(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ホイッピングが低減された医療用デバイスシャフト
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240527BHJP
A61B 5/367 20210101ALI20240527BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B5/367
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019235837
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-10-24
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】マリベス・エスゲラ・ウィルチンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・トーマス・キース
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-188569(JP,A)
【文献】米国特許第6571131(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0106170(US,A1)
【文献】国際公開第2015/093602(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/367
A61B 18/14
A61M 25/00 ―25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用プローブであって、
可撓性の挿入管であって、近位セグメント及び偏向可能な遠位セグメントを備え、かつ前記挿入管を通って長手方向に延びる第1及び第2の
管状構造体を含み、
前記第1の管状構造体が第1の管腔を有し、前記第2の管状構造体が第2の管腔を有し、前記第1及び第2の
管状構造体が、前記近位セグメント内で、少なくとも部分的に互いに接触しながら互いの周りにより合わされており、かつ前記偏向可能な遠位セグメント内で互いに対して平行に延びる、可撓性の挿入管と、
前記第1及び第2の管腔をそれぞれ通って延び、かつ前記挿入管の前記偏向可能な遠位セグメント内に固設されているそれぞれの第1及び第2の遠位端部を備える、第1及び第2のワイヤと、を備える、医療用プローブ。
【請求項2】
前記第1及び第2の管状構造体が第1及
び第2の圧縮コイルをそれぞれ含む
、請求項
1に記載の医療用プローブ。
【請求項3】
前記挿入管を通って長手方向に延びる第3の管腔を備え、前記第1の管腔、前記第2の管腔、及び前記第3の管腔が、前記近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項4】
前記第3の管腔を通って延びる1つ又は2つ以上の機能的要素を備え、所与の機能的要素が、追加のワイヤ、ケーブル、及び潅注ラインからなるリストから選択される、請求項
3に記載の医療用プローブ。
【請求項5】
前記第1及び第2のワイヤの各々を引っ張ることが、前記偏向可能な遠位セグメントを異なるそれぞれの方向に偏向させる、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項6】
前記近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられている前記第1及び第2の管腔は、前記
医療用プローブが回転される際に前記
医療用プローブのホイッピングを制限する、請求項
5に記載の医療用プローブ。
【請求項7】
前記第1及び前記第2のワイヤが、それぞれの第1及び第2の近位端部を備え、前記第1及び第2のワイヤの前記引っ張りを制御するために、前記第1及び第2の近位端部に連結されたハンドルを備える、請求項
5に記載の医療用プローブ。
【請求項8】
前記偏向が、二次元平面内にある、請求項
5に記載の医療用プローブ。
【請求項9】
前記第1及び第2のワイヤの前記第1及び第2の端部が、前記挿入管の前記偏向可能な遠位セグメント内の異なるそれぞれの点においてそれぞれ固設されている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項10】
医療用プローブを作製するための方法であって、
可撓性の挿入管を提供することであって、前記挿入管が、近位セグメント及び偏向可能な遠位セグメントを備え、かつ前記挿入管を通って長手方向に延びる第1及び第2の
管状構造体を含み、
前記第1の管状構造体が第1の管腔を有し、前記第2の管状構造体が第2の管腔を有し、前記第1及び第2の
管状構造体が、前記近位セグメント内で、少なくとも部分的に互いに接触しながら互いの周りにより合わされており、かつ前記偏向可能な遠位セグメント内で互いに対して平行に延びる、提供することと、
前記第1及び第2の管腔をそれぞれ通して、第1及び第2のワイヤを延ばすことであって、前記第1及び前記第2ワイヤが、前記挿入管の前記偏向可能な遠位セグメント内に固設されているそれぞれの第1及び第2の遠位端部を有する、延ばすことと、を含む、方法。
【請求項11】
