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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20240527BHJP
   H04N 23/54 20230101ALI20240527BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20240527BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H04N23/54
H04N23/68
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020038635
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140061
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】戸取 祐樹
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-352418(JP,A)
【文献】特開2008-129406(JP,A)
【文献】特開2018-060002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/42
G02B 9/10
G03B 5/00
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学像を受光する撮像素子を搭載し、前記撮像素子が受光した光学像に基づく画像信号を生成する撮像基板と、
前記撮像基板が生成した前記画像信号を受信する制御基板と、
前記撮像基板を、前記撮像素子の受光面に沿って移動させることにより、前記光学像を形成するレンズ部の光軸である撮影光軸に対してロール方向の補正を含む像振れ補正を行う像振れ補正手段と、
前記撮像基板に設けられ、前記画像信号を光信号として出力する撮像側発光部と、前記制御基板側からの制御信号を受光する撮像側受光部とを備える撮像側光通信部と、
前記制御基板に設けられ、前記撮像側発光部から出力された光信号を受光する制御側受光部と、前記制御信号を光信号として出力する制御側発光部とを備える制御側光通信部と、を有し、
前記制御側光通信部は、前記像振れ補正手段が前記撮像基板を移動させたために前記画像信号である光信号の光軸位置がずれたときに、該光信号を屈折させて前記制御側受光部へ導く制御側光学補正手段を備え、
前記撮像側光通信部は、前記像振れ補正手段が前記撮像基板を移動させたために前記撮像側発光部の位置がずれたときに、前記制御信号である光信号を屈折させて前記撮像側受光部へ導く撮像側光学補正手段を備え、
前記撮像素子の中心は、前記像振れ補正が行われていないとき、前記撮影光軸上に配置され、
前記撮像側光通信部及び前記制御側光通信部は、前記像振れ補正が行われていないとき、前記撮影光軸上に配置されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像側光通信部と前記制御側光通信部とは同一構成である
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像側光学補正手段又は前記制御側光学補正手段の少なくとも一方は、凸レンズ又は凹レンズを1つ以上含む光学系を用いて、光信号を屈折させることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像側光学補正手段又は前記制御側光学補正手段の少なくとも一方は、フレネルレンズを1つ以上含む光学系を用いて、光信号を屈折させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光学系の直径は、前記像振れ補正手段が前記撮像素子を移動させる際の最大移動量よりも大きいことを特徴とする請求項3又は4に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に、撮像素子を移動させて撮像画像の像振れ補正を行う機構を有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置で画像を撮像する際に、カメラ本体を把持するユーザの手が揺れる(手振れが発生する)場合があり、被写体像に振れ(画像振れ)が生ずる原因となる。このため、従来より、画像振れを補正するための、様々な技術が提案されている。画像振れの補正機能を撮像装置に設けることで、良好な画質の撮影を行うことが可能となる。
