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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】バンド及び時計
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/02 20060101AFI20240527BHJP
   A44C 5/18 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A44C5/02 E
A44C5/18 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020020898
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021126164
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502366745
【氏名又は名称】セイコーウオッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】石田 正浩
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】実公昭08-000428(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第3027756(JP,U)
【文献】実開昭58-012307(JP,U)
【文献】特開2000-300313(JP,A)
【文献】実開平07-028414(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一バンドと、
環状部を有する第二バンドと、
前記第一バンドに設けられ、前記環状部の一部が挿通された状態で前記第二バンドの長手方向に沿って移動可能な係合部と、
を備え、
前記第二バンドは、互いに材料の異なる第一部材及び第二部材により形成され、
前記第一バンド及び前記第二バンドは、
前記第一バンド及び前記第二バンドが腕に装着された場合に前記腕側に位置する前記第一部材と、
前記第一部材に対して前記腕とは反対側に位置する前記第二部材と、
を有し、前記第一部材の強度は、前記第二部材の強度より高く、
前記第一部材は、前記第二部材より長く、
前記第一バンドの先端部には、内側に位置する前記第一部材が外側に向けて折り返されることにより、前記係合部を保持するループ状の保持部が設けられ、
折り返された前記第一部材の端部は、内側の前記第一部材と重なった状態で、内側の前記第一部材と連結され、
折り返された前記第一部材の端部は、前記第二部材の対応する端部に連結され、前記第一バンドの先端部において、前記第一部材の一部は、外側に露出しており、前記第一部材と前記第二部材との連結部は、外側に位置しており、
前記第二バンドの先端部には、前記第一部材及び前記第二部材をともに覆って前記第二バンドの先端部を閉じるキャップが設けられている、
バンド。
【請求項2】
前記係合部は、
美錠と、
つく棒と、
を有し、
前記環状部の内側に位置する部分は、前記美錠に挿通されるとともに、前記つく棒が挿入される小穴を有し、
前記小穴は、前記第二バンドの前記長手方向に沿って複数設けられている請求項1に記載のバンド。
【請求項3】
前記第一バンドと、前記係合部と、の間に中留を有する請求項1又は請求項2に記載のバンド。
【請求項4】
前記環状部は、前記第一部材及び前記第二部材における前記長手方向の端部同士を連結することにより形成される請求項1又は請求項2に記載のバンド。
【請求項5】
前記第一バンドの前記第一部材に前記係合部が取り付けられる請求項4に記載のバンド。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のバンドと、
ケース本体と、
前記ケース本体に収容されるムーブメントと、
を備える時計。
【請求項7】
前記ケース本体は、
前記第一バンドが挿通される第一通過口と、
前記第二バンドが挿通される第二通過口と、
を有し、
