(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】共通基準信号に対するマルチチップタイミングアライメント
(51)【国際特許分類】
H03L 7/08 20060101AFI20240527BHJP
H03K 5/133 20140101ALN20240527BHJP
【FI】
H03L7/08 240
H03K5/133
(21)【出願番号】P 2019103491
(22)【出願日】2019-06-03
【審査請求日】2022-03-16
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519383544
【氏名又は名称】アナログ・ディヴァイシス・インターナショナル・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ディーン ウォマック
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マイケル スティーブンソン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ウィリアム エゼル
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0008551(US,A1)
【文献】特開2005-316879(JP,A)
【文献】特開平11-088156(JP,A)
【文献】特開2004-072714(JP,A)
【文献】特開昭61-186024(JP,A)
【文献】実開昭54-066759(JP,U)
【文献】特開2005-012471(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105099446(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0055357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 7/08
H03K 5/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に連結され、基準周波数信号を受信し、かつ前記入力端子からの基準信号経路に沿って分周された基準信号を発生するように構成されている、基準分周回路と、
位相同期ループ(PLL)回路であって、
前記分周された基準信号を受信し、かつ、
帰還信号経路に沿って前記PLLへの入力への分周された帰還信号を前記分周された基準信号に基づいて発生し、出力端子への出力発振信号を発生する
ように構成された、位相同期ループ(PLL)回路と、
前記PLL回路に連結され、前記分周された帰還信号の遷移エッジが前記分周された基準信号の遷移エッジと揃うように、調整された位相で前記分周された基準信号を前記分周された帰還信号とアライメントをとるために前記基準分周回路の前記基準信号経路を通る経路遅延
量を、プログラム可能な遅延で補償することによって、前記分周された帰還信号の位相を調整するように構成されているタイミングアライメント回路であって、前記タイミングアライメント回路は、前記基準分周回路の前記基準信号経路を通る前記経路遅延量を複製する1つ以上の遅延構成要素を備える、タイミングアライメント回路と、を備え、
前記PLL回路は、
前記分周された基準信号と分周された帰還信号とを受信し、誤差信号を提供するように構成されている誤差検出回路と、
前記誤差信号を受信し、前記誤差信号に基づいて前記出力発振信号を発生するように構成されている電圧制御発振器(VCO)回路と、
前記VCO回路から前記出力発振信号を受信し、前記誤差検出回路への前記帰還信号経路に沿って前記分周された帰還信号を生成するように構成されている帰還分周回路と、を備え、
前記タイミングアライメント回路は、前記誤差検出回路への入力に連結され、
前記VCO回路の出力に連結され、前記VCO回路からの前記出力発振信号に基づいて分周された出力タイミング信号を発生するように構成されている出力分周回路、をさらに備え、
前記VCO回路の前記出力から前記出力分周回路を通る経路遅延は、前記VCO回路の前記出力から前記帰還分周回路の前記帰還信号経路を通る経路遅延に対応し、
前記基準分周回路は、前記入力端子と前記誤差検出回路への第1の入力とに連結され、前記基準分周回路は、前記入力端子と前記誤差検出回路の前記第1の入力との間に前記基準信号経路を提供し、
前記帰還分周回路は、前記VCO回路の前記出力と前記タイミングアライメント回路への入力とに連結され、前記帰還分周回路は、前記VCO回路の前記出力と前記タイミングアライメント回路への前記入力との間の前記帰還信号経路を通して前記分周された帰還信号を提供し、
前記出力分周回路は、出力端子に連結され、前記VCO回路の前記出力と前記出力端子との間の出力分周信号経路を通して前記出力発振信号を提供し、
前記タイミングアライメント回路は、前記基準信号経路の遅延と、前記帰還信号経路と前記出力分周信号経路との間のタイミング差とを補償する
装置。
【請求項2】
前記タイミングアライメント回路が、前記入力端子と前記誤差検出回路の前記第1の入力との間に連結されている、請求
項1に記載の装置。
【請求項3】
前記タイミングアライメント回路が、前記VCO回路の出力と前記誤差検出回路への第2の入力との間に連結されている、請求
項1に記載の装置。
【請求項4】
前記タイミングアライメント回路が、前記帰還分周回路の出力へおよび前記誤差検出回路の前記第2の入力へ連結されている、請求
項3に記載の装置。
【請求項5】
前記タイミングアライメント回路が、前記VCO回路の前記出力へおよび前記帰還分周回路への入力へ連結されている、請求
項3に記載の装置。
【請求項6】
前記PLL回路は、
前記帰還分周回路および前記タイミングアライメント回路に連結されたマルチプレクサ、を備え、前記マルチプレクサは、前記タイミングアライメント回路からの遅延補償出力信号をバイパスし、受信した選択信号に基づいて前記分周された帰還信号を前記誤差検出回路に渡すように構成されている、請求
項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記タイミングアライメント回路内の前記1つ以上の遅延構成要素の各々は、前記基準信号経路に沿った複数の遅延構成要素のうちの1つに対応する、請求項1
~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記基準分周回路および前記タイミングアライメント回路に連結され、同じバイアス信号を前記基準分周回路および前記タイミングアライメント回路に駆動するように構成されているバイアス回路、をさらに備える、請求項1
~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記バイアス回路は、前記タイミングアライメント回路の前記1つ以上の遅延構成要素のそれぞれの制御端子に前記バイアス信号を駆動するように構成され、前記バイアス信号の各々は、前記基準信号経路上の対応する遅延構成要素に送られる第2のバイアス電圧に対応する第1のバイアス電圧で駆動される、請求
項8に記載の装置。
【請求項10】
クロック発生システムであって、
入力端子に連結され、基準周波数信号を受信し、かつ分周された基準信号を発生するように構成されている基準分周回路と、
位相同期ループ(PLL)回路であって、
前記分周された基準信号を受信し、
帰還信号経路に沿って前記PLLへの入力への分周された帰還信号を前記分周された基準信号に基づいて発生し、前記分周された帰還信号と出力端子への出力発振信号とを提供するように構成された、位相同期ループ(PLL)回路と、
前記出力発振信号を受信して、前記基準周波数信号の周波数の関数である分周された出力タイミング信号を個別に発生するように構成されている複数の出力分周器と、
前記PLL回路に連結され、前記基準周波数信号の遷移エッジが前記分周された帰還信号の遷移エッジと揃うように、調整された位相で前記分周された基準信号を前記分周された帰還信号とアライメントをとるために前記基準分周回路の基準信号経路を通る経路遅延
量を、プログラム可能な遅延で補償することによって、前記分周された帰還信号の位相を調整するように構成されているタイミングアライメント回路であって、前記タイミングアライメント回路は、前記基準分周回路の前記基準信号経路を通る前記経路遅延量を複製する1つ以上の遅延構成要素を備える、タイミングアライメント回路と、を備
え、
前記PLL回路は、
前記分周された基準信号と分周された帰還信号とを受信し、誤差信号を提供するように構成されている誤差検出回路と、
前記誤差信号を受信し、前記出力発振信号を発生するように構成されている電圧制御発振器(VCO)回路と、
前記VCO回路から前記出力発振信号を受信し、前記誤差検出回路への負帰還信号経路に沿って前記分周された帰還信号を発生するように構成されている帰還分周回路と、を備え、
前記タイミングアライメント回路は、前記誤差検出回路への入力に連結され、
前記VCO回路の出力から前記複数の出力分周器の各々を通るそれぞれの経路遅延は、前記VCO回路の前記出力から前記帰還分周回路を通る経路遅延に対応し、
前記基準分周回路は、前記入力端子と前記誤差検出回路への第1の入力とに連結され、前記基準分周回路は、前記入力端子と前記誤差検出回路の前記第1の入力との間に前記基準信号経路を提供し、
