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特許7493957膜形成装置、膜形成方法、および物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】膜形成装置、膜形成方法、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
G03F7/20 521
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020029576
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021135334
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 博史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊樹
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-144009(JP,A)
【文献】特開2007-140166(JP,A)
【文献】特開2008-134614(JP,A)
【文献】特開2011-066087(JP,A)
【文献】特開2013-171984(JP,A)
【文献】特開2014-066870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の組成物に光を照射して前記基板上に前記組成物の膜を形成する膜形成装置であって、
前記基板上に前記光の積算光量の分布を形成する光変調部と、
前記光変調部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、後続工程で用いられる原版の結像面の湾曲形状および前記基板上に形成された下地膜の表面形状の少なくともいずれか一方の形状、前記組成物の残膜率特性とに基づいて、前記光変調部の積算光量の分布を制御することを特徴とする膜形成装置。
【請求項2】
前記後続工程は、露光装置によって、前記原版のパターンを前記基板に転写する工程であることを特徴とする請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記結像面の湾曲形状に基づいて、前記基板上に前記結像面の湾曲形状に応じた膜を形成するように、前記積算光量の分布を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の膜形成装置。
【請求項4】
前記結像面の湾曲形状に応じた膜は、平坦化膜の上に形成されることを特徴とする請求項3に記載の膜形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記基板上に形成された前記下地膜の表面形状に基づいて、前記基板上に平坦化膜を形成するように、前記積算光量の分布を制御することを特徴とする請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、少なくとも前記光の照度、波長、および、照射時間の少なくとも1つを用いて前記積算光量を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の膜形成装置。
【請求項7】
前記基板の複数のショット領域について一括してまたは前記ショット領域毎に前記膜を形成する処理を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の膜形成装置。
【請求項8】
前記基板上に形成された前記組成物の膜の表面形状および厚みの少なくとも一方を計測する計測部を備え、
前記制御部は、前記計測部による計測結果に基づいて、前記積算光量を補正することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の膜形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記基板上に形成された前記下地膜の表面の凹凸の深さに基づいて前記積算光量を制御する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の膜形成装置。
【請求項10】
前記組成物は、溶解阻害型レジストを含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の膜形成装置。
【請求項11】
前記組成物のパターンが形成された前記基板を保持して移動する基板保持部を備え、
前記制御部は、前記パターンの形状と、前記基板上に形成する前記積算光量の分布と、に基づいて前記基板保持部を制御することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の膜形成装置。
【請求項12】
前記光変調部は、デジタルミラーデバイス、および、前記積算光量の分布を形成するためのマスクのいずれか一方を含む請求項1乃至11のいずれか1項に記載の膜形成装置。
【請求項13】
基板上の組成物に光を照射して前記基板上に前記組成物の膜を形成する膜形成方法であって、
