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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】配線用遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/18 20060101AFI20240527BHJP
   H01H 73/06 20060101ALI20240527BHJP
   H01H 33/10 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
H01H73/18 Z
H01H73/06 B
H01H33/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020118154
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015373
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 昇悟
(72)【発明者】
【氏名】木根 京介
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-31448(JP,A)
【文献】特開平3-43920(JP,A)
【文献】実開昭62-12245(JP,U)
【文献】特開平7-65689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/18
H01H 33/08
H01H 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースにカバーを取り付けることで形成した筐体と、筐体内に固定された固定接点と、固定接点と接した位置から接していない位置に移動可能な可動接点と、アークガス放出用の開口部に取付けられるバリヤと、を有する配線用遮断器であって、
バリヤはカバーとは別体であり、
バリヤの少なくとも一部を筐体内側から覆う保護部を、カバーに備えた配線用遮断器。
【請求項2】
バリヤは端子座の高さ位置以下まで延びている請求項1に記載の配線用遮断器
【請求項3】
カバーに備えた保護部が、下方向に向けて少なくとも端子座の近傍の高さ位置まで延びた請求項1又は2に記載の配線用遮断器。
【請求項4】
カバーに備えた保護部が、下方向に向けて端子座の高さ位置以下まで延びた請求項1乃至3の何れかに記載の配線用遮断器。
【請求項5】
筐体内に消弧装置を備え、
消弧装置は、アークを引き延ばす磁性材を用いて構成されたグリッドを備え、
カバーに備えた保護部が、バリヤとグリッドの間に位置する請求項1乃至の何れかに記載の配線用遮断器。
【請求項6】
ベースにカバーを取り付けることで形成した筐体と、筐体内に固定された固定接点と、固定接点と接した位置から接していない位置に移動可能な可動接点と、アークガス放出用の開口部に取付けられるバリヤと、を有する配線用遮断器であって、
バリヤの少なくとも一部を筐体内側から覆う保護部を、カバーに備え、
保護部は、下方が開放した排気孔を備えた配線用遮断器。
【請求項7】
ベースにカバーを取り付けることで形成した筐体と、筐体内に固定された固定接点と、固定接点と接した位置から接していない位置に移動可能な可動接点と、アークガス放出用の開口部に取付けられるバリヤと、を有する配線用遮断器であって、
バリヤの少なくとも一部を筐体内側から覆う保護部を、カバーに備え、
バリヤは金属を用いて構成され、
保護部は、可動接点の可動範囲において、可動接点とバリヤとの距離が最短となる際の可動接点の高さ位置以下まで下方向に向けて延びた配線用遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線用遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、過負荷時や、接点の開閉時に消弧室内で発生する高温なアークを外部へ排出し、かつ外部からの異物の浸入を防ぐバリヤを用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平5-23388号公報
【0004】
ところで、一般的に、バリヤは薄板状であり、絶縁紙を用いたり、ファイバや金属を用いたりしている。絶縁紙やファイバを用いる場合、バリヤ自体は安価となるが、アークによりバリヤが焼損する虞があった。金属を用いる場合、接点の開極時に可動接点とバリヤ間で短絡が起こる虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、配線用遮断器において、アークガスからバリヤを保護することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、ベースにカバーを取り付けることで形成した筐体と、筐体内に固定された固定接点と、固定接点と接した位置から接していない位置に移動可能な可動接点と、アークガス放出用の開口部に取付けられるバリヤと、を有する配線用遮断器であって、バリヤの少なくとも一部を筐体内側から覆う保護部を、カバーに備えた配線用遮断器とする。
【0007】
また、カバーに備えた保護部が、下方向に向けて少なくとも端子座の近傍の高さ位置まで延びた構成とすることが好ましい。
【0008】
また、カバーに備えた保護部が、下方向に向けて端子座の高さ位置以下まで延びた構成とすることが好ましい。
【0009】
また、筐体内に消弧装置を備え、消弧装置は、アークを引き延ばす磁性材を用いて構成されたグリッドを備え、カバーに備えた保護部が、バリヤとグリッドの間に位置する構成とすることが好ましい。
【0010】
また、保護部は、下方が開放した排気孔を備えた構成とすることが好ましい。
【0011】
また、バリヤは金属を用いて構成され、保護部は、可動接点の可動範囲において、可動接点とバリヤとの距離が最短となる際の可動接点の高さ位置以下まで下方向に向けて延びた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、配線用遮断器において、アークガスからバリヤを保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における配線用遮断器の斜視図である。