前記帰還分周回路は、前記VCO回路の前記出力と前記タイミングアライメント回路への入力とに連結され、前記帰還分周回路は、前記VCO回路の前記出力と前記タイミングアライメント回路への前記入力との間の前記帰還信号経路を通して前記分周された帰還信号を提供し、
前記複数の出力分周器は、出力端子に連結され、前記VCO回路の前記出力と前記出力端子との間の出力分周信号経路を通して前記出力発振信号を提供し、
前記タイミングアライメント回路は、前記基準信号経路の遅延と、前記帰還信号経路と前記出力分周信号経路との間のタイミング差とを補償する
クロック発生システム。
【請求項11】
前記タイミングアライメント回路が、前記入力端子と前記誤差検出回路への第1の入力との間に連結されてい
る
請求
項10に記載のクロック発生システム。
【請求項12】
前記タイミングアライメント回路が、前記VCO回路の出力と前記誤差検出回路への第2の入力との間に連結されてい
る
請求
項10また
は11に記載のクロック発生システム。
【請求項13】
前記タイミングアライメント回路が、前記帰還分周回路の出力へおよび前記誤差検出回路の前記第2の入力へ連結されてい
る
請求
項12に記載のクロック発生システム。
【請求項14】
前記タイミングアライメント回路が、前記VCO回路の前記出力へおよび前記帰還分周回路への入力へ連結されてい
る
請求
項12に記載のクロック発生システム。
【請求項15】
基準分周回路において、入力端子で基準周波数信号を受信し、前記入力端子からの基準信号経路に沿って分周された基準信号を提供するための手段と、
帰還分周回路において、前記分周された基準信号を受信し、帰還信号経路に沿った分周された帰還信号
を提供するための手段と、
前記分周された基準信号の位相と、前記分周された帰還信号の位相との差に基づいた電圧駆動発振によって、出力端子への出力発振信号を発生させて出力端子に提供するための手段と、
PLL回路に連結されるタイミングアライメント回路において、前記基準信号経路を通る前記入力端子からの経路遅延量を前記帰還信号経路に沿って配置された1つ以上の遅延構成要素で複製し、前記分周された帰還信号の位相を、前記基準信号経路を通る前記経路遅延
量を、プログラム可能な遅延で補償することによって調整し、前記分周された帰還信号の遷移エッジが前記分周された基準信号の遷移エッジと揃うように、前記調整された位相で前記分周された基準信号を前記分周された帰還信号とアライメントをとるための手段と、を
含む装置であって、
前記分周された帰還信号を提供するための前記手段は、前記分周された基準信号に基
づき、
前記分周された基準信号を受信し、帰還信号経路に沿った分周された前記帰還信号を提供するための手段は、
誤差検出回路において、前記分周された基準信号と分周された帰還信号とを受信し、誤差信号を提供し、
電圧制御発振器(VCO)回路において、前記誤差信号を受信し、前記誤差信号に基づいて前記出力発振信号を発生し、
前記VCO回路から前記出力発振信号を受信し、前記誤差検出回路への前記帰還信号経路に沿って前記分周された帰還信号を生成し、
前記タイミングアライメント回路は前記誤差検出回路への入力に連結され、
前記装置は、前記VCO回路の出力に連結された出力分周回路において、前記VCO回路からの前記出力発振信号に基づいて分周された出力タイミング信号を発生するための手段をさらに備え、
前記VCO回路の前記出力から前記出力分周回路を通る経路遅延は、前記VCO回路の前記出力から前記帰還分周回路の前記帰還信号経路を通る経路遅延に対応し、
前記基準分周回路は、前記入力端子と前記誤差検出回路への第1の入力とに連結され、前記基準分周回路は、前記入力端子と前記誤差検出回路の前記第1の入力との間に前記基準信号経路を提供し、
前記帰還分周回路は、前記VCO回路の前記出力と前記タイミングアライメント回路への入力とに連結され、前記帰還分周回路は、前記VCO回路の前記出力と前記タイミングアライメント回路への前記入力との間の前記帰還信号経路を通して前記分周された帰還信号を提供し、
前記出力分周回路は、出力端子に連結され、前記VCO回路の前記出力と前記出力端子との間の出力分周信号経路を通して前記出力発振信号を提供し、
前記タイミングアライメント回路は、前記基準信号経路の遅延と、前記帰還信号経路と前記出力分周信号経路との間のタイミング差とを補償する
装置。
【請求項16】
基準分周回路において、入力端子で前記入力端子からの基準信号経路に沿って基準周波数信号を受信するための手段と、
前記受信した基準周波数信号に基づいて、前記基準信号経路に沿って分周された基準信号を提供するための手段と、
帰還分周回路において、前記分周された基準信号を受信し、前記受信した基準周波数信号に基づいて帰還信号経路に沿って分周された帰還信号を提
供するための手段と、
前記分周された基準信号の位相と、前記分周された帰還信号の位相との差に基づいた電圧駆動発振によって、出力発振信号を
発生させて出力端子に提供するための手段と、
PLL回路に連結されるタイミングアライメント回路において前記帰還信号経路に沿った経路遅延量を前記基準信号経路に沿って配置された1つ以上の遅延構成要素で複製し、前記基準周波数信号の位相を、前記帰還信号経路を通る前記経路遅延
量を、プログラム可能な遅延で補償することによって調整し、前記基準周波数信号の遷移エッジが前記分周された帰還信号の遷移エッジと揃うように、前記調整された位相で前記基準周波数信号を前記分周された帰還信号とアライメントをとるための手段と、
を
含む装置であって、
前記分周された帰還信号を提供するための前記手段は、前記分周された基準信号に基
づき、
前記分周された基準信号を受信し、帰還信号経路に沿った分周された前記帰還信号を提供するための手段は、
誤差検出回路において、前記分周された基準信号と分周された帰還信号とを受信し、誤差信号を提供し、
電圧制御発振器(VCO)回路において、前記誤差信号を受信し、前記誤差信号に基づいて前記出力発振信号を発生し、
前記VCO回路から前記出力発振信号を受信し、前記誤差検出回路への前記帰還信号経路に沿って前記分周された帰還信号を生成し、
前記タイミングアライメント回路は前記誤差検出回路への入力に連結され、
前記装置は、前記VCO回路の出力に連結された出力分周回路において、前記VCO回路からの前記出力発振信号に基づいて分周された出力タイミング信号を発生するための手段をさらに備え、
前記VCO回路の前記出力から前記出力分周回路を通る経路遅延は、前記VCO回路の前記出力から前記帰還分周回路の前記帰還信号経路を通る経路遅延に対応し、
前記基準分周回路は、前記入力端子と前記誤差検出回路への第1の入力とに連結され、前記基準分周回路は、前記入力端子と前記誤差検出回路の前記第1の入力との間に前記基準信号経路を提供し、
前記帰還分周回路は、前記VCO回路の前記出力と前記タイミングアライメント回路への入力とに連結され、前記帰還分周回路は、前記VCO回路の前記出力と前記タイミングアライメント回路への前記入力との間の前記帰還信号経路を通して前記分周された帰還信号を提供し、
前記出力分周回路は、出力端子に連結され、前記VCO回路の前記出力と前記出力端子との間の出力分周信号経路を通して前記出力発振信号を提供し、
前記タイミングアライメント回路は、前記基準信号経路の遅延と、前記帰還信号経路と前記出力分周信号経路との間のタイミング差とを補償する
装置。
【請求項17】
前記基準周波数信号は、前記入力端子で受信されたのと同じ周波数で前記基準信号経路を通して位相同期ループの入力に渡される、請求
項15また
は16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、概してクロック発生システムに関し、より具体的には、共通基準信号に対するマルチチップタイミングアライメントに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、クロック信号によって駆動されるアナログ-デジタル変換器においてデータサンプリングイベントを合わせるとき、タイミング信号の同期が期待される。同様に、強め合う干渉を達成するために異なる搬送無線波を位相合わせするために、タイミング信号の同期が期待される。使用するクロック信号の数またはクロックされるデバイス間の空間的分離のいずれかのために、複数のクロッキングデバイスを共通の時間または位相に合わせることを期待する多くのシステムがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
主題技術は、クロック分配を有する位相同期ループ(PLL)におけるタイミングミスアライメントを解消することを提供する。出力の立ち上がりエッジが入力の立ち上がりエッジと同時に生じるようにしてミスアライメントが解消される。この点において、入力立ち上がりエッジと出力立ち上がりエッジとの間の何らかのオフセットは、追加された遅延が出力の立ち上がりエッジをプッシュ/プルして入力の立ち上がりエッジと揃うように、PLLの帰還ループに遅延を追加することで低減することができる。主題技術は、入力基準信号経路と同じ回路構成およびバイアス回路を使用して、PLLへの入力基準信号経路に沿って経験する遅延量をできるだけ近づけて複製する。例えば、複製回路を含むタイミングアライメント回路は、帰還ループ遅延を基準経路遅延と一致させるために、負帰還ループ信号に補償遅延を追加する。基準信号経路の遅延が推定され、複製回路に追加される。これら2つの経路の遅延特性は、入力基準信号および帰還ループ信号の位相がPLLへの入力において位相同期されるように互いに打ち消し合う。
【0004】
