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特許7493911改善された周波数安定度を有する、蒸気セル原子周波数基準のための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】改善された周波数安定度を有する、蒸気セル原子周波数基準のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/26 20060101AFI20240527BHJP
   G04F 5/14 20060101ALI20240527BHJP
   H01S 1/06 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
H03L7/26
G04F5/14
H01S1/06
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019052512
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2019176468
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】62/648,079
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/031,458
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ジェームス・クリツ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・コンプトン
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-98321(JP,A)
【文献】特開2018-46268(JP,A)
【文献】特表2005-525691(JP,A)
【文献】特開2010-62554(JP,A)
【文献】特表平11-512876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04F5/14
H01L23/34-23/473
H01S1/06
H03L7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップスケール原子時計(CSAC)(100)であって、
温度安定型物理システム(102、402)であって、蒸気セル(102)及び磁場コイル(102G)を含み、磁気シールド(448A)で包囲されている温度安定型物理システム(102、402)と、
前記温度安定型物理システムに電気的に結合されている温度安定型電子回路(104、404)であって、(i)前記温度安定型物理システムの第1セットの構成要素を制御すること、(ii)前記温度安定型物理システムの前記第1セットの構成要素よって送信される、および/または受信されるデータを処理することのうち少なくとも一方を行うように構成された、温度安定型電子回路と、を含み、
前記温度安定型物理システムおよび前記温度安定型電子回路の少なくとも1つは、受動ヒートシンクを備え、
前記受動ヒートシンクは、流体を格納するように、および第1基板の内部またはその上に取り付けられた少なくとも1つのリザーバを備え、
前記CSACの周囲温度の上昇時に、熱膨張のために、前記流体は前記少なくとも1つのリザーバから前記第1基板とは熱隔離されている第2基板に向かって広がり、
前記温度安定型物理システムまたは前記温度安定型電子回路の第2セットの構成要素は、前記第2基板上にあり、
前記CSACの前記周囲温度の下降時に、熱収縮のために、前記流体は前記少なくとも1つのリザーバに向かって後退する、CSAC。
【請求項2】
前記温度安定型電子回路又は前記温度安定型物理システムのそれぞれは、
前記第1基板(222A、222B、322)と、
前記第2基板(224A、224B、324)と、
前記第2基板上の前記第2セットの構成要素(226A、226B)と、
前記第1基板及び前記第2基板を結合する少なくとも1つのテザー(228A、228B、328a、328b、328c、328d)と、を含み、
前記受動ヒートシンクはさらに
前記少なくとも1つのテザーのうちの少なくとも1つの内部、又は前記少なくとも1つのテザーのうちの少なくとも1つの上にある少なくとも1つの毛細管(334)と、
前記少なくとも1つの毛細管のそれぞれに結合されている前記少なくとも1つのリザーバ(332)と、を含み、
前記流体は、前記CSACの周囲温度が変動するのに従って、前記少なくとも1つの毛細管のそれぞれを通って流れるように構成されている、請求項に記載のCSAC。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
原子蒸気セルを使用したチップスケール原子時計(CSAC)は、周波数基準として温度調整型発振器(TCXO)よりも最大4桁優れた精度を提供する。CSACは、冷却原子ベースの時計よりも安価であり、かつ小型であるが、周波数基準の精度で劣る。温度にわたってCSACの安定性を増加させ、したがって、一次周波数基準との同期間に必要な期間を延長する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0002】
チップスケール原子時計(CSAC)が提供される。CSACは、温度安定型物理システムであって、蒸気セル及び磁場コイルを含み、磁気シールドで包囲されている温度安定型物理システムと、温度安定型物理システムに電気的に結合されている温度安定型電子回路と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図面は例示的な実施形態のみを示し、したがって範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解した上で、例示的な実施形態を添付の図面を使用して更なる具体性及び詳細と共に説明する。
【0004】
図1】温度安定型電子回路を含むチップスケール原子時計の一実施形態のブロック図を示す。
図2】温度安定型電子回路の一実施形態を示す。
図3A】電気システムの一実施形態の平面図を示す。
図3B】ヒートシンクシステムを組み込む電気システムの一実施形態の平面図を示す。
図3C】温度安定型物理システム又は温度安定型電子回路の例示的な作製方法を示す。
図3D】温度安定型物理システム又は温度安定型電子回路の例示的な作製方法を示す。
