IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲーの特許一覧

<>
  • 特許-巻取り装置を作動させるための方法 図1
  • 特許-巻取り装置を作動させるための方法 図2
  • 特許-巻取り装置を作動させるための方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】巻取り装置を作動させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/48 20060101AFI20240527BHJP
   B65H 57/26 20060101ALI20240527BHJP
   B65H 63/036 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B65H54/48
B65H57/26
B65H63/036 Z
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019188496
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2020063156
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】10 2018 125 622.1
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディアク デッケン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ-ミヒャエル ルー
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-345473(JP,A)
【文献】特開2016-008144(JP,A)
【文献】米国特許第01990620(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/48
B65H 57/26
B65H 63/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取りパッケージ(4)を回転可能に保持するための糸パッケージフレーム(3)、糸走行方向(5)において前記巻取りパッケージ(4)の上流に配置された、前記巻取りパッケージ(4)への巻取り時に糸(7)を位置決めするための溝付ローラ(6)、および前記溝付ローラ(6)に巻き取るべき前記糸(7)を供給するための供給装置(8)を備えた、糸パッケージ(2)を製造するための巻取り装置(1)を作動させる方法であって、下記の方法ステップ、すなわち、
-糸張力下で前記供給装置(8)を用いて前記溝付ローラ(6)に前記糸(7)を供給する方法ステップと、
-前記溝付ローラ(6)に配置された前記巻取りパッケージ(4)に前記糸(7)を巻き取る方法ステップであって、前記巻取りパッケージ(4)における前記糸(7)の位置が、前記溝付ローラ(6)の溝(9)によって確定される、方法ステップと、
を含む、方法において、
-前記巻取りパッケージ(4)における前記糸(7)の誤った綾振りを阻止するために、前記溝付ローラ(6)の幅にわたって延びていてかつ前記溝付ローラ(6)の表面に平行に旋回可能に支持された糸ガイドエレメント(10)を、前記糸(7)が少なくとも部分的に前記溝付ローラ(6)の前記溝(9)から持ち上げられ、かつ糸張力によって前記糸パッケージ(2)の縁部領域から糸パッケージ中心の方向に引っ張られるように、巻き取るべき前記糸(7)と前記溝付ローラ(6)との間に移動させることができる
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