本開示の実施形態によれば、共通基準信号に対するタイミングアライメントのための装置が提供される。本装置は、入力端子に連結され、基準周波数信号を受信し、かつ入力端子からの基準信号経路に沿って分周された基準信号を発生するように構成された基準分周回路を含む。本装置は、分周された基準信号を受信し、かつ帰還信号経路に沿ってPLLへの入力への分周された帰還信号と、出力端子への出力発振信号とを発生するように構成された位相同期ループ(PLL)回路を含む。本装置は、PLL回路に連結され、調整された位相で分周された基準信号を分周された帰還信号とアライメントをとるために基準分周回路の基準信号経路を通る経路遅延量に比例する所定量の遅延で分周された帰還信号の位相を調整するように構成されているタイミングアライメント回路を含む。いくつかの態様では、タイミングアライメント回路は、基準分周回路の基準信号経路を通る経路遅延量を複製する1つ以上の遅延構成要素を含む。
【0005】
本開示の一実施形態によれば、クロック発生システムは、入力端子に連結され、基準周波数信号を受信し、かつ分周された基準信号を提供するように構成された基準分周回路を含む。クロック発生システムは、分周された基準信号を受信し、かつ帰還信号経路に沿ってPLLへの入力への分周された帰還信号と出力端子への出力発振信号とを発生するように構成された位相同期ループ(PLL)回路を含む。クロック発生システムは、出力発振信号を受信して、基準周波数信号の周波数の関数である分周された出力タイミング信号を個別に発生するように構成されている複数の出力分周器を含む。クロック発生システムは、PLL回路に連結され、調整された位相で分周された基準信号を分周された帰還信号とアライメントをとるために基準分周回路の基準信号経路を通る経路遅延量に比例する所定量の遅延で分周された帰還信号の位相を調整するように構成されているタイミングアライメント回路を含む。いくつかの態様では、タイミングアライメント回路は、基準分周回路の基準信号経路を通る経路遅延量を複製する1つ以上の遅延構成要素を含む。
【0006】
本開示の実施形態によれば、共通基準信号に対するタイミングアラインメントのための装置が提供される。装置は、入力端子で基準周波数信号を受信し、入力端子からの基準信号経路に沿って分周された基準信号を提供するための手段を含む。装置は、分周された基準信号を受信し、帰還信号経路に沿った分周された帰還信号と出力端子への出力発振信号とを提供するための手段を含む。装置は、基準信号経路を通る入力端子からの経路遅延量を帰還信号経路に沿って配置された1つ以上の遅延構成要素で複製し、分周された帰還信号の位相を、基準信号経路の基準信号経路を通る経路遅延量に比例する所定量の遅延で調整し、分周された帰還信号の遷移エッジが分周された基準信号の遷移エッジと揃うように、調整された位相で分周された基準信号を分周された帰還信号とアライメントをとるための手段を含む。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
共通基準信号に対するタイミングアラインメントのための装置であって、上記装置は、
入力端子に連結され、基準周波数信号を受信し、かつ上記入力端子からの基準信号経路に沿って分周された基準信号を発生するように構成されている、基準分周回路と、
位相同期ループ(PLL)回路であって、上記分周された基準信号を受信し、かつ帰還信号経路に沿って上記PLLへの入力への分周された帰還信号と、出力端子への出力発振信号とを発生するように構成された、位相同期ループ(PLL)回路と、
上記PLL回路に連結され、調整された位相で上記分周された基準信号を上記分周された帰還信号とアライメントをとるために上記基準分周回路の上記基準信号経路を通る経路遅延量に比例する所定量の遅延で上記分周された帰還信号の位相を調整するように構成されているタイミングアライメント回路であって、上記タイミングアライメント回路は、上記基準分周回路の上記基準信号経路を通る上記経路遅延量を複製する1つ以上の遅延構成要素を備える、タイミングアライメント回路と、を備える、装置。
(項目2)
上記PLL回路は、
上記分周された基準信号と分周された帰還信号とを受信し、誤差信号を提供するように構成されている誤差検出回路と、
上記誤差信号を受信し、上記誤差信号に基づいて上記出力発振信号を発生するように構成されている電圧制御発振器(VCO)回路と、
上記VCO回路から上記出力発振信号を受信し、上記誤差検出回路への上記帰還信号経路に沿って上記分周された帰還信号を生成するように構成されている帰還分周回路と、を備え、
上記タイミングアライメント回路は、上記誤差検出回路への入力に連結されている、上記項目に記載の装置。
(項目3)
上記VCO回路の出力に連結され、上記VCO回路からの上記出力発振信号に基づいて分周された出力タイミング信号を発生するように構成されている出力分周回路、をさらに備え、
上記VCO回路の上記出力から上記出力分周回路を通る経路遅延は、上記VCO回路の上記出力から上記帰還分周回路の上記帰還信号経路を通る経路遅延に対応する、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目4)
上記基準分周回路は、上記入力端子と上記誤差検出回路への第1の入力とに連結され、上記基準分周回路は、上記入力端子と上記誤差検出回路の上記第1の入力との間に上記基準信号経路を提供し、
上記帰還分周回路は、上記VCO回路の上記出力と上記タイミングアライメント回路への入力とに連結され、上記帰還分周回路は、上記VCO回路の上記出力と上記タイミングアライメント回路への上記入力との間の上記帰還信号経路を通して上記分周された帰還信号を提供し、
上記出力分周回路は、出力端子に連結され、上記VCO回路の上記出力と上記出力端子との間の出力分周信号経路を通して上記出力発振信号を提供し、
上記タイミングアライメント回路は、上記基準信号経路の遅延と、上記帰還信号経路と上記出力分周信号経路との間のタイミング差とを補償する、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目5)
上記タイミングアライメント回路が、上記入力端子と上記誤差検出回路の上記第1の入力との間に連結されている、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目6)
上記タイミングアライメント回路が、上記VCO回路の出力と上記誤差検出回路への第2の入力との間に連結されている、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目7)
上記タイミングアライメント回路が、上記帰還分周回路の出力へおよび上記誤差検出回路の上記第2の入力へ連結されている、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目8)
上記タイミングアライメント回路が、上記VCO回路の上記出力へおよび上記帰還分周回路への入力へ連結されている、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目9)
上記PLL回路は、
上記帰還分周回路および上記タイミングアライメント回路に連結されたマルチプレクサ、を備え、上記マルチプレクサは、上記タイミングアライメント回路からの遅延補償出力信号をバイパスし、受信した選択信号に基づいて上記分周された帰還信号を上記誤差検出器回路に渡すように構成されている、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目10)
上記タイミングアライメント回路内の上記1つ以上の遅延構成要素の各々は、上記基準信号経路に沿った複数の遅延構成要素のうちの1つに対応する、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目11)
上記基準分周回路および上記タイミングアライメント回路に連結され、同じバイアス信号を上記基準分周回路および上記タイミングアライメント回路に駆動するように構成されているバイアス回路、をさらに備える、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目12)
上記バイアス回路は、上記タイミングアライメント回路の上記1つ以上の遅延構成要素のそれぞれの制御端子に上記バイアス信号を駆動するように構成され、上記バイアス信号の各々は、上記基準信号経路上の対応する遅延構成要素に送られる第2のバイアス電圧に対応する第1のバイアス電圧で駆動される、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目13)
クロック発生システムであって、
入力端子に連結され、基準周波数信号を受信し、かつ分周された基準信号を発生するように構成されている基準分周回路と、
位相同期ループ(PLL)回路であって、上記分周された基準信号を受信し、帰還信号経路に沿って上記PLLへの入力への分周された帰還信号と、出力端子への出力発振信号とを提供するように構成された、位相同期ループ(PLL)回路と、
上記出力発振信号を受信して、上記基準周波数信号の周波数の関数である分周された出力タイミング信号を個別に発生するように構成されている複数の出力分周器と、
上記PLL回路に連結され、調整された位相で上記分周された基準信号を上記分周された帰還信号とアライメントをとるために上記基準分周回路の基準信号経路を通る経路遅延量に比例する所定量の遅延で上記分周された帰還信号の位相を調整するように構成されているタイミングアライメント回路であって、上記タイミングアライメント回路は、上記基準分周回路の上記基準信号経路を通る上記経路遅延量を複製する1つ以上の遅延構成要素を備える、タイミングアライメント回路と、を備える、クロック発生システム。
