(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】電線収容庫及び電線加工装置
(51)【国際特許分類】
B65H 49/32 20060101AFI20240527BHJP
H01R 43/052 20060101ALI20240527BHJP
H01B 13/012 20060101ALI20240527BHJP
B65H 57/14 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B65H49/32
H01R43/052
H01B13/012 Z
B65H57/14
(21)【出願番号】P 2021212942
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 祐太
(72)【発明者】
【氏名】水野 晶博
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073784(JP,A)
【文献】特開平09-093747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 49/32
H01R 43/052
H01B 13/012
B65H 57/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容庫本体と、
電線が巻き回されたリールであって、前記収容庫本体の内部に収容されるとともに、前記電線が前記収容庫本体の外部へと引き出され、当該外部に設置された繰出し機構によって断続的に繰出される電線リールと、
前記収容庫本体における前記電線の引出しルート上に取り付けられ、前記繰出し機構による繰出し力よりも弱い把持力で前記電線を把持する電線把持部材と、
を備え
、
前記電線把持部材は、把持した前記電線を送り出す送出口が設けられるとともに、当該送出口が前記繰出し機構に向かって開口するように取付け姿勢を調節可能に前記収容庫本体へと取り付けられていることを特徴とする電線収容庫。
【請求項2】
前記電線把持部材が、
前記電線を互いの周面間に挟む、各々が軸回りに回転可能な一対のローラと、
前記一対のローラのうちの第1ローラを第2ローラに向かって前記把持力に応じた付勢力で付勢する把持用付勢部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電線収容庫。
【請求項3】
前記収容庫本体における前記引出しルート上で前記電線把持部材よりも前記電線リールに近い位置に取り付けられ、前記電線を、前記繰出し機構による繰出し方向とは逆向きの牽引方向に牽引しつつ通過させる牽引機構を、更に備えたことを特徴とする請求項1
又は2に記載の電線収容庫。
【請求項4】
前記収容庫本体が、各々が鉛直方向に沿って立設された複数本の柱材の間に棚板が水平に渡された収容棚を備え、
前記電線リールは、リール軸が前記鉛直方向に沿うように前記棚板の上に載置され、
前記電線は、上方へと引き出された後に水平側へと向きを変えて横向きに延びて前記収容庫本体の外部へと引き出されており、
前記電線把持部材が、前記電線において前記横向きに延びている部分を把持することを特徴とする請求項1~
3のうち何れか一項に記載の電線収容庫。
【請求項5】
前記収容庫本体には、前記収容棚よりも上方となる位置で前記繰出し機構に向かって張り出した張出部が設けられており、
前記電線は、前記張出部の上を前記横向きに延びて前記収容庫本体の外部へと引き出されており、
前記電線把持部材が、前記張出部における前記繰出し機構の側の縁部と前記電線とが交差する部分に取付けられていることを特徴とする請求項
4に記載の電線収容庫。
【請求項6】
前記電線リールが、前記収容庫本体に複数収容されており、
前記電線把持部材が、複数の前記電線リールに一対一に対応して各前記電線リールの前記電線を把持するように前記収容庫本体に複数取り付けられていることを特徴とする請求項1~
5のうち何れか一項に記載の電線収容庫。
【請求項7】
請求項1~
6のうち何れか一項に記載の電線収容庫と、
前記繰出し機構を有し、当該繰出し機構で前記電線を繰出すとともに、当該電線からの線分電線の切断、又は、当該線分電線の少なくとも一端に対する端子の圧着による端子付き電線の製造を行う本体機構と、