図4】蒸気セルを使用する、改善されたチップスケール原子時計の一実施形態の断面図を示す。
【0005】
慣例に従って、記載された様々な特徴は一定の縮尺で描かれているのではなく、例示的な実施形態に関連する特定の特徴を強調するように描かれている。参照文字は、図及び本文を通して同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照し、図面には特定の例示的な実施形態を例として示す。しかしながら、他の実施形態が利用されてもよく、構造的、機械的、及び電気的な変更がなされてもよいことが理解されるべきである。更に、図面及び明細書に提示された方法は、個々の工程が実行され得る順序を限定するものとして解釈されるべきではない。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0007】
原子時計は、原子の電子を刺激して、より高いエネルギー準位にさせる周波数成分を有する光信号に依存する。蒸気セルを使用するチップスケール原子時計(CSAC)は、(a)物理パッケージ又はシステムと、(b)物理システムの構成要素によって送信される、及び/又は受信されるデータを、(i)制御する、及び/又は(ii)処理するための電子回路と、を含む。物理システムは温度安定型であって、物理システム構成要素の温度変動を低減して周波数の変動を低減し、したがって、周波数安定度を向上してよく、したがって、物理システムはまた、温度安定型物理システムと称されてよい。しかしながら、電子回路は温度安定型ではない場合があり、その結果、CSACの精度は、周囲温度の変動時に低下する。周波数安定度を更に向上させるために、電子回路の全体及び一部は温度安定型であって、電子回路構成要素の温度変動を低減して周波数の変動を更に低減し、したがって、周波数安定度を更に向上してよい。
【0008】
図1は、温度安定型電子回路を含むチップスケール原子時計(改善されたCSAC)100の一実施形態のブロック図を示す。改善されたCSAC100は、温度安定型物理パッケージ又はシステム(物理パッケージ又はPP)102と、温度安定型電子回路(温度安定型電子回路(EP))104と、を含む。任意追加的に、改善されたCSAC100は、非温度安定型電子回路(温度安定型電子回路(EP))106を含む。
【0009】
温度安定型物理システム102は、ガスセル102Dと、光源(例えばレーザ)と、少なくとも1つの光検出器(例えば光検出器1 102C及び光検出器2 102F)と、すべて又は一部の構成要素を、広範囲の外部周囲温度(例えば-40℃~85℃)にわたって実質的に一定の設定点温度、例えば約90℃に維持する磁場コイル(以下に例を示す)と、を含むシステムである。実質的に一定の設定点温度は、CSACの安定度を低下させない温度範囲内の温度を意味する。したがって、実質的に一定の設定点温度は、周囲温度よりも大きい。これは、かかるすべて又は一部の構成要素を外部環境から熱隔離し、熱エネルギーを追加して、所望の高温の設定点温度を維持することによりある程度達成され得る。これを達成するために、温度安定型物理システム102は、少なくとも1つのヒータ、例えばVSCELヒータ及び/又はガスセルヒータ(gas sell heater)102Eを含む。
【0010】
図示された温度安定型物理システム102は、光源(レーザ)を含む。教育的理由により、レーザは、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)102Aとして図示される。しかしながら、横型ダイオードレーザなど他のタイプのレーザも使用されてよい。図1内の他の構成要素は、VSCELヒータ又は電流制御装置とラベル付けされ得るが、これも教育的目的であり、ヒータ及び電流制御装置は、他のタイプのレーザと共に使用されてよい。VCSEL102Aは、ヒータ(VCSELヒータ)102Bに熱的に結合されており、VCSEL102Aの温度を制御し、安定化させるように構成されている。同様に、ガスセル102Dは、ヒータ(ガスセルヒータ)102Eに熱的に結合されており、ガスセル102Dの温度を制御し、安定化させるように構成されている。
【0011】
ガスセル102Dは、通常、蒸気状態のアルカリ原子を含む。例えばアルカリは、セシウム又はルビジウムである。VCSEL102Aから出射される光信号は、ガスセル102Dに照射される。
【0012】
温度安定型物理システム102の一実施形態が図1に示されているが、温度安定型物理システム102は、他の構成要素タイプを使用して他の方法で実装され得る。
【0013】
図1では、実線は、アナログ電気信号の経路を示す。破線は、デジタル電子信号の経路を示す。
【0014】
温度安定型電子回路104は、構成要素が、広範囲の外部周囲温度(例えば-40℃~85℃)にわたって実質的に一定の設定点温度、例えば90℃に維持される、制御及び信号処理回路(以下に例を示す)を含むシステムである。これは、すべて又は一部の構成要素を外部環境から熱隔離することによってある程度達成され得る。
【0015】
任意追加的に、図1に示されるように、改善されたCSAC100は、非温度安定型電子回路(非温度安定型電子回路(EP))106を含む。非温度安定型電子回路106は、温度安定型電子回路104から分離されていてよい。これは、非温度安定型電子回路106が、
(a)他の電子回路の動作に悪影響を及ぼす、望ましくない電気的ノイズを発生し得る、
(b)精密電流及び/又は電圧に依存せず、したがって温度変異に敏感ではないことがある、
(c)閉ループシステムとして、又はその一部として動作し、したがって温度変化に敏感ではないことがある、及び/又は
(d)体積又は電力消費が大きすぎるために、温度安定型電子回路104に含まれると、温度安定型電子回路104によって消費される電力が過剰になり得る(例えば許容されるシステム動作仕様を超える)ためである。
【0016】
任意追加的に、電子回路の一部ではなく、すべてが、温度安定型回路104内にある。
【0017】
図示される温度安定型物理システム102はまた、コヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)を促進するために使用される、磁場コイル(磁場コイル(mag. field coil))102Gを含む。図示される温度安定型物理システム102はまた、第1光検出器(光検出器1)102Cと、第2光検出器102F(光検出器2)と、を含み、これらは、光出力の量、つまり(a)VCSEL102Aから出射される光信号、及び(b)ガスセル(又は蒸気セル)102Dからの対応する光信号出力をそれぞれ感知するために使用される。VCSEL102Aから出射される光信号は、ガスセル102D入って通過し、そこからの出力である。第1光検出器102C及び第2光検出器102F(並びにこれらの対応するトランスインピーダンス増幅器及びフィルタ)は、フィードバックループの各部分であり、例えば本明細書に記載の水晶発振器、信号増幅器、及びヒータ電流制御回路の周波数の調整に使用される。
