(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】磁気ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/03 20060101AFI20240527BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F16F15/03 G
E04H9/02 331Z
(21)【出願番号】P 2021023593
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】馮 徳民
(72)【発明者】
【氏名】田中 良一
(72)【発明者】
【氏名】小松原 知将
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康人
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-016745(JP,U)
【文献】特開平05-332396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/03
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダの軸心上に往復移動可能に配置され前記シリンダの両端部から突出するロッドとを備える磁気ダンパであって、
前記シリンダの軸心方向の両端部の内周面に配置された第1磁石と、
前記ロッドの軸方向の中央部の外周面に配置された第2磁石と、を備え、
前記第1磁石の半径方向内側と前記第2磁石の半径方向外側とは異なる磁極を有し、
前記ロッドは、初期位置において、前記第2磁石が前記シリンダの軸心方向の中央部に対向する位置に設けられている、
ことを特徴とする磁気ダンパ。
【請求項2】
前記第1磁石は、前記シリンダの両端部の内周面の全周にわたって設けられ、
前記第2磁石は、前記中央部の外周面の全周にわたって設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の磁気ダンパ。
【請求項3】
前記第1磁石および前記第2磁石は、永久磁石である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の磁気ダンパ。
【請求項4】
前記第1磁石および前記第2磁石のうち少なくとも一方が電磁石であって、
前記電磁石に通電する制御部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または2記載の磁気ダンパ。
【請求項5】
シリンダと、前記シリンダの軸心上に往復移動可能に配置され前記シリンダの両端部から突出するロッドとを備える磁気ダンパであって、
前記シリンダの軸心方向の両端部の内周面
のみおよび前記ロッドの軸方向の中央部の外周面のうちの一方に配置された磁石と、
前記シリンダの軸心方向の両端部の内周面
のみおよび前記ロッドの軸方向の中央部の外周面のうちの他方に配置された導体と、を備え、
前記ロッドは、初期位置において、前記ロッドの中央部に配置された前記磁石または前記導体が、前記シリンダの軸心方向の中央部に対向する位置に設けられている、
ことを特徴とする磁気ダンパ。
【請求項6】
前記シリンダに配置された前記磁石または前記導体は、前記シリンダの両端部の内周面の全周にわたって設けられ、
前記ロッドに配置された前記磁石または前記導体は、前記ロッドの中央部の外周面の全周にわたって設けられている、
ことを特徴とする請求項5記載の磁気ダンパ。
【請求項7】
前記磁石は、永久磁石である、
ことを特徴とする請求項5または6記載の磁気ダンパ。
【請求項8】
前記磁石は、電磁石であって、
前記電磁石に通電する制御部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項5または6記載の磁気ダンパ。
【請求項9】
前記磁気ダンパは、下部構造体上で免震支持された上部構造体を構成する免震建物に設置され、
前記シリンダの軸心方向の一方の端部から突出した前記ロッドの端部と、前記シリンダの軸心方向の他方の端部にそれぞれ取り付け部材が取り付けられ、
それら取り付け部材のうちの一方の前記取り付け部材は、前記上部構造体に連結され、
他方の前記取り付け部材は、前記下部構造体に連結されている、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項記載の磁気ダンパ。
【請求項10】
前記取り付け部材は、前記シリンダの軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記下部構造体と前記上部構造体に連結されている、
ことを特徴とする請求項9記載の磁気ダンパ。
【請求項11】
前記制御部は、前記免震建物が振動した場合、前記電磁石に通電する、
ことを特徴とする請求項4または請求項8を引用する請求項9または10記載の磁気ダンパ。
【請求項12】
前記ロッドは雄ねじ部を有し、前記シリンダの軸心上で往復移動可能かつ回転可能に配置され、
前記雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を有する雌ねじ部材が回転不能に配置されている、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項記載の磁気ダンパ。
【請求項13】
前記雄ねじ部は、前記ロッドの長手方向の少なくとも半部に設けられ、
前記シリンダは、前記シリンダの内周面を構成する筒状壁と、前記シリンダの軸心方向の両端を閉塞し前記ロッドが貫通された一対の端面壁とを有し、
前記雌ねじ部材は、前記シリンダの外面で前記ロッドの半部が位置する前記端面壁に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項12記載の磁気ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎(下部構造体)上に、複数のゴム板と鋼板とが重ね合わされた積層ゴムを設けると共に鉛プラグ等のエネルギ吸収手段を設け、それらの上で建物(上部構造体)を免震支持する免震建物が知られている。
