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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】電線供給装置及び電線加工装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 57/12 20060101AFI20240527BHJP
   H01R 43/052 20060101ALI20240527BHJP
   H01B 13/012 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B65H57/12
H01R43/052
H01B13/012 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021212939
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096897
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 祐太
(72)【発明者】
【氏名】水野 晶博
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-181090(JP,A)
【文献】特開2013-056762(JP,A)
【文献】特開2015-225692(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182609(WO,A1)
【文献】特開平11-334991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 57/12
H01R 43/052
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒形状に形成され、その長さ方向に沿うように1本の電線を着脱可能に保持するとともに、一端側を電線突出端部とし、当該電線突出端部から前記電線の先端を突出させる電線保持アームと、
前記電線保持アームの前記長さ方向と交差する幅方向について、複数種類の前記電線を一対一に保持する複数の前記電線保持アームを横並びに配列し、各前記電線保持アームについては、前記電線突出端部が反対側の端部よりも高い起立状態で当該電線保持アームの前記長さ方向が他の電線保持アームの前記長さ方向と揃う待機姿勢と、当該電線保持アームの前記電線突出端部が前記他の電線保持アームの前記電線突出端部よりも低くなるように倒れた電線供給姿勢と、の間で移動可能となるように個別に保持する保持フレームと、
複数種類の前記電線の中から供給対象の使用電線が指定されると、複数の前記電線保持アームのうち前記使用電線を保持する供給用アームが所定の供給位置に位置付けられるように前記保持フレームを移動させるとともに、前記供給位置において前記供給用アームを前記電線供給姿勢へと移動させる移動機構と、
を備え
前記保持フレームは、各前記電線保持アームを、前記反対側の端部と交差する回転軸を中心に前記電線保持アームが前記待機姿勢と前記電線供給姿勢との間で回転可能となるように個別に保持し、
前記移動機構が、前記供給位置を通るとともに前記保持フレームにおける前記電線保持アームの配列方向及び前記回転軸に沿って延在するレールであって、前記待機姿勢で横並びに配列された複数の前記電線保持アームを保持する前記保持フレームを、スライド移動可能に保持する保持レールを備えるとともに、前記回転軸が前記保持レール上を移動するように前記保持フレームを前記保持レール上でスライドさせることを特徴とする電線供給装置。
【請求項2】
前記移動機構は、
並びに配列された複数の前記電線保持アームのうちの前記供給用アームが前記供給位置に位置付けられるように、前記保持フレームを前記保持レール上でスライドさせるスライド駆動部と、
前記供給位置に位置付けられた前記供給用アームを前記待機姿勢から前記電線供給姿勢へと倒すアーム駆動部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電線供給装置。
【請求項3】
前記電線保持アームは、前記電線突出端部において、前記電線の先端を突出させるとともに、前記電線の先端寄り部分を開放可能に把持することを特徴とする請求項1又は2に記載の電線供給装置。
【請求項4】
前記電線保持アームは、前記電線突出端部に、前記先端寄り部分を把持する把持状態と、前記先端寄り部分の把持を解除して当該先端寄り部分を開放する開放状態と、を切換える切換えボタンが設けられていることを特徴とする請求項に記載の電線供給装置。
【請求項5】
請求項1~のうち何れか一項に記載の電線供給装置と、
前記電線供給装置において前記電線供給姿勢へと移動した前記供給用アームの前記電線突出端部から前記使用電線を引き出すことで当該使用電線の供給を受け、当該使用電線からの線分電線の切断、又は、当該線分電線の少なくとも一端に対する端子の圧着による端子付き電線の製造を行う装置本体と、