【0018】
図示される温度安定型電子回路104は、電流制御回路(VCSEL電流制御装置)104Aと、水晶発振器104B(例えば10MHz水晶発振器)と、位相同期ループ104Cと、電圧制御型発振器104D(VCO)(例えば3.417GHz VCO)と、第1デジタルアナログデータ変換器(DAC)(DAC1)104Eと、第1ヒータ電流制御回路(ヒータ電流制御装置1)104Fと、第2DAC(DAC2)104Gと、第1フィルタ(フィルタ1)104Hと、第1トランスインピーダンス増幅器(TIA)(TIA1)104Iと、第2ヒータ電流制御回路(ヒータ電流制御装置2)104Jと、第3DAC(DAC3)104Kと、第2TIA(TIA2)104Lと、第2フィルタ(フィルタ2)104Mと、第4DAC(DAC4)104Nと、精密電圧及び/又は電流基準(精密電圧/電流基準)104Oと、コイル電流制御回路(コイル電流制御装置)104Pと、ヒータ104Qと、ヒータ電流制御回路(ヒータ電流制御装置)104Rと、第5DAC(DAC5)104Sと、を含む。精密電圧及び/又は電流基準104Oは、温度安定型物理システム102、温度安定型電子回路104、及び/又は非温度安定型電子回路106のうちの1つ以上の構成要素に電気的に結合されてよい。本明細書に図示されるDACは、(例えば、マイクロコントローラからアナログ制御構成要素に送信される)デジタル信号をアナログ信号に変換する。
【0019】
VCSEL電流制御回路104Aは、VCSEL102Aの周波数を制御するように構成されている。VCSEL電流制御回路104Aは、位相同期周波数源のVCO104D及びマイクロコントローラ106Aに結合されるように構成されており、これらの一方又は両方は、任意追加的に非温度安定型電子回路106内に位置する。明確にするために、本明細書に記載のマイクロコントローラは、マイクロコントローラ回路、中央演算処理装置回路、デジタル信号処理回路、及び/又は特定用途向け集積回路のうちの1つ以上であってよい。マイクロコントローラはまた、本明細書においてコントローラ回路と称されてよい。
【0020】
VCSEL102Aによって生成される光信号の周波数は、マイクロコントローラ106Aによって制御される。位相同期周波数源は、VCO104Dと、位相同期ループ(PLL)104Cと、水晶発振器104Bと、を含む。VCO104DはPLL104Cに結合され、周波数カウンタの設定を変更してVCO104Dの出力周波数を調整するためにマイクロコントローラ106Aに結合されるように構成されている。水晶発振器104BはPLL104Cに結合され、第1DAC104Eに結合されるように構成されており、第1DAC104Eは、水晶発振器周波数104Bの微調整及び修正を可能にするためにマイクロコントローラ106Aに結合されるように構成されている。
【0021】
VSCEL102Aの設定点電流及び温度は、VSCEL102Aによって出射される光信号の搬送波周波数を制御するために使用される。位相同期周波数源によって生成されるマイクロ波出力信号は、DC電流と合計される。DC電流及びマイクロ波出力信号の両方は、VCSEL102に提供される。マイクロ波出力信号周波数は、VCSEL102の光出力を変調し、したがって、アルカリ原子の共振周波数に一致する周波数で側波帯を発生させる。
【0022】
第1ヒータ電流制御回路104Fは、VCSELヒータ102B及び第2DAC104Gに結合されるように構成され、第2DAC104Gは、マイクロコントローラ106Aに結合されるように構成されている。したがって、VCSEL102Aの温度は、マイクロコントローラ106Aによって調整される。
【0023】
本明細書に記載の光検出器は、入射光出力を電流信号に変換し、電流レベルは、入射光出力レベルに比例する。第1TIA104Iは、第1光検出器102C及び第1フィルタ104Hに結合されるように構成されており、第1フィルタ104Hはマイクロコントローラ106Aに結合されるように構成されている。第1TIA104Iは、第1光検出器102Cの電流出力を、電流信号から電圧信号に変換する。第1フィルタ104Hは、マイクロコントローラ106Aによって生成された再生刺激信号をフィルタリングし、例えば分離し、増幅し、コヒーレント復調のために、フィルタリングされた電圧信号をマイクロコントローラ106Aに提供する。
【0024】
第1フィルタ104Hは、マイクロコントローラ106Aに結合され、コヒーレント復調のために、フィルタリングされた電圧信号をマイクロコントローラ106Aに提供するように構成されている。電流レベル及び電圧レベルは、第1光検出器102Cへの光出力入射に対応する。
【0025】
第2ヒータ電流制御回路104Jは、ガスセルヒータ102E及び第3DAC104Kに結合されるように構成され、第3DAC104Gは、マイクロコントローラ106Aに結合されるように構成されている。第3DAC104Kは、マイクロコントローラ106Aからのデジタル信号を、ヒータ電流制御回路104Jが受信するように構成されているアナログ信号に変換し、アナログ信号は、ヒータ電流制御回路104Jによって生成される電流を制御し、結果として、ガスセルヒータ102Eの熱エネルギーを制御する。したがって、ガスセル102Dの温度は、ガスセルヒータ102Eを駆動させるテンパラチュアセンシティブレジスタベースのサーボ制御回路と共にマイクロコントローラ106Aによって調整される。
【0026】
第2TIA104Lは、第2光検出器102E及び第2フィルタ104Mに結合されるように構成されており、第2フィルタ104Hは、マイクロコントローラ106Aに結合されるように構成されている。第2TIA104Lは、第2光検出器102Fの電流出力を、電流信号から電圧信号に変換する。第2フィルタ104Hは、マイクロコントローラ106Aによって生成された再生刺激信号をフィルタリングし、例えば分離し、増幅し、複数の刺激信号のコヒーレント復調のために、フィルタリングされた電圧信号をマイクロコントローラ106Aに提供する。電流レベル及び電圧レベルは、第2光検出器102Fへの光出力入射に対応する。
