(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】逆起電圧抑制回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/08 20060101AFI20240527BHJP
H03K 17/082 20060101ALI20240527BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20240527BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20240527BHJP
【FI】
H03K17/08 C
H03K17/082
H03K17/687 A
H02M1/00 F
(21)【出願番号】P 2020161750
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 修
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-138303(JP,A)
【文献】特開2011-239242(JP,A)
【文献】特開2000-299625(JP,A)
【文献】特開2018-142763(JP,A)
【文献】特開2007-028747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/08
H03K 17/082
H03K 17/687
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーデバイスの両端間の電圧に比例する電圧が入力される非反転入力端子と、参照電圧が入力される反転入力端子と、出力端子と、を有する比較回路と、
前記比較回路からの出力信号により制御されるスイッチと、を有し、
前記スイッチは、一端が抵抗を介して電圧源に接続し、他端が前記パワーデバイスのゲートに接続している、逆起電圧抑制回路。
【請求項2】
直列に接続された第1の抵抗および第2の抵抗をさらに有し、
前記第1の抵抗および第2の抵抗は、前記パワーデバイスに並列に接続されており、
前記非反転入力端子は、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗とを接続するラインに接続されている、請求項1に記載の逆起電圧抑制回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆起電圧抑制回路に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスをオンからオフにしたときに、回路内に存在するインダクタにより、逆起電圧が発生する。このような逆起電力により、パワーデバイスが破壊されることがある。そこで、スナバ回路を接続することで、この逆起電圧を抑制する技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スナバ回路を接続した場合、例えば、
図3に示すように、パワーデバイスのオフ時に、パワーデバイスのドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がり速度が遅くなるため、高速なスイッチングができなくなる。また、スナバ回路において損失が発生するため、効率が悪くなる。
【0005】
そこで、本発明は、スイッチング速度、効率の低下を防ぎつつ、逆起電圧のピーク値を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の逆起電圧抑制回路は、パワーデバイスの両端間の電圧に比例する電圧が入力される非反転入力端子と、参照電圧が入力される反転入力端子と、出力端子と、を有する比較回路と、前記比較回路からの出力信号により制御されるスイッチと、を有し、前記スイッチは、一端が抵抗を介して電圧源に接続し、他端が前記パワーデバイスのゲートに接続している。
【0007】
直列に接続された第1の抵抗および第2の抵抗をさらに有し、前記第1の抵抗および第2の抵抗は、前記パワーデバイスに並列に接続されており、前記非反転入力端子は、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗とを接続するラインに接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スイッチング速度、効率の低下を防ぎつつ、逆起電圧のピーク値を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る逆起電圧抑制回路を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る逆起電圧抑制回路を適用した場合のゲート電圧Vgs、ドレイン・ソース間電圧Vdsの変化を説明する図である。
【
図3】スナバ回路を適用した場合のゲート電圧、ドレイン・ソース間電圧の変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<逆起電圧抑制回路>
図1は、本発明の一実施形態に係る逆起電圧抑制回路を示す図である。逆起電圧抑制回路は、パワーデバイスPDのオフ時にインダクタLで発生する逆起電圧のピーク値を抑制し、パワーデバイスPDがこの逆起電圧により破壊されることを防ぐ。パワーデバイスPDは、電圧駆動型のデバイスであり、例えば、ゲートドライバ(不図示)からゲート抵抗RGを介してゲートに供給されるゲート駆動電圧により制御される。パワーデバイスPDは、例えば、