を備えたことを特徴とする電線加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容庫本体に電線リールが収容されて電線が外部に引き出されて使用される電線収容庫、及び、そのような電線収容庫を備えた電線加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、線分電線の切断や端子付き電線の製造を行う電線加工装置に備えられて、加工に用いられる電線を収容する電線収容庫が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電線収容庫は、水平に渡された棚板の上に電線リールが載置された状態で収容されている。そして、電線は、電線リールから収容庫本体の外部へと引き出され、電線加工装置において当該電線からの線分電線の切出しや端子の圧着等を行う本体機構へと渡される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のような電線加工装置の本体機構では、電線収容庫から引き出された電線を繰出し機構によって断続的に繰出して切断を行うことで線分電線の切出しが行われる。近年、電線加工装置の分野では、製造時間短縮のために装置動作の高速化が著しく、断続的な繰出しの際には、電線に対する高速での繰出しと急停止が繰り返されることとなっている。このとき、電線収容庫の側では、繰出し機構による繰出しのスピードが速い場合、繰出しが急停止してもその動きに追随できず、停止後も惰性によって電線収容庫から電線が引き出される場合がある。そして、このような惰性による引出しが何度も繰り返されると、電線収容庫から本体機構との間に渡される電線に弛みが生じることとなる。このような電線の弛みが大きくなると、電線の絡まり等の原因となる場合があり望ましいことではない。
【0005】
尚、ここで、電線が断続的に高速で繰出されるときの電線の緩みという問題について、線分電線の切断や端子付き電線の製造を行う電線加工装置の電線収容庫を例に挙げて説明した。しかしながら、このような問題は、電線リールが収容されて電線が外部に引き出され、繰出し機構によって断続的に繰り出される電線収容庫であれば、上記のような電線加工のためのものに限らず共通して生じ得る問題である。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、電線が断続的に高速で繰出されても外部における電線の弛みを抑えることができる電線収容庫、及び、そのような電線収容庫を備えた電線加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、電線収容庫は、収容庫本体と、電線が巻き回されたリールであって、前記収容庫本体の内部に収容されるとともに、前記電線が前記収容庫本体の外部へと引き出され、当該外部に設置された繰出し機構によって断続的に繰出される電線リールと、前記収容庫本体における前記電線の引出しルート上に取り付けられ、前記繰出し機構による繰出し力よりも弱い把持力で前記電線を把持する電線把持部材と、を備え、前記電線把持部材は、把持した前記電線を送り出す送出口が設けられるとともに、当該送出口が前記繰出し機構に向かって開口するように取付け姿勢を調節可能に前記収容庫本体へと取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記の電線収容庫及び電線加工装置によれば、電線が断続的に高速で繰出されても外部における電線の弛みを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電線加工装置の一実施形態を示す外観図である。
【
図2】
図1に示されている電線加工装置において端子圧着を行う要部を示す模式図である。
【
図3】
図1及び
図2に示されている電線加工装置において製造される端子付き電線の一例を示す模式図である。
【
図4】
図1に示されている電線収容庫の、図中左端の一部を図中のV11方向から見た平面図である。
【
図5】
図4に示されている電線収容庫の、図中のV12-V12線に沿った部分断面を示す断面図である。
【
図6】
図1、
図4、及び
図5に示されている電線把持部材を、電線の引出し側から見て示す斜視図である。
【
図7】
図6に示されている電線把持部材における、
図6中のV13-V13線に沿った断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、電線収容庫及び電線加工装置の一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、電線加工装置の一実施形態を示す外観図であり、
図2は、
図1に示されている電線加工装置において端子圧着を行う要部を示す模式図である。また、
図3は、
図1及び
図2に示されている電線加工装置において製造される端子付き電線の一例を示す模式図である。