前記基板上に前記光の積算光量の分布を形成する工程を含み、
前記積算光量の分布は、後続工程で用いられる原版の結像面の湾曲形状および前記基板上に形成された下地膜の表面形状の少なくともいずれか一方の形状と、前記組成物の残膜率特性と、に基づいて、決定されることを特徴とする膜形成方法。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の膜形成装置によって基板の上に組成物の膜を形成する工程と、
前記膜の上にフォトレジスト膜を配置する工程と、
前記フォトレジスト膜を露光および現像プロセスによってパターニングしてフォトレジストパターンを形成する工程と、
前記フォトレジストパターンを使って前記基板を処理する工程と、を含み、前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成装置、膜形成方法、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の物品の製造において、フォトリソグラフィー技術が利用されている。フォトリソグラフィー技術は、基板の上に配置されたフォトレジスト膜に露光装置を使って原版(レチクル)のパターンを転写して潜像パターンを形成し、これを現像することによってレジストパターンを形成する工程を含む。露光装置の解像度の進化にともなって露光装置の投影光学系の焦点深度が極端に狭くなっている。例えば、5~7nmのラインアンドスペースパターンを形成するために用いられる走査露光装置では、露光スリット内に要求される凹凸精度は、4nm以下である。そこで、基板の表面に存在する下地パターンの上に平坦化膜が形成され、その上にフォトレジスト膜が配置されうる。
【0003】
特許文献1には、ウエハ上に紫外線硬化型レジストの密度を変化させてジェッティングし、その上に平面の基準となる透明の薄板を押し付け、レジストが過渡的なリフロー状態となっている間に紫外線を照射して硬化させる方法が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9415418号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトリソグラフィー工程において使用される露光装置は、最小解像寸法の縮小のために投影光学系の高NA化が進んでいて、これによって投影光学系の焦点深度(DOF)が縮小している。例えば、NAが0.33の投影光学系を有するEUV露光装置では、照明条件によるが、DOFは110nm~300nmである。NAが0.55となる次の世代においては、照明条件によるが、DOFは40nm~160nm程度になりうる。
【0006】
デフォーカスは種々の要因によって発生するので、DOFの全てを基板の表面の凹凸(高低差)が使い切ることはできない。したがって、NAが0.55の世代であっても、全ての照明条件においてDOFを満足するためには、基板の表面の凹凸は、例えば、4nm以下に抑えられるべきである。
【0007】
【表1】
【0008】
表1には、フォトリソグラフィー工程においてデフォーカスを発生させる要因が示されている。要因1~9の合計を露光装置のDOFに収める必要がある。要因1~7は、レチクルを含む露光装置側の要因である。要因8、9は、ウエハ要因である。45nmノード以降の半導体プロセスにおいて一般的に使用されているSOC(Spin On Carbon)層は、要因8、9を改善する技術である。
【0009】
SOC層を使ったプロセスウエハの平坦化の事例としては、凹凸を有する下地の上にSOC層、平坦化SOG中間(HM)層、フォトリソグラフィー工程用のフォトレジスト層を積層した3層構造が知られている。平坦化されたフォトレジスト層は、露光装置を用いたフォトリソグラフィー工程によってパターニングされる。SOC層の平坦度の改善例としては、パターニングされたウエハの表面上に熱硬化型又は紫外線硬化型のレジストをスピンコートし、概ね200℃環境下でのベーキングを行う。そして、レジストのリフローが平衡状態に達した後に再加熱またはUV光の照射によって硬化させる方法がある。
【0010】
DOFの狭小化に伴い、表1に掲げられた個々の要因を改善することが求められている。しかしながら、露光装置起因の要因については、既に可能な限り低減されており、従来のようにプロセスウエハの表面の平坦化を追求するアプローチには限界がある。
【0011】
本発明は、露光装置のDOFに基板の露光領域を収めるために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、基板上の組成物に光を照射して前記基板上に前記組成物の膜を形成する膜形成装置であって、前記基板上に前記光の積算光量の分布を形成する光変調部と、前記光変調部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、後続工程で用いられる原版の結像面の湾曲形状および前記基板上に形成された下地膜の表面形状の少なくともいずれか一方の形状、前記組成物の残膜率特性とに基づいて、前記光変調部の積算光量の分布を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、露光装置のDOFに基板の露光領域を収めるために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る膜形成装置および膜形成方法において製造される構造を例示的に示す模式図である。