【0027】
コイル電流制御回路104Pは、磁場コイル102Gを通って流れる電流を制御するように構成されている。コイル電流制御回路104Pは、第4DAC104Nに結合されるように構成されている。第4DAC104Kはマイクロコントローラ106Aに結合されるように構成されている。第4DAC104Kは、マイクロコントローラ106Aからのデジタル信号を、コイル電流制御回路104Pが受信するように構成されているアナログ信号に変換し、このアナログ信号は、コイル電流制御回路104Pによって生成される電流を制御し、その結果、磁場コイル102Gによって生成される磁場エネルギーを制御する。したがって、磁場コイル102Gを通って流れる電流は、マイクロコントローラ106Aによって制御される。
【0028】
温度安定型電子回路はまた、少なくとも1つのEPヒータ104Q、少なくとも1つのEPヒータ電流制御回路(EPヒータ電流制御装置)104R、及び/又は少なくとも1つの第5DAC(DAC5又は第5DAC)104Sを含む。EPヒータ104Qは、温度安定型電子回路内の構成要素のすべて又は一部に熱的に結合されており、かかるすべて又は一部の構成要素の温度を制御し、安定化させるように構成されている。
【0029】
図示される実施形態では、EPヒータ104Qは、EPヒータ制御回路104Rに結合されている。任意追加的に、EPヒータ104Qは、少なくとも1つのテザー及び/又は第2基板に実装される、少なくとも1つの抵抗ヒータであってよい。任意追加的に、EPヒータ制御回路104Rは、ホィートストーンブリッジを使用して第2基板に実装されてよい。テザー及び第2基板については、以下に更に記載する。
【0030】
EPヒータ制御回路104Rは、第5DAC104Sに結合されている。第5DAC104Sは、マイクロコントローラ106Aに結合されるように構成されている。第5DAC104Sは、マイクロコントローラ106Aからのデジタル信号を、EPヒータ電流制御回路104Rが受信するように構成されているアナログ信号に変換し、アナログ信号は、EPヒータ電流制御回路104Rによって生成される電流を制御し、結果として、EPヒータによって生成される熱エネルギーを制御する。したがって、温度安定型電子回路104の温度は、マイクロコントローラ106Aによって制御される。
【0031】
マイクロコントローラ106Aは、アナログ及び/又はデジタルの入力及び/又は出力を有する。一実施形態では、第1フィルタ104A、第2フィルタ104Mへの、及び/若しくはこれらからのアナログ信号、並びに/又は精密電圧及び/若しくは電流基準104Oは、マイクロコントローラ106Aのアナログ入力及び/又は出力にそれぞれ電気的に結合されている。別の実施形態では、VCSEL電流制御回路104A、VCO104D、第1DAC104E、第2DAC104G、第3DAC104K、第4DAC104N、及び/又は第5DAC104Sへの、及び/又はこれらからのデジタル信号は、マイクロコントローラ106Aのデジタル入力及び/又は出力にそれぞれ電気的に結合されている。任意追加的に、マイクロコントローラ106Aは、デジタル入力及び/又は出力のみを有し、マイクロコントローラに結合されている、及び/又はこれからのアナログ信号は、1つ以上のアナログデジタル変換器によってデジタル信号に変換される。
【0032】
非温度安定型電子回路106は、図示される電力調整回路106Bなど他の回路を含んでよい。電力調整回路106は、1つ以上の低ドロップアウトレギュレータ、DC-DC電圧レギュレータ、非クリティカル電圧基準(例えばバンドギャップ電圧基準)、及び/又は非クリティカル電流基準(例えば定電流源)を含んでよい。電力調整回路106Bは、温度安定型物理システム102、温度安定型電子回路104、及び/又は非温度安定型電子回路106内の1つ以上の構成要素に結合されてよく、これらに電力を提供してよい。
【0033】
当該構成要素が温度安定型電子回路内に存在しない場合、非温度安定型電子回路106は、マイクロコントローラ106Aを含んでよい。温度安定型電子回路104の(例えばヒータの)体積及び/又は電力消費を低減するために、温度安定型電子回路104の上記の構成要素の一部は、非温度安定型電子回路106に含まれ得る。任意追加的に、非温度安定型電子回路106(温度安定型温度システム104ではない)は、水晶発振器104B、PLL104C、第1ヒータ電流制御回路104F、第2ヒータ電流制御回路104J、及び/又はコイル電流制御回路104Pを含んでよい。これは、これらの構成要素が、例えば第1光検出器102C、及び/又は第2光検出器102Fからのフィードバックを使用して実装され、温度変化の影響を低減する、又は温度変化の影響を低減するフィードバック機構を含むシステムの一部である、のいずれかであるためである。更に、任意追加的に、第1DAC104E、第2DAC104G、第3DAC104K、第4DAC104N、第5DAC104S、第1フィルタ104H、及び/又は第2フィルタ104Mの動作パラメータが比較的温度不変である方法で実装されている場合、非温度安定型電子回路106はこれらの構成要素を含んでよい。例えば、第1フィルタ104H及び/又は第2フィルタ104Mは、基本的な受動構成要素パラメータ(例えばレジスタの抵抗、コンデンサの静電容量、及びインダクタのインダクタンス)に関して低温度係数を有する受動構成要素を使用して設計される場合、温度変化の影響がより小さい能動フィルタとして実装されてよい。任意追加的に、フィルタが能動フィルタで実装される場合、非温度補償受動構成要素は、温度安定型電子回路104内に実装され得、その一方、受動構成要素、例えば演算増幅器(その閉ループ実装により比較的温度不変であるパラメータを有するフィードバックアーキテクチャのため)は、非温度安定型電子回路106に含まれ得る。DACは、外部温度補償電圧基準を使用して、並びに/又は温度不変であるパルス幅変調器及び/又は積分器を使用して、実装されてよい。
【0034】
図2は、温度安定型電子回路204の一実施形態を示す。温度安定型電子回路204は、パッケージ220に取り付けられている少なくとも1つの電気システム(複数の電気システム)を含む。図2では、第1電気システム223A及び第2電気システム223Bが図示されている。
【0035】