【0012】
図1及び
図2に示されている電線加工装置1は、例えば
図3に一例が示されている端子付き電線W11を製造するための装置である。
図3には、線分電線W111の両端に端子が圧着された端子付き電線W11が例示されている。
【0013】
ここで、
図3に示されている端子付き電線W11を電線加工装置1で製造する際には、後述するように供給される電線W1が、
図2に矢印で示されている繰出し方向D11に繰出されて線分電線W111が切り出される。この時、繰出し方向D11の前側をA側、後側をB側と呼び、線分電線W111のA側に圧着される端子をA側端子T11、B側に圧着される端子をB側端子T12と呼ぶ。尚、端子付き電線については、
図3の形態に限るものではなく、線分電線の少なくとも一端に端子が圧着されたものであれば、一端のみに端子が圧着されたものであってもよい。更に、電線加工装置1では、端子圧着は行わずに端部の皮むきを含む線分電線W111の切断のみを行うことも可能となっている。以下では、
図3の例に即し、両端に端子T11,T12が圧着された端子付き電線W11を製造するものとして、
図1及び
図2に示されている電線加工装置1について説明を行う。
【0014】
この電線加工装置1は、情報取得部11、電線収容庫12、電線供給装置13、B側端子供給部14、A側端子供給部15、本体機構16、A側ゴム栓供給部17a、及びB側ゴム栓供給部17b、を備えている。
【0015】
情報取得部11は、端子付き電線W11を製造するために、線分電線W111の電線種類及び端子の端子種類を含む製造情報を取得する。具体的には、情報取得部11は、作業者Yの入力操作を受け、上記の電線種類及び端子種類に対応付けられた品番データを製造情報として取得する。
【0016】
電線収容庫12は、収容庫本体121に、互いに電線種類が異なる複数の電線リール122が収容されたものである。これら複数の電線リール122に巻き取られている電線は、何れも被覆電線で、太さや色等が異なっている。そして、複数の電線リール122の中から選択された所定数の電線リール122から引き出された電線W1が、線分電線W111の切出し候補として電線供給装置13へと延ばされている。尚、本実施形態では、一例として、複数の電線リール122の全てから電線W1が引き出される形態が例示されている。この電線収容庫12については後で詳細に説明する。
【0017】
電線供給装置13は、電線収容庫12からの複数種類の電線W1の中から供給対象の使用電線が指定され、その使用電線を、線分電線W111の切断や端子圧着のための供給位置へと供給する装置となっている。
【0018】
B側端子供給部14及びA側端子供給部15は、それぞれ、端子TR11aが帯状のキャリアTR11bを介して複数連なった端子連鎖体TR11が巻き取られた端子リールTR1を、端子種類が互いに異なる複数種類保持している。B側端子供給部14は、B側端子T12の候補としての複数種類の端子リールTR1を保持し、A側端子供給部15は、A側端子T11の候補としての複数種類の端子リールTR1を保持している。そして、B側端子供給部14及びA側端子供給部15は、B側、A側それぞれについて複数種類の端子リールTR1の中から使用端子リールを指定され、当該使用端子リールを供給する。
【0019】
本体機構16は、電線供給装置13から供給された使用電線から線分電線W111を切り出すとともに、当該線分電線W111のB側、A側それぞれの端部に、供給された使用端子リールの端子を圧着して端子付き電線W11を製造する。この本体機構16は、まず、使用電線に対し、繰出し方向D11への繰出しと切断を行って線分電線W111を切り出す切出し部16aを備えている。この切出し部16aは、線分電線W111の長さに応じた繰出し長で断続的に繰出しを行う繰出し機構16a-1と、切断を行う切断機構16a-2と、を備えている。また、切断機構16a-2は、切断された電線の端部に対する被覆の皮むきも可能な機構となっている。
【0020】
そして、本体機構16は、A側の端子圧着のための機構部分として、A側圧着機161、A側ゴム栓挿入機162、及びA側電線移動アーム163、を備えている。尚、ここにいうA側の端子圧着とは、使用電線における繰出し方向D11の前端に対する端子圧着のことである。A側圧着機161は、使用電線における繰出し方向D11の前端に、A側端子供給部15で供給される使用端子リールの端子をA側端子T11として圧着する。A側ゴム栓挿入機162は、A側ゴム栓供給部17aから後述するようにA側ゴム栓が供給される場合に、A側圧着機161での端子圧着に先立ってそのA側ゴム栓を、使用電線における繰出し方向D11の前端に挿入する。この場合には、A側圧着機161での端子圧着は、挿入されたゴム栓の上から行われる。A側電線移動アーム163は、切出し部16aで繰出された使用電線を把持し、その繰出し方向D11の前端を矢印D12方向に移動させて、A側圧着機161及びA側ゴム栓挿入機162に対して位置付けるA側のアーム機構である。