図2】焦点補償膜3を形成するための従来例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る膜形成装置の構成例を示す概略図である。
図4】膜形成装置の像面形状の一例を示す等高線図である。
図5】膜形成装置の像面形状の他の例を示す等高線図である。
図6】第1実施形態に係る焦点補償膜形成プロセスを説明する図である。
図7】焦点補償膜形成に用いるレジストの残膜率曲線の一例を示す図である。
図8】制御部のソフトウェア構成の一例を示す概略図である。
図9】第1実施形態に係る露光プロファイルを作成する処理のフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る焦点補償膜形成プロセスを説明する図である。
図11】第2実施形態に係る露光プロファイルを作成する処理のフローチャートである。
図12】第3実施形態に係る焦点補償膜形成プロセスを説明する図である。
図13】第3実施形態に係る露光プロファイルを作成する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る膜形成装置および膜形成方法において製造される構造を例示的に示す模式図である。プロセスウエハ(プロセス基板)4は、表面に凹凸を有する。本明細書においては、このようなプロセスウエハ4表面の凹凸なども下地膜と呼ぶ。凹凸表面の凹凸は、プロセスウエハ4が有するパターンに依存しうる。プロセスウエハ4は、例えば、後にエッチングによってパターニングされる層を有しうる。プロセスウエハ4の上に焦点補償膜3が形成されうる。焦点補償膜3は、例えば、60nm~200nmの範囲内の厚さを有しうるが、他の厚さを有してもよい。
【0017】
焦点補償膜3の上には、任意的な要素として、SOG(Spin On Glass)膜2が配置されうる。SOG膜2は、焦点補償膜3の下の層をエッチングする際のハードマスクとして利用されうる。焦点補償膜3またはSOG膜2の上には、レジスト層(フォトレジスト層)1が形成されうる。レジスト層1には、露光装置を用いて実施される露光工程において、レチクル(原版)のパターンが潜像パターンとして転写され、その後、現像工程を経てレジストパターンに変換されうる。図1において、2本の点線は、レジスト層1に対する露光工程において露光装置のDOFを示している。2本の線で示されるDOFの範囲内に露光装置のベストフォーカス面が位置することが好ましい。
【0018】
デバイスアプリケーションの一側面において、メモリデバイスの積層化に伴ってプロセスウエハ4のデバイスパターン起因の凹凸(例えば、80~100nm)が増長される傾向にある。一方、露光装置は、投影光学系の高NA化に伴ってDOFが狭小化している。NAが0.33の投影光学系を有するEUV露光装置では、照明条件によるが、DOFは110nm~300nmである。NAが0.55となる次の世代においては、照明条件によるが、DOFは40nm~160nm程度になりうる。これに従うと、NA=0.55世代であってもすべての照明条件でDOFを満足するためには、プロセスウエハ4の表面凹凸は4nm以下に抑える必要があり、プロセスウエハ表面のみを平坦化しただけでは不十分な場合がある。即ち、プロセスウエハ4、後続工程で用いられるレチクル(透過型または反射型)等の型、および投影光学系の3者間で補正アイテムのトレードオフを行ってDOF要件を満たすアプローチが必要となる。なお、ここで、後続工程とは、プロセスウエハ4上にパターンを転写する工程である。
【0019】
本実施形態では、レチクル等を含む後続の工程で用いられる装置起因のパターン投影像の平面からの乖離分(以降、「スキャン像面」という)を事前に計測し、その計測結果に基づいたスキャン像面の形状を予めプロセスウエハ上に形成する。これにより、露光工程におけるフォーカス性能の向上を図る。言い換えると、レチクル等を含む後続工程で用いられる装置のDOFにプロセスウエハ4のレジスト層1が収まるように、後続工程で用いられる装置の像面形状に応じた表面形状を有する焦点補償膜3が形成される。本実施形態では、究極的には、後続の装置の像面形状にレジスト層1の中心が倣うように、焦点補償膜3のポジション毎の膜厚分布が調整される。
【0020】
ここで、露光装置の像面形状は、例えば、像面湾曲として評価されうる形状である。露光装置等の半導体製造装置の投影レンズによるレチクル像の結像面は、理想的には平面となるように設計・調整されている。しかしながら、レチクルパターン面の設計上の平面からの乖離、レンズ収差の補正残などの要因によって像高(投影像のXY位置座標)によって平面から外れる量が存在し、高次変形成分を含めてこれを像面湾曲と呼んでいる。
【0021】