(項目14)
上記PLL回路は、
上記分周された基準信号と分周された帰還信号とを受信し、誤差信号を提供するように構成されている誤差検出回路と、
上記誤差信号を受信し、上記出力発振信号を発生するように構成されている電圧制御発振器(VCO)回路と、
上記VCO回路から上記出力発振信号を受信し、上記誤差検出回路への負帰還信号経路に沿って上記分周された帰還信号を発生するように構成されている帰還分周回路と、を備え、
上記タイミングアライメント回路は、上記誤差検出回路への入力に連結されている、上記項目に記載のクロック発生システム。
(項目15)
上記VCO回路の出力から上記複数の出力分周器の各々を通るそれぞれの経路遅延は、上記VCO回路の上記出力から上記帰還分周回路を通る経路遅延に対応する、上記項目のいずれか一項に記載のクロック発生システム。
(項目16)
上記タイミングアライメント回路が、上記入力端子と上記誤差検出回路への第1の入力との間に連結されている、上記項目のいずれか一項に記載のクロック発生システム。
(項目17)
上記タイミングアライメント回路が、上記VCO回路の出力と上記誤差検出回路への第2の入力との間に連結されている、上記項目のいずれか一項に記載のクロック発生システム。
(項目18)
上記タイミングアライメント回路が、上記帰還分周回路の出力へおよび上記誤差検出回路の上記第2の入力へ連結されている上記項目のいずれか一項に記載のクロック発生システム。
(項目19)
上記タイミングアライメント回路が、上記VCO回路の上記出力へおよび上記帰還分周回路への入力へ連結されている、上記項目のいずれか一項に記載のクロック発生システム。
(項目20)
共通基準信号に対するタイミングアラインメントのための装置であって、上記装置は、
入力端子で基準周波数信号を受信し、上記入力端子からの基準信号経路に沿って分周された基準信号を提供するための手段と、
上記分周された基準信号を受信し、帰還信号経路に沿った分周された帰還信号と出力端子への出力発振信号とを提供するための手段と、
上記基準信号経路を通る上記入力端子からの経路遅延量を上記帰還信号経路に沿って配置された1つ以上の遅延構成要素で複製し、上記分周された帰還信号の位相を、上記基準信号経路を通る上記経路遅延量に比例する所定量の遅延で調整し、上記分周された帰還信号の遷移エッジが上記分周された基準信号の遷移エッジと揃うように、上記調整された位相で上記分周された基準信号を上記分周された帰還信号とアライメントをとるための手段と、を含む、装置。
(項目21)
共通基準信号に対するタイミングアラインメントのための装置であって、上記装置は、
入力端子で上記入力端子からの基準信号経路に沿って基準周波数信号を受信するための手段と、
上記受信した基準周波数信号に基づいて帰還信号経路に沿って分周された帰還信号を提供し、かつ出力発振信号を出力端子に提供するための手段と、
上記帰還信号経路に沿った経路遅延量を上記基準信号経路に沿って配置された1つ以上の遅延構成要素で複製し、上記基準周波数信号の位相を、上記帰還信号経路を通る上記経路遅延量に比例する所定量の遅延で調整し、上記基準周波数信号の遷移エッジが上記分周された帰還信号の遷移エッジと揃うように、上記調整された位相で上記基準周波数信号を上記分周された帰還信号とアライメントをとるための手段と、を含む、装置。
(項目22)
上記受信した基準周波数信号に基づいて、上記基準信号経路に沿って分周された基準信号を提供するための手段、をさらに含み、上記分周された帰還信号を提供するための上記手段は、上記分周された基準信号に基づく、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目23)
上記基準周波数信号は、上記入力端子で受信されたのと同じ周波数で上記基準信号経路を通して位相同期ループの入力に渡される、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(摘要)
主題技術は、出力立ち上がりエッジを入力立ち上がりエッジと同時に生じさせることによって位相同期ループ(PLL)における遅延源を除去することを提供する。主題技術は、入力基準信号経路と同じ回路構成およびバイアス回路を使用して、PLLへの入力基準信号経路に沿って経験する遅延量をできるだけ近づけて複製する。例えば、複製回路を含むタイミングアライメント回路は、帰還ループ遅延を基準経路遅延と一致させるために、負帰還ループ信号に補償遅延を追加する。基準信号経路の遅延が推定され、複製回路に追加される。これら2つの経路の遅延特性は、入力基準信号および帰還ループ信号の位相がPLLへの入力において位相同期されるように互いに打ち消し合う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
主題技術の特定の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、説明の目的のために、主題技術のいくつかの実施形態を以下の図に記載する。
【0008】
【
図1】
図1は、主題技術の1つ以上の実装形態によるクロック発生システムの一例の概略図を図示する。
【
図2】
図2は、主題技術の1つ以上の実装形態によるクロック発生回路の一例の概略図を図示する。
【
図3】
図3は、主題技術の1つ以上の実装形態による経路遅延の描写を有するクロック発生回路の一例を概念的に図示する。
【
図4】
図4は、主題技術の1つ以上の実装形態によるタイミングアラインメントのための基準経路回路および複製回路を有するクロック発生回路の一例を概念的に図示する。
【
図5】
図5は、主題技術の1つ以上の実装形態による共通基準信号に対するタイミングアラインメントのための例示的プロセスのフローチャートを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に記載される詳細な説明は、主題技術の様々な構成の説明として意図されており、主題技術が実践され得る唯一の構成を表すことを意図していない。添付の図面は本明細書に組み込まれており、詳細な説明の一部を形成する。詳細な説明は、主題技術の完全な理解を提供するための具体的な詳細を含む。しかしながら、主題技術は、本明細書に記載された具体的な詳細に限定されず、1つ以上の実装形態を用いて実践され得る。1つ以上の例において、主題技術の概念を曖昧にすることを避けるために、構造および構成要素がブロック図形式で示されている。
【0010】
概して、高周波クロック信号は、PLLを使用してより低周波のシステム基準信号(「基準信号fREF」)から合成し得る。多くの場合、PLLを使用して、クロックシンセサイザが基準信号fREFから共通の高周波信号を作り出す。次に、共通の高周波信号を使用して個々の分周器を駆動し、異なる周波数の複数の信号を生成する。デジタルの性質上、分周器からの信号は、分周器が最初に起動されたときにランダムな出力位相を持ち得る。PLLはまた、分周器が最初に起動されたときにランダムな位相特性を有するデジタル分周器を利用し得る。PLLは、いくつかの位相の不確実性を除去することができるが、全てではない。クロック同期は、分周器の間で単一の所定の位相関係を一貫して強いるために必要である。しかしながら、温度および技術プロセスの変動が、出力位相の各々を互いにドリフトさせ、このため入力位相を出力位相の各々と正しく揃えるのを難しくしている。
【0011】
主題開示は、PLLの入力からPLLの出力までほとんどまたは全く遅延なしに、マルチチップクロック分配システムの多くのクロック信号を共通の基準信号に揃えることを提供する。結果として、遅延がないので、入力は出力に揃う。例えば、出力の立ち上がりエッジは入力の立ち上がりエッジと同時に生じる。実際には、主題技術は、共通基準信号に対するタイミングアライメントに関して集積回路製造プロセスおよび大きなシステム温度変化の影響を低減する。
【0012】
いくつかの実装形態では、共通基準信号に対するタイミングアライメントための装置は、入力端子に連結され、基準周波数信号を受信し、かつ入力端子からの基準信号経路に沿って分周された基準信号を提供するように構成されている基準分周回路を含む。本装置は、分周された基準信号を受信し、帰還信号経路に沿ってPLLへの入力への分周された帰還信号と出力端子への出力発振信号とを提供するように構成された位相同期ループ(PLL)回路を含む。本装置は、PLL回路に連結され、調整された位相で分周された基準信号を分周された帰還信号とアライメントをとるために基準分周回路を通る経路遅延量に比例する所定量の遅延で分周された帰還信号の位相を調整するように構成されているタイミングアライメント回路を含む。いくつかの態様では、タイミングアライメント回路は、基準分周回路を通る経路遅延量を複製する1つ以上の遅延構成要素を含む。
【0013】
図1は、主題技術の1つ以上の実装形態によるクロック発生システム100の一例の概略図を図示する。しかしながら、図示された構成要素の全てが使用されなくてもよく、そして、1つ以上の実装形態は図に示されていない追加の構成要素を含んでもよい。本明細書に記載の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、構成要素の配置および種類の変更がなされてもよい。追加の構成要素、異なる構成要素、またはより少ない構成要素が提供されてもよい。