このような免震建物において、通常の設計で想定する地震動を超える地震動(設計での想定を超える地震動)が生じた場合の建物(上部構造体)の過大な変位を制御する方法として、下部構造体と上部構造体との間に水平方向に延在するダンパをさらに設置する方法が考えられる。
しかしながら、非常に発生頻度、確率の低いと考えられる設計での想定を超える地震動に対応するためこのような方法にすると、より発生頻度、確率の高い地震に対してもダンパが減衰力を発揮してしまい、免震性能を低下させ、上部構造体へ不要な地震力を生じさせるという問題がある。
【0003】
そこで、免震層に生じる変位の大きさや速度の大きさに応じて減衰力を切り替える機構を有するダンパを設置する方法が考えられる(例えば特許文献1参照)。
特許文献1の油圧緩衝器(ダンパ)では、油が通過する通路と可変絞り機構を設け、ピストンの変位に応じて減衰力が変化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような免震層に生じる変位の大きさや速度の大きさに応じて減衰力を切り替える機構を有するダンパは、その構成が複雑であるため、簡易な構成により設計での想定を超える地震動に応じた減衰力を発揮させるダンパを用いることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能の低下を抑制するとともに、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる磁気ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため本発明の一実施形態は、シリンダと、前記シリンダの軸心上に往復移動可能に配置され前記シリンダの両端部から突出するロッドとを備える磁気ダンパであって、前記シリンダの軸心方向の両端部の内周面に配置された第1磁石と、前記ロッドの軸方向の中央部の外周面に配置された第2磁石と、を備え、前記第1磁石の半径方向内側と前記第2磁石の半径方向外側とは異なる磁極を有し、前記ロッドは、初期位置において、前記第2磁石が前記シリンダの軸心方向の中央部に対向する位置に設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第1磁石は、前記シリンダの両端部の内周面の全周にわたって設けられ、前記第2磁石は、前記中央部の外周面の全周にわたって設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第1磁石および前記第2磁石は、永久磁石であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第1磁石および前記第2磁石のうち少なくとも一方が電磁石であって、前記電磁石に通電する制御部をさらに備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、シリンダと、前記シリンダの軸心上に往復移動可能に配置され前記シリンダの両端部から突出するロッドとを備える磁気ダンパであって、前記シリンダの軸心方向の両端部の内周面および前記ロッドの軸方向の中央部の外周面のうちの一方に配置された磁石と、前記シリンダの軸心方向の両端部の内周面および前記ロッドの軸方向の中央部の外周面のうちの他方に配置された導体と、を備え、前記ロッドは、初期位置において、前記ロッドの中央部に配置された前記磁石または前記導体が、前記シリンダの軸心方向の中央部に対向する位置に設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記シリンダに配置された前記磁石または前記導体は、前記シリンダの両端部の内周面の全周にわたって設けられ、前記ロッドに配置された前記磁石または前記導体は、前記ロッドの中央部の外周面の全周にわたって設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記磁石は、永久磁石であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記磁石は、電磁石であって、前記電磁石に通電する制御部をさらに備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記磁気ダンパは、下部構造体上で免震支持された上部構造体を構成する免震建物に設置され、前記シリンダの軸心方向の一方の端部から突出した前記ロッドの端部と、前記シリンダの軸心方向の他方の端部にそれぞれ取り付け部材が取り付けられ、それら取り付け部材のうちの一方の前記取り付け部材は、前記上部構造体に連結され、他方の前記取り付け部材は、前記下部構造体に連結されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記取り付け部材は、前記シリンダの軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で前記下部構造体と前記上部構造体に連結されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記制御部は、前記免震建物が振動した場合、前記電磁石に通電することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ロッドは雄ねじ部を有し、前記シリンダの軸心上で往復移動可能かつ回転可能に配置され、前記雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を有する雌ねじ部材が回転不能に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記雄