ステッパーとして構成された露光装置においては、ショット一内括露光なので、ショット内の結像面の平面からのずれが像面湾曲と同一になる。これは、例えば、テストパターンを露光したショット露光結果において、ベストフォーカス面からのずれを計測することで求めることができる。スキャン露光装置の場合は、ショットサイズよりも小さい露光スリットの結像面の平面からのずれ成分が像面湾曲に相当する。さらにステッパーと同様にテストパターンを露光したショット露光結果のベストフォーカス面からのずれを計測したものを、像面湾曲とは区別してスキャン像面と呼んでいる。しかるにスキャン露光方向に対しては露光スリット短手方向の像面湾曲は平均化され、スキャンステージの位置制御誤差要因が像面湾曲劣化要因に加わる。
【0022】
図2は、焦点補償膜3を形成するための従来例を示す図である。このような従来例は、後続の露光工程(パターンの転写工程)におけるDOF確保を行うために露光スリット内における絶対的な平面をターゲット像面と想定し、そこからの起伏成分をならして平らにするするという指標のもとに対策されている。即ち、スキャン像面の想定を曲面とするDOF改善対策は従来例では行われていなかった。即ち、スキャン像面の想定を曲面とするDOF改善対策は従来例では行われていなかった。露光スリット内のデフォーカス要因は、以下のようなものがある。(1)露光装置等の装置要因(投影光学系、本体変形、ウエハチャック平面度、フォーカス制御残渣、センサ精度)、(2)レチクル平面度、(3)プロセスウエハ要因(ショット内の設計上のパターン凹凸、ウエハ面内の凹凸むら)等。DOFのマージンが十分ある場合は、要因毎に絶対平面を目指した従来対策は有効である。一方、DOFマージンが十分与えられていない場合には、これらのバジェット配分が成立しなくなるため、本実施形態が有効な対策となる。
【0023】
図3は、第1実施形態に係る膜形成装置5の構成例を示す概略図である。膜形成装置5は、プロセスウエハ4を吸着保持するウエハチャック303と、ウエハチャック303が搭載されたウエハステージ304(基板保持部)と、を備える。ウエハステージ304は、膜形成装置5内において、平面方向に移動可能である。
【0024】
膜形成装置5は、アライメントスコープ305を備えうる。アライメントスコープ305は、ベース定盤302に結合されたブリッジ301によって支持されうる。プロセスウエハ4がウエハチャック303に搬送され、ウエハチャック303によって保持された後、アライメントスコープ305を使ってプロセスウエハ4の位置が計測されうる。アライメントスコープ305は、ブリッジ301を基準にウエハの位置を計測する。アライメントスコープ305によって計測されたプロセスウエハ4の位置は、露光位置駆動時のウエハステージ304の目標値に反映される。
【0025】
膜形成装置5は、さらに光源307を備えうる。光源307から放射される露光光は露光領域内における照度分布を任意のプロファイルに変更可能なDMD(デジタルミラーデバイス)モジュール306で反射され、さらに折り曲げられてプロセスウエハ4に照射される。プロセスウエハ4は、アライメントスコープ305によって計測されたプロセスウエハ4の位置に基づいて、露光時にDMDモジュール306で露光プロファイル変更された光束308がウエハ上のパターン合うように位置合わせされる。膜形成装置5によって、プロセスウエハ4を露光する場合の光束308の露光プロファイルは図4に示される。図4は、膜形成装置5の像面形状の一例を示す等高線図である。なお、図4(B)は、図4(A)のA-A’線における基板(ここでは、プロセスウエハ4、焦点補償膜3、SOG膜2およびレジスト層1を含む構造体)の断面構造の模式図である。
【0026】
膜形成装置5によって、プロセスウエハ4を露光する場合の光束308の露光プロファイルの等高線は、図4(A)に示すような分布を持つ。また、パターン転写工程で用いられる露光装置は、照明系の照明モードやレチクル個体差、およびスキャン露光におけるスキャン方向によっても像面湾曲形状が変わることが知られている。図5は、膜形成装置5の像面形状の他の例を示す等高線図である。こうしたケースにおいてもショットごとにDMDモジュール306の露光プロファイルをあらかじめ用意して切り替えて露光に使うことができるので、ハードウエアの変更なしに対応可能である。
【0027】
図3に戻り、DMDモジュール306は、DMD制御部310によって制御されうる。DMD制御部310は、後述の制御部309から受け取った露光プロファイルに基づいて、DMDモジュール306を制御する。
【0028】
膜形成装置5は、さらに制御部309を備えうる。制御部309は、CPUやメモリなどを含みうる。CPUは、例えば、メモリからロードしたコンピュータプログラムに従い、膜形成装置5の全体(膜形成装置5の各部)を制御する。制御部309は、例えば、組成物の残膜率特性と、後続工程で用いられるレチクル等を含む型の結像面の湾曲形状およびプロセスウエハ4上に形成された下地膜の表面形状の少なくとも一方とに基づいて、DMDモジュール306の積算光量の分布を制御する。制御部309の詳細な構成については後述する。
【0029】
