(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】シート排出装置、シート処理装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 31/18 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
B65H31/18
(21)【出願番号】P 2020042346
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 仁
(72)【発明者】
【氏名】伊▲崎▼ 崇夫
(72)【発明者】
【氏名】石橋 春紀
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-212992(JP,A)
【文献】特開2006-315812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを排出する第1排出部及び第2排出部と、
前記第1排出部によって排出されたシートが積載される第1積載部と、
前記第1積載部の下方に配置され、前記第2排出部によって排出されたシートが積載される第2積載部と、
前記第1積載部及び前記第2積載部を昇降させる昇降部と、
前記第1積載部の下面に物体が接触したことに基づいて出力値を変化させる検知部と、
前記第1積載部の前記下面に前記物体が接触した場合、上下方向において前記第1積載部と前記第2積載部との間の距離が大きくなるように、前記第1積載部及び前記第2積載部の少なくとも一方を移動させる離間処理を実行可能な制御部と、を備える、
ことを特徴とするシート排出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記離間処理において、
(i)前記第1排出部がシートを排出する排出状態の際には、前記第1積載部を昇降させることなく前記第2積載部を下降させる下降処理を実行し、
(ii)前記第1排出部が前記排出状態ではない非排出状態の際には、前記第1積載部を上昇させつつ前記第2積載部を下降させる昇降処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート排出装置。
【請求項3】
前記第2積載部は、前記第2積載部にシートが積載されていない状態で前記第2排出部から排出されたシートを積載可能な上位置と、前記上位置よりも下方の下位置と、の間で昇降可能であり、
前記制御部は、
(i)前記下降処理
が実行された場合、前記下降処理によって前記第2積載部が前記下位置に到達した後、
前記第2積載部に積載されたシート束を取り出すための所定の取り出し時間が経過すると前記上位置に前記第2積載部を移動させ、
(ii)前記昇降処理
が実行された場合、前記昇降処理によって前記第2積載部が前記下位置に到達した後、
前記第2積載部に積載されたシート束を取り出すための所定の取り出し時間が経過すると前記上位置に前記第2積載部を移動させると共に前記第1積載部を前記昇降処理の実行前の位置に移動させる、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート排出装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記下面に前記物体が接触することで導通状態と非導通状態とが切換わるスイッチを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート排出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記離間処理において、
(i)前記第1排出部がシートを排出する排出状態の際には、
前記検知部によって前記第2積載部に積載されたシートが前記第1積載部の前記下面から離間
したことが検知されるまで前記第1積載部を上昇させる第1上昇処理を実行し、
(ii)前記第1排出部が前記排出状態ではない非排出状態の際には、前記第1積載部を
前記検知部の検知結果に拘わらず所定量だけ上昇させる第2上昇処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート排出装置。
【請求項6】
前記第2積載部は、前記第2積載部にシートが積載されていない状態で前記第2排出部から排出されたシートを積載可能な上位置と、前記上位置よりも下方の下位置と、の間で昇降可能であり、
前記制御部は、
(i)前記
第1上昇処理が実行された場合、前記第1上昇処理
によって前記第1積載部が上昇した後、前記第1積載部を前記第1上昇処理の実行前の位置に移動させると共に前記第2積載部を前記下位置に移動させる第1下降処理を実行し、
(ii)前記第2上昇処理が実行された
場合、
前記第2上昇処理によって前記第1積載部が上昇した後、前記第2積載部を前記下位置へ移動させる第2下降処理を実行する、
ことを特徴とする請求項
5に記載のシート排出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
(i)前記第1下降処理
が実行された場合、前記第1下降処理によって前記第2積載部が前記下位置に到達した後、
前記第2積載部に積載されたシート束を取り出すための所定の取り出し時間が経過すると前記上位置に前記第2積載部を移動させ、
(ii)前記第2下降処理
が実行された場合、前記第2下降処理によって前記第2積載部が前記下位置に到達した後、
前記第2積載部に積載されたシート束を取り出すための所定の取り出し時間が経過すると前記上位置に前記第2積載部を移動させると共に前記第1積載部を前記第2上昇処理の実行前の位置に移動させる、
ことを特徴とする請求項
6に記載のシート排出装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第2積載部に積載されたシートと前記第1積載部の前記下面との間の距離が閾値未満の場合に前記離間処理を実行
可能な第1モード
を実行し、
前記第2積載部に積載されたシートと前記第1積載部の前記下面との間の距離が前記閾値以上の場合に前記離間処理を実行しない第2モード
を実行する、
ことを特徴とする請求項
5乃至
7のいずれか1項に記載のシート排出装置。
【請求項9】
前記昇降部は、前記第1積載部を昇降させる第1駆動源と、前記第2積載部を昇降させる第2駆動源と、を有し、
前記検知部は、前記下面に前記物体が接触することで前記第2駆動源への電源供給を停止させる電源遮断部を有する、
ことを特徴とする請求項
5乃至8のいずれか1項に記載のシート排出装置。
【請求項10】
前記物体は、前記第2積載部に積載されたシートである、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のシート排出装置。
【請求項11】
請求項1乃至1
0のいずれか1項に記載のシート排出装置と、
前記シート排出装置によって排出されるシートに処理を施す処理部と、を備える、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項12】
シートを受け入れる第1搬送路と、
前記第1搬送路の下方に配置され、かつ前記第1搬送路からシートを受け取り、前記第1搬送路とは反対方向にシートを案内する第2搬送路と、
