される水分を制御して突沸を抑制することで食物内への油分の浸透を抑制する効果を奏する。また、それにより、調理された食物の食感及び食味が非常に優れたものとなる。
【0087】
図5及び
図6には、本実施形態の品質制御装置1により食用油と水との界面張力が低下することを示すグラフである。
図5は、印加電圧の周波数と電圧値(0~75V)を変化させた際の食用油と水の界面張力のグラフであり、
図6は、電極への印加電圧の周波数と電圧値(0~150V)を変化させた際の食用油と水の界面張力のグラフである。
図5及び
図6は、前述の[界面張力の低下について]の項目で説明した測定装置と異なり、円筒状の容器内に、下層に水を、上層に食用油を、両者の界面が接する状態で入れ、この容器内に一対のステンレス電極を挿入し、様々な周波数及び電圧値の交流電圧を印加しながら、食用油と水との界面張力を測定した。界面張力の測定にはFace Automatic Surface Tensiometer(協和界面科学株式会社)を用いた。なお、電極としては一対の平板電極を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば円筒状の容器の内壁に沿うような曲面状の電極、あるいは、ステンレス箔のようなフレキシブルな電極を容器の内面に沿うように配置させてもよい。
【0088】
図5は、電極に印加した交流電圧は、周波数を10kHz~50kHz、電圧を0V~75Vの間で変化させた時の食用油と水の界面張力のグラフである。
図5から、食用油と水の界面張力は、電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値と関連性を有することが分かる。すなわち、周波数が50kHzから、20kHzへ、さらに、10kHzに低下するほど、界面張力が減少している。また、電圧値が0Vから75Vへ上昇するほど、界面張力は減少している。したがって、これらの界面張力と電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値と関連性とを利用することにより、品質制御装置1は印加電圧を調整することにより、界面張力を制御することが可能である。例えば、品質制御装置1をフライヤーに適用する場合には、前述のように界面張力が低下すると食物に内包される水分が離脱する際に、食用油中で粒径の小さな微小水滴となって分散しやすくなるため、加熱されている食用油中で水蒸気となって気化しても、発生する突沸は小さくなるが、この際に、品質制御装置1により界面張力を制御することにより、突沸の程度を調節できるようになるため、様々なフライヤーによる調理条件、食材の種類や状態や量等に応じた電極への印加電圧の設定が可能となる。これにより、フライヤーによる調理条件が異なる場合にも、適切な電圧を電極に印加することにより、界面張力を適正に制御できるので、調理された食物の食感及び食味が非常に優れたものとなる。これは、電極に印加する電圧をフィードバック制御する場合にも有用である。また、界面張力は測定ないし予測可能であるため、界面張力を制御パラメータの1つとして利用することも可能である。
【0089】
図6は、電極に印加した交流電圧は、周波数を10kHz~20kHz、電圧を0V~160Vの間で変化させた時の食用油と水の界面張力のグラフである。
図6は、特定の実験装置による測定例であり、この測定結果を全ての測定系に拡大することはできないまでも、界面張力と電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値と関連性があることが示されている。この関連性を利用して、電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値を調整することにより、界面張力の最適化が可能となる。本実施形態の品質制御装置1の効果と、界面張力との関係が明らかになったことにより、フライヤーの場合だけは無く、他の適用対象、例えば保冷や保蔵等に用いる場合にも、界面張力との関係からその効果の最適化を図ることが可能となる。上述の界面張力の測定は比較的容易であるため、本実施形態の品質制御装置1の最適化を、界面張力との関係から分析できることにより、電極に印加する電圧の制御をより適切に、かつ、より容易に行うことができる。
【0090】
図5、6では、水相と油相間の界面張力の低下について説明したが、液相と該液体とは異なる相との間の界面張力についても同様に、印加する電磁場を制御することにより、制御することが可能である。液体の界面張力の制御については、液相と他の液相との界面張力だけでなく、液相と気相との界面張力、液体と固相との間の界面張力の制御にも適用可能であり、例えば、本実施形態の品質制御装置により電磁場を印加することにより、界面張力の制御、接触角の制御等も可能である。
【0091】
図7は、油中での水滴滴下についての写真であり、食用油中に細い管(直径1.0mmの金属ストロー)から生理食塩水を滴下する際に、細い管の先端周囲を囲むように環状電極を設け、細い管と環状電極との間に100Vの電圧を印加した場合の様子が示されている。電圧を印加しない場合、水滴は油中に滴下しない。電圧を印加すると食用油と生理食塩水との界面張力が低下し、水滴が油中に滴下される。
図7では、滴下される水滴の周囲に、微小水泡が散らばっている様子が確認できる。電圧を印加すると界面張力が低下するため、水滴の粒径が小さくなることに加え、水滴の滴下に伴い、微小水泡が生成される。
【0092】
電圧を印加した際に、食用油中に生理食塩水の水滴が滴下されるが、この水滴の滴下の瞬間をハイスピードカメラにて観察したものである。
図8Aは電圧印加前、
図8Bが電圧印加開始時、
図8Cが電圧印加後の様子を示し、時系列に
図8A、
図8B、
図8Cの順番となる。電圧を印加すると
図8B及び
図8Cに示されているように、微細水泡が確認できる。なお、電気分解により電極から発生する気体との区別が鮮明でない部分もある。
【0093】
本実施形態の品質制御装置により物質に対して印加する電磁場を制御することにより、物質の内部ないし表面に存在する水分に作用し、水分がくさること、水分がにごること、色がにごること、藻が生えること、ぬめること、錆びること、又は、かびることの等を防止、抑制ないし制御することが可能である。
【0094】
[変形例1]
図9を参照して、変形例1に係る品質制御装置、品質制御方法、プログラム、記憶媒体について説明する。
図9は、変形例1に係る電極の概念図である。
図1~
図8と同様の構成については同一の符号を用いると共に、その説明を省略する。変形例1に係る品質制御装置は、電極を2対とした点で前記実施形態1に係る品質制御装置と異なる。
【0095】
品質制御装置1Aは、コントローラ10A,10Bと、二対の電極としての第1電極13,14及び第2電極15,16を、備えている。コントローラ10A,10Bはそれぞれ、交流成分電圧発生部及び直流成分電圧発生部を備えている。コントローラ10の実際の回路構成においては、交流成分電圧発生部及び直流成分電圧発生部を別々に設ける必要はなく、両者の機能を兼ねる回路構成とすることもできる。また、2つのコントローラ10A,10Bを1つのコントローラとして構成することも可能である。そして、第1電極13,14及び第2電極15,16から同様な電磁波を発生させるのであれば、1つのコントローラから第1電極13,14及び第2電極15,16の両方に電圧を印加するようにしてもよい。
【0096】
品質制御装置1Aは、コントローラ10A及び10Bにより駆動され、第1電極の一対の電極13,14間、及び、第2電極の一対の電極15,16間に電場が発生する。このとき、電極13~16はそれぞれアンテナとして機能し、第1電極の両電極13,14間、及び第2電極の両電極15,16間にそれぞれ電磁波が放射されることにより、電磁場が発生する。したがって、両電極13~14,15~16間には、電場、磁場、電磁場及び電磁波の中の少なくとも1つが発生する。また、実施形態1と同様に、電極13,14に対して、電気的、磁気的あるいは機械的な手段により振動を与えることにより、電極間に音波及び/又は超音波を発生させることもでき、さらに、所定の音波及び/又は超音波により水分子を振動させた場合には、電極間に電圧を印加しない場合であっても、水分子を整列させることが可能である。
【0097】
第1電極13,14間及び第2電極15,16間には、処理対象とする物質が配置されるようにする。処理対象とする物質としては、実施形態1と同様に、個体、液体及び気体の少なくとも1つものであれば、特に限定されるものではない。本実施形態の品質制御装置1Aを冷蔵庫に設置する場合には、例えば第1電極13,14を冷蔵庫内の側面に設置し、第2電極15,16を冷蔵庫の天井面、底面又は棚板に設置することができる。
図9では、第1電極13,14と第2電極15,16とが直交するように配置される例が示されているが、本発明はこれに特定されるものではなく、第1電極13,14により発生する電磁場と第2電極15,16により発生する電磁場との少なくとも一部が処理対象とする物質に作用するのであれば、第1電極13,14と第2電極15,16とはどのような配置でも構わない。
【0098】
コントローラ10A,10Bは図示されない検出器からの検出信号に基づいて電極に印加される電流値、電圧値、周波数及び位相の少なくとも1つをフィードバック制御する。検出器は電極に印加される電圧を検出する電圧センサ、電極に印加される電流を検出する電流センサ、電極に印加される電圧及び/又は電流の周波数を検出する周波数センサ、両電極13~14、15~16間の磁場を検出する磁場センサ、及び、両電極13~14、15~16間の電場を検出する電場センサ、電圧の位相検出センサ、電流の位相検出センサ、及び、電圧と電流との位相検出センサの少なくとも1つを含む。
【0099】
コントローラ10A,10Bにおける電流値、電圧値、周波数及び位相の少なくとも1つの制御目標値は、処理対象とする物質の種類や状態に応じて設定される。そして、コントローラ10Aから第1電極13,14に印加する電流、電圧、周波数及び位相は、それぞれコントローラ10Bから第2電極15,16に印加する電流、電圧、周波数及び位相と同一であっても、異なっていても構わない。例えば、両者の電圧と周波数とを異なるものとすること、両者の周波数のみを異なるものとすること、両者の周波数と位相とを異なるものとすること等、各種の組み合わせが可能である。
【0100】
この制御目標値の設定は、図示されない通信器を介して、遠隔で設定することが可能である。また、コントローラ10A,10Bの制御パラメータや制御量を遠隔制御することも可能である。これにより、複数の品質制御装置1Aのコントローラ10A,10Bを遠隔地にあるサーバ40で集中管理し、各コントローラ10A,10Bを適切に制御することが可能である。ただし、コントローラ10A,10Bの制御の態様は、サーバ40からの遠隔制御に限定されるものではなく、例えば各コントローラ10A,10Bに直接、制御目標値を設定したり、制御パラメータを設定したりすることにより、各品質制御装置1Aのコントローラ10A,10Bを個別に制御することも可能である。
【0101】
図9では、直交する2対(X方向電極13、14、及び、Y方向電極15、16)の電極から電磁場を印加しているため、各電極に印加する電流ないし電圧を制御することにより、各電極間に発生する電磁場の強さに加え、電磁場の向きも調整することができるので、水分子ないし水粒子の配列方向を制御することが可能である。X方向電極13、14に印加する電流ないし電圧をコントローラ10Aで制御し、Y方向電極15、16に印加する電流ないし電圧をコントローラ10Bで制御するところ、例えば、X方向電極13、14に印加する電圧値と、Y方向電極15、16に印加する電圧値との比を調整することにより、各電極により発生させる電磁場の強さ及び向きを調整できるので、この電磁場の中に配置した物質内部ないし表面の水分を微粒子化させると共に、この微粒子化された水分の配列状態を所望の方向に制御することが可能である。各電極には交流電圧だけでなく、直流電圧も印加できるので、この直流電圧成分を調整することにより、各電極により発生されれる電磁場の中に配置した物質内部ないし表面の水分の配列を、X-Y座標の二次元について任意の方向に制御可能である。
図9の2対の電極、X方向電極13、14、及び、Y方向電極15、16に加えて、さらにもう一対のZ方向電極(不図示)とコントローラ10Cを追加することにより、三次元空間において所望の方向及び強さの電磁波を発生させることができるので、各電極により発生されれる電磁場の中に配置した物質内部ないし表面の水分の配列を、三次元について任意の方向に制御可能である。後述のように、本実施形態の品質制御装置により、物質の内部ないし表面の水分子の微粒子化と、特定方向への連珠配列の状態、及び、この配列方向を制御することにより、物質の性質を向上させることが可能である。
【0102】
図10は変形例1の異なる電極の概念図であり、
図10Aは1つの電極を用いる例であり、
図10Bは1つの電極と当該電極に対向する2つの電極を用いる例である。実施形態1では一対の電極を用いる例を、実施形態2では二対の電極を用いる例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば1個の電極を用いること、3個等の奇数の電極を用いること等も可能である。例えば
図10Aに示すように、1個の電極17によっても電磁波を発生することができる。また、例えば3個の電極を用いる場合には、
図10Bに示すように1個の電極18に対して2個の電極19,20を対向させることや、あるいは、3個の電極から異なる電磁波を発生させることも可能である。したがって、電極の個数や配置は任意に設定でき、限定されるものではない。
【0103】
[変形例2]
図11及び
図12を参照して、本発明の変形例2に係る品質制御装置、品質制御方法、プログラム、記憶媒体、生成された物質、製品、装置及び設備について説明する。
図11は、変形例2に係る異なる周波数の電圧を用いた場合の波形図であり、
図12は、変形例2に係る異なる位相の電圧を用いた場合の波形図である。
図11~
図12と同様の構成については同一の符号を用いると共に、その説明を省略する変形例2に係る品質制御装置は、一対の電極から、それぞれ異なる電磁波を発生させた点で実施形態1及び変形例1と異なる。
【0104】
図11では、一対の電極21A,21Bの一方の電極21Aから50kHzの周波数の電磁波(P波)を発生させ、他方の電極21Bから47kHzの周波数の電磁波(Q波)を発生させている。ここで、電磁波の振幅をAとすると、P波及びQ波はそれぞれ次の式で表される。なお、時刻t=0において、共にV(t)=0となる位置(例えば両電極21A,21Bのちょうど中間の位置)での式として表す。
P波:V(t)=Asin(2πf1t),f1=50kHz
Q波:V(t)=Asin(2πf2t),f2=47kHz
これにより、一対の電極21A,21B間には、
図11CのようにP波+Q波の電磁波が印加されることになる。
【0105】
図12では、一対の電極22A,22Bの一方の電極22Aから50kHzの周波数の電磁波(P波)を発生させ、他方の電極22Bから30kHzの周波数の電磁波(Q波)を発生させている。両波形の位相αは両者ともα=0で一致している。ここで、電磁波の振幅をAとすると、P波及びQ波はそれぞれ次の式で表される。なお、時刻t=0において、共にV(t)=0となる位置(例えば両電極21A,21Bのちょうど中間の位置)での式として表す。
P波:V(t)=Asin(2πf1t),f1=50kHz
Q波:V(t)=Asin(2πf2t),f2=30kHz
これにより、一対の電極22A,22B間には、
図12BのようにP波+Q波の電磁波が印加されることになる。
【0106】
図12Cでは、一対の電極23A,23Bの一方の電極23Aから周波数50kHz、位相α=0の周波数の電磁波(P波)を発生させ、他方の電極23Bから周波数30kHz、位相α=π/2の電磁波(Q波)を発生させている。すなわち両波形の位相はπ/2に設定されている。ここで、電磁波の振幅をAとすると、P波及びQ波はそれぞれ次の式で表される。なお、時刻t=0において、P波V(t)=0、Q波V(t)=Aとなる位置(例えば両電極21A,21Bのちょうど中間の位置)での式として表す。
P波:V(t)=Asin(2πf1t),f1=50kHz
Q波:V(t)=Asin(2πf2t+π/2),f2=30kHz
これにより、一対の電極23A,23B間には、
