IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許-有機性廃棄物処理方法 図1
  • 特許-有機性廃棄物処理方法 図2
  • 特許-有機性廃棄物処理方法 図3
  • 特許-有機性廃棄物処理方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】有機性廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/65 20220101AFI20240527BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B09B3/65 ZAB
C02F11/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020195116
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083667
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】田中 恒久
(72)【発明者】
【氏名】村井 一真
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-130486(JP,A)
【文献】特開2010-234203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/65
C02F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物を含む有機性廃棄物を基質として発酵槽に投入して嫌気性発酵処理する有機性廃棄物処理方法であって、
前記発酵槽へ投入する投入基質の固形物濃度を計測する第1ステップと、
前記固形物濃度と、予め設定された前記投入基質の嫌気性発酵処理による分解率とに基づいて、前記投入基質が前記発酵槽で嫌気性発酵処理された発酵液の固形物濃度である槽内固形物濃度を想定し、前記槽内固形物濃度が所定の目標値になるように、前記投入基質の希釈率を設定する第2ステップと、
前記希釈率になるように前記投入基質を希釈する第3ステップと、
を含む有機性廃棄物処理方法。
【請求項2】
前記希釈率は、以下の数式
槽内固形物濃度=投入基質の固形物濃度×(1-投入基質の分解率)
希釈率=槽内固形物濃度÷槽内固形物濃度の目標値
に基づいて設定される請求項1記載の有機性廃棄物処理方法。
【請求項3】
前記槽内固形物濃度の目標値が5-15%の範囲の値に設定される請求項1または2記載の有機性廃棄物処理方法。
【請求項4】
前記槽内固形物濃度と前記発酵液の粘度である槽内粘度との間に定まる所定の相関関係に基づいて、前記槽内粘度が所定の目標粘度である槽内目標粘度以下となるように、前記槽内固形物濃度の目標値が設定される請求項1から3の何れかに記載の有機性廃棄物処理方法。
【請求項5】
前記槽内目標粘度が30000mPa・s以下の値に設定される請求項4記載の有機性廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物を含む有機性廃棄物を基質として発酵槽に投入して嫌気性発酵処理する有機性廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、生物処理により生成した生物処理汚泥を汚泥分と濾液とに固液分離し、前記汚泥分と嫌気性生物にて分解可能な有機物を含有する流動性を有した液状有機性廃棄物と嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機物を含有する固形状有機性廃棄物とを攪拌混合してメタン発酵処理した後に固液分離して処理濾液を分集し、この処理濾液を前記濾液とともに好気性微生物により生物処理することを特徴とする廃棄物処理方法が開示されている。
【0003】