図示されるパッケージ220は、本体220Bに取り付けられている蓋220Aを含む。任意追加的に、蓋220Aは、本体220Bに対して密閉されており220A、任意追加的に、パッケージ220の内部は排気され、実質的に真空であり、真空によって、パッケージ220内の構成要素と、パッケージ220及びその外部環境との熱隔離が増加する。任意追加的に、蓋220A及び/又は本体220Bは、セラミックで製造されてよい。ゲッタ材料が蓋220Aに適用されて、デバイスの耐用年数にわたってほぼ真空レベルの圧力を維持するために役立ってよい。本体220Bの内部は、少なくとも1セットのレッジを含む。図示される本体220Bは、2セットのレッジ220C-1、220C-2を含む。
【0036】
各電気システムは、対応するセットのレッジに取り付けられる。図2では、第1電気システム223Aは第1セットのレッジ220C-1に取り付けられ、第2電気システム223Bは第2セットのレッジ220C-2に取り付けられる。各電気システムは、エポキシ又ははんだなど接着剤221によって対応するセットのレッジに取り付けられる。電気システムは、例えば、孔、リードフレーム、及び/又ははんだボールを介して導電体など相互接続子を電子回路204内及び/又はその上に組み込むなど従来のパッケージング技術を使用して、互いに、及び/又は外部システム(温度安定型物理パッケージ及び/又は非温度安定型電子回路など)に相互接続されてよい。
【0037】
各電気システムは、第1基板と、第2基板と、テザーと、少なくとも1つの電気回路と、を含む。第1基板及び第2基板は、シリコンで作製されてよい。導電体は、データ信号(制御信号及び測定データ信号など)、基準信号(基準電圧及び/又は基準電流など)及び/又は電力に電路を提供するために、第1基板、第2基板、及び/又はテザーのそれぞれに形成されてよい。テザーは、第1基板と第2基板との間に電気的結合及び熱隔離をもたらす。テザーは、ポリイミドなど断熱材(熱隔離をもたらす)である基板を含んでよい。導電体は、金で形成されてよく、導電体は、第1基板と対応する第2基板との間でのデータ及び電力の伝送を促進する。
【0038】
少なくとも1つの電気回路は、はんだボール、又ははんだ膜若しくはエポキシなど別の接着剤によって第2基板に機械的に取り付けられてよい。少なくとも1つの電気回路は、はんだボール、導電性ボンドワイヤ、及び/又は導電性ボンドリボンによって、第2基板内の例えば伝送線に電気的に結合されてよい。あるいは、又は加えて、少なくとも1つの電気回路は、例えば従来の半導体加工によって第2基板に組み込まれてよく、かかる一体化により、(データ及び電力の伝送を促進するための)集積電気回路と、例えば第2基板の伝送線との機械的取り付け及び外部電気的結合が省かれる。
【0039】
図示される第1電気システム223Aは、少なくとも1つの第1電気回路226Aを含む。図示される第2電気システム223Bは、少なくとも1つの(at least on)第2電気回路226Bを含む。電気回路は、能動及び/又は受動電気装置であり得る。
【0040】
図示される第1電気システム223Aは、第1テザー228Aによって第2電気基板224Aに結合されている第1基板222Aを含む。図示される第2電気システム223Bは、第2テザー228Bによって第2電気基板224Bに結合されている第2基板222Bを含む。
【0041】
図3Aは、電気システム323Aの一実施形態の平面図を示す。電気システム323Aは、テザー328a、328b、328c、328dによって第2基板324に結合されている第1基板322を含む。任意追加的に、2つ以上のテザーが使用されて、第1基板から第2基板を支持し得る。しかしながら、第2基板は、1つ以上の他の支持構造によって支持され、0、1、又はそれ以上のテザーが使用されて、第1基板322を第2基板324に機械的、熱的、及び/又は電気的に結合してよい。そうでなければ、第2基板324は、空間又は空隙(例えば、2つのテザー間の実質的にパイ状の領域)によって分離され、これらの空間は、第1基板322と第2基板324との間に更なる熱隔離をもたらす。
【0042】
図3Bは、ヒートシンクシステム323Bを組み込む電気システムの一実施形態の平面図を示す。ヒートシンクシステム323Bは、第1基板322及び第2基板324とこれらの上にある構成要素との熱伝導性の低減を促進し、改善されたCSAC100の周囲温度の上昇時には、第2基板324及びその上にある構成要素は、より多くの熱エネルギーを第1基板に消散させて、第2基板324及びその上の構成要素の一定温度を容易に維持させ得る。
【0043】
ヒートシンクシステム323Bを組み込む電気システムは、テザー328a、328b、328c、328dによって第2基板324に結合されている第1基板322を含む。ヒートシンクシステムは、第2基板324上の電気回路を比較的一定の温度に維持するために使用される。次に記載するヒートシンクシステムはまた、電気回路、VCSEL102A、ガスセル102D、及び温度安定型物理システム102内の第2基板上の任意の他の構成要素を比較的一定の温度に維持するために温度安定型物理システム102で使用され得る。
【0044】
図示されるヒートシンクシステムは、受動ヒートシンクシステムである。受動ヒートシンクシステムは、より広範囲の周囲温度にわたって温度安定型システムの実質的に一定の設定点温度を維持する。結果として、より低コストの、より容易に入手可能な構成要素(温度変動による動作パラメータの変化の影響をより受けやすい)が温度安定型システムで使用され得る。また、温度安定型システムは、より高い周囲温度で動作し得る。
【0045】
ヒートシンクシステムは、第1基板322及び/又は第2基板324上に、又はこれらの内部に取り付けられる、少なくとも1つのリザーバ332を含む。教育的目的により、少なくとも1つのリザーバ332は、第1基板322に位置するものとして図示される。第1基板322及び1つ以上のテザー内の少なくとも1つのマイクロチャネル(又は複数のマイクロチャネル)334は、少なくとも1つのリザーバ332に結合されている。リザーバ及びマイクロチャネルの少なくとも一部は、流体、例えば、例えば水銀など液体金属、又は例えばガリンスタンなど液体共晶合金で充填される。
【0046】
改善されたCSAC100の周囲温度が上昇するに従って、マイクロチャネル内の流体は、リザーバが位置する基板に応じて、第1基板322から第2基板324の方へ、又はその逆へと広がる。結果として、第2基板324と第1基板322との熱隔離は低減される。したがって、第2基板322及びその上の構成要素は、より多くの熱エネルギーを第1基板322に消散させ得る。
【0047】