【0003】
例えば、下記特許文献1に開示された画像振れ補正技術は、撮像装置の手振れを検出しし、その手振れを打ち消す方向へ、カメラ本体の撮像素子(画像センサ)を移動させることで、画像振れを補正している。
【0004】
特許文献1の像振れ補正技術では、撮像素子を像振れ補正機構上に搭載し、その像振れ補正機構の移動を制御基板で制御する。そのため、像振れ補正機構は、フレキシブルプリント基板或いはケーブル等を用いて、制御基板に接続される。フレキシブルプリント基板等には、撮像素子の移動を妨げないように十分な長さが必要であり、且つ、カメラ本体には、そのフレキシブルプリント基板等を撓んだ状態で収容するスペースが必要である。
【0005】
このため、特許文献1の技術は、カメラの小型化を図り難いという欠点がある。加えて、特許文献1の技術では、像振れ補正機構の駆動手段(例えばモータやアクチュエータ等)でフレキシブルプリント基板等を撓ませる必要があるため、カメラの消費電力が増えるという欠点もある。
【0006】
近年、デジタルカメラの高性能化に伴い、撮像素子の画素数の増加や動画情報の高フレームレート化が進んでいる。このため、今後も、像ブレ補正機構と制御基板とを接続する信号ライン数は増加していくと予想され、そのため、フレキシブルプリント基板等の大型化も進むと予想される。更に、より大きな像振れの補正を可能にするためには、像振れ補正時の撮像素子の移動量を長くする必要があるが、そのためには、フレキシブルプリント基板等を長くする必要がある。これらの理由により、上記欠点は、今後益々顕著になると予想される。
【0007】
これに対して、下記特許文献2は、撮像素子を搭載した基板(以下、「撮像基板」と記す)と制御基板との通信に、無線通信を利用する技術を提案している。無線通信を利用することで、撮像基板と制御基板とを接続するフレキシブルプリント基板の配線数を減らすことができ、その結果、占有スペースの容積等を減らすことができる。
【0008】
特許文献2は、無線通信の方式として、光通信方式と電磁波を変調する方式との、二種類を提案している。
このうち、光通信方式について、特許文献2は、光源として赤外LEDや赤外半導体レーザ等の発光素子を用いることや、その赤外線通信にIrDA(Infrared Data Association) が定めた規格を適用することを、提案している。
【0009】
光通信方式には、電磁波を変調する方式と比べて、撮像画像へのノイズの影響が無いこと、撮像装置が行う他の無線通信(例えばWi-Fi通信やBluetooth(登録商標)通信)との干渉が無いこと、超高速通信が可能であること等の利点がある。そのため、今後のデジタルカメラにおける、撮像素子の高画素化、動画読み出し信号の増大等に鑑みれば、撮像基板と制御基板との無線通信方式としては、光通信方式は、最適な方式の一つであると考えられる。
【0010】
その反面、光通信方式の欠点としては、指向性が極めて強いために、移動中の通信に不向きであることが、挙げられる。
この欠点を解消するために、特許文献2では、例えば、受光範囲の広い受光素子を使用することで、撮像基板の移動中でも光信号を受光しやすくする方法を、提案している(従来例1)。
【0011】
また、特許文献2は、発光部の移動経路に沿って複数個の受光素子を配置することで、撮像基板の移動中における通信を可能にする方法を、提案している(従来例2)。
更に、特許文献2は、像振れ補正後に、発光部と受光部との対向位置まで撮像基板を移動させて通信する方法や、移動中には通信せずに撮像基板が停止した後で確実に通信を行う方法も、提案している(従来例3)。
【0012】
一方、電磁波を変調する方式として、特許文献2は、2.4GHz帯や5GHz帯を使用するIEEE802.11a/11b/11g等の規格や、これらの規格を簡略化した方式を適用することを、提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2003-110919号公報
【文献】特開2006-352418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献2に開示された技術で、像振れ補正時の撮像素子の移動量を拡大させて、より大きな画像振れの補正を可能にしようとすると、以下のような課題を生じる。
【0015】
受光範囲が広い受光素子を使用する方法(上記従来例1)では、像振れ補正の移動量を大きくするほど、大きい受光素子が必要にある。このため、より大きな画像振れの補正を可能にしようとすると、部品コストの上昇を招く。また、受光素子の受光範囲を拡げることには限界があり、従って、より大きな画像振れの補正を可能にすることにも限界が生じる。更には、受光素子の大型化に伴って、基板の面積が増大してしまう。