そして、メタン発酵処理する前に総固形物濃度を5%以上20%以下に水分調整することによりメタン発酵処理効率が向上することが開示されている。総固形物濃度が5%より低いとメタン発酵処理する有機物の濃度が低減し、運転エネルギーに対するメタンガスの発生量が低減してメタン発酵の効率が低下し、総固形物濃度が20%より高いと粘性が増大するとともに固形状の有機物の存在により、均一に短時間で有機物を分解処理できなくなりメタン発酵の効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-309438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来のメタン発酵処理方法は、発酵処理する前に総固形物濃度を5%以上20%以下に水分調整するものであり、発酵槽の槽内の総固形物濃度が5%以上20%以下に調整されるものではなく、分解率によってはこの範囲を逸脱することがあった。特に分解率が高い場合には容易に総固形物濃度が5%より低くなるなど、発酵槽内の固形物濃度を安定させることができない。
【0006】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、発酵槽に投入された基質を希釈することにより、発酵に適した槽内固形物濃度を安定的に維持することができる有機性廃棄物処理方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明による有機性廃棄物処理方法の第一の特徴構成は、固形物を含む有機性廃棄物を基質として発酵槽に投入して嫌気性発酵処理する有機性廃棄物処理方法であって、前記発酵槽へ投入する投入基質の固形物濃度を計測する第1ステップと、前記固形物濃度と、予め設定された前記投入基質の嫌気性発酵処理による分解率とに基づいて、前記投入基質が前記発酵槽で嫌気性発酵処理された発酵液の固形物濃度である槽内固形物濃度を想定し、前記槽内固形物濃度が所定の目標値になるように、前記投入基質の希釈率を設定する第2ステップと、前記希釈率になるように前記投入基質を希釈する第3ステップと、を含む点にある。
【0008】
第1ステップで計測された投入基質の固形物濃度に基づいて、第2ステップで発酵槽の槽内固形物濃度が所定の目標値になるように投入基質の希釈率が設定され、第3ステップで投入基質が希釈される結果、発酵槽の槽内固形物濃度が目標値に維持される。その結果、発酵槽を小型に構成しながらも発酵効率を安定させることができる。
【0009】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記希釈率は、以下の数式
槽内固形物濃度=投入基質の固形物濃度×(1-投入基質の分解率)
希釈率=槽内固形物濃度÷槽内固形物濃度の目標値
に基づいて設定される点にある。
【0010】
槽内固形物濃度は、投入基質の固形物濃度×(1-投入基質の分解率)によって求まり、槽内固形物濃度を槽内固形物濃度の目標値で除すことにより希釈率が求まる。なお、投入基質の分解率は、予め測定した経験値を適用することができ、定期的に測定することも可能である。
【0011】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記槽内固形物濃度の目標値が5-15%の範囲の値に設定される点にある。
【0012】
槽内固形物濃度の目標値を5-15%の範囲の値に設定することで、安定して発酵が促進される。
【0013】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記槽内固形物濃度と前記発酵液の粘度である槽内粘度との間に定まる所定の相関関係に基づいて、前記槽内粘度が所定の目標粘度である槽内目標粘度以下となるように、前記槽内固形物濃度の目標値が設定される点にある。
【0014】
槽内粘度を所定の目標粘度以下に設定することにより、槽内基質が適切に攪拌混合されるようになり、安定して発酵が促進されるようになる。
【0015】
同第五の特徴構成は、上述した第四の特徴構成に加えて、前記槽内目標粘度が30000mPa・s以下の値に設定される点にある。
【0016】
槽内目標粘度が30000mPa・s以下であれば、槽内基質が適切に攪拌混合される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した通り、本発明によれば、発酵槽に投入された基質を希釈することにより、発酵に適した槽内固形物濃度を安定的に維持することができる有機性廃棄物処理方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による有機性廃棄物処理方法が適用される有機性廃棄物処理システムの説明図