第1及
び第2の圧縮コイルをそれぞれ含む、
前記第1及び第2の管状構造体を提供することを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記挿入管を通して長手方向に第3の管腔を延ばすことを含み、前記第1の管腔、前記第2の管腔、及び前記第3の管腔が、前記近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられている、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記第3の管腔を通して1つ又は2つ以上の機能的要素を延ばすことを含み、所与の機能的要素が、追加のワイヤ、ケーブル、及び潅注ラインからなるリストから選択される、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1及び第2のワイヤの各々を引っ張ることが、前記偏向可能な遠位セグメントを異なるそれぞれの方向に偏向させる、請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
前記近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられている前記第1及び第2の管腔は、前記
医療用プローブが回転される際に前記
医療用プローブのホイッピングを制限する、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1及び前記第2のワイヤが、それぞれの第1及び第2の近位端部を備え、前記第1及び第2のワイヤの前記引っ張りを制御するために、前記第1及び第2の近位端部に連結されたハンドルを備える、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記偏向が、二次元平面内にある、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1及び第2のワイヤの前記第1及び第2の端部を、前記挿入管の前記偏向可能な遠位セグメント内の異なるそれぞれの点においてそれぞれ固設することを含む、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、侵襲的プローブに関し、具体的には、偏向可能な遠位セグメントを有する医療用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
身体器官(例えば、心臓)の空洞をマッピングするなどのいくつかの医療手技は、医療用プローブを空洞内に挿入することによって行われる。いくつかの構成において、医療用プローブは、平面に沿って偏向され得る遠位セグメントを備える。偏向(すなわち、医療用プローブの延長、後退、及び回転と共に)は、偏向可能な遠位セグメントの遠位先端が、体腔内の異なる場所において組織に係合することを可能にする。
【0003】
追加の構成において、医療用プローブは、治療結果を提供するために、プローブの遠位端部と接触している組織をアブレーションするように、高周波(radio frequency、RF)電流を送達することができる。代替的な構成において、医療用プローブは、治療結果を提供するために、レーザ、超音波、又は極低温冷却などの異なるエネルギー源を送達することができる。
【0004】
Weblerの米国特許出願第2010/0057050号は、増分回転のために構成されたカテーテルを説明している。カテーテルは、シャフトが回転する際に、シャフトのホイッピングを最小化する、増分回転誘導特徴部を備える遠位セクションを有するシャフトを含む。増分回転誘導特徴部の例は、シャフトの周囲で円周方向に離間された、より低い曲げ弾性率の2つ又は3つ以上の長手方向シャフト部分を備える。
【0005】
Chowらの米国特許出願第2005/0070844号は、偏向可能なカテーテルを説明している。カテーテルは、近位セクションと、近位セクションよりも可撓性である遠位セクションと、を有する、シャフトを含む。カテーテルはまた、近位セクションにおいてシャフト内でほぼ中央に位置し、遠位セクションにおいてシャフトの中心から外れて位置する管腔内に配置された針アセンブリ及び腱を含む。いくつかの実施形態において、腱及び針アセンブリは、互いの周囲に捻じ曲げられている。
【0006】
Hayzeldenらの米国特許出願第2002/0165461号は、軸方向圧縮負荷に抵抗するためのシャフト支持システムを有する操縦可能なカテーテルを説明している。カテーテルは、比較的可撓性の遠位端部領域を有し、ハンドルから遠位先端へのトルク伝達を増強させるためのトルク伝達システムを含む。トルク伝達システムは、カテーテルの遠位端部領域を通るトルク伝達を増強させるために、比較的可撓性の遠位端部領域内の平坦なリボンを含む。
【0007】
Websterの米国特許第6,183,463号は、双方向制御ハンドルを有する双方向操縦可能なカテーテルを説明している。カテーテルは、ワイヤ対によって形成された熱電対を含む。ワイヤ対のワイヤは、互いから電気的に隔離されており(それらの遠位端部を除いて)、共に捻じ曲げられており、プラスチック管の短い片で被覆されており、かつエポキシで被覆されている。
【0008】