【0016】
また、発光部の移動経路に沿って複数個の受光素子を配置する方法(上記従来例2)では、隣接する受光素子の受光面間に隙間が生じてしまう。このため、撮像素子の移動中に、通信できるタイミングが限られてしまうことになって、通信制御が複雑になる。
【0017】
撮像基板を所定位置まで移動させ或いは所定位置で停止させて通信する方法(上記従来例3)では、撮像中には通信できない。このため、制御基板は、撮像基板の移動等を制御できず、従って像振れ補正機構の制御そのものを担うことができない。
また、この方法では、撮影画像のデータを、撮像基板のバッファメモリ等へ一旦保存し、その後の通信時に制御基板へ送信することになる。このため、静止画撮影の連写や、動画撮影等、大容量のデータ容量を必要とする機能を十分に活用できないなど、撮像装置の使い勝手を悪化させる。
【0018】
そこで、本発明の目的は、像振れ補正中に撮像基板と制御基板間の通信が可能で且つ使い勝手がよい撮像装置を、低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、光学像を受光する撮像素子を搭載し、前記撮像素子が受光した光学像に基づく画像信号を生成する撮像基板と、前記撮像基板が生成した前記画像信号を受信する制御基板と、前記撮像基板を、前記撮像素子の受光面に沿って移動させることにより、前記光学像を形成するレンズ部の光軸である撮影光軸に対してロール方向の補正を含む像振れ補正を行う像振れ補正手段と、前記撮像基板に設けられ、前記画像信号を光信号として出力する撮像側発光部と、前記制御基板側からの制御信号を受光する撮像側受光部とを備える撮像側光通信部と、前記制御基板に設けられ、前記撮像側発光部から出力された光信号を受光する制御側受光部と、前記制御信号を光信号として出力する制御側発光部とを備える制御側光通信部と、を有し、前記制御側光通信部は、前記像振れ補正手段が前記撮像基板を移動させたために前記画像信号である光信号の光軸位置がずれたときに、該光信号を屈折させて前記制御側受光部へ導く制御側光学補正手段を備え、前記撮像側光通信部は、前記像振れ補正手段が前記撮像基板を移動させたために前記撮像側発光部の位置がずれたときに、前記制御信号である光信号を屈折させて前記撮像側受光部へ導く撮像側光学補正手段を備え、前記撮像素子の中心は、前記像振れ補正が行われていないとき、前記撮影光軸上に配置され、前記撮像側光通信部及び前記制御側光通信部は、前記像振れ補正が行われていないとき、前記撮影光軸上に配置される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、撮像側光学補正手段を設けて、撮像基板側から制御基板側へ送信する光信号を屈折させることとしたので、像振れ補正中に撮像基板と制御基板間の通信が可能で且つ使い勝手がよい撮像装置を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る撮像装置のシステム構成を概略的に示すブロック図である。
図2】(A)は実施形態に係る撮像装置の要部構成を概略的に示す中央断面図であり、(B)は(A)の部分拡大図である。
図3】実施形態の撮像装置に設けた光通信部を概略的に示す図であり、(A)は分解斜視図、(B)は分解断面図、(C)は組み立て断面図である。
図4】実施形態に係る撮像装置の光通信部を概略的に示す断面図であり、(A)は撮像素子が光軸中心にある状態を示す図、(B)は撮像素子が光軸中心から外れた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る撮像装置について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る撮像装置のシステム構成を概略的に示すブロック図である。図1に示したように、本実施形態の撮像装置1は、制御基板6、撮像基板5、シャッタ17、電源111、操作部材116、操作検出部117及び像振れ補正部118を備えている。
【0023】
撮像基板5は、撮像素子4と、光通信部14とを有する。
撮像素子4は、CCDやCMOSセンサを用いて構成された通常の画像センサである。この撮像素子4は、被写体の光学像を画像信号に変換することで画像データを生成し、光通信部14へ送る。
【0024】
光通信部14は、制御基板6に設けた光通信部15(後述)との光通信により、画像データや制御信号等を送受信する。
制御基板6は、例えばプリント配線板(PWB:Printed Wired Board)である。この制御基板6には、後述の各回路部110、112、113、115、119、15等が実装されている。