を備えたことを特徴とする電線加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線分電線の切断や端子付き電線の製造を行うための電線供給装置及び電線加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、線分電線の切断や端子付き電線の製造を行うための電線供給装置の一例として、電線を保持するガイドノズルをノズルホルダで複数並列に保持した電線供給装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電線供給装置では、供給対象の使用電線が指定されると、当該電線のガイドノズルが、電線供給位置に位置付けられるようにノズルホルダが移動する。そして、この電線供給位置においてガイドノズルの電線が適宜に繰出されて供給されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6336823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の電線供給装置では、複数のガイドノズルで保持している複数種類の電線以外の電線を供給させようとする場合、ノズルホルダを電線供給装置から取外して電線を付け替えてから搭載し直す等といった作業を要する場合がある。このような作業は、作業者にとって煩雑であることから、上述の電線供給装置は、電線交換の作業効率の点において改善の余地が見られる。
【0005】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、電線交換を効率良く行うことができる電線供給装置及び電線加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、電線供給装置は、棒形状に形成され、その長さ方向に沿うように1本の電線を着脱可能に保持するとともに、一端側を電線突出端部とし、当該電線突出端部から前記電線の先端を突出させる電線保持アームと、前記電線保持アームの前記長さ方向と交差する幅方向について、複数種類の前記電線を一対一に保持する複数の前記電線保持アームを横並びに配列し、各前記電線保持アームについては、前記電線突出端部が反対側の端部よりも高い起立状態で当該電線保持アームの前記長さ方向が他の電線保持アームの前記長さ方向と揃う待機姿勢と、当該電線保持アームの前記電線突出端部が前記他の電線保持アームの前記電線突出端部よりも低くなるように倒れた電線供給姿勢と、の間で移動可能となるように個別に保持する保持フレームと、複数種類の前記電線の中から供給対象の使用電線が指定されると、複数の前記電線保持アームのうち前記使用電線を保持する供給用アームが所定の供給位置に位置付けられるように前記保持フレームを移動させるとともに、前記供給位置において前記供給用アームを前記電線供給姿勢へと移動させる移動機構と、を備え、前記保持フレームは、各前記電線保持アームを、前記反対側の端部と交差する回転軸を中心に前記電線保持アームが前記待機姿勢と前記電線供給姿勢との間で回転可能となるように個別に保持し、前記移動機構が、前記供給位置を通るとともに前記保持フレームにおける前記電線保持アームの配列方向及び前記回転軸に沿って延在するレールであって、前記待機姿勢で横並びに配列された複数の前記電線保持アームを保持する前記保持フレームを、スライド移動可能に保持する保持レールを備えるとともに、前記回転軸が前記保持レール上を移動するように前記保持フレームを前記保持レール上でスライドさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の電線供給装置及び、当該電線供給装置を備える電線加工装置によれば、電線交換を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電線加工装置の一実施形態を示す外観図である。
図2図1に示されている電線加工装置において線分電線の切断や端子圧着を行う要部を示す模式図である。
図3図1及び図2に示されている電線加工装置において製造される端子付き電線の一例を示す模式図である。
図4図1及び図2に示されている電線供給部を示す外観斜視図である。
図5図4に示されている電線供給部において、供給用アームが電線供給姿勢に移行した様子を示す図である。
図6図4及び図5に示されている電線保持アームを1本だけ取り出して示す斜視図である。
図7図6に示されている電線保持アームにおける電線突出端部の、図中のV11-V11線に沿った断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、電線供給装置及び電線加工装置の一実施形態について説明する。
【0010】
