(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】水中自立式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 29/00 20060101AFI20240527BHJP
B43K 3/00 20060101ALI20240527BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20240527BHJP
A46B 5/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B43K29/00 Z
B43K3/00 Z
B43K8/02 130
A46B5/00 B
(21)【出願番号】P 2019127907
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2022-06-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591278448
【氏名又は名称】須藤 克明
(74)【代理人】
【識別番号】110001645
【氏名又は名称】弁理士法人谷藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 克明
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-147429(JP,U)
【文献】特開平08-118885(JP,A)
【文献】実開平07-040185(JP,U)
【文献】特開2012-166504(JP,A)
【文献】実開平05-009990(JP,U)
【文献】特開平11-028118(JP,A)
【文献】特開平10-217676(JP,A)
【文献】実開平07-000838(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00-31/00
B05C 7/00-21/00
A46B 1/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部の先端に保持具を介して設けられたブラシ部側を水中に入れた場合に、前記ブラシ部が水中に水没し前記柄部が水面上に突出する自立状態で浮かぶ水中自立式筆記具において、
前記保持具と前記柄部の把持領域との間の前記柄部の内部又は外周側に錘を配置し、
前記錘は柄部長手方向に所定間隔を置いて複数設け
、
前記柄部は、前記把持領域から前記保持具側及び前記保持具と反対の末端側の外周面が柄部長手方向に段差のない平滑状である
ことを特徴とする水中自立式筆記具。
【請求項2】
柄部の先端に保持具を介して設けられたブラシ部側を水中に入れた場合に、前記ブラシ部が水中に水没し前記柄部が水面上に突出する自立状態で浮かぶ水中自立式筆記具において、
前記保持具と前記柄部の把持領域との間の前記柄部の内部に錘を配置し、
前記錘は柄部長手方向に長い棒状であ
り、
前記柄部は、前記把持領域から前記保持具側及び前記保持具と反対の末端側の外周面が柄部長手方向に段差のない平滑状である
ことを特徴とする水中自立式筆記具。
【請求項3】
柄部の先端に保持具を介して設けられたブラシ部側を水中に入れた場合に、前記ブラシ部が水中に水没し前記柄部が水面上に突出する自立状態で浮かぶ水中自立式筆記具において、
前記保持具と前記柄部の把持領域との間の前記柄部の内部に柄部長手方向に移動可能に錘を配置し、
前記柄部の内部に設けられ且つ前記錘を柄部長手方向に送る送り手段と、前記送り手段を操作する操作手段とを備え
、
前記柄部は、前記把持領域から前記保持具側及び前記保持具と反対の末端側の外周面が柄部長手方向に段差のない平滑状である
ことを特徴とする水中自立式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絵筆、ペイントブラシ等の水中自立式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絵筆、ペイントブラシ等の筆記具において、柄部の先端側のブラシ部を下にして容器内の水中に入れた場合に、ブラシ部が水中に水没し柄部が水面上に突出して自立する自立状態で浮く水中自立式のものがある(特許文献1)。
【0003】
この水中自立式筆記具は、中空円筒状の柄部の先端側に、この柄部と略同径の筒状の保持具を介してブラシ部を取り付けると共に、柄部の先端側と保持具とに跨がって錘兼用の把持筒体を套嵌して、柄部の先端側の保持具から把持筒体にかけての比重が水よりも重くなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような水中自立式筆記具は、ブラシ部が水中に水没して柄部が水面上に突出して自立するため、取り出すときに水に触れずに取り出すことができる利点がある。
