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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】電気化学セルとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240527BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20240527BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20240527BHJP
   H01M 50/528 20210101ALI20240527BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240527BHJP
   H01M 50/559 20210101ALI20240527BHJP
   H01M 50/555 20210101ALI20240527BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240527BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20240527BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/82
H01M10/04 W
H01M50/109
H01M50/528
H01M50/533
H01M50/559
H01M50/555
H01M50/105
H01M50/548 301
H01M50/548 201
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020044663
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021144918
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
(72)【発明者】
【氏名】田中 和美
(72)【発明者】
【氏名】木村 長幸
(72)【発明者】
【氏名】堰合 順弥
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-079744(JP,A)
【文献】特開2015-228365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00- 10/39
H01M 50/00- 50/198
H01M 50/50- 50/598
H01G 11/00- 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極体と負極体を折り畳みまたは巻回して構成される電極体が、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体に収容され、前記電極体の正極タブが前記正極側容器内に設けられた正極側電極板に接続され、前記電極体の負極タブが前記負極側容器内に設けられた負極側電極板に接続された電気化学セルであって、
前記正極タブが、前記電極体の一部から延出された第1の正極タブ部と、該第1の正極タブ部に対し折り返されて前記正極側電極板に接続される第2の正極タブ部を有し、
前記負極タブが、前記電極体の一部から延出された第1の負極タブ部と、該第1の負極タブ部に対し折り返されて負極側電極板に接続される第2の負極タブ部を有し、
前記正極側ラミネートフィルムの一部に透孔が形成され、該透孔の内側に前記正極側電極板が配置され、前記負極側ラミネートフィルムの一部に透孔が形成され、該透孔の内側に前記負極側電極板が配置されるとともに、
前記正極側電極板前記負極側電極板が、それらの厚さ方向に溶着された樹脂カバーとシーラントフィルムにより挟まれ、前記第1の正極タブ部と前記第2の正極タブ部を折り畳み、前記第1の負極タブと前記第2の負極タブを折り畳みした状態で前記正極側容器内または負極側容器内に配置されたことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記正極側電極板がその厚さ方向に溶着された樹脂カバーとシーラントフィルムにより挟まれた状態で前記正極側容器内に配置され、前記負極側電極板がその厚さ方向に溶着された樹脂カバーとシーラントフィルムにより挟まれた状態で前記負極側容器内に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記正極側電極板の周縁部が前記正極側の樹脂カバーの周縁部と前記正極側のシーラントフィルムの周縁部により囲まれ、前記正極側の樹脂カバーの周縁部と前記正極側のシーラントフィルムの周縁部が溶着されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記負極側電極板の周縁部が前記負極側の樹脂カバーの周縁部と前記負極側のシーラントフィルムの周縁部により囲まれ、前記負極側の樹脂カバーの周縁部と前記負極側のシーラントフィルムの周縁部が溶着されたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記正極側の樹脂カバーの一部に透孔が形成され、該透孔を介し前記第2の正極タブ部が前記正極側電極板に接続されたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記負極側の樹脂カバーの一部に透孔が形成され、該透孔を介し前記第2の負極タブ部が前記負極側電極板に接続されたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記樹脂カバーが、前記電極板側の溶着層とその反対側の基層を備えた積層構造であり、前記溶着層が前記基層よりも低融点の樹脂からなることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記樹脂カバーが前記シーラントフィルムと同一材料からなることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記正極側電極板の前記シーラントフィルム側に導電性のめっき層が形成され、前記シーラントフィルムの一部に透孔が形成され、該透孔の内側に前記めっき層が配置されたことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項10】
正極体と負極体を折り畳みまたは巻回して構成される電極体を、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体に収容するとともに、前記電極体の正極タブを前記正極側容器内に設けた正極側電極板に接続し、前記電極体の負極タブを前記負極側容器内に設けた負極側電極板に接続する電気化学セルの製造方法であって、
一部に凹部を設けたラミネートフィルムと、シーラントフィルムと、透孔付きの樹脂カバーを溶着した前記電極板を用い、前記凹部内にシーラントフィルムを収容し、前記凹部内のシーラントフィルムに積層するように前記樹脂カバーを溶着済みの前記電極板を前記凹部内に配置し、次いで前記透孔を介し前記電極板に前記電極体の電極タブを折り畳みして接続することを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項11】
正極体と負極体を折り畳みまたは巻回して構成される電極体を、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体に収容するとともに、前記電極体の正極タブを前記正極側容器内に設けた正極側電極板に接続し、前記電極体の負極タブを前記負極側容器内に設けた負極側電極板に接続する電気化学セルの製造方法であって、
一部に凹部を設けたラミネートフィルムと、前記電極板と、前記電極板に対する積層状態で周縁部全周を前記電極板の外方に突出させる大きさのシーラントフィルムと、該シーラントフィルムと類似形状であり、透孔付きの樹脂カバーを用い、
前記シーラントフィルムと前記樹脂カバーにより前記電極板を挟み、前記シーラントフィルムの周縁部と前記樹脂カバーの周縁部を溶着し、前記電極板の周囲を前記シーラントフィルムの周縁部と前記樹脂カバーの周縁部で囲み、電極板ユニットを構成し、
前記電極体の正極タブと前記電極体の負極タブのそれぞれを個別に折り畳みして前記電極板ユニットを前記ラミネートフィルムの凹部に収容することを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項12】
前記電極板または前記電極板ユニットを前記凹部内に配置する前あるいは配置後に、
前記電極板に対し前記電極体の電極タブを接続することを特徴とする請求項11に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項13】
正極体と負極体を折り畳みまたは巻回して構成される電極体を、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体に収容するとともに、前記電極体の正極タブを前記正極側容器内に設けた正極側電極板に接続し、前記電極体の負極タブを前記負極側容器内に設けた負極側電極板に接続する電気化学セルの製造方法であって、
一部に凹部を設けた正極側ラミネートフィルムと、正極側のシーラントフィルムと、透孔付きの正極側の樹脂カバーを溶着した前記正極側電極板を用い、前記凹部内に正極側のシーラントフィルムを収容し、前記凹部内のシーラントフィルムに積層するように前記正極側電極板を前記凹部内に配置するとともに、
一部に凹部を設けた負極側ラミネートフィルムと、負極側のシーラントフィルムと、透孔付きの負極側の樹脂カバーを溶着した前記負極側電極板を用い、前記凹部内に負極側のシーラントフィルムを収容し、前記凹部内のシーラントフィルムに積層するように前記負極側電極板を前記凹部内に配置し、
前記正極側ラミネートフィルムの凹部開口側と前記負極側ラミネートフィルムの凹部開口側を突き合わせ可能な向きになるように前記正極側ラミネートフィルムと前記負極側ラミネートフィルムを近接配置し、前記正極側ラミネートフィルムの凹部開口と前記負極側ラミネートフィルムの凹部開口の間に前記電極体を配置し、前記電極体の前記正極タブを折り畳みして前記正極側ラミネートフィルムの凹部内の前記正極側電極板に接続し、前記電極体の前記負極タブを折り畳みして前記負極側ラミネートフィルムの凹部内の前記負極側電極板に接続することを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項14】
正極体と負極体を折り畳みまたは巻回して構成される電極体を、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体に収容するとともに、前記電極体の正極タブを前記正極側容器内に設けた正極側電極板に接続し、前記電極体の負極タブを前記負極側容器内に設けた負極側電極板に接続する電気化学セルの製造方法であって、
一部に凹部を設けた正極側ラミネートフィルムと、前記正極側電極板と、前記正極側電極板に対する積層状態で周縁部全周を前記正極側電極板の外方に突出させる大きさの正極側のシーラントフィルムと、該正極側のシーラントフィルムと類似形状であり、透孔付きの正極側の樹脂カバーを用い、
前記正極側のシーラントフィルムと正極側の樹脂カバーにより前記正極側電極板をその厚さ方向から挟み、前記正極側のシーラントフィルムの周縁部と前記正極側の樹脂カバーの周縁部を溶着し、前記正極側電極板の周囲を前記正極側のシーラントフィルムの周縁部と前記正極側の樹脂カバーの周縁部で囲み、正極側電極板ユニットを構成し、該正極側電極板ユニットを前記正極側ラミネートフィルムの凹部に収容し、
一部に凹部を設けた負極側ラミネートフィルムと、前記負極側電極板と、前記負極側電極板に対する積層状態で周縁部全周を前記負極側電極板の外方に突出させる大きさの負極側のシーラントフィルムと、該負極側のシーラントフィルムと類似形状であり、透孔付きの樹脂カバーを用い、
前記負極側のシーラントフィルムと負極側の樹脂カバーにより前記負極側電極板をその厚さ方向から挟み、前記負極側のシーラントフィルムの周縁部と前記負極側の樹脂カバーの周縁部を溶着し、前記負極側電極板の周囲を前記負極側のシーラントフィルムの周縁部と前記負極側の樹脂カバーの周縁部で囲み、負極側電極板ユニットを構成し、該負極側電極板ユニットを前記負極側ラミネートフィルムの凹部に収容するとともに、