図1は、電線加工装置の一実施形態を示す外観図であり、図2は、図1に示されている電線加工装置において線分電線の切断や端子圧着を行う要部を示す模式図である。また、図3は、図1及び図2に示されている電線加工装置において製造される端子付き電線の一例を示す模式図である。
【0011】
図1及び図2に示されている電線加工装置1は、例えば図3に一例が示されている端子付き電線W11を製造するための装置である。図3には、線分電線W111の両端に端子が圧着された端子付き電線W11が例示されている。
【0012】
ここで、図3に示されている端子付き電線W11を電線加工装置1で製造する際には、後述するように供給される電線W1が、図2に矢印で示されている繰出し方向D11に繰出されて線分電線W111が切り出される。この時、繰出し方向D11の前側をA側、後側をB側と呼び、線分電線W111のA側に圧着される端子をA側端子T11、B側に圧着される端子をB側端子T12と呼ぶ。尚、端子付き電線については、図3の形態に限るものではなく、線分電線の少なくとも一端に端子が圧着されたものであれば、一端のみに端子が圧着されたものであってもよい。更に、電線加工装置1では、端子圧着は行わずに端部の皮むきを含む線分電線W111の切断のみを行うことも可能となっている。以下では、図3の例に即し、両端に端子T11,T12が圧着された端子付き電線W11を製造するものとして、図1及び図2に示されている電線加工装置1について説明を行う。
【0013】
この電線加工装置1は、情報取得部11、電線保管棚12、電線供給装置13、B側端子供給部14、A側端子供給部15、本体機構16、A側ゴム栓供給部17a、及びB側ゴム栓供給部17b、を備えている。
【0014】
情報取得部11は、端子付き電線W11を製造するために、線分電線W111の電線種類及び端子の端子種類を含む製造情報を取得する。具体的には、情報取得部11は、作業者Yの入力操作を受け、上記の電線種類及び端子種類に対応付けられた品番データを製造情報として取得する。
【0015】
電線保管棚12は、棚本体121に、互いに電線種類が異なる複数の電線リール122が収容されたものである。これら複数の電線リール122に巻き取られている電線は、何れも被覆電線で、太さや色等が異なっている。そして、複数の電線リール122の中から選択された所定数の電線リール122から引き出された電線W1が、線分電線W111の切出し候補として電線供給装置13へと延ばされている。
【0016】
電線供給装置13は、電線保管棚12からの複数種類の電線W1の中から供給対象の使用電線が指定され、その使用電線を、線分電線W111の切断や端子圧着のための供給位置へと供給する装置となっている。この電線供給装置13については後で詳細に説明する。
【0017】
B側端子供給部14及びA側端子供給部15は、それぞれ、端子TR11aが帯状のキャリアTR11bを介して複数連なった端子連鎖体TR11が巻き取られた端子リールTR1を、端子種類が互いに異なる複数種類保持している。B側端子供給部14は、B側端子T12の候補としての複数種類の端子リールTR1を保持し、A側端子供給部15は、A側端子T11の候補としての複数種類の端子リールTR1を保持している。そして、B側端子供給部14及びA側端子供給部15は、B側、A側それぞれについて複数種類の端子リールTR1の中から使用端子リールを指定され、当該使用端子リールを供給する。
【0018】
本体機構16は、電線供給装置13から供給された使用電線から線分電線W111を切り出すとともに、当該線分電線W111のB側、A側それぞれの端部に、供給された使用端子リールの端子を圧着して端子付き電線W11を製造する。この本体機構16は、まず、使用電線に対し、繰出し方向D11への繰出しと切断を行って線分電線W111を切り出す切出し部16aを備えている。この切出し部16aは、繰出しを行う繰出し機構16a-1と、切断を行う切断機構16a-2と、を備えている。また、切断機構16a-2は、切断された電線の端部に対する被覆の皮むきも可能な機構となっている。
【0019】
そして、本体機構16は、A側の端子圧着のための機構部分として、A側圧着機161、A側ゴム栓挿入機162、及びA側電線移動アーム163、を備えている。尚、ここにいうA側の端子圧着とは、使用電線における繰出し方向D11の前端に対する端子圧着のことである。A側圧着機161は、使用電線における繰出し方向D11の前端に、A側端子供給部15で供給される使用端子リールの端子をA側端子T11として圧着する。A側ゴム栓挿入機162は、A側ゴム栓供給部17aから後述するようにA側ゴム栓が供給される場合に、A側圧着機161での端子圧着に先立ってそのA側ゴム栓を、使用電線における繰出し方向D11の前端に挿入する。この場合には、A側圧着機161での端子圧着は、挿入されたゴム栓の上から行われる。A側電線移動アーム163は、切出し部16aで繰出された使用電線を把持し、その繰出し方向D11の前端を矢印D12方向に移動させて、A側圧着機161及びA側ゴム栓挿入機162に対して位置付けるA側のアーム機構である。