図2】本発明による有機性廃棄物処理方法が適用される有機性廃棄物処理装置の説明図
図3】(a)は投入機構の平面視の説明図、(b)は投入機構の側面視の説明図、(c)は(b)のA断面説明図、(d)は(b)のB断面説明図、(e)は(b)のC断面説明図
図4】本発明による有機性廃棄物処理方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明による有機性廃棄物処理方法を説明する。
【0020】
[有機性廃棄物処理方法が適用される有機性廃棄物処理システムの説明]
図1には、本発明による有機性廃棄物処理方法が適用される有機性廃棄物処理システムが示されている。都市ごみなどの有機性廃棄物を嫌気性微生物により処理する有機性廃棄物処理装置で、それら有機性廃棄物に含まれるエネルギーをメタンガスや二酸化炭素などのバイオガスとして回収するシステムである。
【0021】
一般家庭などから収集された紙ごみ、厨芥、樹脂等の可燃性ごみを、破砕機などを用いて小片に破砕し、有機性廃棄物処理に適した有機性固形廃棄物と有機性廃棄物処理に不適な樹脂や無機物、金属などに分別する前処理が行なわれ、有機性廃棄物処理不適物はごみ焼却設備で処理され、有機性廃棄物処理適物は有機性廃棄物処理装置に投入されてメタン発酵処理される。
【0022】
有機性廃棄物処理で生成されたバイオガスに含まれるメタンガスは再生エネルギーとして回収され、有機性廃棄物処理残渣は脱水処理などの残渣処理が施された後に焼却処理される。有機性廃棄物処理残渣の脱水処理により生じた脱水ろ液は活性汚泥法などで生物処理され、当該生物処理で生じた余剰汚泥も有機性廃棄物処理適物として有機性廃棄物処理の対象とすることも可能である。
【0023】
[有機性廃棄物処理装置の説明]
図2には、有機性廃棄物処理装置の全体構成が示されている。有機性廃棄物処理装置10は、発酵槽20と、投入機構30と、撹拌機構40と、ガス排出部50と、発酵液排出口60、発酵不適物排出機構70などを備えて構成され、被処理物である発酵適物、つまり固形物を含む有機性廃棄物を、別途の可溶化処理槽などを用いて可溶化処理することなく、発酵槽20に直接投入して嫌気性発酵処理する装置である。
【0024】
発酵槽20は、鋼板を用いて円筒状に形成された縦型の処理槽であり、側壁には熱媒体の流路となるジャケット22が設けられ、熱媒供給部23から供給される熱媒体がジャケット22を通過して熱媒排出部21から排出されるように構成されている。熱媒体として温水が好適に用いられ、例えば約57℃程度の温水がジャケット22に供給されることで槽内の発酵液が発酵に適した約55℃の温度に加温される。
【0025】
発酵槽20の上端には、槽内が密閉されるように円盤状の蓋体25がフランジ部で着脱可能に固定されている。蓋体25には、撹拌機構40が支持されるとともに、嫌気性発酵処理で生成されたバイオガスを取り出すガス排出部50として機能するバイオガス排出バルブV3を備えた配管が接続され、さらに槽内部を目視確認するためののぞき窓26が設けられている。
【0026】
発酵槽20の側壁下端には下方側が次第に縮径されるロート状部24が形成され、底部中央には発酵不適物排出機構70が設けられている。
【0027】
発酵不適物排出機構70は、発酵液中に混入した砂、貝殻、金属類などの発酵不適物を発酵槽20から排出するための機構で、発酵槽20の底部下方に突出形成され発酵槽20より縮径された筒状部73と、筒状部73に設けられた二重ダンパ機構71,72で構成されている。下部ダンパ72を閉じた状態で上部ダンパ71を開放して発酵不適物を取り込んだ後に、上部ダンパ71を閉じて下部ダンパ72を開放することにより発酵不適物が槽外に取り出される。
【0028】
被処理物に混入する砂、金属、貝殻などの発酵不適物が発酵液中で次第に沈降して底部に堆積すると有効な発酵容積が減少して発酵効率が低下する虞がある。しかし、底部に形成された筒状部73に発酵不適物を堆積させて、二重ダンパ機構71,72を介して槽外に排出することにより、ポンプ装置などの大きな動力を要することなく、また嫌気状態を維持しながら発酵容積の減少を回避することができる。
【0029】