McDanielらの米国特許出願第2006/0184106号は、面内偏向を有する操縦可能なカテーテルを説明している。カテーテルは、一対の直径方向に対向する管腔を有する可撓性プラスチック管を含む、カテーテル本体の遠位端部に先端セクションを有する。カテーテルはまた、2本の牽引ワイヤを含み、ワイヤの各々は、先端セクション内の1対の管腔のうちの1つを通って、かつカテーテル本体を通って延在し、その近位端部において、制御ハンドルに固設されており、その遠位端部において、先端セクションに固設されている。
【0009】
参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみが考慮されるべきである点を除き、本出願の不可欠な一部であるとみなされるものとする。
【0010】
上記説明は、当該分野における関連技術の一般的概論として記載したものであって、この説明に含まれる何らの情報が本特許出願に対する先行技術を構成することを容認するものと解釈するべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、医療用プローブであって、可撓性挿入管であって、近位セグメント及び偏向可能な遠位セグメントを有し、かつ挿入管を通って長手方向に延びる第1及び第2の管腔を含み、第1及び第2の管腔が、近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられており、かつ偏向可能な遠位セグメント内で互いに対して平行に延びる、可撓性挿入管と、第1及び第2のワイヤであって、第1及び第2の管腔をそれぞれ通って延び、かつ挿入管の偏向可能な遠位セグメント内に固設されているそれぞれの第1及び第2の遠位端部を有する、第1及び第2のワイヤと、を備える、医療用プローブが提供される。
【0012】
一実施形態において、医療用プローブはまた、第1及び第2のワイヤをそれぞれ含み、かつ第1及び第2の管腔をそれぞれ含む、第1及び第2の圧縮コイルを含む。追加の実施形態において、医療用プローブは、第1及び第2の圧縮コイルをそれぞれ含む、第1及び第2の管状構造体を更に含む。
【0013】
別の実施形態において、医療用プローブは、挿入管を通って長手方向に延びる第3の管腔を更に含み、第1の管腔、第2の管腔、及び第3の管腔は、近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられている。補足的な実施形態において、医療用プローブはまた、第3の管腔を通して延びる1つ又は2つ以上の機能的要素を含み、所与の機能的要素は、追加のワイヤ、ケーブル、及び潅注ラインからなるリストから選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、ワイヤの各々を引っ張ることは、偏向可能な遠位セグメントを異なるそれぞれの方向に偏向させる。一実施形態において、近位セグメント内で互いに捻じ曲げられている第1及び第2の管腔は、プローブが回転される際にプローブのホイッピングを制限する。別の実施形態において、第1及び第2のワイヤは、それぞれの第1及び第2の近位端部を含み、医療用プローブはまた、ワイヤの引っ張りを制御するために、第1及び第2の近位端部に連結されたハンドルを含む。追加の実施形態において、偏向は、二次元平面内にある。
【0015】
更なる実施形態において、ワイヤの第1及び第2の端部は、挿入管の偏向可能な遠位セグメント内の異なるそれぞれの点においてそれぞれ固設されている。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、医療用プローブを作製するための方法であって、可撓性挿入管を提供することであって、可撓性挿入管が、近位セグメント及び偏向可能な遠位セグメントを有し、かつ挿入管を通って長手方向に延びる第1及び第2の管腔を含み、第1及び第2の管腔が、近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられており、かつ偏向可能な遠位セグメント内で互いに対して平行に延びる、提供することと、第1及び第2の管腔をそれぞれ通して、第1及び第2のワイヤを延ばすことであって、第1及び第2のワイヤが、挿入管の偏向可能な遠位セグメント内に固設されているそれぞれの第1及び第2の遠位端部を有する、延ばすことと、を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書で、本開示をあくまで一例として添付図面を参照しつつ説明する。
【
図1】本発明の一実施形態による、偏向可能な遠位セクションを有する医療用プローブを備える、医療用システムの概略絵図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、医療用プローブの概略的な切り欠き長手方向図である。
【