ねじ部は、前記ロッドの長手方向の少なくとも半部に設けられ、前記シリンダは、前記シリンダの内周面を構成する筒状壁と、前記シリンダの軸心方向の両端を閉塞し前記ロッドが貫通された一対の端面壁とを有し、前記雌ねじ部材は、前記シリンダの外面で前記ロッドの半部が位置する前記端面壁に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、磁気ダンパにおいて第1磁石がシリンダの軸心方向の両端部の内周面に配置され、第2磁石がロッドの軸方向の中央部の外周面に配置され、初期位置において第2磁石がシリンダの軸心方向の中央部に対向する位置にロッドが設けられており、シリンダとロッドの相対変位量が所定値以上になった場合に第1磁石および第2磁石が対向して引力が働くことでロッドの移動が抑制されるため、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能の低下を抑制するとともに、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0009】
また、第1磁石がシリンダの両端部の内周面の全周にわたって設けられ、第2磁石がロッドの外周面の全周にわたって設けられているように構成すると、設計での想定を超える地震動が発生しシリンダとロッドとの相対変位量が所定値以上になった場合のみ確実に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0010】
また、第1磁石および第2磁石を永久磁石で構成すると、磁気ダンパに配置するだけで磁力を発生するため、コストの削減を図る上で有利となる。
【0011】
また、第1磁石および第2磁石のうち少なくとも一方を電磁石で構成し、電磁石に通電する制御部をさらに備える構成にすると、磁力を発生させるタイミングを調整できるため、利便性を向上させる上で有利となる。
【0012】
また、本発明の一実施の形態によれば、磁気ダンパにおいてシリンダの軸心方向の両端部の内周面およびロッドの軸方向の中央部の外周面のうちの一方に磁石が配置され、シリンダの軸心方向の両端部の内周面およびロッドの軸方向の中央部の外周面のうちの他方に導体が配置され、初期位置において、ロッドの中央部に配置された磁石または導体が、シリンダの軸心方向の中央部に対向する位置に設けられており、シリンダとロッドの相対変位量が所定値以上になった場合に磁石および導体が対向し、導体に流れる渦電流と磁石の磁界との作用によって生じた抵抗力によりロッドの移動が抑制されるため、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能の低下を抑制するとともに、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0013】
また、シリンダに配置された磁石または導体がシリンダの両端部の内周面の全周にわたって設けられ、ロッドに配置された磁石または導体がロッドの中央部の外周面の全周にわたって設けられているように構成すると、設計での想定を超える地震動が発生しシリンダとロッドとの相対変位量が所定値以上になった場合のみ確実に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0014】
また、磁石を永久磁石で構成すると、磁気ダンパに配置するだけで磁力を発生するため、コストの削減を図る上で有利となる。
【0015】
また、磁石を電磁石で構成し、電磁石に通電する制御部をさらに備える構成すると、磁力を発生させるタイミングを調整できるため、利便性を向上させる上で有利となる。
【0016】
また、シリンダの軸心方向の一方の端部から突出したロッドの端部と、シリンダの軸心方向の他方の端部にそれぞれ取り付け部材が取り付けられ、それら取り付け部材のうちの一方の取り付け部材が上部構造体に連結され、他方の取り付け部材が下部構造体に連結されているように構成すると、設計での想定を超える地震動により上部構造体が下部構造体に対して変位を生じた場合に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0017】
また、取り付け部材がシリンダの軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で下部構造体と上部構造体にそれぞれ連結されるように構成すると、地震動により上部構造体が下部構造体に対して水平方向に移動した場合でも、磁気ダンパを水平方向に揺動させることができ、磁気ダンパの破損を回避する上で有利となる。
【0018】
また、制御部により免震建物が振動した場合に電磁石に通電するように構成すると、地震が発生していない場合には通電を行わないため、コストの削減を図る上で有利となる。
【0019】
また、ロッドが雄ねじ部を有し、シリンダの軸心上で往復移動可能かつ回転可能に配置され、雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を有する雌ねじ部材が回転不能に配置されるように構成すると、第1磁石および第2磁石の磁力に他の場所と比較して弱い場所があった場合でも、ロッドが回転しながら移動するため、周方向において均等に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0020】
また、雄ねじ部は、ロッドの長手方向の少なくとも半部に設けられ、雌ねじ部材がシリンダの外面でロッドの半部が位置する端面壁に取り付けられているように構成すると、簡易な構成によってロッドが回転しながら移動できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施の形態にかかる磁気ダンパが設けられた免震建物を示す模式図である。
【
図2】第1の実施の形態にかかる磁気ダンパの構成図である。
【
図3】第1の実施の形態にかかる磁気ダンパが最も縮んだ状態を示す説明図である。
【