図3Cは、温度安定型物理システム又は温度安定型電子回路の例示的な作製方法300Aを示す。図3Cに示される方法300が図1A図3Bに示されるシステムにおいて実施されるものとして本明細書に記載される限りにおいて、他の実施形態が他の方法で実施され得ることが理解されるべきである。流れ図のブロックは、説明を容易にするために概して順次的に配置されている。しかしながら、この構成は単に例示的なものであり、方法(及び図に示されているブロック)に関連する処理は、異なる順序で起こり得る(例えば、ブロックに関連する処理のうちの少なくとも一部は、並行方式及び/又はイベント駆動方式で実行される)ことが理解されるべきである。
【0048】
ブロック380では、第1基板322上に第1層333aを有する第1基板322及び第2基板324上に第1層333aを有する第2基板324を、単一基板上に第1層333aを有する単一基板から形成する。例えば、単一基板はシリコンウェハである。第1層333aを有する第1基板322は、第1基板322と第2基板324との間の開口部によって、第1層333を有する第2基板324から分離されている。第1層333aは、ポリイミドなど誘電性又は他のタイプの材料であってよく、従来の堆積技術によって単一基板上に堆積されてよい。第1基板322及び第2基板324は、例えばドライエッチングなど従来のリソグラフィ及びエッチング技術を使用して、単一基板から形成されてよい。
【0049】
ブロック382では、第1基板322及び第2基板324のうちの少なくとも1つの上の第1層333に少なくとも1つの開口部335aを形成する。開口部335aは、例えばドライ又はウェットエッチングなど従来のリソグラフィ及びエッチング技術を使用して、単一基板から形成されてよい。
【0050】
ブロック384では、各開口部335aの下の第1基板322にリザーバ332を形成する。各リザーバ332は、例えばウェットエッチングなど従来のリソグラフィ及びエッチング技術を使用して、基板に形成されてよい。
【0051】
ブロック386では、例えば上記のような流体331で各リザーバ332を充填する。ブロック388では、ハンドルウェハ334上の第2層333bに少なくとも1つの凹部335bを形成する。第2層333bは、ポリイミドなど誘電性又は他のタイプの材料であってよい。ハンドルウェハ334は、シリコン基板など基板であってよい。凹部335bは、例えばドライ又はウェットエッチングなど従来のリソグラフィ及びエッチング技術を使用して、単一基板から形成されてよい。任意追加的に、剥離層337が第2層333bとハンドルウェハ334との間に配置される。剥離層は、従来の溶剤によって後で容易に除去されるフォトレジストであってよい。任意追加的に、導電体が、第2層333b上に、例えば第2層333bと剥離層337及び/又はハンドルウェハ334との間にパターン化されて、形成されてよい。
【0052】
ブロック390では、高温、例えば400C又はそれ以上でポリイミドをリフローすることにより、第2層333bを第1層333aに取り付ける。第1層333a及び第2層333bの結合は、第1基板322を第2基板324に接続する少なくとも1つのテザーを形成する。かかるテザーのうちの1つ以上は、流体331を許容し、流体331を受容するように構成されている、リザーバに結合されている少なくとも1つの毛細管336を含む。ブロック392では、例えば溶剤、例えばアセトンにハンドルウェハ及び剥離層337を浸すことによって、剥離層を活性化してハンドルウェハ334を剥離させることにより、又はハンドルウェハの研削若しくはエッチングのうちの少なくとも1つによりハンドルウェハ334を取り外す。
【0053】
図3Dは、温度安定型物理システム又は温度安定型電子回路の例示的な作製方法300Bを示す。図3Dに示される方法300が図1A図3Bに示されるシステムにおいて実施されるものとして本明細書に記載される限りにおいて、他の実施形態が他の方法で実施され得ることが理解されるべきである。流れ図のブロックは、説明を容易にするために概して順次的に配置されている。しかしながら、この構成は単に例示的なものであり、方法(及び図に示されているブロック)に関連する処理は、異なる順序で起こり得る(例えば、ブロックに関連する処理のうちの少なくとも一部は、並行方式及び/又はイベント駆動方式で実行される)ことが理解されるべきである。
【0054】
ブロック362では、CSACの(例えば温度安定型電子回路及び/又は温度安定型物理システムなどCSAC内の熱隔離されているシステムの)周囲温度の上昇時に、流体は、温度上昇による流体の熱膨張のために、少なくとも1つのリザーバから離れて、すなわち熱隔離されているサブシステムに向かって、又はそこから離れて広がる。したがって、例えば、リザーバの周囲温度の温度上昇は、リザーバを含むCSACの温度安定型システムの周囲温度の上昇のために上昇する。
【0055】
温度安定型システムは、熱隔離されていないサブシステムと、熱隔離されているサブシステムと、を含む。任意追加的に、熱隔離されていないサブシステム及び熱隔離されているサブシステムは、それぞれ第1基板322(及び第1基板322上又はその内部の任意の構成要素)及び第2基板324(及び第2基板324上又はその内部の任意の構成要素)であり、熱隔離されていないサブシステム及び熱隔離されているサブシステムは、テザー及び/又は真空などの物質(及び/又はその欠如)によって熱隔離されている。
【0056】
任意追加的に、流体は、物質、例えば熱隔離されているサブシステムと熱隔離されていないサブシステムとを接続するテザー内の少なくとも1つの毛細管を通って流れる。結果として、熱隔離されているサブシステムと熱隔離されていないサブシステムとの熱隔離は低減する。したがって、より多くの熱エネルギーが、熱隔離されているサブシステム上又はその内部の構成要素、例えば電気回路から熱隔離されていないサブシステム(したがって外部環境)に移動され得る。ブロック364では、流体を通して熱隔離されているサブシステムから熱隔離されていないサブシステムに熱エネルギーを消散させることにより、熱隔離されているサブシステムの実質的に一定の設定点温度を維持する。
【0057】
任意追加的に、例えば温度安定型システムのリザーバにおける、CSACの周囲温度の低下時には、流体は、温度低下による熱収縮のために、少なくとも1つのリザーバに向かって引き出される。したがって、より少ない熱エネルギーが、熱隔離されているサブシステム上又はその内部の構成要素、例えば電気回路から外部環境に移動され得、結果として、熱隔離されているサブシステムの実質的に一定の設定点温度が維持される。
【0058】
