(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】関節リウマチの治療用組成物および治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20240527BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240527BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A61K31/454
A61P19/02
A61P29/00 101
(21)【出願番号】P 2019563766
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(86)【国際出願番号】 US2018031217
(87)【国際公開番号】W WO2018213027
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-30
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519405514
【氏名又は名称】ジェネラス バイオファーマ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】シン-ユアン フー
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/048247(WO,A1)
【文献】Miklossy, G. et al.,Therapeutic modulators of STAT signalling for human diseases,Nature Reviews. Drug Discovery,2013年,Vol.12, No.8,p.611-629,doi:10.1038/nrd4088
【文献】宮野 良子 ほか,多発性硬化症に伴う疼痛に対するpimozideの臨床効果,神経治療学,1992年,第9巻, 第1号,p.85-90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00-45/08
A61K 31/00-31/80
PubMed
医中誌WEB
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象における関節リウマチの治療または予防のための組成物であって、治療有効量の化合物を含み、ここで前記化合物がピモジド、ピモジドの薬学的に許容される塩及びピモジドの溶媒和物から選択されるものであり、ここで前記化合物が、1日あたり約0.1 mg/kg体重~約5 mg/kg体重の量で前記対象に投与される、組成物。
【請求項2】
前記化合物がピモジドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ピモジドが1日あたり約1mg/kg体重~約5 mg/kg体重の量で前記対象に投与される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記化合物がピモジドの薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記化合物がピモジドの溶媒和物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記対象が抗TNF非応答者である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、薬剤および疾患治療のための該薬剤の使用に関し、具体的にはシグナル伝達兼転写活性化因子5(STAT5)を標的として阻害する薬剤、および生理学的状態、特に炎症性疾患、より具体的には関節リウマチ、ループスおよび多発性硬化症を管理することにおける当該薬剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は自己免疫性関節炎の尋常型であり、膝や手首の関節および手の小関節を冒しうる。RAは滑膜を攻撃する異常な免疫機構によって誘発され、その結果発生する炎症が滑膜を肥厚させ、最終的に関節内の軟骨や骨を破壊してしまう。関節を一緒に結束している腱と靭帯が弱くなり伸びてしまう。徐々に関節の本来の形状と整列が失われる。
【0003】
RAの治療法はない。RAを軽減するための一般的な治療薬には次のものがある:(1) 痛みを和らげ炎症を減らすNSAID;(2) 炎症と痛みを緩和し関節損傷を遅らせる、コルチコステロイド薬などのステロイド薬(例えばプレドニゾン);(3) 関節リウマチの進行を遅らせかつ関節や他の組織を永久的損傷から防御する、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)(DMARDの例としてはメトトレキサート(Trexall, Otrexup, Rasuvo)、レフルノミド(Arava)、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil)およびスルファサラジン (Azulfidine));(4)生体応答改変剤としても知られ、アバタセプト(Orencia)、アダリムマブ(Humira)、アナキンラ(Kineret)、セルトリズマブ(Cimzia)、エタネルセプト(Enbrel)、ゴリムマブ(Simponi)、インフリキシマブ(Remicade)、リツキシマブ(Rituxan)、トシリズマブ(Actemra)およびトファシチニブ(Xeljanz)をはじめとする生物学的作用剤。
【0004】
シグナル伝達兼転写活性化因子5(STAT5)は、2つの高度に関連したタンパク質STAT5AとSTAT5Bを指し、それは7構成員からなるSTATファミリーのタンパク質の一部である。STAT5タンパク質は細胞質シグナル伝達と特異的な遺伝子の発現を媒介することに関与している。異常なSTAT5活性は、広範囲のヒト癌種、例えば慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病およびホジキンリンパ腫に密接に関連することが示されている。
【0005】
ピモジドは、DAT(ドーパミントランスポーター)、並びに、D1、D2、D3、D4、α1/α2-アドレナリン及び5-HT2A受容体を含む幾つかのシナプス後受容体に対する拮抗活性を有する、細胞浸透性でかつ経口投与可能なジフェニルブチルピペリジン系の向精神薬であり、ドーパミンの作用を遮断することにより機能を果たす。ピモジドは、他の薬剤が効かない時に、トゥーレット症候群を有する患者において無制御の運動(運動性チック)または言語/音の噴出(声帯チック)を治療する薬剤としてFDAに承認されている。
【0006】
より最近になって、Nelson他(Blood. 2011;117(12):3421-9)は、STAT依存性遺伝子発現を阻害する薬を同定するために細胞ベースのスクリーニングを使用し、STAT5阻害剤としてピモジドを同定した。彼らは、ピモジドがSTAT5チロシンリン酸化を減少させ、STAT5標的遺伝子の発現を減少させ、かつ慢性骨髄性白血病(CML)細胞系において細胞周期の停止とアポトーシスを誘発することを見出した。具体的には、ピモジドは、Bcr-Ab1+K562培養物とKU812培養物において構成的STAT5 Tyr694リン酸化(5~10μMで3時間処置)と転写活性(5μMで18時間処置)を阻害し、一方でK562細胞中ではIFNα誘発STAT1リン酸化またはLIF誘発STAT3リン酸化に対してはほとんど活性を示さない(10μMで1時間の前処置)。
【0007】