【0006】
しかし、従来の水中自立式筆記具は、柄部と保持具とを略同径に構成して、その柄部と保持具とに跨がって外周に把持筒体を套嵌しているため、把持筒体の両端側に、把持筒体の肉厚分に相当する段差ができる。そのため筆記具を把持する際の把持位置が把持筒体の長さの範囲内に制限されることになり、通常の絵筆と同様に使う者の好みに応じて任意の位置を把持して使用することができない欠点がある。
【0007】
また把持筒体の両端側に段差部があるため、その各段差部に絵の具等が汚れとなって付着し易いという問題がある。特に把持筒体のブラシ部側の段差部は、ブラシ部の近傍にあってブラシ部側の絵の具が付着し易い状況にある。そのため段差部に付着した絵の具によって手指が汚れるため、その都度、柄部を清拭して付着した絵の具を除去しなければならない煩わしさがある。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、水中自立式を維持しながらも、通常と同様に任意の部位を把持して使用でき、しかも柄部の外周面への絵の具等の付着を防止できる水中自立式筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、柄部の先端に保持具を介して設けられたブラシ部側を水中に入れた場合に、前記ブラシ部が水中に水没し前記柄部が水面上に突出する自立状態で浮かぶ水中自立式筆記具において、前記保持具と前記柄部の把持領域との間の前記柄部の内部又は外周側に錘を配置し、前記錘は柄部長手方向に所定間隔を置いて複数設け、前記柄部は、前記把持領域から前記保持具側及び前記保持具と反対の末端側の外周面が柄部長手方向に段差のない平滑状としたものである。
【0010】
また別の発明は、柄部の先端に保持具を介して設けられたブラシ部側を水中に入れた場合に、前記ブラシ部が水中に水没し前記柄部が水面上に突出する自立状態で浮かぶ水中自立式筆記具において、前記保持具と前記柄部の把持領域との間の前記柄部の内部に錘を配置し、前記錘は柄部長手方向に長い棒状であり、前記柄部は、前記把持領域から前記保持具側及び前記保持具と反対の末端側の外周面が柄部長手方向に段差のない平滑状としたものである。
【0012】
また他の発明は、柄部の先端に保持具を介して設けられたブラシ部側を水中に入れた場合に、前記ブラシ部が水中に水没し前記柄部が水面上に突出する自立状態で浮かぶ水中自立式筆記具において、前記保持具と前記柄部の把持領域との間の前記柄部の内部に柄部長手方向に移動可能に錘を配置し、前記柄部の内部に設けられ且つ前記錘を柄部長手方向に送る送り手段と、前記送り手段を操作する操作手段とを備え、前記柄部は、前記把持領域から前記保持具側及び前記保持具と反対の末端側の外周面が柄部長手方向に段差のない平滑状としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水中自立式を維持しながらも、通常と同様に任意の部位を把持して使用でき、しかも柄部の外周面への絵の具等の付着を防止できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す絵筆の正面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態を示す一部破断正面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態を示す絵筆の正面図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態を示す絵筆の一部破断正面図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態を示す絵筆の正面図である。
【
図9】本発明の第6の実施形態を示す絵筆の一部破断正面図である。
【
図11】本発明の第7の実施形態を示す絵筆の一部破断正面図である。
【
図12】本発明の第8の実施形態を示す絵筆の一部破断正面図である。
【
図14】本発明の第9の実施形態を示す絵筆の一部破断正面図である。
【
図16】本発明の第10の実施形態を示す絵筆の一部破断正面図である。
【
図18】本発明の第11の実施形態を示す絵筆の一部破断正面図である。
【
図20】本発明の第12の実施形態を示す絵筆の平面図である。
【
図21】本発明の第13の実施形態を示す絵筆の正面図である。
【