図12DのようにP波+Q波の電磁波が印加されることになる。
【0107】
図11~12では両電極からそれぞれ周波数及び/又は位相の異なる電磁波を発生させたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば両電極に印加する交流成分電圧を調整して電磁波のピーク間電圧を制御することや、両電極に印加する直流成分電圧を調整して、交流成分電圧に対してオフセット電圧として直流成分電圧を印加することや、両電極に印加する直流成分電圧を異ならせることや、両電極に印加する交流成分電圧のピーク間電圧値、周波数及び位相を異ならせること等も可能である。
【0108】
[変形例3]
図13を参照して、本発明の実施態様1の変形例3に係る水分制御装置、水分制御方法、プログラム、記憶媒体、生成された物質、製品、装置及び設備について説明する。
図13は、水分制御装置1のブロック図である。
図1~
図12と同様の構成については同一の符号を用いると共に、その説明を省略する。
【0109】
図13は
図1に対応するブロック図である。ただし、通信部35、記憶部37及び外部電源39等は省略されている。すなわち、実際には制御部36は、通信部35を介して管理サーバ40等と通信を行い、記憶部37との間でデータの入出力を行い、外部電源39から電力が供給され、電流電圧制御部33を介して電流電圧印加部11を制御しているが、それらの動作は
図13では省略されている。また、
図13では、コントローラ10は筐体50(例えば冷蔵庫等)の外部に示されているが、これに限定されるものではなく、例えばコントローラ10を筐体50の内部に設けることもできる。
【0110】
図13におけるフロー(a)~(h)について、順に説明する。フロー(a)では、マンマシンインターフェイス31からの入力により、コントローラ10のオン・オフ、動作モード、物質の種類や状態、電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流の設定等のコントローラ10の設定が入力される。動作モードとしては、例えば、自動モード、物質入力モード、及び、手動設定モード等がある。自動モードでは、例えば、後述のように物質検出部32からの検出信号、検出部38からの検出信号及び管理サーバ40からの制御パラメータや制御値に応じて、物質が適切な状態となるようにコントローラ10が自動的に制御される。物質入力モードでは、例えばマンマシンインターフェイス31から物質の種類や状態を入力することにより、物質に応じてコントローラ10が適切に制御される。手動設定モードでは、例えば電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流を手動で設定する。以下では、特に説明がない限りは、自動モードの場合を例に挙げて説明する。また、フロー(a)では、さらに筐体50が自動調整機能を有する場合には、マンマシンインターフェイス31から筐体50に対する筐体に対する設定値を入力できるようにしてもよい。
【0111】
フロー(b)では、制御部36からの指令により、物質検出部32から物質に関する情報が収集される。例えば筐体50が冷蔵庫の場合、物質検出部32により収集される物質に関する情報としては、庫内カメラの映像、水分量センサによる食品の水分に関する検出信号、及び、温度センサや湿度センサの検出信号(冷蔵庫に内蔵されたセンサからの検出信号も含む)等が含まれる。また、例えば筐体50がコンテナの場合、物質検出部32により収集される物質に関する情報としては、コンテナ内カメラの映像、コンテナ内の温度センサや湿度センサの検出信号、及び、コンテナに設けられたGPSからの信号(なお、GPSをコントローラ10に設けることも可能である)等が含まれる。また、例えば筐体50がフライヤーの場合、物質検出部32により収集される物質に関する情報としては、調理される食品を撮影したカメラの映像、水分量センサによる食品の水分に関する検出信号、食品の温度の検出信号、フライヤーの油の温度の検出信号、フライヤーの油の種類についての情報、フライヤーの油の交換時期についての情報等が含まれる。
【0112】
フロー(c)では、CPU36からの指令により物質検出部32から収集された物質に関する情報は、通信部35を介して管理サーバ40に送信される。なお、フロー(a)における設定が物質入力モードの場合は、例えばマンマシンインターフェイス31から入力された物質の種類や状態の情報が、管理サーバ40に送信される。
【0113】
また、フロー(a)における設定が手動設定モードである場合には、例えば、管理サーバ40に電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流についての情報を送信し、管理サーバ40において所定の補正を行ったうえで、所定の制御パラメータや制御値を管理サーバ40から制御部36に対して送信するようにしてもよい。また、例えば、管理サーバ40における情報収集のために、手動で設定された電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流を管理サーバ40に送信し、制御値は制御部36において計算するようにしてもよい。また、例えば、管理サーバ40において上述の制御値の補正や情報収集が不要である場合には、フロー(c)において管理サーバ40に出力電圧及び/又は出力電流の情報を送信する必要はない。
【0114】
管理サーバ40においては、物質の種類及び状態に対して適切な制御パラメータや制御値が計算される。さらに、管理サーバ40においては、制御パラメータや制御値を計算する際に、物質の種類及び状態以外にも、季節、天候、気象予報、日時、場所、需給予想、冷蔵庫の入出庫や収納状況、コンテナの輸送経路と交通状況、当該コンテナと関連する一群のコンテナの状況、在庫管理情報、店舗の混雑状況、経済指標、ウェッブ上の情報等の情報をデータベース43等と通信することにより参照することができる。
【0115】
物質検出部32により収集される物質に関する情報の中、カメラの映像からは、管理サーバ40において、物質の種類や状態を画像認識により判別することができる。この画像認識の際には、例えば深層学習により訓練されたAIを使用することにより、物質の種類や状態を正確に認識することができる。すなわち、食品のカメラの映像とその食品の実際の種類や状態とのデータにより訓練されたニューラルネットワークを用いて、カメラの映像から物質の種類や状態を正確に認識することができる。サーバは他のコントローラ10とも通信を行うことにより、多くの画像認識データを蓄積することができ、それにより、多様な物質に対して画像認識の精度をより高めることが可能となる。なお、コントローラ10がAIのプログラムを備えている場合には、管理サーバ40で訓練済みの学習モデルを用いて、制御部36において画像認識を行い、フロー(c)においては画像認識の結果をサーバ40に送信することもできる。このようにコントローラ10において画像認識を行った場合には、フロー(c)におけるデータ送信の通信量を低減することができる。
【0116】
フロー(d)では、管理サーバ40において計算された制御パラメータや制御値がコントローラ10の制御部36に送信される。
【0117】
フロー(e)では、制御部36は、管理サーバ40から送信された制御パラメータや制御値を用いて、電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流を制御する。
【0118】
フロー(f)では、制御部36は、検出部38により検出された検出信号に基づいて各電極13,14に印加される電流値、電圧値、周波数及び位相の少なくとも1つをフィードバック制御する。なお、検出部38により検出された検出信号には、電極に印加される電圧、電極に印加される電流、電極に印加される電圧及び/又は電流の周波数及び/又は位相、両電極13,14間の磁場、両電極13,14間の電場、及び、両電極13,14間の音波及び/又は超音波の少なくとも1つを含む。この時、フィードバックされる制御値は、制御部36において計算された制御値であってもよいが、管理サーバ40において計算された制御値でもよい。
【0119】
ここで、フィードバックされる制御値が制御部36において計算された制御値である場合には、フロー(d)において管理サーバ40から制御部36には制御目標値が送信されている。あるいは、手動モードの場合には、フロー(a)において、制御目標値としての設定値が入力される。なお、制御目標値は、物質検出部32により収集される物質に関する情報に応じて時間に対して可変に設定されることができる。また、フィードバックされる制御値が管理サーバ40において計算された制御値である場合には、管理サーバ40において、フィードバックされる制御値を計算するために、フロー(c)において検出部38により検出された検出信号を管理サーバ40に送信し、管理サーバ40においてフィードバックされる制御値が計算され、フロー(d)により管理サーバ40から制御部36に制御値が送信される。
【0120】
本実施形態では、検出部38を用いる例を説明したが、検出部38を用いない制御も可能である。この場合、フロー(f)は省略され、フロー(e)により電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流が制御される。なお、この場合の制御にはセンサレス制御やオープンループ制御等、各種制御が適用可能である。
【0121】
フロー(g)は、筐体50が自動調整機能を持つ場合には、制御部36からの制御指令が筐体50に送信されるようにしてもよい。筐体50が冷蔵庫である場合には、制御指令は、例えば制御指令は庫内の温度や湿度の設定値である。また、筐体50がコンテナであってコンテナに温度や湿度を調整する機能がある場合には、制御指令は、例えばコンテナに対する温度や湿度の設定値である。また、筐体50がコンテナであって、コンテナが温度や湿度を調整可能な倉庫に格納されている場合には、後述のようにフロー(i)により当該コンテナの温度や湿度の調整に関する情報が、外部サーバ及びデータベース43としての当該倉庫の管理サーバに対して送信され、他のコンテナを含めた全てのコンテナの温度や湿度の状態を適切に調整するために用いられる。また、筐体50がフライヤーである場合には、制御指令は、例えば油槽中の油の温度設定値であり、また必要に応じて、油の交換時期であることを報知してもよい。なお、筐体50が自動調整機能を有しない場合には、フロー(g)は必須の構成ではなく、この場合、例えば後述のフロー(h)において、マンマシンインターフェイス31に、制御部36からの制御指令に関する情報が表示される。
【0122】
フロー(h)では、制御部36における制御の状況として、例えば電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流の制御状況、現在扱っている物質の種類及び状態の情報、筐体50の状況(物質検出部32の検出情報)、筐体50が自動調整機能を有しない場合には、CPU36からの筐体50に対する制御指令に関する情報が、マンマシンインターフェイス31に表示される。また、これらの情報に加えて、マンマシンインターフェイス31には、必要に応じて、あるいは、マンマシンインターフェイス31からの操作に応じて、フロー(d)において管理サーバ40から制御パラメータや制御値に加えて送られてくる情報として、例えば、季節、天候、気象予報、日時、場所、需給予想、冷蔵庫の入出庫や収納状況、コンテナの輸送経路と交通状況、当該コンテナと関連する一群のコンテナの状況、在庫管理情報、店舗の混雑状況、経済指標、及び、ウェッブ上の情報等の情報を表示することができる。これらの情報を参酌することにより操作者は物質を適切に生産、管理することができる。
【0123】
マンマシンインターフェイス31は、コントローラ10に一体とすることができる。または、マンマシンインターフェイス31は、コントローラと10と別体とすること、あるいは、コントローラ10の一部の機能と共に別体とすることもでき、この場合、マンマシンインターフェイス31を、通信機能を有する携帯端末、例えばスマートフォン、携帯電話、タブレット端末、PCとして構成することができる。マンマシンインターフェイス31を、コントローラ10の一部の機能と共に別体とする場合には、コントローラ10の中の、通信部35の機能、記憶部37の機能、及び、制御部36の演算機能のいずれか少なくとも1つ、または、その一部の機能をマンマシンインターフェイス31と共に別体とすることができる。さらに、マンマシンインターフェイス31と共に、物質検出センサ32の機能や検出部38の機能又はそれらの機能の一部を一体化することも可能である。例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、又は、PCに内蔵されているカメラ機能は、物質検出部32として利用することが可能である。
【0124】
フロー(i)では、管理サーバ40は、データベース43と通信することにより、物質の管理に必要な情報の送受信やデータ収集を行っている。管理サーバ40は、インターネットを介して、必要な外部サーバとの間で通信を行うことができる。このため、筐体50がコンテナである場合には、例えば当該コンテナを管理している倉庫の管理データベースや管理サーバにアクセスすることができる。
【0125】
筐体50が冷蔵庫である場合の構成例として、マンマシンインターフェイス31としてタブレット端末を用い、冷蔵庫が庫内カメラ、温度・湿度センサ、及び、温度・湿度の自動調整機能を備える例を用いて、本実施形態の作用を説明する。一例として、タブレット端末により、動作モードとして「自動モード」が、冷蔵温度として「弱」が選択され、フロー(a)によりCPUに送信された場合を説明する。
【0126】
物質検出部32としての冷蔵庫内のカメラにより庫内の少なくとも両電極間に保蔵されている食品を含む範囲が撮影され、その情報はフロー(b)及びフロー(c)により、管理サーバ40に送信され、管理サーバ40においては対象とする食品の種類及び状態を、例えばAIを用いた画像認識により判定する。カメラによる庫内の撮像範囲は保蔵食品の全体を撮像できることが望ましく、必要に応じて複数のカメラを配置することもできる。さらに、物質検出部32としての庫内の温度及び湿度センサにより検出された情報が、フロー(b)及びフロー(c)により、管理サーバ40に送信される。管理サーバ40では、画像認識により判別された食品の種類及び状態と、送信されてきた庫内の温度及び湿度の情報を用いて、両電極13,14から発生させる電磁場を考慮し、電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流に関する制御パラメータや制御値を演算する。保蔵する食品の種類及び状態に応じて、例えば葉物野菜を保蔵する場合と、生の鯛を保蔵する場合と、煮物として調理済みの鯛を保蔵する場合とでは、制御パラメータや制御値が異なる。
【0127】
フロー(d)において、制御パラメータや制御値が制御部36に送信され、それらに基づいて、電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流が適切に制御される。さらに、フロー(f)において、検出器38の検出値に基づいて、電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流はフィードバック制御される。また、フロー(g)において、冷蔵庫の温度及び湿度がフロー(a)の情報(冷蔵温度「弱」)及び管理サーバ40により演算された情報等に基づいて適切に制御される。
【0128】
フロー(h)においては、保蔵されている食品に関する多様な情報を、管理サーバ40から送られてきた情報と共に、タブレット端末に表示可能である。タブレット端末に表示可能な情報の一例としては、保蔵されている食品の種類、状態、入庫日、賞味期限、賞味期限が近い食品の報知、保蔵されている食品を用いた料理のメニュー、調理の方法、及び、お買い物リスト等の中の少なくとも1つが挙げられる。また、フロー(i)としては、管理サーバ40における演算に必要なデータの取得が挙げられる。なお、管理サーバ40で入手したものと同様な情報をタブレット端末の通信機能により入手することもできるため、フロー(d)及びフロー(h)においてはURL等を送信するようにすれば、フロー(d)及びフロー(h)の通信量を低減することができる。
【0129】