ピモジドの他に、STAT5阻害剤として、N′-((4-オキソ-4H-クロメン-3-イル)メチレン)ニコチノヒドラジド(ニコチノヒドラジド)が挙げられ、これはSTAT5のSH2ドメインを選択的に標的とする(STAT5b SH2ドメインEPOペプチド結合活性に対するIC50=47μM)が、一方でSTAT1、STAT3またはLckのSH2ドメインに対してはかなり低い効果を示す(IC50>500μM)、細胞透過性非ペプチド性ニコチノイルヒドラゾン化合物である。ニコチノヒドラジドは、K562核抽出物においてSTAT5/STAT5 DNA結合活性を抑制し、IFNα誘導STAT5を阻害するが、STAT1またはSTAT3、Daudi細胞でのチロシンリン酸化は阻害しない。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、本発明は、対象において関節リウマチを治療または予防する方法であって、治療有効量の化合物を該対象に投与することを含み、ここで前記化合物がSTAT5阻害剤、またはSTAT5阻害剤の薬学的に許容される塩、またはSTAT5阻害剤の溶媒和物、またはSTAT5阻害剤のプロドラッグである。一実施形態では、該化合物がピモジドである。別の実施形態では、該化合物がニコチノヒドラジドである。
【0009】
別の態様では、本発明は、抗TNF非応答者においてRAを治療または予防する方法であり、治療有効量の化合物を前記抗TNF非応答者に投与することを含み、ここで前記化合物がSTAT5阻害剤、またはSTAT5阻害剤の薬学的に許容される塩、またはSTAT5阻害剤の溶媒和物、またはSTAT5阻害剤のプロドラッグである。一実施形態では、該化合物がピモジドである。別の実施形態では、該化合物がニコチノヒドラジドである。
【0010】
更に別の態様では、本発明は、対象においてSTAT5媒介医学的症状を治療または予防する方法であり、治療有効量の化合物を前記抗TNF非応答者に投与することを含み、ここで前記化合物がSTAT5阻害剤、またはSTAT5阻害剤の薬学的に許容される塩、またはSTAT5阻害剤の溶媒和物、またはSTAT5阻害剤のプロドラッグである。一実施形態では、該化合物がピモジドである。別の実施形態では、該化合物がニコチノヒドラジドである。
【0011】
更に別の態様では、本発明は、対象においてSTAT5媒介自己免疫疾患を治療または予防する方法であり、治療有効量の化合物を前記対象に投与することを含み、ここで前記化合物がSTAT5阻害剤、またはSTAT5阻害剤の薬学的に許容される塩、またはSTAT5阻害剤の溶媒和物、またはSTAT5阻害剤のプロドラッグである。一実施形態では、該化合物がピモジドである。別の実施形態では、該化合物がニコチノヒドラジドである。
【0012】
上記態様の各々の幾つかの実施形態では、ピモジドが1日あたり約0.1 mg/kg体重から約20 mg/kg体重の量で対象に投与されてもよい。
【0013】
上記態様の各々の幾つかの実施形態では、ピモジドが1日あたり約0.1 mg/kg体重から約1 mg/kg体重の量で対象に投与されてもよい。
【0014】
上記態様の各々の幾つかの実施形態では、ピモジドが1日あたり約1 mg/kg体重から約5 mg/kg体重の量で対象に投与されてもよい。
【0015】
上記態様の各々の幾つかの実施形態では、ピモジドが1日あたり約5 mg/kg体重から約10 mg/kg体重の量で対象に投与されてもよい。
【0016】
上記態様の各々の幾つかの実施形態では、前記化合物がSTAT5阻害剤の薬学的に許容される塩であってもよい。別の実施形態では、前記化合物がSTAT5阻害剤の溶媒和物であってもよい。更に別の実施形態では、前記化合物がSTAT5阻害剤のプロドラッグであってもよい。一実施形態では、前記化合物がピモジドである。別の実施形態では、前記化合物がニコチノヒドラジドである。
【0017】
上記態様の各々の幾つかの実施形態では、STAT5活性が次のステップを通して阻害されてもよい:(i)ゲノム編集ツールを提供し;(ii) ゲノム編集ツールを関節組織細胞に送達し;そして(iii) 全STAT5遺伝子、STAT5遺伝子のリン酸化部位、STAT5遺伝子のプロモーター領域、またはSTAT遺伝子のSH2ドメインを削除することによりSTAT5遺伝子を編集する。ある場合には、当該ゲノム編集ツールがCRISPR-CAS9システムである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本特許または特許出願ファイルは、少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公報の複写物は、申請の上、必要費用を支払えば局省庁により提供されるだろう。
【0019】
【
図1A】
図1Aは、賦形剤処置を行ったマウスの膝のH&W染色の顕微鏡画像の代表的切断面である。画像の最も左側のバーは200μmを示す。
【0020】
【
図1B】
図1Bは、
図1Aにマークした長方形領域の拡大図である。画像の最も左側のバーは50μmを示す。
【0021】
【
図1C】
図1Cは、ピモジドで処置したマウス膝のH&E染色の顕微鏡画像の代表的切断面である。画像の最も左側のバーは200μmを示す。
【0022】
【
図1D】
図1Dは、
図1Cにマークした長方形領域の拡大図である。画像の最も左側のバーは50μmを示す。
【0023】
【
図2】
図2は、AIA誘発マウスモデルにおける、ビヒクル群とピモジド治療群の間の膝寸法の差を表すグラフを示した図である。誤差バーは平均値の標準誤差を表す。p値は0.0004である。
【0024】
【
図3】
図3は、アジュバント誘発関節炎(AIA)ラットモデルにおける治療計画を示した図である。予防群では、処置を0日目から開始し、隔日に投与を行った。治療群では、処置を13日目から開始し、隔日に投与を行った。
【0025】
【
図4】
図4は、異なる治療計画のもとでの4つの群のラットAIAモデルにおける体重変化を表すグラフである。ビヒクルは、DMSOで処置したAIAモデルラットの群を指す。治療は、13日目から開始する、30%PEG300溶液中のピモジド(Sigma-Aldrich)l0 mg/kgで処置したAIAモデルラットの群を指す。予防とは、0日目から開始する、30%PEG300溶液中のピモジド(Sigma-Aldrich) l0 mg/kgで処置したAIAモデルラットの群を指す。標準とはAIAモデル誘導を行わなかったラットの群を指す。
【0026】
【
図5】
図5は、異なる治療計画のもとでの4つの群のラットAIAモデルにおける足体積の変化を表すグラフである。ビヒクルは、DMSOで処置したAIAモデルラットの群を指す。治療は、13日目から開始する、30%PEG300溶液中のピモジド(Sigma-Aldrich)l0 mg/kgで処置したAIAモデルラットの群を指す。予防とは、0日目から開始する、30%PEG300溶液中のピモジド(Sigma-Aldrich)l0 mg/kgで処置したAIAモデルラットの群を指す。標準群とはAIAモデル誘導を行わなかったラットの群を指す。
【0027】
【
図6】
図6は、異なる治療計画のもとでの4つの群のラットAIAモデルの臨床スコア変化を表すグラフである。ビヒクルは、DMSOで処置したAIAモデルラットの群を指す。治療は、13日目から開始する、30%PEG300溶液中のピモジド(Sigma-Aldrich) l0 mg/kgで処置したAIAモデルラットの群を指す。予防とは、0日目から開始する、30%PEG300溶液中のピモジド(Sigma-Aldrich)l0 mg/kgで処置したAIAモデルラットの群を指す。標準群とはAIAモデル誘導を行わなかったラットの群を指す。
【0028】
【
図7A】
図7Aと7Bは、異なる治療計画のもとでの5つの群のマウスCIAモデルの体重変化を表すグラフを示す。DBA/1マウスは、各群10匹のマウスとなるように5つの群に無作為に分割した。0日目と21日目に、ブランク対照群を除く全ての群に、尾付近の背側脇腹に50μLのコラーゲン+CFA混合物を皮下接種した。90匹のマウス全ての体重を、実験期間中週3回観察した。
図7Aは、ブランク対照に比較した予防群の体重変化を示す。
図7Bは、ブランク対照に比較した治療群の体重変化を示す。
【
図7B】
図7Aと7Bは、異なる治療計画のもとでの5つの群のマウスCIAモデルの体重変化を表すグラフを示す。DBA/1マウスは、各群10匹のマウスとなるように5つの群に無作為に分割した。0日目と21日目に、ブランク対照群を除く全ての群に、尾付近の背側脇腹に50μLのコラーゲン+CFA混合物を皮下接種した。90匹のマウス全ての体重を、実験期間中週3回観察した。