前記正極側ラミネートフィルムの凹部開口側と前記負極側ラミネートフィルムの凹部開口部側を突き合わせ可能な向きになるように前記正極側ラミネートフィルムと前記負極側ラミネートフィルムを近接配置し、前記正極側ラミネートフィルムの凹部開口と前記負極側ラミネートフィルムの凹部開口の間に前記電極体を配置し、前記電極体の正極タブを折り畳みして前記正極側ラミネートフィルムの凹部内の前記正極側電極板に接続し、前記電極体の負極タブを折り畳みして前記負極側ラミネートフィルムの凹部内の前記負極側電極板に接続することを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項15】
前記樹脂カバーとして、前記電極板側の溶着層とその反対側の基層を備えた積層構造であり、前記溶着層が前記基層よりも低融点の樹脂からなる樹脂カバーを用いることを特徴とする請求項10~請求項14のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項16】
前記シーラントフィルムと同一材料からなる樹脂カバーを用いることを特徴とする請求項10~請求項15のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項17】
前記シーラントフィルム側に導電性のめっき層を形成した正極側電極板を用い、透孔を有するシーラントフィルムを用い、該透孔の内側に前記めっき層を配置することを特徴とする請求項10~請求項16のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解化学セルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォン、ウエアラブル機器、補聴器などの小型機器の電源として、リチウムイオン二次電池、電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
この種の電気化学セルにおいて、電池容量並びに充電電流および放電電流を大きくする観点から、電気化学セル内で対向している電極どうしの面積を可能な限り大きくすることが必要とされている。電気化学セルの構造として、一対の帯状の正極電極と負極電極をセパレータを介し巻回するか、折り畳み構造としてケースに収め、電解液をケースに封入した構造が知られている。
【0003】
例えば、以下の特許文献1には、正極電極および負極電極からなる電極体と、第1のラミネート部材および第2のラミネート部材からなる外装体を備え、外装体の外周部に第1のラミネート部材の外周部と第2のラミネート部材の外周部を折曲して構成した外周壁を有する電池(電気化学セル)が記載されている。
前記外装体は、金属箔と樹脂層の積層型ラミネート部材からなり、第1と第2のラミネート部材の外周壁どうしを折り曲げつつ熱融着することにより封止されているので、体積当たりの容量を高めることができる電池を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-085214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている電池100は、図20図21に示すように、それぞれラミネート部材からなる薄型円筒容器状の第1容器101と第2容器102を組み合わせて構成されている。第2容器102の外周壁104は全周に渡り周縁部を断面U字型に折曲され、U字型折曲部分の外周側を囲むように第1容器101の円筒状の外周壁103が設けられている。そして、外周壁103と外周壁104の重ね合わせ部分が熱融着されている。
また、第1容器101の底板中央の透孔の内側に円板状の負極端子板105が配置され、第2容器102の天板中央の透孔の内側に円板状の保護プレート106を備えた正極端子板109が配置されている。負極端子板105に隣接して負極側シーラントリング107が配置され、正極端子板109に隣接して正極側シーラントリング108が配置されている。
【0006】
第1容器101と第2容器102の内部側であって、これらシーラントリング107、108の間に電極体110が収容されている。
電極体110は、帯状の負極体と正極体を巻回するか折り畳み積層して構成され、例えば図21に示すように電極体110の下部側に負極電極111が配置され、上部側に正極電極112が配置されている。
【0007】
図20図21に示す構成の電池100を製造するには、例えば、ラミネート構造の図22に示す円板状の第1容器素材115とラミネート構造のハット状の第2容器素材116を用意する。第2容器素材116の突部117の内側に電極体110を収容し、各電極を接続し、電解液を注入後、第2容器素材116の外周部116aと第1容器素材115の外周部115aを重ね合わせて熱溶着などの接合方法で接合し、図22に示す接合体118とする。
次に、図23に示すように下型121と上型122からなる金型120とパンチ123を用意する。下型121の中央部と上型122の中央部には接合体118の突部117を遊挿可能な成型孔121a、122aが形成されており、下型121と上型122の間に接合体118の外周部を挟持する。
【0008】
また、パンチ123の上端部に円環壁からなる成形突部124が設けられており、下型121と上型122の間に接合体118の外周部を挟持した状態でパンチ123を図23に示す位置から上昇させることができる。図24に示すように成形突部124を成型孔121aから122aまで上昇させると、接合体118の外周部を全周に渡り成形突部124で断面逆U字状に加工しつつ接合体118の外周縁部から切断することができ、このプレス加工によって図20図21に示す電池100を得ることができる。
【0009】
以上説明のように、ラミネート構造の第1容器素材115と第2容器素材116の間に電極体110を収容し、第1容器素材115と第2容器素材116の外周部を加工することにより図20図21に示す構造の電池100を製造することができる。
【0010】
しかし、図20図21に示す構造の電池100を大量生産する工程について詳細に検討すると、ラミネートフィルムからなる第1容器素材115と第2容器素材116の間に電極体110を収容し、電極体110の正極側の電極タブと負極側の電極タブを負極端子板105と正極端子板109に接続する作業が容易ではないと考えられる。
【0011】
まず、図22に示す接合体118を形成する場合、図25に示す平面視長方形状であり、金属箔を樹脂層で覆ったラミネート構造の第1の積層フィルム125と第2の積層フィルム126を用意する。第1の積層フィルム125の一部と第2の積層フィルム126の一部に電池100の外径に相当する大きさであって、小さな透孔付きの凹部125a、126aをプレス加工で形成する。このプレス加工により第1の積層フィルム125に凹部126aを画成するための突部125bを形成し、第2の積層フィルム126に凹部126aを画成するための突部126bを形成する。
【0012】
次に、図26に示すように、帯状の正極体と帯状の負極体を巻回構造あるいは折り畳み構造とした電極体110を構成する。電極体110の一端側に引き出した正極側の電極タブ130の先端に保護プレート106を備えた正極端子板109を溶接し、電極体110の他端側に引き出した負極側の電極タブ132の先端に負極端子板105を溶接する。
【0013】
図25に示す積層フィルム125、126に対し、図26に示す電極体110を接続する場合の手順について図27を基に説明する。
まず、図27に示す第1の積層フィルム125の凹部125a内に負極側シーラントリング107を配置し、積層フィルム126の凹部126a内に正極側シーラントリング108を配置する。
次に、図27に示すように一方の積層フィルム125の負極側シーラントリング107に接するように負極端子板105の位置合わせを行う。
そして、負極側シーラントリング107に負極端子板105を位置合わせした後、熱溶着により負極側シーラントリング107を負極端子板105と凹部125aの底面側に溶着する。
次に、他方の積層フィルム126の正極側シーラントリング108に接するように正極端子板109の位置合わせを行う。正極側シーラントリング108に正極端子板109を位置合わせした後、熱溶着により正極側シーラントリング108を正極端子板109と凹部126aの底面側に溶着することができる。
なお、図27では、負極側シーラントリング107の熱溶着を最初に行い、次に正極側シーラントリング108の熱溶着を行うという順序で説明したが、熱溶着を行う順序は逆であっても良いし、2箇所同時に熱溶着しても差し支えない。
【0014】
上述の熱溶着を行う場合、金属製の負極端子板105あるいは正極端子板109が第1の積層フィルム125の一部あるいは第2の積層フィルム126の一部と接触し、接触部分を傷付けることがあると考えられる。この種の電池は小型化され、外径数mm~10数mm程度の大きさであり、ピンセットなどを用いて負極端子板105、正極端子板109を凹部内中心に設置する作業は容易ではない。
仮に、積層フィルム125、126を構成しているラミネートフィルムの一部に損傷を与えると、ラミネートフィルム内の金属箔が露出し、電解液と接触するおそれがある。このように金属箔が電解液と接触した状態で接触部位に電位などが作用すると、内部ショートを引き起こすおそれがある。
なお、端子板105、109と積層フィルム125、126との接触を回避するため、凹部125a、126aの内径より端子板105、109の外径を充分に小さく形成することも考えられる。しかし、端子板105、109の外径を小さく形成することは、溶着面積が小さくなり電池の気密性向上には不利となるため、負極端子板105と正極端子板109はできる限り大きくしたいという要望がある。
【0015】
また、図27に示すように凹部125a内、126a内に挿入した端子板105、109は、シーラントリング107、108と接触した側のみが熱溶着された状態となる。このため、仮に熱溶着時の加熱条件にバラツキを生じると、端子板105、109の溶着強度が低下する問題がある。
更に、図27に示す構成において熱溶着を行う場合、突部125b、126bの突出側の外部にのみ溶着装置の加熱ヒーターを配置し、反対側には抑え部材を配置して熱溶着することが考えられる。上述のような小型の電気化学セル100において、加熱ヒーターの設置位置が多少でもずれると、加熱条件にバラツキを生じることとなり、熱溶着の強度が低下するおそれがある。
【0016】
本発明は、以上説明のような従来の実情に鑑みなされたものであり、電極体を収容する容器となるラミネートフィルムの凹部内に電極板を正確に位置決め溶着した構造であり、ラミネートフィルムに傷などの損傷部分を生じ難い構造とした電気化学セルとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)本発明に係る電気化学セルは、正極体と負極体を折り畳みまたは巻回して構成される電極体が、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体に収容され、前記電極体の正極タブが前記正極側容器内に設けられた正極側電極板に接続され、前記電極体の負極タブが前記負極側容器内に設けられた負極側電極板に接続された電気化学セルであって、前記正極タブが、前記電極体の一部から延出された第1の正極タブ部と、該第1の正極タブ部に対し折り返されて前記正極側電極板に接続される第2の正極タブ部を有し、前記負極タブが、前記電極体の一部から延出された第1の負極タブ部と、該第1の負極タブ部に対し折り返されて負極側電極板に接続される第2の負極タブ部を有し、前記正極側電極板が正極側の樹脂カバーと正極側のシーラントフィルムにより挟まれ、前記正極側ラミネートフィルムの一部に透孔が形成され、該透孔の内側に前記正極側電極板が配置され、前記負極側ラミネートフィルムの一部に透孔が形成され、該透孔の内側に前記負極側電極板が配置されるとともに、前記正極側電極板または前記負極側電極板がそれらの厚さ方向に溶着された樹脂カバーとシーラントフィルムにより挟まれた状態で前記正極側容器内または前記負極側容器内に配置されたことを特徴とする。
【0018】
前述の構造であるならば、容器底部にシーラントフィルムを挿入後、樹脂カバーを密着した状態の正極側または負極側の電極板を容器に挿入し、熱溶着するという組み立て工程を採用できる。また、前述の構造であるならば、樹脂カバーとシーラントフィルムで正極側または負極側の電極板を挟んだ構造を容器に収容し、熱溶着するという組み立て工程を採用できる。