任意追加的に、CSACの周囲温度が変動する、例えば上下するに従って、流体は、上記のように、熱隔離されているサブシステムと熱隔離されていないサブシステムとを接続するテザー内の物質、例えば少なくとも1つの毛細管を通って流れる。結果として、熱隔離されているサブシステムと熱隔離されていないサブシステムとの熱隔離は、周囲温度と共に変動する。結果として、熱隔離されているサブシステムの実質的に一定の設定点温度が維持される。
【0059】
図4は、蒸気セルを使用する、改善されたチップスケール原子時計(改善されたCSAC)400の一実施形態の断面図を示す。改善されたCSAC400は、温度安定型物理システム402と、温度安定型電子回路404と、非温度安定型電子回路406と、を含む。温度安定型物理システム402は第1磁気シールド448Aで包囲されて、周囲磁場がガスセル102Dに入らないようにし、磁場コイルによって生成される場が温度安定型物理システム402から出ないようにする。温度安定型物理システム402は、例えばはんだボール442によって第1CSAC基板440Aに電気的に結合され、機械的に取り付けられる。温度安定型電子回路404は、例えばはんだボール442によって第2CSAC基板440Bに電気的に結合され、機械的に取り付けられる。非温度安定型電子回路406は、例えばはんだボール442によって第3CSAC基板440Cに電気的に結合され、機械的に取り付けられる。
【0060】
任意追加的に、温度安定型物理システム402及び温度安定型電子回路404は、パッケージ448Bによって包囲され、このパッケージは第2磁気シールドであって、温度安定型物理システム402及び温度安定型電子回路404を、例えば環境及び非温度安定型電子回路406からの電磁ノイズから更に保護してよい。第1CSAC基板440A及び第2CSAC基板440Bは、フレキシブル回路基板446Aなど第1CSAC相互接続子によって電気的に結合されている。第2CSAC基板440B及び第3CSAC基板440Cは、第3フレキシブル回路基板446Bによって電気的に結合されている。本明細書に記載の磁気シールドは、極めて高い透磁率を有するニッケル-鉄軟強磁性合金であるミューメタルで作製されてよい。
【0061】
任意追加的に、温度安定型電子回路404は、第3磁気シールド448Cで別個に包囲される。温度安定型電子回路404は、温度安定型物理システム402の動作に悪影響を及ぼし得る電磁エネルギーを放出する。温度安定型物理システム402は第1磁気シールド448Aで包囲されているものの、電磁エネルギーは、例えば配線用の孔のために、第1磁気シールド448A内の温度安定型物理システム402に侵入し得る。したがって、第3磁気シールド448Cで温度安定型電子回路404を包囲することにより、温度安定型物理システム402は、かかる電磁エネルギーから更に隔離される。
【0062】
例示的実施形態
実施例1は、温度安定型物理システムであって、蒸気セル及び磁場コイルを含み、磁気シールドで包囲されている温度安定型物理システムと、温度安定型物理システムに電気的に結合されている温度安定型電子回路と、を含むチップスケール原子時計(CSAC)を含む。
【0063】
実施例1のCSACは、温度安定型物理システム及び温度安定型電子回路のうちの少なくとも1つに電気的に結合されている、非温度安定型電子回路を更に含む。
【0064】
実施例2のCSACであって、非温度安定型電子回路は、制御回路及び電力調整回路のうちの少なくとも1つを含む。
【0065】
実施例4は実施例3のCSACを含み、非温度安定型電子回路は、水晶発振器、位相同期ループ、少なくとも1つのヒータ電流制御回路、及び少なくとも1つのコイル電流制御回路のうちの少なくとも1つを更に含む。
【0066】
実施例5は実施例4のCSACを含み、非温度安定型電子回路は、少なくとも1つのデジタルアナログ変換器及び少なくとも1つのヒータのうちの少なくとも1つを更に含む。
【0067】
実施例6は実施例1~5のいずれかのCSACを含み、第2磁気シールドは、温度安定型電子回路のみを包囲する。
【0068】
実施例7は実施例1~6のいずれかのCSACを含み、第3磁気シールドは、温度安定型物理システム及び温度安定型電子回路を包囲する。
【0069】
実施例8は実施例1のCSACを含み、温度安定型電子回路及び温度安定型物理システムのうちの少なくとも1つは、受動ヒートシンクを更に含む。
【0070】
実施例9は実施例8のCSACを含み、温度安定型電子回路及び温度安定型物理システムのうちの少なくとも1つは、第1基板と、第2基板と、第2基板に取り付けられた構成要素と、第1基板及び第2基板を結合する少なくとも1つのテザーと、を含み、少なくとも1つの受動ヒートシンクは、少なくとも1つのテザーのうちの少なくとも1つの内部又はその上にある少なくとも1つの毛細管と、少なくとも1つの毛細管のそれぞれに結合されている少なくともリザーバと、を含み、少なくとも1つのリザーバは液体を格納するように構成されており、少なくとも1つのリザーバは、第1基板及び第2基板のうちの少なくとも1つの内部又はその上に取り付けられ、液体は、CSACの周囲温度の変動時に少なくとも1つの毛細管のそれぞれを通って流れるように構成されている。
【0071】
実施例10は実施例9のCSACを含み、第1基板及び第2基板はシリコンを含み、少なくとも1つの毛細管は誘電体中に凹部を含む。
【0072】
実施例11は実施例9~10のうちのいずれかのCSACを含み、テザー上に形成された導電体は、第1基板を第2基板に電気的に結合する。
【0073】
実施例12は、実施例1~11のうちのいずれかのCSACを含み、温度安定型電子回路は、第1基板と、第2基板と、第2基板上に取り付けられた少なくとも1つの電気構成要素と、第1基板と第2基板との間に結合され、第1基板を第2基板から熱隔離するように構成されている、少なくとも1つのテザーと、本体と、を含み、第1基板は本体に取り付けられ、蓋は本体に取り付けられ、第1基板、第2基板、少なくとも1つの電気構成要素、及び少なくとも1つのテザーは、蓋及び本体によって包囲される。
【0074】
実施例13は実施例12のCSACを含み、蓋は本体に対して密封され、第1基板、第2基板、少なくとも1つの電気構成要素、及び少なくとも1つのテザーは、蓋及び本体によって密閉される。
【0075】
実施例14は実施例12~13のいずれかのCSACを含み、テザーは、第1基板及び第2基板を導電結合する、少なくとも1つの導電体を含む。
【0076】