図7Aは、ブランク対照に比較した予防群の体重変化を示す。
図7Bは、ブランク対照に比較した治療群の体重変化を示す。
【0029】
【
図8A】
図8Aと8Bは、異なる治療計画のもとでの4つの群のCIAマウスモデルの臨床スコア変化を表すグラフである。
図8Aでは、異なる薬品(モデル群には対照としてDMSO処置し、ブランク群は未処置のままにした)を、コラーゲン剤の1回目の注射から指摘の用量で毎日腹腔内投与した。
図8Bでは、異なる薬品をコラーゲン剤の2回目の注射から指摘の用量で毎日腹腔内投与した。臨床スコアは当該スコア付けスキームに従って2日毎に二重盲目試験の下に付与された。
【
図8B】
図8Aと8Bは、異なる治療計画のもとでの4つの群のCIAマウスモデルの臨床スコア変化を表すグラフである。
図8Aでは、異なる薬品(モデル群には対照としてDMSO処置し、ブランク群は未処置のままにした)を、コラーゲン剤の1回目の注射から指摘の用量で毎日腹腔内投与した。
図8Bでは、異なる薬品をコラーゲン剤の2回目の注射から指摘の用量で毎日腹腔内投与した。臨床スコアは当該スコア付けスキームに従って2日毎に二重盲目試験の下に付与された。
【0030】
【
図9A】
図9Aと9Bは、各群での44日目の臨床スコアのグラフを示し、ANOVAにより解析した総合的な差は有意(p<0.0001)であり、一方でモデル群と個々の群との間のp値はバーの上に*p<0.05、**p<0.01と標識されている。
【
図9B】
図9Aと9Bは、各群での44日目の臨床スコアのグラフを示し、ANOVAにより解析した総合的な差は有意(p<0.0001)であり、一方でモデル群と個々の群との間のp値はバーの上に*p<0.05、**p<0.01と標識されている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔発明の詳細な説明〕
本開示は、一部は、STAT5活性が関節リウマチ、ループスおよび多発性硬化症を含む自己免疫疾患に関係しているという新規な驚くべき発見に基づいている。
【0032】
一態様では、本発明は、治療有効量のSTAT5阻害剤、治療有効量のSTAT5阻害剤の薬学的に許容される塩、または治療有効量のSTAT5阻害剤の溶媒和物、または治療有効量のSTAT5阻害剤のプロドラッグを対象に投与することにより、対象の関節リウマチを治療または予防する方法を提供する。
【0033】
別の観点では、本発明は、抗TNF非応答者のRAを治療または予防する方法であって、該抗TNF非応答者に治療有効量の化合物を投与することを含み、前記化合物がSTAT5阻害剤、またはSTAT5阻害剤の薬学的に許容される塩、またはSTAT5阻害剤の溶媒和物、またはSTAT5阻害剤のプロドラッグである方法である。前記抗TNF非応答者は、TNF薬剤治療に対して耐性であるかまたは非感受性である。
【0034】
更に別の観点では、本発明は、対象においてSTAT5媒介医学的症状を治療有効量の化合物で治療または予防する方法であって、前記化合物がSTAT5阻害剤、またはSTAT5阻害剤の薬学的に許容される塩、またはSTAT5阻害剤の溶媒和物、またはSTAT5阻害剤のプロドラッグである方法である。STAT5媒介医学的症状には、関節リウマチまたはループスや多発性硬化症などの他の疾患が含まれてもよい。
【0035】
更なる態様では、本発明は、対象においてSTAT5媒介自己免疫疾患を治療有効量の化合物で治療または予防する方法であって、前記化合物がSTAT5阻害剤またはSTAT5阻害剤の薬学的に許容される塩、STAT5阻害剤の溶媒和物、またはSTAT5のプロドラッグである方法である。STAT5媒介自己免疫疾患は関節リウマチ、ループスまたは多発性硬化症でありうる。
【0036】
幾つかの実施形態では、STAT5阻害剤はピモジドまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグである。ピモジドの化学名は、CAS 2062-78-4に従って1-〔1-〔4,4-ビス(4-フルオロフェニル)ブチル〕-4-ピペリジニル〕-1,3-ジヒドロ-2H-ベンズイミダゾール-2-オンであり、下記の構造式により表される:
【化1】
【0037】
別の実施形態では、STAT5阻害剤がCAS 285986-31-4に従ってN′-((4-オキソ-4H-クロメン-3-イル)メチレン)ニコチノヒドラジド(ニコチノヒドラジド)、またはそれの薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグである。構造は下記により表される。
【化2】
【0038】
別の態様では、本発明は、対象において関節リウマチを治療または予防する方法であって、該対象に治療有効量のピモジド、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む組成物を投与することによる方法を提供する。
【0039】
別の態様では、本発明は、対象の抗TNF非応答者においてRAを治療または予防する方法であって、該対象に治療有効量のピモジド、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む組成物を投与することによる方法を提供する。
【0040】
更なる態様では、本発明は、治療有効量のピモジド、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグと、該化合物を使用するための説明書とを含むキットを提供する。
【0041】
更に別の態様では、対象においてSTAT5媒介医学的症状を治療または予防する方法であって、該対象に治療有効量のピモジド、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを投与することによる方法を提供する。幾つかの実施形態では、STAT5媒介医学的症状は関節リウマチ、ループスまたは多発性硬化症でありうる。
【0042】
更に別の態様では、本発明は、対象においてSTAT5媒介自己免疫疾患を治療または予防する方法であって、該対象に治療有効量のピモジド、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物もしくはそのプロドラッグを投与することによる方法を提供する。幾つかの実施形態では、自己免疫疾患は関節リウマチ、ループスまたは多発性硬化症でありうる。
【0043】
別の態様では、本発明は、対象において関節リウマチを治療または予防する方法であって、該対象に治療有効量のニコチノヒドラジド、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物もしくはそのプロドラッグを含む組成物を投与することによる方法を提供する。
【0044】
別の態様では、本発明は、対象の抗TNF非応答者のRAを治療または予防する方法であって、該対象に治療有効量のニコチノヒドラジド、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物もしくはそのプロドラッグを含む組成物を投与することによる方法を提供する。
【0045】
更なる態様では、本発明は、治療有効量のニコチノヒドラジド、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグと、該化合物を使用するための説明書とを含むキットを提供する。
【0046】
更に別の態様では、本発明は、対象においてSTAT5媒介医学的症状を治療または予防する方法であって、該対象に治療有効量のニコチノヒドラジド、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物もしくはそのプロドラッグを含む組成物を投与することによる方法を提供する。幾つかの実施形態では、STAT5媒介医学的症状は関節リウマチ、ループスまたは多発性硬化症でありうる。
【0047】