図3】本発明の実施形態による、心室の内側の偏向可能なセクションの概略絵図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、近位セグメント及び偏向可能な遠位セグメントを備える可撓性挿入管を有する医療用プローブを説明する。医療用プローブは、挿入管を通って長手方向に延びる第1及び第2の管腔を含み、第1及び第2の管腔は、近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられており、偏向可能な遠位セグメント内で互いに対して平行に延びる。近位には、管腔は、ポリマー管によって囲繞された中空コイルによって形成される。「圧縮コイル」と称されるこれらのコイルは、コイルが底部になるように圧縮された様態で固定され、圧縮コイルが、高い軸方向強度を有するが、金属管よりもはるかに高い可撓性を有することを可能にする。医療用プローブはまた、第1及び第2の管腔をそれぞれ通って延びる第1及び第2のワイヤを備え、ワイヤは、挿入管の偏向可能な遠位セグメント内の異なるそれぞれの点において固設され得る、それぞれの第1及び第2の遠位端部を有する。
【0019】
医療手技中、近位セグメントは、シースによって、又は解剖学的構造によって、湾曲するように強制され得る。圧縮コイルが近位セグメントの長さに平行に延びる場合、近位セグメントは、回転依存性の剛性を有し得る。この剛性の結果として、プローブの近位セグメントが医療専門家によってトルクをかけられる(すなわち、回転される)ときに、ホイッピング(すなわち、遠位セクションの所望されない回転移動)が生じ得る。これは、プローブが解剖学的構造の特定の場所に到達し、安定したままであることを困難にし得、特に治療の送達中に、意図されないカテーテルの移動による潜在的な安全性の懸念が生じ得る。本発明の実施形態を実装する医療用プローブにおいて、圧縮コイルは、近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられている。結果として、プローブの近位セグメントは、回転対称であり、優先的な曲げ方向を有しない。したがって、本発明の実施形態を実装する医療用プローブの遠位セグメントは、典型的に、医療専門家によってトルクをかけられるときに最小限のホイッピングを有する。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、医療用プローブ22及び制御コンソール24を備える、医療用システム20の概略絵図である。医療用システム20は、例えば、33 Technology Drive,Irvine,CA 92618 USAのBiosense Webster Inc.によって製造されるCARTO(登録商標)システムに基づき得る。本明細書において以降で説明される実施形態において、医療用プローブ22は、例えば、患者28の心臓26において電位をマッピングするための、診断又は治療処置のために使用することができる。代替的に、医療用プローブ22を、心臓又は他の体の臓器における他の治療及び/又は診断目的のために、必要な変更を加えて使用してもよい。
【0021】
プローブ22は、挿入管30と、挿入管の近位端部に連結されたハンドル32と、を備える。ハンドル32を操作することによって、医療専門家34は、患者28の体腔内にプローブ22を挿入することができる。例えば、医療専門家34は、プローブ22の遠位端部36が心臓26の心室に進入し、所望の場所(単数又は複数)において心内膜組織に係合するように、プローブ22を患者28の血管系を通して挿入することができる。
【0022】
制御コンソール24は、ケーブル38によって身体表面電極に接続され、身体表面電極は、典型的には患者28に貼り付けられた接着性皮膚パッチ40を備える。制御コンソール24は、プロセッサ42を備え、プロセッサ42は、電流追跡モジュール44と併せて、接着性皮膚パッチ40と遠位端部36に貼り付けられている電極46との間で測定されたインピーダンス及び/又は電流に基づいて、心臓26の内側の遠位端部36の位置座標を判定する。医療手技中に場所センサとして使用されることに加えて、電極46は、心臓26の電気的活動を測定するなどの他のタスクを実行し得る。
【0023】
上で記載されるように、電流追跡モジュール44と併せて、プロセッサ42は、接着性皮膚パッチ40と電極46との間で測定されるインピーダンス及び/又は電流に基づいて、心臓26の内側の遠位端部36の位置座標を判定し得る。このような判定は、典型的に、インピーダンス又は電流を遠位端部の既知の位置に関連付ける較正プロセスが行われた後である。いくつかの実施形態において、電極46は、心臓26内の組織に信号を印加するように、かつ/又は心臓内の場所における特定の生理学的特性(例えば、局所的表面電位)を測定するように構成することができる。
【0024】
プロセッサ42は、典型的にフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)として構成されたリアルタイムノイズ低減回路48、続いてアナログ-デジタル(analog-to-digital、A/D)信号変換集積回路50を備え得る。プロセッサは、A/D回路50から別のプロセッサへ信号を渡すことができ、かつ/又は上で言及される位置座標を判定するようにプログラムされ得る。
【0025】
図1に示される医療用システムは、遠位端部36の場所を測定するためにインピーダンス又は電流に基づく感知を使用しているが、他の位置追跡技術(例えば、磁気に基づくセンサを使用する技術)が使用されてもよい。インピーダンス及び電流に基づく位置追跡技術は、例えば、米国特許第5,983,126号、同第6,456,864号、及び同第5,944,022号に説明されている。本明細書で上述する位置感知方法は、上述のCARTO(登録商標)システムに実装され、上記で引用した特許に詳細に説明されている。