前記第2搬送路から排出されたシートが積載される第3積載部と、
前記第3積載部から前記第2排出部に向けて延び、シートを前記第2排出部に案内する第3搬送路と、
前記第2搬送路に配置されると共にシートを前記第3積載部に排出する回転体対と、を備える、
ことを特徴とする請求項1
1に記載のシート処理装置。
【請求項13】
シートに画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置からシートを受け取る請求項1
1又は1
2に記載のシート処理装置と、を備える、
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを排出するシート排出装置及びこれを備えるシート処理装置並びに画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排出ローラにより排出された記録紙を積載するトレイを備え、トレイに積載された記録紙の高さに応じてトレイを昇降させる後処理装置が提案されている(特許文献1参照)。この後処理装置は、トレイに積載された記録紙の上面の位置を紙面センサによって検知し、排紙ローラにより排出される記録紙を適正に保持できるようにトレイの高さが調整される。そして、トレイに積載された記録紙が取り除かれると、次に排出される記録紙を受け取るために、トレイが排出口の近傍の所定の位置まで上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ユーザの利便性を高めるために、上下方向に並設された複数のトレイを有する後処理装置が望まれている。例えば上下2段のトレイを有する後処理装置では、上側のトレイに排出された記録紙が満載の場合には、上側のトレイが下限位置まで下がっている。この時、下側のトレイから記録紙を取り除く際に手間取って時間がかかると下側のトレイが上昇するため、記録紙を取り出すスペースが狭くなって記録紙が取り出しにくいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、シートの取り出し性を向上したシート排出装置及びこれを備えたシート処理装置並びに画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シート排出装置において、シートを排出する第1排出部及び第2排出部と、前記第1排出部によって排出されたシートが積載される第1積載部と、前記第1積載部の下方に配置され、前記第2排出部によって排出されたシートが積載される第2積載部と、前記第1積載部及び前記第2積載部を昇降させる昇降部と、前記第1積載部の下面に物体が接触したことに基づいて出力値を変化させる検知部と、前記第1積載部の前記下面に前記物体が接触した場合、上下方向において前記第1積載部と前記第2積載部との間の距離が大きくなるように、前記第1積載部及び前記第2積載部の少なくとも一方を移動させる離間処理を実行可能な制御部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、シートの取り出し性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係るプリンタを示す全体概略図。
【
図2】第1の実施の形態に係る制御系を示すブロック図。
【
図3】(a)は所定量のシート束が各トレイに積載されている状態を示す図、(b)は下排出トレイからシート束が引き出される様子を示す図、(c)は下排出トレイに積載されたシート束が上排出トレイの下面に接触する様子を示す図。(d)は下排出トレイを下降させる下降処理を示す図、(e)は上排出トレイを上昇させつつ下排出トレイを下降させる昇降処理を示す図。
【
図4】下排出トレイからシート束を取り出す際の処理を示すフローチャート。
【
図5】第2の実施の形態に係る制御系を示すブロック図。
【
図6】(a)は所定量のシート束が各トレイに積載されている状態を示す図、(b)は下排出トレイからシート束が引き出される様子を示す図、(c)は下排出トレイに積載されたシート束が上排出トレイの下面に接触する様子を示す図。(d)は上排出トレイを上昇させる第1上昇処理を示す図、(e)は上排出トレイ及び下排出トレイを下降させる第1下降処理を示す図。
【
図7】下排出トレイからシート束を取り出す際の処理を示すフローチャート。
【
図8】下排出トレイからシート束を取り出す際の処理を示すフローチャート。
【
図9】第3の実施の形態に係る制御系を示すブロック図。
【
図10】(a)は上限位置に位置する各トレイを示す図、(b)は所定量のシート束が各トレイに積載されている状態を示す図、(c)は下排出トレイに積載されたシート束と上排出トレイの下面との間の距離を示す図。
【
図11】下排出トレイからシート束を取り出す際の処理を示すフローチャート。
【
図12】下排出トレイからシート束を取り出す際の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施の形態>
〔全体構成〕
図1に示すように、第1の実施の形態に係る画像形成システム1Sは、画像形成装置1、画像読取装置2、原稿送り装置3及びシート処理装置4によって構成される。画像形成システム1Sは、記録材であるシートに画像を形成し、必要に応じてシート処理装置4によってシートに処理を施して出力する。以下、各装置の簡単な動作を説明した後、シート処理装置4について詳細な説明を行う。
【0010】
原稿送り装置3は、原稿トレイ18に載置された原稿を画像読取部16,19に搬送する。画像読取部16,19はそれぞれ原稿面から画像情報を読み取るイメージセンサであり、一度の原稿搬送で原稿の両面の読み取りが行われる。画像情報を読み取られた原稿は原稿排出部20に排出される。また、画像読取装置2は駆動装置17により画像読取部16を往復移動させることで、原稿台ガラスにセットされた静止原稿(ブックレット原稿などの原稿送り装置3が使用できない原稿を含む)から画像情報を読み取ることができる。
【0011】
画像形成装置1は、直接転写方式の画像形成部1Bを備えた電子写真装置である。画像形成部1Bは、感光ドラム9を備えたカートリッジ8と、カートリッジ8の上方に配置されたレーザスキャナユニット15と、を備えている。画像形成動作を行う場合、回転する感光ドラム9の表面が帯電させられ、レーザスキャナユニット15が画像情報に基づいて感光ドラム9を露光することでドラム表面に静電潜像を書き込む。感光ドラム9に担持された静電潜像は帯電したトナー粒子によってトナー像に現像され、感光ドラム9と転写ローラ10とが対向する転写部にトナー像が搬送される。画像形成装置1のコントローラは、画像読取部16,19によって読み取られた画像情報又は外部のコンピュータからネットワークを介して受信した画像情報に基づいて画像形成部1Bによる画像形成動作を実施する。
【0012】
画像形成装置1は、記録材としてのシートを1枚ずつ所定の間隔で給送する給送装置6を複数備えている。給送装置6から給送されたシートはレジストレーションローラ7にて斜行を補正された後に転写部に搬送され、転写部において、感光ドラム9に担持されたトナー像を転写される。シート搬送方向における転写部の下流には定着ユニット11が配置されている。定着ユニット11は、シートを挟持して搬送する回転体対と、トナー像を加熱するためのハロゲンランプ等の発熱体とを有し、シート上のトナー像を加熱及び加圧することで画像の定着処理を行う。