本実施形態の光束308は、ショットごとにプロセスウエハ4に対して照射され、ショット内における露光光積算照度マップ(=露光プロファイル)はショットごとに変更可能である。露光プロファイルは、焦点補償膜3表面の平坦化、または、後続の露光装置の像面湾曲に合わせた曲面を形成することを目的としてレジストに与える積算露光量を定義したものである。したがって、照度をコントロールする実現可能な手段として、露光光の照度のみならず、露光時間(露光光の照射時間)、複数波長光源を用いる場合はそれぞれの波長感受性に対応した積算露光量の合算値が制御ノブとなりえる。DMDモジュール306の場合は、UV光源307からの照射光を反射している時間と遮光している時間の割合を変化させることによって、積算露光量(=照度*照射時間)をピクセルごとにコントロールし、図4に示したような露光プロファイルを実現している。即ち、DMDモジュール306は、プロセスウエハ4上に露光光の積算光量の分布を形成する光変調部でありうる。そして、プロセスウエハ4上の形成される前記積算露光量の分布は、照度、波長、および、照射時間の少なくとも1つを調節することにより制御される。
【0030】
図3で示した膜形成装置5は、一例として、ショットごとにあらかじめ定めた露光プロファイルをプロセスウエハ4上に照射するステップ・アンド・リピート方式である。即ち、図3で示す膜形成装置5は、プロセスウエハ4上の複数のショット領域について、ショット領域毎に焦点補償膜3を形成する処理を行う。しかし、生産性を向上させるために、膜形成装置5に複数ショットを1回で露光させたり、ウエハ全体を一括で露光する同等な広画角の照明機能をもたせたりすることも可能である。即ち、膜形成装置5は、プロセスウエハ4上の複数のショット領域について一括して焦点補償膜3の形成する処理を行うことも可能である。また、ショットごとの露光プロファイル(DMDレシピ)が同一ウエハ内で固定したパターンが許容される場合は、通常のステッパーにグレースケールトーンが描画されたレチクルをロードして同様な露光処理を行ってもよい。
【0031】
なお、実施形態に係る膜形成装置5に用いるレジストは、露光光に対して感度を有する現像型レジストであれば、ポジ型であってもネガ型であっても良い。
【0032】
図6は、第1実施形態に係る焦点補償膜形成プロセスを説明する図である。図6(A)~(F)は、時系列順にプロセスウエハ上の1ショットに着目した焦点補償膜形成の順序を示している。図6(A)は、凹凸パターンが形成されたプロセスウエハの下地(下地膜)401である。図6(B)の工程でSOCをスピンコートし、SOC層402を形成する。このSOC層402は、プロセスウエハの凹凸周期の短い成分を平滑化することを狙ったものである。SOCによる平坦化は、凹凸周期の長い成分は不得意である(例えば凹部404)。SOCによる平坦化では、XY方向の幅5μmを超える凹部は図6(B)のSOC層402の断面図に示すようにウエハパターンの周期の低い凹凸形状にSOC層402の表面形状が倣ってしまうことにより、表面形状の平坦性が十分補償できない問題がある。そこで、図6(C)に示す工程においてレジスト403をスピンコーターや真空蒸着などの手段を用いて塗布する。なお、SOC層402は、最終的に求められるレジスト層1の表面プロファイルの要求精度によっては必ずしも必須なものではない。
【0033】
図7は、焦点補償膜形成に用いるレジスト403の残膜率曲線の一例を示す図である。本実施形態では、一例として、化学増幅型レジストと溶解阻害型レジストを用いる。レジストの残膜率が露光量で制御できるという特性を利用すれば、ウエハ(ショット)内の各位置において露光量を制御することで、ウエハ上に残す現像後のレジスト膜厚を任意の位置で所望の厚みにコントロールすることができる。レジストの残膜率曲線がなだらかなである程、現像後の膜厚を制御しやすい。即ち、化学増幅型レジストよりも溶解阻害型レジストを用いることが好ましい。
【0034】
図6の説明に戻り、図6(D)に示す工程では、レジスト403を塗布したプロセスウエハの各ショットに対して、所定の露光プロファイルを形成した露光光を照射する。所定の露光プロファイルの形成は、概ね均一な照度むらを持った光源307の露光光を反射・制御するDMD306に対して、現像後の残膜量が所望の厚み分布になるような積算露光量プロファイルを与えることによって実現される。本実施形態において、露光プロファイルは2次元である。
【0035】
本実施形態では、図6(D)に示す工程において、表面を平坦化しようとした場合はレジストが塗布されたi)およびiv)の部分は現像による残膜率を低く、ii)はそれよりも厚く、iii)はii)よりもさらに厚く残す必要がある。そのためには図7に示す例のような、レジスト403の積算露光量と残膜率特性に基づいて、SOC層402の表面凹凸を埋める厚み分布となるように、ショット内における局所ごとの最適な積算露光量を求めておく。SOC層402の表面凹凸は、例えば、あらかじめ計測または計算して用意しておく。
【0036】
指定された露光プロファイル410で露光されたウエハは、図6(E)に示すように、現像されると、レジスト表面に積算露光量分布に基づいた表面プロファイルが現れる。本実施形態では平面となる。さらにこれを図6(F)に示すようにエッチバックすることで膜厚を所望の厚さに調整できる。かくして、プロセスウエハの下地401の表面段差の起伏ピッチが細かい成分(例えば、5μm未満)は、SOCで平坦化される。そのうえで残った緩やかな起伏ピッチの残差は、図6(D)に示す工程によって任意の膜厚分布の焦点補償膜3が形成されることで最終的に平坦化される。即ち、プロセスウエハ4上に平坦化膜が形成される。