図2】保護部を備えたカバーの例を示す斜視図である。
図3図1に示す配線用遮断器の前端側のIII-III断面図である。ただし、配線用遮断器の前側だけを示している。
図4図3におけるバリヤ周りの部分拡大図である。ただし、端子座などの高さを示す破線を付している。
図5図4に示す周りを斜めからみた図である。
図6】保護部周りのVI-VI断面図である。ただし、配線用遮断器の右側だけを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に発明を実施するための形態を示す。図1乃至図3に示されていることから理解されるように、本実施形態の配線用遮断器1は、ベース11にカバー12を取り付けることで形成した筐体10と、筐体10内に固定された固定接点21と、固定接点21と接した位置から接していない位置に移動可能な可動接点25と、アークガス放出用の開口部に取付けられるバリヤ41と、を有する。また、この配線用遮断器1は、バリヤ41の少なくとも一部を筐体10内側から覆う保護部13を、カバー12に備えている。このため、アークガスからバリヤ41を保護することが可能となる。
【0015】
ここで、明細書における上下、前後、左右の方向について説明する。配線用遮断器1の入り切り操作をする際に用いられるハンドル91が設けられている側が上側である。また、その反対側の面であり、分電盤などの取り付け面と対向する面が設けられている側が下側である。また、前後方向は、配線用遮断器1の端子が両端に位置する方向である。この実施形態では、端子座22と固定接点21を備える固定接触子23が位置する側を前側とする。また、上下方向及び前後方向と直交する方向が左右方向である。
【0016】
次に、実施形態の配線用遮断器1の概要から説明する。実施形態の配線用遮断器1は、主たる機能を構成する部品の大部分がベース11に収められている。例えばベース11には、可動接点25を備えた可動接触子26や、可動接点25と接触可能な固定接点21が収められている。また、電流が流れた状態で固定接点21と可動接点25が引き剥がされることにより発生するアークによる不具合を抑制することが可能な消弧装置もベース11に収められている。実施形態の消弧装置は、アークを引き延ばす磁性材を用いて構成されたグリッド71を備えている。なお、実施形態のグリッド71は、複数の金属の板が間隔をあけて並ぶように配置されている。
【0017】
電流が流れた状態で固定接点21から可動接点25を引き剥がすことで生じたアークにより発生したガスを外部に排出できるよう、配線用遮断器1には、アークガス放出用の開口部を備えているが、アークガス放出用の開口部にはバリヤ41が取り付けられ、外部から埃やごみが筐体10内に侵入することを抑制している。なお、通常、バリヤ41にはガスの排出に用いられる複数の穴42が設けられている。
【0018】
このバリヤ41をアークによる影響から保護するため、実施形態の配線用遮断器1は、カバー12に設けた保護部13を、アークが発生個所からバリヤ41に向かうことの障害となる位置に配置している。この保護部13はカバー12の一部であるため、部品点数を増やさずに、バリヤ41の保護が可能となる。なお、実施形態のカバー12は樹脂を用いて構成されている。
【0019】
通常、バリヤ41は端子座22よりも上方からアークガスを外部に排出する。このため、カバー12に備えた保護部13が、下方向に向けて少なくとも端子座22の近傍の高さ位置まで延びるものとすることが好ましい(図4参照)。保護部13がアークの経路上に位置させることができ、効率的にバリヤ41を保護することができるからである。なお、カバー12に備えた保護部13が、端子座22の高さ位置以下まで下方向に向けて延びた構成とすれば、より、効率的にバリヤ41を保護することができる
【0020】
また、筐体10内に消弧装置を備える場合、消弧装置は、アークを引き延ばす磁性材を用いて構成されたグリッド71を備えたものとし、カバー12に備えた保護部13が、バリヤ41とグリッド71の間に位置するようにするのが好ましい。保護部13が、グリッド71により引き延ばされたアークにより発生するアークガスを効率よく遮断することができるからである。
【0021】
なお、アークはグリッド71により上方に引き延ばされるので、バリヤ41の上方を特に保護することが好ましい。この点、カバー12に備えた保護部13は上側から下側に向けて延びる構成であるため、バリヤ41の保護に適している。
【0022】
保護部13は排気孔14を設けても良い。排気孔14を形成することにより排気性がよくなり短絡性能を向上することができる。保護部13に設ける排気孔14は、スリット状に形成してもよいし、貫通した孔形状に形成してもよいが、バリヤ41に設けた各々の穴42と対応するように形成することが好ましい。また、図5及び図6に示すことから理解されるように、保護部13は、下方が開放した排気孔14を備えた構成とすることが好ましい。モールド成形などにおいてカバー12を一方向に抜いて成形できるため、成形の効率化に有利だからである。
【0023】
また、金属を用いてバリヤ41を構成する場合、保護部13は、可動接点25の可動範囲において、可動接点25とバリヤ41との距離が最短となる際の可動接点25の高さ位置以下まで下方向に向けて延びた構成とすることが好ましい。可動接点25が開極位置にある状態で可動接点25から金属を用いたバリヤ41へアークが到達することを防げば、開極しているにもかかわらずバリヤ41を通して端子座22まで導通してしまうことを防ぐことができるからである。
【0024】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 配電用遮断器
10 筐体
11 ベース
12 カバー
13 保護部
14 排気孔
21 固定接点
22 端子座
25 可動接点
41 バリヤ
42 穴
71 グリッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6