前記第一バンド及び前記第二バンドは、前記第一通過口及び前記第二通過口に挿通された端部同士が互いに接続されることにより、一体的に設けられる請求項6に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンド及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計等のケースに取り付けられるバンドとして、各種の皮革、布、等で形成され、一方のバンドに形成された複数の小穴のいずれかに、他方のバンドの美錠を通すことにより、バンドの長さを調節する構成が知られている。これらのバンドにおいて、使用者の腕の太さに合わせてバンドの長さを調節するとともに、腕からバンドが脱落するのを抑制するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、一方のバンドの任意の位置に固定することのできる美錠枠と、他方のバンドの先端に取付けられ美錠枠に固定される美錠止板よりなるフリーアジャスト中留を有する腕時計の構成が開示されている。コ字形のバンド離別防止枠が一方のバンドの先端に回動可能に取付けられ、一方のバンドとバンド離別防止枠との間に他方のバンドが摺動可能に挿入される。特許文献1に記載の技術によれば、離別防止枠には、一方のバンドは通り得るが、美錠止板は通過できない。よって、美錠枠の位置を変更することにより長さ調節を行うとともに、腕時計が不用意に腕から脱落するのを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-127317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、美錠枠に美錠止板が係止した状態において、美錠枠が美錠止板のカバーに覆われているので、バンドを腕に装着した状態でバンドの長さ調節を行うことができない。このため、使用者は、所望の長さに調節するために、美錠を付けたり外したりする動作を複数回行う場合があり、使用者の利便性が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、利便性を向上させることができるバンド及び時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一つの形態のバンドは、第一バンドと、環状部を有する第二バンドと、前記第一バンドに設けられ、前記環状部の一部が挿通された状態で前記第二バンドの長手方向に沿って移動可能な係合部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、第二バンドは、環状部を有し、第一バンドに設けられた係合部には、第二バンドの環状部の一部が挿通されている。これにより、係合部による係合状態が解除された場合であっても、第一バンドと第二バンドとの連結状態を維持することができる。よって、腕から不用意にバンドが脱落することを抑制できる。
係合部は、第二バンドの長手方向に沿って移動可能となっている。これにより、第二バンドに対する係合部の係合位置を変化させることができるので、第一バンドと第二バンドとを合わせたバンドの長さを調節できる。さらに、係合部は、第二バンド上の長手方向へ移動するとともに第二バンドに係合するので、長手方向への移動と第二バンドへの係合とを同時に行うことができる。よって、装着状態でバンドの長さ調節を行うことができるので、従来技術のように係合部を付けたり外したりする動作を複数回繰り返すことなく、使用者の腕の太さに合わせた所望の長さに容易に調整することができる。
したがって、腕からの脱落を抑制するとともに、腕に装着した状態で長さ調節を可能にし、使用者の利便性を向上させることができるバンドを提供できる。
【0009】
また、前記バンドは、前記係合部は、美錠と、つく棒と、を有し、前記環状部の内側に位置する部分は、前記美錠に挿通されるとともに、前記つく棒が挿入される小穴を有し、
前記小穴は、前記第二バンドの前記長手方向に沿って複数設けられている。
【0010】
この構成によれば、第一バンドには美錠及びつく棒が設けられ、第二バンドにおける環状部の小穴につく棒が挿入されることにより、第一バンドと第二バンドとが固定される。また、つく棒が挿入される小穴の位置を変えることにより、バンドの長さ調節ができる。これにより、例えば皮革や布等で形成されたバンド等、複数の駒体で構成されるブレスレットタイプのバンドと比較してバンド自体の長さ調節が難しい場合であっても、容易に長さ調節が可能となる。よって、特に皮革や布等で形成されたバンドにおいて好適な構成とすることができる。
美錠は、環状部の内側に位置する部分に挿通され、小穴は、環状部の内側に位置する部分に形成される。このため、バンドの装着時において、美錠、つく棒及び小穴は、環状部の外側に位置する部分により覆われる。よって、装着時に美錠、つく棒及び小穴を環状部の外側の部分で隠すことにより、装着時の美観を向上できる。また、係合部が外部に露出するのを抑制できるので、意図せず第一バンドと第二バンドとの係合が解除される等の誤操作の発生を抑制できる。
【0011】
また、前記バンドは、前記第一バンドと、前記係合部と、の間に中留を有する。