【0026】
制御コンソール24はまた、入力/出力(input/output、I/O)通信インターフェース51を備え、これは、制御コンソールが、電極46及び接着性皮膚パッチ40から信号を伝達し、かつ/又はこれらに信号を伝達することを可能にする。電極46及び接着性皮膚パッチ40から受信された信号に基づいて、プロセッサ42は、患者の身体内の遠位端部36の位置を示すマップ52を生成することができる。手技中、プロセッサ42は、医療専門家34に対してディスプレイ54上にマップ52を提示し、メモリ56にこのマップを表すデータを記憶することができる。メモリ56は、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなどの任意の好適な揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを備えてもよい。いくつかの実施形態において、医療専門家34は、1つ又は2つ以上の入力デバイス58を使用して、マップ52を操作することができる。代替的な実施形態において、ディスプレイ54は、マップ52を提示することに加えて、医療専門家34からの入力を受け取るように構成され得るタッチスクリーンを備えてもよい。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態による、プローブ22の概略的な切り欠き長手方向図である。挿入管30は、近位セグメント60及び偏向可能な遠位セグメント62を備え、これらは共に生体適合性可撓性材料64によって被覆されている。遠位セグメント62は、近位端部104を備える。
【0028】
挿入管30は、挿入管30内で長手方向に延び、かつそれぞれの管腔70及び72を備える、一対の管状構造体(本明細書において単に管とも称される)66及び68を備える。管腔70及び72(すなわち、管66及び68)は、近位セグメント60内で互いの周囲に捻じ曲げられており、偏向可能な遠位セグメント62内で互いに対して平行に延びる。いくつかの実施形態において、遠位セグメント62は、押出プロセスによって形成されてもよく、管腔は、近位管よりも大きい別個の管として押出中に形成されてもよい。組立中、より小さい直径の近位管は、より大きい直径の遠位管内に結合されて、途切れのない管腔を形成することができる。本発明の実施形態において、互いに平行という用語は、管腔が事前定義された、例えば、10度、5度、又は2度の許容差以内で平行であることを示す。
【0029】
プローブ22はまた、それぞれの遠位端部106及び108を有する一対の圧縮コイル74及び76を備え、それぞれ管66及び68内に収容される。一実施形態において、圧縮コイル74及び76は、ポリウレタン接着剤又はエポキシ(図示せず)などの結合材料でセグメント62内の管腔の近位端部110及び112にそれぞれ固定される。これらの固定場所と遠位端部106及び108との間では、圧縮コイルの各々が、底をつかないように形成され得る。これは、遠位セグメント62内の圧縮コイルのいかなる固定されていないセグメントも偏向中に圧縮することを可能にし、かつ移動を抑制しないことを可能にする。代替的に、圧縮コイル74及び76は、近位固定場所(例えば、場所110及び/又は場所112)で終端されてもよく、低摩擦可撓性管(図示せず)が牽引ワイヤの上に配置されてもよい。この実施形態において、可撓性管の長さは、固定場所110及び112と遠位場所106及び108との間の距離よりも1mm~5mm短いように選択することができ、したがって、可撓性管が所望の偏向を抑制しないことを確実にすることができる。プローブ22は、コイル74及び76内にそれぞれ収容され、それぞれの近位端部82及び84、並びにそれぞれの遠位端部86及び88を有する、一対の牽引ワイヤ78及び80を追加的に備える。
【0030】
一実施形態において、遠位端部86及び88は、プローブ22の遠位セグメント62内の点90及び92にそれぞれ固設されている。別の実施形態において、遠位端部86及び88は、プローブ22の遠位セグメント62内の単一の点(例えば、点90又は92)にそれぞれ固設され得る。
【0031】
代替的な実施形態において、挿入管30は、管66及び68を伴わずに、本発明の実施形態を実装するように構成することができる。この代替的な実施形態において、圧縮コイルは、近位セグメント60内で互いの周囲に捻じ曲げられており、遠位セグメント62の近位端部104に進入する。
【0032】
図2に示される構成において、近位端部82及び84は、ハンドル32内の偏向ノブ94にそれぞれ連結されている。以下に説明されるように、医療専門家34は、紙の平面に対応する二次元平面96における遠位セグメント62の偏向を制御するために、ノブ94を操作することができる。
【0033】
図2に示される構成において、ハンドル32は、2つのラックギアチャネル116を含むハウジング114を備える。好ましくは、ラックギアチャネル116は、ハウジング114内の反対の四分円に位置する。ラックギア118は、各ラックギアチャネル116内に摺動可能に装着され得る。各ラックギア118は、略矩形であり、その内側縁部の長さに沿って歯120を有する。ラックギア118の間には、歯124も有するスパーギア122がある。スパーギア122の歯124は、ラックギア118の歯120を受容し、それにより、ラックギアのうちの一方の近位移動が、他方のラックギアの遠位移動をもたらす。