【0013】
画像形成されたシートを画像形成装置1の外部に排出する場合、定着ユニット11を通過したシートは水平搬送部14を介してシート処理装置4に搬送される。両面印刷において第1面の画像形成が終了したシートの場合、定着ユニット11を通過したシートは反転ローラ12に受け渡され、反転ローラ12によってスイッチバック搬送され、再搬送部13を介して再びレジストレーションローラ7に搬送される。そして、シートは、再び転写部及び定着ユニット11を通過することで第2面に画像を形成された後、水平搬送部14を介してシート処理装置4に搬送される。
【0014】
上記の画像形成部1Bはシートに画像を形成する画像形成部の一例であり、感光体に形成したトナー像を中間転写体を介してシートに転写する中間転写方式の電子写真ユニットを用いてもよい。また、インクジェット方式やオフセット印刷方式の印刷ユニットを画像形成部として用いてもよい。
【0015】
[シート処理装置]
シート処理装置4には、シートを搬送する搬送路として受入パス81、内排出パス82、第1排出パス83及び第2排出パス84が設けられており、シートを排出する排出先として上排出トレイ25及び下排出トレイ37が設けられている。下排出トレイ37は、上排出トレイ25の下方に配置されている。第1搬送路としての受入パス81は、画像形成装置1からシートを受け取って案内する搬送路である。第2搬送路としての内排出パス82は、受入パス81の下方に配置され、受入パス81からシートを受け取り、整合部4Aへ向けてシートを案内する搬送路である。第1排出パス83は、シートを上排出トレイ25に排出する搬送路であり、第3搬送路としての第2排出パス84は、中間積載部39から束排出ローラ36に向けて延び、シートを束排出ローラ36に案内する搬送路である。
【0016】
画像形成装置1の水平搬送部14から排出されるシートは、受入パス81に配置された搬送部としての入口ローラ21によって受け取られ、受入パス81を通って反転前ローラ22へ向けて搬送される。受入パス81には、入口ローラ21と反転前ローラ22との間の検知位置でのシートの有無に基づいて出力値(例えば電圧値や出力信号)を変化させる入口センサ27が設けられている。反転前ローラ22は、入口ローラ21から受け取ったシートを第1排出パス83へ向けて搬送する。
【0017】
なお、入口ローラ21によるシートの搬送速度を水平搬送部14よりも大きく設定し、入口ローラ21がシートを受け取った後にシートの搬送速度を加速してもよい。この場合、水平搬送部14の搬送ローラとこれを駆動するモータとの間にワンウェイクラッチを設置し、入口ローラ21によってシートが引っ張られたとしても搬送ローラが空転するように構成すると好適である。
【0018】
シートの排出先が第1積載部としての上排出トレイ25の場合、受入パス81及び内排出パス82の分岐部に設けられた案内部材23によって、シートは第1排出パス83に案内される。第1排出パス83には、第1排出部としての反転ローラ24が設けられており、反転ローラ24は反転前ローラ22から受け取ったシートを上排出トレイ25に排出する。
【0019】
シートの排出先が第2積載部としての下排出トレイ37の場合、反転部としての反転ローラ24は反転前ローラ22から受け取ったシートを反転させるスイッチバック搬送を行って、シートを内排出パス82に搬送する。具体的には、案内部材23がC2方向に回動した状態でシートは第1排出パス83に案内される。そして、シートの後端が反転センサ41を通過すると、反転ローラ24が逆転すると共に案内部材23がC1方向に回動する。これにより、シートは内排出パス82に搬送される。すなわち、内排出パス82は、受入パス81とは反対方向にシートを案内する。
【0020】
内排出パス82に配置された回転体対としての内排出ローラ26、中間搬送ローラ28及び蹴り出しローラ29は、反転ローラ24から受け取ったシートを順に受け渡しながら整合部4Aへ向けて搬送する。中間積載前センサ38は、中間搬送ローラ28と蹴り出しローラ29との間でシートを検知する。入口センサ27、中間積載前センサ38及び反転センサ41としては、例えば光を用いて検知位置におけるシートの有無を検出する光学センサや、シートに押圧されるフラグを用いたフラグセンサが用いられる。
【0021】
処理部としての整合部4Aは、束押さえフラグ30と、第3積載部としての中間積載部39と、束排出ガイド34と、駆動ベルト35と、を有し、シートに整合処理を施す。中間積載部39は、中間上ガイド31及び中間下ガイド32から構成され、複数枚のシートがシート束として積載される。ローラ対からなる蹴り出しローラ29によって中間積載部39に向けて排出されたシート束は、束押さえフラグ30によって中間下ガイド32に押し付けられる。
【0022】
そして、中間積載部39に排出されたシート束は、中間下ガイド32に沿って下方に案内され、半月ローラ33によって中間積載部39のシート搬送方向における下流端部に設けられる縦整合板に突き当てられる。また、縦整合板によってシート搬送方向に整合されたシート束は、不図示の横整合板によってシート搬送方向に直交する幅方向に整合される。なお、半月ローラ33は、中間積載部39に整合されたシート束に対しては、シート束上をスリップするような搬送圧に設定されている。
【0023】
このような整合処理が行われた後、シート束は、例えば不図示のステープラにより閉じ動作が行われる。そして、シート束は、駆動ベルト35に固定された束排出ガイド34によって押し出され、第2排出パス84を介して束排出ローラ36に受け渡される。シート束は、第2排出部としての束排出ローラ36によって機外へ排出されて下排出トレイ37に積載される。
【0024】
上排出トレイ25及び下排出トレイ37は、いずれもシート処理装置4の筐体に対して上下に移動可能である。シート処理装置4は、上排出トレイ25及び下排出トレイ37におけるシートの上面位置(シートの積載高さ)を検知するシート面検知センサを備えており、いずれかのセンサがシートを検知すると、対応するトレイを下降させる。また、上排出トレイ25又は下排出トレイ37のシートが取り除かれると、そのトレイを上昇させる。従って、上排出トレイ25及び下排出トレイ37は、シートが排出される排出口に対して、積載されたシートの上面を一定に保つように昇降制御される。
【0025】
[制御系]
図2は、シート処理装置4のシート排出装置100(
図1参照)の制御系を示すブロック図である。シート排出装置100は、制御部101と、モータドライバ110,120と、モータM1,M2と、を有している。制御部101は、中央演算装置であるCPU101aと、各種のプログラムが格納されているROM101bと、CPU101aの作業領域及び一時データの保存領域として使用されるRAM101cと、を有している。
【0026】
モータM1,M2は、例えばステッピングモータから構成されており、制御部101からモータドライバ110,120を介して送信されるクロック数に応じて移動距離が決まると共に、クロック周波数に応じて移動速度が決まる。モータM1には、モータドライバ110を介して24V電源から電力が供給され、モータM2には、モータドライバ120を介して24V電源から電力が供給される。モータドライバ110,120及びモータM1,M2は、上排出トレイ25及び下排出トレイ37を昇降させる昇降部160を構成している。