【0012】
この構成によれば、バンドは中留を有するので、中留を開閉することにより、バンドの長さを変更することなく容易にバンドを腕から着脱できる。中留は、第一バンドと係合部との間に設けられるので、中留を閉じた状態であっても、係合部を第二バンドに対して移動させることができる。よって、中留によりバンドの脱着を容易にするとともに、装着状態でバンドの長さ調節が可能な、使用者の利便性を向上したバンドとすることができる。
ここで、中留のみにより着脱を行う従来技術においては、中留の長さが長すぎると、折りたたみ部が腕に当たるおそれがあり、中留の長さが短すぎると、腕から外れなくなるおそれがある。このため、従来技術にあっては、男女兼用の中留を作成することが難しいという課題があった。この課題に対して、本発明の構成によれば、中留と係合部とを有するので、中留を短く設定した場合であっても、係合部による係合状態を解除して緩めることで腕から外すことができる。よって、中留の構成を男女兼用とすることができ、バンドの汎用性を向上できる。
【0013】
また、前記バンドは、前記第二バンドは、互いに材料の異なる第一部材及び第二部材により形成され、前記環状部は、前記第一部材及び第二部材における前記長手方向の端部同士を連結することにより形成される。
【0014】
この構成によれば、環状部は、材料の異なる2枚の部材(第一部材及び第二部材)により形成されるので、2枚の部材の端部同士をそれぞれ接続することにより、容易に環状部を形成できる。また、環状部の内側に位置する部材には小穴が形成されるので、例えば環状部の外側に位置する部材を意匠用の部材で形成することにより、機能性及び美観を両立することができる。
【0015】
また、前記バンドは、前記バンドが腕に装着された場合に前記腕側に位置する前記第一部材と、前記第一部材に対して前記腕とは反対側に位置する前記第二部材と、を有し、前記第一部材の強度は、前記第二部材の強度より高く、前記第一バンドの前記第一部材に前記係合部が取り付けられる。
【0016】
この構成によれば、第二部材と比較して強度の高い第一部材に係合部が取り付けられるので、係合部を強固に保持することができる。第一部材は環状部の内側(バンドが腕に装着された場合の腕側)に位置するので、高強度な第一部材に小穴を形成することができる。さらに、美錠は、第一部材上をスライドすることにより移動可能に設けられる。このように、環状部の外側(第一部材に対して腕とは反対側)と比較して大きな力が作用し易い環状部の内側に高強度な第一部材を用いることができるので、バンドの強度を向上し、バンドの破損や小穴の廃れ等を抑制できる。また、第二部材として、例えば加飾性の良い材料や穴を形成するのが難しい材料、強度が低い材料等を用いることができる。このように、用途に合わせてそれぞれの材料を選択できるので、機能性と美観とを両立するとともに、設計自由度を向上できる。
【0017】
本発明の一つの形態の時計は、上述のバンドと、ケース本体と、前記ケース本体に収容されるムーブメントと、を備える。
【0018】
この構成によれば、ケース本体にムーブメントが収容されることにより、例えば腕時計として利用することができる。時計は、上述のバンドを備えているので、時計を腕に容易に装着できるとともに、装着状態でバンドの長さを変更可能な、使い勝手の良い時計とすることができる。特に、例えばダイバーがウェットスーツを着た状態で使用する場合等、中留を開くことなく美錠を操作することで容易に長さ調節が可能で、かつ脱落を防止する必要がある場面において好適な時計とすることができる。
したがって、利便性を向上させることができるバンドを備えた、高機能な時計を提供できる。
【0019】
また、前記時計は、前記ケース本体は、前記第一バンドが挿通される第一通過口と、前記第二バンドが挿通される第二通過口と、を有し、前記第一バンド及び前記第二バンドは、前記第一通過口及び前記第二通過口に挿通された端部同士が互いに接続されることにより、一体的に設けられる。
【0020】
この構成によれば、バンドは、第一バンドと第二バンドとが接続されることで一体的に設けられる。このように、一本のバンドが環状に形成されるので、より一層腕からの脱落を抑制できる。ケース本体は第一通過口及び第二通過口を有し、各通過口にバンドがそれぞれ挿通される。このため、各通過口に対してバンドを滑らせることで、バンドの長手方向に対するケース本体の位置を調節できる。よって、腕の太さにより中留とケース本体との相対位置が異なることによる装着性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、利便性を向上させることができるバンド及び時計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る時計の装着状態における側面図。