閉じられた糸走路を備えた糸通路(11)内における糸の供給を、負圧および/または前記糸走行方向(5)とは逆向きの空気流に抗して行っており、前記糸ガイドエレメント(10)は、前記溝付ローラ(6)の周囲に沿って移動することができる、吸込みノズル遮蔽部材の一部である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記糸張力を、前記供給装置(8)の、前記糸走行方向(5)において前記溝付ローラ(6)の上流に配置された糸テンショナ(12)によって生ぜしめ、かつ前記供給装置(8)は、前記糸ガイドエレメント(10)を用いて前記溝(9)から持ち上げられた前記糸(7)が、前記溝付ローラ(6)および/または前記巻取りパッケージ(4)の中心に向かって引っ張られるように、前記溝付ローラ(6)の中心の上流に配置されている、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記巻取りパッケージ(4)を、摩擦によって前記溝付ローラ(6)により駆動し、そのために前記巻取りパッケージ(4)と前記溝付ローラ(6)とを、互いに転動させる、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記巻取りパッケージ(4)と前記溝付ローラ(6)とを、互いに逆向きの回転方向(R1,R2)で駆動する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記溝付ローラ(6)の前記溝(9)から前記糸(7)を持ち上げるために、前記糸ガイドエレメント(10)を、前記溝付ローラ(6)の前記回転方向(R1)に沿って、かつ/または前記巻取りパッケージ(4)の前記回転方向(R2)とは逆方向に移動させる、
請求項記載の方法。
【請求項7】
前記糸ガイドエレメント(10)を用いた前記溝付ローラ(6)の前記溝(9)からの前記糸(7)の持上げを、必要に応じて、誤った綾振りの発生時に、または前記糸パッケージ(2)の縁部領域における前記糸(7)の巻取り時に周期的に行う、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
誤った綾振りを確認するため、および必要に応じて前記糸(7)を持ち上げるために、前記巻取りパッケージ(4)における糸位置および/または糸テンションを監視する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記糸ガイドエレメント(10)を用いた前記溝付ローラ(6)の前記溝(9)からの前記糸(7)の周期的な持上げのために、前記溝付ローラ(6)の回転数、および/または前記溝付ローラ(6)の前記溝(9)における前記糸(7)の位置を監視する、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記溝付ローラ(6)の前記溝(9)からの前記糸(7)の持上げ時に、前記糸ガイドエレメント(10)を、前記糸(7)がちょうど前記溝(9)から持ち上げられるような程度に、前記溝付ローラ(6)の周囲に沿って移動させ、続いて直ぐに前記糸ガイドエレメント(10)を少なくとも、前記糸(7)が新たに前記溝(9)によって案内される程度に、戻し移動させる、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
糸パッケージ(2)を製造するための巻取り装置(1)であって、
-糸(7)を前記糸パッケージ(2)に巻き取るために、巻取りパッケージ(4)を回転可能に保持するための糸パッケージフレーム(3)、
-糸走行方向(5)において前記巻取りパッケージ(4)の上流に配置された、前記巻取りパッケージ(4)への巻取り中に糸(7)を位置決めするための溝(9)を備えた溝付ローラ(6)、および前記溝付ローラ(6)に巻き取るべき前記糸(7)を供給するための供給装置(8)を備えており、前記供給装置(8)は、糸張力下で前記糸(7)を供給するための糸テンショナ(12)を有している、
巻取り装置(1)において、
-前記巻取りパッケージ(4)の端面の領域における前記糸(7)のあや外れを阻止するべく、巻き取るべき前記糸(7)と前記溝付ローラ(6)との間に移動させて、前記糸(7)を前記溝(9)から持ち上げることができるようにするために、前記溝付ローラ(6)の幅を越えて延びている糸ガイドエレメント(10)が、前記溝付ローラ(6)の表面に平行に旋回可能に支持されている