いずれにしても、樹脂カバーあるいはシーラントフィルムを正極側または負極側の電極板に密着させる作業は、容器への挿入操作とは別に行うことができるので、樹脂カバーあるいはシーラントフィルムとともに容器内に正極側または負極側の電極板を挿入することにより容器内への正極側または負極側の電極板の正確な位置決めと収容ができる。
正極側または負極側の電極板と樹脂カバーを正確に位置決め後、樹脂カバーを含めた全体を容器に収容することで、容器に対し正極側または負極側の電極板を正確に位置決め収容できる。また、正極側または負極側の電極板を容器に収容する際、樹脂カバーが緩衝材となるので、正極側または負極側の電極板が容器に当たって容器を損傷させるおそれがなくなる。正極側または負極側の電極板の位置決めが容易かつ正確にできるので、正極側または負極側の電極板を容器に収容できる範囲内でできる限り大きくできるようになり電気化学セルの構造として望ましい構造にすることができる。
また、電極板に樹脂カバーとシーラントフィルムを溶着した構造となるので、熱溶着構造の安定性が向上し、正極側または負極側の電極板を樹脂カバーとシーラントフィルムにより両面側から保護した構造を提供できる。
【0019】
(2)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記正極側電極板がその厚さ方向に溶着された樹脂カバーとシーラントフィルムにより挟まれた状態で前記正極側容器内に配置され、前記負極側電極板がその厚さ方向に溶着された樹脂カバーとシーラントフィルムにより挟まれた状態で前記負極側容器内に配置された構成が好ましい。
【0020】
正極側と負極側の両方の電極板を個々に樹脂カバーとシーラントフィルムにより挟んで溶着した構成とすることにより、正極側電極板と負極側電極板を個々に容器に収容する場合、いずれも位置決めが正確かつ容易となり、正極側容器と負極側容器の双方を損傷させるおそれがなくなる。
【0021】
(3)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記正極側電極板の周縁部が前記樹脂カバーの周縁部とシーラントフィルムの周縁部により囲まれ、前記樹脂カバーの周縁部と前記シーラントフィルムの周縁部が溶着された構成を採用できる。
【0022】
正極側電極板の周縁部を樹脂カバーの周縁部とシーラントフィルムの周縁部により囲むことで、正極側電極板を正極側容器に収容する際、樹脂カバーとシーラントフィルムが緩衝材となる。このため、正極側容器への収納時に正極側電極板が正極側容器を損傷させるおそれがなくなる。
【0023】
(4)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記負極側の電極板の周縁部が前記樹脂カバーの周縁部と前記シーラントフィルムの周縁部により囲まれ、前記樹脂カバーの周縁部と前記シーラントフィルムの周縁部が溶着された構成を採用できる。
【0024】
負極側電極板の周縁部を樹脂カバーの周縁部とシーラントフィルムの周縁部により囲むことで、負極側電極板を負極側容器に収容する際、樹脂カバーとシーラントフィルムが緩衝材となる。このため、負極側容器への収納時に負極側電極板が負極側容器を損傷させるおそれがなくなる。
【0025】
(5)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記正極側の樹脂カバーの一部に透孔が形成され、該透孔を介し前記第2の正極タブ部が前記正極側電極板に接続された構成を採用できる。
【0026】
正極側の樹脂カバーに設けた透孔を介し第2の正極タブ部を正極側電極板に接続することができ、電極体と正極側電極板との接続ができる。
【0027】
(6)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記負極側の樹脂カバーの一部に透孔が形成され、該透孔を介し前記第2の負極タブ部が前記負極側電極板に接続された構成を採用できる。
【0028】
負極側の樹脂カバーに設けた透孔を介し第2の負極タブ部を負極側電極板に接続することができ、電極体と負極側電極板との接続ができる。
【0029】
(7)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記樹脂カバーが、前記電極板側の溶着層とその反対側の基層を備えた積層構造であり、前記溶着層が前記基層よりも低融点の樹脂からなることが好ましい。
【0030】
樹脂カバーの電極板側が低融点の樹脂からなる溶着層であるならば、樹脂カバーを電極板に熱溶着する場合に密着不良部分などを生じていない良好な熱溶着構造を得ることができる。
また、前記基層が樹脂カバーを電極板に熱溶着するヒーター温度より高い融点を有するならば、ヒーターに樹脂カバーが付着することはない。
このため、正極側の樹脂カバーであれば正極側電極板に対する密着性を良好にした溶着構造を提供することができ、負極側の樹脂カバーであれば負極側電極板に対する密着性を良好にした溶着構造を提供できる。
【0031】
(8)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記樹脂カバーが前記シーラントフィルムと同一材料からなる構成を採用できる。
【0032】
樹脂カバーはシーラントフィルムと同一材料から構成しても良く、同一材料からなる樹脂カバーあるいはシーラントフィルムにより挟まれた構成の電極板であっても、上述の他の構成と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
(9)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記正極側電極板の前記シーラントフィルム側に導電性のめっき層が形成され、前記シーラントフィルムの一部に透孔が形成され、該透孔の内側に前記めっき層が配置された構成を採用できる。
【0034】
樹脂カバーとシーラントフィルムにより電極板を挟んだ溶着構造を採用することで容器内部に収容される電解液が電極板の外部接点となる外面側に回り込むおそれがなくなる。
また、電極板の外部接点となる側への電解液の回り込みが生じないことから、電極板のシーラントフィルム側へニッケル等のめっき層を設けることにより、外部接点との接触抵抗が下がり、ニッケル等からなる外部電極板を省略できる。
【0035】
(10)本発明に係る一形態の電気化学セルの製造方法は、正極体と負極体を折り畳みまたは巻回して構成される電極体を、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体に収容するとともに、前記電極体の正極タブを前記正極側容器内に設けた正極側電極板に接続し、前記電極体の負極タブを前記負極側容器内に設けた負極側電極板に接続する電気化学セルの製造方法であって、一部に凹部を設けたラミネートフィルムと、シーラントフィルムと、透孔付きの樹脂カバーを溶着した前記電極板を用い、前記凹部内にシーラントフィルムを収容し、前記凹部内のシーラントフィルムに積層するように前記樹脂カバーを溶着済みの前記電極板を前記凹部内に配置し、次いで前記透孔を介し前記電極板に前記電極体の電極タブを折り畳みして接続することを特徴とする。
【0036】
前述の方法により、凹部内にシーラントフィルムを挿入後、樹脂カバーを溶着した状態の電極板を容器に挿入し、熱溶着するという組み立て工程を採用できる。樹脂カバーを電極板に溶着する作業は、容器を構成するラミネートフィルムの凹部とは別に行うことができるので、電極板に対する正極側の樹脂カバーの位置合わせが容易かつ正確にできる。
電極板と樹脂カバーを正確に位置決め溶着後、全体をラミネートフィルムの凹部に収容することで、容器となる凹部に対し電極板を正確に位置決め収容できる。また、容器となるラミネートフィルムの凹部に電極板を収容する際、樹脂カバーが緩衝材となるので、電極板によって容器を損傷させるおそれが少なくなる。
また、電極板を樹脂カバーとシーラントフィルムにより挟んだ構造となるので、電極板をその両面側から保護した構造を提供できる。
また、樹脂カバーを介し電極板を凹部の開口部外側から押圧しつつシーラントフィルムに溶着固定できるので、電極板に対しシーラントフィルムを熱溶着する際の安定性が向上する。
【0037】
(11)本発明に係る一形態の電気化学セルの製造方法は、正極体と負極体を折り畳みまたは巻回して構成される電極体を、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体に収容するとともに、前記電極体の正極タブを前記正極側容器内に設けた正極側電極板に接続し、前記電極体の負極タブを前記負極側容器内に設けた負極側電極板に接続する電気化学セルの製造方法であって、一部に凹部を設けたラミネートフィルムと、前記電極板と、前記電極板に対する積層状態で周縁部全周を前記電極板の外方に突出させる大きさのシーラントフィルムと、該シーラントフィルムと類似形状であり、透孔付きの樹脂カバーを用い、前記シーラントフィルムと前記樹脂カバーにより前記電極板を挟み、前記シーラントフィルムの周縁部と前記樹脂カバーの周縁部を溶着し、前記電極板の周囲を前記シーラントフィルムの周縁部と前記樹脂カバーの周縁部で囲み、電極板ユニットを構成し、前記電極体の正極タブと前記電極体の負極タブのそれぞれを個別に折り畳みして前記電極板ユニットを前記ラミネートフィルムの凹部に収容することを特徴とする。
【0038】
前述の方法により、シーラントフィルムと樹脂カバーにより全周縁を囲んだ状態の電極板ユニットを容器の凹部に挿入し、熱溶着するという組み立て工程を採用できる。シーラントフィルムと樹脂カバーを電極板に対し正確に位置決めしつつ溶着する作業は、容器を構成するラミネートフィルムの凹部への挿入とは別に行うことができるので、凹部に対し電極板の正確な位置合わせと隙間を生じていない緻密な溶着作業を容易になし得る。
即ち、電極板に対しシーラントフィルムと樹脂カバーを正確に位置決めして溶着後、電極板ユニットの全体を容器に収容することで、容器に対し電極板を正確に位置決め収容できる。また、電極板ユニットを容器に収容する際、シーラントフィルムと樹脂カバーが緩衝材となるので、電極板によって容器を損傷させるおそれがなくなる。
また、電極板の全周を樹脂カバーとシーラントフィルムにより挟んだ構造となるので、電極板を樹脂カバーとシーラントフィルムにより両面側から保護した構造を提供できる。
【0039】
(12)本発明に係る一形態の電気化学セルの製造方法において、前記電極板を前記凹部内に配置する前あるいは配置後に、前記電極板に対し前記電極体のタブを接続することができる。
電極板に対し電極体のタブを接続することで、電極体と電極板の接続が完了する。
【0040】
(13)本発明に係る一形態の電気化学セルの製造方法は、正極体と負極体を折り畳みまたは巻回して構成される電極体を、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体に収容するとともに、前記電極体の正極タブを前記正極側容器内に設けた正極側電極板に接続し、前記電極体の負極タブを前記負極側容器内に設けた負極側電極板に接続する電気化学セルの製造方法であって、一部に凹部を設けた正極側ラミネートフィルムと、正極側のシーラントフィルムと、透孔付きの正極側の樹脂カバーを溶着した前記正極側電極板を用い、前記凹部内に正極側のシーラントフィルムを収容し、前記凹部内のシーラントフィルムに積層するように前記正極側電極板を前記凹部内に配置するとともに、一部に凹部を設けた負極側ラミネートフィルムと、負極側のシーラントフィルムと、透孔付きの負極側の樹脂カバーを溶着した前記負極側電極板を用い、前記凹部内に負極側のシーラントフィルムを収容し、前記凹部内のシーラントフィルムに積層するように前記負極側電極板を前記凹部内に配置し、前記正極側ラミネートフィルムの凹部開口側と前記負極側ラミネートフィルムの凹部開口側を突き合わせ可能な向きになるように前記正極側ラミネートフィルムと前記負極側ラミネートフィルムを近接配置し、前記正極側ラミネートフィルムの凹部開口と前記負極側ラミネートフィルムの凹部開口の間に前記電極体を配置し、前記電極体の前記正極タブを折り畳みして前記正極側ラミネートフィルムの凹部内の前記正極側電極板に接続し、前記電極体の前記負極タブを折り畳みして前記負極側ラミネートフィルムの凹部内の前記負極側電極板に接続することを特徴とする。
【0041】
予め、電極板の一面側に樹脂カバーを溶着した電極板とシーラントフィルムをラミネートフィルムの凹部に収容し、その後、電極体の電極タブを電極板に接続できる。