【0034】
牽引ワイヤ78及び80の近位端部82及び84は、牽引ワイヤ連結具126によって、ラックギア118の遠位端部にそれぞれ取り付けられている。連結具126は、ラックギア118と一体であってもよく、又はラックギアに固定的に取り付けられてもよい。各ラックギア118は、例えば、ポリウレタン又はエポキシで、連結具126にはんだ付け又は接着されてもよい。代替的に、各牽引ワイヤ連結具126の近位端部は、対応するラックギア118の遠位端部にねじ山付き支柱を受容するためのねじ穴を備えてもよい。連結具126は、アルミニウム、黄銅、又はステンレス鋼などの任意の好適な材料で作製することができる。
【0035】
偏向ノブ94は、ハンドルハウジング114の周囲に延在し、ハンドル32がどのように回転されるかにかかわらず、医療専門家34がノブを操作することを可能にする。偏向ノブ94が近位に移動すると、対応するラックギア118は、近位方向に移動し、取り付けられた牽引ワイヤが近位に引っ張られる。これにより、遠位セグメント62は、遠位セグメント内の管腔の四分区間の方向に偏向し、遠位セグメントを通って牽引ワイヤが延在する。
【0036】
逆に、偏向ノブ94が遠位に押されると、対応するラックギア118は、遠位に移動する。結果として、反対のラックギア118は、近位に移動し、対応する牽引ワイヤを引っ張り、遠位セグメント62を反対方向に偏向させる。
【0037】
図2に示される構成において、プローブ電極46は、医療用プローブ62の遠位先端98上に貼り付けられている。電極46は、挿入管30内の追加の管腔(図示せず)を通って延びるワイヤ(図示せず)によって、制御コンソール24に接続されている。上で説明されるように、システム20は、遠位端部36の場所を判定し、心臓26の電気的活動を測定するなどのタスクのために電極46を使用することができる。いくつかの実施形態において、管66、68、及びそれぞれの管腔が1つ又は2つ以上の機能的要素(例えば、追加のワイヤ、ケーブル、及び灌注ライン)を含み得る追加の管状構造体は、近位セグメント60内で互いの周囲に捻じ曲げられ得る。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態による、心臓26の心室130における遠位セグメント62の概略的な詳細図である。遠位先端を位置付けて、心室130内の任意の心内組織132に係合させるとき、医療専門家34は、ハンドル32を回転させて、挿入管30を回転させることができ、かつノブ94を操作して、遠位セグメント62を偏向(すなわち、屈曲)させることができる。上で説明されるように、近位セグメントが、ワイヤ80及び圧縮コイル76の周囲に捻じ曲げられた、ワイヤ78及び圧縮コイル74を備えているため、近位セグメント60は回転対称である。したがって、屈曲したときでさえも、操作者がハンドル32を回転させるとき、遠位セグメントは、典型的に、最小限のホイッピングを有する。
【0039】
いくつかの構成において、コイル74及び76の捻じ曲げ/インチ(twists per inch、TPI)は、1インチ当たり0.5~2.0回の捻じ曲げの範囲であり得る。医療手技の間、近位セグメント60が横断する必要がある屈曲は、典型的に、偏向可能なセグメント62の屈曲と比較して、比較的緩やかである。例えば、いくつかの医療手技において、プローブ22は、下大静脈を横断する。左心房への経中隔アクセスを得るために、プローブは、90度回転する必要がある。次いで、医療専門家がプローブ22を左心室に進入させたい場合、これは、更なる90度の回転を必要とし得る。
【0040】
近位セグメント60セグメントの「密な」曲げ半径は、約1インチであり得る。このシナリオにおいて、90度の回転(すなわち、円の4分の1)は、約1.6インチの経路長を必要とする。牽引ワイヤ及び圧縮コイルの最も低い捻じ曲げ(すなわち、0.5TPI)において、90度の回転では、半分を超える捻じ曲げ周期が依然として存在するであろう。したがって、回転の一部にわたって、牽引ワイヤは、その方向に優先的に屈曲するように付勢され、回転の別の部分にわたって、牽引ワイヤは、反対方向に優先的に屈曲するように付勢される。
【0041】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上に具体的に示し説明したものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書で上述のとおり様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を一読すると当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形及び改変を含む。
【0042】
〔実施の態様〕
(1) 医療用プローブであって、
可撓性挿入管であって、近位セグメント及び偏向可能な遠位セグメントを備え、かつ前記挿入管を通って長手方向に延びる第1及び第2の管腔を含み、前記第1及び第2の管腔が、前記近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられており、かつ前記偏向可能な遠位セグメント内で互いに対して平行に延びる、可撓性挿入管と、