次に、筐体50がコンテナである場合の構成例として、マンマシンインターフェイス31としてタブレット端末を用い、コンテナがGPSを備え、コンテナが入庫された倉庫に管理データベース及び管理サーバを備える例を用いて、本実施形態の作用を説明する。一例として、タブレット端末により、動作モードとして「自動モード」が、物質の種類及び状態として「X年Y月Z日に収穫(収穫直後)のリンゴ」との情報が、フロー(a)により制御部36に送信された場合を説明する。
【0130】
物質検出部32としてのGPSはコンテナの位置情報を、物質の種類及び状態の情報と共に、フロー(b)及びフロー(c)により、管理サーバ40に送信し、管理サーバ40はコンテナの位置を把握しており、例えば「X年Y月Z日に収穫のリンゴ」が搭載されたコンテナが産地から陸路で輸送され、所定の倉庫に入庫されたことを記憶している。管理サーバ40はインターネット回線を通じて、該当する倉庫の管理データベースにもアクセス(上記フロー(i))することができるため、コンテナの倉庫での管理状況のデータを把握することができる。
【0131】
管理サーバ40では、コンテナの位置情報、物質の種類及び状態、倉庫内の状態、場所、季節、天候、気象予報、及び、当該コンテナと関連する一群のコンテナの状況等のフロー(i)により取得した情報を含む各情報を用いて、両電極13,14から発生させる電磁場を考慮し、電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流に関する制御パラメータや制御値を演算する。これにより、管理サーバ40では、「X年Y月Z日に収穫のリンゴ」を所定の倉庫で保管する場合に適切な制御パラメータや制御値を算出することができる。
【0132】
フロー(d)において、制御パラメータや制御値が制御部36に送信され、それらに基づいて、交流成分電圧発生部11及び直流成分電圧発生部12の出力電圧及び/又は出力電流が適切に制御される。さらに、フロー(f)において、検出部38の検出値に基づいて、交流成分電圧発生部11及び直流成分電圧発生部12の出力電圧及び/又は出力電流はフィードバック制御される。ここでは、コンテナが温度制御機能等を有しない例として説明しているため、フロー(g)は省略される。
【0133】
フロー(h)においては、コンテナに搭載されている物質に関する多様な情報を、管理サーバ40から送られてきた情報と共に、タブレット端末に表示可能である。タブレト端末に表示可能な情報の一例としては、コンテナに搭載されている食品の種類、状態、輸送ルートと履歴、今後の流通予定、現在格納されている倉庫、倉庫での管理状況、食べごろの時期、賞味期限、及び、他の関連するコンテナの情報の中の少なくとも1つが挙げられる。また、フロー(i)としては、当該コンテナの管理に必要な情報が、管理サーバ40から直接、当該コンテナが格納されている倉庫の管理データベースの管理用サーバに送られ、倉庫の管理に利用される。
【0134】
次に、筐体50がフライヤーである場合の構成例として、マンマシンインターフェイス31としてタブレット端末を用い、物質検出センサのカメラの替わりにタブレト端末のカメラを利用し、フライヤーの油温度の自動調整機能を有する例を用いて、本実施形態の作用を説明する。一例として、タブレット端末により、動作モードとして「自動モード」が、油温度として「自動」が選択され、フロー(a)によりCPUに送信された場合を説明する。
【0135】
物質検出部32のカメラの替わりに、タブレット端末のカメラを用いてフライヤーで調理する食品を撮影して、フロー(c)によりその情報を管理サーバ40に送信する。なお、タブレット端末のカメラを用いることに替えて、物質検出部32としてのフライヤーに備え付けのカメラを用いることもできる。なお、食品を撮影するのは、調理する食材が変更された最初だけでよい。物質検出部32としてのフライヤーからの油温度の情報もフロー(b)及びフロー(c)によって、管理サーバ40に送信される。さらに、必要に応じて、食品の水分量を測定するセンサや食品の温度を測定するセンサ等を設け、これらの情報をフロー(b)及びフロー(c)によって、管理サーバ40に送信することもできる。
【0136】
管理サーバ40においては対象とする食品の種類及び状態を、例えばAIを用いた画像認識により判定する。管理サーバ40では、画像認識により判別された食品の種類及び状態と、フロー(c)により送信されてきた各種情報、及び、フロー(i)で取得された季節、天候、気象予報、日時、場所、及び、店舗の混雑状況等の情報を用いて、フライヤーの油の温度を設定すると共に、両電極13,14から発生させる電磁場を考慮し、電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流に関する制御パラメータや制御値を演算する。調理する食品の種類及び状態等に応じて、例えばエビフライを調理する場合と、ポテトフライを調理する場合と、鶏のから揚げを調理する場合とでは、制御パラメータや制御値、及び、フライヤーの油の温度が異なる。
【0137】
フロー(d)において、制御パラメータや制御値がCPU36に送信され、それらに基づいて、電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流が適切に制御される。さらに、フロー(f)において、検出器38の検出値に基づいて、電流電圧印加部11の出力電圧及び/又は出力電流はフィードバック制御される。また、フロー(g)において、フライヤーの油の温度が管理サーバ40により演算された情報に基づいて適切に制御される。
【0138】
フロー(h)においては、調理する食品に関する多様な情報を、管理サーバ40から送られてきた情報と共に、タブレット端末に表示可能である。タブレット端末に表示可能な情報の一例としては、調理される食品の種類、状態、フライヤーの油の温度、料理する個数、調理した食品の履歴、及び、次に調理する食品の予定の中の少なくとも1つが挙げられる。また、フロー(i)としては、管理サーバ40における演算に必要なデータの取得が挙げられる。なお、管理サーバ40で入手したものと同様な情報をタブレット端末の通信機能により入手することもできるため、フロー(d)及びフロー(h)においてはURL等を送信するようにすれば、フロー(d)及びフロー(h)の通信量を低減することができる。
【0139】
[変形例4]
図14を用いて、本発明の変形例4に係る品質制御装置、品質制御方法、プログラム、記憶媒体、について説明する。
図1~
図13と同様の構成については同一の符号を用いると共に、その説明を省略する。実施形態1、変形例1~3の品質制御装置1においては、電流ないし電圧は、電流値ないし電圧値、及び、周波数は所定の値に設定されていたが、変形例4では、電流値ないし電圧値、及び/又は、周波数を所定の規則で、かつ、所定の範囲内で変化させる、すなわち、スイープさせる。
図14Aは、電圧値、電流値又は周波数を直線状に連続的にスイープさせる例を示す。
図14Bは、電圧値、電流値又は周波数を直線状にステップ状に変化させる例を示す。また、
図14Cは、例えば電圧値をステップ状に変化させると共に、周波数を直線状に連続的にスイープさせるものであり、また例えば、周波数をステップ状に変化させると共に、電圧値を直線状に連続的にスイープさせるものである。これによりどのような対象に対しても、自動的に、適切な電流値ないし電圧値、及び/又は、適切な周波数の電磁波を発生させることが可能となる。すなわち、スイープの範囲内の所定のタイミングでは適切な電流値、電圧値又は周波数が発生されていることになる。なお、
図14Cは一例にすぎずこれに限定れるものでは無い。
図14Cでは一方の値が一定の間に他方の値が0からピークまでの間を一往復しているが、これに限られない。例えば、一方の値が一定の間に他方の値が0からピークまで増加し、次に、一方の値がステップ状に変化してその値で一定となった時に他方の値がピークから0へ減少するというような変化を繰り返すものとしてもよい。さらに、
図14Cにおいて一方の値がステップ状に変化して、他方の値が0からピークまでの間を連続的かつ頻繁に変化しているが、これに限定されるものではなく、例えば、一方の値がゆるやかに連続的に変化し、他方の値が0からピークまでの間を連続的かつ頻繁に変化するものとすることもできる。
【0140】
スイープさせる規則は
図14に限定されるものではなく、直線状やステップ状の変化の他に、例えば曲線状の変化、正弦波状の変化、アナログ的な滑らかに変化、離散的な変化、ランダムな変化等であってもよい。交流電圧値、直流電圧値、交流電流値、直流電流値、周波数等を変化させることができ、この場合に、各値を1つずつ変化させること、複数の値を関連させて変化させること(例えば
図14Cの例を参照。)、複数の値を同時に変化させること等もできる。スイープの範囲については、例えば変形例1~3で規定した範囲内で行うことができ、あるいは、それよりもさらに広い範囲に広げることも可能である。
【0141】
任意の対象に対して、スイープの範囲内の所定のタイミングでは適切な電流値、電圧値又は周波数が発生されていることになるが、物質検出センサ32等によるフィードバックによりコントローラ10が対象の状態を把握し、スイープの変化のパターンと対応させて分析することにより、あるいは、サーバ側で分析することにより、自動的に適切な(あるいは最適な)電流値、電圧値又は周波数を検出することも可能になる。検出された適切な値は、その後のコントローラ10の制御に利用されると共に、サーバを介して、他のコントローラ10においても共有するようにすることも可能である。
【0142】
以下、実施形態1の音質制御装置1について弦楽器の例を挙げて説明する。楽器に直接電極を取り付ける場合と、楽器ケースに電極を取り付ける場合とがあるが、官能試験では、楽器ケースに電極を取り付けて、所定時闇電磁波を照射した後に、演奏した結果を検討した。
図15(A)はギターに電極24を取り付けた場合を示し、
図15(B)はギターケースに電極25~28を取り付けた場合を示し、
図15(C)はギター内部に電極を設けた場合を示している。
【0143】
電極をギターないしギターケースに取り付ける位置によって、電極からギターに印加する電磁波の方向を調整し、ギターの内部ないし表面の水分を微細化すると共に、微細化した水分を連珠配列し、この配列方向を印加された電磁波に応じた所望の方向に制御することにより、ギターの品質を制御可能である。特にギターの材料である木材に含まれる水分の状態は、ギターの音質にも影響を及ぼすため、ギターの各部の木材の水分配列状態を制御することは、ギターの音質改善に役立つ。各電極の配置及び数は、ギターの構造やケースの構造に合わせて適宜調整可能である。また、例えば2対の電極をそれぞれ交差する方向に配置し、二次元方向に任意の強さ及び方向の電磁場を発生させることができ、また、例えば3対の電極をそれぞれ交差する方向に配置し、三次元方向に任意の強さ及び方向の電磁場を発生させることができる。この場合、電極からギターに二次元ないし三次元方向に任意の強さ及び方向の電磁場を印加することにより、ギターの形状に応じて、ギター内部ないし表面の水分を微細化すると共に、微細化した水分を連珠配列し、この配列方向を所望の方向に制御することにより、ギターの品質を制御することが可能である。
【0144】
図15(A)では、ギターの表板に負極(アース側の電極)の電極24Bが、ギターの裏板に正極の電極24Aが取り付けられている。コントローラ10(図示省略)は、ギターから離して配置しているが、コントローラ10をギターに取り付けてもかまわない。ギターに電磁波を照射する際の、電極への印加電圧は、特に限定されるものではないが、例えば交流100V、周波数50kHzとすることができる。電磁波の照射時間は概ね5分以上で効果が得られ、特に限定されるものではないが、例えば10分程度にわたり電磁波を印加すればよい。したがって、例えば、ギター使用前の10分間程度にわたり電極から電磁波を印加しておけば、その後、電磁波を照射を停止した後にも、本実施形態の音質制御装置により電磁波を照射することにより得られるギターの内部ないし表面に存在する水分への作用が持続し、後述のような良好な効果が持続される。このため、電極からギターへ電磁波を照射する例えば10分間だけ、コントローラへの電源供給を行えばよいので、電源の供給のしかたの自由度が増し、例えば電源をバッテリ、例えば充電式バッテリとすることも可能である。電源が充電式バッテリであれば、ギターを使用していない時であって、商用電源が確保できる際にバッテリを充電しておき、ギター演奏が必要となる前の例えば10分間にわたり電極からギターへ電磁波を照射するようにすればよい。
図15(A)では、電極24A、24Bをギターのボディの表板と裏板に取り付ける例を説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない、例えば、ギターのネックや側板に取り付けるようにしてもよい。また、電極24A、24Bの配置には、該電極がギターの振動や共鳴に影響を及ぼすことも考慮して決定される。
【0145】
図15(B)では、エレキギターのボディに電極27が内蔵されている。電極27は1個であるものを例示したが、一対の電極とすることも可能であり、この場合、例えば、負極(アース側の電極)をボディの表面板側に取り付け、正極の電極をボディの裏面板側に取り付ける。コントローラ10(図示省略)は、ギターから離して配置しているが、コントローラ10をギターに取り付けてもかまわない。ギターに電磁波を照射する際の、電極への印加電圧は、特に限定されるものではないが、例えば交流100V、周波数50kHzとすることができる。
図15(A)の場合と同様に、電磁波の照射時間は概ね5分以上で効果が得られ、特に限定されるものではないが、例えば10分程度にわたり電磁波を印加すればよく、その後、電磁波を印加しない状態でも、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより得られるギターの内部ないし表面に存在する水分への作用が持続し、後述のような良好な効果が持続される。
【0146】
図15(C)では、ギターケースの底面のネックに対応する部分に正極の電極25Aが取り付けられ、ギターケースの蓋内面のネックに対応する部分に負極(アース側の電極)の電極25Bが取り付けられ、ギターケースの底面のボディに対応する部分に正極の電極26Aが取り付けられ、ギターケースの蓋内面のボディに対応する部分に負極(アース側の電極)の電極26Bが取り付けられている。特に限定されるものではないが、コントローラ10(図示省略)は、ギターケースに取り付けられており、コントローラ10としては、電池駆動式のものを採用することが望ましい。なお、コントローラ10をギターケースから離れた位置に設置することも、商用電源により駆動するようにすることもできる。ギターに電磁波を照射する電極への印加電圧は、特に限定されるものではないが、例えば交流100V、周波数50kHzとすることができる。
【0147】
図15(C)はギターケースの内面に電極を設ける例を説明したが、この電極の配置は一例であり、本実施形態をこれに限定するものではない。電極の数は少なくとも1個であればよく、例えば一対又は複数対の電極を設置することにより、本実施形態の音質制御装置によりギターに対して電磁波を照射することができる。ギターケースの内面に設置された電極から、本実施形態の音質制御装置により電磁波を照射する設定は、特に限定されるものではないが、電極に加えらえる電圧は交流100V、周波数50kHzであり、印加時間は10分とする。例えばギター使用前の10分間にわたり、本実施形態の品質制御装置によりギターに電磁波を照射すれば、その後、電磁波を照射を停止し、収納ケースからギターを取り出した後にも、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより得られるギターの内部ないし表面に存在する水分への作用が持続し、後述のような良好な効果が持続される。このように、収納ケースからギターを取り出した後にも効果が持続するため、音質制御装置1の電極を収納ケースに設けた場合には、ギター本体に音質制御装置1を取り付ける必要がないため、ギターが持つ本来の振動や共振特性に対して音質制御装置1が不要な影響を与えることがない。
【0148】
図15(D)は、本実施形態の品質制御装置をギターケースに取り付ける別の例である。ギターケースの蓋内面には電極13が取り付けられ、ギター収納部の底面には電極14が取り付けられる共に、ギターケース内側面には、コントローラ10が取り付けられている。