更に別の態様では、対象においてSTAT5媒介自己免疫疾患を治療または予防する方法であって、該対象に治療有効量のニコチノヒドラジド、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物もしくはそのプロドラッグを含む組成物を投与することによる方法を提供する。幾つかの実施形態では、自己免疫疾患は関節リウマチ、ループスまたは多発性硬化症でありうる。
【0048】
更に別の場合、RAの治療方法、予防方法、またはRAの発症を遅らせる方法として、関節組織細胞中の全STAT5遺伝子、STAT5遺伝子のリン酸化部位、STAT5遺伝子のプロモーター領域、またはSTAT5遺伝子のSH2ドメインを削除するためにゲノム編集ツールが利用されてもよい。ゲノム編集ツールは、それがSTAT5遺伝子の特定領域を標的指向するのに使用でき、かつ着目の細胞にそれを送達することができる限り、任意のゲノム編集ツールであることができる。そのようなゲノム編集ツールの一例は、Ran, F.他、“In vivo genome editing using Staphylococcus aureus Cas9”, Nature (2015)中に記載されたCRISPR-CAS9システムである。そのようなゲノム編集ツールの別の例は、Zetsche他、CPf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System, Cell (2015)に記載されたCRISPR-Cpflシステムである。
【0049】
更に別の場合、STAT5媒介医学的症状を治療または予防する方法として、関節組織細胞中の全STAT5遺伝子、STAT5遺伝子のリン酸化部位、STAT5遺伝子のプロモーター領域、またはSTAT5遺伝子のSH2ドメインを削除するためにゲノム編集ツールが利用されてもよい。ゲノム編集ツールは、それがSTAT5遺伝子の特定領域を標的指向するのに使用でき、かつ着目の細胞にそれを送達することができる限り、任意のゲノム編集ツールであることができる。そのようなゲノム編集ツールの一例は、Ran, F.他、“In vivo genome editing using Staphylococcus aureus Cas9”, Nature (2015)中に記載されたCRISPR-CAS9システムである。そのようなゲノム編集ツールの別の例は、Zetsche他、CPf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System, Cell (2015)に記載されたCRISPR-Cpflシステムである。
【0050】
更に別の場合、抗TNF非応答者におけるRAを治療または予防する方法として、関節組織細胞中の全STAT5遺伝子、STAT5遺伝子のリン酸化部位、STAT5遺伝子のプロモーター領域、またはSTAT5遺伝子のSH2ドメインを削除するためにゲノム編集ツールが利用されてもよい。ゲノム編集ツールは、それがSTAT5遺伝子の特定領域を標的指向するのに使用でき、かつ着目の細胞にそれを送達することができる限り、任意のゲノム編集ツールであることができる。そのようなゲノム編集ツールの一例は、Ran, F.他、“In vivo genome editing using Staphylococcus aureus Cas9”, Nature (2015)中に記載されたCRISPR-Cas9システムである。そのようなゲノム編集ツールの別の例は、Zetsche他、CPf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System, Cell (2015)に記載されたCRISPR-Cpflシステムである。
【0051】
更に別の場合、STAT5媒介自己免疫疾患を治療、予防または発症を遅らせる方法として、関節組織細胞中の全STAT5遺伝子、STAT5遺伝子のリン酸化部位、STAT5遺伝子のプロモーター領域、またはSTAT5遺伝子のSH2ドメインを削除するためにゲノム編集ツールが利用されてもよい。ゲノム編集ツールは、それがSTAT5遺伝子の特定領域を標的指向するのに使用でき、かつ着目の細胞にそれを送達することができる限り、任意のゲノム編集ツールであることができる。そのようなゲノム編集ツールの一例は、Ran, F.他、“In vivo genome editing using Staphylococcus aureus Cas9”, Nature (2015)中に記載されたCRISPR-Cas9システムである。そのようなゲノム編集ツールの別の例は、Zetsche他、CPf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System, Cell (2015)に記載されたCRISPR-Cpflシステムである。
【0052】
本開示の文脈における用語「1つの(a, an)」または「その(the)」および類似の指示語は、本明細書中で異なって指摘されたり明白に矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を包含すると解釈すべきである。本明細書中に記載の全ての方法は、本明細書中異なって指摘されたり明白に矛盾しない限り、任意の適当な順序で実施することができる。あらゆる例の使用、または本明細書中に提供される例示的言語(「~のような」、「好ましい」、「好ましくは」など)の使用は、単に教示の内容を更に例示するためのものであり、請求の範囲に対して限定を与えるものではない。明細書中のいずれの言語も、請求項に記載されない任意の要素が本教示の実施に必須であると示していると解釈すべきではない。
【0053】
用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」は、一般に、特に異なって指摘されない限り、限定されない無制限のものと解釈すべきである。
【0054】
本明細書中での単数形の使用は、特に断らない限り、複数形を包含する(その逆も同様である)。加えて、ある定量的な値の前に「約」という用語が使用されている場合、その教示は、特に断らない限り、その特定の値自体も含むものである。本明細書中で用いる場合、用語「約」は、異なって指摘または暗示されない限り、その名目の数値からの±10%変動を指す。
【0055】
本明細書中で用いる時の症状、疾患または疾病を「治療する」または「治療」という用語は、その症状、疾患または疾病の1以上の症状の軽減もしくは緩和、その症状、疾患または疾病の程度の縮小、その症状、疾患または疾病の安定化(すなわち悪化しない)、その症状、疾患または疾病の進行の遅延もしくは遅滞、および/またはその症状、疾患または疾病の状態の軽減もしくは緩和を意味する。この用語は、治療を受けない場合に予想される生存に比較して、延長した生存を意味する。
【0056】
用語「予防する」、「予防すること」および「予防」は、本明細書に提供される治療法または治療法の組み合わせの施用(例えばピモジドのような予防薬または治療薬の組み合わせ)から得られる、STAT5媒介疾患および/またはそれに関連した症状の発生、再発、発症もしくは拡大の全体的もしくは部分的阻害を指す。
【0057】
本明細書中で用いる用語「予防薬」は、対象においてSTAT5媒介疾患および/またはそれに関連した症状の発生、再発、発症もしくは拡大を全体的にもしくは部分的に阻害することができる任意の剤を指す。ある実施形態では、用語「予防薬」はピモジドを指す。好ましくは、予防薬は、STAT5媒介疾患および/またはそれに関連した症状を予防するために有用であると知られているかまたは予防するために今まで使用または現在使用されているか、あるいはSTAT5媒介疾患および/またはそれに関連した症状の発症、発生、進行および/または重症度を妨げるために使用されている剤である。
【0058】
一実施形態では、予防薬は該疾患もしくは状態または該疾患もしくは状態の症状の発症を防ぐ。一実施形態では、予防的処置は、疾患もしくは状態の悪化または発症を防ぐ。一実施形態では、予防的処置は、疾患または状態の悪化を防ぐ。
【0059】
本明細書中で用いられる用語「治療有効量」は、ある状態、疾患または病状を治療するために対象に投与した時に、そのような治療を果たすのに十分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度、並びに治療する予定の哺乳類の年齢、体重、体の状態および応答性に依存して異なるだろう。