【0021】
また、本体機構16は、B側の端子圧着のための機構部分として、B側圧着機164、B側ゴム栓挿入機165、及びB側電線移動アーム166、を備えている。尚、ここにいうB側の端子圧着とは、A側圧着機161での端子圧着を受けた後に切り出された端子付き線分電線における、繰出し方向D11の後端に対する端子圧着のことである。B側圧着機164は、端子付き線分電線における繰出し方向D11の後端に、B側端子供給部14で供給される使用端子リールの端子をB側端子T12として圧着する。B側ゴム栓挿入機165は、B側ゴム栓供給部17bから後述するようにB側ゴム栓が供給される場合に、B側圧着機164での端子圧着に先立ってそのB側ゴム栓を、端子付き線分電線における繰出し方向D11の後端に挿入する。この場合には、B側圧着機164での端子圧着は、挿入されたゴム栓の上から行われる。B側電線移動アーム166は、切出し部16aで切り出された端子付き線分電線を把持し、その繰出し方向D11の後端を矢印D13方向に移動させて、B側圧着機164及びB側ゴム栓挿入機165に対して位置付けるB側のアーム機構である。
【0022】
A側ゴム栓供給部17a及びB側ゴム栓供給部17bは、複数種類のゴム栓を各々が保持するとともに、A側ゴム栓挿入機162及びB側ゴム栓挿入機165に対するゴム栓の供給を行う装置である。本実施形態では、端子付き電線W11として、図示は割愛するが、ゴム栓の上から端子圧着が行われるゴム栓挿入タイプ、及び線分電線の端部に端子圧着が直に行われるゴム栓非挿入タイプ、のうちの何れの加工タイプでも製造可能となっている。更には、加工タイプとして、端子圧着及びゴム栓挿入の何れも行わずに線分電線W111の切出しと端部の皮むきのみを行う電線切断も可能となっている。そして、上記の製造情報、即ち品番データには、電線種類及び端子種類に加えて、ゴム栓挿入タイプ、ゴム栓非挿入タイプ、電線切断のうちの何れかの加工タイプ、及びゴム栓挿入タイプの場合のゴム栓種類も対応付けられている。A側ゴム栓供給部17a及びB側ゴム栓供給部17bは、この品番データに基づき、ゴム栓挿入タイプの場合には、指定されたゴム栓種類のゴム栓をA側ゴム栓挿入機162及びB側ゴム栓挿入機165に供給する。
【0023】
以上に概略を説明した電線加工装置1では、電線の加工に先立って、作業者Yによる情報取得部11への品番データの入力が行われる。その後、スタートボタンが押されると、品番データに基づく電線供給が、電線供給装置13によって行われるとともに、A側、B側それぞれの使用端子リールの供給、ゴム栓挿入タイプの場合のA側、B側それぞれのゴム栓の供給が行われる。そして、本体機構16において、供給された使用電線、使用端子リールの端子、及びゴム栓を用いて、電線切断や端子付き電線W11の製造が行われる。製造された端子付き電線W11は、所定の収容場所へと排出される。また、品番データには、端子付き電線W11の製造本数も対応付けられており、上述した端子付き電線W11の製造が、その指定された製造本数に達するまで繰り返し実行される。
【0024】
次に、上述の電線収容庫12について、
図1及び別図を参照して詳細に説明する。
【0025】
図4は、
図1に示されている電線収容庫の、図中左端の一部を図中のV11方向から見た平面図であり、
図5は、
図4に示されている電線収容庫の、図中のV12-V12線に沿った部分断面を示す断面図である。
【0026】
電線収容庫12は、収容庫本体121、複数の電線リール122、複数の電線把持部材123、及び複数の牽引機構124、を備えている。
【0027】
収容庫本体121は、収容棚121aと、案内支持部121bと、を備えている。収容棚121aは、各々が鉛直方向D14に沿って立設された複数本の柱材121a-1の間に2枚の棚板121a-2と1枚の天板121a-3が水平に渡された構造物である。案内支持部121bは、複数本の柱材121b-1、複数本の縦桟121b-2、及び複数本の横桟121b-3が組み合わされて上記の天板121a-3の上に構築されたフレーム構造物である。この案内支持部121bは、電線把持部材123や牽引機構124を支持しており、これらの部材を介して電線リール122の電線W1を案内している。案内支持部121bの一部は、収容棚121aよりも上方となる位置で、上記の繰出し機構16a-1を有する本体機構16に向かって張り出した張出部121b-4となっている。