図15(D)には、商用電源から電力を供給するための電力線が示されているが、本実施形態はこれに限定されるものではないく、例えば電池駆動式のものを採用することも可能である。また、コントローラ10をギターケースから離れた位置に設置することもできる。ギターに電磁波を照射する電極への印加電圧は、特に限定されるものではないが、例えば交流100V、周波数50kHzとすることができる。
【0149】
図15(D)はギターケースの内面と底面に一対の電極を設ける例を説明したが、この電極の配置は一例であり、本実施形態をこれに限定するものではない。電極の数は少なくとも1個であればよく、例えば一対又は複数対の電極を設置することにより、本実施形態の音質制御装置によりギターに対して電磁波を照射することができる。ギターケースの内面に設置された電極から、本実施形態の音質制御装置により電磁波を照射する設定は、特に限定されるものではないが、電極に加えらえる電圧は交流100V、周波数50kHzであり、印加時間は10分とする。例えばギター使用前の10分間にわたり、本実施形態の品質制御装置によりギターに電磁波を照射すれば、その後、電磁波を照射を停止し、収納ケースからギターを取り出した後にも、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより得られるギターの内部ないし表面に存在する水分への作用が持続し、後述のような良好な効果が持続される。
【0150】
図15(D)の品質制御装置では、コントローラ10にはさらに、温度計及び湿度計が内蔵ないしは外付けで設けられており、コントローラ10は、ギターケース内の温度及び湿度を測定しギターケース内の温度及び湿度に適した電磁場をギターに印加するように、電極13、14に印加する電流ないし電圧を制御する。コントローラ10、又は、ギターケースの外面には、コントローラ10からの情報を表示する表示部が設けられており、この表示部には、温度計及び湿度計により検出された温度及び湿度を、制御情報と共に、表示することが可能である。制御情報には、電源のON/OFF、設定モード、設定値、測定値等の制御パラメータが含まれる。
【0151】
楽器の種類は、弦楽器に限定されるものではなく、管楽器、打楽器等、あらゆる楽器に適用可能である。例えば、バイオリン、ギター、チェロ、ペース、ウクレレ、笛、リード、パアノ、木琴、琴等の木の材質を使つた楽器、ドラム、太鼓等革の材質を使った楽器、琴、三味線等、木と革の材質を使つた楽器等が挙げられる。また、楽器以外の音響装置も本実施形態の対象である。例えば、スピーカ一、ウーハー等のに木の材質を使つたオ一ティオ機器、へツドフオン等の木や樹脂の材質を使つた聴覚機器も本実施形態に包含さえる。
【0152】
<官能試験>
被験者の使用しているギターにチューニングを完了し、同じ力で1弦から6弦ままで弾いて、その後、開放弦での和音を弾く。その音を録音する。次に、本実施形態の音質制御装置による電磁波を、ギターの表面、裏面、横板、ネック、弦に各10分間照射し、その後同じ力で1弦から6弦まで弾いてその後、開放弦での和音を弾<。その音を録音する。この時に聞いたギターの音質を、サスティーン、音の鳴り、及び、アタック音の項目別に被験者が評価し、さらに、被験者がギターを弾いた時の感触として弦の滑りについて、評価した。本実施形態の音質制御装置による電磁波制御のパラメータは、交流電圧値100V、周波数50khzとした。
【0153】
<官能試験結果>
図16は、アコーステックギターの官能試験結果であり、
図17は、エレキギターをアンプにつないだ音色についての官能試験結果であり、
図18はウッドベースの宮能試験の結果であり、
図19は、ウクレレの官能試験結果である。
【0154】
図16では、15名の被験者がアコースティックギターの官能試験を行った。14名の被験者が照射後の方がサスティーン良いと評価し、高評価率は93%であった。また、14名の被験者が照射後の方が音の鳴りが良いと評価し、高評価率は93%であった。また、15名の被験者が照射後の方がネックのアタック音が良いと評価し、高評価率は100%であった。また、15名の被験者が照射後の方が弦が滑り弾きやすいと評価し、高評価率は100%であった。アコースティックギターの官能試験の結果、いずれの評価項目に対しても本実施形態の音質制御装置による電磁波を照射した方が、高評価率が高い。
【0155】
図17では、15名の被験者がエレキギターの官能試験を行った。9名の被験者が照射後の方がサスティーン良いと評価し、高評価率は60%であった。また、12名の被験者が照射後の方が音の鳴りが良いと評価し、高評価率は80%であった。また、11名の被験者が照射後の方がネックのアタック音が良いと評価し、高評価率は73%であった。また、15名の被験者が照射後の方が弦が滑り弾きやすいと評価し、高評価率は100%であった。エレキギターの官能試験の結果、いずれの評価項目に対しても本実施形態の音質制御装置による電磁波を照射した方が、高評価率が高い。
【0156】
図18では、3名の被験者がウッドベースの官能試験を行った。2名の被験者が照射後の方がサスティーン良いと評価し、高評価率は66%であった。また、3名の被験者が照射後の方が音の鳴りが良いと評価し、高評価率は100%であった。また、3名の被験者が照射後の方がネックのアタック音が良いと評価し、高評価率は100%であった。また、3名の被験者が照射後の方が弦が滑り弾きやすいと評価し、高評価率は100%であった。ウッドベースの官能試験の結果、いずれの評価項目に対しても本実施形態の音質制御装置による電磁波を照射した方が、高評価率が高い。
【0157】
図19では、8名の被験者がウクレレの官能試験を行った。5名の被験者が照射後の方がサスティーン良いと評価し、高評価率は73%であった。また、4名の被験者が照射後の方が音の鳴りが良いと評価し、高評価率は50%であった。また、5名の被験者が照射後の方がネックのアタック音が良いと評価し、高評価率は63%であった。また、7名の被験者が照射後の方が弦が滑り弾きやすいと評価し、高評価率は85%であった。ウクレレの官能試験の結果、いずれの評価項目に対しても本実施形態の音質制御装置による電磁波を照射した方が、高評価率が高い。
【0158】
<官能試験コメント1>
下記(a)~(c)は、ESP御茶ノ水店のクラフトギターのエキスパート3名のコメントである。(d)は、プロのギター演奏家の(元フェルナンテス ギターテクニシャン 近藤大介氏)のコメントである。
【0159】
(a)ESPと自分のプライべ一トレコーテ'ィングスタジオのアコギ、エレキのギタ一数本でSolund&e(本実施形態の装置)を試した。
【0160】
(b)結論的には「Sound&e(本実施形態の装置による電磁波の)照射後に音が良質に変わる」と全員体感した。
【0161】
(c)全員が感じた良質感としては、「音の立ち上がり(ボディ・ネック鳴り)自体が、長い年月をかけてボディ・ネックの保水性が最適な枯れ具合になったヴィンテージ感が増し、Low~Highの弦をアタックしてポディ・ネックのレスポンスが早<なり、通称ポティ鳴りが良いやエッジが立つと言った現象が生じる事を体感しました。」等が挙げられる。
【0162】
(d)97年のオリジナルカスタムギターで2年位弾いていないアコギを使用。「しばらく弾いてなかったので響きが悪かったのが改善した。音の輪郭がトゲトゲしくなくなってバランスが良くなり、音の温かみが出た。ネック鳴りは倍くらい振動する感じ。コードならしたときのまじりがなくまとまりが出る。弦がめちゃくちゃ滑る。1年位弾いていない工レキギターで、アンプを通した音の出音が違う。また、音の粒立ちがくっきりし、音の透明性が向上し、経験したことのないような変化で、びっくりするくらい変わり意味がわからない。」
【0163】
<官能試験コメント2>
下記(e)は、バイオリニストによる評価コメントである。電磁界の印加条件は、電極への印加電圧が交流100V、50kHzで、バイオリンの表板、裏板、側板、ネック、弦に各10分間印加した。評価対象のバイオリンは、イタリアのプレッセンダ、1825年製で、フェルナンブーコ材を使用している。
【0164】
(e)「音のザラつきがなくなって、とてもクリアーで透明感が出た。音のザラつきがなくなって、とてもクリアーで透明感が出た。音がカサカサしていたのが輝きが出た。音量が上がっている。(一般的に)中音域は響きにくいが、(電磁界印加後は)太さが増し出やすいくなった。全体のバランスが取れてきた。高音域は音の立上あがりがはっきりにしてきた。音の発音が良くなる。スッキリした音。弓の吸い付きがよくなった。」
【0165】
以上、アコーステックギター、エレキギター、ウッドベース、ウクレレの官能試験により、各楽器の音質ないし品質について、サスティーン、音の鳴り、及び、アタック音のいずれの項目についても、本実施形態の音質制御装置による電磁波を照射した方が、高評価率が高く、また、ミュージシャンからのコメントも高評価であるという結果が得られた。この結果から、本実施形態の音質制御装置による電磁波を照射することにより、楽器の音質ないし品質を高める効果があることが分かった。本実施形態の音質制御装置の官能試験においては、制御装置のパラメータを、交流電圧値100V、周波数50khzとしたが、本実施形態において採用可能な制御パラメータはこれに限定されるものではなく、交流電圧値は0V~2000V、周波数0~1MHの間で調整可能であり、また、さらに直流オフセット電圧として、例えば0Vから2000Vの間で調整された直流電圧を印加してもよい。
【0166】
本実施形態の音質制御装置は、楽器本体、楽器ケースだけに適用可能であるのではなく、例えば、ギターの製造工程、より具体的には、ニスの乾燥工程、塗料の乾燥工程、木を削る工程、乾燥工程等にも適用可能である。各製造工程において本実施例の音質制御装置の電極から所定の電磁波を製造中の楽器に照射することにより、楽器の音質ないし品質を向上させることができる。例えば、次のような工程を含むことにより、楽器の音質ないし品質を向上することができる。木材の乾燥時に木材に電磁界を印加することにより、木材内部の水分を極小化し、整列した後で、乾燥させる。ニスを塗布する前に、ニスに電磁界を印加しておくことにより、ニスに含まれる水分を極小化し、整列した後で、ギターにニスを塗る。木を削った後の部分の効果減少を改善する。楽器部品や製品自体の乾燥前に電磁界を印加することにより、材質中の全ての水分を極小化し、整列した後で乾燥する。楽器完成後に電磁界を印加することにより、材質中の全ての水分を極小化し、整列した後で乾燥する。また、完成品だけでなく楽器の部品にも適用可能である。例えばギターの弦に対して本実施例の音質制御装置の電極から所定の電磁波を照射することにより、弦がすべすべしたり、弦をこすった時の音鳴りを低減させたりする効果がある。
【0167】
多くの楽器には木材が使用されており、この木材の内部には自由水と結合水の2種類の水分が存在する。楽器用の木材には主に気乾材が用いられるが、その含水率は11~17%程度である。気乾材の内部にも自由水と結合水とが存在し、結合水は水素結合により、木材組織と一体化している。木材の音響性能は、木材内部の乾燥状態すなわち水分の状態によって大きく影響を受ける。木材は乾燥させ過ぎても、また、湿度が高すぎても適切な状態ではない。そこで、本実施形態の音質制御装置の電極から所定の電磁場を楽器に印加することにより、木材の内部に存在する水分を微細化し、特定の方向に連珠状に配列させる。すると、自由水同士も結合し、しかも特定の方向に連珠状に配列する。さらに、結合水についても特定方向に配列することにより、木材の収縮状態が安定すると共に振動特性、木材中の音波の伝達特性、木材の強度特性等が調整される等、木材の音響性能が向上する。また、木材以外の材質、皮革、樹脂、ゴム、金属等においても、本実施形態の音質制御装置の電極から所定の電磁場を楽器に印加することにより、各材質の内部ないし表面の水分に作用し、水分の微粒化し、特定の方向に連珠状に配列させることにより、楽器の音響性能が向上する。
【0168】
本実施形態の音質制御装置の電極から所定の電磁場を楽器に印加することにより、ギターの弦についても音響的にすぐれた効果を奏する。ギターの弦は、プレーン弦と、ワウンド弦とに分けられる。プレーン弦は主に、比較的細い1、2、3弦に用いられ、ワウンド弦は主に、比較的太い4、5、6弦に用いられる。プレーン弦は単一素材で作られた弦で、プレーン弦にはナイロン等の化学繊維、鋼線の一種であるピアノ線等が用いられている。ワウンド弦は、芯線のまわりに巻線を巻き付けたもので、例えばクラシックギターに使われるガット弦では、芯線にナイロン等の化学繊維、巻線に銀メッキされた銅のワイヤー等が使用される。また、エレクトリックギターやフォークギターでは、例えば、プレーン弦にはピアノ線に錫メッキを施したものが使用され、ワウンド弦の芯線としてはピアノ線が用いられ、巻線としては、銅合金、例えば青銅等が用いられている。本実施形態の音質制御装置の電極から所定の電磁場を楽器に印加することにより、これらの弦の素材の内部ないし表面に存在する水分を微細化し、特定の方向に連珠状に配列させることにより、弦の音響性能が向上する。
【0169】
エレクトリックギターは、ピックアップによってギター減の振動を電気的信号に変換しているので、電磁ノイズの影響を受けるおそれがある。エレクトリックギターが奏でる音の周波数は、80Hz~2000Hz程度であり、アンプから発生させることができる上限の音の周波数でも7kHz程度である。また、音域の広い楽器として、88の鍵盤のピアノが奏でることができる周波数は、27~4200Hz程度である。人間の耳の可聴域は、20Hz~20KHzといわれているため、本実施形態の音質制御装置の電極から発生される50kHzの周波数の電磁場が、楽器に対してノイズとなることはないく、人間の耳にノイズとして認識されることもない。
【0170】
[実施形態2]
実施形態2では、運動用具の例について説明する。本実施形態の品質制御装置により電磁波を運動器具に照射することにより、例えば、ラケットのガットの滑りを制御して打球感を向上する効果、ゴルフクラブの品質向上による飛距離が向上する効果がある。本実施形態の品質制御装置によって運動用具に電磁波を印加する際に、運動用具のケースないしカバーに電極を配置すると、運動用具の所望の位置に電磁波を印加しやすい。また、運動用具のケースないしカバーに取り付ける電極の位置によって、電極から運動用具に印加する電磁波の方向を調整し、運動用具の内部ないし表面の水分を微細化すると共に、微細化した水分を連珠配列し、この配列方向を印加された電磁波に応じた所望の方向に制御することにより、運動用具の品質を制御可能である。運動用具に電磁波を印加する方法は、運動用具のケースないしカバーに電極を取り付けることに限定するものではなく、例えば作業台に固定された電極から運動用具に電磁場を印加してもよいし、運動用具に直接電極を取り付けてもい。また、例えば2対の電極をそれぞれ交差する方向に配置し、二次元方向に任意の強さ及び方向の電磁場を発生させることができ、また、例えば3対の電極をそれぞれ交差する方向に配置し、三次元方向に任意の強さ及び方向の電磁場を発生させることができる。この場合、電極から運動用具に二次元ないし三次元方向に任意の強さ及び方向の電磁場を印加することにより、運動用具の形状に応じて、運動用具の内部ないし表面の水分を微細化すると共に、微細化した水分を連珠配列し、この配列方向を所望の方向に制御することにより、運動用具の品質を制御することが可能である。
【0171】
その他、特に限定されるものではないが、スポーツ用品としては、サーフボード、ボディーボード、スキムボード、カヌー、カヤック、ヨット、ボート、船、車、バイク、自転車、飛行機、モータースポーツ、竹刀、スケートボード、スノーボード、一輪車、銃、弓、矢、キュー、ドライバー (ゴルフ)、アイアン (ゴルフ)、パター(ゴルフ)、ゴルフボール、スキー板、ストック (スキー)、スケートボード、ローラースケート、バット (野球、クリケット、ソフトボール等)、グラブ (野球、クリケット、ソフトボール等)、球技用ボール(例えば、野球、クリケット、ソフトボール、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、バスケットボール、バレーボール、テニス、スカッシュ、ラケットボール等)、ラクロス、バドミントンラケット、バドミントンのシャトルコック、テニスラケット、卓球ラケット、ピンポン玉、砲丸、円盤、槍、ハンマー、また、上記各スポーツ用品の収納ケース等のさまざまな用具や収納ケースにも適用でき、本実施形態の品質制御装置により電磁波を各運動器具に照射することにより、各運動器具の品質を向上することができる。
【0172】