【0060】
本明細書中で用いられる用語「対象」は、STAT5媒介医学的病状、例えば関節リウマチの治療が必要である動物、好ましくは哺乳類を指す。対象という用語は、本開示の範囲内で患者という用語と互換的に用いることができる。「哺乳類」という用語は、本明細書中に記載の疾患を発症しているかまたは発症するリスクがある温血動物を指し、例えば限定されないが、モルモット、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスター、およびヒトを含む霊長類を含む。
【0061】
「薬学的に許容される」という表現は、その物質または組成物が、製剤を構成する他の成分とおよび/または治療する予定の哺乳類と、化学的におよび/または毒物学的に適合できることを意味する。
【0062】
「薬学的に許容される塩」という表現は、特に断らない限り、特定の化合物の対応する遊離酸もしくは塩基の生物学的有効性を保持している塩を含み、生物学的にまたは他の面で望ましくないものではない。薬学的に許容される塩の例としては、本開示の化合物を無機もしくは有機酸とのまたは無機塩基との反応により調製される塩が挙げられ、そのような塩としては、限定されないが、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、およびマンデル酸塩が挙げられる。本開示の単一化合物は1より多くの酸性または塩基性成分を含む場合があるので、本開示の化合物は単一化合物中に一塩、二塩または三塩を含むことができる。
【0063】
用語「プロドラッグ」は、生理学的条件下でまたは加溶媒分解により、特定の化合物にまたはそのような化合物の塩に変換することができる化合物を指す。
【0064】
本開示の化合物は、処置すべき状態に適した任意の適当な経路により投与することができる。適当な経路としては、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、クモ膜下、および硬膜下を含む)、経皮、直腸、鼻内、局所(口腔および舌下)、膣内、腹腔内、肺内および鼻腔内が挙げられる。使用される経路は、例えば、受容者の状態によって異なり得ることは理解されるだろう。化合物が経口投与される場合、それは薬学的に許容される担体または賦形剤を用いて、ピル、カプセル、錠剤等として製剤化することができる。化合物が非経口投与される場合、それは薬学的に許容される非経口用賦形剤と共に製剤化されるかまたは後述するような単位投与形の注射製剤において製剤化することができる。
【0065】
ヒトを含む哺乳類の治療処置に本開示の化合物を使用するためは、該化合物は、標準的な製剤方法に従って医薬組成物として製剤化することができる。従って、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせて本開示の化合物を含有する医薬組成物が提供される。
【0066】
本発明の医薬組成物は、GMP(医薬品製造管理および品質管理基準)に従った、投与形式、すなわち投与量、投与濃度、投与スケジュール、投与過程、賦形剤および投与経路において製剤化され、用量決定され、そして投与される。この点で考慮すべき要因としては、処置される疾患、処置される哺乳類、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医師に公知の他の因子が挙げられる。投与すべき化合物の治療有効量は、そのような考慮事項により左右されるだろうし、該疾患を緩和または治療するのに必要な最小量である。本開示の化合物は、容易に調節可能な投与形態を提供するようなまたは処方箋による患者のコンプライアンスを可能にするような薬剤投与形態に製剤化することができる。
【0067】
本開示の化合物の医薬製剤は、様々な投与経路および形式に合わせて調製することができる。例えば、望ましい純度を有する本開示の化合物は、凍結乾燥製剤の形、微粉末、または水溶液の形で、薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤または安定化剤と共に混合することができる。製剤化は、周囲温度で適当なpHで、かつ所望の純度で、生理学的に許容される担体、すなわち使用する用量と濃度において受容者にとって非毒性である担体、と混合することにより実施することができる。製剤は常用の溶解および混合手順を使って調製することができる。例えば、原薬(すなわち本開示の化合物または該化合物の安定化形)は、1以上の賦形剤の存在下で、適当な溶媒中に溶解させることができる。
【0068】
使用する担体、希釈剤または賦形剤は、本開示の化合物を適用する予定の手段と目的に依存するだろう。
【0069】
溶媒は当業者により、哺乳類への投与に一般に安全なものとして認められる(GRAS)溶媒に基づいて選択することができる。一般に、安全な溶媒は、水や他の非毒性溶媒など、水に可溶であるか水と混和性である非毒性水性溶媒である。適当な水性溶媒としては、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えばPEG 400, PEG 300)等、およびその混合物が挙げられる。
【0070】
許容される希釈剤、担体、賦形剤および安定化剤は、使用する用量と濃度で受容者にとって毒性でなく、例えばリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸;アスコルビン酸やメチオニンをはじめとする抗酸化剤;保存剤(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;単糖類、二糖類および他の炭水化物、例えばグルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート化剤、例えばEDTA;糖類、例えばショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成性対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク錯体);および非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0071】
製剤は1以上の安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、酸化防止剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、香味剤、および他の既知の添加剤も含有し、それらは薬物(すなわち本開示の化合物またはその医薬組成物)の美的外観を提供しまたは医薬品(すなわち薬)の製造に役立ちうる。
【0072】
医薬品有効成分は、例えばコアセルベート技術によりまたは界面重合により調製されたマイクロカプセル中に封入することができ、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル中およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルション中に、封入することができる。そのような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences 第16版, Osol, A.編(1980)中に開示されている。「リポソーム」は、哺乳類への薬物の送達に有用である様々なタイプの脂質、リン脂質および/または界面活性剤から構成される小胞である。リポソームの成分は、生体膜の脂質配置に類似した、二重膜形に配置される。
【0073】
本開示の化合物の徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適当な例としては、本開示の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透膜が含まれ、そのマトリクスは例えば、フィルムやマイクロカプセルのような造形品の形である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニルコポリマー、分解性乳酸-グリコール酸コポリマーがある。