【0028】
複数の電線リール122は、各々電線W1が巻き回されたリールであって、収容庫本体121の内部に収容される。複数の電線リール122の相互間では、上述したように電線種類が互いに異なっている。各電線リール122は、リール軸が鉛直方向D14に沿うように2枚の棚板121a-2の上に載置される。また、各電線リール122の電線W1は、電線リール122から上方へと引き出されて上記の天板121a-3を貫通し、牽引機構124及び電線把持部材123をこの順番で経由して収容庫本体121の外部へと引き出される。引き出された電線W1は、上述の品番データに基づいて使用電線に指定されると、電線供給装置13によって本体機構16における繰出し機構16a-1に供給され、この繰出し機構16a-1によって断続的に繰出されることとなる。
【0029】
次に、電線リール122の電線W1が電線把持部材123の前に懸架される牽引機構124について説明する。
【0030】
複数の牽引機構124は、複数の電線リール122と一対一に対応するように設けられている。各牽引機構124は、収容庫本体121の案内支持部121bにおける各電線W1の引出しルート上で各電線把持部材123よりも電線リール122に近い位置に取り付けられる。具体的には、
図1に示されているように、牽引機構124は、案内支持部121bにおける奥側2本の横桟121b-3それぞれに複数ずつ取り付けられる。各牽引機構124には、各電線リール122から上方へと引き出されて天板121a-3を貫通した電線W1が懸架される。そして、当該電線W1を、上方へと引き上げつつ、繰出し機構16a-1による繰出し方向D11とは逆向きの牽引方向D15に牽引して電線把持部材123へと通過させる。
【0031】
各牽引機構124は、ベース部124a、回動アーム124b、牽引用付勢部材124c、一対のバネ連結部124d、回動滑車124e、及び固定滑車124f、を備えている。ベース部124aは、横桟121b-3に固定された帯板状の部位であり、その両端に鉛直方向D14の立板部分が設けられている。回動アーム124bは、ベース部124aの一端側の立板部分に回動可能に軸支されたアーム部材である。牽引用付勢部材124cは、一端がベース部124aの立板部分に連結されて他端が回動アーム124bの中間位置に連結され、回動アーム124bを、その先端を引き上げる付勢方向D16に付勢して牽引するバネ部材である。一対のバネ連結部124dは、その一方で牽引用付勢部材124cの一端をベース部124aの立板部分に連結し、他方で牽引用付勢部材124cの一端を回動アーム124bの中間位置に連結する部材である。回動滑車124eは、回動アーム124bの先端に取り付けられ、天板121a-3を貫通した電線W1を懸架支持する滑車である。固定滑車124fは、ベース部124aにおける回動アーム124bとは反対側の立板部分に取り付けられ、回動滑車124eを経由した電線W1を懸架支持する滑車である。各牽引機構124は、回動滑車124e及び固定滑車124fに懸架支持された電線W1を、牽引用付勢部材124cによる回動アーム124bの付勢により、牽引方向D15へと牽引する。
【0032】
次に、牽引機構124によって牽引されつつ懸架支持された電線W1を、収容庫本体121からの引出し前に把持する電線把持部材123について説明する。
【0033】
複数の電線把持部材123は、上述の牽引機構124と同様に、複数の電線リール122と一対一に対応するように設けられている。各電線把持部材123は、収容庫本体121の案内支持部121bにおける各電線W1の引出しルート上で各牽引機構124よりも電線リール122から遠い位置に取り付けられる。具体的には、
図1に示されているように、電線把持部材123は、案内支持部121bの張出部121b-4における繰出し機構16a-1の側の縁部に当たる1本の横桟121b-3に複数取り付けられる。
【0034】
電線W1は、電線リール122から上方へと引き出された後に、上述の牽引機構124によって水平側へと向きを変えられ、横向きに延びて収容庫本体121の外部へと引き出されている。各電線把持部材123は、電線W1において牽引機構124を経た後の横向きに延びている部分を、繰出し機構16a-1による繰出し力よりも弱い把持力で把持する。
【0035】
図6は、
図1、
図4、及び
図5に示されている電線把持部材を、電線の引出し側から見て示す斜視図であり、
図7は、
図6に示されている電線把持部材における、