予め、電極板に樹脂カバーを溶着した電極板を構成する場合、これらの溶着作業はラミネートフィルムの凹部とは別に溶着できる。また、この溶着作業は電極板と樹脂カバーをいずれもフラットな状態で重ねた上で加熱加圧できるため、電極板に対する樹脂カバーの溶着の信頼性高い状態で完了できる。
凹部に収容した樹脂カバー付きの電極板において、凹部の開口側に樹脂カバーの透孔が配置されるので、凹部の開口側外方に設置した電極体の電極タブを電極板に容易に接続できる。
また、正極側ラミネートフィルムの凹部開口側と負極側ラミネートフィルムの凹部開口側を突き合わせ可能な向きに設置し、隣接させたラミネートフィルム間に配置した電極体の電極タブを正極側電極板あるいは負極側電極板に接続できる。この後、正極側ラミネートフィルムと負極側ラミネートフィルムをスライドさせつつ接近させることで電極タブをZ型に折り畳みつつ両ラミネートフィルムの凹部間に電極体を収容できる。
【0042】
(14)本発明に係る一形態の電気化学セルの製造方法は、正極体と負極体を折り畳みまたは巻回して構成される電極体を、正極側ラミネートフィルムからなる正極側容器と、負極側ラミネートフィルムからなる負極側容器とから構成される外装体に収容するとともに、前記電極体の正極タブを前記正極側容器内に設けた正極側電極板に接続し、前記電極体の負極タブを前記負極側容器内に設けた負極側電極板に接続する電気化学セルの製造方法であって、一部に凹部を設けた正極側ラミネートフィルムと、前記正極側電極板と、前記正極側電極板に対する積層状態で周縁部全周を前記正極側電極板の外方に突出させる大きさの正極側のシーラントフィルムと、該正極側のシーラントフィルムと類似形状であり、透孔付きの正極側の樹脂カバーを用い、前記正極側のシーラントフィルムと正極側の樹脂カバーにより前記正極側電極板をその厚さ方向から挟み、前記正極側のシーラントフィルムの周縁部と前記正極側の樹脂カバーの周縁部を溶着し、前記正極側電極板の周囲を前記正極側のシーラントフィルムの周縁部と前記正極側の樹脂カバーの周縁部で囲み、正極側電極板ユニットを構成し、該正極側電極板ユニットを前記正極側ラミネートフィルムの凹部に収容し、一部に凹部を設けた負極側ラミネートフィルムと、前記負極側電極板と、前記負極側電極板に対する積層状態で周縁部全周を前記負極側電極板の外方に突出させる大きさの負極側のシーラントフィルムと、該負極側のシーラントフィルムと類似形状であり、透孔付きの樹脂カバーを用い、前記負極側のシーラントフィルムと負極側の樹脂カバーにより前記負極側電極板をその厚さ方向から挟み、前記負極側のシーラントフィルムの周縁部と前記負極側の樹脂カバーの周縁部を溶着し、前記負極側電極板の周囲を前記負極側のシーラントフィルムの周縁部と前記負極側の樹脂カバーの周縁部で囲み、負極側電極板ユニットを構成し、該負極側電極板ユニットを前記負極側ラミネートフィルムの凹部に収容するとともに、前記正極側ラミネートフィルムの凹部開口側と前記負極側ラミネートフィルムの凹部開口部側を突き合わせ可能な向きになるように前記正極側ラミネートフィルムと前記負極側ラミネートフィルムを近接配置し、前記正極側ラミネートフィルムの凹部開口と前記負極側ラミネートフィルムの凹部開口の間に前記電極体を配置し、前記電極体の正極タブを折り畳みして前記正極側ラミネートフィルムの凹部内の前記正極側電極板に接続し、前記電極体の負極タブを折り畳みして前記負極側ラミネートフィルムの凹部内の前記負極側電極板に接続することを特徴とする。
【0043】
予め、電極板の一面側に樹脂カバーを溶着し、他面側にシーラントフィルムを溶着した電極板ユニットをラミネートフィルムの凹部に収容し、その後、電極体の電極タブを電極板に接続できる。
予め、電極板ユニットを構成する場合、樹脂カバーとシーラントフィルムの溶着作業はラミネートフィルムの凹部とは別に溶着できる。また、この溶着作業は電極板と樹脂カバーとシーラントフィルムをいずれもフラットな状態で重ねた上で加熱加圧できるため、電極板に対する樹脂カバーとシーラントフィルムの溶着の信頼性を高い状態で完了できる。
凹部に収容した電極板ユニットにおいて、凹部の開口側に樹脂カバーの透孔が配置されるので、凹部の開口側外方に設置した電極体の電極タブを電極板に接続できる。
また、正極側ラミネートフィルムの凹部開口側と負極側ラミネートフィルムの凹部開口側を突き合わせ可能な向きに設置し、隣接させたラミネートフィルム間に配置した電極体の電極タブを正極側電極板あるいは負極側電極板に接続できる。この後、正極側ラミネートフィルムと負極側ラミネートフィルムをスライドさせつつ接近させることで電極タブをZ型に折り畳みつつ両ラミネートフィルムの凹部間に電極体を収容できる。
【0044】
(15)本形態に係る電気化学セルの製造方法において、前記樹脂カバーとして、前記電極板側の溶着層とその反対側の基層を備えた積層構造であり、前記溶着層が前記基層よりも低融点の樹脂からなる樹脂カバーを用いることができる。
【0045】
樹脂カバーにおいて電極板側の溶着層が低融点樹脂からなるならば、樹脂カバーを電極板に熱溶着する場合に熱溶着構造の信頼性が向上する。このため、正極側の樹脂カバーであれば正極側電極板に対する正極側の樹脂カバーの熱溶着信頼性を高めた構成を提供することができ、負極側の樹脂カバーであれば負極側電極板に対する負極側の樹脂カバーの熱溶着信頼性を高めた構成を提供することができる。
【0046】
(16)本発明に係る一形態の電気化学セルの製造方法において、前記シーラントフィルムと同一材料からなる樹脂カバーを用いることができる。
【0047】
樹脂カバーはシーラントフィルムと同一材料から構成しても良く、同一材料からなる樹脂カバーあるいはシーラントフィルムにより挟まれた構成の電極板であっても、上述の構成と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
(17)本発明に係る一形態の電気化学セルの製造方法は、前記シーラントフィルム側に導電性のめっき層を形成した正極側電極板を用い、透孔を有するシーラントフィルムを用い、該透孔の内側に前記導電性のめっき層を配置することができる。
【0049】
正極側電極板を正極側のシーラントフィルムと正極側の樹脂カバーで挟んで覆う構成とするならば、容器内部に収容した電解液が正極側電極板の透孔側に回り込むおそれをなくすることができる。このため、正極側電極板の透孔側に別途耐食性に富む外付け電極端子板などを配置する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0050】
本発明に係る電気化学セルであるならば、容器底部にシーラントフィルムを挿入後、樹脂カバーを溶着した状態の電極板を容器に挿入し、熱溶着するという組み立て工程を採用できる。また、前述の構造であるならば、樹脂カバーとシーラントフィルムで電極板を挟んだ構造を容器に収容し、熱溶着するという組み立て工程を採用できる。
いずれにしても、樹脂カバーやシーラントフィルムを電極板に密着させる作業は、容器への挿入操作とは別に行うことができるので、樹脂カバーやシーラントフィルムと電極板の位置合わせが容易にできる。また、樹脂カバーとシーラントフィルムと電極板を何れもフラットな状態で溶着できるので溶着部分の信頼性も向上する。
また、電極板と樹脂カバーを正確に位置決め後、全体を容器に収容することで、容器に対し電極板を正確に位置決め収容できる。更に、電極板を容器に収容する際、樹脂カバーが緩衝材となるので、電極板が容器に当たって容器を損傷させるおそれもなくなる。
また、電極板を樹脂カバーとシーラントフィルムにより挟んだ構造となるので、電極板を両面側から保護した構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】第1実施形態に係る電気化学セルの外観を示す斜視図である。
図2】同電気化学セルの内部構造を示す部分断面斜視図である。
図3】同電気化学セルに収容される電極体の一例を示す斜視図である。
図4】同電極体に電極板を取り付けた状態を示す斜視図である。
図5】電極板を備えた電極体の負極側電極板を負極側ラミネートフィルムの凹部に収容して熱溶着する状態を示す断面図である。
図6】電極板とその両側に配置される樹脂カバー及びシーラントフィルムを示す分解斜視図である。
図7】電極板を備えた電極体の正極側電極板を正極側ラミネートフィルムの凹部に収容して熱溶着する状態を示す断面図である。
図8】負極側ラミネートフィルムの凹部と正極側ラミネートフィルムの凹部の間に電極体を配置した状態を示す部分断面図である。
図9】電極体を収容して重ねた正極側ラミネートフィルムと負極側のラミネートフィルムに対し3辺に沿う部分を熱溶着によりシールした状態を示す平面図である。
図10】電極体を収容して重ねた正極側ラミネートフィルムと負極側のラミネートフィルム間に電解液を注入し、4辺全周を熱溶着によりシールした状態を示す平面図である。
図11】正極側と負極側のラミネートフィルムにおいて電極体を収容した部分の周囲を超音波溶接機でリング状に溶着した状態を示す平面図である。
図12図10に示すラミネートフィルムから切り出して得た接合体を示す平面図である。
図13】他の実施形態において用いる樹脂カバーとシーラントフィルムにより電極板を挟んで熱溶着した電極板ユニットを示す斜視図である。
図14図13に示す電極板ユニットを負極側電極板とともに電極体に接続した状態を示す構成図である。
図15図14に示す電極板ユニットをラミネートフィルムの凹部に挿入する状態を示す斜視図である。
図16】実施形態において用いる樹脂カバーとシーラントフィルムを製造する装置の一例を示す斜視図である。
図17】樹脂カバーと電極板とシーラントフィルムをラミネートフィルムに溶着し、電極体を接続する工程の一例を示すもので、(A)は正極側と負極側のラミネートフィルムの凹部に対し樹脂カバーと電極板とシーラントフィルムをそれぞれ配置した状態を示す斜視図、(B)は各ラミネートフィルムの凹部に樹脂カバーと電極板とシーラントフィルムを挿入して熱溶着し、一方のラミネートフィルムを表裏逆に配置した状態を示す斜視図、(C)は正極側のラミネートフィルムと負極側のラミネートフィルムの間に電極体を接続した状態を示す斜視図、(D)は正極側のラミネートフィルムと負極側のラミネートフィルムをスライド移動させる状態を示す斜視図、(E)は正極側のラミネートフィルムと負極側のラミネートフィルムを重ねて仮熱溶着した状態を示す斜視図である。
図18】2枚のシーラントフィルムと電極板を溶着し、電極体を接続する工程の一例を示すもので、(A)は正極側と負極側のラミネートフィルムの凹部に対し2枚のシーラントフィルムと電極板をそれぞれ配置した状態を示す斜視図、(B)は各ラミネートフィルムの凹部に2枚のシーラントフィルムと電極板をそれぞれ挿入して熱溶着し、一方のラミネートフィルムを表裏逆に配置した状態を示す斜視図、(C)は正極側と負極側のラミネートフィルムに電極体を接続した状態を示す斜視図、(D)は正極側と負極側のラミネートフィルムをスライド移動させる状態を示す斜視図、(E)は正極側と負極側のラミネートフィルムを重ねて仮熱溶着した状態を示す斜視図である。
図19】折り畳み構造の電極体の一例を示す斜視図である。
図20】第1容器と第2容器の周壁を重ねて溶着した外周壁を有する従来の電気化学セルの一例を示す斜視図である。
図21図20に示す電気化学セルの部分断面図である。
図22図19図20に示す電気化学セルを製造する場合に用いる接合体の一例を示す斜視図である。
図23図19図20に示す電気化学セルを製造する場合に行う絞り加工の初期段階を示す部分断面図である。
図24図19図20に示す電気化学セルを製造する場合に行う絞り加工の終了段階を示す部分断面図である。
図25図19図20に示す電気化学セルを製造する場合に用いる正極側ラミネートフィルムに凹部を形成し、負極側のラミネートフィルムに凹部を形成した状態を示す平面図である。
図26図19図20に示す電気化学セルを製造する場合に用いる電極体において正極タブに正極側電極板を溶接し、負極タブに負極側電極板を溶接した状態を示す平面図である。
図27図19図20に示す電気化学セルを製造する場合に用いる正極側のラミネートフィルムと負極側のラミネートフィルムの間に、正極側電極板と負極側電極板を備えた電極体を配置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明に係る電極の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、電気化学セルの一例として、コイン型のリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)を挙げ、この電池に搭載される電極について説明する。
なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0053】
<第1実施形態>
図1は本発明に係る電解化学セルを二次電池に適用した第1実施形態を示す斜視図、図2は部分断面図である。
本実施形態の電池(電気化学セル)1は、平面視円形状のボタン型の電池である。この電池1は、容器状の外装体2と外装体2の内部に収容された電極体3を備えている。なお、図2では略されているが、外装体2の内部に電解液が充填されている。この電解液は支持塩を非水溶媒に溶解した電解液などが好適に用いられる。
【0054】
(外装体)
外装体2は、電極体3を収容する収容部4と、収容部4の外周に沿って折り曲げられた封止部5と、を備える。封止部5は、例えば絞り成形によって、収容部4の外周に沿って折り曲げられている。
外装体2は、電極体3を間に挟む第1容器(外側容器)10および第2容器(内側容器)20を備える。第1容器10および第2容器20は、それぞれラミネートフィルム(ラミネート構造体)により形成されている。ラミネートフィルムは、金属箔(金属層)と、重ね合わせ面(内側面)に設けられ金属箔を被覆する融着層(樹脂層)と、外側面に設けられ金属箔を被覆する保護層(樹脂層)とを有する。金属層は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等からなり、外気や水蒸気を遮断する金属箔により形成されている。
重ね合わせ面の融着層は、例えば、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の単体やコポリマーから形成されている。外側面の保護層は、例えば、上述のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等から形成される。
【0055】
第1容器(負極側容器;外側容器)10は、円形状の第1底壁部11と、第1底壁部11の外周から筒状に延びる第1周壁部12を備える。第1底壁部11の中心には第1底壁部11の内径の数分の一程度の内径を有する第1貫通孔13が形成されている。
第1底壁部11の内面側には、リング状の第1シーラントフィルム(負極側のシーラントフィルム)14を介しニッケルプレートあるいは銅板にニッケルメッキを施した金属プレートなどの負極側電極板15が熱融着されている。第1シーラントフィルム14は、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成されたシーラントフィルムをリング状に成形したものである。なお、第1シーラントフィルム14の一面側は第1容器10の第1底壁部11に対し熱溶着されるとともに、第1シーラントフィルム14の他面側は負極側電極板15に対し熱溶着されている。
【0056】
負極側電極板15の内面側には、リング状の第1の樹脂カバー(負極側の樹脂カバー)9が溶着されている。このため、第1の樹脂カバー9と第1シーラントフィルム14は負極側電極板15をその厚さ方向両側から挟むように負極側電極板15に対し積層されている。第1の樹脂カバー9の外径と第1シーラントフィルム14の外径はいずれも負極側電極板15の外径より若干大きく形成され、これらは類似形状とされている。従って、負極側電極板15の外周縁部は第1の樹脂カバー9の外周縁部と第1シーラントフィルム14の外周縁部により取り囲まれている。また、第1の樹脂カバー9の外周縁部と第1シーラントフィルム14の外周縁部は相互に密着され、溶着されている。
一方、第1の樹脂カバー9の中心部に透孔9aが形成され、負極側電極板15の中心部は先の透孔9a(図5図6参照)を介し前記電極体3の後述する負極タブ35(図3図6参照)に接続されている。なお、図2においては内部構造の表示が難しいため透孔9aとタブ接続部分は記載を略している。
負極側電極板15は、第1貫通孔13を介し電池1の外部に露出され、電池1の負極端子として機能する。負極タブ35は例えば超音波溶接などの接合手段により負極側電極板15に接続されている。
【0057】
第2容器(正極側容器:内側容器)20は、円形状の第2底壁部21と、第2底壁部21の外周縁から筒状に延びる第2周壁部22と、第2周壁部22の開口縁から第2周壁部22の外側に向けて断面U字状になるように折り曲げられて第2底壁部21側に延びる折曲部23を備えている。
第2底壁部21は、電極体3を挟んで第1容器10の第1底壁部11と反対側に配置されている。第2底壁部21は、第1容器10の第1底壁部11と同等の外径に形成されている。第2底壁部21の中心には、第2底壁部21の内径の数分の一程度の内径を有する第2貫通孔24が形成されている。
【0058】
第2底壁部21の内面側には、リング状の第2シーラントフィルム(正極側のシーラントフィルム)25を介し正極側電極板16が熱融着されている。正極側電極板16の外面の中央には、ニッケルプレート、Auメッキプレートなどからなる保護プレート26が溶接されている。なお、正極側電極板16の外面にニッケルまたはニッケル合金等のめっき層を形成するならば、保護プレート26は省略してもよい。あるいは、後述する構造を採用することで保護プレート26を省略しても良い。第2シーラントフィルム25は、第1シーラントフィルム14と同様に、熱可塑性樹脂により形成されている。
正極側電極板16の内面側には、リング状の第2の樹脂カバー(正極側の樹脂カバー)8が溶着され、正極側電極板16は第2の樹脂カバー8と第2シーラントフィルム25により挟まれている。第2の樹脂カバー8の外径と第2シーラントフィルム25の外径はいずれも正極側電極板16の外径より若干大きく形成され、これらは類似形状とされている。正極側電極板16の外周縁部は第2の樹脂カバー8の外周縁部と第2シーラントフィルム25の外周縁部により囲まれている。また、第2の樹脂カバー8の外周縁部と第2シーラントフィルム25の外周縁部は相互に密着され、溶着されている。
【0059】
一方、第2の樹脂カバー8の中心部に透孔8aが形成され、正極側電極板16の中心部は前記透孔8aを介し前記電極体3の後述する正極タブ45(図3図4参照)に接続されている。なお、図2においては内部構造が複雑なため透孔8aとタブ接続部分は記載を略している。
正極側電極板16は、SUS316などの耐食性に優れたステンレス鋼板からなり、正極側電極板16に溶接されている保護プレート26は第2貫通孔24を介し電池1の外部に露出され、電池1の正極端子として機能する。
【0060】
図6に示すように第2の樹脂カバー8は、溶着層8Aとこの溶着層8Aを支える基層8Bからなる2層の積層構造とされている。同様に、第1の樹脂カバー9も、溶着層9Aとこの溶着層9Aを支える基層9Bからなる2層構造とされている。
なお、図5では正極側電極板16の上面に保護プレート26を溶接した構造としたが、保護プレート26を略した図6に示す構成を後述する実施形態のように採用しても良い。図6に示す構成では、正極側電極板16の片面側(第2シーラントフィルム25側)にNiめっき層16Aが形成されている。
【0061】
樹脂カバー8、9の基層8B、9Bは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの高融点樹脂からなり、溶着層8A、9Aは変性PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)などの低融点樹脂からなる。樹脂カバー8、9において、溶着層8A、9Aを基層8B、9Bより低融点の樹脂で構成することにより、後述する熱溶着による接合が確実となる。
ここで言及した高融点樹脂とは、一般的な熱溶着温度(150~200℃)よりも融点の高い樹脂を意味し、低融点樹脂とは高融点樹脂よりも融点の低い樹脂、換言すると一般的な熱溶着温度より融点の低い樹脂を意味する。
【0062】
図2に示すように第2周壁部22は、第2底壁部21の外周から第1容器10の第1底壁部11に向けて筒状に延びている。第2周壁部22は、収容部4の外周を形成する。折曲部23は、第2周壁部22のうち、第1底壁部11側の端部から第2周壁部22に沿って第2底壁部21側へ筒状になるように折り曲げられている。折曲部23は、第2周壁部22に対して外側に間隔をおいて配置されている。
第2周壁部22は、第1周壁部12の内側に配置されている。また、折曲部23は、第1周壁部12の内側に配置され、折曲部23の融着層と第1周壁部12の融着層とが熱融着されている。
【0063】
折曲部23の融着層と第1周壁部12の融着層とが融着されることにより、封止部5が形成されている。よって、収容部4の外周が封止部5で封止されている。以上の構造により、第1容器10および第2容器20が重ね合わされて接合され、外装体2が形成されている。封止部5は、収容部4の外側に筒状に形成されている。
収容部4には、第1容器10と第2容器20とが重ね合されることにより密封空間が形成されている。具体的に、収容部4は、第1底壁部11、第2底壁部21、および第2周壁部22により画成され、平面視で円形に形成されている。
【0064】
(電極体)
図3は、本実施形態の電極体3を示す斜視図であり、この実施形態の電極体3は、負極側セパレータ層36で被覆された負極体30と正極側セパレータ層46で被覆された正極体40からなる。
電極体3は、負極体30および正極体40を互い違いに積層するように巻回された電極体である。具体的に、電極体3は、負極側セパレータ層36を介して負極体30と正極体40とを重ね合わせて扁平状に巻回することにより形成されている。負極体30の負極タブ35は、上述の負極側電極板15に接続され、正極体40の正極タブ45は、上述の正極側電極板16に接続される。
本実施形態において、負極タブ35が負極側電極板15に接続される部分と正極タブ45が正極側電極板16に接続される部分の構造は後述する折り畳み構造とされているが、この構造の詳細については後に説明する。なお、巻回構造の電極体3は一例に過ぎないので、他の構造の電極体については後述する。
【0065】
負極側セパレータ層36は負極体30において負極タブ35とその基端側の周囲部分を除き、残り全体を覆うように形成されている。正極側セパレータ層46は正極体40において正極タブ45とその基端側周囲部分を除き、残り全体を覆うように形成されている。
このため、セパレータ層36、46は、負極体30と正極体40を巻回した状態において負極体30および正極体40の周囲およびこれらの層間に配置され、負極体30と正極体40とが絶縁分離される。
【0066】
なお、図3においては層厚を無視してセパレータ層36、46の存在位置のみを表示しているが、セパレータ層36、46は少なくとも負極体30と正極体40とが対向する領域の全体で負極体30と正極体40との間に介在するように、かつ、負極側セパレータ層36が負極体30を覆うように、正極側セパレータ層46が正極体40を覆うように配置されている。
以下、負極体30および正極体40が巻回されて積層された方向を積層方向と称する。なお、巻回とは、特定の巻回中心軸の周囲を周回するように巻かれることである。
【0067】
負極体30は、金属材料により形成された箔状の負極集電体と、負極集電体の片面または両面に塗工された負極活物質層とを備えたシート状の部材である。負極集電体は、例えば銅やニッケル等の金属箔により形成されている。金属箔の厚さは一例として数μm程度である。負極活物質は、例えば、シリコンやシリコン酸化物、グラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム等の単体又は混合物である。負極集電体は円形状の複数の負極本体と隣接する負極本体を接続する帯状の接続部とからなり、配列方向一端の負極集電体の外周部から負極タブが延出されている。
【0068】
負極活物質層の形成材料として、負極活物質に加え、導電助剤(例えば、アセチレンブラック等)、バインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデンやスチレンブタジエンゴム(SBR)のディスパージョン等)、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、溶剤(例えば、水、N-メチルピロリドン等の任意の溶媒)を混合して負極用スラリーを作製することができる。負極活物質層を形成するための構成材料を含む塗布液を「負極用スラリー」ということができる。この負極用スラリーを負極側集電体に塗布し、乾燥させることにより負極活物質層を形成できる。