【0020】
また、本体機構16は、B側の端子圧着のための機構部分として、B側圧着機164、B側ゴム栓挿入機165、及びB側電線移動アーム166、を備えている。尚、ここにいうB側の端子圧着とは、A側圧着機161での端子圧着を受けた後に切り出された端子付き線分電線における、繰出し方向D11の後端に対する端子圧着のことである。B側圧着機164は、端子付き線分電線における繰出し方向D11の後端に、B側端子供給部14で供給される使用端子リールの端子をB側端子T12として圧着する。B側ゴム栓挿入機165は、B側ゴム栓供給部17bから後述するようにB側ゴム栓が供給される場合に、B側圧着機164での端子圧着に先立ってそのB側ゴム栓を、端子付き線分電線における繰出し方向D11の後端に挿入する。この場合には、B側圧着機164での端子圧着は、挿入されたゴム栓の上から行われる。B側電線移動アーム166は、切出し部16aで切り出された端子付き線分電線を把持し、その繰出し方向D11の後端を矢印D13方向に移動させて、B側圧着機164及びB側ゴム栓挿入機165に対して位置付けるB側のアーム機構である。
【0021】
A側ゴム栓供給部17a及びB側ゴム栓供給部17bは、複数種類のゴム栓を各々が保持するとともに、A側ゴム栓挿入機162及びB側ゴム栓挿入機165に対するゴム栓の供給を行う装置である。本実施形態では、端子付き電線W11として、図示は割愛するが、ゴム栓の上から端子圧着が行われるゴム栓挿入タイプ、及び線分電線の端部に端子圧着が直に行われるゴム栓非挿入タイプ、のうちの何れの加工タイプでも製造可能となっている。更には、加工タイプとして、端子圧着及びゴム栓挿入の何れも行わずに線分電線W111の切出しと端部の皮むきのみを行う電線切断も可能となっている。そして、上記の製造情報、即ち品番データには、電線種類及び端子種類に加えて、ゴム栓挿入タイプ、ゴム栓非挿入タイプ、電線切断のうちの何れかの加工タイプ、及びゴム栓挿入タイプの場合のゴム栓種類も対応付けられている。A側ゴム栓供給部17a及びB側ゴム栓供給部17bは、この品番データに基づき、ゴム栓挿入タイプの場合には、指定されたゴム栓種類のゴム栓をA側ゴム栓挿入機162及びB側ゴム栓挿入機165に供給する。
【0022】
以上に概略を説明した電線加工装置1では、電線の加工に先立って、作業者Yによる情報取得部11への品番データの入力が行われる。その後、スタートボタンが押されると、品番データに基づく電線供給が、電線供給装置13によって行われるとともに、A側、B側それぞれの使用端子リールの供給、ゴム栓挿入タイプの場合のA側、B側それぞれのゴム栓の供給が行われる。そして、本体機構16において、供給された使用電線、使用端子リールの端子、及びゴム栓を用いて、電線切断や端子付き電線W11の製造が行われる。切断された線分電線W111や製造された端子付き電線W11は、所定の収容場所へと排出される。また、品番データには、線分電線W111や端子付き電線W11の製造本数も対応付けられており、上述した電線切断や端子付き電線W11の製造が、その指定された製造本数に達するまで繰り返し実行される。この電線加工装置1は、電線供給装置13と、装置本体1aと、を備えて構成されているが、この装置本体1aは、情報取得部11、B側端子供給部14、A側端子供給部15、及び本体機構16を有する機能部位となっている。装置本体1aは、電線供給装置13で供給される使用電線を引き出すことで当該使用電線の供給を受け、当該使用電線から線分電線W111を切り出すとともに、当該線分電線W111の両端に端子を圧着して端子付き電線W11を製造する部位である。
【0023】
次に、上述の電線供給装置13について、別図を参照して詳細に説明する。
【0024】
図4は、図1及び図2に示されている電線供給部を示す外観斜視図である。この図4には、電線供給装置13が、図1における電線保管棚12の方から見た斜視図で示されている。
【0025】
電線供給装置13は、複数の電線保持アーム131、保持フレーム132、及び移動機構133、を備えている。
【0026】
電線保持アーム131は、棒形状に形成され、その長さ方向D14に沿うように1本の電線W1を着脱可能に保持するとともに、一端側を電線突出端部131aとし、当該電線突出端部131aから電線W1の先端W1aを突出させる。電線供給装置13には、複数種類の電線W1を一対一に保持する複数の電線保持アーム131が設けられている。この電線保持アーム131については、後で更に詳細に説明する。
【0027】