ことを特徴とする、巻取り装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取りパッケージを回転可能に保持するための糸パッケージフレーム、糸走行方向において巻取りパッケージの上流に配置された、糸パッケージを製造するための巻取りパッケージへの巻取り時に糸を位置決めするための溝付ローラ、および溝付ローラに巻き取るべき糸を供給するための供給装置を備えた、糸パッケージを製造するための巻取り装置を作動させる方法であって、このとき糸を、まず、糸テンション下で供給装置を用いて溝付ローラに供給し、かつ次いで、溝付ローラに配置された巻取りパッケージに巻き取り、このとき溝付ローラの溝が、巻取りパッケージにおける糸の位置を確定する、方法に関する。さらに本発明は、糸パッケージを製造するための相応の巻取り装置に関する。
【0002】
印刷物独国特許出願公開第102014009203号明細書に基づいて既に、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットであって、巻取りパッケージを回転可能に保持するための、旋回可能に支持されたパッケージフレーム、巻取りプロセス中に巻取りパッケージが接触しているローラ、および巻取り中断後に巻取りパッケージの表面に巻き上げられた上糸を収容するための、必要な場合に負圧供給可能な糸吸込み装置を備えた、作業ユニットが公知である。このとき糸吸込み装置は、定置に配置された装置であり、この装置は、可動に支持された上側の旋回金属薄板と、可動に支持された下側の旋回金属薄板とを有しており、このとき両旋回金属薄板はそれぞれ、ローラの周囲に配置されていて、両旋回金属薄板が、両旋回金属薄板の間で巻取りパッケージの表面の領域において上糸を収容するために、負圧供給可能な吸込みノズル輪郭を形成するようになっている。
【0003】
しかしながら従来技術に基づいて公知の、巻取り装置を作動させるための方法では、糸パッケージの製造時に、パッケージにおいて糸の誤った綾振り(Fehlverlegung)が生じることがあり、このことは、糸パッケージの品質を低下させ、かつ糸パッケージの後の使用時に、問題を生ぜしめるおそれがある。特に、糸パッケージの両縁部領域の領域において、糸は誤って糸パッケージ側面の部分を越えて延びることがあり、このときこれらのあや外れは、パッケージの糸の不均一な繰出しを惹起することがある。
【0004】
ゆえに本発明の1つの態様は、巻取りパッケージを回転可能に保持するための、特に旋回可能に支持された糸パッケージフレーム、糸走行方向において巻取りパッケージの上流に配置された、糸パッケージを製造するための巻取りパッケージへの巻取り時に糸を位置決めするための溝付ローラ、および溝付ローラに巻き取るべき糸を供給するための供給装置を備えた、糸パッケージを製造するための巻取り装置を作動させる方法であって、糸を、まず、糸テンション下で供給装置を用いて溝付ローラに供給し、かつ次いで糸を、溝付ローラに配置された巻取りパッケージに巻き取り、このとき溝付ローラの溝が、巻取りパッケージにおける糸の位置を確定する、方法に関する。
【0005】
本発明に係る方法は、巻取りパッケージにおける糸の誤った綾振りを、特に糸パッケージの端面の領域におけるあや外れを阻止するために、溝付ローラの幅にわたって延びていてかつ溝付ローラの表面に平行に旋回可能に支持された糸ガイドエレメントを、糸が少なくとも部分的に溝付ローラの溝から持ち上げられ、かつ糸テンションによって糸パッケージの縁部領域から糸パッケージ中心の方向に引っ張られるように、巻き取るべき糸と溝付ローラとの間に移動させることができることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る、糸パッケージを製造するための巻取り装置は、糸を糸パッケージに巻き取るために、巻取りパッケージを回転可能に保持するための糸パッケージフレーム、糸走行方向において巻取りパッケージの上流に配置された、巻取りパッケージへの巻取り中に糸を位置決めするための溝を備えた溝付ローラ、および溝付ローラに巻き取るべき糸を供給するための供給装置を有しており、このとき供給装置は、糸テンション下で糸を供給するための糸テンショナを含んでいる。さらに、巻き取るべき糸と溝付ローラとの間に移動させることができるようにするために、溝付ローラの幅を越えて延びている糸ガイドエレメントが、溝付ローラの表面に平行に旋回可能に支持されており、これによって巻取りパッケージにおける糸の誤った綾振りを、簡単に阻止することができる。