【0069】
正極体40は、金属材料により形成された箔状の正極集電体と、正極集電体の片面または両面に塗工された正極活物質層と、を備えた1枚のシート状の部材である。正極集電体は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属箔により形成されている。金属箔の厚さは一例として10数μm程度である。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のように、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物である。正極集電体は円形状の複数の正極本体と隣接する正極本体を接続する帯状の接続部とからなり、配列方向一端の正極集電体の外周部から正極タブが延出されている。
【0070】
正極活物質層の形成材料として、上述の正極活物質に加え、導電助剤(例えば、アセチレンブラック等)、バインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデン等)、溶剤(例えばN-メチルピロリドン等の任意の溶媒)を混合して正極用スラリーを作製することができる。正極活物質層を形成するための構成材料を含む塗布液を「正極用スラリー」ということができる。この正極用スラリーを正極側集電体に塗布し、乾燥させることにより正極活物質層を形成できる。
【0071】
セパレータ層36、46は、一例としてリチウムイオン導電性を有する樹脂層である。セパレータ層36、46は、例えばポリオレフィン製の樹脂ポーラスフィルムやガラス製不織布、樹脂製不織布、セルロース繊維の積層体等により形成されている。なお、セパレータ層36、46は正極体40と負極体30の分離を行えば良いため、どちらか一方を略しても良い。
【0072】
図2図3に示すように、本実施形態の電極体3は、外装体2の収容部4内に高密度で配置されるように、収容部4内の密封空間の形状に対応する形状に形成されている。すなわち、電極体3は、積層方向から見て、円形状に形成されている。
負極体30は円形状の複数の負極本体を帯状などの形状に配列するように接続部を介し接続した構成を有し、正極体40は円形状の複数の正極本体を帯状などの形状に配列するように接続部を介し接続した構成を有する。このため、負極体30の円形状の負極集電体と正極体40の円形状の正極集電体を交互に積み重ねるか巻回することにより、図3に示す電極体3が構成される。
以下、電池1の製造方法に関連付けて電池1の内部構造の詳細について更に説明する。
【0073】
「電気化学セルの製造方法」
図1図2に示す構造の電池(電気化学セル)1を製造するには、まず、正極体と負極体を巻回するか、つづら折り積層するなどの方法により図3に示す構成の電極体3を形成する。
【0074】
「電極板の接合工程」
図4は、正極タブ45を左側に延出させ、負極タブ35を右側に延出させて電極体3を配置した状態を平面視している。そして、図4における正極タブ45の先端表面側(手前側)の面に正極側電極板16が超音波溶接され、負極タブ35の先端裏面側(奥側)の面に負極側電極板15が超音波溶接されている。
図4に示す正極側電極板16の一面(裏面)側であって、正極タブ45の先端部を溶接する部分周りに溶接前にリング状の第2の樹脂カバー8を溶着しておく。また、図4に示す負極側電極板15の手前側の面であって負極タブ35の先端部を溶接する部分周りにリング状の第1の樹脂カバー9を溶着しておく。また、正極側電極板16の他面側(表面側)中央に第2の樹脂カバー8を溶着する前に保護プレート26をスポット溶接などの接合手段により取り付けておく。
【0075】
第2の樹脂カバー8を備えた正極側電極板16を、図5に示すように電極体3に超音波溶接法などの接合方法により接合する。
図5に示す形態では、負極タブ35の先端が負極側電極板15の中央部まで延在され、正極タブ45の先端部が正極側電極板16の中央部まで延在されている。
この形態では図4に示すように負極タブ35の先端35aを負極側電極板15の中心部まで延在させているが、負極タブ35の先端35aを負極側電極板15の外周縁部まで延在させても良い。正極タブ45の先端部も同様に正極側電極端の外周縁部まで延在させても良い。
【0076】
「電極板と負極側ラミネートフィルムの接合工程」
図4に示す状態の電極体3に対し、金属箔を樹脂層で覆ったラミネート構造の図5に示す負極側ラミネートフィルム50を用意し、負極側ラミネートフィルム50に形成した凹部50aに第1シーラントフィルム14を収容する。
第1シーラントフィルム14の上に第1の樹脂カバー9を溶着して備えた負極側電極板15を収容し、負極側電極板15を熱溶着する。ここで、第1の樹脂カバー9の外径を凹部50aの内径とほぼ同等か若干小さくしておくならば、第1の樹脂カバー9を凹部50aに挿入する作業を行うのみで負極側電極板15を凹部50aの中央に正確に位置合わせした状態で収容できる。そして、熱溶着により負極側電極板15を凹部50aの中央に正確に位置決め固定できる。
【0077】
負極側ラミネートフィルム50は、図25を基に先に説明した第1の積層フィルム125と同等構造の負極側ラミネートフィルム50を用いることができる。負極側ラミネートフィルム50に形成する凹部50aは電極体3を収容可能な大きさであって、以下に説明する加工を経た後、第1容器10を構成できる大きさとする。また、凹部50aの底面中央部には第1容器10を構成した場合に第1貫通孔13となる透孔50bを予めプレス加工により形成しておく。
この負極側ラミネートフィルム50は以下に説明する製造方法により第1容器10を構成する基となるので、構成材料は先に説明した第1容器10の構成材料と同等で良い。
【0078】
図5に示す状態では、水平に配置した負極側ラミネートフィルム50において、負極側ラミネートフィルム50の左右方向中央部より、左側よりの位置に凹部50aが形成されている。開口部を上向きとした凹部50aに第1の樹脂カバー9を溶着して備えた負極側電極板15を収容し、その左側斜め上方に電極体3と正極側電極板16を配置するように電極体3を配置する。
第1シーラントフィルム14の上に第1の樹脂カバー9を備えた負極側電極板15を配置したならば、凹部50aの底壁と第1シーラントフィルム14と負極側電極板15を熱溶着装置のプレス機で上下から挟み付けるように加圧しながら加熱することによりこれらを図7に示すように熱溶着できる。
【0079】
この熱溶着を行う場合、凹部50aの底壁と第1シーラントフィルム14と負極側電極板15を上下から熱溶着装置のプレス機等で挟み付ける必要がある。このことから、図5に示すように負極側電極板15を凹部内に配置した場合、電極体3が凹部50aの斜め外側でプレス機に干渉しない位置に設置する必要がある。このため、負極タブ35は図5図7に示すようにプレス機と回避可能な長さを有することが必要である。
【0080】
熱溶着処理により第1の樹脂カバー9の溶着層9Aを構成する低融点樹脂が負極側電極板15に溶着する。また、第1シーラントフィルム14が凹部50aの底壁に溶着するとともに、負極側電極板15にも溶着する。
なお、熱溶着装置のプレス機による加熱処理と加圧処理を充分に行うならば、第1シーラントフィルム14の外周縁部と第1の樹脂カバー9の外周縁部を密着した状態でこれらを相互に熱溶着することができる。これらの熱溶着により、第1シーラントフィルム14の外周縁部と第1の樹脂カバー9の外周縁部によって負極側電極板15の外周縁部を囲んだ構造を実現できる。
【0081】
「電極板と正極側ラミネートフィルムの接合工程」
次に、図7に示すように正極側ラミネートフィルム51を用意する。
正極側ラミネートフィルム51は、図25を基に先に説明した第2の積層フィルム126と同等構造のラミネートフィルムでよい。正極側ラミネートフィルム51に形成する凹部51aは電極体3を収容可能な大きさであって、後述する加工を経た後、第2容器20を構成できる大きさとする。また、凹部51aの底面中央部には第2容器20を構成した場合に第2貫通孔24となる透孔51bを予め形成しておく。ラミネートフィルムに凹部51aを形成することで、ラミネートフィルムには突部51cが形成される。
この正極側ラミネートフィルム51は以下に説明する製造方法により第2容器20を構成する基となるので、構成材料は先に説明した第2容器20の構成材料と同等で良い。
【0082】
図7に示すように第2シーラントフィルム25を収容した凹部51aの開口部を下向きとして正極側ラミネートフィルム51を水平に配置し、凹部51aに第2の樹脂カバー8付きの正極側電極板16を収容する。ここで、第2の樹脂カバー8の外径を凹部51aの内径とほぼ同等か若干小さくしておくならば、第2の樹脂カバー8を凹部51aの開口部に位置合わせして挿入する作業を行うのみで正極側電極板16を凹部51aの中央に位置合わせして収容できる。
【0083】
次に、凹部51aの底壁と第2シーラントフィルム25と正極側電極板16と第2の樹脂カバー8をそれらの厚さ方向にプレス機で挟み付けるように加圧しながら加熱することによりこれらを熱溶着することができる。
なお、この熱溶着を行う場合、凹部51aの底壁と正極側電極板16を上下から熱溶着装置のプレス機等で挟み付ける必要がある。このことから、図7に示すように正極側電極板16を凹部内に配置した場合、電極体3が凹部51aの斜め下方外側にプレス機と干渉しない位置に配置されている必要がある。このため、正極タブ45は図7に示すように配置が可能な長さを有することが必要である。
【0084】
上述の熱溶着処理により第2の樹脂カバー8の溶着層8Aを構成する低融点樹脂が正極側電極板16に溶着する。また、第2シーラントフィルム25が凹部51aの底壁に溶着するとともに、正極側電極板16にも溶着する。
なお、熱溶着装置のプレス機による加熱処理と加圧処理を充分に行うならば、第2シーラントフィルム25の外周縁部と第2の樹脂カバー8の外周縁部を密着した状態でこれらを相互に熱溶着することができる。この熱溶着処理により、第2シーラントフィルム25の外周縁部と第2の樹脂カバー8の外周縁部によって正極側電極板16の外周縁部を囲んだ構造を実現できる。
【0085】
「折り曲げ工程」
図7に示すように負極側電極板15と正極側電極板16の熱溶着を行ったならば、負極側ラミネートフィルム50に対し正極側ラミネートフィルム51を図7図8に示す矢印方向にスライド移動させて凹部50a、51aの位置合わせを行う。
図8に示す矢印方向へのスライド移動により負極側電極板15の上で負極タブ35を側面視Z型に折り曲げることができるとともに、正極側電極板16の下で正極タブ45を側面視Z型に折り曲げることができる。
図8に示すように負極タブ35は、第1の負極タブ部35Aと第2の負極タブ部35Bとからなる側面視Z型に折り曲げられている。正極タブ45は、第1の正極タブ部45Aと第2の正極タブ部45Bとからなる側面視Z型に折り曲げられている。
【0086】
「ラミネートフィルムの熱仮封止工程」
図8に示す状態から、負極側ラミネートフィルム50と正極側ラミネートフィルム51を接近させて凹部50aの開口部と凹部51aの開口部を突き合わせると凹部以外のラミネートフィルムを重ねることができるので、凹部周囲のラミネートフィルム重ね合わせ部分の一部を熱溶着すると、ラミネートフィルムどうしの熱仮封止ができる。
【0087】
「ラミネートフィルムの封止工程」
図8を基に説明したように負極側ラミネートフィルム50と正極側ラミネートフィルム51を熱仮封止したならば、図9図12を基に以下に説明する手順でラミネートフィルムの封止と電解液の注入を行う。
図9は負極側と正極側のラミネートフィルム50、51を熱仮封止した状態から、負極側と正極側のラミネートフィルム50、51の3辺側を必要な幅に渡り、熱溶着して熱封止した状態を示す。図9に平面視するようにラミネートフィルム50、51において突部5cの直径の半分程度の幅で左右両側の長辺部と一方の短辺部(下辺部)にそれぞれ熱融着部55を形成すると、ラミネートフィルム50、51の他方の短辺側(上辺側)のみ熱溶着されていない状態とすることができる。
【0088】
図9に示す熱溶着していない部分から凹部50a、51aに電解液を注入し、その後、図10に示すようにラミネートフィルム50、51の上辺側を熱溶着して熱溶着部56を形成し、ラミネートフィルム50、51の4辺全周を所定幅で熱溶着する。
この後、化成処理を行い、ラミネートフィルム50、51間のガス抜きを行い、更に、図11に示すように突部51cの周囲をリング状に所定幅で囲むように超音波溶接機で溶着し、リング状の溶接部57を形成して最終封止を行う。