【0027】
第1駆動源としてのモータM1は、不図示のギヤなどの動力伝達機構を介して、上排出トレイ25を昇降させ、第2駆動源としてのモータM2も、不図示のギヤなどの動力伝達機構を介して、下排出トレイ37を昇降させる。
【0028】
制御部101には、上限センサ111,121と、満載センサ112,122と、シート有無検知センサ113,123と、下限センサ114,124と、が接続されている。上限センサ111,121は、それぞれ上排出トレイ25及び下排出トレイ37が上限位置に位置することを検知する。満載センサ112,122は、それぞれ上排出トレイ25及び下排出トレイ37が満載状態にあることを検知する。満載状態とは、トレイにシートが満載された状態であって、これ以上シートを積載することができない状態である。シート有無検知センサ113,123は、それぞれ上排出トレイ25及び下排出トレイ37にシートが積載されているか否かを検知する。
【0029】
下限センサ114,124は、それぞれ上排出トレイ25及び下排出トレイ37が下限位置に位置することを検知する。例えば、下排出トレイ37の上位置としての上限位置B1は、下排出トレイ37が上昇可能な上限の位置であり、下排出トレイ37にシートが積載されていない状態で反転ローラ24から排出されたシートを積載可能な位置である。下排出トレイ37の下位置としての下限位置B2は、上限位置B1よりも下方であって、下排出トレイ37が下降可能な下限の位置である。このように、下排出トレイ37は、上限位置B1と下限位置B2との間で昇降可能であり、上排出トレイ25は、上限位置A1と下限位置A2との間で昇降可能である。
【0030】
これら上限センサ111,121、満載センサ112,122、シート有無検知センサ113,123及び下限センサ114,124は、例えば透過型フォトインタラプタ等の光学センサや、メカ的なフラグを用いたフラグセンサが用いられる。
【0031】
また、制御部101には、上排出トレイ25の下面25aに下排出トレイ37に積載されたシートが接触することに基づいて出力値を変化させる検知部102が接続されており、検知部102は、スイッチ103と、抵抗104,105と、を有している。なお、検知部102は、下排出トレイ37に積載されたシートに限らず、物体が接触することに基づいて出力値を変化させ、該物体には、例えばシートや人の手が含まれる。スイッチ103は、不図示のメカフラグにより、導通状態であるオン状態と、非導通状態であるオフ状態と、に切換えられる構成となっている。スイッチ103及び不図示のメカフラグは、上排出トレイ25の下面25aに配置されている。
【0032】
スイッチ103は、人の手やシートが上排出トレイ25の下面25aに触れていない場合、オフ状態となり、人の手やシートが上排出トレイ25の下面25aに触れている場合、オン状態となる。スイッチ103の一方側は、グラウンド(GND)に接続されている。抵抗104の一方側は、3.3V電源に接続され、抵抗104の他方側は、スイッチ103及び抵抗105に接続されている。抵抗105の一方側は、信号SSを介して制御部101に接続されている。
【0033】
スイッチ103がオフ状態の場合、電流が制御部101へ流れるため、信号SSが3.3Vになる。スイッチ103がオン状態の場合、電流はグラウンドに流れるため、信号SSが0Vになる。制御部101は、信号SSが3.3Vから0Vに切換わったことに基づいて、上排出トレイ25の下面25aに人の手やシートが接触したと判断する。
【0034】
[シート取り出し時の動作]
次に、下排出トレイ37に積載されたシートを取り出した際のシート排出装置100の動作について説明する。
図3(a)に示すように、例えば上排出トレイ25に所定量のシート束P1が積載されている場合、上排出トレイ25は位置A3に位置している。また、例えば下排出トレイ37に所定量のシート束P2が積載されている場合、下排出トレイ37は位置B3に位置している。上述したように上排出トレイ25及び下排出トレイ37は、シート束の量に応じて、排出口に対するシート束の上面の位置が制御される。
【0035】
上排出トレイ25は、位置A3において、反転ローラ24からカールしているシートが排出された場合でも、当該シートを積載可能である。下排出トレイ37は、位置B3において、束排出ローラ36からカールしているシートが排出された場合でも、当該シートを積載可能である。
【0036】
以下、
図3(a)に示す状態から、下排出トレイ37に積載されたシート束が取り出された場合の動作について、
図4に示すフローチャートに沿って説明する。なお、以下の説明において、上排出トレイ25及び下排出トレイ37の昇降は、制御部101がモータM1,M2をそれぞれ制御することで行われる。
【0037】
図4に示すように、制御部101は、満載センサ122及びシート有無センサ123の検知結果に基づいて、下排出トレイ37にシートが積載されていないか否かを判断する(ステップS1)。例えば、
図3(b)に示すように、下排出トレイ37上のシート束P2が引き出されると、下排出トレイ37にシートが積載されていないと判断される。
【0038】
下排出トレイ37にシートが積載されていないと判断された場合(ステップS1:YES)、制御部101は、下排出トレイ37からシート束P2が確実に取り出されるために、3秒経過したか否かを判断する(ステップS2)。なお、本実施の形態では、シート束P2の取り出し時間としてステップS2において3秒間確保しているが、これに限定されず、取り出し時間を変更してもよい。
【0039】
3秒経過した場合(ステップS2:YES)、下排出トレイ37からシート束P2が取り出されたとみなして、制御部101は、下排出トレイ37を上限位置B1へ向けて上昇させる(ステップS3)。次に、制御部101は、スイッチ103がオン状態か否かを判断する(ステップS4)。スイッチ103がオン状態でない場合(ステップS4:NO)、制御部101は、下排出トレイ37が上限位置B1に到達したか否かを判断する(ステップS5)。
【0040】
下排出トレイ37が上限位置B1に到達したと判断された場合(ステップS5:YES)、制御部101は、下排出トレイ37を停止させて処理を終了する。下排出トレイ37が上限位置B1に到達していないと判断された場合(ステップS5:NO)、ステップS3に戻る。
【0041】
図3(c)に示すように、下排出トレイ37を上昇させている途中でシート束P2が上排出トレイ25の下面25aに接触してスイッチ103がオン状態となった場合(ステップS4:YES)、制御部101はステップS6に進む。
【0042】
例えば、
図3(b)(c)に示すように、下排出トレイ37からシート束P2を所定量だけ引き出したものの、依然として下排出トレイ37にシート束P2が積載されたままの場合、シート束P2が上排出トレイ25の下面25aに接触することがある。また、シート束P2を上排出トレイ25から取り出そうとして、シート束P2を把持しているユーザの手が下面25aに接触し、スイッチ103がオン状態となることがある。
【0043】
なお、スイッチ103がオン状態となった際の下排出トレイ37の位置を、接触位置B4とする。ステップS6において、制御部101は、反転ローラ24が上排出トレイ25にシートを排出する排出状態か否かを判断する(ステップS6)。
【0044】