【0037】
図8は、制御部309のソフトウェア構成の一例を示す概略図である。制御部309は、トポグラフ計算部1104と、プロファイル計算部1105とを含みうる。制御部309は、外部計測器及び後続の工程で用いられる装置における自己計測値の少なくとも一方に基づいて、露光プロファイル、即ちDMDレシピ1106を生成する。プロセスウエハ4の凹凸情報は、本実施形態ではプロセスウエハ4に対してAFM(Atomic Force Microscope)を使ってウエハ内複数ショット計測した計測情報を用いるものと想定している。AMFで計測したプロセスウエハ4の凹凸情報は、ショット間で共通なパターン起因成分と、エッチング深さのウエハ面内ばらつき等によって発生するショット間で異なる成分に分かれる。前者はプロセスウエハのショット地形情報1102、後者はウエハ面のエッチング深さの分布情報1101としてトポグラフ計算部1104に与えられる。一方、次工程で用いる露光装置のスキャン像面は、例えば露光装置ごと、レチクルごと、照明モードごと、スキャン方向ごとに異なるものとして与えられる(1103)。これらの変動要因に対して共通の枠組みとして使うならば、トポグラフ計算部1104の入力はショットごとに変更できるスキャン像面として扱えることが望ましい。トポグラフ計算部1104において、計算処理をおこなうと、ショットごとの焦点補償膜3の厚みマップが得られる。その値とレジスト403の積算露光量と残膜率特性、および制御対象となるDMDモジュール306の入力インターフェース及び制御性能に基づいて、プロファイル計算部1105がショット内積算露光量プロファイルの計算を行う。これにより、ショットごとに定義されたDMDレシピ1106を出力される。
【0038】
図9は、第1実施形態に係る露光プロファイルを作成する処理のフローチャートである。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、制御部309よって実行されうる。本実施形態では、制御部309は、組成物の残膜率特性と、プロセスウエハ4の凹凸情報、即ち、プロセスウエハのショット地形情報1102およびウエハ面のエッチング深さの分布情報1101に基づいて、DMDモジュール306の積算光量の分布を制御する。
【0039】
S1001では、例えば、外部機器によってパターン起因の地形図情報を事前計測し、制御部309はこれを取得する(S1003)。ウエハ表面の凹凸は、ショット単位で繰り返す回路パターン起因の段差と、ショット内同一ポジションでショットの位置がウエハ中心付近とウエハエッジ付近で異なるエッチング起因の段差が知られている。表面段差の情報を求めるには、例えば、下地レイヤーのマスクパターンとエッチングプロセスパラメータに基づいて計算で求める方法と、AFMや断面SEMの画像からプロセスウエハを直接計測する方法が挙げられる。ここで得られたプロセスウエハ表面の凹凸情報に基づいて、制御部309はこれを平坦化するための凹凸補正情報(補正量)を計算する(S1002)。この計算工程において、0次、1次成分等の除去をおこなう。
【0040】
S1003では、制御部309は、S1002で得られた凹凸補正量に基づいて、焦点補償膜の形状の目標値を計算する。その後、S1004では、制御部309は、図7に例示したレジスト403の積算露光量と残膜率特性に基づいて必要とされるDMD照明系の露光プロファイルを計算する。そして、制御部309は、計算した露光プロファイルをDMD制御部310に渡し、S1007で露光処理が行われる。その後、S1008において現像処理が行われ、処理が終了する。
【0041】
本実施形態によれば、基板上における周期の長い凹凸についても平坦化することが可能となり、露光装置のDOFに基板の露光領域を収める点で有利となる。
【0042】
なお、本実施形態において、後続工程、即ち、プロセスウエハ4上にパターンを形成する工程で用いられる装置は、膜形成装置5とは異なる装置であることを想定しているが同一の膜形成装置5によって、後続工程を実施してもよい。また、パターン起因成分など、ショット間で共通なプロセスウエハ4表面の凹凸を平坦化する場合には、光変調部としてプロセスウエハ4の表面形状に応じたマスクを用いることも可能である。また、DMDモジュール306と上述のマスクを併用してもよい。さらに、制御部309とDMD制御部310は、別体である必要はなく、ひとつの制御部であっても良い。
【0043】
また、膜形成装置5は、形成された焦点補償膜3の表面形状および厚みの少なくとも一方を計測する計測部を備えていてもよい。この場合、例えば、制御部309は計測部による計測結果に基づいて、露光プロファイルや、焦点補償膜3のレジストの膜厚にフィードバックをする。このような構成とすることで、プロセスウエハ4の表面の平坦化制度を向上することが可能となり、露光装置のDOFに基板の露光領域を収める点でさらに有利となる。
【0044】
〔第2実施形態〕