リング状の溶接部57の外周部に沿って平面視円形状に打ち抜きを行うと、図12に示す接合体58を得ることができる。
【0089】
この接合体58の概形は図22に示した接合体118と同等である。
この接合体58と、図23図24に示した下型121と上型122からなる金型120とパンチ123を用いて図23図24を基に先に説明した方法と同様の絞り加工を行うと、図1図2に示した構造の電池1と同等構造の電池を得ることができる。
【0090】
図1図4に示す構造を採用した電池1であるならば、図5図8に示す製造方法に基づき製造することができる。
即ち、容器10、20を構成するためのラミネートフィルム50、51の凹部50a、51aにシーラントフィルム14、25を挿入後、樹脂カバー9を溶着した状態の負極側電極板15あるいは樹脂カバー8を溶着した状態の正極側電極板16を挿入し、熱溶着するという組み立て工程を採用できる。
樹脂カバー9を負極側電極板15に密着させる作業、樹脂カバー8を正極側電極板16に溶着する作業は、凹部50a、51aへの挿入操作とは別に行うことができるので、樹脂カバー8あるいは樹脂カバー9とともに凹部50a内、51a内に電極板15、16を挿入することにより凹部内への電極板15、16の正確な位置決めと収容ができる。
【0091】
即ち、電極板15、16に対し樹脂カバー8、9を正確に位置決め後、樹脂カバー8、9を含めた全体を凹部50aあるいは凹部51aに収容することで、凹部50a、51aに対し電極板15、16を正確に位置決め収容できる。また、電極板15、16を凹部50a内あるいは凹部51a内に収容する際、樹脂カバー8、9が緩衝材となるので、電極板15、16がラミネートフィルム50、51に当たってラミネートフィルム50、51を損傷させるおそれがなくなる。
また、負極側電極板15の両面に樹脂カバー9と第1シーラントフィルム14を溶着した構造、あるいは、正極側電極板16の両面に樹脂カバー8と第2シーラントフィルム25を溶着した構造となる。このため、熱溶着構造の安定性が向上し、負極側電極板15を樹脂カバー9と第1シーラントフィルム14により両面側から保護した構造、正極側電極板16を樹脂カバー8と第2シーラントフィルム25により両面側から保護した構造を提供できる。
【0092】
更に、負極側電極板15の両面に樹脂カバー9と第1シーラントフィルム14を溶着し、これらの外周縁部を相互に溶着して負極側電極板15の外周部を覆った構造、あるいは、正極側電極板16の両面に樹脂カバー8と第2シーラントフィルム25を溶着し、これらの外周縁部を相互に溶着して正極側電極板16の外周縁部を覆った構造を提供できる。
これらの構造によれば、負極側電極板15の外周縁部を覆った樹脂カバー9の外周縁部と第1シーラントフィルム14の外周縁部を凹部50aへの収容時の緩衝材とすることができ、負極側電極板15を収容する場合、凹部50aを構成するラミネートフィルム50の損傷を防止できる効果がある。
また、正極側電極板16の外周縁部を覆った樹脂カバー8の外周縁部と第2シーラントフィルム25の外周縁部を凹部51aへの収容時の緩衝材とすることができ、正極側電極板16を収容する場合、凹部51aを構成する正極側ラミネートフィルム51の損傷を防止できる効果がある。
【0093】
また、正極側電極板16の厚さ方向両側を樹脂カバー8と第2シーラントフィルム25で挟み、これらの外周縁部を溶着して一体化した構造では、第2の樹脂カバー8の中央の透孔8aを介し露出している正極側電極板16の中央部のみが電池1の正極側の端子として外部に露出されている。正極側電極板16の厚さ方向両側を第2の樹脂カバー8と第2シーラントフィルム25で覆った構造でpは、正極側電極板16の中央部であって電池1の正極側の端子として機能する部分に収容部内の電解液が到達しない。
このため、図1図2等に示した保護プレート26は省略することができる。保護プレート26が高価なNi合金などから形成されている場合、保護プレート26の省略により電池1の製造コストを下げることができる。
【0094】
「電極板ユニットの作製工程」
図5図8を基に先に説明した工程では、正極側ラミネートフィルム51の凹部51aに第2シーラントフィルム25を収容した後、凹部51aに正極側電極板16を収容してから第2シーラントフィルム25との溶着を行った。また、負極側ラミネートフィルム50の凹部50aに第1シーラントフィルム14を収容した後、凹部50aに負極側電極板15を収容してから第1シーラントフィルム14との溶着を行った。
しかし、これらの溶着は凹部50a、51aに収容する前に行っても良い。
【0095】
図13は第2シーラントフィルム25と正極側電極板16と第2の樹脂カバー8を凹部51aに収容する前に積層して溶着し、一体化した構成の正極側電極板ユニットU1を示す斜視図である。第2の樹脂カバー8の中央に形成された透孔8aを介し正極側電極板16が外側に露出されている。
第2の樹脂カバー8の外周縁部と第2シーラントフィルム25の外周縁部が相互に同一幅で溶着され、溶着された部分により正極側電極板16の外周部が囲まれている。
第2の樹脂カバー8の外径と第2シーラントフィルム25の外径は正極側ラミネートフィルム51の凹部51aの内径とほぼ同一か若干小さい外径に揃えられている。このため、図15に示す位置から正極側電極板ユニットU1を正極側ラミネートフィルム51の凹部51aに挿入することで正極側電極板16を凹部51a内の中央位置に容易かつ確実に位置決め挿入できる。
【0096】
なお、凹部51aの中央に正極側電極板16を位置決めして収容する場合、ピンセットなどを用いて単独の正極側電極板16を凹部51aの中央に収容すると、正極側電極板16が正極側ラミネートフィルム51の一部に接触し、正極側ラミネートフィルム51を傷付けるおそれがある。
この点において図15に示すように正極側電極板ユニットU1を構成してから凹部51aに収容すると、正極側電極板16の外周縁部を第2の樹脂カバー8と第2シーラントフィルム25が覆っているので正極側ラミネートフィルム51を傷付けるおそれがない。第2の樹脂カバー8と第2シーラントフィルム25は正極側電極板16を覆う保護材になるとともに、凹部51aへの挿入時の緩衝材となる。
【0097】
本実施形態において、正極側電極板ユニットU1に加え、図14に示す負極側電極板ユニットU2を適用しても良い。負極側電極板ユニットU2は、負極側電極板15の厚さ方向両側を第1の樹脂カバー9と第1シーラントフィルム14で挟んで構成されている。第1の樹脂カバー9の外周縁部と第1シーラントフィルム14の外周縁部が相互に同一幅で溶着され、溶着された部分により負極側電極板15の外周部が囲まれている。
負極側電極板ユニットU2を適用することで正極側電極板ユニットU1を適用した場合と同様の効果を得ることができる。即ち、負極側電極板ユニットU2を適用することにより、凹部50aに対し負極側電極板15の正確な位置決めができるとともに、凹部50aとその周囲の負極側ラミネートフィルム50を傷付けるおそれがない。
また、図14に示すように電極体3を保護フィルム54で覆ってもよい。
保護フィルム54で覆うことにより、図5図8に基づいて説明したように電極タブとの接続時、あるいは、凹部50a、51aへの電極体3の挿入時に電極体3を保護することができる。保護フィルム54としては、樹脂のシートや粘着テープなどの絶縁フィルムを用いることができる他、樹脂カバー9や第1シーラントフィルム14あるいはセパレータ層36、46と同様の材料を用いても良い。
【0098】
「電極板ユニットの作製」
図16は正極側電極板ユニットU1を製造する工程の一例を示すもので、図16に示す符号60は第2シーラントフィルム25を構成する熱可塑性樹脂と同等材料からなる帯状のフィルム素材であり、符号61は第2の樹脂カバー8と同等構造を製造するための帯状のカバー素材である。
帯状のフィルム素材60が図16では略した搬送装置によって水平に搬送され、その搬送経路の途中にヒーター装置62が設置されている。このヒーター装置62の上を通過するフィルム素材60の上に図示略の部品搬送機構により円板状の正極側電極板16を所定間隔毎に繰り返し設置できるように構成されている。
フィルム素材60の搬送経路において上流側には図示略の打ち抜き装置が設置されていて、フィルム素材60には第2の樹脂カバー8に形成されている透孔8aに対応する大きさの透孔60aがフィルム素材60の長さ方向に間欠的に複数形成される。図16に示す例ではフィルム素材60の幅方向に所定の間隔をあけて2つの透孔60aが形成され、これら2つの透孔60aがフィルム素材60の長さ方向に一定の間隔で形成されている。
【0099】
ヒーター装置62の上方にはピストン型の加圧ヘッド63が上下方向に昇降自在に設けられている。これらの加圧ヘッド63は、図示略の部品搬送機構がフィルム素材60上に透孔60aに対し中心を位置合わせして正極側電極板16を設置すると、この正極側電極板16をヒーター装置62の上面に押し付ける機能を有する。加圧ヘッド63が正極側電極板16をフィルム素材60に押し付けることにより正極電極板16をフィルム素材60に溶着することができる。
この溶着作業において、フィルム素材60と正極側電極板16を何れもフラットな状態で溶着できるので、正確に位置決めできるとともに、溶着不良部分などを生じていない信頼性の高い溶着ができる。
【0100】
図16においてフィルム素材60の上方側にカバー素材61の搬送経路が設けられ、この搬送経路の途中にプライマー塗布装置65が設けられている。カバー素材61の搬送経路においてプライマー塗布装置65が設置されている位置の上流側から高融点樹脂製のカバー素材61が搬送される。
カバー素材61の搬送経路の上流側には図示略の打ち抜き装置が設置されていて、カバー素材61には第2シーラントフィルム25に形成されている第2貫通孔24に対応する大きさの透孔61aがカバー素材61の長さ方向に間欠的に複数形成される。図16に示す形態ではカバー素材61の幅方向に所定の間隔をあけて2つの透孔66aが形成され、これらがカバー素材61の長さ方向に一定の間隔で形成されている。カバー素材61は、一例として、樹脂カバー8、9の基層8B、9Bを構成する樹脂と同等材料からなる帯状体である。
【0101】
プライマー塗布装置65はカバー素材61の搬送経路の下方に設置されている塗布ロール67を有している。この塗布ロール67はカバー素材61の下面側に先に説明した溶着層8A、9Aを構成するための変性PP(ポリプロピレン)などの低融点樹脂の塗布層を形成できる機能を有する。カバー素材61の搬送経路に沿ってプライマー塗布装置65の下流側には乾燥装置68が設けられている。この乾燥装置68はプライマー塗布装置65が形成した塗布層を乾燥させて定着させる機能を有する。
【0102】
カバー素材61の搬送経路は、乾燥装置68の下流側において下方のフィルム素材60の搬送経路に接近され、更に下流側においてカバー素材61はその下方のフィルム素材60の搬送経路に隣接し、上下に所定の間隔をあけて平行に沿うようになっている。
フィルム素材60の搬送経路とカバー素材61の搬送経路が水平で上下に所定の間隔をあけて配置された領域に上下対となる加圧ローラー69、70と加熱ローラー71、72が順次隣接配置されている。
【0103】
これらの加圧ローラー69、70と加熱ローラー71、72の間にフィルム素材60とカバー素材61を通過させることにより、フィルム素材60とカバー素材61を密着させて加熱し、一体化することができる。
加圧ローラー69、70と加熱ローラー71、72の間をフィルム素材60とカバー素材61が通過した位置に打ち抜き用のロッド部材73、74が上下方向に移動自在に並設されている。これら打ち抜き用のロッド部材73、74が上下方向に移動し、フィルム素材60とカバー素材61を打ち抜くことで図16に示すように3層構造の正極側電極板ユニットU1あるいは負極側電極板ユニットU2を得ることができる。
【0104】
搬送経路において加熱ローラー71、72の設置位置より若干下流側にフィルム素材60とカバー素材61をそれらの厚さ方向に打ち抜きできる打ち抜き用のロッド部材73、74が設けられている。なお、打ち抜き用のロッド部材73、74の下方側であって、搬送経路の下方側には打ち抜き用のロッド部材を受ける打ち抜き孔を有する図示略の台座が設けられている。打ち抜き用のロッド部材73、74の外径と打ち抜き孔の内径は、電極板ユニットU1を構成する第2の樹脂カバー8の外径および第2シーラントフィルム25の外径と同一に形成されている。