反転ローラ24が排出状態の場合(ステップS6:YES)、制御部101は、
図3(d)に示すように、上排出トレイ25を昇降させることなく下排出トレイ37を接触位置B4から下限位置B2へ向けて下降させる下降処理を実行する(ステップS7)。
【0045】
これにより、上下方向VDにおいて上排出トレイ25と下排出トレイ37との間の距離D1が大きくなり、下排出トレイ37上のシート束P2の上面P2aと上排出トレイ25の下面25aとの間の空間SPが拡がる。このため、ユーザが空間SPに容易に手を入れることができ、下排出トレイ37に積載されたシート束P2の取り出し性を向上することができる。また、上排出トレイ25を昇降させることがないため、反転ローラ24によって排出されたシートを上排出トレイ25が良好に積載することができ、シートの良好な積載性を維持することができる。
【0046】
反転ローラ24が排出状態ではない非排出状態の場合(ステップS6:NO)、制御部101は、
図3(e)に示すように、上排出トレイ25を上昇させつつ下排出トレイ37を下降させる昇降処理を実行する(ステップS8)。この昇降処理において、上排出トレイ25は、150mmだけ上昇され、位置A3から位置A4へ移動する。また、昇降処理において、下排出トレイ37は接触位置B4から下限位置B2へ向けて下降される。
【0047】
これにより、上下方向VDにおいて上排出トレイ25と下排出トレイ37との間の距離D2が大きくなり、下排出トレイ37上のシート束P2の上面P2aと上排出トレイ25の下面25aとの間の空間SPがより大きく拡がる。このため、ユーザが空間SPに容易に手を入れることができ、下排出トレイ37に積載されたシート束P2の取り出し性を向上することができる。
【0048】
次に、制御部101は、下排出トレイ37が下限位置B2に到達したか否かを判断する(ステップS9)。下排出トレイ37が下限位置B2に到達した場合(ステップS9:YES)、制御部101は、下排出トレイ37からシート束P2が確実に取り出されるために、5秒経過したか否かを判断する(ステップS10)。なお、本実施の形態では、シート束P2の取り出し時間としてステップS10において5秒間確保しているが、これに限定されず、取り出し時間を変更してもよい。
【0049】
5秒経過した場合(ステップS10:YES)、制御部101は、上排出トレイ25の下降が不要か否かを判断する(ステップS11)。ステップS7において下降処理が実行された場合、上排出トレイ25は上昇していないので上排出トレイ25の下降が不要であると判断され(ステップS11:YES)、ステップS3に戻る。
【0050】
ステップS8において昇降処理が実行された場合、上排出トレイ25は上昇しているので上排出トレイ25の下降が必要であると判断され(ステップS11:NO)、ステップS12に進む。制御部101は、上排出トレイ25を150mmだけ下降させ(ステップS12)、ステップS3に戻る。すなわち、上排出トレイ25を、ステップS8の昇降処理の実行前の位置に移動させる。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、下排出トレイ37を上昇させている途中でシート束P2が上排出トレイ25の下面25aに接触してスイッチ103がオン状態となった場合、以下のような制御を行う。すなわち、反転ローラ24が排出状態の場合には、下排出トレイ37のみを下降させ、反転ローラ24が非排出状態の場合には、上排出トレイ25を上昇させると共に下排出トレイ37を下降させる。換言すると、上排出トレイ25及び下排出トレイ37との間の距離(D1,D2)が大きくなるように、上排出トレイ25及び下排出トレイ37の少なくとも一方を移動させる離間処理を実行する。該離間処理は、
図4のステップS4~S9に相当する。
【0052】
これにより、ユーザが上排出トレイ25と下排出トレイ37の間の空間SPに容易に手を入れることができ、下排出トレイ37に積載されたシート束P2又はシートの取り出し性を向上することができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、ステップS8において上排出トレイ25を150mmだけ上昇させたが、これに限定されない。例えば、上排出トレイ25は、位置A3よりも上方で、上限位置A1以下の位置となるように、適当な距離だけ上昇されればよい。また、上排出トレイ25は、ステップS8においてもステップS7と同様に、昇降させなくてもよい。
【0054】
更に、ステップS7,S8では、上排出トレイ25及び下排出トレイ37との間の距離(D1,D2)が大きくなるのであれば、上排出トレイ25を第1距離だけ下降し、下排出トレイ37を第1距離よりも大きい第2距離だけ下降するようにしてもよい。この時、上排出トレイ25の下降速度は、下排出トレイ37の下降速度よりも遅いと好適である。
【0055】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態の検知部102の構成及びシート排出装置100の動作を変更したものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0056】
[制御系]
図5は、シート処理装置4のシート排出装置200の制御系を示すブロック図である。シート排出装置200は、上排出トレイ25の下面25aに下排出トレイ37に積載されたシートが接触することに基づいて出力値を変化させる検知部202を有しており、検知部202は、電源遮断部201と、抵抗204,205と、を有している。
【0057】
電源遮断部201は、インターロックスイッチで構成される、電源を遮断できる部品である。インターロックスイッチは、不図示のメカフラグによって導通状態であるオン状態と、非導通状態であるオフ状態と、に切換えられる構成となっており、インターロックスイッチ及びメカフラグは、上排出トレイ25の下面25aに配置されている。
【0058】
下面25aに人の手やシートが上排出トレイ25に触れていない状態では、メカフラグの接点が接続されてインターロックスイッチはオン状態となる。下面25aに人の手やシートが上排出トレイ25に触れてメカフラグの接点が切れると、インターロックスイッチはオフ状態となる。なお、電源遮断部201は、インターロックスイッチは及びメカフラグに代えて、フォトセンサ及びリレーによって構成してもよい。
【0059】
電源遮断部201の一方側は、24V電源である電源PW1に接続されており、他方側は他の24V電源である電源PW2に接続されている。電源遮断部201がオン状態の場合、電源PW2へ電源供給が行われ、電源遮断部201がオフ状態の場合、電源PW1へ電源供給が行われる。つまり、電源遮断部201は、オフ状態において、モータドライバ120及びモータM2への電源供給を停止させる。
【0060】
また、抵抗204の一方側は、電源遮断部201に接続されており、他方側は、抵抗205に接続されている。抵抗205は、抵抗204とは反対側において、グラウンド(GND)に接続されている。
【0061】
電源遮断部201がオン状態で、電源PW2に24V電源が供給されている場合は、抵抗204,205で分圧され、抵抗204,205の間の点PT1と制御部101との間の電圧VMは3.3Vとなる。一方、電源遮断部201がオフ状態で、電源PW2に24V電源が供給されていない場合は、電圧VMは0Vとなる。制御部101は、電圧VMが3.3Vから0Vに切換わったことに基づいて、上排出トレイ25の下面25aに人の手やシートが接触したと判断する。