【0014】
図示の例では、クロック発生システム100は、共通基準分配ネットワーク102に連結された複数のドーターカードを含み、ドーターカードの各々は、アナログ-デジタル(ADC)回路などのそれぞれの負荷回路(例えば、110)に駆動される複数のタイミング信号出力を生成するPLLを含む。いくつかの例では、ADC回路は主回路基板(例えば、マザーボード)上に位置付けされ、そこでドーターカードの各々は、主回路基板に差し込まれてクロック発生回路を拡張する。ドーターカードの各々は、いくつかの実装形態では、共通の半導体ダイ(またはチップ)上に基準分周回路およびPLLを含む回路(例えば、回路基板)であり得、または他の実装形態では、基準分周回路とPLLとの間の回路基板上に相互接続されたトレースを有する別個の半導体ダイ上に配置され得る。いくつかの実装形態では、ドーターカードを使用しなくてもよく、代わりに、クロック発生システム100は、主回路基板に差し込む共通回路を含み、その回路は、異なるタイミング信号出力を発生する複数の集積回路ダイを含む。
【0015】
共通基準分配ネットワーク102は、周波数基準をPLLに提供するときに高品質基準周波数信号(例えば、106)を生成する基準信号発生器104を含み得る。いくつかの実装形態では、基準周波数信号106は、正弦波であり、または他の実装形態では、所定のスルーレートを有する方形波である。共通基準分配ネットワーク102は、いくつかの実装形態では差動信号伝達で、または他の実装形態ではシングルエンド信号伝達で基準周波数信号106を駆動し得る。クロック発生システム100は、複数の出力および複数のチップ(例えば、半導体ダイ)にわたる同期を可能にする。例えば、クロック発生システム100は、PLLの帰還ループ(例えば、120)内に、基準周波数信号入力(例えば、108)に対する複数の出力のアライメントを容易にする回路を含み得る。本明細書で使用されるとき、用語「生成する」は、本開示の範囲から逸脱することなく用語「発生する」と交換可能に使用され得る。
【0016】
図2は、主題技術の1つ以上の実装形態によるクロック発生回路200の一例の概略図を図示する。しかしながら、図示された構成要素の全てが使用されなくてもよく、そして、1つ以上の実装形態は図に示されていない追加の構成要素を含んでもよい。本明細書に記載の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、構成要素の配置および種類の変更がなされてもよい。追加の構成要素、異なる構成要素、またはより少ない構成要素が提供されてもよい。
【0017】
いくつかの実装形態では、クロック発生回路200は、PLLコア201、または少なくともその一部である。クロック発生回路200は、電圧制御発振器(VCO)206、帰還分周器202、基準分周器203、位相検出器204および出力分周器205を含む。
図2において、クロック発生回路200は、VCO206の位相を基準経路に沿って入ってくる周波数基準信号f
REFの位相に揃えるために帰還信号f
VCO(例えば、213)を使用する。示されるように、帰還信号f
VCO213は、分周比Nを有する帰還分周器202を駆動するためにVCO206から出力される。いくつかの態様では、帰還分周器202は、「N分周器」または「帰還分周器」と呼ばれる。帰還分周器202は、分周された帰還信号を発生するように構成され、ここで分周された帰還信号は、帰還信号f
VCO213よりN倍周波数が小さい。周波数基準信号f
REF(例えば、210)は、分周比Rを有する基準分周器203に提供される。基準分周器203は、「R分周器」または「基準分周器」と呼ばれる。基準分周器203は、分周された基準信号を発生するように構成され、ここで、分周された基準信号は、周波数基準信号f
REF210よりもR倍周波数が小さい。いくつかの実装形態では、分周比Rは「1」に等しくてもよい。
【0018】
いくつかの実装形態では、要素203は基準周波数逓倍器として構成され、周波数基準信号fREF(例えば、210)は、基準周波数逓倍器(例えば、203)によって提供される追加の周波数逓倍を表す。この点において、基準周波数逓倍器(例えば、203)は、周波数基準信号fREF(例えば、210)の周波数をMの係数だけ増加させ、ここでM=2(例えば、2倍)である。
【0019】
いくつかの態様では、基準分周器203は、1つ以上の基準入力バッファおよび基準分周器ラッチ(またはフリップフロップ)を含む。位相検出器204は、R分周器(例えば、分周された基準信号)およびN分周器(例えば、分周された帰還信号)の出力信号を比較して、R分周器およびN分周器の出力信号の位相が揃うように、VCO206の周波数を調整する。いくつかの実装形態では、VCO206は、4GHz~5GHzの範囲内の周波数で、または他の実装形態では5GHzを超える周波数で動作する。定常状態では、帰還信号fVCO(例えば、213)と基準信号fREF(例えば、210)とは以下の関係にある。
【0020】
【0021】
位相検出器204は、チャージポンプ208と共に、R分周器とN分周器との出力間の位相差に比例したソースおよびシンク電流パルスを生成する。この動作は、ループを位相同期するための帰還を提供し、位相検出器204の入力で位相アライメントを強制する。
【0022】
図2において、出力信号f
OUT(例えば、211)は、出力分周器205によって提供される追加の周波数分割を表し、これは、出力信号f
OUT(例えば、211)の周波数をMの係数だけ減少させ、ここでM≧1である。
【0023】
【0024】
いくつかの実装形態では、要素205は出力周波数逓倍器として構成され、出力信号(例えば、211)は出力周波数逓倍器(例えば、205)によって提供される追加の周波数逓倍を表す。この点において、出力周波数逓倍器(例えば、205)は、出力信号fOUT(例えば、211)の周波数をMの係数だけ増加させ、ここでM=2(例えば、2倍)である。基準分周器203(すなわち、R分周器)の開始状態の不確実性は、基準信号fREF(例えば、210)に対する帰還信号fVCO(例えば、213)の位相が不確定になることをもたらす。出力分周器205により、さらなる程度の位相不確実性が出力信号fOUT(例えば、211)にある。
【0025】
デジタル分周器の出力信号は、所与の分周比Kに対してK個の可能な位相のうちの1つを有する。K=1の場合、位相の可能性は1つしかないので、位相の不確実性はない。位相の不確実性は、Kが2以上の場合に生じる。このため、fVCOとfREFとの間に決定論的位相関係を与えるために、R分周器は既知の時間に既知の位相を有する。
【0026】
図2に示すように、位相検出器204の前にブロックがある。これらのブロックは、変動する位相遅延を持つことができる。クロックタイミングシステムに関する総体的最新技術は、アライメントされた入力-出力位相の状態を含む。図示の例では、周波数基準信号f
REF(例えば、210)は入力位相であり、出力信号f
OUT(例えば、211)は出力位相である。位相検出器204の前で遅延のいずれもアライメントしない、または位相検出器204の前で遅延を一致させない他のシステムでは、周波数基準信号210と出力信号211との間にある量の不確実性がある。不確実性の量は、ナノ秒のオーダー、または他の実装形態ではピコ秒のオーダーであり得るが、位相検出器204への入力における変動する量の遅延のために、これら2つの入力間にランダムな不一致があり得る。
【0027】
いくつかの手法では、出力で帰還をとることは望ましくない結果を生成し得る。例えば、出力端子および位相検出器204への入力が、チップの非常に異なる物理的部分にあることがある。出力から位相検出器204までずっと戻る距離はかなり大きくなり得、駆動するのが困難になり得る。距離自体が、チップ自体の伝送線路を通る遅延など、光の速度による不確実性をもたらす可能性がある。別のブロックが出力信号で駆動されているという事実は、その出力に負荷を生み出し得る。いくつかの態様では、そこで物理的に帰還することは、システム内に他の望ましくない問題を引き起こす。第2に、R分周器およびN分周器を通る遅延、または位相を揃えようとする2つの要素間にあるどんなブロックも、それ自体が異なる遅延特性を有し得る。一例として、R分周器(例えば、203)がその出力が変化するときまでにその入力クロックを受信する時間を考えると、その時間はN分周器(例えば、202)における等価物とは異なる可能性がある。典型的には、N分周器(例えば、202)はより速く動作するので、それはその出力において入力変化に対してより速く反応する。
【0028】
さらに、集積回路製造プロセスおよび大きなシステム温度変化は、位相同期ループ用の共通基準信号に対するタイミングアライメントに悪影響を及ぼす。いくつかの手法では、タイミングアライメントは、出力分周器の出力をループの中に接続し直すことによって達成され得る。この点において、ループは、基準経路遅延が帰還分周器経路遅延と等しくなるように出力で遅延を補正し、等しくなることは異なる機能のために実装される著しく異なるアーキテクチャのためにありそうにない。また、この手法のアーキテクチャは、プログラム可能な遅延をその出力に追加できるという機能も排除する。
【0029】