前記第1及び第2の管腔をそれぞれ通って延び、かつ前記挿入管の前記偏向可能な遠位セグメント内に固設されているそれぞれの第1及び第2の遠位端部を備える、第1及び第2のワイヤと、を備える、医療用プローブ。
(2) 前記第1及び前記第2のワイヤをそれぞれ含み、かつ前記第1及び前記第2の管腔をそれぞれ備える、第1及び第2の圧縮コイルを備える、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(3) 前記第1及び前記第2の圧縮コイルをそれぞれ含む、第1及び第2の管状構造体を備える、実施態様2に記載の医療用プローブ。
(4) 前記挿入管を通って長手方向に延びる第3の管腔を備え、前記第1の管腔、前記第2の管腔、及び前記第3の管腔が、前記近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(5) 前記第3の管腔を通って延びる1つ又は2つ以上の機能的要素を備え、所与の機能的要素が、追加のワイヤ、ケーブル、及び潅注ラインからなるリストから選択される、実施態様4に記載の医療用プローブ。
【0043】
(6) 前記ワイヤの各々を引っ張ることが、前記偏向可能な遠位セグメントを異なるそれぞれの方向に偏向させる、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(7) 前記近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられている前記第1及び第2の管腔は、前記プローブが回転される際に前記プローブのホイッピングを制限する、実施態様6に記載の医療用プローブ。
(8) 前記第1及び前記第2のワイヤが、それぞれの第1及び第2の近位端部を備え、前記ワイヤの前記引っ張りを制御するために、前記第1及び第2の近位端部に連結されたハンドルを備える、実施態様6に記載の医療用プローブ。
(9) 前記偏向が、二次元平面内にある、実施態様6に記載の医療用プローブ。
(10) 前記ワイヤの前記第1及び第2の端部が、前記挿入管の前記偏向可能な遠位セグメント内の異なるそれぞれの点においてそれぞれ固設されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
【0044】
(11) 医療用プローブを作製するための方法であって、
可撓性挿入管を提供することであって、前記可撓性挿入管が、近位セグメント及び偏向可能な遠位セグメントを備え、かつ前記挿入管を通って長手方向に延びる第1及び第2の管腔を含み、前記第1及び第2の管腔が、前記近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられており、かつ前記偏向可能な遠位セグメント内で互いに対して平行に延びる、提供することと、
前記第1及び第2の管腔をそれぞれ通して、第1及び第2のワイヤを延ばすことであって、前記第1及び前記第2ワイヤが、前記挿入管の前記偏向可能な遠位セグメント内に固設されているそれぞれの第1及び第2の遠位端部を有する、延ばすことと、を含む、方法。
(12) 前記第1及び前記第2のワイヤをそれぞれ含み、かつ前記第1及び前記第2の管腔をそれぞれ備える、第1及び第2の圧縮コイルを提供することを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記第1及び前記第2の圧縮コイルをそれぞれ含む、第1及び第2の管状構造体を提供することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記挿入管を通して長手方向に第3の管腔を延ばすことを含み、前記第1の管腔、前記第2の管腔、及び前記第3の管腔が、前記近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられている、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記第3の管腔を通して1つ又は2つ以上の機能的要素を延ばすことを含み、所与の機能的要素が、追加のワイヤ、ケーブル、及び潅注ラインからなるリストから選択される、実施態様14に記載の方法。
【0045】
(16) 前記ワイヤの各々を引っ張ることが、前記偏向可能な遠位セグメントを異なるそれぞれの方向に偏向させる、実施態様11に記載の方法。
(17) 前記近位セグメント内で互いの周囲に捻じ曲げられている前記第1及び第2の管腔は、前記プローブが回転される際に前記プローブのホイッピングを制限する、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記第1及び前記第2のワイヤが、それぞれの第1及び第2の近位端部を備え、前記ワイヤの前記引っ張りを制御するために、前記第1及び第2の近位端部に連結されたハンドルを備える、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記偏向が、二次元平面内にある、実施態様16に記載の方法。
(20) 前記ワイヤの前記第1及び第2の端部を、前記挿入管の前記偏向可能な遠位セグメント内の異なるそれぞれの点においてそれぞれ固設することを含む、実施態様11に記載の方法。