【0062】
[シート取り出し時の動作]
次に、下排出トレイ37に積載されたシートを取り出した際のシート排出装置200の動作について説明する。
図6(a)~(e)は、下排出トレイ37からシート束P2を取り出す際の上排出トレイ25及び下排出トレイ37の動作を示す図であるが、
図6(a)~(c)は
図3(a)~(c)と同様であるため説明を省略する。
【0063】
また、
図7,8は、下排出トレイ37からシート束P2を取り出す際の処理を示すフローチャートである。以下、
図6(a)に示す状態から、下排出トレイ37に積載されたシート束が取り出された場合の動作について、
図7,8に示すフローチャートに沿って説明する。なお、以下の説明において、上排出トレイ25及び下排出トレイ37の昇降は、制御部101がモータM1,M2をそれぞれ制御することで行われる。
【0064】
図7に示すように、制御部101は、満載センサ122及びシート有無センサ123の検知結果に基づいて、下排出トレイ37にシートが積載されていないか否かを判断する(ステップS21)。例えば、
図6(b)に示すように、下排出トレイ37上のシート束P2が引き出されると、下排出トレイ37にシートが積載されていないと判断される。
【0065】
下排出トレイ37にシートが積載されていないと判断された場合(ステップS21:YES)、制御部101は、下排出トレイ37からシート束P2が確実に取り出されるために、3秒経過したか否かを判断する(ステップS22)。なお、本実施の形態では、シート束P2の取り出し時間としてステップS2において3秒間確保しているが、これに限定されず、取り出し時間を変更してもよい。
【0066】
3秒経過した場合(ステップS22:YES)、下排出トレイ37からシート束P2が取り出されたとみなして、制御部101は、下排出トレイ37を上限位置B1へ向けて上昇させる(ステップS23)。次に、制御部101は、電源遮断部201がオフ状態か否かを判断する(ステップS24)。電源遮断部201がオン状態の場合(ステップS24:NO)、制御部101は、下排出トレイ37が上限位置B1に到達したか否かを判断する(ステップS25)。
【0067】
下排出トレイ37が上限位置B1に到達したと判断された場合(ステップS25:YES)、制御部101は、下排出トレイ37を停止させて処理を終了する。下排出トレイ37が上限位置B1に到達していないと判断された場合(ステップS25:NO)、ステップS23に戻る。
【0068】
図6(c)に示すように、下排出トレイ37を上昇させている途中でシート束P2が上排出トレイ25の下面25aに接触して電源遮断部201がオフ状態となった場合(ステップS24:YES)、制御部101はステップS26に進む。
【0069】
例えば、
図6(b)(c)に示すように、下排出トレイ37からシート束P2を所定量だけ引き出したものの、依然として下排出トレイ37にシート束P2が積載されたままの場合、シート束P2が上排出トレイ25の下面25aに接触することがある。また、シート束P2を上排出トレイ25から取り出そうとして、シート束P2を把持しているユーザの手が下面25aに接触し、電源遮断部201がオフ状態となることがある。
【0070】
なお、電源遮断部201がオフ状態となった際の下排出トレイ37の位置を、接触位置B4とする。電源遮断部201がオフ状態となると、電源PW1と電源PW2の接続が切れ、モータドライバ120に供給していた電源PW2の電圧が0Vとなる。このため、モータM2は電源遮断部201がオフ状態となったことでメカ的に自動で停止し、下排出トレイ37は停止する(ステップS26)。
【0071】
次に、制御部101は、反転ローラ24が上排出トレイ25にシートを排出する排出状態か否かを判断する(ステップS27)。反転ローラ24が排出状態の場合(ステップS27:YES)、制御部101は、上排出トレイ25を上昇させる(ステップS28)。そして、制御部101は、電源遮断部201がオン状態となったか否かを判断し(ステップS29)、電源遮断部201がオフ状態の場合(ステップS29:NO)、ステップS28に戻る。
【0072】
すなわち、ステップS28,S29において、電源遮断部201がオン状態となるまで上排出トレイ25を上昇させる第1上昇処理が実行される。
図6(d)に示すように、電源遮断部201がオン状態となった際の上排出トレイ25の位置を位置A5とする。上排出トレイ25は、位置A5において、反転ローラ24から排出されるカールしているシートは積載が困難なものの、通常のシートは良好に積載できる位置である。
【0073】
電源遮断部201がオン状態となった場合(ステップS29:YES)、制御部101は、上排出トレイ25を停止させ、上排出トレイ25を位置A5から位置A3へ下降させる。それと同時に、
図6(e)に示すように、制御部101は、下排出トレイ37を下限位置B2へ向けて下降させる第1下降処理を実行する(ステップS30)。第1下降処理において、上排出トレイ25は、上記第1上昇処理(ステップS28,29)の実行前の位置に移動される。この時、モータM1の回転速度はモータM2の回転速度以下に設定される。すなわち、上排出トレイ25の下降速度は、下排出トレイ37の下降速度よりも遅く設定される。
【0074】
これにより、上下方向VDにおいて上排出トレイ25と下排出トレイ37との間の距離D3が大きくなり、下排出トレイ37上のシート束P2の上面P2aと上排出トレイ25の下面25aとの間の空間SPが拡がる。このため、ユーザが空間SPに容易に手を入れることができ、下排出トレイ37に積載されたシート束P2の取り出し性を向上することができる。また、上排出トレイ25は、電源遮断部201がオン状態となるのに必要な量だけ上昇されるため、大きく上昇されることはない。このため、反転ローラ24によって排出されたシートを上排出トレイ25が良好に積載することができ、シートの良好な積載性を維持することができる。
【0075】
一方、ステップS27において反転ローラ24が非排出状態の場合(ステップS27:NO)、制御部101は、上排出トレイ25を150mmだけ上昇させる第2上昇処理を実行する(ステップS31)。そして、制御部101は、下排出トレイ37を下限位置B2へ向けて下降させる第2下降処理を実行する(ステップS32)。
【0076】
これにより、上下方向VDにおいて上排出トレイ25と下排出トレイ37との間の距離が大きくなり、下排出トレイ37上のシート束P2の上面P2aと上排出トレイ25の下面25aとの間の空間SPがより大きく拡がる。このため、ユーザが空間SPに容易に手を入れることができ、下排出トレイ37に積載されたシート束P2の取り出し性を向上することができる。
【0077】
ステップS30,S32が完了すると、
図8に示すようにステップS33に進み、制御部101は、下排出トレイ37が下限位置B2に到達したか否かを判断する(ステップS33)。下排出トレイ37が下限位置B2に到達した場合(ステップS33:YES)、制御部101は、下排出トレイ37からシート束P2が確実に取り出されるために、5秒経過したか否かを判断する(ステップS34)。なお、本実施の形態では、シート束P2の取り出し時間としてステップS34において5秒間確保しているが、これに限定されず、取り出し時間を変更してもよい。