【0074】
本開示の医薬組成物は、無菌注射剤の形、例えば無菌注射水性もしくは油性懸濁液剤の形であってよい。この懸濁液剤は、既知の技術に従って、上述した適当な分散剤もしくは湿潤剤と懸濁化剤を使用して製剤化することができる。無菌注射製剤は、非毒性の非経口投与可能な希釈剤または溶剤中の無菌注射液剤または懸濁液剤である。使用できる許容される賦形剤および溶媒の中には、水、リンガー液、および等張性食塩水がある。加えて、無菌固定油を溶媒または懸濁化剤として通常使用することができる。このため、合成モノまたはジグリセリドをはじめとする任意の無菌性固定油を使用することができる。また、オレイン酸などの脂肪酸を同様に注射剤の調製に使用することができる。
【0075】
非経口投与に適当な本開示の医薬組成物としては、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を目的の受容対象の血液と等張にする溶質を含有しうる水性および非水性無菌注射液剤;並びに懸濁化剤と濃化剤を含有しうる水性および非水性無菌懸濁液剤が挙げられる。
【0076】
本発明の組成物は、経口投与に適した剤形(例えば錠剤、トローチ剤、硬または軟カプセル剤、水性または油性懸濁液剤、乳液、分散粉剤または粒剤、シロップまたはエリキシル剤)、局所投与に適した剤形(例えばクリーム、軟膏、ゲル、または水性もしくは油性液剤もしくは懸濁液剤)、吹送による投与に適した剤形(例えば微粉または液体エーロゾル)に製剤化することもできる。
【0077】
錠剤製剤に適当な薬学的に許容される賦形剤としては、例えば、ラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウムのような不活性希釈剤;コーンスターチやアルギン酸のような造粒剤および崩壊剤;デンプンなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの滑沢剤;p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはプロピルなどの保存剤;およびアスコルビン酸などの抗酸化剤が挙げられる。錠剤は、それらの崩壊を改善するために、および消化管内への有効成分のその後の吸収を改善するために、あるいは錠剤の安定性および/または外観を改善するために、各場合に常用のコーティング剤と当業界で周知の手順を使って、コーティングを施してもよく、また未コーティングであってもよい。
【0078】
経口投与用組成物は、硬ゼラチンカプセルの形に製剤することができ、その場合、有効成分は不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合され、あるいは軟ゼラチンカプセルとして製剤することができ、その場合、有効成分は水または油、例えば落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油と混合される。
【0079】
水性懸濁液は一般に、微粉末形の有効成分を1つ以上の懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム;分散剤または湿潤剤、例えばレシチンまたはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)との縮合生成物、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコール、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノールとの縮合生成物、またはエチレンオキシドと部分エステル(ヘキシトールと脂肪酸とから誘導される)との縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと部分エステル(無水ヘキシトールと脂肪酸とから誘導される)との縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートと共に含有する。水性懸濁液剤は、1以上の保存剤(例えばp-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはプロピル)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸)、着色剤、香味剤および/または甘味剤(例えばショ糖、サッカリンまたはアスパルテーム)を含んでもよい。
【0080】
油性懸濁液剤は、有効成分を植物油(例えば落花生油、オリーブ油またはヤシ油)中にまたは鉱物油(例えばパラフィン)中に懸濁することにより製剤化することができる。油性懸濁液剤は、増稠剤、例えば蜜蝋、硬パラフィンまたはセチルアルコールを含んでもよい。口当たりの良い経口製剤を提供するために、上述したもののような甘味剤や、香味剤を添加することもできる。それらの組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加により保存することができる。
【0081】
一般に水を加えることによる水性懸濁液剤の調製に適当である分散性粉末および粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1以上の保存剤と共に有効成分を含有する。適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、すでに上述してあるものにより例示される。追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤が存在してもよい。
【0082】
本開示の医薬組成物は水中油型乳剤の形であってもよい。油性相は植物油、例えばオリーブ油もしくは落花生油、または鉱物油、例えば流動パラフィン、またはそれらのいずれかの混合物であってよい。適当な乳化剤は、例えば、天然ゴム、例えばアカシアガム、トラガカントガム、天然ホスファチド、例えば大豆、レシチン、脂肪酸と無水ヘキシトールとから誘導されたエステルまたは部分エステル(例えばソルビタンモノオレエート)および前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである。乳剤は甘味剤、香味剤および保存剤を含有してもよい。
【0083】
シロップおよびエリキシル剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルテームまたはショ糖のような甘味剤を用いて製剤化してよく、そして鎮痛剤、保存剤、香味剤および/または着色剤を含んでもよい。
【0084】
坐剤製剤は、有効成分を適当な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製でき、そのような賦形剤は常温では固体であるが直腸温度では液体であり、従って直腸内で融解して薬剤を放出するだろう。適当な賦形剤としては、例えば、ココアバターおよびポリエチレングリコールが挙げられる。膣内投与に適当な製剤は、有効成分に加えて、当業界で適当であると知られている担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤として提供することができる。
【0085】
局所製剤、例えばクリーム、軟膏、ゲルおよび水性もしくは油性の液剤または懸濁液剤は、一般に、当業界で周知である従来の手順を使って、有効成分を常用の局所的に許容される賦形剤または希釈剤と共に製剤化することにより得ることができる。
【0086】
経皮投与用組成物は、当業者により周知である経皮パッチの形であることができる。
【0087】
吹送による投与用の組成物は、約30μmまたはそれ未満の平均粒径の粒子を含む微粉末の形であることができ、その粉末はそれ自体有効成分を単独で含むかまたは1以上の生理学的に許容される担体、例えばラクトースで希釈される。吹送用粉剤は、次いで、例えば既知のクロモグリク酸ナトリウム剤の吸入に用いられるようなターボ吸入装置での使用のために、例えば1~50 mgの有効成分を含有するカプセル中に保持される。