【0007】
これによって本発明に係る方法は、誤った綾振りと、特に糸パッケージ縁部もしくは糸パッケージの側面におけるあや外れの形成とを、好適に阻止することができ、このとき少なくとも誤った綾振り前または誤った綾振り時に、溝付ローラの溝によって案内された糸は、少なくとも短時間、糸ガイドエレメントを用いて溝から持ち上げられ、かつ糸テンションに基づいて糸ガイドエレメントに沿ってパッケージの中心に向かって案内され、これによって糸パッケージの縁部における誤った綾振りが解消される。さらに本発明に係る方法のためには、構造的に複雑な糸ガイド装置、および巻取り方法の手間のかかる変更は不要であり、このような糸ガイド装置および変更は、巻取り装置の巻取り速度を低下させるおそれがある。
【0008】
巻取り装置は、基本的には、ただ1本の糸から糸パッケージを製造するように設けられた装置である。このとき巻取り装置は、別体の部材であり、かつ特に単一の機械であってよい。しかしながら好ましくは、巻取り装置は、繊維機械もしくは紡績機、特にロータ紡績機の一部である。同様に好ましくは、巻取り装置は、パッケージ、特に綾巻き糸パッケージを製造する繊維機械の多数の作業ユニットのうちの1つの作業ユニット、特に多数の同一の作業ユニットのうちの1つの作業ユニットである。特に好ましくは、巻取り装置は、特にオートコーナの自動式の巻取り機の作業ステーションである。このような巻取り装置、または巻取り装置を有する作業ユニットは、好ましくはさらにそれぞれ、下糸センサ、糸テンショナ、糸切断装置を備えた糸クリアラ、糸張力センサ、糸捕捉ノズル、および/またはパラフィン処理装置を備えている。
【0009】
糸パッケージを製造するために、1本の糸が、完全に完成したまたは満管の糸パッケージ/巻取りパッケージが形成されるまで、まずは空の巻取りパッケージに巻かれる。好ましくは、糸の巻取りは、糸パッケージにおける糸の経過の予め設定された配置形態で行われる。好ましくは、巻取り装置を用いて、もしくは糸パッケージを製造する繊維機械の作業ユニットのそれぞれの作業ユニットを用いて、給糸ボビン、例えば、特に好ましくは繊維機械、例えばリング紡績機、ロータ紡績機、または空気紡績機を用いて製造されて、比較的僅かな糸材料を有している紡績コップが、極めて特に好ましくは給糸ボビンに比べて著しく大きな糸体積を有している糸パッケージに、特に綾巻き糸パッケージに巻き返される。糸は、まずは、任意の材料、特に羊毛または木綿のような天然繊維、および/または化学繊維製の、繊維から成っている任意の、特に撚られた紡績糸であってよい。好ましくは、糸は、ヤーン(Garn)、撚糸、またはこれに類したものである。
【0010】
糸は、糸パッケージを製造するために巻取りパッケージに溝付ローラを介して連続的に供給され、このとき糸走行方向は、この供給時における糸の移動方向である。供給装置は、基本的には、任意の材料製の任意に多数の部材またはアセンブリから形成されていてよい。好ましくは、供給装置は完全に閉鎖されて形成されており、これによって、巻取り装置の周囲における繊維塵もしくは繊維の拡散を、可能な限り減じることができる。好ましくは、供給装置、および特に供給装置の、糸を供給するための開口は、溝付ローラおよび/または巻取りパッケージの中心に配置されている。同様に好ましくは、供給装置を用いた供給は、溝付ローラの表面に向かって直角に方向付けられて行われる。
【0011】
糸の供給は、本発明によれば糸テンション下で行われる。この糸テンションは、基本的には任意の形式で生ぜしめることができる。そのために糸には、機械的に、特に糸テンショナを用いて、かつ/または糸走行方向とは逆向きの空気流によってテンションを加えることができる。したがって糸の巻取りは、糸テンションに抗して行われ、これによってパッケージを綺麗にかつキンクなしに製造することができる。
【0012】