第2実施形態では、制御部309は、組成物の残膜率特性と、転写で用いられるレクチル等の結像面の湾曲形状に基づいて、DMDモジュール306の積算光量の分布を制御する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる点について、主に説明をする。
【0045】
図10は、第2実施形態に係る焦点補償膜形成プロセスを説明する図である。図10(A)~(E)は、時系列順にプロセスウエハ上の1ショットに着目した焦点補償膜形成の順序を示している。
【0046】
第2実施形態は、プロセスウエハの平坦化ではなく、プロセスウエハの表面に後続の工程で用いる露光装置のスキャン像面にならった曲面を形成することを目的としたプロセスである。プロセスウエハに焦点補償膜を形成したあとは、図1において説明したレジスト層1を塗布し、露光装置によるパターン転写を行う。
【0047】
図10(A)の工程は、レジストを塗布する前のプロセスウエハ501の状態であり、表面状態は例えばウエハエッチングを行う前、または、図6に示したプロセスによって表面が平坦化された状態を想定している。図10(B)の工程では、平坦化されたプロセスウエハ501上にレジスト403を塗布する。図10(C)に示す工程では、塗布されたレジスト403に対してあらかじめ用意した露光プロファイルに基づいた露光光を照射する。露光プロファイル510である積算露光量マップは、後続の露光装置におけるパターンの転写工程で用いるスキャン像面湾曲と、レジストの露光量と残膜率の特性(図7に示す)と、に基づいて計算され、DMD制御部310に渡される。露光プロファイルは、ショット内局所ごとの積算露光量目標値を定義した目標値データ群である。本実施形態に示したレジスト403は、一例として、露光エネルギーを与えたところの残膜率は少なく、露光しない部分の残膜率が多くなる関係にあるものを用いる。よって、DMDモジュール306に与えられる露光プロファイル510は、得たいウエハ表面の起伏プロファイルの逆相の目標値となる。
【0048】
図10(D)に示す工程では、上記露光済みのウエハの現像を行い、図10(E)に示す工程では最薄部のレジストの膜厚が所望の高さになるまでエッチバックする。上記説明したように、図10(A)のプロセスウエハ501の表面状態は本第2実施形態を適用するにあたって平坦化されていることが前提となっている。パターニングされたウエハを平坦化する方法は、上述の第1実施形態に開示した方法を用いてもよい。また、平坦化基準となるガラス平板のスーパーストレートと呼ばれる型を、レジストを塗布したウエハに押し当ててレジストのリフローを起こさせる。そして、レジストがガラス基板の表面に倣った状態に達した時点でUV光を照射してレジスト硬化させ、スーパーストレートを離型する方法を用いても良い。さらにCMP(Chemical mechanical polishing)、SOCなどの技術を用いても良い。即ち、パターン形成されたプロセスウエハの処理として、(1)平坦化(2)次工程のスキャン像面に合わせた起伏形成の順番に適用することで、本来の目的である狭DOFシステムに対するフォーカスマージンの確保が実現できる。
【0049】
図11は、第2実施形態に係る露光プロファイルを作成する処理のフローチャートである。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、制御部309よって実行されうる。図9に示すステップと同様のステップについては同一のステップ番号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態の処理を適用するためには、次工程で用いる露光装置及びレチクルをあらかじめ特定しておくことが必要である。
【0050】
S2001では、制御部309は、特定した、即ち後続の工程で用いられる露光装置とレチクルの組み合わせによるベストフォーカス面を求める。
【0051】
S2002では、制御部309は、平面と仮定したウエハ表面がスキャン像面に倣うための補正量を計算する。具体的には、制御部309は、S2001で求めたベストフォーカス面からサーボ追従で補正される0次、1次成分、後続の露光装置におけるスキャン方向に関する低次非平面成分(例えば2次まで)を差し引きスキャン像面とする。S1003~S1006については、図9と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
本実施形態によれば、後続工程で用いられる装置の像面形状に応じた表面形状を有する焦点補償膜を形成することができ、露光装置のDOFに基板の露光領域を収めることが可能となる。
【0053】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は、プロセスウエハの平坦化ではなく、プロセスウエハの表面にパターンを基板上に転写する後続の工程で用いる露光装置のスキャン像面にならった曲面を形成することを目的としたプロセスである。プロセスウエハに焦点補償膜形成を形成したあとは、図1において説明したレジスト層1を塗布し、露光装置によるパターン転写を行う。
【0054】
図12は、第3実施形態に係る焦点補償膜形成プロセスを説明する図である。図12(A)~(F)は、時系列順にプロセスウエハ上の1ショットに着目した焦点補償膜形成の順序を示している。