【0088】
吸入による投与用の組成物は、微細化された固形飛沫または液状小滴を含むエアロゾルとして有効成分を投薬するようにアレンジされた、常用の加圧エアロゾルの形であることができる。
【0089】
投与用医薬組成物(または製剤)は、投薬に用いる方法によって様々な方法で包装することができる。例えば、分配用の品は、適当な剤形の医薬製剤を中に配置した容器を含むことができる。適当な容器は当業者に周知であり、例として例えばボトル(プラスチック製またはガラス製)、サッシェ、アンプル、プラスチック袋、金属シリンダー等がある。容器は、その包装の中身を無分別に利用できないようにするために不正開封防止付きの組立品を含んでもよい。その上、該容器は、容器の中身を記載したラベルを上に配置している。そのラベルは適当な注意書を含んでもよい。
【0090】
該製剤は、単位投与量または複数投与量の容器例えば封入されたアンプルまたはバイアル中に包装されてもよく、そして使用直前に注入用の無菌液体担体(例えば水)の添加のみを必要とする、凍結乾燥(フリーズドライ)条件で保存することができる。即時調整注入液剤または懸濁液剤は、前述した種類の無菌粉末、粒剤および錠剤から調製される。好ましい単位投与製剤は、本明細書中の上記に言及したような1日量もしくは単位準1日量(sub-dose)、またはそれの適当な分割量の有効成分を含有するものである。
【0091】
本発明は更に、医薬担体と一緒に上記に定義したような少なくとも1つの有効成分を含有する組成物を提供する。医薬担体は組成物を投与するのに有用な材料であり、不活性であるかまたは製薬業界において認められており、かつ有効成分と適合する、固体、液体または気体物質であることができる。それらの医薬組成物は非経口、経口または他の任意の所望の経路により投与することができる。
【0092】
本開示の方法において単回投与形態を生成するために1以上の賦形剤と組み合わされるピモジドの使用量は、必然的に、処置される対象、疾患または状態の重症度、投与の量、化合物の体内動態、処方医の裁量によって異なるだろう。一実施形態では、本発明の化合物の適当量が、それを必要とする哺乳類に投与される。
【0093】
一実施形態での投与は、1日当たり約0.001 mg/kg体重から約60 mg/kg体重までの量で行われる。
【0094】
別の実施形態での投与は、1日当たり約0.5 mg/kg体重から約40 mg/kg体重までの量で行われる。
【0095】
別の実施形態での投与は、1日当たり約1 mg/kg体重から約20 mg/kg体重までの量で行われる。
【0096】
別の実施形態での投与、1日当たり約1 mg/kg体重から約5 mg/kg体重までの量で行われる。
【0097】
別の実施形態での投与は、1日当たり約5 mg/kg体重から約10 mg/kg体重までの量で行われる。
【0098】
更なる実施形態での投与は、1日当たり約10 mg/kg体重から約15 mg/kg体重までの量で行われる。
【0099】
別の実施形態での投与は、1日当たり約15 mg/kg体重から約20 mg/kg体重までの量で行われる。
【0100】
更なる実施形態では、1日当たり約20 mg/kg体重から約25 mg/kg体重までの量で行われる。
【0101】
別の実施形態での投与は、1日当たり約25 mg/kg体重から約30 mg/kg体重までの量で行われる。
【0102】
別の実施形態での投与は、1日当たり約30 mg/kg体重から約35 mg/kg体重までの量で行われる。
【0103】
別の実施形態での投与は、1日当たり約35 mg/kg体重から約40 mg/kg体重までの量で行われる。
【0104】
場合によっては、上述した範囲の下方限界を下回る用量レベルが、より適当であることがあり、またある場合には、任意の有害な副作用を引き起こすことなく更に大きい用量を使用してもよいが、ただしそのような大きい用量は、一日を通した投与のために最初に数回の小量に分割されることを前提とする。
【0105】
実施例1:マウスのRA治療におけるピモジドの有効性研究
【0106】
本実施例は、AIAマウスモデルにおけるピモジドでのRA治療方法を記載する。
【0107】
14匹のマウス(C57BL/6)を、右膝へのmBSA注射により免疫処置して右膝に関節炎を誘発させ、左膝を対照として使用した。次に、そのうちの9匹のマウスをピモジドで処置した。具体的には、ピモジドをDMSO中50 mg/mLの濃度で溶解し、10 mg/kg用量での腹腔内注射用に30%PEG300(Sigma製)で希釈した。残りの5匹のマウスは、腹腔内注射用に30%PEG300中に希釈したDMSOで処置した。7日後、マウスを犠牲にし、膝を切断し、10%ホルマリンで固定し、5%ギ酸で脱灰した後に脱水し、パラフィンに包埋した後、標準的なヘマトキシリンとエオシン(H&E)染色手順を実施した。
【0108】
図1A~1Dは、ピモジド治療した膝サンプルがRA誘導後に膝関節腔への免疫細胞の浸潤を減少させたことを示す。
図1Aおよび
図1B(
図1Aの四角で囲んだ部分の拡大写真を示す)に示すように、免疫細胞は未処置のマウスの関節炎誘発膝組織に浸潤した。対照的に、
図1Cおよび
図1D(
図1Aの四角で囲んだ部分の拡大写真を示す)に示すように、ピモジド治療マウスでは関節炎誘発膝組織への免疫細胞の浸潤ははるかに少なかった。
【0109】
図2は、関節炎誘発注射後、ピモジド治療群における膝直径の差(各マウスの右膝と左膝の差)では、ビヒクル群よりも有意に小さかった。ピモジド治療は膝の主張を低減し、関節炎が誘発された右膝と対照の左膝との間の膝直径の差をより縮小させた。p値が0.0004であったため、その差は統計的に有意であった。
【0110】
実施例2:ラットのRA治療におけるピモジドの有効性研究
【0111】
本実施例は、AIAモデルラットのRA治療におけるピモジドの使用について記載する。
【0112】
雌ラット(8週齢)の3つの群(各群10匹のラット)をAIAモデル誘導に供し、次いで異なる治療計画を受けさせた。
図3を参照のこと。具体的には、CFAと混合した100μgのmBSAを尾付近の脇腹に皮下注射し、そして1回量の百日咳菌(B.pertusiss)を腹腔内注射し、翌日、免疫反応を高めた。ラットの3つの群のうちの第一群はDMSO(ビヒクル)で処置した。ラットの3つの群のうちの第二群は、7日目から開始されるコラーゲン注射による腹腔内注射を介した30%PEG300溶液中のピモジド(Sigma-Aldrich)10 mg/kg体重(同単位が本明細書全体に渡って使用される)で処置した(治療)。ラットの3つの群のうちの最後の群は、0日目から開始するコラーゲン注射による腹腔内注射を介した30%PEG300溶液中のピモジド(Sigma-Aldrich)10 mg/kgで処置した。対照として、雌ラットの第四群(5匹のラット)はAIAモデル導入を免れ、何も処置を受けなかった。本発明者らは、3日毎に体重、足の体積および臨床スコアのデータを収集し、統計分析を実施した。
【0113】
表1のスキームに従って臨床スコアを導き出した。
【表1】
【0114】
統計分析で使用した方法は、スチューデントの対応のない両側t検定による分析であった。
【0115】
図4に示されるように、AIA誘発ラットは、治療後の体重変化に同様な傾向を示した。3つの群間で有意差は見られなかった:各時点でのビヒクル群、治療群および予防群。
【0116】
しかしながら、
図5に示すように、治療群の足体積は、17日目から開始してビヒクル群のものから有意に減少した。17日、20日、22日および24日目でP<0.01。27日目でP<0.05。
【0117】
同様に、予防群の足体積も、13日目から開始してビヒクル群のものから有意に減少した。13日目でP<0.05、15日、17日、20日、22日、24日および27日目でP<0.01。
【0118】
臨床スコアは、足の値と同様のパターンを示した。
図6に示すように、治療群の臨床スコアは、17日目からビヒクル群のものから有意に減少した。15日目でP<0.05、17日、20日、22日および24日目でP<0.01。
【0119】