図2】実施形態に係る時計の正面図。
図3】実施形態に係る時計の半装着状態における側面図。
図4】実施形態に係る時計の中留解除状態における側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
(時計)
図1は、実施形態に係る時計1の装着状態における側面図である。図2は、実施形態に係る時計1の正面図である。図1では、時計1が使用者の腕に装着されているときの時計1の状態(装着状態)を表している。
図1に示すように、時計1は、腕(手首)に装着される腕時計である。時計1は、ケース本体4と、バンド2と、ムーブメント3と、を備える。
【0025】
(ケース本体)
ケース本体4は、側面から見て、平板状に形成されている。図2に示すように、ケース本体4は、正面から見て、円形状に形成されている。ケース本体4の内部には、ムーブメント3が収容される空間が設けられている。平板状のケース本体4における一方の面は、例えばガラス等の透明な材料により形成され、内部の文字板(不図示)が視認可能な上面4aとなっている。平板状のケース本体4における他方の面は、時計1の装着時に使用者の腕側に位置する下面4b(図1参照)となっている。上面4aと下面4bとの間には、第一かん11及び第二かん12が設けられる胴部が配置されている。
【0026】
第一かん11は、正面から見て、ケース本体4における所定方向Dの一方の端部(一端部)4cに設けられている。第一かん11は、一対の第一かん足13と、第一ばね棒14(図1参照)と、を有する。
一対の第一かん足13は、正面から見て、ケース本体4の周方向に離間して設けられている(図2参照)。第一かん足13は、ケース本体4と一体形成されている。第一かん足13は、ケース本体4の一端部4cから、ケース本体4の径方向の外側に向かって延びている。図1に示すように、具体的に、第一かん足13は、ケース本体4の外周部から径方向に離間するにつれて、ケース本体4の厚み方向の中央部からケース本体4の下面4b側に傾斜している。
【0027】
第一ばね棒14は、第一かん足13の間に設けられている。第一ばね棒14の両端部は、第一かん足13の先端部に回転可能に取り付けられている。第一ばね棒14とケース本体4の一端部4cとの間は、第一通過口15となっている。第一通過口15には、後述のバンド本体5が挿通可能となっている。
【0028】
第二かん12は、ケース本体4の所定方向Dのうち、第一かん11と反対側に位置する他方の端部(他端部)4dに設けられている。第一かん11及び第二かん12は、所定方向Dにおけるケース本体4の中央部を通り、所定方向Dに直交する直線に対して、互いに対称形状に形成されている。すなわち、第二かん12は、一対の第二かん足16と、第二ばね棒17と、を有する。
図2に示すように、一対の第二かん足16は、正面から見て、ケース本体4の周方向に離間して設けられている。第二かん足16は、ケース本体4と一体形成されている。第二かん足16は、ケース本体4の外周部から径方向に離間するにつれて、ケース本体4の厚み方向の中央部からケース本体4の下面4b側に傾斜している。
【0029】
図1に示すように、第二ばね棒17は、第二かん足16の間に設けられている。第二ばね棒17の両端部は、第二かん足16の先端部に回転可能に取り付けられている。第二ばね棒17とケース本体4の他端部4dとの間は、第二通過口18となっている。第二通過口18には、後述のバンド本体5が挿通可能となっている。
【0030】
(バンド)
(バンド本体)
バンド2は、バンド本体5と、中留6と、係合部7と、遊革8と、を備える。
バンド本体5は、例えば、革、布、又は樹脂、等の材料により帯状に形成されている。バンド本体5は、厚さ方向に弾性的に曲げ変形が可能である。本実施形態において、バンド本体5は、材料の異なる2枚の部材により形成されている。具体的に、バンド本体5は、強度部材21(請求項の第一部材)と、意匠部材22(請求項の第二部材)と、を有する。強度部材21は、例えば強化ナイロン等の樹脂、又は合成繊維、等の材料により形成されている。意匠部材22は、例えば革、又は樹脂、等の材料により形成されている。強度部材21の引張強度は、意匠部材22の引張強度よりも高い。強度部材21及び意匠部材22は、それぞれ帯状に形成されるとともに、互いに厚さ方向に重ねられている。
【0031】
図3は、実施形態に係る時計1の半装着状態における側面図である。図1では装着状態の時計1を表しているのに対して、図3では、第二バンド32の先端部32aを遊革8から外したときの時計1の状態(半装着状態)を表している。