実施例15は、チップスケール原子時計(CSAC)の周囲温度の上昇時に、熱膨張のために、少なくとも1つのリザーバから、温度安定型電子回路及び温度安定型物理システムのうちの少なくとも1つの内部で熱隔離されているサブシステムに向かって、又はこれから離れて流体を広げることであって、CSACは、温度安定型電子回路と、温度安定型物理システムと、を含み、互いから熱隔離されている、熱隔離されていないサブシステム及び熱隔離されているサブシステムをそれぞれ含む、ことと、流体を通して熱隔離されているサブシステムから熱隔離されていないサブシステムに消散される熱エネルギーを増加させることにより温度安定型電子回路及び温度安定型物理システムのうちの少なくとも1つにおいて熱隔離されているサブシステムの実質的に一定の設定点温度を維持することであって、実質的に一定の設定点温度が、CSACの安定度を低減しない温度範囲内の温度を意味する、ことと、を含む、方法を含む。
【0077】
実施例16は実施例15の方法を含み、少なくとも1つのリザーバから離れて流体を広げることは、流体が少なくとも1つのテザー内の少なくとも1つの毛細管を通って流れることを含み、少なくとも1つの毛細管は少なくとも1つのリザーバに結合されている。
【0078】
実施例17は実施例15~16のいずれかの方法を含み、CSACの周囲温度を上昇させることと、熱収縮のために、少なくとも1つのリザーバに向かって、熱隔離されているサブシステムから離れて又はそこに向かって流体を後退させることと、流体を通して熱隔離されているサブシステムから熱隔離されていないサブシステムに消散する熱エネルギーを低減させることにより熱隔離されているサブシステムの実質的に一定の設定点温度を維持することと、を更に含む。
【0079】
実施例18は、チップスケール原子時計(CSAC)の温度安定型電子回路又は温度安定型物理システム内に受動ヒートシンクを形成する方法であって、第1基板上の第1層を有する第1基板及び第2基板上の第1層を有する第2基板を、単一基板上に第1層を有する単一基板から形成することと、第1基板及び第2基板のうちの少なくとも1つの上の第1層に少なくとも1つの開口部を形成することと、各開口部の下にリザーバを形成することと、各リザーバを流体で充填することと、ハンドルウェハ上の第2層に少なくとも1つの凹部を形成することと、第2層を第1層に取り付けることと、ハンドルウェハを取り外すことと、を含む、方法を含む。
【0080】
実施例19は実施例18の方法を含み、各リザーバを流体で充填することは、各リザーバを液体金属又は共晶金属合金で充填することを含む。
【0081】
実施例20は、実施例18~19のいずれかの方法を含み、ハンドルウェハを取り外すことは、ハンドルウェハの研削又はエッチングのうちの少なくとも1つを含む。
【0082】
本教示は1つ以上の実施例に関して図示されてきたが、図示される実施例に関する変更及び/又は修正は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく行われ得る。加えて、本開示の特定の特徴はいくつかの実施例のうちの1つのみに関してのみ説明されている場合があるが、かかる特徴は、任意の所定の、又は特定の機能にとって望ましく、有利であり得るために、他の実施例の1つ以上の特徴と組み合わされ得る。更に、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「と共に(with)」などの用語又はこれらの変形が「発明を実施するための形態」及び「特許請求の範囲」のいずれかで使用される限りにおいて、かかる用語は、「含む(comprising)」という用語と同様に包括的であることが意図される。「のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という用語は、列挙された項目のうちの1つ以上が選択され得ることを意味するために使用される。本明細書で使用される場合、例えば、A及びB、又はA及び/若しくはBなど項目の列挙に関する「のうちの1つ以上(one or more)」という用語は、Aのみ、Bのみ、又はA及びBを意味する。「のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という用語は、列挙された項目のうちの1つ以上が選択され得ることを意味するために使用される。
【0083】
「約(about)」又は「実質的に(substantially)」という用語は、変更が図示される実施形態に対するプロセス又は構造の不適合をもたらさない限り、指定された値又はパラメータは若干変更され得ることを示す。最後に、「例示的な(exemplary)」は、説明が理想であることを暗示するのではなく、実施例として使用されることを示す。本明細書では特定の実施形態が図示され、説明されているが、当業者には、示される特定の実施形態の代わりに、同一の目的を達成することが予測される任意の構成が用いられ得ることが理解されよう。したがって、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが明らかに意図されている。
【0084】
本出願で使用される相対位置の用語は、配向に関係なく、デバイス、ウェハ、又は基板の従来の平面又は作業面に平行な平面、又は「同一平面上(coplanar)」という用語の場合にはこれらと同じ平面に基づいて定義される。本出願で使用される「水平(horizontal)」又は「横方向(lateral)」という用語は、配向に関係なく、デバイス、ウェハ、又は基板の従来の平面又は作業面に平行な平面として定義される。「垂直(vertical)」という用語は、水平に対して垂直な方向を指す。「上(on)」、「側(side)(「側壁」のような)」、「高い(higher)」、「低い(lower)」、「上(over)」、「上(top)」、及び「下(under)」などの用語は、配向に関係なく、デバイス、ウェハ、又は基板の上面である、従来の平面又は作業面に関して定義される。本出願で使用される「同一平面上(coplanar)」という用語は、配向に関係なく、デバイス、ウェハ、又は基板の従来の平面又は作業面と同じ平面内の平面として定義される。
【0085】
本明細書では特定の実施形態が図示され、説明されているが、当業者には、示される特定の実施形態の代わりに、同一の目的を達成することが予測される任意の構成が用いられ得ることが理解されよう。したがって、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが明らかに意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4