【0025】
この制御基板6において、CPU110(中央演算処理)は、撮像装置1全体の動作制御を行う。そのために、CPU110は、メモリ(図示せず)からロードしたコンピュータプログラムを実行することで、撮像装置1の各機能の制御や、その制御のために必要な演算処理等を行う。
【0026】
電源111は、後述の電池16を含み、その電池16から制御基板6等へ電力を供給させる。
無線通信装置112は、撮像装置1と外部装置(図示せず)との無線通信を行う。
画像処理部113は、撮像素子4から受け取った画像信号を画像データに変換して、CPU110へ送る。
【0027】
シャッター制御部115は、CPU110から入力した制御信号に基づいて、シャッター17(後述)の開閉動作を制御する。
振れ検出部119は、例えばジャイロセンサ等の加速度センサを有し、撮像装置1の振れ量や触れ方向を検出してCPU110へ通知する。
【0028】
シャッター17は、撮像素子4の前面に配置されており、この撮像素子4の露光時間を調整する。
操作部材116は、撮像装置1を操作するために、ユーザによって使用される。例えば、露出やシャッタースピード等の撮影条件を設定・変更するために、この操作部材116が使用される。
【0029】
操作検出部117は、操作部材116が操作されたときに、その操作に応じた信号を、CPU110へ送信する。
像振れ補正部118は、振れ検出部119が撮像露光中の手振れを検出したときに、その検出結果をCPU110から受け取る。そして、像振れ補正部118は、撮像基板5を搭載した撮像ユニット(図示せず)を、その検出結果に基づいて移動させることで、撮像素子4で発生する像振れを軽減させる。
【0030】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る撮像装置1の像振れ補正機構について説明する。
図2(A)は、撮像装置1の像振れ補正機構の構成を概略的に示す中央断面図であり、撮像装置1の撮影光軸に沿った断面の図である。図2(B)は、図2(A)に“B”で示した領域の拡大図であり、可動部19(後述)の摺動部周辺を拡大して示している。
【0031】
図2(A)において、レンズ部2は、被写体からの光を集光するための光学ユニットであり、外装カバー3に取り付けられている。図2(A)の撮影光軸Aは、レンズ部2の光軸、すなわちレンズ部2が有するレンズの中心線である。
【0032】
撮像素子4は、レンズ部2によって集光された被写体像を受光するために、撮像基板5へ実装されている。
制御基板6は、上述のようにCPU110等を備えており(図1参照)、不図示の内部筐体に取り付けられている。
【0033】
駆動コイル7は、像振れ補正時に撮像素子4を移動させるためのコイルである。後述するように、この駆動コイル7に電流を流すことで、この駆動コイル7とマグネット9(後述)との間にローレンツ力を発生させることができ、その結果、駆動力を発生させることができる。
【0034】
可動枠8は、駆動コイル7と撮像基板5とを固定支持する。
マグネット9は、マグネット保持部材10を介して、固定枠11に固定された永久磁石である。このマグネット9は、駆動コイル7と対向するように配置されている。
【0035】
可動側ヨーク12は、可動枠8に取り付けられている。一方、固定側ヨーク13は、固定枠11に取り付けられている。
以上の構成部のうち、撮像素子4、撮像基板5、駆動コイル7、可動枠8及び可動側ヨーク12が、可動部19を構成する。
【0036】
上述の駆動コイル7は、マグネット9が生成する磁界中に配置されている。このため、駆動コイル7へ電流を流すと、その駆動コイル7とマグネット9との間にローレンツ力が発生し、このローレンツ力によって可動部19が移動する。したがって、撮像露光中に振れ検出部119が手振れの発生を検出したときに、その検出結果に応じた値の電流を駆動コイル7へ流すことで、可動部19を移動させて、撮像素子4に発生する像振れを軽減できる。
【0037】
電池16は、不図示の接点部によって制御基板6に接続され、この接点部を介して制御基板6へ電力を供給する。一方、撮像基板5への電源供給としては、例えば電磁誘導方式や電解結合方式等の、公知のワイヤレス給電を用いることができる。
【0038】
シャッター17は、開口部17aを有している。シャッター駆動部17bは、シャッター制御部115からの制御信号に基づいてシャッター羽根(不図示)を駆動することで、この開口部17aの開閉を制御する。これにより、シャッター17は、撮影と非撮影の切り換え、すなわち光学像を撮像素子4へ投影するか否かの切り換えを行う。