図22】本発明の第14の実施形態を示す絵筆の正面図である。
【
図23】本発明の第15の実施形態を示す刷毛の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の水中自立式筆記具に係る実施形態を図面に基づいて詳述する。
図1、
図2は本発明の水中自立式筆記具を絵筆1に採用した第1の実施形態を例示する。なお、この絵筆1はアクリル絵の具、水彩絵の具、油絵の具の何れにも適用可能である。
【0016】
絵筆1は、
図1に示すように、軸状又は棒状に形成された柄部2と、この柄部2の先端側に保持具3を介して設けられたブラシ部4と、柄部2の外周面に設けられた水切り手段8とを備え、ブラシ部4側を容器内の水中Aに浸けた場合に、ブラシ部4が水中Aに水没し柄部2が水面から上側に略垂直に突出する自立状態で浮遊するようになっている。
【0017】
従って、例えばアクリル絵の具による絵の作成中に、ブラシ部4にアクリル絵の具が付着したままの絵筆1を水中Aに浸けておけば、ブラシ部4が水中Aに水没するためアクリル絵の具の乾燥を防止することができ、また水面に浮遊状態の絵筆1を取り出して直ぐに使用することができる。
【0018】
なお、この絵筆1は、使用に際しては柄部2のブラシ部4寄りの把持領域5を把持して使用するのが一般的であるが、使用者の好みに応じて把持領域5以外の他の任意の位置を把持して使用することも可能である。
【0019】
柄部2は、比重が1未満のポリプロピレン、その他の樹脂材により構成されており、一般的に把持頻度の高い把持領域5と、把持頻度の低いその他の領域とを対比した場合、把持頻度の高い把持領域5が最大径又はそれに近い大径であって、この把持領域5から先端側の保持具3側及び/又は末端側へと柄部長手方向に段差が無く徐々に細くなる平滑状に構成されている。
【0020】
柄部2には、把持領域5からブラシ部4側に柄部長手方向に所定の間隔を置いて複数、例えば3個の錘6a~6cが設けられている。錘6a~6cは鉛、その他の比重の大きい材料により構成されており、第1番目の錘6aは把持領域5から外れて柄部2の保持具3に近い先端側に配置され、また第2番目、第3番目の錘6b,6cは把持領域5内に配置されている。
【0021】
各錘6a~6cを略同程度の重さとした場合、各錘6a~6cは第1番目から第2番目、第3番目へと間隔を狭くして、この3個の錘6a~6cの位置、重さにより、絵筆1全体の重心Gが把持領域5内、取り分け把持領域5の柄部長手方向の中央近傍に位置すべく設定されている。
【0022】
例えば、錘6a~6cを除く柄部2、保持具3及びブラシ部4の重心位置g1に対して、3個の錘6a~6cの重心位置g2とした場合、その柄部2に3個の錘6a~6cを配置することによって、両者の中間の把持領域5の略中央又はその近傍位置に全体の重心Gを配置することができる。
【0023】
従って、ブラシ部4を下側にして絵筆1を水中Aに浸けた場合、絵筆1全体の重心Gを水面よりも十分に低くできるので、絵筆1を安定的に自立状態で浮かばせることができる。
【0024】
また複数の錘6a~6cを柄部長手方向に間隔を置いて設けているので、各錘6a~6c相互間の間隔、各錘6a~6cの重さ等を適宜選択することにより、絵筆1全体の重心Gの位置を容易且つ任意に調整することができる。
【0025】
更に第1の錘6aを把持領域5から離れた保持具3側に配置し、その第1の錘6aから離れた把持領域5内に第2、第3の錘6b,6cを配置しているので、全体の重心Gを把持頻度の高い把持領域5内に配置できるにも拘わらず、使用者の好みに応じて把持領域5よりも保持具3側に偏位した位置、例えば第1番目の錘6aに対応する位置を把持した場合に、その錘6aによるモーメントが問題となることはなくなるので、それによる違和感を緩和することができる。
【0026】
なお、柄部2の把持頻度の高い把持領域5は、一般的には全体的に大径になっているが、その把持領域5でも末端側寄りの部分は多少小径にすることも可能である。また逆に把持領域5よりも保持具3の柄部2を把持領域5の最大径部と同径又はそれに近い大径とし、その大径部から保持具3側へと細くしてもよい。
【0027】
錘6a~6cを柄部2に設けるに当たっては、
図2(a)に示すように柄部2の略中央に埋め込んでもよいし、
図2(b)に示すように柄部2の直径方向に貫通状に埋め込んでもよい。このように構成すれば、柄部2内に錘6a~6cがあるにも拘わらず、柄部2の外周面に錘6a~6cが突出して段差ができる等の問題がなく、柄部2の外周面を容易に平滑化することができる。そのため錘6a~6cによって柄部2の把持領域5が制限されるようなことはない。
【0028】