バンド本体5は、強度部材21及び意匠部材22が重ねられて一体とされた状態で、第一通過口15及び第二通過口18にそれぞれ挿通されている。具体的に、バンド本体5は、装着状態において強度部材21が内側(腕側)に位置し、かつ意匠部材22が外側(外部に露出する側)に位置している。第一通過口15及び第二通過口18にバンド本体5が挿通された状態において、バンド本体5は、第一バンド31と、第二バンド32と、接続部33と、を有する。
【0032】
第一バンド31は、ケース本体4の所定方向Dの一方に設けられている。換言すれば、バンド本体5のうち、第一通過口15に挿通されて所定方向Dの一方に向けて延びている部分が第一バンド31となっている。
第一バンド31において、強度部材21は、意匠部材22より長い。第一バンド31の先端部31aには、内側に位置する強度部材21が外側に向けて折り返されることにより、ループ状の保持部35が設けられている。折り返された強度部材21の端部は、内側の強度部材21と重なった状態で、内側の強度部材21と連結されている。また、折り返された強度部材21の端部は、意匠部材22の対応する端部に連結されている。よって、第一バンド31の先端部31aにおいて、強度部材21の一部は、外側に露出している。また、強度部材21と意匠部材22との連結部34は、外側に位置している。
【0033】
第二バンド32は、ケース本体4の他方に設けられている。換言すれば、バンド本体5のうち、第二通過口18に挿通されて所定方向Dの他方に向けて延びている部分が第二バンド32となっている。
第二バンド32は、キャップ36と、環状部37と、小穴38と、を有する。
キャップ36は、第二バンド32の先端部32aに設けられている。キャップ36は、第二バンド32の先端部32aにおいて、強度部材21及び意匠部材22をともに覆っている。キャップ36は、第二バンド32の先端部32aを閉じている。キャップ36は、第二バンド32から取り外し可能となっている。
【0034】
環状部37は、環状に形成されている。本実施形態では、第二通過口18より所定方向Dの他方に延びる第二バンド32のほぼ全体が環状部37となっている。環状部37は、第二バンド32において、強度部材21及び意匠部材22の端部同士を連結することにより形成されている。具体的に、環状部37は、強度部材21及び意匠部材22の先端部がキャップ36で閉じられ、強度部材21及び意匠部材22の基端部が第二かん12で閉じられることにより、強度部材21と意匠部材22との間に空間を形成可能な環状となっている。
【0035】
小穴38は、環状部37のうち、内側に位置する強度部材21に設けられている。小穴38は、強度部材21の厚み方向に沿って強度部材21を貫通している。小穴38は、強度部材21の長手方向に沿って等間隔に複数設けられている。
【0036】
接続部33は、第一かん11と第二かん12との間に設けられている。接続部33は、所定方向Dに沿って延びている。接続部33は、ケース本体4の下面4bに沿って設けられている。接続部33の延在方向における第一かん11側の端部には、第一バンド31の基端部31bが連結されている。接続部33の延在方向における第二かん12側の端部には、第二バンド32の基端部32bが連結されている。よって、バンド本体5は、第一バンド31の基端部31bと、第二バンド32の基端部32bとが、接続部33を介して互いに接続されることにより、一体的に設けられている。このように形成されたバンド本体5は、第一かん11及び第二かん12の間をスライドすることにより、第一バンド31及び第二バンド32の長さが変更可能となっている。
【0037】
(中留)
図4は、実施形態に係る時計1の中留解除状態における側面図である。
中留6は、第一バンド31の先端部31aに設けられている。中留6は、例えばアルミニウム合金、ステンレス鋼、等の金属材料で形成されている。中留6は、下板41と、下板41に対して回動可能に連結された上板42と、を有する、いわゆる三つ折れ方式の中留6である。
【0038】
下板41は、腕回りの湾曲に沿って外側に凸となるように湾曲した帯状に形成されている。下板41の一端部には、バンド固定軸43が設けられている。バンド固定軸43は、第一バンド31の保持部35に挿通されている。これにより、下板41は、第一バンド31に対してバンド固定軸43回りに回動可能に連結されている。
下板41の他端部には、回動軸44が設けられている。回動軸44の軸方向は、バンド固定軸43の軸方向とほぼ平行となっている。