撹拌機構40は、発酵槽20に投入された有機性廃棄物を槽内で撹拌するために設けられ、蓋体25の上部に設置された撹拌用のモータ45と、蓋体25に回転可能に軸受で支持された鉛直姿勢の回転軸と、回転軸にカップリング43を介して接続された撹拌軸41と、撹拌軸41に固定された撹拌羽根42,44,46を備えて構成されている。撹拌軸41は発酵槽20の軸心と一致するように設置されている。
【0030】
撹拌軸41の上端は蓋体25に軸支された回転軸とカップリング43を介して接続され、撹拌軸41の下端は軸支されることなく自由端となっている。そのためメンテナンスが必要な場合には、分解することなくまた槽内の汚泥を引抜くことなく発酵槽20から蓋体25を取り外すことにより、発酵槽20の上端から撹拌羽根42,44,46と一体で撹拌軸41を引き抜くことが可能になる。
【0031】
最上段に位置する沈降促進羽根42は、撹拌軸41に嵌入固定されたスリーブ42bに中心角180°の角度となるように固定された2枚の平板状の羽根片42aで構成され、発酵槽20内の発酵液の液面を横切る位置、好ましくは羽根面の上下方向中央部に液面が位置するように位置決めされるとともに、先端が発酵槽20の内壁面の近傍位置まで延出形成されている。
【0032】
沈降促進羽根42より下方に分散羽根44が上下方向に3段設けられている。
分散羽根44は、撹拌軸41に固定されたスリーブに中心角180°の角度となるように固定された2枚の平板状の羽根片44aで構成され、各羽根片44aの径方向長さが沈降促進羽根42よりも短く、発酵槽20の内径の40~90%、好ましくは50~70%の範囲の長さに設定されている。平板状の羽根片44aであれば、発酵液の上下方向中間部の撹拌が効率よくできて、軽いものと重いものを振り分けることができる。
【0033】
分散羽根44より下方に掻き寄せ羽根46が設けられている。
掻き寄せ羽根46は、発酵槽20の底部位置で撹拌軸41に固定され、発酵液中で被処理物を分散させる下部分散羽根片46aと、下部分散羽根片46aの先端に固定され発酵液中に沈降した発酵不適物を発酵不適物排出機構70に掻き寄せる掻き寄せ羽根片46cとを備えている。
【0034】
図2及び図3(a)~(e)に示すように、投入機構30は、発酵槽20に有機性廃棄物を投入するための機構であり、水平面に対して所定の傾斜角度θとなる傾斜姿勢で発酵槽20の壁部に形成されたフランジ管36に、先端側が下向きとなるように挿入されフランジ固定された断面が矩形の筒状ケーシング31(図3(e)参照。)と、筒状ケーシング31に内装された断面が矩形の押圧体32と、筒状ケーシング31の軸心に沿って押圧体32を進退駆動する油圧式の駆動機構33とを備えた押込み投入機構30で構成されている。
【0035】
筒状ケーシング31の先端部FEが発酵槽20内で発酵液中に浸漬するように、発酵槽20の側壁に備えたフランジ管36に挿入固定されている。本実施形態では、フランジ管36が水平面に対して約30°の傾斜姿勢に設定され、筒状ケーシング31の傾斜姿勢も水平面に対して約30°の傾斜姿勢に設定されている。
【0036】
さらに、有機性廃棄物を筒状ケーシング31の先端から押込み投入機構30に供給するホッパー機構35が押込み投入機構30の上部に設けられている。ホッパー機構35は、開閉自在な蓋体35cを備えた投入部である上部開口35dから垂下する4枚の側壁35aにより角筒状の収容部が形成され、側壁35aのうち平面視で筒状ケーシング31の軸心を挟むように設けられた一対の対向壁に連なり、下端に向けて次第に幅狭となる傾斜壁部35bが形成されている。
【0037】
図3(a)には説明の便宜上、蓋体35cを破線で示している。当該蓋体35は一端部で側壁35aにヒンジ機構hを介して開閉自在に取り付けられている。また、図3(c)で示す符号35hは点検窓である。
【0038】
上部開口35dからから収容部に投入された発酵適物が、傾斜壁部35bの下端開口から押込み投入機構30の筒状ケーシング31に形成された開口部31aを介して筒状ケーシング31内に落下供給されるように構成されている。
【0039】
つまり、投入機構30の一部を構成する筒状ケーシング31の上部に、長手方向が筒状ケーシング31の軸心に沿う形状の開口部31aが形成され、開口部31aの各長手方向縁部に傾斜壁部35bの各下端35u(図3(a)参照。)が段差なく連なるように配置されている。
【0040】