サーフボード、ボディーボード、スキムボードに関しては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、ボード材料の内部ないし表面の水分に作用し、スピード、フロー、マニューバーが改善される。
カヌー、カヤックに関しては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、船体の材料や表面の塗装の内部ないし表面の水分に作用し、船首において波の抵抗を減らすと共に、流れに乗るときは適度な抵抗を保つ等の品質を向上できる。
ヨット、ボート、船に関しては、船体の材料や表面の塗装の内部ないし表面の水分に作用し、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより水との抵抗、例えば造波抵抗、摩擦抵抗、粘性圧力抵抗を低下することができる。
【0173】
車、バイク、飛行機、モータースポーツ用乗物に関しては、燃料に対して本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、燃料中の水分に作用すること等により、燃費が向上する。
自転車、一輪車に関しては、燃料に対して本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、特に各部品の結合ないし接触部分の油分や水分に作用し、チェーン、ギア、プーリー、ハブの等の機材抵抗や、路面抵抗等を低減することができる。
【0174】
竹刀(剣道)に関しては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、竹の内部ないし表面の水分に作用し、竹の品質を向上でき、しかも耐久性を向上し、割れ難くなる。
銃に関しては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、銃自体の材質に作用すると共に、カートリッジを構成している、弾頭、薬莢、火薬、雷管等にも作用し、特に各部に存在する水分に作用し、チャンバー内での燃焼速度が適切に調整され、この結果、精度、射程距離の向上と共に、安全性を増す等の品質向上ができる。
弓、矢、アーチェリー、クロスボーに関しては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、弦や板バネ等の性能を向上すると共に、矢の材質へも作用することにより、特に、各部品の内部ないし表面に存在する水分に作用することにより、精度、射程距離の向上等の品質が向上する。
【0175】
キューに関しては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、素材である木材中の水分に作用することにより、シャフトの滑り性、先角やタップの状態、木材の衝撃の伝達特性等が適正化され、ボールに加えられる力、回転の質が向上する。
【0176】
ドライバー (ゴルフ)、アイアン (ゴルフ)、パター(ゴルフ)、に関しては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、シャフトやフェースが設けられている部分の材質へ作用すると共に、フェースの表面の水分状態を適正化することにより、特に各部の内部ないし表面に存在する水分に作用し、フェースからボールへの力の伝達、滑り、スピンに影響を与え、ボールの飛距離の向上されると共に、ボールに与えられる回転が適正化される。
ゴルフボールボールに関しては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、コアやカバーの内部、カバーの表面、ディンプル等における水分状態にも作用し、ゴルフクラブから伝えられる力の伝達、滑り、スピンに影響し、また、ディンプルの水分状態による空気抵抗とボールのスピンとの関係により、ボールの飛距離の向上し、方向安定性が向上する。
【0177】
スキー板、スノーボードに関しては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、ボードの材質に作用して剛性や弾力性や滑走面の状態を適正化し、また、滑走面に塗布されるワックスに作用し、特に各部材やワックスの内部ないし表面に存在する水分に作用し、潤滑摩擦を低減することができる。また、ストック (スキー)については、ストックの材質、アルミやカーボン等に作用し、剛性や弾力性が適正化され、また、リングや石突きの状態にも作用し、特に各部材の内部ないし表面に存在する水分に作用し、雪面との接触を適正化する。
【0178】
スケートボード、ローラースケートに関しては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、各部品間に存在する油分ないし水分等の液体に作用し、ベアリングの回転抵抗等の機材抵抗を低減する効果がある。また、この電磁波は、スケートボードのデッキやグリップテープにも作用し、特に各部の内部ないし表面に存在する水分に作用し、デッキの剛性や弾力性、グリップテープの摩擦性能にも効果を奏する。
【0179】
バット(野球、クリケット、ソフトボール等)は、剛性の高い材質からなり、打撃中心において打撃を行うとことで、手で握るグリップ部分への衝撃が緩和さえるように、振動の節が設定されるが、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、バットの材質、木材や金属等に作用し、特にバットの内部ないし表面に存在する水分に作用し、バットでボールを打撃した場合のバット内での振動の伝わり方が改善されると共に、バットからボールへ加えられる力の特性や回転状態が改善され、打撃効率を向上することができる。本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射し、打撃効率が向上された場合の打撃音は、電磁波を照射する前と比較すると、明らかに透明感のある澄んだ音となり、楽器の場合の音質の向上とも関連した効果である。
グラブ (野球、クリケット、ソフトボール等)の材質は牛革等の革製であり、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、革の内部ないし表面に存在する水分に作用し、革の柔軟性、硬度、クッション性、耐久性等の品質を向上する。
【0180】
球技用ボール(例えば、野球、クリケット、ソフトボール、ラクロス、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、バスケットボール、バレーボール、テニス、スカッシュ、ラケットボール等)に関しては、野球の硬式球の芯はコルクや低反発ゴム、クリケットではコルクの芯、ソフトボールはコルク芯やカポック芯が用いられ、ラクロスでは硬質ゴム製のボールが用いられ、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、バスケットボール、バレーボールではブチルゴムチューブやラテックスゴムチューブ等の空気チューブが用いられ、表面は、天然皮革、合成皮革、ゴム、樹脂等で製造されており、テニスではゴムボールの表面にフェルト、スカッシュ、ラケットボールでは中空のゴムボールからなるところ、これらのボールに本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射すると、芯となる材料の素材の水分に作用し、弾力性と剛性に影響を与えると共に、表皮を構成する材質に対しても作用し、特に、各部の内部ないし表面に含まれる水分に作用し、接触時のインパクトによる衝撃の伝達特性、摩擦、滑り等の特性に影響を与えること等により、これらのボールの特性を向上し、打球感の向上、コントロール性の向上、スピン特性の向上等の品質が向上する。
【0181】
バドミントンラケット、テニスラケットについては、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射すると、フレームやシャフトの材質に作用して剛性や弾力性や衝撃伝達特性等に影響を与え、さらに、ストリングスに作用することにより、特にラケット各部やストリングスの内部ないし表面に存在する水分に作用することにより、ストリングスの反発特性、滑り特性、シャトルやボールに対するスピン付与特性、耐久性等の性能を向上し、打撃感の向上、打球速度の向上、コントロール性の向上等の品質が向上する。
バドミントンのシャトルコックは、コルクの芯に、水鳥の羽根を挿して製造されているため、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射すると、コルク及び羽根の内部ないし表面の水分に作用し、ラケットによるショットの際のストリングスからシャトルコックへ伝達される力の特性、シャトルコックの回転特性が改善され、打撃感の向上、打球速度の向上、コントロール性の向上等の品質が向上する。
【0182】
卓球ラケットについては、木材の単板や、木材又はカーボンやZLファイバー等の繊維を編んだシートを複数貼り合わせた合板のラケットの表面に、合成ゴムや天然ゴム製のラバーである、裏ラバー、表ラバー、つぶ高ラバー等が貼られているので、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射すると、ラケットの素材である木材や繊維、ラバーのゴムの内部ないし表面の水分に作用し、打撃時にラバーがピンポン球に与える、打撃力、回転力を調整することにより、打球速度の調整、打撃感の向上、コントロール性(打球軌跡、回転量等)向上等の品質が向上する。
また、ピンポン球については、セルロイド又はプラスチック製の中空のボールであり、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射すると、ボールの素材であるセルロイド又はプラスチックの内部ないし表面の水分に作用し、打撃時にラケットのラバーからピンポン球に与えられる、打撃力、回転力が調整されることにより、打球速度の調整、打撃感の向上、耐久性の向上、コントロール性(打球軌跡、回転量等)向上等の品質が向上する。
【0183】
陸上競技用の砲丸投用の砲丸、ハンマー投用の砲丸(砲丸・ワイヤー・グリップ)、円盤(金属の縁枠がはめ込まれた木製の円盤)については、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射すると、内部又は表面の水分に作用し、投てき者の手によるグリップ性の向上、重心のブレの低減、空気抵抗の低減等に伴う投てき距離の向上等の効果がある。
陸上競技用のやり投用のやりについては、先端部分の穂先と、選手が握る部分のグリップと、本体部分の柄とからなり、男子用が長さ2.6m~2.7m、重さ805g~825gで、女子用が長さ2.2m~2.3m、重さ605g~625gであり、材質はジュラルミン、ステンレス等の金属や、カーボン繊維や、グラファイト繊維等からなり、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射すると、やりの柄の材質の内部ないし表面の水分に作用して長軸まわりの回転、振動特性、振動減衰性特性等が調整され、また、グリップ部分の摩擦特性等が調整され、投てき距離を向上することができる。
【0184】
上記各スポーツ用品の収納ケースの内面に少なくとも1個の電極を設置し、例えば一対又は複数対の電極を設置することにより、収納されたスポーツ用品に本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することができる。各スポーツ用品の収納ケースの内面に設置された電極から、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射する設定は、特に限定されるものではないが、電極に加えらえる電圧は交流100V、周波数50kHzであり、印加時間は1時間とする。例えばスポーツ用品の使用前の1時間にわたり本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射すれば、その後、電磁波を照射を停止し、収納ケースから各スポーツ用品を取り出した後にも、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより得られる各スポーツ用品の内部ないし表面に存在する水分への作用が持続し、上記のような各効果が持続される。
【0185】
各スポーツ用品の収納ケースに設置する品質制御装置の電源をバッテリとすることが望ましい。収納ケース内面に設けられた電極から各スポーツ用品に対して電磁波を照射する時間は、上記のとおり、各スポーツ用品使用前の1時間程度でよいため、電源がバッテリである場合にも、バッテリの容量を大容量にする必要はなく、しかも、バッテリを充電式にしておけば、品質制御装置が電磁波を照射していない期間に充電を行うことが可能である。ここでは、各スポーツ用品の収納ケースの内面に電極を設けるという表現を用いたが、これは電極が収納ケースの内面に?き出しになっていることに限定することを意図したものではなく、本実施形態は収納ケースに設置した電極から、各スポーツ用品に電磁波を照射できるように設置されていれば、この電極の配置は収容ケース内のどこでもかまない。例えば、収容ケースの内側に埋め込むように配置することも可能である。また、電極は板状のものに限定されるものではなく、薄状電極やシート状電極を採用することもできるため、収納ケースの形状に対応するように電極を設置することができる。
【0186】
図20は、本実施形態の品質制御装置を野球用のバットのケースに適用した例である。バットケースの蓋内面には電極13が取り付けられ、バット収納部の底面には電極14が取り付けられる共に、バットケース内側面には、コントローラ10が取り付けられている。
図20には、商用電源から電力を供給するための電力線が示されているが、本実施形態はこれに限定されるものではないく、例えば電池駆動式のものを採用することも可能である。また、コントローラ10をギターケースから離れた位置に設置することもできる。ギターに電磁波を照射する電極への印加電圧は、特に限定されるものではないが、例えば交流100V、周波数50kHzとすることができる。
【0187】
図20はバットケースの内面と底面に一対の電極を設ける例を説明したが、この電極の配置は一例であり、本実施形態をこれに限定するものではない。電極の数は少なくとも1個であればよく、例えば一対又は複数対の電極を設置することにより、本実施形態の音質制御装置によりバットに対して電磁波を照射することができる。
図20のバットケースでは4本のバットを収納できるものであるが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、バットの収納本数は、例えば3本以下でもよく、また、5本以上でもかまわない。バットケースの内面に設置された電極から、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射する設定は、特に限定されるものではないが、電極に加えらえる電圧は交流100V、周波数50kHzであり、印加時間は1時間とする。例えばバット使用前の1時間にわたり、本実施形態の品質制御装置によりバットに電磁波を照射すれば、その後、電磁波を照射を停止し、収納ケースからバットを取り出した後にも、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより得られるバットの内部ないし表面に存在する水分への作用が持続し、前述のような良好な効果が持続される。なお、電磁場の印加時間は1時間に特定されるものではなく、5分程度でも効果がある。
【0188】
図20の品質制御装置では、コントローラ10にはさらに、温度計及び湿度計が内蔵ないしは外付けで設けられており、コントローラ10は、バットケース内の温度及び湿度を測定しバットケース内の温度及び湿度に適した電磁場をバットに印加するように、電極13、14に印加する電流ないし電圧を制御する。コントローラ10、又は、バットケースの外面には、コントローラ10からの情報を表示する表示部が設けられており、この表示部には、温度計及び湿度計により検出された温度及び湿度を、制御情報と共に、表示することが可能である。制御情報には、電源のON/OFF、設定モード、設定値、測定値等の制御パラメータが含まれる。
【0189】