図4】第1の実施の形態にかかる磁気ダンパが最も伸びた状態を示す説明図である。
【
図5】第2の実施の形態にかかる磁気ダンパの構成図である。
【
図6】第3の実施の形態にかかる磁気ダンパの構成図である。
【
図7】第4の実施の形態にかかる磁気ダンパの構成図である。
【
図8】第4の実施の形態にかかる磁気ダンパが最も縮んだ状態を示す説明図である。
【
図9】第4の実施の形態にかかる磁気ダンパが最も伸びた状態を示す説明図である。
【
図10】第5の実施の形態にかかる磁気ダンパの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、免震建物は、下部構造体2(基礎)上で免震支持された上部構造体4(建物)であり、下部構造体2と上部構造体4との間に積層ゴム6と磁気ダンパ10Aが設置されている。
【0023】
積層ゴム6は、上部構造体4を支持しつつ、地震発生時には上部構造体4を水平方向に移動させることで、地震による地盤の揺れを上部構造体4に伝えにくくするアイソレータである。
図1の例では、アイソレータとして複数のゴム板と鋼板を交互に積み重ねた積層ゴムが用いられているが、この他にも、転がり支承や滑り支承等を利用したアイソレータであってもよい。
【0024】
磁気ダンパ10Aは、地震発生時に積層ゴム6によって水平方向に変位する上部構造体4の揺れに対して、水平方向の減衰力を発揮させるものである。
本実施の形態では、磁気ダンパ10Aを下部構造体2としての基礎と、上部構造体4としての建物のとの鉛直方向の間に設置した例を示すが、建物の低層部と上層部との間など建物の各階層の間に設置してもよいし、建物と建物の外周部に設けられた基礎との間で水平方向に設置してもよい。
【0025】
図2~4に示すように、磁気ダンパ10Aは、シリンダ12と、ロッド14と、第1磁石16と、第2磁石18と、一方の取り付け部材22と、他方の取り付け部材24とを備えている。
【0026】
シリンダ12は、シリンダ12の内周面を構成する円筒状の筒状壁1202と、シリンダ12の軸心方向の両端を閉塞しロッド14が貫通された円板状の一対の端面壁1204,1206とで構成された金属製の容器である。
一対の端面壁1204,1206のうちの一方は、シリンダ12の一方の端部12Aを閉塞しており、他方は、シリンダ12の他方の端部12Bを閉塞する第2端面壁1206である。
【0027】
ロッド14は、シリンダ12の軸心上に往復移動可能に配置され、シリンダ12の両端部にある第1端面壁1204および第2端面壁1206からそれぞれ突出する金属製の棒状部材である。
ロッド14は、
図1に示す初期位置において、ロッド14の軸方向の中央部がシリンダ12の軸心方向の中央部に位置する。
【0028】
第1磁石16は、シリンダ12の筒状壁1202の軸心方向の両端部の内周面に配置された永久磁石である。
第1磁石16は、筒状壁1202の両端部の内周面の全周にわたって均一の幅および均一の厚さで設けられている。
【0029】
第2磁石18は、ロッド14の軸方向の中央部の外周面に配置された永久磁石である。
第2磁石18は、ロッド14の中央部の外周面の全周にわたって均一の幅および均一の厚さで設けられている。
【0030】
本実施の形態では、第1磁石16および第2磁石18に引きつけ合う力(引力)を働かせることで、シリンダ12を貫通するロッド14の往復移動を抑制させるものであるため、第1磁石16の半径方向内側と第2磁石18の半径方向外側とは異なる磁極を有している。
具体的には、第1磁石16の半径方向内側がS極であれば第2磁石18の半径方向外側がN極であって、第1磁石16の半径方向内側がN極であれば第2磁石18の半径方向外側がS極となっている。
【0031】
一方の取り付け部材22および他方の取り付け部材24は、金属製であって、磁気ダンパ10Aの両端部12A、12Bにそれぞれ設けられている。
すなわち、一方の取り付け部材22は、シリンダ12の軸心方向の一方の端部12Aから突出したロッド14の一方の端部14Aに取り付けられ、他方の取り付け部材24は、シリンダ12の軸心方向の他方の端部12Bに位置する第2端面壁1206に取り付けられている。
【0032】
図1に示すように、一方の取り付け部材22は、シリンダ12の軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸4Bの周りに揺動可能な状態で上部構造体4に連結され、他方の取り付け部材24は、シリンダ12の軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸2Bの周りに揺動可能な状態で下部構造体2に連結されている。
具体的には、例えば、一方の取り付け部材22は、取り付け孔2202に揺動可能に挿通された軸4Bが、上部構造体4の下部に取り付けられた保持部材4Aで支持されることで、取り付け孔2202の中心を通る軸周りに揺動可能な状態で上部構造体4に連結されている。
【0033】
また、他方の取り付け部材24は、シリンダ12の軸心方向の他方の端部に位置する第2端面壁1206に取り付けられており、第2端面壁1206から軸心方向に突設された円筒部2402と、円筒部2402の端部に設けられた取り付け部2404とで構成されている。
円筒部2402は、ロッド14がX1方向に最大に移動した際にシリンダ12の第2端面壁1206から突出したロッド14が収容可能な長さを有して形成されている(
図3参照)。
そして、他方の取り付け部材24は、取り付け部2404に設けられた取り付け孔2406に揺動可能に挿通された軸2Bが、下部構造体2の上部に取り付けられた保持部材2Aで支持されることで、取り付け孔2406の中心を通る軸周りに揺動可能な状態で下部構造体2に連結されている。
【0034】
なお、本実施の形態では、一方の取り付け部材22が上部構造体4に連結され、他方の取り付け部材24が下部構造体2に連結されていたが、反対にして配置されていてもよい。すなわち、一方の取り付け部材22が下部構造体2に連結され、他方の取り付け部材24が上部構造体4に連結されるよう配置してもよい。