保持フレーム132は、電線保持アーム131の長さ方向D14と交差する幅方向D15について、複数の電線保持アーム131を横並びに配列して保持する部材である。また、この保持においては、各電線保持アーム131は、待機姿勢S11と、後述の電線供給姿勢との2つの姿勢の間で移動可能となるように個別に保持される。図4には、全ての保持フレーム132が待機姿勢S11となった状態の電線供給装置13が示されている。待機姿勢S11は、電線突出端部131aが反対側の端部131bよりも高い起立状態で電線保持アーム131の長さ方向D14が他の電線保持アーム131の長さ方向D14と揃う姿勢である。これに対し、電線供給姿勢は次のような姿勢となっている。
【0028】
図5は、図4に示されている電線供給部において、供給用アームが電線供給姿勢に移行した様子を示す図である。この図5には、横並びに配列された複数の電線保持アーム131のうち、図1における電線保管棚12の方から見て左端の供給用アーム131-1が電線供給姿勢S12に移行した様子が示されている。電線供給姿勢S12は、電線突出端部131aが他の電線保持アーム131の電線突出端部131aよりも低くなるように矢印D16方向に倒れた姿勢となっている。
【0029】
保持フレーム132は、複数の電線保持アーム131それぞれについて、待機姿勢S11と電線供給姿勢S12との間で移動可能となるように個別に保持する。具体的には、保持フレーム132は、各電線保持アーム131を、上記の反対側の端部131bと交差する回転軸132aを中心に電線保持アーム131が待機姿勢S11と電線供給姿勢S12との間で回転可能となるように個別に保持するように構成されている。
【0030】
移動機構133は、供給対象の使用電線W1-1が指定されると、複数の電線保持アーム131のうち使用電線W1-1を保持する供給用アーム131-1が所定の供給位置P11に位置付けられるように保持フレーム132を移動させる。この供給位置P11は、供給用アーム131-1が電線供給姿勢S12へと移動したときに、電線突出端部131aから突出した使用電線W1-1の先端W1aが、図2に示されている繰出し機構16a-1に入り込む位置である。移動機構133は、保持フレーム132を移動させて供給用アーム131-1を供給位置P11に位置付けた後、当該供給位置P11において供給用アーム131-1を電線供給姿勢S12へと移動させる。この移動機構133は、保持レール133a、スライド駆動部133b、及びアーム駆動部133c、を備えている。
【0031】
保持レール133aは、供給位置P11を通るとともに保持フレーム132における電線保持アーム131の配列方向(即ち、電線保持アーム131の幅方向D15)に沿って延在するレールである。そして、保持レール133aは、待機姿勢S11で横並びに配列された複数の電線保持アーム131を保持する保持フレーム132を、スライド移動可能に保持する。
【0032】
スライド駆動部133bは、横並びに配列された複数の電線保持アーム131のうちの供給用アーム131-1が供給位置P11に位置付けられるように、保持フレーム132を保持レール133a上でスライドさせる。スライド駆動部133bにおける駆動源としてはサーボモータ等が一例として挙げられる。
【0033】
アーム駆動部133cは、供給位置P11に位置付けられた供給用アーム131-1を待機姿勢S11から電線供給姿勢S12へと、回転軸132aを中心に回転させて倒す。アーム駆動部133cにおける駆動源としてはシリンダの他一般的なモータ等も一例として挙げられる。
【0034】
次に、電線保持アーム131について、更に詳細に説明する。
【0035】
図6は、図4及び図5に示されている電線保持アームを1本だけ取り出して示す斜視図である。
【0036】
この図6に示されているように、電線保持アーム131は、両端部を除いた部分が扁平なU字形に凹んだ棒形状に形成されている。電線W1は、この凹んだ部分では露出された状態で、電線突出端部131aと反対側の端部131bとの間に渡されて保持されている。反対側の端部131bには、上記のアーム駆動部133cからの回転駆動力を受けるギア歯131cが設けられ、このギア歯131cで回転駆動力を受けて回転軸132aを中心に電線保持アーム131が回転する。また、反対側の端部131bの内部は、電線W1が通る筒状に形成され、図2に示されている電線保管棚12の側の端部には、この電線保管棚12から延びてくる電線W1の導入口131b-1が設けられている。
【0037】
他方、電線突出端部131aでは、U字形凹部の内側を向いた部分に、反対側の端部131bを抜けてU字形凹部を通った電線W1を受け入れる導入口131a-2が設けられている。この導入口131a-2から電線突出端部131aの内部に入った電線W1の先端W1aは、反対側の導出口131a-1から外部へと突出している。
【0038】
ここで、本実施形態では、電線保持アーム131は、この電線突出端部131aにおいて、電線W1の先端W1aを突出させるとともに、電線W1の先端寄り部分を開放可能に把持する。また、この電線突出端部131aには、電線W1の先端寄り部分を把持する把持状態と、先端寄り部分の把持を解除して当該先端寄り部分を開放する開放状態と、を切換える切換えボタン131a-3が設けられている。この切替えボタン131a-3を含む、電線W1の先端寄り部分の把持機構は次のように構成されている。