下板41の長手方向において、バンド固定軸43と回動軸44との間には、係止用突起45が設けられている。係止用突起45は、外側に向かって突出している。係止用突起45は、下板41の長手方向の中央部よりバンド固定軸43側に配置されている。係止用突起45は、下板41の幅方向の中央部に配置されている。
【0039】
上板42は、下板41と同等の曲率で湾曲した帯状に形成されている。上板42の一端部は、下板41の回動軸44に回動可能に連結されている。上板42は、係止穴46と、解除ボタン47と、を有する。
係止穴46は、上板42の内側(腕側)を向く表面から上板42の厚み方向に凹んでいる。係止穴46は、上板42が下板41に対して回動して折りたたまれた状態(三つ折れ状態。図3参照)において、下板41の係止用突起45と対応する位置に形成されている。係止穴46には、係止用突起45が係止される。
解除ボタン47は、上板42の幅方向の両端部に設けられている。解除ボタン47は、幅方向の内側に向かって押圧されることにより、係止穴46と係止用突起45との係止状態を解除する。
【0040】
(係合部)
係合部7は、中留6を介して第一バンド31の先端部31aに設けられている。本実施形態において、係合部7は、例えば金属材料により形成された係合金具である。係合部7は、美錠50と、つく棒51と、を有する。
美錠50は、ピン部材52により上板42の他端部に回動可能に連結されている。美錠50は、ピン部材52の両端部に連結されるU字状の金属部材である。美錠50とピン部材52とで構成される環状の空間内には、第二バンド32の環状部37の一部が挿通さされている。具体的に、美錠50とピン部材52とで構成される環状の空間内には、第二バンド32の環状部37のうち内側に位置する強度部材21が挿通されている。美錠50は、ピン部材52に対して回動することにより、環状部37における強度部材21の長手方向に沿って移動可能となっている。
【0041】
つく棒51は、ピン部材52に対して回動可能に連結されている。つく棒51は、美錠50における幅方向の中央部に設けられている。つく棒51は、第二バンド32の強度部材21に形成された複数の小穴38のいずれかに挿入される。このように、第二バンド32の環状部37が美錠50に挿入され、つく棒51が第二バンド32の小穴38に挿入され、この挿入されたつく棒51の先端部が美錠50に当接することにより、第一バンド31と第二バンド32とが連結されるように構成されている。これにより、美錠50及びつく棒51は、第二バンド32の長手方向に位置決めされている。さらに、美錠50及びつく棒51は、第二バンド32の環状部37を形成する強度部材21に取り付けられている。
【0042】
(遊革)
遊革8は、第一バンド31に設けられている。遊革8は、環状に形成されている。本実施形態において、遊革8は、2個設けられている。図1に示すように、遊革8には、装着状態において第二バンド32が挿入されている。
なお、2個の遊革8のうち一方又は両方を、第一バンド31に固定された定革としてもよい。
【0043】
(ムーブメント)
図2に示すように、ムーブメント3は、ケース本体4に収容されている。ムーブメント3は、例えば時刻等の情報を表示する文字板、秒針、分針、時針、これらを駆動する歯車、バネ、等(いずれも不図示)を含む、機械式時計用のムーブメント3である。なお、ムーブメント3は、例えば液晶パネルや駆動ユニット、バッテリ等を含む、電子時計用のムーブメント3であってもよい。
【0044】
(時計の装着工程及び取り外し工程)
次に、上述の時計1を腕に装着する場合の装着工程及び腕から取り外す場合の取り外し工程について説明する。始めに、装着工程について説明する。
装着工程の準備段階として、まず、図4に示すように、中留6の係止状態を解除して中留解除状態とするとともに、つく棒51を小穴38から抜去させておく。この状態で、使用者は、時計1の内側に腕を通す。腕を通したら、次に、図3に示すように、中留6の上板42と下板41とが近接するように互いに回動させて、上板42と下板41とを係止させることにより、半装着状態とする。半装着状態において、さらに、バンド本体5の長さが腕回りの太さと合うように、バンド本体5の長さを調節する。具体的には、つく棒51を所定の小穴38に挿入することにより、バンド本体5を腕にフィットさせる。最後に、図1に示すように、美錠50より第二バンド32の先端部32a側に位置する第二バンド32の余剰部分を遊革8に通す。これにより、装着工程が完了する。装着工程が完了した状態において、第一バンド31の先端部31aにおける強度部材21が外側に露出した部分及び連結部34は、意匠部材22により隠されている。
【0045】
次に、取り外し工程について説明する。取り外し工程では、主に上述の装着工程と逆の順番でバンド本体5を緩めることにより、時計1を腕から外す。