【0105】
図16に示す製造工程に従い電極板ユニットU1を製造するならば、部品搬送機構等により正極側電極板16の中心とフィルム素材60の透孔60aの中心を正確に位置合わせしてフィルム素材60上に正極側電極板16を設置できる。また、打ち抜き用のロッド部材73、74によりフィルム素材60とカバー素材61の正確な位置を打ち抜くことにより、樹脂カバー8と第2シーラントフィルム25の中心に正確に正極側電極板16を配置しつつ打ち抜きができる。よって、この電極板ユニットU1を正極側ラミネートフィルム51の凹部51aに収容することで、凹部51aの中心に電極板16を設置できる。
図16に示す製造工程により製造した電極板ユニットU1を用いるならば、正極側ラミネートフィルム51の凹部51aの中心にピンセットなどを用いて正極側電極板16を位置合わせしながら設置するよりも正確に正極側電極板16を設置できる。また、図16に示す製造工程により製造した電極板ユニットU2を用いるならば、凹部50aの中心にピンセットなどを用いて負極側電極板15を位置合わせしながら設置するよりも正確に負極側電極板15を設置できる。
【0106】
「電極体の第2接続例」
図17は電極板とシーラントフィルムおよび樹脂カバーをラミネートフィルムの凹部に収容し、これらに電極体を接続する場合の第2接続例を示す斜視図である。
図17(A)の右側に示すように、負極側ラミネートフィルム50の凹部50a内に第1シーラントフィルム14を収容し、第1の樹脂カバー9と負極側電極板15を予め溶着したものを凹部50a内に収容し、この後、第1シーラントフィルム14と第1の樹脂カバー9および負極側電極板15を溶着しても良い。あるいは、図16に示す工程で製造した負極側電極板ユニットU2を負極側ラミネートフィルム50の凹部50aに収容し、溶着しても良い。もしくは、負極側ラミネートフィルム50の凹部50aに第1シーラントフィルム14と負極側電極板15と第1の樹脂カバー9を個別に収容してからそれらを溶着しても良い。
【0107】
負極側電極板ユニットU2を凹部50aに収容して溶着する場合、負極側電極板ユニットU2において第1シーラントフィルム14と負極側電極板15と第1の樹脂カバー9は既に溶着済みである。このため、負極側電極板ユニットU2を凹部50aに収容後に行う溶着は、凹部50aの底壁を構成する融着層に第1シーラントフィルム14を溶着することとなる。
【0108】
図17(A)の左側に示すように、正極側ラミネートフィルム51の凹部51a内に第2シーラントフィルム25を収容し、第2の樹脂カバー8と正極側電極板16を予め溶着したものを凹部51a内に収容し、第2シーラントフィルム25と第2の樹脂カバー8および正極側電極板16を溶着しても良い。あるいは、先に説明した正極側電極板ユニットU1を正極側ラミネートフィルム51の凹部51aに収容し、溶着しても良い。もしくは、正極側ラミネートフィルム51の凹部51aに第2シーラントフィルム25と正極側電極板16と第2の樹脂カバー8を個別に収容してから溶着しても良い。
【0109】
正極側電極板ユニットU1を凹部51aに収容して溶着する場合、正極側電極板ユニットU1において第2シーラントフィルム25と正極側電極板16と第2の樹脂カバー8は既に溶着済みである。このため、正極側電極板ユニットU1を凹部51aに収容後に行う溶着は、第2シーラントフィルム25を凹部51aの底壁に溶着することになる。
【0110】
熱溶着後、正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50を左右に近接配置させ、図17(B)に示すように負極側ラミネートフィルム50のみを表裏反転して裏返しとする。図17(B)に示すように正極側ラミネートフィルム51の凹部51aの開口部を上向きとし、負極側ラミネートフィルム50の突部50cを上向きとする。
図17(B)に示す状態に反転することで、正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50は後述する工程において凹部50aの開口側と凹部51aの開口側が突き合わせ可能な向きとなる。
次に、図17(C)に示すように左右に近接配置した正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50の間に正極タブ45と負極タブ35を左右に延在させた状態の電極体3を配置し、負極タブ35を負極側電極板15に溶接し、正極タブ45を正極側電極板16に溶接する。
【0111】
この後、図17(D)に示すように左右の正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50を互いにスライド移動させながら接近させ、正極タブ45と負極タブ35を側面視Z型に折り畳む。図17(E)に示すように凹部50aの開口側と凹部51aの開口側の位置合わせを行い、凹部50aと凹部51aの間に電極体3を収容する。
この段階で正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50は図8に示す状態と同等となるので、正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50を仮溶着できる。この後、図9図12を基に説明したように加工すると図12に示す接合体58を作製できる。この接合体58を用いて図23図24に示すように加工すると、図1に示す電池1を形成できる。
【0112】
なお、これまで説明した実施形態では、負極側電極板15を第1シーラントフィルム14と第1の樹脂カバー9で挟んでこれらを積層し、正極側電極板16を第2シーラントフィルム25と第2の樹脂カバー8で挟んでこれらを積層した。
しかし、負極側電極板15あるいは正極側電極板16の両側に配置する樹脂カバーやフィルムは特に構成を限定するものではなく、相互に溶着が可能な樹脂材料からなるカバーやフィルムであれば特に構成上の制限はない。
【0113】
「電極体の第3接続例」
図18は電極板とシーラントフィルムおよび樹脂カバーをラミネートフィルムの凹部に収容し、これらに電極体を接続する場合の第3接続例を示す斜視図である。
図18(A)の右側に示すように、凹部50a内に第1シーラントフィルム14を収容し、第1の樹脂カバー9と別の第1シーラントフィルム14を予め溶着したものを凹部50a内に収容し、この後、2枚の第1シーラントフィルム14および負極側電極板15を溶着しても良い。
【0114】
あるいは、図14に示す負極側電極板ユニットU2において、第1の樹脂カバー9に替え、第1シーラントフィルム14を用いて負極側電極板ユニットを構成し、これを負極側ラミネートフィルム50の凹部50aに収容し、溶着しても良い。もしくは、負極側ラミネートフィルム50の凹部50aに第1シーラントフィルム14と負極側電極板15と第1シーラントフィルム14を個別に収容してからそれらを溶着しても良い。
【0115】
図18(A)の左側に示すように、凹部51a内に第2シーラントフィルム25を収容し、第2シーラントフィルム25と正極側電極板16を予め溶着したものを凹部51a内に収容し、第2シーラントフィルム25と第2の樹脂カバー8および第2シーラントフィルム25を溶着しても良い。
あるいは、図13に示す正極側電極板ユニットU1において、第2の樹脂カバー8に替え、第2シーラントフィルム25を用いて正極側電極板ユニットを構成し、これを正極側ラミネートフィルム51の凹部51aに収容し、溶着しても良い。もしくは、負極側ラミネートフィルム50の凹部50aに第2シーラントフィルム25と負極側電極板15と第2シーラントフィルム25を個別に収容してからそれらを溶着しても良い。
【0116】
熱溶着後、正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50を左右に近接配置させ、図18(B)に示すように負極側ラミネートフィルム50を反転して裏返しとする。図18(B)に示すように正極側ラミネートフィルム51の凹部51aの開口部を上向きとし、負極側ラミネートフィルム50の突部50cを上向きとする。
図18(B)に示す状態に反転することで、正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50は後述する工程において凹部50aの開口側と凹部51aの開口側が突き合わせ可能な向きとなる。
次に、図18(C)に示すように左右に隣接した正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50の間に正極タブ45と負極タブ35を左右に拡げた状態の電極体3を配置し、負極タブ35を負極側電極板15に溶接し、正極タブ45を正極側電極板16に溶接する。
【0117】
この後、図18(D)に示すように左右の正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50を互いにスライド移動させながら接近させ、正極タブ45と負極タブ35を折り畳む。図18(E)に示すように凹部50aの開口側と凹部51aの開口側の位置合わせを行い、凹部50aと凹部51aの間に電極体3を収容する。
この段階で正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50は図8に示す状態と同等となるので、正極側ラミネートフィルム51と負極側ラミネートフィルム50を仮溶着できる。この後、図9図12に示すように加工すると図12に示す接合体58の類似構造を作製できる。この接合体を用いて図23図24に示すように加工すると、図1に示す電池1と類似構造の電池を製造できる。
図18に示す製造方法は、図17(A)に示す正極側の樹脂カバー8の代わりに正極側のシーラントフィルム25を用い、図17(A)に示す負極側の樹脂カバー9の代わりに負極側のシーラントフィルム14を用いた製造方法と表現できる。換言すると樹脂カバーをシーラントフィルムと同一材料から構成したと表現できる。
【0118】
「電極体の他の構造例」
図19は、正極体と負極体から構成される電極体の他の例を示すもので、この例の電極体80は、円板状の複数の負極本体81を接続部82を介し接続した帯状の正極体と、円板状の複数の正極本体83を接続部84を介し接続した帯状の負極体を交互につづら折り状に積層した構成の電極体80である。最外層の負極本体81から負極タブ86が延出され、最外層の正極本体83から正極タブ87が延出されている。
【0119】
つづら折り構造の電極体80にあっては、折り畳み状態により、図19に示すように負極タブ86と正極タブ87を延出させることができる。
このような構造の電極体80に対する場合であっても、上述した電極体3を用いた実施形態と同様に側面視Z状に負極タブ86と正極タブ87を折り曲げて配置し、電池を構成することができる。
【符号の説明】
【0120】
1…電池(電気化学セル)、2…外装体、3…電極体、4…収容部、5…封止部、8…第2の樹脂カバー(正極側の樹脂カバー)、8A…溶着層、8a…透孔、8B…基層、9…第1の樹脂カバー(負極側の樹脂カバー)、9A…溶着層、9a…透孔、9B…基層、10…第1容器(負極側容器:外側容器)、11…第1底壁部、12…第1周壁部、13…第1貫通孔、14…第1シーラントフィルム(負極側のシーラントフィルム)、15…負極側電極板、16…正極側電極板、16A…めっき層、20…第2容器(正極側容器;内側容器)、21…第2底壁部、22…第2周壁部、23…折曲部、24…第2貫通孔、25…第2シーラントフィルム(正極側のシーラントフィルム)、26…保護プレート、30…負極体、30A…負極本体、35…負極タブ、35A…第1の負極タブ部、35B…第2の負極タブ部、36…負極側セパレータ層、40…正極体、45…正極タブ、45A…第1の正極タブ部、45B…第2の正極タブ部、46…正極側セパレータ層、50…負極側ラミネートフィルム、50a…凹部、51…正極側ラミネートフィルム、51a…凹部、U1…正極側電極板ユニット、U2…負極側電極板ユニット、60…フィルム素材、61…カバー素材、63…加圧ヘッド、65…プライマー塗布装置、67…塗布ロール、69、70…加圧ローラー、71、72…加熱ローラー、73、74…打ち抜き用のロッド部材、80…電極体、81…負極本体、82…接続部、83…正極本体、84…接続部、86…負極タブ、87…正極タブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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