糸パッケージを製造するために、巻取りパッケージは糸パッケージフレームによって保持され、この糸パッケージフレームは、糸を巻き取るために巻取りパッケージの回転を可能にする。このとき好ましくは、糸パッケージフレームは旋回可能に支持されており、このとき糸パッケージフレームの旋回軸線は、好ましくは巻取りパッケージおよび/または溝付ローラの回転軸線に平行に延びている。
【0013】
巻取りローラにおける巻取り時の糸の正確な位置を決定するため、もしくは巻取り時に糸を案内するために、糸走行方向において巻取りパッケージの上流には、特に巻取りパッケージの直ぐ上流には、極めて特に好ましくは巻取りパッケージとの相互に転動する接触部には、溝付ローラが配置されている。好ましくは、溝付ローラは少なくとも巻取りパッケージと同じ長さを有しており、これによって、巻取り中に糸パッケージもしくは巻取りパッケージの全幅にわたる、糸の確実な案内を保証することができる。
【0014】
糸を案内するために、溝付ローラは、表面に少なくとも1つの溝を有していて、この溝内において、巻き取るべき糸が案内される。糸が巻取り装置において溝付ローラもしくは溝付ローラの溝によって案内されると、溝付ローラによって糸は、溝の幾何学形状によって予め設定された周知の経過を強いられる。このとき少なくとも1つの溝は、好ましくは、糸パッケージが綾巻き糸パッケージに巻かれるように延びている。
【0015】
綾巻き糸パッケージを製造できるようにするために、溝付ローラは、好ましくはただ1つの溝を有していて、この溝は、溝付ローラの一端から他端に向かって、かつ再び他端から一端に向かって角度を成して延びており、このとき溝付ローラの表面におけるこの溝は、特に好ましくは、複数回交差するので、溝の個々の部分は、表面において互いに並んで延びている溝であると見なすことができる。特に好ましくは、溝は、少なくとも1つの方向において、特に好ましくは両方向において、溝付ローラの長手方向中心軸線に沿って等しいままの角度を成して延びており、これによって糸パッケージへの糸の均一な巻取りが達成される。
【0016】
糸ガイドエレメントは、まず、任意の部材または任意のアセンブリであってよく、このとき糸ガイドエレメントは、少なくとも周面の全長にわたって、かつ/または溝付ローラの、溝を有する表面の少なくとも全幅にわたって延びているので、糸ガイドエレメントは、溝もしくは溝付ローラにおける糸の位置とは無関係に、糸と溝付ローラとの間にシフトすることができ、これによって糸を溝から持ち上げることができる。そのために糸ガイドエレメントは、好ましくは少なくとも1つの平らな、かつ/または溝付ローラの表面に平行に配置された前縁を有している。特に好ましくは、全糸ガイドエレメントは、溝付ローラの表面に対して等しいままの間隔をおいて湾曲されて形成されている。
【0017】
本発明によれば、糸ガイドエレメントは、少なくとも1つの部分にわたって溝付ローラの表面に平行に旋回可能であり、このときこの旋回運動の中心点もしくは旋回軸線は、好ましくは溝付ローラの回転軸線と同一である。さらに好ましくは、糸ガイドエレメントは、供給装置の、糸を排出するための開口と、溝付ローラの、糸に接触している表面の領域との間の領域内に、完全にシフトすることができる。特に好ましくは、糸ガイドエレメントはまた完全に、この領域から外に移動することができる。
【0018】
糸ガイドエレメントが、供給装置から到来する巻き取るべき糸と、溝付ローラの表面との間に移動させられると、糸は、溝付ローラの溝から持ち上げられ、かつこれによって溝付ローラの回転軸線に沿った方向においてはもはや案内されない。相応に糸は、糸テンションに基づいて、巻取りパッケージもしくは糸パッケージの表面と、供給装置、特に供給装置の、糸のための開口との間において、真っ直ぐな経過へと引っ張られる。供給装置は、好ましくは糸パッケージの一端の領域に配置されているのではなく、かつましてやそれに対して側方にずらされて配置されているのではなく、特に好ましくは糸パッケージおよび/または溝付ローラの中心の領域に配置されているので、溝から持ち上げられた糸は、溝内において案内されている状態とは異なり、糸パッケージ中心の方向に引っ張られ、これによって糸パッケージの縁部の領域における誤った綾振りが、回避または解消される。