【0078】
5秒経過した場合(ステップS34:YES)、制御部101は、上排出トレイ25の下降が不要か否かを判断する(ステップS35)。反転ローラ24が排出状態の場合には、ステップS30において上排出トレイ25を位置A3に復帰しているので、上排出トレイ25を下降させる必要がない。このため、ステップS28~S30を実行している場合には、上排出トレイ25の下降が不要であると判断され(ステップS35:YES)、ステップS23に戻る。
【0079】
反転ローラ24が非排出状態の場合には、ステップS30において上排出トレイ25を150mmだけ上昇させているので、上排出トレイ25の下降が必要であると判断され(ステップS35:NO)、ステップS36に進む。制御部101は、上排出トレイ25を150mmだけ下降させ(ステップS36)、ステップS23に戻る。すなわち、上排出トレイ25を、ステップS31の第2上昇処理の実行前の位置に移動させる。
【0080】
以上のように、本実施の形態では、下排出トレイ37を上昇させている途中でシート束P2が上排出トレイ25の下面25aに接触して電源遮断部201がオフ状態となった場合、メカ的に下排出トレイ37が停止し、シート処理装置4の破損を防止できる。
【0081】
また、電源遮断部201がオフ状態となると、以下のような制御が行われる。すなわち、反転ローラ24が排出状態の場合には、上排出トレイ25は、電源遮断部201がオン状態となるのに必要な量だけ上昇される。反転ローラ24が非排出状態の場合には、電源遮断部201がオン状態となるのに十分な、150mmだけ上昇される。その後、上排出トレイ25は位置A3に復帰されると共に、下排出トレイ37は下限位置B2へ下降される。換言すると、上排出トレイ25及び下排出トレイ37との間の距離(D3)が大きくなるように、上排出トレイ25及び下排出トレイ37の少なくとも一方を移動させる離間処理を実行する。該離間処理は、
図7,8のステップS24~S33に相当する。
【0082】
これにより、ユーザが上排出トレイ25と下排出トレイ37の間の空間SPに容易に手を入れることができ、下排出トレイ37に積載されたシート束P2又はシートの取り出し性を向上することができる。
【0083】
なお、本実施の形態では、ステップS8において上排出トレイ25を150mmだけ上昇させたが、これに限定されない。例えば、上排出トレイ25は、位置A3よりも上方で、上限位置A1以下の位置となるように、適当な距離だけ上昇されればよい。
【0084】
<第3の実施の形態>
次いで、本発明の第3の実施の形態について説明するが、第3の実施の形態は、第2の実施の形態のシート排出装置に距離推定部130を追加して構成している。このため、第2の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0085】
[制御系]
図9は、シート排出装置300の制御系を示すブロック図である。シート排出装置300は、
図5で説明した各構成に加えて、距離推定部130を有している。距離推定部130は、上限センサ111,121の出力値と、制御部101からモータドライバ110,120へ送信するクロック数を用いて、上排出トレイ25の下面25aから下排出トレイ37に積載されているシート束までの距離を推定する。下面25aから下排出トレイ37に積載されているシート束までの距離(以下、推定距離Dxとする)の算出方法は後述する。
【0086】
[シート取り出し時の動作]
次に、下排出トレイ37に積載されたシートを取り出した際のシート排出装置300の動作について説明する。
図10(a)は、上排出トレイ25及び下排出トレイ37にシートが積載されていない状態を示す図である。このとき、上排出トレイ25は、上限位置A1に位置しており、下排出トレイ37は、上限位置B1に位置している。
【0087】
なお、
図10(a)乃至
図10(c)では、上限位置A1に位置する上排出トレイ25の上面25bから反転ローラ24のニップの高さまでの距離を距離Dsとする。同様に、上限位置B1に位置する下排出トレイ37の上面37bから束排出ローラ36のニップの高さまでの距離を距離Dsとする。また、反転ローラ24のニップを通り、上排出トレイ25の上面25bに平行な線を直線L1とし、束排出ローラ36のニップを通り、下排出トレイ37の上面37bに平行な線を直線L2とする。このとき、距離Dsは、上排出トレイ25の上面25bから直線L1までの距離、又は下排出トレイ37の上面37bから直線L2までの距離に相当する。
【0088】
更に、上限位置B1に位置する下排出トレイ37の上面37bから、上限位置A1に位置する上排出トレイ25の下面25aまでの距離を距離D0とする。距離D0は、本実施の形態では400mmとする。
【0089】
図10(b)に示すように、例えば上排出トレイ25に所定量のシート束P1が積載されている場合、上排出トレイ25は位置A3に位置している。また、例えば下排出トレイ37に所定量のシート束P2が積載されている場合、下排出トレイ37は位置B3に位置している。上排出トレイ25及び下排出トレイ37は、満載センサ112,122によって検知されるシート束の上面位置に基づいて昇降され、上下方向VDにおける位置が制御される。このとき、上排出トレイ25は、シート束P1の上面から反転ローラ24のニップの高さ、すなわち直線L1までの距離が距離Dsとなるように、位置決めされる。同様に、下排出トレイ37は、シート束P2の上面から束排出ローラ36のニップの高さ、すなわち直線L2までの距離が距離Dsとなるように、位置決めされる。
【0090】
また、上排出トレイ25は、シート束P1が積載されると、上限位置A1から位置A3まで、距離Dp1だけ下降する。距離Dp1は、おおよそシート束P1の高さに相当する。また、下排出トレイ37は、シート束P2が積載されると、上限位置B1から位置B3まで、距離Dp2だけ下降する。距離Dp2は、おおよそシート束P2の高さに相当する。上排出トレイ25は、位置A3において、反転ローラ24からカールしているシートが排出された場合でも、当該シートを積載可能である。下排出トレイ37は、位置B3において、束排出ローラ36からカールしているシートが排出された場合でも、当該シートを積載可能である。
【0091】
距離Dp1,Dp2は、上限センサ111,121が上限位置を示す位置を0mmとして、各排出トレイを上限位置A1,B1から、位置A3,B3へ下降する為に、制御部101がモータドライバ110,120に送信したクロック数から算出される。例えば、1クロック当たりの上排出トレイ25の下降量が0.05mmであり、上限位置A1から位置A3までの下降に制御部101が4000クロックを送出した場合を想定する。この場合、上排出トレイ25の下降量である距離Dp1は、0.05×4000=200mmと求められる。
【0092】
以下、
図10(b)に示す状態から、下排出トレイ37に積載されたシート束が取り出された場合の動作について、
図11及び
図12に示すフローチャートに沿って説明する。なお、以下の説明において、上排出トレイ25及び下排出トレイ37の昇降は、制御部101がモータM1,M2をそれぞれ制御することで行われる。
【0093】
また、
図11及び
図12に示すステップS41~S56は、