【0035】
次に、磁気ダンパ10Aの動作について説明する。
ここで、本実施の形態では、通常の設計で想定する地震動が生じた場合に、ロッド14がシリンダ12に対して軸心方向に移動する相対変位量は長さL1未満となる。
また、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、ロッド14がシリンダ12に対して軸心方向に移動する相対変位量は長さL1以上で長さL1+L2までとなる。
なお、
図3は、磁気ダンパ10Aが最も縮んだ状態を示し、
図4は、磁気ダンパ10Aが最も伸びた状態を示している。
【0036】
まず、発生頻度、確率が比較的高いと考えられる通常の設計で想定する地震動が生じた場合、上部構造体4がX1方向(
図1参照)に移動すると、磁気ダンパ10Aは、ロッド14がシリンダ12に挿入されるX1方向へ押圧されてX1方向に移動するが、シリンダ12とロッド14の相対変位量は長さL1未満となる。
また、発生頻度、確率が比較的高いと考えられる通常の設計で想定する地震動が生じた場合、上部構造体4がX2方向(
図1参照)に移動すると、磁気ダンパ10Aは、ロッド14がシリンダ12から抜き出されるX2方向に引っ張られてX2方向に移動するが、同様に、シリンダ12とロッド14の相対変位量は長さL1未満となる。
このように、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1未満であった場合、第1磁石16と第2磁石18とが対向する位置にないことより、第1磁石16と第2磁石18との間で働く引力が、第1磁石16と第2磁石18とが対向する位置にある場合に働く引力と比較すると小さい。
したがって、第1磁石16および第2磁石18によってシリンダ12を貫通するロッド14の往復移動を抑制する力も小さくなるため、通常の設計で想定する地震動が生じた場合に、磁気ダンパ10Aによる減衰力はほぼ発揮されず免震建物の免震性能の低下が抑制される。
【0037】
次に、発生頻度、確率が比較的低いと考えられる設計での想定を超える地震動が生じた場合、上部構造体4がX1方向(
図1参照)に移動すると、磁気ダンパ10Aは、ロッド14がシリンダ12に挿入されるX1方向へ押圧されてX1方向に移動し、シリンダ12とロッド14の相対変位量は長さL1以上となる。
また、発生頻度、確率が比較的低いと考えられる設計での想定を超える地震動が生じた場合、上部構造体4がX2方向(
図1参照)に移動すると、磁気ダンパ10Aは、ロッド14がシリンダ12から抜き出されるX2方向に引っ張られてX2方向に移動し、同様に、シリンダ12とロッド14の相対変位量は長さL1以上となる。
このように、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1以上になった場合、第1磁石16と第2磁石18とが対向する位置となり、第1磁石16と第2磁石18との間で引力が働く。
したがって、第1磁石16および第2磁石18によってシリンダ12を貫通するロッド14の往復移動を抑制し、設計での想定を超える地震動が生じた場合に、磁気ダンパ10Aによる減衰力を発揮させる。
【0038】
さらにロッド14がX1方向またはX2方向に移動し、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1以上となっても、第1磁石16と第2磁石18とは対向する位置関係が継続され、磁気ダンパ10Aによる減衰力を発揮させ続ける。
【0039】
そして、X1方向またはX2方向に移動していたロッド14がX2方向またはX1方向に戻り、シリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値である長さL1未満になった場合、第1磁石16と第2磁石18とが対向する位置ではなくなり、磁気ダンパ10Aによる減衰力が発揮されなくなり、免震建物の免震性能が発揮されることになる。
【0040】
つまり、地震動が発生して、シリンダ12とロッド14との相対変位量が大きくなればなるほど、第1磁石16と第2磁石18とが近づいていき、やがて対向する位置となる。
したがって、シリンダ12とロッド14との相対変位量が大きくなればなるほど、第1磁石16と第2磁石18との間に働く引力も大きくなっていく。
本実施の形態では、シリンダ12とロッド14の相対変位量が大きくなっても長さL1未満である場合は、第1磁石16と第2磁石18の間に働く引力が初期位置で働く引力より徐々に大きくなっていくが、ロッド14の往復移動を抑制するほどではない。
そして、シリンダ12とロッド14の相対変位量が長さL1以上になった場合は、第1磁石16と第2磁石18の間に働く力がさらに大きくなっていき、ロッド14の往復移動を抑制する。
また、シリンダ12とロッド14の相対変位量が再度長さL1未満になった場合は、第1磁石16と第2磁石18の間に働く力が小さくなっていき、ロッド14の往復移動を抑制しなくなる。
【0041】
このように、本実施の形態によれば、磁気ダンパ10Aにおいて第1磁石16がシリンダ12の軸心方向の両端部の内周面に配置され、第2磁石18がロッド14の軸方向の中央部の外周面に配置され、初期位置において第2磁石18がシリンダ12の軸心方向の中央部に対向する位置にロッド14が設けられており、シリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値以上になった場合に第1磁石16および第2磁石18が対向して引力が働くことでロッド14の移動が抑制されるため、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能の低下を抑制するとともに、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0042】