具体的に、取り外し工程では、まず、第二バンド32を遊革8から抜去することにより、図1に示す装着状態から図3に示す半装着状態にする。次に、中留6の解除ボタン47を押して中留6の係止状態を解除する。次に、使用者は、時計1を腕から取り外す。これにより、取り外し工程が完了する。
【0046】
ここで、上述したように半装着状態から中留6のみを解除した場合は、つく棒51は所定の小穴38に挿入されたままとなっている。このため、再び時計1を装着する際には、中留6を係止することで、時計1を装着可能となる。また、この場合、バンド本体5の長さは、前回の装着時に設定した長さに維持されるので、2回目以降の装着時に長さ調節をすることなくバンド本体5を腕にフィットさせることができる。
【0047】
なお、取り外し工程の別の方法として、半装着状態から中留6を解除することなく、つく棒51を小穴38から抜去して係合部7を移動させることによって、時計1を腕から取り外してもよい。また、半装着状態において、中留6の解除とつく棒51の抜去とを両方行うことにより時計1を腕から取り外してもよい。
【0048】
(作用、効果)
次に、上述のバンド2及び時計1の作用、効果について説明する。
本実施形態のバンド2によれば、第二バンド32は、環状部37を有し、第一バンド31の先端部31aに設けられた係合部7には、第二バンド32の環状部37の一部が挿通されている。これにより、係合部7による係合状態が解除された場合であっても、第一バンド31と第二バンド32との連結状態を維持することができる。よって、腕から不用意にバンド2が脱落することを抑制できる。
【0049】
係合部7は、第二バンド32の長手方向に沿って移動可能となっている。これにより、第二バンド32に対する係合部7の係合位置を変化させることができるので、第一バンド31と第二バンド32とを合わせたバンド2の長さを調節できる。さらに、係合部7は、第二バンド32上の長手方向へ移動するとともに第二バンド32に係合するので、長手方向への移動と第二バンド32への係合とを同時に行うことができる。これにより、腕にバンド2を装着した状態(半装着状態)でバンド2の長さ調節を行うことができる。よって、従来技術のように係合部7を付けたり外したりする動作を複数回繰り返すことなく、使用者の腕の太さに合わせた所望の長さに容易に調整することができる。
したがって、腕からの脱落を抑制するとともに、腕に装着した状態で長さ調節を可能にし、使用者の利便性を向上させることができるバンド2を提供できる。
【0050】
第一バンド31の先端部31aには美錠50及びつく棒51が設けられ、第二バンド32における環状部37の小穴38につく棒51が挿入されることにより、第一バンド31と第二バンド32とが固定される。また、つく棒51が挿入される小穴38の位置を変えることにより、バンド2の長さ調節ができる。これにより、例えば皮革、布、等で形成されたバンド2等、複数の駒体で構成されるブレスレットタイプのバンド2と比較してバンド2自体の長さ調節が難しい場合であっても、容易に長さ調節が可能となる。よって、特に皮革、布、等で形成されたバンド2において好適な構成とすることができる。
【0051】
美錠50は、環状部37の内側に位置する強度部材21に挿通され、小穴38は、環状部37の内側に位置する強度部材21に形成される。このため、バンド2の装着時において、美錠50、つく棒51及び小穴38は、環状部37の外側に位置する意匠部材22により覆われる。よって、装着時に美錠50、つく棒51及び小穴38を環状部37の外側の意匠部材22で隠すことにより、装着時の美観を向上できる。また、係合部7が外部に露出するのを抑制できるので、意図せず第一バンド31と第二バンド32との係合が解除される等の誤操作の発生を抑制できる。
【0052】
バンド2は中留6を有するので、中留6を開閉することにより、バンド2の長さを変更することなく容易にバンド2を腕から着脱できる。中留6は、第一バンド31と係合部7との間に設けられるので、中留6を閉じた状態であっても、係合部7を第二バンド32に対して移動させることができる。よって、中留6によりバンド2の脱着を容易にするとともに、装着状態でバンド2の長さ調節が可能な、使用者の利便性を向上したバンド2とすることができる。
【0053】
ここで、中留6のみにより着脱を行う従来技術においては、中留6の長さが長すぎると、折りたたみ部が腕に当たるおそれがあり、中留6の長さが短すぎると、腕から外れなくなるおそれがある。このため、従来技術にあっては、男女兼用の中留6を作成することが難しいという課題があった。この課題に対して、本発明の構成によれば、中留6と係合部7とを有するので、中留6を短く設定した場合であっても、係合部7による係合状態を解除して緩めることで腕から外すことができる。よって、中留6の構成を男女兼用とすることができ、バンド2の汎用性を向上できる。