図7及び
図8に示すステップS21~S36と同様であるため説明を省略し、第2の実施の形態との差異であるステップS61~S63について主に説明する。
【0094】
ステップS42において、3秒経過した場合(ステップS42:YES)、下排出トレイ37からシート束P2が取り出されたとみなして、制御部101は、
図10(c)に示す推定距離Dxを算出する(ステップS61)。推定距離Dxは、シート束P2が下排出トレイ37から取り出されていない場合の、上限位置B1に位置する下排出トレイ37に積載されたシート束P2の上面から上排出トレイ25の下面25aまでの距離である。すなわち、推定距離Dxは、位置B3から上限位置B1まで下排出トレイ37が上昇した場合に、下排出トレイ37に積載されたシート束P2の上面と上排出トレイ25の下面25aとの間にどれだけの空間SP(
図10(c)参照)があるかを示す。
【0095】
推定距離Dxは、距離推定部130(
図9参照)によって、以下の式に従って算出される。
[数1]
Dx=D0-Dp1-Dp2
【0096】
なお、推定距離Dxは、マイナスの値となる場合があるが、推定距離Dxがマイナスの値にならないように上排出トレイ25及び下排出トレイ37の位置並びにシート束P2の最大積載量を設定すると好適である。これにより、上排出トレイ25の下面25aにシート束P2が衝突することを抑制し、シート処理装置4の破損を低減できる。
【0097】
そして、制御部101は、下排出トレイ37を上限位置B1へ向けて上昇させる(ステップS43)。次に、制御部101は、電源遮断部201がオフ状態か否かを判断する(ステップS44)。ここで、電源遮断部201がオフ状態になるのは、下排出トレイ37を上昇させている途中で、人の手やシート束P2以外の他の物体が上排出トレイ25の下面25aに触れた場合を想定している。
【0098】
電源遮断部201がオフ状態の場合(ステップS44:YES)、上述したように下排出トレイ37はメカ的に自動で停止する。そして、制御部101は、推定距離Dxが閾値X以上(Dx≧X)であるか否かを判断する(ステップS62)。閾値Xは、シート束P2の上面から上排出トレイ25の下面25aまでの距離であり、シート束P2を取り除くために確保すべき空間SPの大きさに相当する。本実施の形態では、閾値Xを例えば150mmに設定する。
【0099】
推定距離Dxが閾値X未満の場合(ステップS62:NO)、制御部101は、下排出トレイ37は停止させたまま(ステップS46)、反転ローラ24が上排出トレイ25にシートを排出する排出状態か否かを判断する(ステップS47)。ステップ47以降は、第2の実施の形態と同様であるため説明を省略するが、制御部101は、シート束P2を取り出すための空間SPを確保するために、上排出トレイ25を上昇させる(ステップS48,S51)。
【0100】
一方で、推定距離Dxが閾値X以上の場合(ステップS62:YES)、制御部101は、電源遮断部201がオン状態となるまで待つ(ステップS63)。ステップS63で電源遮断部201がオン状態となることは、人の手等が上排出トレイ25の下面25aから離間したことを意味する。
【0101】
電源遮断部201がオン状態となった場合(ステップS63:YES)、制御部101は、下排出トレイ37を引き続き上昇させ、下排出トレイ37が上限位置B1に到達したか否かを判断する(ステップS45)。下排出トレイ37が上限位置B1に到達したと判断された場合(ステップS45:YES)、制御部101は、下排出トレイ37を停止させて処理を終了する。下排出トレイ37が上限位置B1に到達していないと判断された場合(ステップS45:NO)、ステップS43に戻る。
【0102】
また、制御部101は、上排出トレイ25及び下排出トレイ37の少なくとも一方を移動させる離間処理を実行する第1モードと、離間処理を実行せず、上排出トレイ25を昇降させない第2モードと、を実行可能である。離間処理は、上排出トレイ25を上昇させる第1上昇処理(ステップS48,S49)及び第2上昇処理(ステップS51)を含み、
図11及び
図12のステップS46~S53に相当する。第1モードは、
図11及び
図12のステップS46~S56に相当し、第2モードは、ステップS63、S45に相当する。
【0103】
以上のように、本実施の形態では、ステップS62において推定距離Dxが閾値X未満であると判断された場合(ステップS62:NO)のみ、上排出トレイ25を上昇させる。上排出トレイ25を上昇させることにより、下排出トレイ37に積載されたシート束P2を取り出すための空間SPを確保することができる。これにより、ユーザが空間SPに容易に手を入れることができ、下排出トレイ37に積載されたシート束P2の取り出し性を向上することができる。
【0104】
また、ステップS62において推定距離Dxが閾値X以上であると判断された場合(ステップS62:YES)、上排出トレイ25を上昇させない。このため、反転ローラ24によって排出されたシートを上排出トレイ25が良好に積載することができ、シートの良好な積載性を維持することができる。例えば、反転ローラ24がカールしたシートを排出した場合であっても、上排出トレイ25によってシートを良好に積載することができる。
【0105】
なお、本実施の形態では、距離推定部130によって推定距離Dxを算出したが、距離推定部130は、シート排出装置300に設けられた制御部101の一部であってもよい。また、距離推定部130は、制御部101とは別の、例えば画像形成装置1や画像読取装置2の制御部であってもよく、画像形成システム1Sの外部のコンピュータ等であってもよい。
【0106】
<その他の実施の形態>
また、既述のいずれの形態においても、検知部(102,202)の構成は限定されず、例えば第1の実施の形態において電源遮断部201を適用し、第2の実施の形態においてスイッチ103を適用してもよい。
【0107】
また、既述のいずれの形態においても、シートを反転させて受入パス81か内排出パス82へシートを搬送可能な反転ローラ24によって上排出トレイ25にシートを排出していたが、これに限定されない。例えば、反転ローラ24のシート搬送方向における下流に別途、ローラ対を設け、該ローラ対によって上排出トレイ25にシートを排出してもよい。
【0108】
また、既述のいずれの形態においても、束排出ローラ36によって下排出トレイ37にシートを排出していたが、これに限定されない。例えば、束排出ガイド34によってシートを下排出トレイ37に排出してもよい。
【0109】
本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0110】
1S:画像形成システム/4:シート処理装置/4A:処理部(整合部)/24:第1排出部(反転ローラ)/25:第1積載部(上排出トレイ)/25a:下面/26:回転体対(内排出ローラ)/36:第2排出部(束排出ローラ)/37:第2積載部(下排出トレイ)/39:第3積載部(中間積載部)/81:第1搬送路(受入パス)/82:第2搬送路(内排出パス)/84:第3搬送路(第2排出パス)/100,200,300:シート排出装置/101:制御部/102,202:検知部/103:スイッチ/160:昇降部/201:電源遮断部/D1,D2,D3:距離/M1:第1駆動源(モータ)/M2:第2駆動源(モータ)/VD:上下方向/閾値:X