【0019】
本発明に係る方法の好適な構成では、糸通路として形成されていて閉鎖された糸走路を備えた供給装置内における供給を、好ましくは負圧および/または糸走行方向とは逆向きの空気流に抗して行い、このとき糸ガイドエレメントは、特に好ましくは吸込みノズル遮蔽部材の一部であり、この吸込みノズル遮蔽部材は、極めて特に好ましくは溝付ローラの周囲区分に沿って移動することができ、これによって好適な形式で本発明に係る方法を実施するために、既存の巻取り装置を、単に溝付ローラの領域において、従来知られていなかった糸ガイドエレメントの追加によって適合させるだけでよく、かつこれによって既存の巻取り装置をも、方法を実施もしくは使用するために高いコストをかけることなしに、その性能を高めることができる。
【0020】
特に好ましくは、吸込みノズル遮蔽部材は、下側のかつ/または内側の吸込みノズル遮蔽部材であり、この吸込みノズル遮蔽部材は、下側の吸込みノズル遮蔽部材として巻取り装置の取付け位置において、溝付ローラの下側にも上側にも移動することができ、これに対して極めて特に好ましくは、同様に、溝付ローラの領域に配置された、第2の、特に上側のかつ/または外側の吸込みノズル遮蔽部材は、単に、溝付ローラの上側に配置するためにだけ設けられている。同様に好ましくは、内側の吸込みノズル遮蔽部材は、外側の吸込みノズル遮蔽部材よりも溝付ローラの表面の近くに配置されており、このとき特に好ましくは、両吸込みノズル遮蔽部材は、互いに無関係に、かつ特にまた互いに上下に移動すること、かつ/または配置することができる。最後に付言すると、好ましくは、1つまたは両吸込みノズル遮蔽部材は旋回金属薄板として形成されている。糸ガイドエレメント、かつ特に吸込みノズル遮蔽部材は、好ましくは、下側の開口および上側の開口を除いて閉鎖された糸通路の1つもしくは複数の端部材を形成している。
【0021】
本発明に係る方法の好適な発展形態では、糸テンションを、供給装置において、糸走行方向において溝付ローラの上流に配置された糸テンショナによって生ぜしめ、かつ/または供給装置は、糸ガイドエレメントを用いて溝から持ち上げられた糸が、溝付ローラおよび/または巻取りパッケージの中心に向かって引っ張られるように、中心で溝付ローラの上流に配置されている。このようになっていると、特に簡単な形式でかつ追加的な部材なしに、糸を、巻取りパッケージにおける誤った綾振り時または誤った綾振り前に、巻取りパッケージの中心の方向に引っ張ることができ、これによって特に、あや外れの形成が確実に阻止される。そのために供給装置は、好ましくは、溝付ローラおよび/または巻取りローラの全幅に関連して、25%以下、特に好ましくは15%以下、極めても特に好ましくは5%以下だけ、中心から変位して配置されている。特に好ましくは、供給装置は、ちょうど中心に配置されている。
【0022】
本発明に係る方法の好適な構成によれば、巻取りパッケージを、摩擦によって溝付ローラにより駆動し、そのために巻取りパッケージと溝付ローラとは、互いに転動する。このようになっていると、特に簡単な形式で、巻取りパッケージにおいて形成される糸パッケージの駆動が達成され、これに対して表面における糸パッケージの軌道速度は、等しいままなので、糸の供給速度を、糸パッケージ直径の増大と共に高める必要がなく、好適である。そのために巻取りパッケージおよび/または巻取りパッケージフレームの回転軸線は、溝付ローラの回転軸線に平行に配置されている。特に好ましくは、溝付ローラは駆動ユニットを用いて駆動され、これに対して極めて特に好ましくは、巻取りパッケージおよび/または糸パッケージフレームは、駆動装置なしに形成されている。
【0023】
一般的に、かつ特に溝付ローラによる巻取りパッケージの駆動時には、巻取りパッケージと溝付ローラとを、互いに逆向きの回転方向で駆動すると好適である。このようにすると、溝付ローラの溝から巻取りパッケージの表面への糸の特に容易な引渡しが可能である。相応にさらに好ましくは、糸ガイドエレメントを、溝付ローラの溝から糸を持ち上げるために、溝付ローラの回転方向においてもしくは該回転方向に沿って、かつ/または巻取りパッケージの回転方向とは逆に移動させる。このようにすると、糸ガイドエレメントは、糸走行方向において糸と溝付ローラとの間に移動させられ、かつこれによって、単に僅かな摩擦しか、もしくは位置固定の糸ガイドエレメントに対して減じられた摩擦しか、糸ガイドエレメントと糸との間において生じないことになる。