図21は、本実施形態の品質制御装置を卓球ラケットのケースに適用した例である。卓球ケースは、例えば、底側ケースと蓋側ケースとの2つの略方形のケースが一辺で繋がれ、両ケースが例えばファスナー等の固着部により留められる構造となっている。本実施形態の卓球ケースでは、蓋側ケースの内側天面に一対の電極13、14及び、コントローラ10が取り付けられている。この電極13、14及びコントローラ10の配置は、特に限定されるものではなく、例えば、一方の電極13を蓋側ケースの内側天面に設け、他方の電極14を内側底側に設けたり、あるいは、両電極13、14を底側ケースの内側底面に設けたりすることができる。また、電極13、14は、むき出しである必要はなく、例えば化粧布やクッション材等で電極13、14で覆っておくことにより、卓球ラケットに電極が直接触れることを防止し、卓球ラケットのラバー等を保護することができる。特に限定されるものではないが、例えば商用電源とすることもでき、また、例えば可搬性を考慮して充電式バッテリーとすることもできる。電極への印加電圧は、例えば交流100V、50kHとする。
【0190】
図21の卓球ケースにラケット2本と、ピンポン球2個を収容し、底側ケースと蓋側ケースとを重ね合わせてファスナー留めした状態で、電極13、14に電圧を印加して、電極からラケット及びピンポン球に対して、電磁界を印加する。電界の印加条件は、例えば、交流100V、周波数50Khz、印加時間は1時間とする。例えば卓球ケットを使用する前の1時間にわたり、本実施形態の品質制御装置により卓球ラケットに電磁波を照射すれば、その後、電磁波を照射を停止し、収納ケースから卓球ラケットを取り出した後にも、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより得られるラケット内部ないし表面に存在する水分への作用が持続し、前述のような良好な効果が持続される。なお、電磁場の印加時間は1時間に特定されるものではなく、5分程度でも効果がある。
【0191】
スポーツ用品にはさまざまな材質が含まれているが、いずれの材質の内部ないし表面には水分が存在している。本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、スポーツ用品の材質の内部ないし表面に存在する水分を微粒子化すると共に、特定の方向に連珠配列させることにより、スポーツ用品の品質を向上させることができる。金属材料についても、水分子が例えば水素結合等の状態で存在するため、本実施形態の品質制御装置により電磁波を照射することにより、金属の内部ないし表面に存在する水分に作用し、金属材料が用いられているスポーツ用品の品質を向上させることができる。電磁波の印加条件は、スポーツ用品の種類、使用状態、使用条件等に応じて、適宜設定される。上記実施形態において、交流電圧、周波数、印加時間等を例示したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、前述の本実施形態の電磁界印加条件の範囲内で、適宜調整可能である。
【0192】
[実施形態3]
図22を参酌して、実施形態3の品質制御装置1をイチゴの流通において、イチゴの品質制御を行う例を説明する。特に限定されるものではないが、本実施形態では品質制御装置1がイチゴの集荷場に設置された例について説明する。生産者に生産されたイチゴは、集荷場で検品・等級分けを行い、流通手段によりスーパー等の販売店に配達され、販売店で販売されるイチゴを購入した消費者が家庭においてイチゴを消費する。このようなイチゴの流通において、生産者(イチゴ農家)により生産されたイチゴが集められる集荷場において、検品・等級分けされたイチゴはパック詰された状態で、イチゴの品質を注文に応じた所望の状態に制御するために、本実施形態の品質制御装置1の電極からイチゴに対して電磁場が印加される。管理サーバー40によって、各販売店のイチゴの売上情報、複数のイチゴの生産者のイチゴの生産情報(品種、生産能力、生産状況、生産予定)、各集荷場でのイチゴの集荷状況、流通手段の運行状況等を統括的に管理することができる。これにより、管理サーバーは、各販売店におけるイチゴの在庫状況や売上情報等を把握した上で発注情報を集計し、この発注情報を通信ネットワーク43を介して集荷場の品質管理装置1、生産者、流通手段に送信する。
【0193】
本実施形態では、品質制御装置1によって電磁場を印加する物質として、イチゴを例示しているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ブドウ、メロン、すいか、マンゴー、モモ、りんご、梨、バナナ、オレンジ、グレープフルーツ、みかん、ブルーベリー、クランベリー、さくらんぼ等の果物に広く適用できる。また、本実施形態の品質制御装置1は、果物だけではなく、野菜、穀物、豆類、キノコ類等にも広く適用できる。
【0194】
本実施形態において、品質制御装置1としては、前述の
図1と同様の装置が用いられ、イチゴに対して電界、磁界、電磁界又は電磁波の少なくとも1つを発生する少なくとも1個の電極、例えば一対、または、複数対の電極13、14に印加する電圧の交流電圧及び周波数を制御して、イチゴの味、香り、食感、鮮度、熟成度又は審美性の少なくとも一つを含む品質を所定の状態に制御する。
【0195】
電極の形状としては、平板状電極を用いることができるが、本実施形態の電極の形状は、前述のとおり、平板状電極に限定されるものではなく、様々な態様のものが採用できる。様々な態様の電極が採用できるため、電極の配置や大きさも自由に設計できる。例えば、一対の電極13、14を集荷場で用いられるコンベアの幅方向両端縁に配置したり、イチゴの収容ラックに電極を配置したり、箱詰めされたイチゴに対してまとめて電磁波を照射できるように、広い面積を有するシート状電極を倉庫の壁面に設けたりすることもできる。
【0196】
本実施形態の品質制御装置1により、イチゴに電磁波を印加する際の電極13、14への電圧印加時間を調整することにより、例えば
図22(A)~(D)のグラフに示すように、所定期間経過後、例えば24日後の各品質指標、例えば、老化指標(AGEs Score)、硬度(Hardness[N])、糖度(Brix[%])、酸度(acidity[ml])を、曲線L1~L4に示すような特性となるように制御することができる。この時、電極に印加した電圧は、交流100V、周波数50kHzとした。ここでは、例としてパールホワイトという品種のイチゴの24日後のデータを示したが、本実施形態では様々なイチゴの品種について、電磁波の照射後1日後からn日後(nは自然数)の測定されたデータ(以下「電磁波印加情報」という。)が記憶部37に格納されている。電磁波印加情報としては、さらに温度条件、電極13、14に印加する交流電圧値、周波数等のパラメータを変えた多数のデータを含めることができる。なお、曲線L1~L4に特異点がある場合等、異常なデータが発生した場合には、そのデータは利用せず、再測定を行う等の対応を行う。また、他の品質制御装置1a~1nにおいて格納されている電磁波印加情報についても、管理サーバ40で集計され、データベース43に格納されており、各品質制御装置におけるイチゴに対する電磁波印加制御に利用できる。同条件のデータが複数取得できた場合には平均値を用いる等の統計的な処理を行った上でデータ解析を行う。ただし、この場合、例えば季節や温度条件等によりイチゴの品質特性データに相違が発生する場合があるため、統計処理にあたってはデータ測定条件に留意が必要である。
【0197】
図22の右側には、本実施形態の品質制御装置1によるPC31の入力画面の例が示されている。対象となる集荷場において、あるスーパーから例えば、3月1日付で、「パルホワイトを3月25日に48パック納品」という注文を受けると、PC31の入力画面からの入力により、品種、収穫日、納品日、数量を、例えば、品種として「パルホワイト」、納品日「3月25日」、数量「48パック」との発注情報が制御部36に入力される。あるいは、この注文情報は通信ネットワーク45を介して制御部36に直接入力されるようにしてもよい。注文情報の中で、品種、納品日、数量の入力は必須である。各生産者の生産した在庫又は生産計画についての情報(以下「在庫情報」という。)は、管理サーバ40で集計され、データベース43に格納されている。例えば
図22のように、収穫日を指定しない場合には、在庫情報を利用して自動的に納品日に適合するイチゴが選択される。
【0198】
発注情報には、品種、収穫日、納品日、数量に加え、さらにAGEs、硬度、糖度、酸度について、それぞれ「高め」「中間」「低め」の3つの値からなる情報が含まれている。例えば、
図22では、AGEs「中間」、硬度「低め」、糖度「中間」、酸度「高め」が選択さえた例が示されている。ここでは、3段階での設定とする例を説明したが、本実施例はこれに限定されるものではなく、例えば2段階であっても、4段階以上であってもよい。また、例えば、「高め」「中間」「低め」の3つの加えて、「選択なし」を加えてもよく、「選択なし」が設定された場合には、このパラメータの項目は演算時に考慮されない。
【0199】
品種、収穫日、納品日、数量、AGEs、硬度、糖度、酸度が設定されると、制御部36において、この設定に適合するイチゴの在庫及びイチゴに印加される電磁場の条件が、データベース43に格納された在庫情報及び電磁場印加情報を利用して演算される。具体的には、例えば、
図22のように、数量を満たすパールホワイトの在庫が選択されると共に、AGEs「中間」、硬度「低め」、糖度「中間」、酸度「高め」となる電磁場印加時間が演算される。例えば電場印加後24日の条件で、電場印加時間40秒との結果が得られる。集荷場においては、本実施形態の品質制御装置1の電極13、14から、選択された在庫であるパールホワイトに対して、演算された40秒間にわたり電磁場を印加された後、24日後の納品日である3月25日に発注のあったスーパーに納品されるように流通計画が組まれる。なお、ここで電場印加後24日との条件は単なる一例にすぎず、イチゴの在庫情報、流通条件、保存条件等から許容される日数の範囲が決定される。保存条件としては、本実施形態の品質制御装置1により電磁波を印加した後のイチゴは保存期間が大幅に伸びること、例えば保存条件によってはイチゴを30日以上保存可能であることが確認されている。
【0200】
制御部36での電磁場印加時間の演算に当たっては、特に限定されるものではないが、例えばファジー推論を用いることができる。AGEs、硬度、糖度、酸度に対して「低め」「中間」「高め」とするメンバーシップ関数を定め、ファジールールの後件部として、電磁場印加時間が「短い(20秒)」「標準(40秒)」「長い(80秒)」「とても長い(240秒)」を設定する。管理サーバ40は、データベース43に格納された電磁場印加情報に基づいて、ファジールール(IF-THENルール)を自動的に生成する。また、AGEs、硬度、糖度、酸度の条件に重みづけを行ってもよい。
【0201】
また、制御部36での電磁場印加時間の演算に当たっては、機械学習を利用することができる。管理サーバ40において、データベース43に格納された情報、各品質制御装置で収集された情報に基づいて、注文情報を入力とし、注文に応じた在庫、及び、電磁場印加条件(印加時間、印加電圧の電圧値、周波数等)を出力とする深層学習による訓練により、学習モデルを演算する。制御部36において、管理サーバ40で訓練された学習モデルを用いて、注文情報から、注文に応じた在庫、及び、電磁場印加条件を演算する。
【0202】
物体検知部32は電磁場を印加する対象となるイチゴの画像信号を取得し、画像認識により、イチゴの種類、状態、大きさ等を検出することが可能である。このため、対象となるイチゴに適した電磁場を印加することができる。また、電磁場印加情報を取得するためには、電磁場を印加したイチゴを電磁場印加条件と共に、追跡してデータ管理を行う必要がある。イチゴのパックに例えばバーコード等の追跡情報を添付しておくことで、電磁場印加情報の管理及び流通時のトレーサビリティーが改善できる。電磁場印加情報を取得するためにAGEs、硬度、糖度、酸度の測定を行い、このデータを電磁場印加条件と共に、記憶部37に記憶しておく。さらに、この電磁場印加情報は管理サーバ40によって集計され、データベース43に記憶されて、各品質制御装置1、1a~1nで利用できるように管理される。
【0203】
[実施形態4]
次に、実施形態4に係る品質制御装置1について、一例として、タバコの葉の品質制御、例えば熟成度を進めたり、止めたり、遅らせたり、鮮度を高めたり、維持したりする制御を
図23及び
図24を参照して説明する。上述した実施形態1~3と同様の構成については、同一の符号を用い、その説明を省略する。なお、タバコの葉は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば他の植物、香草類、果実、野菜、豆類、きのこ類等にも適用することができる。本実施形態において、糖濃度と細胞濃度のデータとの関係では、熟成が進むとは、糖濃度が減少し、細胞濃度が増加することであり、熟成度が進むことは、鮮度を高めることとは反対の関係となる。
【0204】
図23は、本実施形態の品質制御装置1によるタバコの葉の品質制御処理についての説明図であり、スマートフォンやタブレット端末等のマンマシンインターフェイス31の設定画面の一例を示している。
図23(A)は、対象となる物質の品種名、収穫日、納品日の入力画面である。例えば、品種名「タバコの葉」、収穫日「5月1日」、納品日「5月17日」と入力して、入力が正しければ決定ボタンを操作する。次に、
図23(B)に示される、設定1、設定2、手動設定の入力画面において、例えば、設定1「細胞濃度」を「13g-dry cell/L」と入力し、入力が正しければ決定ボタンを操作する。なお、設定2は入力なし、手動設定は「OFF」としているが、手動設定する場合には、手動設定を「ON」に切り替えて上で、抑制と促進のレベルを手動で設定する。設定1及び設定2の入力項目として、ここでは細胞濃度を指定する場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、糖濃度の値を指定すること、糖濃度が最終濃度まで低下すること、細胞濃度が最終濃度まで上昇すること、代謝速度の抑制度を高める、代謝速度の促進度を高める等の指定も可能である。
【0205】
図23(A)及び
図23(B)で入力された設定情報は、品質制御装置1の制御部36に入力される。設定情報が入力されると制御部36は、記憶部37に記憶されている制御情報に基づき、対象となる物質に印加する電磁場の条件を算出し、この電極から物質に印加する電磁場の情報を、
図23(C)に示すようにマンマシンインターフェイス31に表示する。
図23(C)には、例えば、印加電界「30V/m」、印加時間「常時」、ばらつき「抑制」と表示される。この条件で品質制御装置1を制御する場合には、送信ボタンを操作する。送信ボタンが操作を受けて、制御部36は、算出された条件のとおりの電磁場を、電極13、14から物質に印加するように、電流電圧制御部33に制御指令を出し、電流電圧印加部11がその制御指令に基づいて電流電圧制御部33により制御される。
【0206】
図23の例では、マンマシンインターフェイス31から注文情報を入力する例を説明したが、注文者がPC31a~31nから注文情報を入力することもできる。また、管理サーバ40において各注文者からの注文情報を集計した上で、対応する品質制御装置1の制御部36に注文情報を送信するようにしてもよい。
【0207】
制御部36における電磁場印加条件の演算には、記憶部37に記憶された電磁場印加情報が利用される。
図24A~
図24Eには、多種多様な電磁場印加情報の中からいくつかのデータを例示する。これらのデータは、タバコの葉として、タバコBY-2(Nicotiana tabacum cv. Bright Yellow NO.2)細胞を培養することによって得られたデータを示す。培養方法は、まず安定剤としてスクロース等を用いて継代培養を2週間程行った後に、洗浄後、グルコース等を培地とした本培養を行った。培養条件は27℃の暗所において、130rpmで旋回させた。
図24A~
図24Eは、本培養期間に関するデーアであり、経日的に培地からサンプリングを行い、糖濃度及び細胞濃度の検出を行った。特に限定されるものではないが、糖濃度の検出は赤外分光スペクトルの吸光度から算出し、細胞濃度は600nmにおける濁度から算出した。本培養中に所定の電場印加条件で電磁場を印加したものと、電磁場を印加しないものについて糖濃度及び細胞濃度の検出を行った。
【0208】
図24Aは、品質制御装置1における糖濃度と細胞濃度の制御データの説明図である。