図3は、主題技術の1つ以上の実装形態による経路遅延の描写を有するクロック発生回路300の一例を概念的に図示する。しかしながら、図示された構成要素の全てが使用されなくてもよく、そして、1つ以上の実装形態は図に示されていない追加の構成要素を含んでもよい。本明細書に記載の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、構成要素の配置および種類の変更がなされてもよい。追加の構成要素、異なる構成要素、またはより少ない構成要素が提供されてもよい。
【0030】
クロック発生回路300は、基準バッファ308および基準分周器309(まとめて「基準分周回路315」と呼ぶ)を含む。クロック発生回路300は、位相検出器310、VCO回路311、VCOバッファ312、帰還分周回路313(「NDIV」と呼ばれる)、出力分周器314(「ODIV」と呼ばれる)、およびタイミングアライメント回路305で形成されたPLL回路320を含む。いくつかの態様では、PLL回路320は、PLLコア201(
図2)であるか、またはその一部を含む。
【0031】
図3において、基準信号経路の遅延は、プログラム可能な遅延(例えば、タイミングアライメント回路305によって提供される)によって補償される。この点において、タイミングアライメント回路305は、基準信号経路301上の遅延(例えば、ΔT1)を補償するために、タイミングアライメント回路305によって提供されるプログラム可能な遅延(例えば、ΔT4)をPLLコア201の負帰還ループに追加することによって、周波数基準信号f
REF210の入力位相と帰還信号f
VCO213の出力位相との間のオフセットを減少させる。入力から出力までのタイミングは次のように表現することができる。
【0032】
TOUT=TIN+ΔT1-ΔT4-ΔT2+ΔT3 Eq.(3)
【0033】
ここで、TOUTは出力端子での時間であり、TINは入力端子での時間であり、ΔT1は基準信号経路の伝搬遅延であり、ΔT4はタイミングアライメント回路305の伝搬遅延であり、ΔT2は帰還分周信号経路(例えば、302)の伝搬遅延であり、そしてΔT3は出力分周信号経路(例えば、303)の伝搬遅延である。いくつかの態様では、伝搬遅延(例えば、ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4)は、製造プロセス中のオフラインタイミング回帰分析によって決定され、測定値は、タイミングアライメント回路305の遅延特性を定義するために外部リポジトリに格納され得る。ここで使用されるように、ΔT1はデルタ遅延301と呼ばれ、ΔT2はデルタ遅延302と呼ばれ、ΔT3はデルタ遅延303と呼ばれ、そしてΔT4はデルタ遅延304と呼ばれる。入力を出力と同期させるために、タイミングは次のように表現される。
【0034】
TOUT=TIN Eq.(4)
【0035】
入力と出力との間でゼロに近い遅延を達成するために、タイミングは次のように表現される。
【0036】
0=ΔT1-ΔT4-ΔT2+ΔT3、TOUT=TINの場合 Eq.(5)
【0037】
加えて、プログラマブル遅延は、ゼロに近い遅延を維持するために、基準信号経路(例えば、301)、NDIV(例えば、313)、およびODIV(例えば、314)内に存在し得る遅延差を捕らえる。この点において、異なる信号経路にわたって正味の遅延量を複製するためのタイミングは、次のように表現することができる。
【0038】
ΔT4=ΔT1-(ΔT2-ΔT3) Eq.(6)
【0039】
図示の例では、タイミングアライメント回路305は、ΔT1として表現された基準信号経路(例えば、301)の遅延およびΔT2とΔT3との間の遅延差を、これらの信号経路に見られる遅延構成要素を擬するそれぞれの遅延構成要素を用いて複製する。
【0040】
基準分周回路315は、入力端子306(TIN)に連結され、基準周波数信号(例えば、316)を受信し、基準信号経路(例えば、301)に沿って、分周された基準信号(例えば、317)を位相検出器310の第1の入力(例えば、TP1)に提供するように構成されている。PLL回路320は、分周された基準信号317を受信し、帰還信号経路(例えば、318)に沿って、分周された帰還信号(例えば、322)を位相検出器310の第2の入力(例えば、TP2)に、および出力発振信号(例えば、319)を出力端子(例えば、307)に提供するように構成されている。タイミングアライメント回路305は、PLL回路320に連結され、出力発振信号319の位相が基準周波数信号316の位相と揃うように、PLL回路320の分周された帰還信号322を分周された基準信号317と揃えるように構成されている。いくつかの態様では、タイミングアライメント回路305は、基準分周回路315を通る経路遅延量を複製する1つ以上の遅延構成要素を含む。
【0041】
いくつかの態様では、PLL回路320は、分周された基準信号317および分周された帰還信号322を受信して、分周された基準信号317と分周された帰還信号322との間の比較に基づいて誤差信号を提供するように構成された誤差検出回路(例えば、310)を含む。いくつかの態様では、誤差検出回路は、位相検出器310であるか、またはその一部である。VCO回路311は、誤差信号を受信し、出力発振信号323を生成するように構成される。VCOバッファ312は、二重の信号319および324を発生する。帰還分周回路313は、VCOバッファ312から出力発振信号323を受信し、位相検出器310への帰還信号経路に沿って分周された帰還信号322を生成するように構成される。いくつかの態様では、タイミングアライメント回路305は、位相検出器310への第2の入力(例えば、TP2)に連結されている。
【0042】
いくつかの実装形態では、クロック発生回路300は、VCOバッファ312の出力に連結された出力分周回路(例えば、314)を含む。図示の例では、出力分周回路314は、VCOバッファ312の出力に連結された共通基準点325からの出力発振信号(例えば、324)から分周された出力タイミング信号(例えば、321)を生成するように構成され、出力分周回路314は、出力発振信号324の周波数をMの係数だけ減少させ、ここで、M≧1である。
図3に図示するように、共通基準点325は、帰還分周回路313および出力分周回路314のための時間揃えされた点である。いくつかの態様では、VCOバッファ312の出力から出力分周回路314を通る経路遅延(例えば、ΔT2)は、VCOバッファ312の出力から帰還分周回路313を通るまでの経路遅延(例えば、ΔT3)と実質的に等価であり、そのため2つの経路遅延は、2つの信号経路間のゼロ遅延差を達成するために互いに打ち消し合う。
【0043】
いくつかの態様では、基準分周回路315は、入力端子306(例えば、TIN)および誤差検出回路への第1の入力(例えば、TP1)に連結される。基準分周回路(例えば、315)は、入力端子306(例えば、TIN)と誤差検出回路の第1の入力(例えば、TP1)との間の基準信号経路301に沿って分周された基準信号317を提供する。いくつかの態様では、帰還分周回路(例えば、313)は、VCOバッファ312の出力およびタイミングアライメント回路305への入力に連結されている。帰還分割器回路は、VCOバッファ312の出力とタイミングアライメント回路305への入力との間の帰還分周信号経路に沿って分周された帰還信号322を提供する。他の態様では、出力分周回路314は、出力端子307(例えば、TOUT)に連結され、出力分周信号経路に沿って、出力端子307に出力発振信号321を提供する。図示の例では、出力位相を入力位相に同期させるために、デルタ遅延304を有するタイミングアライメント回路305は、下記デルタ遅延にわたる正味の遅延を決定し、かつこの正味の遅延を複製された遅延で相殺し、それによって入力と出力との間の任意の遅延を解消することによって、基準信号経路の遅延(デルタ遅延301で示す)および帰還分周信号経路(デルタ遅延302で示す)と出力分周信号経路(デルタ遅延303で示す)との間のタイミング差を補償する。
【0044】
タイミングアライメント回路305は、正味の遅延を生成する他の信号経路に見られる遅延構成要素(例えば、ΔT1、ΔT2、ΔT3)を複製することによって経路遅延304を生成するように構成される。この正味の遅延は、クロック発生回路300の入力位相と出力位相との間のオフセットを引き起こす。経路遅延304は、出力位相が入力位相に対してオフセットすることを引き起こす、経路遅延301、302、および303によって生成された正味の遅延を打ち消すように構成される。追加された経路遅延304は、帰還分周回路313によって生成された出力位相を、他の信号経路によって生成された正味の遅延量に対応する所定量だけシフトし、そのため位相検出器310は、分周された帰還信号322と位相同期した分周された基準信号317を受信する。
【0045】
いくつかの実装形態では、タイミングアラインメント回路305
(図3において305’として図示されている)は、入力端子306と誤差検出回路(例えば、310)の第1の入力(例えば、TP1)との間に連結される。いくつかの実装形態では、タイミングアライメント回路305は、VCO回路311の出力と誤差検出回路(例えば、310)への第2の入力(例えば、TP2)との間に連結される。いくつかの実装形態では、タイミングアライメント回路305は、帰還分周回路313の出力に、および誤差検出回路(例えば、310)の第2の入力(例えば、TP2)に連結される。他の実施形態では、タイミングアライメント回路
(図3において305’’として図示されている)は、VCOバッファ312の出力に、および帰還分周回路313への入力に連結される。
【0046】