また柄部2の外周面を平滑化できるため、柄部2の外周面に絵の具が付着して清澄するようなこともなく、柄部2に付着した絵の具を除去する煩わしさ、付着した絵の具による手指の汚れ等の問題を容易に解消することができる。
【0029】
更に錘6a~6cを柄部2内に設ける場合には、柄部2の成型時に錘6a~6cを埋め込むモールド成型法を採用してもよいし、柄部2の成型時に凹部、貫通孔等を形成しておき、その凹部、貫通孔等に錘6a~6cを入れた後、柄部2の外周面を平滑状に仕上げてもよい。
【0030】
絵筆1には、その柄部2の少なくとも把持領域5を含む水没領域、望ましくは柄部2の保持具3から末端側の全体に水切り手段8が設けられている。この水切り手段8は、水中Aから絵筆1を取り出したときに、柄部2の外周面に付着していた水で手指が濡れないように水切りを行うためのものであり、樹脂製の柄部2の外表面を平滑状に加工し、又は柄部2の表面に撥水剤を塗工する撥水処理又は撥水加工する等により構成されている。
【0031】
このように柄部2の表面に水切り手段8を設けることにより、水中Aに浸けた状態の絵筆1を取り出したときに、その水切り手段8により柄部2の表面側の付着水を速やかに除去することができる。そのため絵筆1を水中Aから取り出して直ぐに柄部2を把持したときにも、柄部2に付着した水滴により手指が濡れる等の問題もないので、水中自立式の絵筆1の利便性が更に向上する。また水切り手段8は、柄部2の外周面の平滑度を上げるか、又は撥水剤を塗工する撥水処理等で対応できるので、柄部2に対する絵の具の付着も少なくできる利点がある。
【0032】
なお、水切り手段8は保持具3から柄部2の全体に設けるのが望ましいが、絵筆1の柄部2の内、少なくとも自立状態で浮遊するときに、その水中Aに水没する水没領域に設ければよい。保持具3が撥水性を有する金属製等の場合には、水切り手段8は柄部2の全体に設ければよい。
【0033】
図3は本発明の第2の実施形態を例示する。この実施形態では、柄部2の外周に環状の錘6a~6cが設けられている。錘6a~6cは柄部長手方向に複数個あり、その各錘6a~6cが柄部2の外周面と略面一の平滑状に設けられている。
【0034】
このように錘6a~6cは柄部2の外周に面一状に設けることも可能である。この場合には、金型内で錘6a~6cを容易に保持することができるので、柄部2の成型時に錘6a~6cを埋め込むモールド成型を容易に採用することができる。
【0035】
複数の錘6a~6cを設ける場合、各錘6a~6cは同一の重さで同一の形状でもよいが、厚み、柄部長手方向の幅を変えてもよい。また錘6a~6cを円筒状に構成して、その円筒状の錘6a~6cを柄部2の外周に略面一状に装着してもよい。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0036】
図4、
図5は本発明の第3の実施形態を例示する。この実施形態では、
図4、
図5に示すように、錘6が棒状に構成されており、この錘6が柄部2の把持領域5から保持具3側に跨がってその略中心位置に埋め込まれている。錘6は保持具3側が大径となっており、この錘6によって、絵筆1全体の重心Gは把持領域5の下部近傍又は略中央近傍に設定されている。錘6は柄部2の補強を兼用しており、
図5に示すように、大径側の先端部7が柄部2の取り付け部11から外側に突出している。他の構成は、各実施形態と略同様である。
【0037】
柄部2に錘6を設けるに当たっては、錘6を細長い棒状に構成して、その錘6を柄部2の中心近傍に柄部長手方向に埋め込むことも可能である。このようにすれば、錘6により柄部2を中心側から補強することが可能であり、また錘6が柄部2の外部に露出しないので、柄部2の外周面を平滑状に仕上げることができる。しかも錘6が柄部2内にあるため、錘6の長さを長くすることができる。そのため錘6の長さを適宜調整することによって、重心Gの位置を調整することも可能である。
【0038】
また把持領域5の重心Gの極近傍位置で柄部2を把持した場合、その把持位置から柄部長手方向の両側に錘6が伸びた状態となる。このとき把持位置の両側に伸びる錘6によりモーメントが発生するが、その両モーメントは逆方向に働くため、把持位置廻りに絵筆1を往復操作しながら描くときにも、絵筆1を細かく操作することが可能であり、通常の絵筆1と同じ描き心地を維持することができる。これは、把持位置の両側にわたって複数の錘6a~6cを設けた場合も同じである。
【0039】
更に錘6の先端部7を柄部2から突出させておけば、柄部2を金型で成型する際にその金型内で錘6の先端部7を掴んで成形空間の略中央に保持することができる。そのため錘6を柄部2の略中心位置に容易に位置決めすることができるので、錘6を埋め込んだ柄部2を容易に成形することができる。