また、第1磁石16がシリンダ12の両端部の内周面の全周にわたって設けられ、第2磁石18がロッド14の中央部の外周面の全周にわたって設けられているため、設計での想定を超える地震動が発生しシリンダ12とロッド14との相対変位量が所定値以上になった場合のみ確実に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0043】
また、第1磁石16および第2磁石18が永久磁石で構成したことで、磁気ダンパ10Aに配置するだけで磁力を発生するため、コストの削減を図る上で有利となる。
【0044】
また、シリンダ12の軸心方向の一方の端部12Aから突出したロッド14の一方の端部14Aと、シリンダ12の軸心方向の他方の端部12Bにそれぞれ取り付け部材22、24が取り付けられ、一方の取り付け部材22が上部構造体4に連結され、他方の取り付け部材24が下部構造体2に連結されているため、設計での想定を超える地震動により上部構造体4が下部構造体2に対して変位を生じた場合に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0045】
また、一方の取り付け部材22および他方の取り付け部材24は、シリンダ12の軸心方向と直交する鉛直方向に延在する軸の周りに揺動可能な状態で、それぞれ下部構造体2と上部構造体4に連結されているため、地震動により上部構造体4が下部構造体2に対して水平でシリンダ12軸心方向と交差する方向に移動した場合でも、磁気ダンパ10Aが揺動できるため、磁気ダンパ10Aの破損を回避しつつ磁気ダンパ10Aを機能させることができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態の磁気ダンパ10Aでは、第1磁石16および第2磁石18が永久磁石であったのに対して、第2の実施の形態の磁気ダンパ10Bでは、第1磁石および第2磁石のうち少なくとも一方が電磁石で構成されている点が異なっている。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な個所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態と異なった個所について重点的に説明する。
【0047】
図5に示すように、本実施の形態の磁気ダンパ10Bは、シリンダ12と、ロッド14と、第1磁石26と、第2磁石28と、一方の取り付け部材22と、他方の取り付け部材24と、制御部100とを備えている。
【0048】
第1磁石26は、シリンダ12の軸心方向の両端部の内周面に配置され、通電される(電流が流れる)ことによって磁力を発生させる電磁石である。
第1磁石26は、シリンダ12の両端部の内周面の全周にわたって均一の幅および均一の厚さで設けられている。
【0049】
第2磁石28は、ロッド14の軸方向の中央部の外周面に配置された電磁石である。
第2磁石28は、ロッド14の中央部の外周面の全周にわたって均一幅および均一の厚さで設けられている。
【0050】
制御部100は、電磁石である第1磁石26および第2磁石28への通電を制御する。
制御部100は、CPU、記憶部、インターフェース回路などを含むマイクロコンピュータを含んで構成されており、記憶部にはCPUが実行する制御プログラムが格納され、インターフェース回路を介して第1磁石26、第2磁石28、および振動センサ(不図示)が接続されている。
なお、本実施の形態では、免震建物に制御部100に接続された振動センサが設けられ、上部構造体4の振動量(例えば加速度)を検出することで免震建物の振動を検知する。
【0051】
本実施の形態では、制御部100は、免震建物が振動した場合に第1磁石26および第2磁石28に通電する。
そして、制御部100により第1磁石26および第2磁石28が通電されたのち、振動センサの検知による上部構造体4の振動量によって免震建物の振動が停止したと判断され場合、制御部100は、第1磁石26および第2磁石28への通電を停止する。
【0052】
本実施の形態の磁気ダンパ10Bの地震動が生じた際の動作については、第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態では、免震建物が振動した場合に第1磁石26および第2磁石28に通電する。
【0053】
このように、本実施の形態によれば、第1磁石26および第2磁石28を電磁石とし、免震建物が振動した場合に制御部100により第1磁石26および第2磁石28を通電し、免震建物の振動が停止した場合に制御部100により第1磁石26および第2磁石28への通電を停止する。これにより、第1磁石26および第2磁石28に磁力を発生させるタイミングを調整できるため、利便性を向上させる上で有利となる。
また、制御部100により免震建物が振動した場合に第1磁石26および第2磁石28に通電するように構成すると、地震が発生していない場合には通電を行わないため、コストの削減を図る上で有利となる。
また、第1の実施の形態と同様の部材および構成については、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0054】
なお、本実施の形態では、第1磁石26および第2磁石28がともに電磁石である例を示したが、所定条件下で第1磁石26および第2磁石28の間で引力を働かせればよいため、第1磁石26および第2磁石28のうち少なくとも一方が電磁石で構成されていればよい。
すなわち、第1磁石26が電磁石で第2磁石28が永久磁石である構成、もしくは第1磁石26が永久磁石で第2磁石28が電磁石である構成としてもよい。この場合、電磁石で構成された磁石が通電されることで引力を働かせることができる。
【0055】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態の磁気ダンパ10Aでは、ロッド14がシリンダ12の一対の端面壁1204、1206に貫通されていたのに対して、第3の実施の形態の磁気ダンパ10Cでは、さらにロッド30が雄ねじ部3002を有し、その雄ねじ部3002に螺合可能な雌ねじ部3202を有する雌ねじ部材32が配置されている点が異なっている。