図6中のV13-V13線に沿った断面を示す断面図である。
【0036】
電線把持部材123は、取付けベース部123a、把持前滑車123b、プレート部123c、一対のローラ123d、把持用アーム123e、及び把持用付勢部材123f、を備えている。
【0037】
取付けベース部123aは、案内支持部121bの横桟121b-3に立設固定される柱状の部材であり、電線把持部材123における他の構成要素を支持する。把持前滑車123bは、取付けベース部123aの側面に固定され、内側の回転部分123b-1の上部で電線W1を受けつつ繰出し方向D11へと通す部材である。プレート部123cは、把持前滑車123bにおける取付けベース部123aとは反対側の側面に固定され、当該側面から繰出し方向D11へと延出しつつ、その前端部で繰出し方向D11と交差するように曲げられてL字状に形成されたプレート部材である。このプレート部123cにおける繰出し方向D11と交差する壁部分には、電線W1を繰出し方向D11に送り出す送出口123c-1が設けられている。一対のローラ123dは、把持前滑車123bと電線W1の送出口123c-1の間に配置され、両者間を通過する電線W1を互いの周面間に挟む、各々が軸123d-3回りに回転可能な部材である。これら一対のローラ123dのうち第1ローラ123d-1は把持用アーム123eの先端に軸支され、第2ローラ123d-2はプレート部123cの側面に軸支されている。把持用アーム123eは、第1ローラ123d-1と反対側の端部が把持前滑車123bに回動可能に軸支されたアーム部材である。また、把持用付勢部材123fは、一端が把持用アーム123eに固定されて他端がプレート部123cに固定され、把持用アーム123eを介して第1ローラ123d-1を第2ローラ123d-2に向かう付勢方向D17に付勢する付勢バネである。この把持用付勢部材123fによる付勢力は、上述のように、電線W1を、繰出し機構16a-1による繰出し力よりも弱く把持する把持力に応じた付勢力となっている。
【0038】
また、本実施形態では、取付けベース部123aは、プレート部123cにおける送出口123c-1が、電線供給装置13を経て繰出し機構16a-1に向かって開口するように取付け姿勢を調節可能に案内支持部121bの横桟121b-3へと固定されている。具体的には、取付けベース部123aの下端側には、ネジ止め固定用の台座部分123a-1が設けられており、この台座部分123a-1のネジ止め貫通孔123a-2を介して取付けベース部123aが横桟121b-3にネジ止め固定されている。この固定用の不図示のネジを緩めることで、ネジ止め貫通孔123a-2の中心軸123a-3の回りの調節回動方向D18について送出口123c-1の向きを調節することが可能となっている。
【0039】
以上に説明した実施形態の電線収容庫12及び電線加工装置1によれば、電線リール122から引き出された電線W1は、電線把持部材123によって常に把持された状態で繰出し機構16a-1による繰出しを受けることとなる。この電線把持部材123による把持力は繰出し機構16a-1による繰出し力よりも弱いため電線W1の繰出し自体に支障が生じることはない。他方で、繰出しが停止して繰出し力が消失した場合には、電線把持部材123による把持力が、惰性によって進もうとする電線W1の動きを規制する役割を果たす。このような規制の結果、繰出し停止後の惰性による電線W1の引出しが抑えられ、電線収容庫12の外部における電線W1の弛みが抑えられることとなる。つまり、上記の電線収容庫12によれば、電線W1が断続的に高速で繰出されても外部における電線W1の弛みを抑えることができる。
【0040】
ここで、本実施形態では、電線把持部材123が、把持用付勢部材123fで付勢された一対のローラ123dで電線W1を互いの周面間に挟むように構成されている。この構成によれば、回転可能な一対のローラ123dの周面で電線W1が挟まれるので、高速で繰出されたときの摩擦等を抑えつつ、電線W1を効果的に把持することができる。
【0041】
また、本実施形態では、電線把持部材123は、電線W1の送出口123c-1が繰出し機構16a-1に向かって開口するように取付け姿勢を調節可能に収容庫本体121へと取り付けられている。この構成によれば、電線把持部材123の取付け姿勢の調節により、把持した電線W1を繰出し機構16a-1へと向けて適切に送り出すことができる。
【0042】