筒状ケーシング31の先端FEが押圧体32の最大進出位置よりさらに先端側に延出形成されている。そのため、押圧体32が後退駆動された場合に、押圧体32により押圧され圧密化された有機性廃棄物が筒状ケーシング31の先端FEに残存してシール機能が発揮されるようになる。その結果、発酵槽20内の発酵液が筒状ケーシング31内に多量に流入するようなことがなく、また発酵ガスが筒状ケーシング31内に漏洩するようなことが回避できる。
【0041】
ホッパー機構35の筒状ケーシング31壁部への連通位置CA近傍が発酵槽20内の発酵液の液面となるようにホッパー機構35の筒状ケーシング31への取付け位置が設定されている(図3(b)参照。)。
【0042】
ホッパー機構35は、矩形形状の上部開口から垂下する側壁35aを備えた角筒状の収容部と、収容部の下端が筒状ケーシング31に向けて先窄まり形状となる傾斜壁部35bで構成されるロート状部を備えて構成され、収容部に投入された有機性固形廃棄物である可燃性ごみを選別した発酵適物に加えて、し尿や浄化槽汚泥さらには下水汚泥が一緒に投入され、内部に堆積された状態で混合されつつ押込み投入機構30により発酵槽20内部に投入される。
【0043】
筒状ケーシング31に連接されるホッパー機構35の側壁35aのうち押圧体32の進出方向側の前壁部35eが筒状ケーシング31との連接部位で押圧体32の進出方向に向けた傾斜姿勢に形成されている(図3(b),(d)参照。)。
【0044】
押圧体32により筒状ケーシング31内を押圧される有機性廃棄物は、筒状ケーシング31に連接された前壁部35eとの間で圧密される際に前壁部35e及び押圧体32に圧密応力が作用する。このとき、押圧体32の進出方向側の前壁部35eが筒状ケーシング31との連接部位で押圧体32の進出方向に向けた傾斜姿勢に形成されていると、押圧体32の上部近傍の有機性廃棄物の一部が傾斜姿勢の前壁部35eに形成された空間に逃げるため、急激な圧密作用が回避され、円滑に押圧供給されるようになる。
【0045】
筒状ケーシング31に連接されるホッパー機構35の側壁35aのうち押圧体32の後退方向側の後壁部35fは、開口部31aより押圧体32の後退方向側に位置している。
【0046】
発酵液排出口60となるフランジ管が発酵槽20の側壁下部に設けられ、嫌気性発酵処理後の発酵液、つまり消化液が排出される。
【0047】
[有機性廃棄物処理方法の説明]
図4に示すように、可燃ごみが破砕選別装置に投入されて破砕され、有機性廃棄物処理適物として選別された所定量の有機性廃棄物が投入基質として有機性廃棄物処理装置10のホッパー機構35に所定インタバルで投入される。ホッパー機構35に投入された有機性廃棄物は押圧体32によって発酵槽20に押し込み投入され、発酵槽20の内部で発酵処理される。
【0048】
選別された有機性廃棄物の一部がサンプリングされて測定器で測定されて投入基質の固形物濃度が測定される。投入基質の含水率をWとすると、固形物濃度TS=1-Wの関係があり、測定器は固形物濃度TSを測定可能な公知の測定器または含水率を測定可能な公知の測定器の何れであってもよい。なお、固形物濃度TSは乾重量/湿重量で求まる。
【0049】
測定器で測定された投入基質の固形物濃度は制御部に入力され、ホッパー機構35に投入される有機性廃棄物が所定の希釈率で希釈されるように、希釈液の供給配管に備えたバルブの開度が制御部によって制御される。発酵処理が終了して固液分離された水を硝化脱窒する生物処理装置で処理された処理水や生物処理装置から引き抜かれた汚泥、さらには上水などが希釈液として用いられる。希釈液は直接ホッパー機構35に投入してもよいし、発酵槽20に備えた蓋体25に希釈液投入用の管を取り付けて、発酵槽20に直接投入してもよい。
【0050】
投入基質の固形物濃度の測定インタバルは15分から24時間程度のラフなインタバルでよく、例えば15分単位の測定値を24時間蓄積した値の平均値を用いて翌日の希釈率を設定してもよい。発酵槽20での水理学的滞留時間HRTは10~40日程度であるため、数日の遅れは問題にならない。
【0051】
所定の希釈率とは、発酵槽20の槽内固形物濃度が所定の目標値になる希釈率をいい、以下の数式(1)、(2)に基づいて設定される。
(1)槽内固形物濃度=投入基質の固形物濃度×(1-投入基質の分解率)