【0056】
図6に示すように、本実施の形態の磁気ダンパ10Cは、シリンダ12と、ロッド30と、第1磁石16と、第2磁石18と、一方の取り付け部材22と、他方の取り付け部材24と、雌ねじ部材32とを備えている。
【0057】
ロッド30は、長手方向の一方の端部30A側の半部に雄ねじ部3002が設けられ、シリンダ12の軸心上で往復移動可能かつ回転可能に配置されている。
ロッド30は、シリンダ12の両端部にある第1端面壁1204および第2端面壁1206からそれぞれ突出する金属製の棒状部材であって、ロッド30の一方の端部30Aは、軸受け3004を介して一方の取り付け部材22に回転可能に支持され、また、第2端面壁1206でも回転可能に支持されている。
ロッド30は、第1の実施の形態と同様に、
図1に示す初期位置において、ロッド30の軸方向の中央部の第2磁石18がシリンダ12の軸心方向の中央部に対向する位置に設けられている。
【0058】
雌ねじ部材32は、ロッド30の雄ねじ部3002に螺合可能な雌ねじ部3202を有し、回転不能に配置されている。
雌ねじ部材32は、例えば、ボールねじで構成され、シリンダ12の外面でロッド30の半部が位置する端面壁、すなわちシリンダ12の一方の端部12Aにある第1端面壁1204の外面に取り付けられ、雌ねじ部3202の軸心とロッド30の軸心とが一致している。
【0059】
このような本実施の形態の磁気ダンパ10Cは、ロッド30がシリンダ12に挿入されるX1方向へ押圧されてX1方向に移動する場合、雄ねじ部3002と雌ねじ部3202とによりロッド30は正転しながらX1方向に移動する。
また、磁気ダンパ10Cは、ロッド30がシリンダ12から抜き出されるX2方向に引っ張られてX1方向に移動する場合、雄ねじ部3002と雌ねじ部3202とによりロッド30は逆転しながらX2方向に移動する。
【0060】
本実施の形態の磁気ダンパ10Cの地震動が生じた際の動作については、、第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態では、ロッド30がX1方向またはX2方向に移動するとき、回転しながら移動する。
【0061】
このように、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
本実施の形態では、ロッド30が雄ねじ部3002を有し、シリンダ12の軸心上で往復移動可能かつ回転可能に配置され、雄ねじ部3002に螺合可能な雌ねじ部3202を有する雌ねじ部材32が回転不能に配置されている。このため、ロッド30が回転しながら移動するため、均等に減衰力を発揮させる上で有利となる。
また、雄ねじ部3002がロッド30の長手方向の一方の端部30A側の半部に設けられ、雌ねじ部材32がシリンダ12の外面でロッド30の半部が位置する第1端面壁1204に取り付けられている。このため、簡易な構成によってロッド30が回転しながら移動できるという効果を奏する。
【0062】
本実施の形態では、ロッド30の一方の端部30Aの半部に雄ねじ部3002を有する構成としたが、ロッド30の一方の端部30Aから他方の端部30Bまで全て雄ねじ部3002を有する構成としてもよい。この場合、雌ねじ部材32をシリンダ12の他方の端部12Bにある第2端面1206壁の外面にも取り付けると、ロッド30を安定させて回転させる上で有利となる。
【0063】
また、本実施の形態では、雌ねじ部材32をシリンダ12の一方の端部12Aにある第1端面壁1204の外面に取り付けた構成としたが、第1端面壁1204の内周部に雌ねじ部3202を設け、第1端面壁1204に雌ねじ部材32の機能を備えた構成にしてもよい。これにより、部品を削減してコストの削減を図る上で有利となる。
【0064】
(第4の実施の形態)
第1の実施の形態の磁気ダンパ10Aでは、永久磁石である第2磁石18がロッド14の外周面に配置されていたのに対して、第4の実施の形態の磁気ダンパ10Dでは、導体48がロッド14の外周面に配置されて構成されている点が異なっている。
【0065】
図7に示すように、導体48は、電気を通す銅板であって、ロッド14の軸方向の中央部の外周面に配置されている。
本実施の形態の導体48は、ロッド14の中央部の外周面の全周にわたって均一の幅および均一の厚さで設けられている。
【0066】
なお、本実施の形態では、導体48として銅板を用いた構成となっているが、電気を通すものであれば他の金属などを用いて構成してもよい。
また、本実施の形態では、永久磁石である第1磁石16がシリンダの内周面に設けられ、導体48がロッド14の外周面に設けられた例を示したが、導体がシリンダ12の内周面に設けられ永久磁石がロッド14の外周面に設けられた構成としてもよい。
【0067】
本実施の形態では、地震動が生じてシリンダ12に設けられた第1磁石16とロッド14に設けられた導体48とが対向する位置になると、第1磁石16と導体48の相対変位によって、導体48に電磁誘導による誘導起電力が生じて渦電流が流れる。この渦電流と第1磁石16の磁界とが作用して、第1磁石16と導体48との間には相対変位方向とは反対向きの抵抗力が生じ、この抵抗力が減衰力として作用する。
【0068】
本実施の形態の磁気ダンパ10Dの地震動が生じた際の動作については、第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態では、ロッド14の外周面に設けられた導体48と第1磁石16との間で抵抗力を生じさせる。
なお、
図8は、磁気ダンパ10Dが最も縮んだ状態を示し、
図9は、磁気ダンパ10Dが最も伸びた状態を示している。
【0069】