また、本実施形態では、電線把持部材123よりも電線リール122に近い位置で電線W1を牽引しつつ通過させる牽引機構124が設けられている。この構成によれば、電線W1は、電線把持部材123による把持に加え、牽引機構124によって繰出し方向D11とは逆向きの牽引方向D15に牽引されることから、電線収容庫12の外部における電線W1の弛みを一層抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態では、収容庫本体121が収容棚であり、電線リール122は棚板121a-2の上に載置され、電線把持部材123が、電線W1において横向きに延びている部分を把持するように構成されている。この構成によれば、収容庫本体121が収容棚という収容に適した簡潔な構造物となっていることからコストを抑えることができる。その上で、上方へと引き出された後に水平側へと向きを変えて横向きに延びる電線W1の、その横向きに延びて外部の繰出し機構16a-1に向かっている部分が電線把持部材123によって把持される。このような位置での把持により、高速の繰出しが急停止したときに電線W1に生じる惰性力を、その惰性力の向きと電線W1の延在方向が最も近くなる横向きの部分で電線把持部材123が受けるので、電線W1の弛みを効果的に抑えることができる。
【0044】
また、本実施形態では、収容庫本体121には張出部121b-4が設けられており、電線把持部材123が、張出部121b-4における繰出し機構16a-1の側の縁部に当たる横桟121b-3と電線W1とが交差する部分に取付けられている。この構成によれば、収容庫本体121において繰出し機構16a-1に近い外部寄りの部位である、張出部121b-4の縁部で電線W1が把持されて惰性による動きが規制されるので、電線W1の弛みを効果的に抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態では、電線リール122が複数、具体的には、電線種類が互い異なる複数種類収容されている。そして、電線把持部材123が、複数の電線リール122に一対一に対応して各電線リール122の電線W1を把持するように収容庫本体121に複数取り付けられている。この構成によれば、電線収容庫12の収容庫本体121に、電線種類が互い異なる複数種類の電線リール122が収容されるので、電線加工装置1における端子付き電線W1の製造について、製造の自由度を向上させることができる。
【0046】
尚、以上に説明した実施形態は電線収容庫及び電線加工装置の代表的な形態を示したに過ぎず、電線収容庫及び電線加工装置は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、電線収容庫及び電線加工装置は、その骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0047】
例えば、上述の実施形態では、電線収容庫及び電線加工装置の一例として、品番データを介して使用電線に指定された電線W1が繰出される電線収容庫12及び電線加工装置1が例示されている。しかしながら、電線収容庫及び電線加工装置は、これに限るものではなく、例えば使用電線が直に指定されて繰出されることとしてもよく、具体的な指定態様を問うものではない。
【0048】
また、上述の実施形態では、電線収容庫の一例として、端子圧着を行わない線分電線W111の切断と、端子付き電線W11の製造と、の両方を実行可能な電線加工装置1の電線収容庫12が例示されている。しかしながら、電線収容庫は、これに限るものではなく、収容した電線リールの電線が外部へと引き出されて断続的に繰出される収容庫であれば、繰出された電線がどのように扱われるかを問うものではない。例えば、繰出された電線の扱いは、線分電線の切断と、端子付き電線W11の製造と、の何れか一方のみであってもよく、あるいは、特段の加工を伴わない巻き直しや巻き癖の矯正処理等であってもよい。
【0049】
また、上述の実施形態では、電線把持部材の一例として、把持用付勢部材123fで付勢された一対のローラ123dで電線W1を互いの周面間に挟む電線把持部材123が例示されている。しかしながら、電線把持部材は、これに限るものではなく、ローラ構造以外の例えばクリップで電線を把持するものや、電線太さよりも狭い貫通孔を有する柔軟なゴム筒に電線を通すことで電線を把持するもの等であってもよい。ただし、ローラ構造を採用することで、高速で繰出されたときの摩擦等を抑えつつ、電線W1を効果的に把持することができる点は上述した通りである。
【0050】
また、上述の実施形態では、電線把持部材の一例として、電線W1の送出口123c-1の向きを調節可能な電線把持部材123が例示されている。しかしながら、電線把持部材は、これに限るものではなく、電線の送出口の向きが一意的に決められた状態で固定されるもの等であってもよい。ただし、電線W1の送出口123c-1の向きが調節可能であることで、把持した電線W1を繰出し機構16a-1へと向けて適切に送り出すことができる点は上述した通りである。