【0024】
基本的に本発明に係る方法は、糸の誤った綾振りを阻止するために任意に使用することができる。このとき糸ガイドエレメントを用いた溝付ローラの溝からの糸の持上げを、必要に応じて、誤った綾振りの発生時に、または糸パッケージの縁部領域における糸の巻取り時に周期的に行うことができる。誤った綾振りを確認するために、かつ/または糸を必要に応じて持ち上げるために、糸の巻取り、および特にこのとき糸パッケージもしくは巻取りパッケージにおける糸位置、および/または糸テンションが監視され、このとき本発明に係る方法は、この好適な構成に相応して特に好ましくは、そのために必要性がある場合、つまり誤った綾振りが行われた場合にだけ、使用される。このとき監視は、任意の形式で行うことができる。このとき例えば、特にカメラを用いた光学式の監視が考えられる。また糸テンションの監視を、特に糸張力センサを用いて行うことも可能である。それというのは、誤った綾振り時、特に糸パッケージの側面におけるあや外れの形成時には、糸テンションの変化、特に急激な低下が発生するからである。糸の速度の監視を行うことも可能である。それというのは、糸の正確な案内時には、溝付ローラは糸に、溝の幾何学形状によって予め設定された周知の経過を強い、かつこれによって糸の速度の経過を周知の経過と比較し、かつ偏差が十分に大きい場合には、糸の誤った綾振りを推測することができるからである。
【0025】
同様に好ましくは、溝付ローラの溝から糸を周期的に持ち上げることも可能であり、このようなことは、糸が糸パッケージもしくは巻取りパッケージの縁部領域に位置している場合に、特に好適である。そのために溝付ローラの回転数、および/または溝付ローラの溝内における糸の位置を、監視することができる。
【0026】
本発明に係る方法の好適な発展形態によれば、溝付ローラの溝からの糸の持上げ時に、糸ガイドエレメントを、糸がちょうど、特にちょうど完全に、溝から持ち上げられるような程度に、溝付ローラの周囲に沿って移動させ、このとき特に好ましくは、直ぐに続いて糸ガイドエレメントを少なくとも、糸が新たに溝によって案内される程度に、戻し移動させる。このようにすると、一方では誤った綾振りが阻止され、かつ他方では巻取りは、確定された糸位置によって短時間しか妨げられない。それというのは、溝から持ち上げられた糸の位置は、完全には特定することができないからである。
【0027】
次に、本発明に係る方法の1実施形態について図面を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】糸パッケージを製造するための巻取り装置を示す斜視図である。
図2】溝付ローラの溝内における糸と共に、図1に示された巻取り装置の一部分を概略的に示す側面図である。
図3】糸ガイドエレメントを用いて溝付ローラの溝内から持ち上げられた糸と共に、図2に示された巻取り装置の部分を概略的に示す側面図である。
【0029】
図1に示された、糸パッケージ2を製造するための巻取り装置1は、互いに同一の多数の作業ユニットのうちの1つの作業ユニットであり、これらの作業ユニットは、糸パッケージ2を製造する繊維機械、例えば自動綾巻きワインダに互いに平行に配置されている。巻取り装置1のそれぞれの巻取り装置は、紡績機を用いて製造された、比較的僅かな糸材料しか有していない給糸ボビン13を、大きな体積の巻取りパッケージ4に、通常は、糸パッケージ2に巻き返すために使用される。
【0030】
そのために巻取り装置1は、旋回軸線18を中心にして旋回可能に支持された糸パッケージフレーム3を有しており、この糸パッケージフレーム3に、糸パッケージ2を形成するための巻取りパッケージ4を配置することができる。糸パッケージフレーム3は、糸7の全巻取り中に巻取りパッケージ4が溝付ローラ6の表面に接して転動できるように支持されており、このとき巻取りパッケージ4は、溝付ローラ6により摩擦によって駆動される。