【0040】
図6は本発明の第4の実施形態を例示する。この実施形態でも、柄部2の中心部分に棒状の錘6が埋め込まれている。この錘6は、重さが大の主錘部9と、この主錘部9から柄部長手方向の両側に延びる安定用錘部10とを備えている。安定用錘部10は全長が略同じ太さであるが、主錘部9から離れるに伴って細くなるようにしてもよい。一方の安定用錘部10は柄部2の先端部7までとしているが、先端部7から突出するようにしてもよい。他の構成は、第3の実施形態と略同様である。
【0041】
このような構成の錘6を使用することも可能である。この錘6は、主錘部9が柄部2の重心Gと略対応するように柄部2の内部に埋め込んでもよいし、柄部2の形状、比重等を考慮して埋め込み位置を決定してもよい。この錘6でも、安定用錘部10が主錘部9の両側に延びるため、通常の絵筆1と同じ描き心地を維持することができる。
【0042】
従って、柄部長手方向に長い錘6を採用するに当たっては、錘6の一端側から他端側へと太さが変化するもの、錘6の一端側又は中間側が太くなったもの等、必要に応じて任意の形状を選択することが可能である。
【0043】
図7、
図8は本発明の第5の実施形態を例示する。この実施形態の柄部2は、
図7に示すように、先端側を構成する錘兼用の先端側柄部12と、末端側を構成し且つ先端側柄部12に接合された末端側柄部13とにより構成されている。先端側柄部12と末端側柄部13は、柄部2の把持領域5内で柄部長手方向に分割され、接合手段14により着脱自在又は着脱不能に接合されている。先端側柄部12は錘兼用であるため、水よりも比重の大きい樹脂等の材料により構成されている。末端側柄部13は水よりも比重の小さい樹脂等の材料により構成されている。
【0044】
接合手段14には、
図8(a)に示すねじ式、又は
図8(b)に示す嵌め込み式がある。ねじ式の接合手段14は、
図8(a)に示すように、先端側柄部12と末端側柄部13との一方に雄ねじ部15を、他方に雌ねじ部16を夫々備え、その雄ねじ部15を雌ねじ部16にねじ込むことにより、先端側柄部12と末端側柄部13とを接合している。
【0045】
嵌め込み式の接合手段14は、
図8(b)に示すように、先端側柄部12と末端側柄部13との一方に突出部17を、他方に凹入部18を夫々備え、その突出部17を凹入部18に嵌め込むことにより、先端側柄部12と末端側柄部13とを接合している。
【0046】
なお、先端側柄部12と末端側柄部13との接合部分は段差なく平滑状に連続しているが、両者の接合部分にはシール材を介在してもよい。他の構成は、各実施形態と略同様である。
【0047】
この場合には、先端側柄部12を比重の大きい材料により構成することによって、その先端側柄部12自体で錘を兼用することができる。従って、比重の大小異なる材料を先端側柄部12と末端側柄部13とに使い分けることによって、把持領域5に重心Gを有する絵筆1を構成することができる。
【0048】
また先端側柄部12と末端側柄部13とを着脱自在に連結すれば、複数種類の先端側柄部12と末端側柄部13との何れかを組み合わせて連結することにより、使用者の好みに応じて重心Gの位置を調整することも可能である。
【0049】
なお、先端側柄部12と末端側柄部13との比重差が大になれば、先端側柄部12と末端側柄部13とを接合する接合手段14の位置が保持具3側へと移動して、
図7に示すように水中Aに水没する。従って、接合手段14は、水が浸入しないようにシールすることが望ましい。接合手段14の内部に浸入した水は、先端側柄部12の中心側の排水孔を経てブラシ部4側に抜けるようにしてもよい。なお、接合手段14は、水面よりも上側に設定してもよい。
【0050】
図9、
図10は本発明の第6の実施形態を例示する。この実施形態の柄部2は、
図9、
図10に示すように、錘兼用の中実状の先端側柄部12と、この先端側柄部12の外周に套嵌された末端側の中空状の末端側柄部13とにより構成されている。先端側柄部12は、保持具3用の取り付け部11と、この取り付け部11から突出して末端側柄部13内に挿入される接合部20とを有し、水よりも比重の大きい樹脂材料により中実状に構成されている。
【0051】
末端側柄部13は末端側が徐々に小径となる中空状であって、接合部20の外周に水密状に套嵌されている。保持具3は取り付け部11を越えて末端側柄部13の先端部21まで達しており、この保持具3の内側に末端側柄部13の先端部21が挿入されている。
【0052】