予防群の臨床スコアも、13日目から開始してビヒクル群から有意に減少した。13日、15日、17日、20日、22日、24日および27日目でP<0.01。
【0120】
実施例3:マウスのRAにおけるニコチノヒドラジドの有効性研究
【0121】
本実施例は、コラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルマウスのRA治療におけるニコチノヒドラジドの使用を説明する。
【0122】
オスのDBA/1Jマウスの9つの群のうち8つ(各群10匹のマウス)(9~10週齢、H-2qハプロタイプ)は、CIAモデル誘導を受け、その後、異なる治療スキームを受けた。CIAモデル誘導のないマウスの群を対照として使用した(ブランク)。具体的には、ウシII型コラーゲン(Chondrex)をフロイント完全アジュバント(CFA)(Sigma)と混合し、皮下注射した。マウスの尾付近の脇腹に2回皮下注射し(最初の注射の21日後に2回目の注射を行った)、CIAモデルマウスを創生した。CIAモデルマウスの8つの群は、4つの予防群と4つの治療群に分けられ、各群は異なる治療を受けた。
【0123】
4つの予防群において、毎日の治療は、最初のCIA誘導注射を行った日から開始した。CIAモデルマウスの4つの予防群の第一群は、30%PEG300(4%DMSOを含む:本適用の全ての30%PEG300は4%DMSOを含む)溶液で対照(モデル)として腹腔内注射により処置した。CIAモデルマウスの4つの予防群の第二群は、腹腔内注射(573108 10 mg/kg)により、30%PEG300溶液中のニコチノヒドラジド(Calbiochem製)10 mg/kgで処置した。CIAモデルマウスの4つの予防群の第三群は、腹腔内注射(573108 5 mg/kg)により、30%PEG300溶液中のニコチノヒドラジド(Calbiochem製)5 mg/kgで処置した。CIAモデルマウスの4つの予防群の最後の群は、腹腔内注射(トファシチニブ 5 mg/kg)を介して、30%PEG300溶液中のトファシチニブ(Selleckchem製)5 mg/kgで処置した。
【0124】
4つの治療群において、毎日の治療は、2回目のCIA誘導注射を行った日から開始した。CIAモデルマウスの4つの治療群のうちの第一群は、対照(モデル)として腹腔内注射を介して30%PEG300溶液で処置した。CIAモデルマウスの4つの治療群のうちの第二群は、腹腔内注射(57310810 10 mg/kg)により、30%PEG300溶液中のニコチノヒドラジド(Calbiochem)10 mg/kgで処置した。CIAモデルマウスの4つの治療群のうち第三群は、30%PEG300溶液中のニコチノヒドラジド(Calbiochem)5 mg/kgを腹腔内注射(573108 5 mg/kg)で処置した。CIAモデルマウスの4つの治療群の最後の群は、腹腔内注射(トファシチニブ 5mg/kg)により、30%PEG300溶液中のトファシチニブ(Selleckchem)5 mg/kgで処置した。
【0125】
本発明者らは、2~3日毎にマウスの体重と臨床スコアのデータを収集し、統計分析を実施した。統計分析で使用した方法は、スチューデントの対応のない両側t検定であった。
【0126】
臨床スコアは表2のスキームに従って導き出された。
【表2】
【0127】
図7Aに示すように、4つの予防群のCIA誘発マウスは、治療後の体重変化に同様の傾向を示した。21日目の2回目のCIA誘導後、全てのマウスの体重が減少した。4つの群:モデル、573108 10 mg/kg、573108 5 mg/kgおよびトファシチニブ 5 mg/kgの間の体重変化の傾向の統計分析の結果は次の通りであった。すなわちモデル対トファシチニブ5 mg/kg p=0.0130
*;モデル対573108 10 mg/kg p=0.32;モデル対573108 5 mg/kg p=0.4638;トファシチニブ 5 mg/kg対573108 10 mg/kg p=0.0207
*;およびトファシチニブ 5 mg/kg対573108 5 mg/kg p=0.0136
*。対照的に、ブランク群のマウスは、21日目の2回目のCIA誘導注射後、体重の減少を示さなかった。
*は統計的に有意であることを意味する。
【0128】
図7Bに示すように、4つの治療群のCIA誘発マウスは、治療後の体重変化に同様の傾向を示した。21日目の2回目のCIA誘導注射後、全てのマウスの体重が減少した。4つの群:モデル、573108 10 mg/kg、573108 5 mg/kg、およびトファシチニブ 5 mg/kg間の体重変化の傾向の統計分析の結果は次の通りであった。モデル対トファシチニブ 5 mg/kg p=0.0005
*;モデル対573108 10 mg/kg p<0.0001
***;モデル対573108 5 mg/kg p<0.0001
***;トファシチニブ 5 mg/kg対573108 10 mg/kg p=0.0009
***;およびトファシチニブ 5 mg/kg対573108 5 mg/kg p=0.0006
***。対照的に、ブランク群のマウスは、21日目の2回目のCIA誘導注射後、体重の減少を示さなかった。
【0129】
図8Aに示されるように、4つの予防群のCIA誘発マウスでは、トファシチニブ(トファシチニブ 5 mg/kg)による処置と同様に、無処置のネガティブコントロール(モデル)と比較して、ニコチノヒドラジド(573108 10 mg/kgおよび573108 5 mg/kg)での処置により臨床スコアが低下した。
図9Aに示すように、臨床スコアの減少は44日目に573108 10 mg/kgとモデル間(P<0.0001)、およびトファシチニブ5 mg/kgとモデル間(P<0.0001)で有意であった。前の文章中のP値は、複数の群間を比較するためにANOVAにより計算したものであり、そのパターンが有意であったことを意味する。
【0130】
モデル群と他の群との差の一対比較(pairwise)分析の結果を下表3に列挙する(M:モデル;T:トファシチニブ;S5i:stat5阻害剤573108;mpk=mg/kg)。
表3.4つの予防群の群間差の一対比較分析。
【表3】
【0131】
図8Bに示すように、4つの治療群のCIA誘発マウスでは、トファシチニブ(トファシチニブ 5 mg/kg)での処置と同様に、無処置のネガティブコントロール(モデル)と比較して、ニコチノヒドラジド(573108 10 mg/kgおよび573108 5 mg/kg)で処置すると臨床スコアが低下した。
図9Bに示すように、臨床スコアの減少は44日目に、573108 5 mg/kgとモデル間(P<0.0001)、573108 10 mg/kgとモデル間(P<0.0001)、およびトファシチニブ 5 mg/kgとモデル間(P<0.0001)で有意であった。前の文章中のP値は、複数の群間の差を比較するためにANOVAにより計算したものであり、そのパターンが有意であったことを意味する。
【0132】
モデルと他の群との差の一対比較(pairwise)分析の結果を下表4に列挙する(M:モデル;T:トファシチニブ;S5i:stat5阻害剤573108;mpk=mg/kg)。
【表4】
【0133】
本明細書で引用される刊行物、特許出願および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献があたかも個別にかつ具体的に参照により組み込まれ、その全体が本明細書に記載されていると示されたのと同程度に参照により組み込まれる。
【0134】
開示された実施形態の上記の説明は、当業者が本明細書に開示された本教示を製造または使用することを可能にするために提供される。これらの実施形態に対する様々な修正が当業者には明らかであり、本明細書に記載の一般的な原理は、本教示の精神または範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用することができる。従って、本明細書の説明は、本教示によって広く企図される主題を代表するものであることを理解されたい。本教示の範囲は、本明細書に示される実施形態に限定されることを意図するものではないことを更に理解されたい。