このように、本実施の形態によれば、磁気ダンパ10Dにおいてシリンダ12の軸心方向の両端部の内周面に永久磁石である第1磁石16が配置され、ロッド14の軸方向の中央部の外周面に導体48が配置され、初期位置において、ロッド14の中央部に配置された導体48が、シリンダ12の軸心方向の中央部に対向する位置に設けられている。したがって、シリンダ12とロッド14の相対変位量が所定値以上になった場合に第1磁石16および導体48が対向し、導体48に流れる渦電流と第1磁石16の磁界との作用によって生じた抵抗力によりロッド14の移動が抑制されるため、簡易な構成により、通常の設計で想定する地震動に対する免震性能の低下を抑制するとともに、設計での想定を超える地震動に対して減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0070】
また、第1磁石16がシリンダ12の両端部の内周面の全周にわたって設けられ、導体48がロッド14の中央部の外周面の全周にわたって設けられているため、設計での想定を超える地震動が発生しシリンダ12とロッド14との相対変位量が所定値以上になった場合のみ確実に減衰力を発揮させる上で有利となる。
【0071】
また、第1磁石16が永久磁石で構成したことで、磁気ダンパ10Dに配置するだけで磁力を発生するため、コストの削減を図る上で有利となる。
【0072】
また、第1の実施の形態と同様の部材および構成については、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0073】
なお、第4の実施の形態の磁気ダンパ10Dにおいても、第3の実施の形態の磁気ダンパ10Cと同様に、ロッド14に雄ねじ部を有し、その雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を有する雌ねじ部材をさらに配置し、ロッド14がX1方向またはX2方向に移動するとき、雄ねじ部と雌ねじ部を介して回転しながら移動する構成としてもよい。
【0074】
(第5の実施の形態)
第2の実施の形態の磁気ダンパ10Bでは、電磁石である第2磁石28がロッド14の外周面に配置されていたのに対して、第5の実施の形態の磁気ダンパ10Eでは、導体48がロッド14の外周面に配置されて構成されている点が異なっている。
【0075】
図10に示すように、導体48は、第4の実施の形態と同様に、電気を通す銅板であって、ロッド14の軸方向の中央部の外周面に配置されている。
本実施の形態の導体58は、ロッド14の中央部の外周面の全周にわたって均一の幅および均一の厚さで設けられている。
【0076】
また、本実施の形態では、電磁石である第1磁石26がシリンダの内周面に設けられ、導体48がロッド14の外周面に設けられた例を示したが、導体がシリンダ12の内周面に設けられ電磁石がロッド14の外周面に設けられた構成としてもよい。
【0077】
制御部200は、電磁石である第1磁石26への通電を制御するものであり、第2の実施の形態と同様に構成され、インターフェース回路を介して第1磁石26に接続されている。
本実施の形態では、制御部200は、免震建物が振動した場合に第1磁石26に通電する。
そして、制御部200により第1磁石26が通電されたのち、振動センサの検知による上部構造体4の振動量によって免震建物の振動が停止したと判断され場合、制御部200は、第1磁石26への通電を停止する。
【0078】
本実施の形態では、地震動が生じて制御部200により第1磁石26が通電され、シリンダ12に設けられた第1磁石26とロッド14に設けられた導体48とが対向する位置になると、第1磁石26と導体48の相対変位によって、導体48に電磁誘導による誘導起電力が生じて渦電流が流れる。この渦電流と第1磁石26の磁界とが作用して、第1磁石26と導体48との間には相対変位方向とは反対向きの抵抗力が生じ、この抵抗力が減衰力として作用する。
【0079】
本実施の形態の磁気ダンパ10Eの地震動が生じた際の動作については、第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態では、免震建物が振動した場合に第1磁石26を通電する。
【0080】
このように、本実施の形態によれば、第1磁石26を電磁石とし、免震建物が振動した場合に制御部200により第1磁石26を通電し、免震建物の振動が停止した場合に制御部200により第1磁石26への通電を停止する。これにより、第1磁石26に磁力を発生させるタイミングを調整できるため、利便性を向上させる上で有利となる。
また、制御部200により免震建物が振動した場合に第1磁石26に通電するように構成すると、地震が発生していない場合には通電を行わないため、コストの削減を図る上で有利となる。
【0081】
また、第1の実施の形態と同様の部材および構成については、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0082】
なお、第5の実施の形態の磁気ダンパ10Eにおいても、第3の実施の形態の磁気ダンパ10Cと同様に、ロッド14に雄ねじ部を有し、その雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を有する雌ねじ部材をさらに配置し、ロッド14がX1方向またはX2方向に移動するとき、雄ねじ部と雌ねじ部を介して回転しながら移動する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0083】
2 下部構造体
2A 保持部材
4 上部構造体
4A 保持部材
6 積層ゴム
10A、10B、10C、10D、10E 磁気ダンパ
12 シリンダ
12A 一方の端部
12B 他方の端部
1202 筒状壁
1204 第1端面壁
1206 第2端面壁
14、30 ロッド
14A、30A 一方の端部
14B、30B 他方の端部
16、16A 第1磁石
18 第2磁石
22 一方の取り付け部材
2202 取り付け孔
24 他方の取り付け部材
2402 円筒部
2404 取り付け部
2406 取り付け孔
3002 雄ねじ部
32 雌ねじ部材
3002 雌ねじ部
3004 軸受け
48 導体
100 制御部