【0039】
光通信部14は、撮像基板5へ実装されている。また、光通信部15は、制御基板6に実装されている。これら光通信部14、15は、互いに対向するように配置されている。そして、光通信部14と光通信部15とが互いに光信号を送受信することで、撮像基板5と制御基板6との間のデータ通信が行われる。
【0040】
具体的には、光通信部14から光通信部15へは、撮像基板5の撮像素子4が取得した撮像画像信号が送られ、一方、光通信部15から光通信部14へは、撮像素子4の動作を制御する撮像制御信号が送られる。光通信部14、15の構成の詳細については、後述する(図3参照)。
【0041】
図2(B)に示したように、可動枠8の外縁には、固定枠11と対向する側が開口した、溝状の囲い部8aが形成されている。そして、その囲い部8aの溝底面には、摺動プレート22が設けられている。
一方、固定枠11には、可動枠8と対向させて、摺動面11aが形成されている。
そして、囲い部8a内には、複数の剛球21が、摺動プレート22と摺動面11aとに挟まれた状態で収容されている。
【0042】
このような構成によれば、像振れ補正時、すなわち可動部19が移動するときに、囲い部8a内で鋼球21aが転がる。このため、可動部19は、常に、レンズ部2の光軸方向Aに対して直交する面内で、滑らかに移動できる。
【0043】
次に、図3(A)~(C)を用いて、光通信部14、15の構成について、詳細に説明する。なお、光通信部14と光通信部15とは同一構成であるため、以下の説明では、光通信部15のみを説明し、光通信部14の説明は割愛する。
【0044】
図3(A)は、光通信部15を分解した状態で斜め前方より観察した、分解斜視図である。また、図3(B)は、光通信部15を分解した状態を示す中央断面図、図3(C)は組立てた状態を示す中央断面図である。
図3(A)~(C)に示したように、光通信部15は、光通信素子31と、凹レンズ32と、レンズホルダー33と、凸レンズ34とを備える。
【0045】
光通信素子31は、発光部31aと受光部31bとを一体化した素子である。発光部31aは、赤外LEDや赤外半導体レーザー等の発光素子を用いて、電気信号を光信号に変換し、送信する。一方、受光部31bは、受光した光信号を、フォトダイオードやフォトトランジスタ等の受光素子を用いて、電気信号へ変換する。
【0046】
レンズホルダー33の本体は、箱形に形成され、光通信素子31の前面と対向する面が開口している。これにより、レンズホルダー33内には、光通信素子31を収容するための素子収容部33cが形成されている。
【0047】
このレンズホルダー33の、受光部31bに対応する位置には、レンズ鏡筒部33aが設けられている。このレンズ鏡筒部33aには、本発明の「制御側光学補正手段」としての、凹レンズ32および凸レンズ34が固定される。これら凹レンズ32および凸レンズ34が構成する光学系は、その光軸が、受光部31bの受光面の中心を通るように配置されている。
図3(B)に示したように、レンズ鏡筒部33aの先端側(受光側)には、凸レンズ34を収容するレンズ収容部33a1が設けられている。一方、レンズ鏡筒部33aの後端側には、凹レンズ32を収容するレンズ収容部33a2が設けられている。
【0048】
加えて、レンズホルダー33の、発光部31aに対応する位置には、開口部33bが形成されている。この開口部33bを通過した光信号が、受光部31bに受光される。
【0049】
図3(C)から解るように、レンズ鏡筒部33aのレンズ収容部33a1、33a2へ凸レンズ34及び凹レンズ32を収容して接着固定したのち、素子収容部33cへ光通信素子31を収容して接着固定することで、光通信部15を組み立てることができる。
【0050】
次に、図4(A)、(B)を用いて、本実施形態に係る像振れ補正機構の原理を説明する。
図4(A)、(B)に示したように、撮像基板5の裏面には光通信部14が実装され、また、制御基板6の表面には光通信部15が実装されている。
【0051】
像振れ補正が行われていないとき、光通信部14、15は、発光部41aと受光部31bとが互いに対向し、且つ、発光部31aと受光部41bとが互いに対向するように、配置されている(図4(A)参照)。なお、像振れ補正が行われていないとき、撮像素子4の中心は、撮影光軸上、すなわちレンズ部2の光軸上に位置している。
【0052】
一方、像振れ補正が行われているときには、振れ検出部119が検出した振れ量や触れ方向に合わせて撮像基板5が移動し、そのため、光通信部14、15の相対位置も変化する。
【0053】