図3において、信号伝達は依然としてPLL回路320の順方向ループを通ってかつ位相検出器310から続き、およびループフィルタ(図示せず)を通って進む。信号は、VCO回路311を充電するDC電圧を有する。VCO回路311は、VCO回路311の出力に時変周波数信号を生成し、次いでVCOバッファ312に供給され、それはその後時変周波数信号を直接帰還分周回路313へ駆動する。この例では、出力分周器314は、従来の手法のように帰還の一部ではない。負帰還ループは、遅延を直接観察してそれらを補償する。システムは、帰還を通して、それらをアライメントさせる。
【0047】
デルタT遅延は、各ブロックの入力から出力までの伝搬遅延を表す。これらは、システム内でゼロ遅延を達成するために補償しようとしている伝播遅延である。いくつかの態様では、入力端子306(例えば、TIN)における基準周波数信号316の周波数は、基準分周器309によってより低い周波数に低減され、その信号の位相は、出力端子307(またはTOUT)における出力分周器314の出力信号(例えば、321)の位相に揃えられる。PLL回路320の負帰還を通るループは、TP1、TP2によって表される位相検出器310への入力において周波数を揃える。1つ以上の実装形態において、タイミングアライメント回路305は、ブロックの各々における任意の遅延差を補償する(例えば、ΔT4=ΔT1-(ΔT2-ΔT3))。いくつかの態様では、タイミングアライメント回路305は、帰還ループ遅延を基準経路遅延と一致させる(例えば、ΔT4=ΔT1)ために補償遅延を追加する。
【0048】
いくつかの実装形態では、タイミングアライメント回路305は、第1の周波数で動作する帰還分周回路313の出力にあることができ、または他の実施形態では、第2の周波数で動作する帰還分周回路313の入力にあってもよく、ここで、第2の周波数は第1の周波数より大きい。帰還分周回路313の入力では、タイミングアライメント305は、帰還分周回路313の出力にあるタイミングアライメント回路305と比較して、より高い周波数で動作している可能性があるので、タイミングアライメント回路305における遅延構成要素の周波数応答が変化する可能性がある。
【0049】
いくつかの実装形態では、遅延は、帰還信号経路(例えば、318)の代わりに基準信号経路(例えば、301)に追加される。この状態は、基準遅延(例えば、ΔT1)が帰還遅延(例えば、ΔT2)よりも小さいときに起こることになる。例えば、タイミングアライメント回路305は、R分周器遅延が帰還遅延よりも小さいとき、または基準信号経路にR分周器遅延が存在しないときに基準経路に追加されることになる。PLL(例えば、320)への帰還信号経路(例えば、318)に沿って経験する遅延量は、帰還信号経路(例えば、318)と同じ回路構成およびバイアス回路を使用してできるだけ近づけて複製される。例えば、複製回路を含むタイミングアライメント回路305は、基準経路遅延(ΔT1)を帰還ループ遅延(例えば、ΔT2)と一致させるために入力基準信号(例えば、317)に補償遅延を加える。帰還信号経路(例えば、318)の遅延が推定され、複製回路に追加される。これら2つの経路の遅延特性は、入力基準信号(例えば、317)および帰還ループ信号(例えば、318)の位相がPLLへの入力において位相同期となるように互いに打ち消し合う。
【0050】
いくつかの実装形態において、タイミングアライメント回路305による追加の補償遅延が負である場合、タイミングアライメント回路305を、R分周器経路上に(例えば、基準バッファ308および基準分周器309を含む経路に沿って)配置することができる。例えば、タイミングアライメント回路305を、基準分周器309の出力と誤差検出器310との間に連結することができる。タイミングアライメント回路305が基準経路上に配置されている場合、R分周器の遅延を一致させる必要がある代わりに、タイミングアライメント回路305は、帰還分周回路313の遅延を複製してもよい。
【0051】
いくつかの実装形態では、基準入力端子(例えば、306)からPLL(例えば、320)への基準信号経路(例えば、301)に沿って基準分周器が存在しない。この場合、タイミングアライメント回路305は、基準信号経路(例えば、301)上に配置され、システムはその時、基準入力周波数を基準周波数として直接使用する。
【0052】
図3では、出力分周器314は、ΔT3(またはデルタ遅延303)で表されている。タイミングアライメント回路305は、デルタ遅延302とデルタ遅延303との間の正味の遅延を考慮することができる。図示の例では、デルタ遅延303が予想されたものから変化する場合、位相検出器310への負帰還ループは出力分周回路314に連結されておらず、このため、出力分周回路314によって生成された伝播遅延を観察していなので、タイミングアライメント回路305はその変化を知り得ない。システムは、製造工程から決定される遅延の一定の再現性に依存する。その遅延が、経時的におよび温度にわたって理解できる(または予測できる)特性を持つ限り、システムは、タイミングアライメント回路305において同じ種類の特性を用いてプログラムすることができる。例えば、これらの遅延のうちのいずれかが非線形の温度特性を有する場合、同じ温度補償をタイミングアライメント回路305にプログラムすることができる。他方、遅延が変動する電圧特性(遅延に変化を引き起こす電源など)を有する場合、システムは補償するためにタイミングアライメント回路305に同じ電圧変動特性をプログラムすることができる。
【0053】
図4は、主題技術の1つ以上の実装形態によるタイミングアラインメントのための基準経路回路および複製回路を有するクロック発生器回路400の一例を概念的に図示する。しかしながら、図示された構成要素の全てが使用されなくてもよく、そして、1つ以上の実装形態は図に示されていない追加の構成要素を含んでもよい。本明細書に記載の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、構成要素の配置および種類の変更がなされてもよい。追加の構成要素、異なる構成要素、またはより少ない構成要素が提供されてもよい。
【0054】
タイミングアライメント回路305は、タイミングアライメント回路305内の個々の構成要素が、基準信号経路内のそれぞれの個々の遅延構成要素を擬するように、基準経路遅延回路から複製される。
図4において、クロック発生器回路400の上部は、基準信号経路およびその基本遅延ブロック(例えば、301)を示す。これらのブロックは、基準信号経路の全体の遅延に対する主要な要因を表す。いくつかの態様では、出力分周器314は、デルタ遅延302に対して時間差を有する(
図3)ことによって全体の遅延に寄与し得る。出力分周器314によってもたらされる遅延は、全体の遅延の主要な構成要素ではないが、その遅延は依然として考慮され、遅延構成要素のうちの1つに加えられる。遅延は推定され、複製回路に追加される。クロック発生器回路400の下部は、タイミングアライメント回路305を実装するための基本ブロック図を示す。例えば、第1の複製回路構成要素411(例えば、mc_delay1)は、第1の基準信号経路構成要素401(例えば、refi_amp1_51増幅器)の特性を有する。別の例では、第2の基準信号経路構成要素402(例えば、refi_amp2_51増幅器)は、第2の複製回路構成要素412(例えば、mc_delay2)などのその対応するコピーを有する。第3の複製回路構成要素413(例えば、mc_delay3)は、第3の基準信号経路構成要素403の遅延の有効なコピー(例えば、R-div flop)を有する。
【0055】
一般化すると、出力信号または基準信号を作り出すための経路内にあるブロックがどれであれ、同じタイプの遅延構成要素をタイミングアライメント回路305に採用することができる。いくつかの態様では、遅延構成要素は一般化された高速論理機能であることができる。他の態様では、遅延構成要素は、フリップフロップ、増幅器、NAND論理ゲート、またはNOR論理ゲートであり得る。
【0056】
タイミングアライメント回路305ブロックの各々は、それらを異なるパラメータに対して多かれ少なかれ敏感にするように変更することができる。共通基準信号に対するタイミングアライメントの一般化された概念は、プロセスの詳細とは無関係である。この点において、プロセス技術は、CMOS、バイポーラ、ガリウム砒素などとすることができる。それらの異なるパラメータをどのように補償するかについての詳細は、プロセス技術に特有のものとなる。例えば、CMOSプロセスの場合、別のブロックにおけるその問題を補償するためにNMOS/PMOSトランジスタ間に不均衡がある場合がある。別の例では、バイポーラプロセスでは、トランジスタをより大きくまたはより小さくし得、温度変動を補償するためにそれらに静電容量を追加することができる。
【0057】