【0055】
図12(A)は、凹凸パターンが形成されているプロセスウエハの下地401を示す図である。図12(B)の工程でSOCをスピンコートしてSOC層402を形成する。このSOC層402は、第1実施形態の図6に示すものと同じであって、プロセスウエハ4の凹凸周期の短い成分を平滑化することを狙ったものである。このSOC層402は、プロセスウエハの凹凸周期の短い成分を平滑化することを狙ったものであるが、図6と同様、最終的に求められるレジスト層1の表面プロファイルの要求精度によっては必ずしも必須なものではない。図12(C)に示す工程において、レジスト403も図6で説明したものと同じであり、スピンコーターや真空蒸着などの手段を用いて塗布する。
【0056】
図12(D)に示す工程では、レジストを塗布したプロセスウエハの各ショットに対して、所定の露光プロファイルを形成した露光光を照射する。所定の露光プロファイルの形成は概ね均一な照度むらを持った光源307の露光光を反射・制御するDMDモジュール306に対して、現像後の残膜量が所望の厚み分布になるような積算露光量プロファイルを与えることによって実現される。本実施形態において、露光プロファイルは2次元である。第1実施形態の図6と、第3実施形態では、露光プロファイルが異なる。第3実施形態の露光プロファイル610は、SOC層402の表面に残った周期の長い凹凸を補正するための露光プロファイル410と、後続の工程で用いる露光装置のスキャン像面に合わせた起伏を作成するための露光プロファイル510の合算値になっている。図12(E)に示す工程では、上記露光済みのウエハの現像を行い、図12(F)に示す工程では最薄部のレジスト膜厚が所望の高さになるまでエッチバックする。
【0057】
図13は、第3実施形態に係る露光プロファイルを作成する処理のフローチャートである。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、制御部309よって実行されうる。図9および図11に示すステップと同様のステップについては同一のステップ番号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態の処理を適用するためには、次工程で用いる露光装置及びレチクルをあらかじめ特定しておくことが必要である。
【0058】
本実施形態においてのフローでは、S1001~1002と、2001~S2002の両方の工程が行われる。なお、S1001~1002と、S2001~S2002とは、並行して行われて良い。詳細な説明については図9および図11と同様であるため省略する。S1003~S1006についても、図9と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
本実施形態によれば、第1実施形態の図6に示したプロセスウエハの平坦化と、第2実施形態に示した後続の工程で用いる露光装置のスキャン像面に合わせた起伏を作成する工程を一度の焦点補償膜の形成プロセスで対応できる。
【0060】
以上、述べたように上述の実施形態は、ArF液浸露光装置、EUV露光装置のようなDOFの狭いリソグラフィ装置における露光処理にさきがけて行うものである。上述の実施形態は、露光対象となるプロセスウエハのプロセス起因の表面段差を平坦化し、それに加えて上記のリソグラフィ装置の再現性のあるスキャン像面成分を補償する曲面形状の薄膜(焦点補償膜)をあらかじめ形成する。そして、その上にフォトレジスト層を形成することによって、リソグラフィ装置側のデフォーカス要因をフィードフォワード補正するものである。特に焦点補償膜の形成にあたっては、吸収した露光エネルギーに対して比例的に変化する区間がSOCよりも長いレジストを使う。そして、同レジストを露光する積算露光量を局所ごとに変更し、任意の膜厚を形成することによって上記フィードフォワードすべきウエハ表面形状を形成するものである。
【0061】
〔物品の製造方法の実施形態〕
以下、本発明の一実施形態に係る物品製造方法を説明する。該物品製造方法は、上記の膜形成装置または膜形成方法によって基板の上に膜を形成する工程と、基板の上の前記膜の上にフォトレジスト膜を配置する工程とを含みうる。該フォトレジスト膜は、例えば、スピンコーター等の塗布装置を使って該膜の上に配置されうる。また、該物品製造方法は、前記フォトレジスト膜を露光および現像プロセスによってパターニングしてフォトレジストパターンを形成する工程と、該フォトレジストパターンを使って基板を処理する工程とを含みうる。該フォトレジスト膜の露光は、露光装置、好ましくは走査露光装置を用いてなされうる。該物品製造方法では、以上の工程を経た基板Sから物品が製造される。
【0062】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0063】
また、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0064】
4 プロセスウエハ
5 膜形成装置
306 DMDモジュール
309 制御部
310 DMD制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13