発光部41aは、レンズ32、34を介して受光部31bへ、光信号を送る。同様に、発光部31aは、レンズ42、44を介して受光部41bへ、光信号を送る。レンズ42、44は、本発明の「撮像側光学補正手段」に対応する。
【0054】
図4(A)は、発光部41aの光軸(光信号を形成する光束の中心軸)が、受光部41bの受光面の中心を通過する場合を示している。上述のように、凹レンズ32および凸レンズ34が構成する光学系の光軸は受光部31bの受光面の中心と一致するので、この場合、発光部41aの光軸とレンズ32、34の光軸とは一致する。このため、発光部41aから出射した光は、レンズ32及び34で屈折すること無しに直進して、受光部31bへ入射される。発光部31aから受光部41bへ出力される光も、同様である。
【0055】
一方、図4(B)は、発光部41aの光軸が、レンズ32、34の光軸からずれた位置にある場合を示している。この場合、発光部41aからの出射した光は、凸レンズ34で光軸方向へ屈折し、更に、凹レンズ32で光軸と平行な方向へ屈折し、その後、受光部31bへほぼ垂直に入射される。発光部31aから受光部41bへ出力される光も、同様である。
【0056】
このように、本実施形態によれば、光通信部14、15が対向位置から互いにずれている場合でも、レンズ32、34又はレンズ42、44の集光屈折により、光信号を受光部31b、41bへ正確に受光させることができる(図4(B)参照)。このため、本実施形態によれば、像振れ補正のために撮像基板5が移動して、撮像素子4の中心位置がレンズ部2の光軸からずれた場合でも、撮像基板5と制御基板6の通信を確保できる。
【0057】
なお、本実施形態では、像振れ補正時の、撮像基板5の移動量(撮像素子4の移動量)が、光通信部14、15に設けた凸レンズ44、34の直径を超えない値となるように構成されている。そのため、像振れ補正により撮像素子4が最大量移動したとしても、光通信部14、15の発光部41a、31aの光軸が、対向する凸レンズ34、44の縁部よりも外側まで移動することはない。従って、本実施形態によれば、発光部41a、31aと受光部で31b、41bとで、正確な双方向光通信を行える。
【0058】
その結果、本実施形態では、発光部41a、31aとして、受光範囲の広い大きな受光素子を選択したり、複数個の受光素子を配置したりする必要がない。従って、本実施形態によれば、部品コストを抑制できるとともに、基板面積の拡大も抑制できる。
【0059】
さらに、本実施形態によれば、像振れ補正中であっても、撮像基板5と制御基板6との通信を行えるので、静止画撮影の連写時や、動画の撮影時にも、像振れ補正機構を作動させることができ、その結果、使い勝手の良い撮像装置を提供できる。
【0060】
なお、本実施形態では、撮像素子4がX方向へずれた状態を説明したが(図4(B)参照)、X-Y平面内のずれであれば、他の方向にずれた場合にも、上記と同様の正確な光相互通信を確保できる。
【0061】
ここで、像振れ補正機構は、撮影光軸(レンズ部2の光軸)に対してロール方向の補正も行える。このような場合、光通信部14、15を撮影光軸上に配置すると(すなわち、像振れ補正を行っていないとき、通信部14、15の発光部41a、31aが撮影光軸の近傍となるように、配置すると)、撮像素子4の面内移動量を最小にできる。そのため、光通信部14、15は、撮影光軸の中心にレイアウトされることが望ましい。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、本実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0063】
例えば、本実施形態では、光学補正手段として、凸レンズ44および凹レンズ42から成る光学系と、凸レンズ34および凹レンズ32から成る光学製とを使用した。しかし、本発明で使用する光学補正手段として、他の部材を用いてもよい。例えば、光学補正手段として、凸レンズのみを用いることや、凸レンズや凹レンズと同等の機能を有するフレネルレンズを用いることも可能である。フレネルレンズを使用する場合、本実施形態と比較して、レンズの厚みを低減できるので、さらに小型の像振れ補正機構を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1 撮像装置
4 撮像素子
5 撮像基板
6 制御基板
7 駆動コイル
8 可動枠
9 マグネット
10 マグネット保持部材
11 固定枠
12 可動側ヨーク
13 固定側ヨーク
14、15 光通信部
31 光通信素子
33 レンズホルダー
32、42 凹レンズ
34、44 凸レンズ
41 光通信素子
31a、41a 発光部
31b、41b 受光部
図1
図2
図3
図4