【0031】
溝付ローラ6と巻取りパッケージ4とは、互いに平行な回転軸線を有していて、互いに逆向きの方向R1,R2で回転する。糸パッケージフレーム3の回転軸線18もまた、両回転軸線に平行に延びている。溝付ローラ6は表面に、回転軸線に対して角度を成していてかつ溝付ローラ6の一端から他端に向かって延びかつ再び戻るように延びているただ1つの溝9を有しており、この溝9は、溝付ローラ6の表面におけるその延在形状において、それ自体複数回交差している。溝9は、巻き取るべき糸7を収容するように設けられており、このとき糸7は、巻取り前に、溝付ローラ6の一部分に沿って変向され、かつこれによって、糸7が巻取りパッケージ4の表面に巻き取られる位置を、溝9が決定している。
【0032】
給糸ボビン13から繰り出された糸7は、供給装置8を用いて溝付ローラ6の中心へと案内され、この場合供給装置8は、ほぼ閉じられた糸通路11として形成されている。糸通路11に沿って、糸走行方向5において給糸ボビン13から巻取りパッケージ4へと、糸テンショナ12、糸クリアラ14、および糸張力センサ17、ならびに溝付ローラ6が配置されている。
【0033】
供給装置8の上端部は、糸吸込み装置15として形成されていて、かつそのために吸込み管片16を介して負圧クロスビーム(負圧管路)20に接続されており、この負圧クロスビーム20は、繊維機械の、それぞれ1つの巻取り装置1を有する全作業ユニットにわたって延びている。さらに糸吸込み装置15に隣接して、糸継ぎユニット19が供給装置8に配置されており、この糸継ぎユニット19を用いて、糸7の、既に糸パッケージ2に巻き取られた部分を、新たに供給された給糸ボビン13の糸7に糸継ぎすることができる。
【0034】
糸パッケージ2を製造するために、まず、巻き取るべき糸7が給糸ボビン13から供給装置8を用いて溝付ローラ6に供給され、この溝付ローラ6において糸7は、溝付ローラ6の表面の溝9内において延びていて、かつこれによって溝付ローラ6の表面の1つの部分に沿って、巻取りパッケージ4における予め設定された位置へと変向される(図2参照)。供給装置8の、糸吸込み装置15として形成された上端部は、通常、溝付ローラ6の下に配置された糸ガイドエレメント10と、溝付ローラ6の上に配置された旋回金属薄板21とを有しており、このとき糸ガイドエレメント10および旋回金属薄板21は、供給装置8の上側の開口を、例えば紡績繊維(Textilfaser)の効果的な吸込みが行われ得るように、小さく保っている。そのために糸ガイドエレメント10および旋回金属薄板21は、溝付ローラ6の表面に沿って延びる吸込みノズル遮蔽部材として形成されている。
【0035】
糸7が巻取り時に糸パッケージ2の縁部領域に達し、特に該縁部領域を越えると、これによって不所望のあや外れ(Abschlag)が形成される。本発明に係る方法によれば、糸ガイドエレメント10は、糸7が溝付ローラ6の表面における溝9から持ち上げられるように、溝付ローラ6の表面に対して平行に移動させられる(図3参照)。糸張力と、溝付ローラ6の中心における供給装置8の端部の配置形態とに基づいて、あや外れを形成する誤って綾振りされた糸7は、もはや長くは溝9によってその位置に拘束されなくなり、溝付ローラ6の中心へと引っ張られ、これによってあや外れまたは他の誤った綾振りを、再び解消することができる。
【0036】
続いて直ぐに糸ガイドエレメント10は、再びのその通常の位置に移動させられ、この位置においては、もはや糸7との接触は存在せず、かつ結果として糸7は、再び溝付ローラ6の溝9内において延在することになる。
【符号の説明】
【0037】
1 巻取り装置
2 糸パッケージ
3 糸パッケージフレーム
4 巻取りパッケージ
5 糸走行方向
6 溝付ローラ
7 糸
8 供給装置
9 溝
10 糸ガイドエレメント
11 糸通路
12 糸テンショナ
13 給糸ボビン
14 糸クリアラ
15 糸吸込み装置
16 吸込み管片
17 糸張力センサ
18 旋回軸線
19 糸継ぎユニット
20 負圧クロスビーム
21 旋回金属薄板
R1 溝付ローラの回転方向
R2 巻取りパッケージの回転方向
V 糸ガイドエレメントの移動方向
図1
図2
図3