図24Aは、培養期間の全期間にわたり、30V/mの電界を電極13、14からタバコの葉に印加した場合のグラフであり、糖濃度及び細胞濃度の測定データをBoltzmann関数で近似したものである。糖濃度H(直線)は、電界印加時の糖濃度のグラフであり、糖濃度C(一点鎖線)は、電界を印加しない場合(コントロール)の糖濃度のグラフであり、細胞濃度H(破線)は、電界印加時の細胞濃度のグラフであり、細胞濃度C(二点鎖線)は、電界を印加しない場合(コントロール)の細胞濃度のグラフである。
図24Aには、本実施形態の品質制御装置の電極13、14からタバコの葉に30V/mの電界を印加した場合、印加しない場合よりも、糖濃度の低下を遅らせるとと共に、細胞濃度の上昇を遅らせることができることが示されている。
図24Aにおいて、細胞濃度13g-dry cell/Lとなるのは、30V/mの電界を印加した状態で培養期間が16日間の時であるから、
図23の注文情報の場合の電磁場印加条件は、印加電界「30V/m」、印加時間「常時」が制御部36において算出される。
【0209】
図24Bは、品質制御装置1における暴露時間(電磁場印加時間)毎の成長の促進及び抑制の制御データの説明図である。本実施形態の品質制御装置1の電極13、14からタバコの葉に電磁場を印加する時の、電磁場印加条件によって、タバコの葉の熟成度の抑制と促進を制御することができる。電磁波印加時の糖濃度曲線の変曲点に当たる培養期間t
O,s,H、電磁波を印加しない時の糖濃度曲線の変曲点に当たる培養期間t
O,s,C、電磁波印加時の細胞濃度曲線の変曲点に当たる培養期間t
O,x,H、電磁波を印加しない時の細胞濃度曲線の変曲点に当たる培養期間t
O,x,Cとしたとき、
図24Bの縦軸は電圧印加の有無による糖濃度曲線変曲点の比t
O,s,H/t
O,s,Cであり、横軸は電圧印加の有無による細胞濃度曲線変曲点の比t
O,x,H/t
O,x,Cである。プロットが右上に行くほど抑制が高まり、プロットが左下に行くほど促進が高まることを意味する。各プロットには、培養期間全期間にわたり電界を印加する場合の電界のレベルを15V/m、30V/m、50V/m、70V/m、300V/m、700V/mとする場合、30V/mの電界を印加する期間を1min、1h、1dとした場合、又は、700V/mの電界を印加する期間を1min、1h、1dとした場合が含まれる。なお、培養期間は特に限定されるものではないが、例えば25日間とし、培養開始後すぐに所定の電界をそれぞれの電界印加期間にわたって印加した。このデータを用いることにより、タバコの葉の熟成度の抑制を高めたり、促進を高めたりする度合いを調整するための電磁波印加条件を求めることができる。
【0210】
図24Cは、品質制御装置1における培養期間に対する成長の促進及び抑制の制御データの説明図である。
図24Cにおいて、横軸は、電極13、14に30V/mの電界を印加する時の暴露期間(電界印加時間、単位min)である。培養期間は特に限定されるものではないが、例えば25日間とし、培養開始後すぐに所定の電界をそれぞれの電界印加期間にわたって印加した。縦軸は、t
O,H/t
O,Cである。白丸のプロットは、30V/mの電界を印加した時の糖濃度曲線変曲点の比、黒丸のプロットは、30V/mの電界を印加した時の細胞濃度曲線変曲点の比、白四角のプロットは、700V/mの電界を印加した時の糖濃度曲線変曲点の比、黒四角のプロットは、700V/mの電界を印加した時の細胞濃度曲線変曲点の比である。
図24Cのグラフから、印加電界が30V/mの場合には、糖濃度特性も細胞濃度特性もいずれも、電界印加期間の増加と共に上昇している。これに対して、印加電界が700V/mの場合には、糖濃度特性も細胞濃度特性もいずれも、電界印加期間の増加と共に減少しており、30V/mの場合とは逆の特性となっている。これらの糖濃度特性と細胞濃度特性を利用して、タバコの葉の熟成度の抑制を高めたり、促進を高めたりする度合いを調整するための電磁波印加条件を求めることができる。
【0211】
図24Dは、本実施形態の品質制御装置1における比消費速度の制御データの説明図である。比消費速度は、消費速度を細胞濃度(Cx)で割ったものであり、細胞1[g-dry cell]あたりの糖消費速度である。消費速度は、糖濃度Cswo培養期間tで微分したものであり、dCs/dtで表される。したがって、比消費速度は、(dCs/dt)/Csで表される。
図24Dの実線Hのグラフは、タバコの葉に電極13、14から30V/mの電界を培養期間の全期間にわたり印加した場合の比消費速度のものであり、破線Cのグラフは、電界を印加しない場合のものである。実線Hのグラフと破線Cのグラフとを比較すると、両グラフのカーブの特性自体は同様であるので、電界を印加しても糖代謝挙動には変化が無く、一方、培養期間は電界印加の方が遅れているので、電界印加によりタバコの葉の代謝速度を遅らせることができることが分かる。
図24Dの特性を用いることにより、糖代謝挙動に関しては電磁波印加の影響を受けないため、糖代謝挙動については、共通したデータによる制御が可能となる。なお、特に限定されれるものではないが、
図24Dは、培養期間が25日間の例である。
【0212】
図24Eは、本実施形態の品質制御装置1におけるばらつき抑制の制御データの説明図である。
図23(C)には、ばらつき「抑制」との制御指示が含まれているが、ばらつきに関するデータは、
図24Eのグラフから得られる。
図24Eは、多数のタバコの葉について、培養期間(25日間)の全期間にわたり電界を印加した場合の糖濃度又は細胞濃度の標準偏差の比のデータである。
図24Eにおいて、SD
max,Hは、30V/mの電圧を印加した場合の糖濃度又は細胞濃度の標準偏差であり、SD
max,Cは、電圧を印加しない場合の糖濃度又は細胞濃度の標準偏差であり、縦軸は、SD
max,H/SD
max,Cの値であり、横軸は電極13、14に印加した電界強度である。
図24Eより、電界700V/m印加時の糖濃度データ以外の全てのプロットにおいて、電界強度にかかわりなくばらつきが抑制されていることが分かる。
【0213】
[実施形態5]
本発明の実施形態5の品質制御装置1について、コーヒー豆に電磁場を印加する実験による官能試験の結果を示す。コーヒー豆は焙煎が時間が経過すると劣化し、また、コーヒー豆を挽いてから時間が経過すると香りが抜けることが知られている。以下の2つの実験により、本実施形態の品質制御装置1がコーヒーの品質を改善し、鮮度を高める(若返らせる)ことが可能であることを示す。本官能試験では、コーヒークリエイターであり、一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)認定・アドバンスドコーヒーマイスターである中川亮太氏(IMA Cafe)による結果を示す。
【0214】
<実験1:挽いてから6日後のコーヒー豆の官能試験>
焙煎した豆を挽いてから6日後のコーヒー豆に、本実施形態の品質制御装置によって1時間にわたり電磁場を印加したものと、電磁場を印加しないものとを飲み比べた。コーヒーの抽出によるばらつきを防ぐために、注ぎ方・注ぐ場所・湯量等、毎回同じ淹れ方ができる機械でコーヒーを抽出した。
【0215】
<実験1のコントロール(電磁場を印加しないもの)についての評価者のコメント>
「香りは抜けてしまっている感がある。」
「美味しいは美味しいが、どうしても物足りない。」
【0216】
<実験1の電磁場印加したものについての評価者のコメント>
「香りだけですでに違いが出ている。」
「明らかに香りの情報量が違う。」
「味わい方、風味・奥行きどれをとっても情報量が非常に多い。」
「飲んだしっかり感、珈琲感も、非常に美味しく感じる。」
「粉の状態にしたコーヒーの風味が長く持つ商品は今まで聞いたことがなく、びっくりした。」
「実際に自分で飲み比べをしてみて明らかな違いが出ることに正直驚いた。」
【0217】
実験1の結果から、本実施形態の品質制御装置1は、挽いてから時間が経過したコーヒー豆に電磁場を印加することにより、コーヒー豆の品質を制御し、鮮度を高める(若返らせる)ように制御することができる。
【0218】
<実験2:焙煎してから1年経過したコーヒー豆の官能試験>
焙煎してから1年以上経過したコーヒー豆を挽いたものに、本実施形態の品質制御装置によって1時間にわたり電磁場を印加したものと、電磁場を印加しないものとを飲み比べた。コーヒーの抽出によるばらつきを防ぐために、注ぎ方・注ぐ場所・湯量等、毎回同じ淹れ方ができる機械でコーヒーを抽出した。なお、コーヒー豆を挽く前に電磁場を印加してもよい。
【0219】
<実験2のコントロール(電磁場を印加しないもの)についての評価者のコメント>
「劣化臭が強く、珈琲感が弱い。」
「(味については)劣化臭が強くて飲み込むのがつらいような状態、香りは抜けてしまっている感がある。」
【0220】
<実験2の電磁場印加したものについての評価者のコメント>
「香りだけで、驚き。明らかに劣化臭がやわらいでいる。」
「コーヒーが持っていた本来の香りを感じることができる。」
「1年たってしまった豆の状態でも(電磁場印加による)違いがでる事実に驚く。」
「香りの中にでてくる劣化臭を非常にやわらげてくれると感じる部分に一番驚く。」
【0221】
実験2の結果から、本実施形態の品質制御装置1は、焙煎後に時間が経過したコーヒー豆に電磁場を印加することにより、コーヒー豆の品質を制御し、鮮度を高める(若返らせる)ように制御することができる。
【0222】
コーヒーの香り成分は800種類以上存在し、これらの香り成分の中でも、風味に強い影響を与える香り成分は60種類程ある。コーヒー豆を挽いて粉にすると、平均でコーヒー豆1粒から500粒程度のコーヒーの粉にくだかれる。しかも、コーヒー豆は多孔質であるため、挽いたコーヒー豆の表面積が大きくなる。本実施形態の品質制御装置によってコヒー豆に電磁場を印加すると、コヒー豆の内部ないし表面の水分は微細化し、また、連珠状に配列する。コーヒーを抽出する際に、この微細化された水分は、コーヒー豆の多くの香り成分をコーヒー豆の内部から引き出すキャリアーとして作用するため、コーヒー豆の内部からより多くの香り成分を抽出できることができるために、電磁波の印加により、コーヒー豆の品質を制御し、鮮度を高めるように制御することができる。
【0223】
[実施形態6]
本発明の実施形態6の品質制御装置1について、古米に電磁場を印加する実験による官能試験の結果を示す。本実施形態において、古米とは、収穫から1年以上たった米のことを意味し、例えば、収穫から1年たった古米、さらに1年たったくなった米である古々米、さらにもう1年たった古々々米等も含む。古米は炊くと古い穀物のような劣化臭がすると言われており、米の糠の部分や米の表面の部分に含まれる脂肪分が古くなることによる臭いが発生することが知られている。古米について、炊飯前に1時間浸漬する際に、電磁場を1時間印加したものと、電磁場を印加しないものとを比較する官能試験を行った。浸漬時に電磁場を印加するか否か以外は、同じ炊飯条件で炊飯した古米をそれぞれ食べ比べた。この結果、古米に本実施形態の品質制御装置により電磁場を印加することにより、劣化臭が低減され、硬さやパサつきが改善された。これにより、本実施形態の品質制御装置1は、古米の浸漬時に電磁場を印加することにより、古米の品質を制御し、鮮度を高めるように制御することができる。
【0224】
本実施形態の品質制御装置により炊飯前の浸漬時に古米に電磁場を印加することにより、米の内部の水分が微細化し、しかも、連珠配列されることにより、米全体に水分が均等にいきわたり、ふっくらと炊き上がる。しかも、米の糠の部分や米の表面又は表面近くの部分の微細な水分が水蒸気となる時に、古くなった脂肪分による臭い成分を取り除く効果がある。
【0225】
[実施形態7]
図25~27を参照して、本発明の実施形態7の品質制御装置1について、冷凍食品の解凍への適用例を説明する。
図25は、食品解凍用装置の外観斜視図である。この食品解凍用装置は、一方の電極13を底面に有し、他方の電極14を側面に有している。
図26は、マグロの柵を常温解凍する際に、本実施形態の食品解凍用装置を用いて電磁場を印加した場合と、電磁場を印加しない通常解凍の場合とを比較した比較例である。
図27の右の写真が、本実施形態の食品解凍用装置を用いて電磁場を印加した場合であり、左の写真が比較例である。比較例では、マグロの色が黒味みがかっており、身に張りが無い。これに対して、本実施形態の食品解凍用装置を用いて電磁場を印加した場合には、マグロの赤色がきれいなままであり、身に張りがあり新鮮さが保たれている。
【0226】
[実施形態8]
図28~29を参照して、本発明の実施形態8の品質制御装置1について、ワゴンに適用した適用例を説明する。
図28は、品質制御装置1をワゴンに取り付けた適用例の斜視図である。
図29は、本実施形態の品質制御装置1により電磁波を1時間印加した場合を、比較例(コントロール)と比較した結果である。
【0227】
[実施形態9]
図30を参照して、本発明の実施形態9の品質制御装置1について、さくらの花の保存に適用した適用例を説明する。
図30は、3月末に開花したボタン桜を0℃の冷蔵庫で3か月半保管した場合の写真である。本実施形態の品質制御装置1を用いて電磁場を印加したところ、3か月半経過したにも関わらず、さくらの花が開花した状態で鮮度が維持されていることが分かる。
【0228】
[実施形態10]
図31を参照して、本発明の実施形態10の品質制御装置1について、しその栽培への適用例を説明する。ペットボトルの空ボトルの上部を切り落として作った容器に、水道水を入れ、しそを水耕栽培する実験を行った。
図31には、同じサイズ量のしそを2か月間常温で栽培した時の正業度合いと水の濁りを観察した。
図31Aは、2か月後のしその根の成長の様子を写した写真である。
図31Bはしその栽培状態を示した写真である。
図31Cは2か月間しそを栽培した後の容器内の水の濁り具合を示した写真である。各写真において、左側が本実施形態の品質制御装置により電磁場を印加したものであり、右側が比較のために、電磁場の印加のない場合のものである。電磁場の印加条件は、一対の電極に対して交流100V、周波数50kHzとして、しその栽培期間中、常時容器を一対の電極で挟むようにして、常時電磁場を印加した。
【0229】
図31Aから、本実施形態の品質制御装置により電磁場を印加した場合の方が、比較例と比べ、しその根の発育が良好であることが分かる。
図31Bでは、本実施形態の品質制御装置により電磁場を印加した場合の方が、比較例と比べ、しその葉の発育も良好であることが分かる。
図31Cから、栽培後の水の濁り具合は、比較例では水が黒く濁っているのに対し、本実施形態の品質制御装置により電磁場を印加した場合の方が、水の濁りが抑えられ、水の透明度が高いことが分かる。このとき、本実施形態の品質制御装置により電磁場を印加した場合の方が、比較例と比べ、水のぬめりも抑制されていることが分かった。以上の実験の結果、本実施形態の品質制御装置により電磁場を印加した場合の方が、しその葉の根の発育、葉の発育を向上させることができると共に、水の濁や水のぬめりを抑制する効果があることが分かった。また、本実施形態は、しその栽培に限定されるものではなく、他の植物の栽培にも同様に適用でき、本実験例と同様に、植物の発育状態の向上と、水の濁りやぬめりの抑制効果を奏する。さらに、本実施形態では、液体は水に限定されるものではなく、水以外の液体の濁りやぬめりを抑制することができるため、例えば、水道管、防火水槽、貯水槽、各種水槽、パイプライン等に適用することにより、各設備における液体の状態を清浄な状態、例えば濁りや、ぬめりのない状態に維持すると共に、洗浄などのメンテナンスの手間を省くことが可能となる。
【0230】
[実施形態11]
前述のとおり実施形態の品質制御装置1により物質に電磁場を印加することにより、物質の内部ないし表面に存在する水分に作用し、水分がくさること、水分がにごること、色がにごること、藻が生えること、ぬめること、錆びること、又は、かびることの等を防止、抑制ないし制御することが可能であることを利用して、例えば、水道管、防火水槽、貯水槽、各種水槽、等の錆止め、カビ止め、腐食防止、パイプライン(例えば石油パイプライン)の錆止め、資材保管における保管資材(例えば金型等の金属製品等)の錆止め、鋼鉄、木材、家具、繊維、布、革等あらゆる物質のカビ防止、錆防止、腐食防止、防藻、美術品や絵画等のひび割れ防止等に適用することが可能である。
【0231】
[実験例1]花瓶の水のぬめり防止の効果