【0039】
図7は、図6に示されている電線保持アームにおける電線突出端部の、図中のV11-V11線に沿った断面を示す断面図である。
【0040】
この図7に示されているように、電線突出端部131aには、導入口131a-2から導出口131a-1へと至る電線W1の通り道131a-5,131a-6と交差する竪穴空間131a-4が設けられている。この竪穴空間131a-4に、下端部を外部に露出させるように棒状物が収められており、その露出した下端部が切換えボタン131a-3となっている。この棒状物の中途部分には、電線W1の通り道131a-5,131a-6と連通可能な横穴空間131a-7が設けられている。このとき、この棒状物は、不図示のバネ等の付勢部材により切換えボタン131a-3を押し出す付勢方向D17に付勢されている。この付勢により、通常は、電線W1の通り道131a-5,131a-6と横穴空間131a-7とが付勢方向D17にずれている。電線W1の先端寄り部分の把持は、このようにずれた状態の通り道131a-5,131a-6の縁と横穴空間131a-7の縁とで電線W1挟み付け、そこに付勢力が掛かることで行われる。把持の解除や、電線W1の先端寄り部分を取り付ける際には、切換えボタン131a-3が竪穴空間131a-4に押し込まれることで、通り道131a-5,131a-6と横穴空間131a-7のズレが解消されて連通される。そして、その連通した通り道131a-5,131a-6と横穴空間131a-7に電線W1の先端寄り部分が通された後、切換えボタン131a-3が離されると、付勢力によって押し下げられて再びズレが生じて電線W1の先端寄り部分が把持されることとなる。尚、付勢力による把持は、図2に示されている繰出し機構16a-1による使用電線W1-1の繰り出しを妨げない程度に弱いものとなっている。
【0041】
以上に説明した実施形態の電線供給装置13及び電線加工装置1では、複数種類の電線W1を着脱可能に保持する複数の電線保持アーム131は、電線供給が行われていない非供給時には、各々が起立状態で横並びとなる。このような非供給時に電線W1の交換作業等を行う作業者Yは、略同じ高さに位置する複数の電線保持アーム131の中から所望の一の電線保持アーム131にアクセスし、個別に着脱可能に保持されている電線W1の交換を容易に行うことができる。また、電線W1の供給時においても、電線供給姿勢S12に移行している供給用アーム131-1以外は、非供給時と同様に起立状態で横並びとなっている。従って、作業者Yは、非供給時のみならず、供給時においても、起立状態の電線保持アーム131の中から所望の一の電線保持アーム131にアクセスし、電線W1の交換を容易に行うことができる。このように、本実施形態によれば、電線W1の非供給時と供給時とを問わず、所望の一の電線保持アーム131にアクセスして電線W1の交換を容易に行えることから、電線交換を効率良く行うことができる。
【0042】
ここで、本実施形態では、各電線保持アーム131は、電線突出端部131aとは反対側の端部131bと交差する回転軸132aを中心に待機姿勢S11と電線供給姿勢S12との間で回転可能となるように個別に保持されている。この構成によれば、電線保持アーム131の待機姿勢S11と電線供給姿勢S12との間における電線突出端部131aの移動の振れ幅が大きくなる。電線突出端部131aがこのような大きな振れ幅で移動することで、作業者Yとって待機姿勢S11と電線供給姿勢S12との目視による区別が付き易くなり、電線交換についての作業性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、移動機構133は、保持フレーム132をスライド移動可能に保持する保持レール133aと、保持フレーム132をスライドさせるスライド駆動部133bと、供給用アーム131-1を倒すアーム駆動部133cと、を備えている。この構成によれば、移動機構133による保持フレーム132のスライドと供給用アーム131-1の倒しにより、電線供給装置13を、電線供給が可能な状態へとスムーズに移行させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、電線保持アーム131は、電線突出端部131aにおいて、電線W1の先端寄り部分を開放可能に把持する。この構成によれば、電線突出端部131aにおける電線W1の把持を開放することで、容易に電線W1の交換を行えることから、電線交換についての作業性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、電線突出端部131aには、電線W1の先端寄り部分を把持する把持状態と、当該先端寄り部分を開放する開放状態と、を切換える切換えボタン131a-3が設けられている。この構成によれば、電線突出端部131aにおける電線W1の把持開放を、切換えボタン131a-3に対する操作によって行えることから、電線交換についての作業性を一層向上させることができる。