図1に示すように、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0011】
逆起電圧抑制回路は、第1の抵抗R1と、第2の抵抗R2と、比較回路CCと、スイッチSWと、を有する。
【0012】
第1の抵抗R1と第2の抵抗は、互いに直列に接続しており、パワーデバイスPDと並列に接続されている。
【0013】
比較回路CCは、第1の抵抗R1と第2の抵抗R2を接続するラインに接続された非反転入力端子IT1と、参照電圧VRが入力される反転入力端子IT2と、出力端子OTと、を有する。第1の抵抗R1の抵抗値をR1とし、第2の抵抗R2の抵抗値をR2とすると、非反転入力端子IT1には、パワーデバイスPDの両端間の電圧(ドレイン・ソース間電圧Vds)を、第1の抵抗R1と第2の抵抗R2とで分圧した電圧値VCT(=Vds・R2/(R1+R2))。つまり、非反転入力端子IT1には、パワーデバイスPDの両端間の電圧Vdsに比例する電圧VCTが入力される。
【0014】
非反転入力端子IT1に入力される電圧VCTが参照電圧VRより大きいときは、出力端子OTからHighレベルの信号が出力され、非反転入力端子IT1に入力される電圧VCTが参照電圧VRより小さいときは、出力端子OTからLowレベルの信号が出力される。
【0015】
スイッチSWは、比較回路CCの出力端子OTから出力される信号(出力信号)により制御されるスイッチである。つまり、比較回路CCの出力信号がHighレベルであるとき、スイッチSWはオンになり、比較回路CCの出力信号がLowレベルであるとき、スイッチSWはオフになる。
【0016】
スイッチSWの一端は、プルアップ抵抗RPUを介して、電圧源VSに接続され、他端は、パワーデバイスPDのゲートとゲート抵抗RGとを接続するラインに接続されている。このため、本実施形態では、スイッチSWがオンであるとき、パワーデバイスPDのゲートには、電圧源VSから供給される電圧がかかる。よって、パワーデバイスPDがオフになったとしても、つまり、パワーデバイスPDのゲートに供給されるゲート駆動電圧がLowレベルになったとしても、スイッチSWがオンであるときは、電圧源VSから供給される電圧により、ゲート電圧Vgsが大きくなる。このとき、パワーデバイスPDのゲート電圧Vgsは、ゲート抵抗RGとプルアップ抵抗RPUとの分圧比により決定される。
【0017】
よって、本実施形態では、パワーデバイスPDがオフになったときに、インダクタLの逆起電圧によってパワーデバイスPDのソース・ドレイン間電圧Vdsが大きくなったとしても、非反転入力端子IT1に入力される電圧VCTが参照電圧VRより大きくなったときには、スイッチSWがオンになり、
図2に示すように、パワーデバイスPDのゲート電圧Vgsの値が、スイッチSWがオフのときのゲート電圧Vgsの値(
図2のV1)より大きくなる。結果、本実施形態では、
図2に示すように、パワーデバイスPDがオフになったときのパワーデバイスPDのドレイン・ソース間電圧Vdsのピーク値が抑制される。
【0018】
実際に、ピークで200Vの逆起電圧が発生していた400Vの電源電圧の回路に、本実施形態に係る逆電圧抑制回路を適用することで、逆起電圧のピーク値が80Vに抑制されることが、シミュレーションにより確認された。
【0019】
このように、本実施形態では、パワーデバイスのドレイン・ソース間電圧の立ち上がり速度を落とすことなく、逆起電圧のピーク値を抑制することが可能である。また、本実施形態では、スナバ回路を備えておらず、スナバ回路による損失が発生しないため、効率が低下しない。結果、本実施形態では、スイッチング速度、効率の低下を防ぎつつ、逆起電圧のピーク値を抑制する可能である。
【0020】
参照電圧VRは、適宜設定される。参照電圧VRは、例えば、パワーデバイスPDの定格電圧、第1の抵抗R1、第2の抵抗R2の抵抗値などに基づいて設定される。また、プルアップ抵抗RPUの抵抗値は、適宜設定される。プルアップ抵抗RPUの抵抗値は、例えば、電圧源の電圧値、ゲート抵抗RGの抵抗値、パワーデバイスPDの特性などに基づいて設定される。
【0021】
図1において、パワーデバイスPDは、MOSFETであるが、パワーデバイスPDは、バイポーラトランジスタや、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、SiC-MOSFET(Silicon Carbide Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、GaN-MOSFET(Gallium Nitride Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、Si-MOSFET(Silicon Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、GaN HEMT(Gallium Nitride High Electron Mobility Transistor)などであっても良い。パワーデバイスPDがバイポーラトランジスタ、IGBTであるときは、上記ドレイン・ソース間電圧は、コレクタ・エミット間電圧に対応する。
【0022】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0023】
PD パワーデバイス
R1 第1の抵抗
R2 第2の抵抗
CC 比較回路
IT1 比較回路CCの非反転入力端子
IT2 比較回路CCの反転入力端子
OT 比較回路CCの出力端子
SW スイッチ
VS 電圧源
RPU プルアップ抵抗
RG ゲート抵抗