本実施形態の品質制御装置により電磁場を印加した花瓶と、電磁場を印加していない花瓶とで、花瓶の中の水の状態、ぬめり、濁り、にごり等を比較することにより、本実施形態の品質制御装置の効果を確認した。この効果は、上述の実施形態10からも分かるように、水道管、防火水槽、貯水槽、各種水槽においても同様である。
【0232】
[実施例2]鉄板材の錆防止効果
図32を参照して、本発明の実施形態11の品質制御装置1について、錆防止の実験例を説明する。
図32は、実施形態11に係る錆防止の実験の説明図である。実験に使用した各鉄板は、幅100mm、長さ200mm、厚さ1mmの磁性を有する同一の鉄板材である。
図32Aは、本発明の実施形態11の品質制御装置1により電磁場を印加しながら、にがり水に30mm程度、24時間つけ置きした鉄板材の様子である。電磁場の強さは、上述の条件の範囲であれば、特に限定されるものではないが、
図32Aにおいては、周波数50kHz、電圧100Vの交流電圧を一対の電極間に印加し、この一対の電極間に鉄板材を配置した。
図32Bは、
図32Aと同一の仕様の鉄板材を、にがり水に30mm程度、24時間つけ置き漬きした鉄板材の様子である。
図32Bは比較例であり、電磁場を印加していない。
図32Cは、
図31Aの鉄板材を、にがり水から取り出しさらに7日間経過したものである。
図32Dは比較例であり、
図32Bの鉄板材をにがり水から取り出しさらに7日間経過したものである。
【0233】
図32Aの鉄板材の方が、
図32Bの鉄板材に比較して錆の発生が抑制されていることが明らかである。同様に、
図32Cの鉄板材の方が、
図32Dの鉄板材に比較して錆の発生が抑制されていることが明らかである。この実験から本発明の実施形態11の品質制御装置1が錆防止に利用することができることが分かる。本発明の実施形態11の品質制御装置1の錆防止の効果は、水道管、パイプライン(石油パイプライン等)、資材保管における保管資材(例えば金型等の金属製品等)、鉄鋼における錆防止に利用することが可能である。
【0234】
[実施形態12]
図33~
図41を参照して、本発明の実施態様12に係る品質制御装置1について説明する。
図33は、電極13A,14Aを既存の冷蔵庫に設置した例であり、
図34は、電極13B,14Bを既存のコンテナに設置した例であり、
図35は、電極13C,14Cを既存のフライヤーに設置した例である。
図1~
図24と同様の構成については同一の符号を用いると共に、その説明を省略する。本実施態様に係る品質制御装置では、電極13,14の具体的な配置が例示されており、電極13,14の態様は、実施形態1~6と同様である。電極の配置によって、電極から物質に印加する電磁波の方向を調整し、物質の内部ないし表面の水分を微細化すると共に、微細化した水分を連珠配列し、この配列方向を印加された電磁波に応じた所望の方向に制御することにより、物質の品質を制御可能である。また、例えば2対の電極をそれぞれ交差する方向に配置し、二次元方向に任意の強さ及び方向の電磁場を発生させることができ、また、例えば3対の電極をそれぞれ交差する方向に配置し、三次元方向に任意の強さ及び方向の電磁場を発生させることができる。この場合、電極から物質に二次元ないし三次元方向に任意の強さ及び方向の電磁場を印加することにより、物質の形状に応じて、物質の内部ないし表面の水分を微細化すると共に、微細化した水分を連珠配列し、この配列方向を所望の方向に制御することにより、物質のの品質を制御することが可能である。
【0235】
図33では、電極13A,14Aは既存の冷蔵庫に設置されている。筐体50Aとしての冷蔵庫に設置される電極13A,14Aは断面略L字状の導電性(例えば銅、鉄、ステンレス、アルミニウム等)の板状部材から構成され、特に限定されるものではないが、底板には複数の孔(例えば6角形等の多角形や円形の孔)が設けられている。両電極13A,14Aの間は連結具41により連結されている。連結具41は、例えばポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン(登録商標))等のフッ素樹脂などの絶縁性材料からなる略長方形状の薄板である。なお、筐体50Aとしての冷蔵庫としては、家庭用の冷蔵庫や、業務用の大型冷蔵庫等、多様な態様の冷蔵庫を包含する。
【0236】
電極の形状は略L字形状に限定されるものではなく、例えば平板状や薄膜状であってもよい。この場合、各電極13A,14Aを筐体50Aとしての冷蔵庫の内壁に対向して設置することもできる。あるいは、各電極13A,14Aを冷蔵庫の天井面、床面、あるいは、棚に対向して設置することができる。あるいは、各電極13A,14Aを扉側の面と、奥側の面とに対向して設けることもできる。また、電極の数は少なくとも1個であればよく、例えば2個でも、4個でも、6個でも構わない。
【0237】
筐体50Aとしての冷蔵庫に設置される電極13A,14Aから、庫内の食物に電磁場が印加されると、食物内に包含される自由水等の水分としての水粒子同士が引き合うようにして連珠配列を形成する。このように規則的に配列された水分子は、物質内に保持されながら、他の成分と結合しないため、食品を新鮮でみずみずしい状態に保つことができる。
【0238】
図34では、電極13B,14Bは既存のコンテナに設置されている。筐体50Bとしてのコンテナに設置される電極は断面略L字状、あるいは、断面略コ字状の導電性(例えば銅、鉄、ステンレス、アルミニウム等)の板状部材から構成され、特に限定されるものではないが、底板には複数の孔(例えば6角形等の多角形や円形の孔)が設けられている。両電極13B,14Bの間は、必要に応じて連結具41Bにより連結されている。連結具41Bは、例えばポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン(登録商標))等のフッ素樹脂などの絶縁性材料からなる略長方形状の薄板である。なお、
図34には比較的大型のコンテナが図示されているが、筐体50Bとしてのコンテナとしては、携帯可能な小型のコンテナや、大型貨物用のコンテナ等、多様な態様のコンテナが包含される。
【0239】
電極の形状は略L字形状に限定されるものではなく、例えば平板状や薄膜状であってもよい。この場合、各電極13B,14Bを筐体50Bとしてのコンテナの内壁に対向して設置することもできる。あるいは、各電極13B,14Bをコンテナの天井面及び床面に対向して設置することができる。あるいは、各電極13B,14Bを扉側の面と、奥側の面とに対向して設けることもできる。また、電極の数は少なくとも1個であればよく、例えば2個でも、4個でも、6個でも構わない。
【0240】
筐体50Bとしてのコンテナに設置される電極13B,14Bから、例えばコンテナ内の食物に電磁場が印加されると、食物内に包含される自由水等の水分としての水粒子同士が引き合うようにして連珠配列を形成する。このように規則的に配列された水分子は、物質内に保持されながら、他の成分と結合しないため、食品を新鮮でみずみずしい状態に保つことができる。また、電極13B,14Bが設置されたコンテナは、冷蔵倉庫や冷凍倉庫や鮮度維持倉庫等に配置して、所望の保蔵温度帯の中で管理されてもよいが、特別な鮮度維持機能を備えていない倉庫に配置した場合にも、電極13B,14Bが設置されたコンテナは、食品の鮮度を保持することが可能である。
【0241】
図35では、電極13C,14Cは既存のフライヤー(筐体50C)の油槽内に設置されている。筐体50Cとしてのフライヤーに設置される電極13C,14Cは断面略L字状の導電性(例えば銅、鉄、ステンレス、アルミニウム等)の板状部材から構成され、特に限定されるものではないが、底板には複数の孔(例えば6角形等の多角形や円形の孔)が設けられている。また、電極13C,14Cの底面はフライヤーの油槽内の底面に沿うように設置される。フライヤーの油槽の外側、
図35の例では油槽の底面の外側には、加熱部51が設けられている。電極13C,14Cにはそれぞれコントローラ10と電気的に接続されており、コントローラ10の出力電圧は各電極13C,14Cに印加される。
【0242】
電極13C,14Cから、フライヤーの油槽内に電磁場が印加されると、油/水界面の界面張力は低下し、また、食物に内包される自由水は印加される電磁場によって連珠配列されることにより、食材から水分が離脱しにくくなる。このように食物に内包される水分を制御して突沸を抑制することで食物内への油分の浸透を抑制する効果を奏する。また、それにより、調理された食物の食感及び食味が非常に優れたものとなる。
【0243】
実施形態4では、両電極13,14に常に電圧及び/又は電流を印加する例を説明したが、本発明はこれに限定されるもではなく、物質が載置されている筐体50内の両電極13,14に対して常に電圧及び/又は電流を印加するのではなく、所定のタイミングないし所定の時間だけ電圧及び/又は電流を印加するようにしてもよい。例えば、筐体50Aが冷蔵庫の場合に、電極13A,14Aにより庫内の食物に電磁場を1時間印加し、その後47時間は電極13A,14Aに電圧及び/又は電流を印加しないで、その後また庫内の食物に電磁場を1時間印加するという電磁場の印加パターンにより、庫内の食物の鮮度を常に保持することが可能であり、また、そのために電力消費を低減することができる。これは、電極13A,14Aにより庫内の食物に電磁場を1時間程度印加することにより、食物内に包含される自由水等の水分としての水粒子同士が引き合うようにして連珠配列を形成し、その後は電磁場が無い状態でも所定の時間は水分子の連珠配列が維持されるためであると考えられる。電極13A,14Aにより庫内の食物に電磁場を印加する時間、及び、その後電極13A,14Aに電圧及び/又は電流を印加しない時間は、庫内の食物の種類や状態、保蔵温度・湿度等に応じて、適宜設定することができる。また、庫内に新たに食品が入庫されたタイミングで、庫内の食物に電磁場を印加する期間を設けるようにするとよい。なお、庫内に新たに食品が入庫されたことは、例えば庫内カメラや扉の開閉により検知することが可能である。
【0244】
例えば筐体50Bがコンテナの場合にも、電極13B,14Bによりコンテナ内の食物に電磁場が1時間程度印加されると、食物内に包含される自由水等の水分としての水粒子同士が引き合うようにして連珠配列を形成し、一旦水分子が連珠配列となると、その状態は電磁場が無い状態でも所定の時間は維持される。このため、電極13B,14Bによりコンテナ内の食物に電磁場を印加した期間の後に、所定時間の電磁場を印加しない期間を設け、また電磁場を印加する期間を設けることにより、電力消費を低減した鮮度維持が可能となる。特に、電源がバッテリーである場合には、消費電力が低減されることにより、一回の充電当たりの鮮度維持期間を長くすることが可能である。電磁場を印加する期間は1時間に限定されるものではなく、また、電磁場を印加しない期間も適宜設定可能であり、これらの期間は、コンテナ内の物質の種類や状態、コンテナを保管する温度や湿度等に応じて適宜調整することができる。また、コンテナ内に新たに物質が載置されたタイミングで、コンテナ内の物質に電磁場を印加する期間を設けるようにするとよい。なお、コンテナ内に新たに物質が入庫されたことは、例えばコンテナ内カメラ、マンマシンインターフェイス31からの信号や、コンテナが入庫された倉庫の管理データベースの情報等により、検知することが可能である。
【0245】
また、例えば筐体50Cがフライヤーの場合にも、電極13C,14Cからフライヤーの油槽内に電磁場を常時印加する必要はなく、電極13C,14Cによりフライヤーの油槽内に電磁場を印加した期間の後に、所定時間の電磁場を印加しない期間を設け、また電磁場を印加する期間を設けることができる。この場合にも、食物に内包される水分を制御して突沸を抑制して食物内への油分の浸透を抑制し、また、それにより、調理された食物の食感及び食味が非常に優れたものとなるという効果を持続することが可能である。フライヤーの油槽内に電磁場を印加する期間及び電磁場を印加しない期間は、調理する食物、油の種類及び油の温度等に応じて適宜決定することができる。
【0246】
図36~
図41は、様々な形状の電極の例を示す。なお、本実施例の電極の形状、配置、及び、電圧印加パターンは、
図1~
図41のものに限定されるものではなく、これ以外の変形例や各実施例を組わせたものを包含する。
図36は、二対の電極A、A'、B、B'、又は、一対の電極A、Bの形状、配置及び電圧印加パターンの別の実施例である。
図36Aは、対向する一対の平板電極A及びA'と、対向する一対の平板電極B及びB'とに対してそれぞれ電圧を印加するものである。
図36Bは、隣接する面に設けられた一対の平板電極A及びA'と、隣接する面に設けられた一対の平板電極B及びB'とに対しそれぞれ電圧を印加するものである。
図36Cは、対向する屈曲電極A及びBに対して電圧を印加するものである。
図36Dは、平板電極A及び平板電極Bを一辺に併設し、平板電極A及び平板電極Bにそれぞれ電圧を印加するものである。
【0247】
図37は、二対の電極A、A'、B、B'、又は、一対の電極A、Bの形状、配置及び電圧印加パターンのまた別の実施例である。
図37Aは、対向する一対の平板電極A及びA'と、対向する平板電極B及びB'とに対してそれぞれ電圧を印加するものである。
図37Bは、対向する一対の平板電極A及びA'と、隣接する面に設けられた一対の平板電極B及びB'とに対してそれぞれ電圧を印加するものである。
図37Cは、対向するコ字型電極A,Bに電圧を印加するものである。
【0248】
図38は、一対の曲面電極A、Bの形状、配置及び電圧印加パターンのまた別の実施例である。
図38Aは、半球面を半分に切った形状の電極A、Bに対して電圧を印加するものである。
図38Bは、対向する半球面状の電極A、Bに対して電圧を印加するものである。
図38Cは、円筒を高さ方向に沿って半分に切った形状の一対の電極A、Bに対して電圧を印加するものである。
図38Dは、有底円筒を高さ方向に沿って半分に切った形状の一対の電極A、Bに足して電圧を印加するものである。
【0249】
図39は、フライヤーに用いられる電極であり、幅方向に二つの電極に分割され、両者が電気的に絶縁された状態で一体に構成されている電極であり、一対の電極間に電圧が印加される。
図41では、円筒状に沿った形状であり、メッシュ状の複数の切込みが入った一対の電極が、両者が絶縁された状態で、基体(底面の黒色の部分)に設けられており、一対の電極間に電圧が印加される。
図41は、櫛歯状の電極であり、一対の櫛歯状の電極を、両者の櫛歯が交互に配列されるように配置することができる。
【0250】
以上説明した各実施形態は、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。また、各実施形態を適宜変更したり、各実施形態を適宜組み合わせたりすることもできる。例えば、一対の電極を設けるものを示した実施形態においては、電極の数は一対に限定されるものではく、例えば、
図10Aに示すように、1枚であっても良いし、
図9、
図10Bに示すように、3枚以上であってもよい。また、各実施形態の具体例として、電極に印加する交流電圧成分として、交流100V、周波数50kHzを例示したものがあるが、これは厳密に100V、50kHzを意味するものでは無く、設定誤差や測定誤差を加味して想定される程度の誤差、例えば2~5%程度の誤差は許容される。また、電極に印加される電圧として各実施形態で例示された値は、あくまでも一例にすぎず、実施形態1で説明した設定範囲内で、制御対象、制御条件や仕様に応じて、その交流成分及び/又は直流成分を設定可能である。
【符号の説明】
【0251】
以上説明した各実施形態は、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。また、各実施形態を適宜変更したり、各実施形態を適宜組み合わせたりすることもできる。例えば、一対の電極を設けるものを示した実施形態においては、電極の数は一対に限定されるものではく、例えば、
図10Aに示すように、1枚であっても良いし、
図9、
図10Bに示すように、3枚以上であってもよい。また、各実施形態の具体例として、電極に印加する交流電圧成分として、交流100V、周波数50kHzを例示したものがあるが、これは厳密に100V、50kHzを意味するものでは無く、設定誤差や測定誤差を加味して想定される程度の誤差、例えば2~5%程度の誤差は許容される。また、電極に印加される電圧として各実施形態で例示された値は、あくまでも一例にすぎず、実施形態1で説明した設定範囲内で、制御対象、制御条件や仕様に応じて、その交流成分及び/又は直流成分を設定可能である。