従って、保持具3は、先端側柄部12と末端側柄部13との接合部分を覆う構造となっており、その先端側柄部12と末端側柄部13とに跨がる保持具3の一部が把持領域5となっている。なお、末端側柄部13は比重が先端側柄部12と略同じか、水よりも大又は小の樹脂材料が用いられている。
【0053】
絵筆1全体としての重心Gは、先端側柄部12の把持領域5内に設定されている。柄部2は、保持具3側から把持領域5に跨がる範囲が最大径であって、外周側は平滑状に構成されている。他の構成は各実施形態と同様である。
【0054】
このように錘兼用の先端側柄部12の接合部20の外周に、中空状に構成された末端側柄部13を套嵌してもよい。また末端側柄部13を中空状に構成して密封すれば、末端側柄部13に水よりも比重の大きい材料を使用して絵筆1全体としての重量感を確保しながらも、絵筆1の末端側を軽くして、ブラシ部4側が水中Aに水没し柄部2側が水面上に突出した状態で浮かべることができる。
【0055】
なお、末端側柄部13は水よりも比重が小さい材料を使用してもよい。また末端側柄部13内は密封せずに大気に連通状態にすることもできる。その場合には、中空状の末端側柄部13内に入った水は、先端側柄部12の中心側の排水孔又は排水通路を経てブラシ部4側に抜けるようにしてもよい。但し、排水孔又は排水通路は、絵の具で詰まらないようにすることが望ましい。
【0056】
図11は本発明の第7の実施形態を例示する。この実施形態では、柄部2自体を水よりも比重の大きい樹脂材料により中空状に構成して、この柄部2により錘を兼用する構造とする。
【0057】
柄部2は、
図11に示すように把持領域5側を太くし、この把持領域5から末端側へと徐々に小径となる中空状に構成して、把持領域5内に重心Gが位置するように構成されている。柄部2の先端側には、内周に密封栓23が嵌め込まれている。密封栓23は柄部2の先端部24に套嵌された保持具3により覆われている。他の構成は各実施形態と同様である。
【0058】
このように柄部2を比重の大きい樹脂材料等により中空状に構成して密封することにより、柄部2自体で錘を兼用しながら、その把持領域5内に重心Gを位置させることもできる。なお、密封栓23の比重を水と同等又はそれ以上にして、この密封栓23が錘の一部を兼用するように構成すれば、柄部2は把持領域5側と末端側との太さの違いを小さくすることができる。
【0059】
図12、
図13は本発明の第8の実施形態を例示する。この実施形態では、
図12、
図13に示すように、柄部2内に柄部長手方向に移動可能に設けられた錘6と、この錘6を柄部長手方向に往復移動可能に送る送り手段26と、送り手段26を外部から錘6の送り方向に操作する操作手段27とが設けられている。
【0060】
柄部2は先端側柄部12と、この先端側柄部12に接続された末端側柄部13とを有し、先端側柄部12と末端側柄部13との間に錘収容部28が設けられ、この錘収容部28内に錘6が柄部長手方向に移動可能に設けられている。
【0061】
この実施形態では、末端側柄部13内に錘収容部28が形成され、その開口端側の雌ねじ部29に先端側柄部12の雄ねじ部30が着脱自在に螺合されている。錘収容部28は柄部2の把持領域5と、この把持領域5の柄部長手方向の両側とを含む所要範囲31に設けられている。錘6は円柱状、円筒状、その他の適宜形状に構成され、錘収容部28内に収容されており、錘収容部28の所要範囲31内で柄部長手方向に移動可能である。
【0062】
送り手段26は、錘収容部28内を柄部長手方向に貫通して配置されたねじ軸(送りねじ)32と、錘6の内周に形成され且つねじ軸32の雄ねじ部33が螺合する雌ねじ部34とを有する。ねじ軸32は先端側柄部12、末端側柄部13の軸保持具35,36に軸心廻りに回転自在に支持され、また錘収容部28と対応する範囲に形成された雄ねじ部33が形成されている。操作手段27は柄部2の末端側を構成する操作部38を有し、その操作部38がねじ軸32の一端に固定されている。ねじ軸32は抜け止め手段49により抜け止めされている。
【0063】
錘6は廻り止め手段39により柄部2に対して廻り止めされている。廻り止め手段39は末端側柄部13の内周面に形成された偏平状の規制部40と、この規制部40に柄部長手方向に摺動自在に当接する被規制部41とを備えている。
【0064】
なお、廻り止め手段39は他の構成でもよい。先端側柄部12と末端側柄部13間、末端側柄部13と操作部38間には夫々シール材42,43が介装されている。
【0065】
この絵筆1では、使用者の好みに応じて絵筆1全体の重心Gを任意に調整することができる。絵筆1の重心Gは、一般的には多くの使用者の好みに合わせて把持領域5の略中央位置、その他の適当位置に設定されている。
【0066】