【0051】
また、上述の実施形態では、電線収容庫の一例として、電線把持部材123よりも電線リール122に近い位置に電線W1の牽引機構124が設けられた電線収容庫12が例示されている。しかしながら、電線収容庫は、これに限るものではなく、このような牽引機構を設けないこととしてもよい。ただし、牽引機構124を設けることで、電線収容庫12の外部における電線W1の弛みを一層抑えることができることは上述した通りである。
【0052】
また、上述の実施形態では、電線収容庫の一例として、収容庫本体121が収容棚で、棚板121a-2の上の電線リール122から上方に延びた電線W1が、向きを変えて横向きに延びる部分で電線把持部材123に把持される電線収容庫12が例示されている。しかしながら、電線収容庫は、これに限るものではなく、棚以外の、例えば電線リールが回転可能に軸支収容されて電線が周方向に引き出される収容庫本体を備えるもの等であってもよい。また、棚構造の収容庫本体を備えるものであっても、電線把持部材による電線の支持位置は、電線が上方に延びている部分等であってもよい。ただし、棚構造の収容庫本体を採用することでコストが抑えられ、横向きに延びる部分での電線把持により電線W1の弛みを効果的に抑えることができる点は上述した通りである。
【0053】
また、上述の実施形態では、電線収容庫の一例として、収容庫本体121に張出部121b-4が設けられ、電線把持部材123が、張出部121b-4の縁部と電線W1とが交差する部分に取付けられた電線収容庫12が例示されている。しかしながら、電線収容庫は、これに限るものではなく、収容庫本体には張出部を設けなくてもよく、また、張出部を設けたとしても電線把持部材の取付け位置は任意に設定可能である。ただし、張出部121b-4の縁部と電線W1とが交差する部分に電線把持部材123を取り付けることで、電線W1の弛みを効果的に抑えることができる点は上述した通りである。
【0054】
また、上述の実施形態では、電線収容庫の一例として、電線リール122が複数収容され、電線把持部材123が、複数の電線リール122に一対一に対応して複数取り付けられ電線収容庫12が例示されている。しかしながら、電線収容庫は、これに限るものではなく、電線リール及び電線把持部材が1つずつ設けられたものであってもよい。ただし、電線リール122及び電線把持部材123を複数ずつ設けることで、端子付き電線W1の製造の自由度を向上させることができる点は上述した通りである。尚、電線リール及び電線把持部材を複数ずつ設ける場合であっても、電線収容庫には、これらの他に、電線の引出しを受けない予備の電線リールが1つ又は複数収容されることとしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 電線加工装置
11 情報取得部
12 電線収容庫
13 電線供給装置
14 B側端子供給部
15 A側端子供給部
16 本体機構
16a 切出し部
16a-1 繰出し機構
16a-2 切断機構
17a A側ゴム栓供給部
17b B側ゴム栓供給部
121 収容庫本体
121a 収容棚
121a-1,121b-1 柱材
121a-2 棚板
121a-3 天板
121b 案内支持部
121b-2 縦桟
121b-3 横桟
121b-4 張出部
122 電線リール
123 電線把持部材
123a 取付けベース部
123a-1 台座部分
123a-2 ネジ止め貫通孔
123a-3 中心軸
123b 把持前滑車
123b-1 回転部分
123c プレート部
123c-1 送出口
123d 一対のローラ
123d-1 第1ローラ
123d-2 第2ローラ
123d-3 軸
123e 把持用アーム
123f 把持用付勢部材
124 牽引機構
124a ベース部
124b 回動アーム
124c 牽引用付勢部材
124d バネ連結部
124e 回動滑車
124f 固定滑車
161 A側圧着機
162 A側ゴム栓挿入機
163 A側電線移動アーム
164 B側圧着機
165 B側ゴム栓挿入機
166 B側電線移動アーム
D11 繰出し方向
D12,D13 矢印
D14 鉛直方向
D15 牽引方向
D16,D17 付勢方向
D18 調節回動方向
T11 A側端子
T12 B側端子
TR1 端子リール
TR11 端子連鎖体
TR11a 端子
TR11b キャリア
W1 電線
W11 端子付き電線
W111 線分電線
Y 作業者