いくつかの態様では、主題システムは、(タイミングアライメント回路305によって提供される)遅延補償経路と(帰還分周回路313から提供される)非補償経路との間で選択するために、帰還分周回路313の出力およびタイミングアライメント回路305の出力に連結されたマルチプレクサ430を含む。エンドユーザは、選択目的でこれら2つの信号経路のうちの1つを選択することを決定し得る。例えば、製造工程では、タイミングアライメント経路はテスト目的で選択される。信号経路への遅延の追加は、位相同期ループにおける雑音の観点から望ましくない結果を生成し得る。これは、信号経路への何らかの追加は、追加の熱雑音帰還をもたらし得るためであり、PLLの全体の雑音性能を低下させる可能性がある。バイパス経路は、その要件が入力/出力同期のために遅延を一致させるよりも重要な場合、エンドユーザが彼らのノイズ要件をトレードオフすることを可能にする。2つの信号経路間で切り替える能力は、追加遅延を有する信号経路と追加遅延を有さない信号経路との間の性能差を決定することを容易にすることができる。いくつかの態様では、マルチプレクサ430は、タイミングアライメント回路305からの遅延補償出力信号をバイパスし、受信した選択信号に基づいて分周された帰還信号(例えば、322)を位相検出器310に渡すように構成される。いくつかの態様では、受信された選択信号は外部ソース(例えば、チップ外に位置付けされた端末)によって駆動される制御信号である。
【0058】
クロック発生器回路400は、基準信号経路およびタイミングアライメント回路305の各々における遅延構成要素に連結されたバイアス回路420を含む。図示の例では、バイアス回路420は、基準分周回路315(例えば、基準バッファ308および基準分周器309を含む)およびタイミングアライメント回路305に連結されている。バイアス回路420は、同じバイアス信号を基準分周回路およびタイミングアライメント回路305に駆動するように構成されている。バイアス回路420は、所定の温度および/またはプロセス変動に基づいてバイアス信号を生成し、バイアス信号をタイミングアライメント回路305の1つ以上の遅延構成要素のそれぞれの入力制御端子に駆動するように構成されている。いくつかの態様では、バイアス信号の各々は、基準信号経路上の対応する遅延構成要素に送られる第2のバイアス電圧に対応する第1のバイアス電圧で駆動される。
【0059】
バイアス回路420は、(例えば、トランジスタからなる)遅延構成要素を既知の動作点に置くように構成される。増幅器はそれらのトランジスタの状態を変え、トランジスタの電流を1から0に(ACの観点から)変化させる。DCの観点では、トランジスタは定常状態の点に置かれる必要がある。バイアス回路420は、トランジスタを動作点に置くように構成されており、それでトランジスタは信号を受信し、それらが設計されている動作をすることができる。例えば、バイアス回路420は、タイミングアライメント回路305および基準分周回路315を保証し、両方とも、電源と温度にわたって同じ変動を受ける。一方のブロック内でバイアスが変化すると、バイアス回路420はバイアス信号(例えば、bias replica)を送信して、同じ様態で他方のブロックを変化させる。この点において、温度変化があるとき、両方のブロックが同じ駆動バイアス信号を有するため、同じ様態で応答する。CMOSプロセスでは、バイアス回路420は、一定量の電流を各増幅器内に流させるためにゲート信号を駆動することができる。バイポーラプロセスでは、バイアスは、増幅器(またはNANDゲート)内の電流を制御するために各増幅器(各NANDゲート)の特定のベース端子を制御することができる。
【0060】
例えば、第1のバイアス信号(例えば、Bias信号)は、第1の基準信号経路構成要素(例えば、refi_amp1_51増幅器)に接続され、および第2のバイアス信号(例えば、バイアス複製信号)は、第1の複製回路構成要素(例えば、mc_delay1)に接続される。この例では、バイアス信号は、通常の動作として1mAの電流を第1の基準信号経路構成要素に駆動する。システムが、同じ変動をタイミングアライメント回路305と一致させようとし、代わりにそれが通常2mAで動作している場合、これら2つの遅延は一致しないであろう。代わりに、同じバイアスが使用された場合、それらは同様の遅延特性を有するであろう。
【0061】
図5は、主題技術の1つ以上の実装形態による共通基準信号に対するタイミングアラインメントのための例示的プロセス500のフローチャートを図示する。さらに説明の目的で、逐次プロセス500のブロックは、本明細書では連続的にまたは線形的に生じるものとして記述されている。しかしながら、プロセス500の複数のブロックは、並行して生じてもよい。加えて、プロセス500のブロックは示された順序で行われる必要はなく、および/またはプロセス500のブロックの1つ以上は行われなくてもよい。
【0062】
プロセス500は、ステップ501で開始し、ここで基準周波数信号が入力端子で受信される。次に、ステップ502で、分周された基準信号が基準信号経路に沿ってクロック発生器回路に提供される。その後、ステップ503で、分周された基準信号がクロック発生回路によって受信される。次に、ステップ504で、分周された帰還信号が帰還信号経路に沿って提供され、出力発振信号が出力端子に提供される。その後、ステップ505で、基準信号経路を通る入力端子からの経路遅延量が、帰還信号経路に沿って配置された1つ以上の遅延構成要素で複製される。
【0063】
次に、ステップ506で、分周された帰還信号の遷移エッジが分周された基準信号の遷移エッジと揃うように、分周された帰還信号の位相が、1つ以上の遅延構成要素によって提供される複製遅延量に比例してシフトされる。
【0064】
いくつかの実装形態では、タイミングアライメント回路(例えば、305)が基準信号経路に追加されるとき、分周された基準信号の遷移エッジが分周された帰還信号の遷移エッジと揃うように、分周された基準信号の位相が、1つ以上の遅延構成要素によって提供される複製遅延量に比例してシフトされる。
【0065】
他の実装形態では、基準信号経路上にR分周回路が存在せず、タイミングアライメント回路(例えば、305)が基準信号経路に追加されるとき、基準周波数信号の遷移エッジが分周された帰還信号の遷移エッジと揃うように、基準周波数信号の位相が、1つ以上の遅延構成要素によって提供される複製遅延量に比例してシフトされる。
【0066】
前述の説明は、当業者が本明細書に記載の様々な態様を実践できるようにするために提供されている。これらの態様に対する様々な修正は当業者には容易に明らかとなり、本明細書に定義された一般的な原理は他の態様に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示される態様に限定されることを意図するものではなく、言語の主張と一致する全範囲を認められるべきであり、ここで、単数形の要素への言及は、具体的に明記しない限り、「唯一の」を意味するのではなく、むしろ「1つ以上の」を意味する。具体的に明記しない限り、「いくつかの」という用語は1つ以上を指す。男性代名詞(例えば、彼の)は、女性および中性の両方(例えば、彼女のおよびその)を含み、逆もまた同様である。見出しおよび副見出しがある場合、それは便宜上のためにのみ使用され、主題開示を限定するものではない。
【0067】
「構成された」、「動作可能」、および「プログラムされた」という述語は、主題の特定の有形または無形の修正を意味するのではなく、むしろ交換可能に使用されることを意図している。例えば、動作または構成要素を監視および制御するように構成されたプロセッサは、動作を監視および制御するようにプログラムされているプロセッサ、または動作を監視および制御するように動作可能であるプロセッサも意味し得る。同様に、コードを実行するように構成されたプロセッサは、コードを実行するようにプログラムされた、またはコードを実行するように動作可能なプロセッサとして解釈することができる。
【0068】
「態様」のような句は、そのような態様が主題技術に不可欠であること、またはそのような態様が主題技術のすべての構成に適用されることを意味するものではない。一態様に関する開示は、すべての構成、または1つ以上の構成に適用し得る。一態様などの句は、1つ以上の態様を指すことがあり、その逆もあり得る。「構成」などの句は、そのような構成が主題技術に不可欠であること、またはそのような構成が主題技術のすべての構成に適用されることを意味するものではない。一構成に関する開示は、すべての構成、または1つ以上の構成に適用され得る。一構成などの句は、1つ以上の構成を指すことがあり、その逆もあり得る。
【0069】
「例」という語は、本明細書では「例または例証として働くこと」を意味するために使用される。「例」として本明細書に記載された任意の態様または設計は、他の態様または設計よりも好ましいまたは有利であると必ずしも解釈されるべきではない。
【0070】
当業者に知られているかまたは後で知られるようになる、本開示全体にわたって記載された様々な態様の要素に対するすべての構造的および機能的等価物は、参照により本明細書に明確に組み込まれ、特許請求の範囲に包含されることが意図される。さらに、本明細書に開示されたものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に列挙されているかどうかにかかわらず、公衆に捧げることを意図していない。要素が「~のための手段」という表現を使用して明示的に列挙されていない限り、または、方法請求項の場合には、要素が「~のためのステップ」という表現を使用して列挙されていない限り、いかなる請求要素も、35U.S.C.§112、第6段落の規定に基づいて解釈されるべきではない。さらに、「含む(include)」、「有する(have)」などの用語が明細書または特許請求の範囲において使用される限りにおいて、そのような用語は、「備える(comprise)」が請求項において移行性の語として使用されるときに解釈されように、「備える(comprise)」という用語と同様の方法で包括的であることを意図している。