重心Gの位置を変更する場合には、操作部38を操作してねじ軸32を正転方向又は逆転方向に回転させる。するとねじ軸32の雄ねじ部33が錘6の雌ねじ部34に螺合しているため、ねじ軸32の正逆転によって錘6が前進方向又は後退方向に移動する。そして、この錘6の前進方向又は後退方向への移動により絵筆1全体の重心Gの位置が変化するため、使用者は自分の好みに応じて重心Gの位置を任意に調整することができる。
【0067】
送り手段26には錘6の雌ねじ部34にねじ軸32の雄ねじ部33が螺合する構成を採用しているため、重心Gの調整後に錘6が不安定に柄部長手方向に移動することはない。またねじ軸32の雄ねじ部33が錘6の雌ねじ部34に螺合する一方、ねじ軸32の両端側を先端側柄部12、末端側柄部13の軸保持具35,36に回転自在に挿通しているので、構造的にも簡素化することができる。
【0068】
図14、
図15は本発明の第9の実施形態を例示する。この実施形態では、
図14、
図15に示すように、送り手段26として、線材を螺旋状に成形された螺旋線材44を備え、この螺旋線材44に錘6の係合部45が係合する構成を採用している。
【0069】
螺旋線材44は一端側が操作部38に固定され、他端側が先端側柄部12の保持孔46に回転自在に挿入されている。錘6は筒状であって、螺旋線材44が相対回転自在に挿通されている。錘6にはピン等の係合部45が設けられている。操作部38は筒部47が末端側柄部13の支持筒部48の外周に套嵌され、抜け止め手段49により抜け止めされている。錘6と柄部2との間には廻り止め手段39が設けられている。
【0070】
このように線材を螺旋状に成形された螺旋線材44と、この螺旋線材44に係合する錘6側の係合部45とを備えた構造でも、螺旋線材44の正逆回転により錘6を柄部長手方向に移動させることができる。従って、送り手段26はねじ軸32を備えたもの、螺旋線材44を備えたものなど、種々の変更が可能である。
【0071】
図16、
図17は本発明の第10の実施形態を例示する。この実施形態の送り手段26は、
図16に示すように、筒状の錘6の内部に形成された螺旋溝51と、この螺旋溝51に係合する1個又は複数個の係合部52とを備えている。操作手段27は、末端側柄部13の保持孔53に挿通された操作軸54と、この操作軸54に固定された操作部38とを備え、操作軸54の先端側に係合部52が設けられている。操作軸54は操作部38と抜け止め部55とにより柄部長手方向に移動不能である。錘6と末端側柄部13との間には廻り止め手段39が設けられている。他の構成は各実施形態と同様である。
【0072】
この場合には、操作部38を摘んで操作軸54を軸心廻りに正逆方向に操作すると、係合部52が錘6の螺旋溝51に沿って相対的に移動するため、錘6が前進又は後退方向に移動することになり、絵筆1全体の重心Gを柄部長手方向に調整することができる。
【0073】
図18、
図19は本発明の第11の実施形態を例示する。この実施形態の水切り手段8は、
図18、
図19に示すように、柄部2の外周面を平滑加工又は撥水加工による水切り機能の他に、柄部2を手指で把持したときの手指との接触面積を削減する接触削減手段60を備えている。
【0074】
即ち、水切り手段8は接触削減手段60を有し、その接触削減手段60は、柄部2の外周面の内、少なくとも把持領域5、望ましくは水没領域61aよりも若干長い領域61bに設けられている。この柄部2は領域61bに対応する略同一径の同径部62と、この同径部62の上端から末端側へと徐々に小径となる末端部63を有する。
【0075】
接触削減手段60は、同径部62の外周に柄部長手方向に長い凸部64と凹部65とを周方向に交互に備えている。凹部65は断面円弧状であり、その隣り合う円弧状の凹部65間に、径方向の外方へと放射状に突出する凸部64が形成されている。凸部64は重心Gの近傍部分の突出量が最大であり、その部分から柄部長手方向の両側へと徐々に突出量が小さくなっている。凸部64の突出量、凸部64間の間隔、凹部65の深さ等は、水の表面張力によって、柄部2の表面の付着水がその位置にとどまらない程度である。
【0076】
このように柄部2の水没領域61aに接触削減手段60を有する水切り手段8を設けておけば、柄部2の把持領域5等を手指で把持した際にも、手指の柄部2に対する接触面積を削減できるため、柄部2側に付着水がある場合は勿論、手指側に付着水がある場合であっても、手指と柄部2との間の隙間部分を介してその付着水を速やかに除去することができる。
【0077】
水きり手段8は、各実施形態に示す絵筆1においても同様に実施することができる。また凸部64、凹部65は柄部長手方向の両端部を除く中間部分では略同じ高さ又は深さにしてもよい。