【0046】
尚、以上に説明した実施形態は電線供給装置及び電線加工装置の代表的な形態を示したに過ぎず、電線供給装置及び電線加工装置は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、電線供給装置及び電線加工装置は、その骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0047】
例えば、上述の実施形態では、電線供給装置及び電線加工装置の一例として、品番データを介して使用電線W1-1が指定される電線供給装置13及び電線加工装置1が例示されている。しかしながら、電線供給装置及び電線加工装置は、これに限るものではなく、例えば使用電線を直に指定することとしてもよく、具体的な指定態様を問うものではない。
【0048】
また、上述の実施形態では、保持フレームの一例として、電線保持アーム131を、上記の反対側の端部131bを通る回転軸132aを中心に待機姿勢S11と電線供給姿勢S12との間で回転可能となるように保持する保持フレーム132が例示されている。しかしながら、保持フレームは、これに限るものではなく、電線保持アームを起立状態の待機姿勢と倒れた電線供給姿勢との間で移動可能に保持するものであれば、2つの姿勢間の具体的な移動態様を問うものではない。ただし、上記の回転軸132aを中心とした回転を採用することで、電線交換についての作業性を向上させることができる点は上述した通りである。
【0049】
また、上述の実施形態では、移動機構の一例として、保持レール133aとスライド駆動部133bとアーム駆動部133cとを備えた移動機構133が例示されている。しかしながら、移動機構は、これに限るものではなく、保持フレームの移動及び供給用アームの移動を行うものであれば、その具体的な移動態様を問うものではない。ただし、保持レール133aを用いたスライド駆動とアーム駆動とを組み合わせた移動機構133によれば、電線供給装置13を、電線供給が可能な状態へとスムーズに移行させることができる点は上述した通りである。
【0050】
また、上述の実施形態では、電線保持アームの一例として、電線突出端部131aにおいて電線W1の先端寄り部分を開放可能に把持する電線保持アーム131が例示されている。しかしながら、電線保持アームは、これに限るものではなく、電線を着脱可能に保持するものであれば、例えばクリップによる保持等であってもよく、具体的な保持態様を問うものではない。ただし、開放可能な把持を採用することで、電線交換についての作業性を向上させることができる点は上述した通りである。
【0051】
また、上述の実施形態では、電線保持アームの一例として、電線W1の把持状態と開放状態とを切換える切換えボタン131a-3が設けられた電線保持アーム131が例示されている。しかしながら、電線保持アームは、これに限るものではなく、このようなボタンが設けられていないもの等であってもよい。ただし、切換えボタン131a-3を設けることで、電線交換についての作業性を一層向上させることができる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0052】
1 電線加工装置
1a 装置本体
11 情報取得部
12 電線保管棚
13 電線供給装置
14 B側端子供給部
15 A側端子供給部
16 本体機構
16a 切出し部
16a-1 繰出し機構
16a-2 切断機構
17a A側ゴム栓供給部
17b B側ゴム栓供給部
121 棚本体
122 電線リール
131 電線保持アーム
131-1 供給用アーム
131a 電線突出端部
131a-1 導出口
131a-2,131b-1 導入口
131a-3 切換えボタン
131a-4 竪穴空間
131a-5,131a-6 通り道
131a-7 横穴空間
131b 反対側の端部
132 保持フレーム
132a 回転軸
133 移動機構
133a 保持レール
133b スライド駆動部
133c アーム駆動部
161 A側圧着機
162 A側ゴム栓挿入機
163 A側電線移動アーム
164 B側圧着機
165 B側ゴム栓挿入機
166 B側電線移動アーム
D11 繰出し方向
D12,D13,D16 矢印
D14 長さ方向
D15 幅方向
D17 付勢方向
P11 供給位置
S11 待機姿勢
S12 電線供給姿勢
T11 A側端子
T12 B側端子
TR1 端子リール
TR11 端子連鎖体
TR11a 端子
TR11b キャリア
W1 電線
W1a 先端
W1-1 使用電線
W11 端子付き電線
W111 線分電線
Y 作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7