【0054】
環状部37は、材料の異なる2枚の部材により形成されるので、2枚の部材の端部同士をそれぞれ接続することにより、容易に環状部37を形成できる。また、環状部37の内側に位置する部材には小穴38が形成されるので、例えば環状部37の外側に位置する部材を意匠用の部材で形成することにより、機能性及び美観を両立することができる。
【0055】
意匠部材22(請求項の第二部材)と比較して強度の高い強度部材21(請求項の第一部材)に係合部7が取り付けられる。これにより、係合部7を強固に保持することができる。強度部材21は環状部37の内側に位置するので、高強度な強度部材21に小穴38を形成することができる。さらに、美錠50は、強度部材21上をスライドすることにより移動可能に設けられる。このように、環状部37の外側と比較して大きな力が作用し易い環状部37の内側に高強度な強度部材21を用いることができるので、バンド2の強度を向上し、バンド2の破損や小穴38の廃れ等を抑制できる。また、意匠部材22として、例えば加飾性の良い材料や穴を形成するのが難しい材料、強度が低い材料等を用いることができる。このように、用途に合わせてそれぞれの材料を選択できるので、機能性と美観とを両立するとともに、設計自由度を向上できる。
【0056】
第二バンド32の先端部32aに設けられたキャップ36は、第二バンド32から取り外し可能となっている。キャップ36を取り外すことにより、第二バンド32の先端部32aにおいて、強度部材21と意匠部材22との連結状態を解除できる。これにより、強度部材21と意匠部材22との組み合わせを容易に変更することができる。
【0057】
本実施形態の時計1によれば、ケース本体4にムーブメント3が収容されることにより、例えば腕時計として利用することができる。時計1は、上述のバンド2を備えているので、時計1を腕に容易に装着できるとともに、装着状態でバンド2の長さを変更可能な、使い勝手の良い時計1とすることができる。特に、例えばダイバーがウェットスーツを着た状態で使用する場合等、中留6を開くことなく美錠50を操作することで容易に長さ調節が可能で、かつ脱落を防止する必要がある場面において好適な時計1とすることができる。
したがって、利便性を向上させることができるバンド2を備えた、高機能な時計1を提供できる。
【0058】
バンド2は、第一バンド31と第二バンド32とが接続されることで一体的に設けられる。このように、一本のバンド2が環状に形成されるので、より一層腕からの脱落を抑制できる。ケース本体4は第一通過口15及び第二通過口18を有し、各通過口15,18にバンド2がそれぞれ挿通される。このため、各通過口15,18に対してバンド2を滑らせることで、バンド2の長手方向に対するケース本体4の位置を調節できる。よって、腕の太さにより中留6とケース本体4との相対位置が異なることによる装着性の低下を抑制できる。
【0059】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第一バンド31と、第二バンド32と、は別体で形成されてもよい。すなわち、第一バンド31の基端部31bは、第一かん11に取り付けられ、第二バンド32の基端部32bは、第二かん12に取り付けられてもよい。
【0060】
環状部37において、キャップ36の代わりに、例えば強度部材21と意匠部材22とを縫い合わせることにより第二バンド32の端部を閉じてもよい。
ケースの形状は、正面から見て矩形状や楕円形状、多角形状等、円形状以外の形状に形成されてもよい。
強度部材21及び意匠部材22の材料は、上述した実施形態の材料に限定されない。
本実施形態において、係合部7は、金属材料により形成された係合金具である構成について説明したが、これに限らない。すなわち、係合部7は、金属材料以外の材料により形成された部材であってもよい。
また、第二バンド32は、1本の部材を2つ折りすることにより形成されてもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 時計
2 バンド
3 ムーブメント
4 ケース本体
6 中留
7 係合部
15 第一通過口
18 第二通過口
21 強度部材(第一部材)
22 意匠部材(第二部材)
31 第一バンド
31a (第一バンドの)先端部
32 第二バンド
32a (第二バンドの)先端部
37 環状部
38 小穴
50 美錠
51 つく棒
D 所定方向
図1
図2
図3
図4