【0078】
図20は本発明の第12の実施形態を例示する。水切り手段8の接触削減手段60に凸部64、凹部65を設ける場合には、
図20(a)に示すように凸部64、凹部65を円弧状に構成するか、又は
図20(b)に示すように凸部64、凹部65を丸みを帯びた台形状に構成することもできる。従って、凸部64、凹部65は柄部2と手指との接触面積を少なくできるものであればよい。
【0079】
図21は本発明の第13の実施形態を例示する。この実施形態の接触削減手段60は、柄部2の同径部62の外周に凸部64が略平行に設けられている。凸部64は中間部が略同一高さで突出しており、両端部が徐々に低くなっている。このように接触削減手段60は、凸部64によって構成することもできる。また凸部64は中間部が略同じ突出高さでもよい。
【0080】
図22は本発明の第14の実施形態を例示する。この実施形態では、柄部2の外周に比重の大きい鉛テープ、その他の錘用テープ66を螺旋状に巻き付けて、その巻き付けた錘用テープ66により錘6を構成したものである。この場合には、錘用テープ66の巻き付け位置、巻き付け量を調整することにより、重心Gの位置、重さ等を調整することができる。なお、錘用テープ66は一側面に粘着層を、他側面に撥水層を夫々有するものが望ましい。
【0081】
図23は本発明の第15の実施形態を例示する。この実施形態では、水中自立式筆記具としての刷毛67を例示する。この刷毛67は、柄部2の先端に板状の保持具3が一体にあり、その保持具3を介してブラシ部4が設けられている。
【0082】
このような構成の刷毛67の場合には、刷毛67を水中Aに浸けたときにその保持具3とブラシ部4とが水没するが、柄部2までもが水中Aに水没することはない。従って、このような刷毛67を対象とするは場合には、保持具3に錘6を配置するのが望ましい。
【0083】
以上、本発明の各実施形態について詳述したが、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨が逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。筆記具として絵筆1を例示しているが、絵筆1以外の刷毛、その他の筆記具でも同様に実施可能である。
【0084】
柄部2は1本の真っ直ぐな軸状のものに限定されず、持ち易いように湾曲した湾曲構造のものでもよい。また柄部2の先端の保持具3を板状に長く構成し、その保持具3の長手方向に沿ってブラシ部4を設けてもよい。
【0085】
柄部2の把持領域5から保持具3側及び保持具3と反対の末端側の外周面は、柄部長手方向に極端な段差がなく大凡平滑状であればよい。その場合、水切り手段8は撥水剤の塗工等により設ければよい。複数の錘6a~6cを柄部長手方向に所定間隔を置いて設ける場合、個々の錘6a~6cは粒状でもよいし、柄部長手方向に多少長いものでもよい。
【0086】
先端側柄部12とこの先端側柄部12に接合された末端側柄部13とにより柄部2を構成する場合、先端側柄部12が長ければ、その先端側柄部12に錘6を備えてもよいし、先端側柄部12が短ければ、末端側柄部13に錘6を備えてもよい。従って、先端側柄部12と末端側柄部13との長短に応じて、その何れかに錘6を設ければ十分である。勿論、先端側柄部12と末端側柄部13との両方に錘6を設けてもよい。
【0087】
中空状の末端側柄部13を使用する場合には、先端側柄部12と末端側柄部13とを接続するに際して、末端側柄部13内に突出する接合部20を先端側柄部12に一体に備え、その接合部20の外周に末端側柄部13を套嵌して接合するが、これ以外の接合構造を採ってもよい。先端側柄部12が短い場合には、保持具3は先端側柄部12と末端側柄部13との接合部20を覆うように設けることが望ましい。
【0088】
柄部2内に柄部長手方向に調整可能に錘6を設ける場合、構造的に小型化する上では、錘6を柄部長手方向に送る送り手段26と、この送り手段26を操作する操作手段27とを設けることが望ましい。柄部2の外周に水切り手段8を備えることが望ましい。その場合、水切り手段8は面積削減手段を備えたものでもよいし、接触削減手段60のないものでもよい。接触削減手段60は柄部2の外周面に球面状の突部を所定間隔をおいて多数設けてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 絵筆
2 柄部
3 保持具
4 ブラシ部
5 把持領域
6,6a~6c 錘
8 水切り手段
12 先端側柄部
13 末端側柄部
20 接合部
26 送り手段
27 操作手段
28 錘収容部
39 廻り止め手段