(2)希釈率=槽内固形物濃度÷槽内固形物濃度の目標値
【0052】
つまり、固形物を含む有機性廃棄物を基質として発酵槽に投入して嫌気性発酵処理する有機性廃棄物処理方法は、発酵槽20への投入基質の固形物濃度を計測する第1ステップと、発酵槽20の槽内固形物濃度が所定の目標値になるように、投入基質の希釈率を設定する第2ステップと、前記希釈率になるように投入基質を希釈する第3ステップと、を含む。
【0053】
槽内固形物濃度は、投入基質の固形物濃度×(1-投入基質の分解率)によって求まり、槽内固形物濃度を槽内固形物濃度の目標値で除すことにより希釈率が求まる。なお、投入基質の分解率は、発酵槽20への投入基質の組成が大きく変化することがないため、予め測定した経験値を適用することができ、さらに定期的に測定することも可能である。
【0054】
投入基質の分解率は運転結果や実験結果などから設定することができる。例えば、投入基質の固形物濃度TSとの発酵槽の槽内固形物濃度TSの其々のデータを蓄積しておき、その関係から分解率を求めたり、或いは投入基質の固形物濃度TSにおける、生ごみ、紙ゴミ等の混合割合と一般的な分解率から平均的な分解率を求めたりすることができる。
【0055】
槽内分解率が多少変動しても、発酵槽20の槽内固形物濃度TSが目標値に維持される結果、発酵槽20を小型に構成しながらも発酵効率を安定させることができる。
【0056】
槽内固形物濃度の目標値が5-15%の範囲の値に設定されることが好ましく、6-12%の範囲の値に設定されることがさらに好ましい。槽内固形物濃度の目標値が5%を下回ると有機物濃度が低下して発酵効率が低下し、槽内固形物濃度の目標値が15%を超えると円滑な攪拌が困難になり、短時間に有機物を分解できず発酵効率が低下する。
【0057】
さらに、数式(1)、(2)に基づいて設定した槽内固形物濃度の目標値が、槽内固形物濃度と槽内粘度との間に定まる所定の相関関係に基づいて、槽内粘度が所定の目標粘度以下となるように、調整されることが好ましい。
槽内目標粘度は30000mPa・s以下であることが好ましく、20000mPa・s以下であることがさらに好ましい。30000mPa・sを超えると発酵槽20の内部で発酵液が良好に攪拌されず発酵効率が低下する。
【0058】
なお、槽内粘度は槽内固形物濃度と相関があり、槽内固形物濃度を変数とする2次以上の高次の関数や、槽内固形物濃度を変数とする指数関数などで近似することができる。
【0059】
上述した実施形態では、数式(1)、(2)に基づいて設定した槽内固形物濃度の目標値を槽内粘度が所定の目標粘度以下となるように調整する例を説明したが、逆に槽内粘度と槽内固形物濃度との間に相関関係に基づいて、槽内粘度が目標粘度となるように槽内固形物濃度の目標値を設定し、その後に数式(1)、(2)に基づいて希釈率を設定してもよい。
【0060】
上述した発酵槽20に投入される発酵適物は、生ごみや紙ごみなどの有機性固形廃棄物、下水汚泥、し尿や浄化槽汚泥以外に、家畜糞尿、農業系残渣、食品廃棄物などのバイオマスなども対象となり、それらが単独または混合された有機性廃棄物を対象とすることができる。
【0061】
本発明が適用可能な有機性廃棄物処理装置10は上述した発酵槽20と、投入機構30と、撹拌機構40と、ガス排出部50と、発酵液排出口60、発酵不適物排出機構70などを備えた構成が好ましいが、各部の具体的な構成は特に限定されるものではない。少なくとも固形物を含む有機性廃棄物を別途の可溶化処理槽などを用いて可溶化処理することなく、直接投入して嫌気性発酵処理が可能な発酵処理装置であればよい。
【0062】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的な構造、サイズ、材料などは本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0063】
10:有機性廃棄物処理装置
20:発酵槽
30:投入機構
31:筒状ケーシング
32:押圧体
36:フランジ管
37:フランジ管
40:撹拌機構
41:撹拌軸
42:沈降促進羽根
44:分散羽根
36:掻き寄せ羽根
50:ガス排出部
60:発酵液排出口
70:発酵不適物排出機構
71:二重ダンパ機構
72:二重ダンパ機構
73:筒状部
図1
図2
図3
図4