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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240527BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20240527BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20240527BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G03G21/00 312
G03G15/16 103
G03G21/18 114
G03G15/08 235
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020060759
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021162611
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】戸田 純
(72)【発明者】
【氏名】谷口 仁
(72)【発明者】
【氏名】野口 文朗
(72)【発明者】
【氏名】松下 駿介
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-332301(JP,A)
【文献】特開平03-231789(JP,A)
【文献】特開2009-157310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0179082(US,A1)
【文献】特開平06-337565(JP,A)
【文献】特開平09-230769(JP,A)
【文献】特開平09-244508(JP,A)
【文献】特開平10-254322(JP,A)
【文献】特開平08-328440(JP,A)
【文献】特開2013-178419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
13/08
13/095
13/14-13/16
15/02
15/08
15/095
15/14-15/16
21/00
21/04
21/10-21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラムと、
前記感光ドラムに接触し前記感光ドラム上に現像剤を供給する現像ローラと、
前記感光ドラムに接触し前記感光ドラム上に形成された現像剤像を記録材に転写するための転写ローラと、
前記感光ドラムに接触し前記感光ドラム上に付着した記録材の一部をクリーニングするためのクリーニングローラと、を有し、
前記転写ローラの直径と、前記現像ローラの直径と、前記クリーニングローラの直径の長さは、
前記転写ローラの直径>前記現像ローラの直径、
且つ前記クリーニングローラの直径>前記現像ローラの直径、
を満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像ローラの径は、像担持体の径に対する比が0.467以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像ローラの径は、Φ14mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記感光ドラム、現像ローラ、転写ローラ及びクリーニングローラは、着脱可能な同一カートリッジ内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、静電記録方式、電子写真記録方式等を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、定着の画像形成プロセスにより記録材上に画像を形成する電子写真画像形成装置が知られている。近年、画像形成装置は小型化やトナー消費量低減のため、転写した後にドラム上に残留するトナー(以下「転写残トナー」と称す)を現像容器に戻すタイプの装置構成が用いられている。所謂クリーナーレスタイプの画像形成装置である。しかしながらこの構成は、転写残トナーとともに紙上の細かい紙粉を、現像ローラを介して現像容器中に取り込みやすい。ここで「紙粉」とは、紙由来のパルプ繊維、填料などの微小固形物が紙から脱離したものである。
【0003】
取り込まれた紙粉が現像ローラに一定量以上付着すると画像ムラやポチ等の画像不良が発生したり、トナーに紙粉が付着すると帯電性などに影響し画像かぶり等の画像不良が発生してしまう。以下、紙粉起因の画像不良を「紙粉コンタミ」と称す。これらは、ドラム上に形成したトナー像を紙に直接転写する構成で起きやすい。
【0004】
感光体上の紙粉が少ない場合は、ドラム上の転写残トナーと紙粉を、一時的にクリーニングローラで回収し再び感光体に戻す行程で、クリーニングローラの発泡セル中に紙粉がトラップされることで現像容器中に取り込まれる紙粉量を抑制できた。また、転写ローラが発泡体で構成される場合では、クリーニングローラと同様に転写ローラが紙粉のトラップとして機能して、感光体上の紙粉量の低減に寄与する場合がある。また特許文献1に示すように、クリーニングローラに更に紙粉回収用のローラを当接させ、これに紙粉を分離回収させることで紙粉回収能力の長寿命化を行うことも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-145883
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙粉が発生しやすい紙種を連続通紙されるなど、感光ドラム上の紙粉量が増大してしまい、上記の紙粉を分離し、分離した紙粉を回収するプロセスが間に合わなくなってしまう。この場合、結果として、現像容器に回収される紙粉量が多くなり、紙粉コンタミが発生するおそれがある。即ち、感光ドラム上の紙粉が多い状況でも、簡易な設定で現像ローラへの紙粉付着を抑制し、紙粉起因の画像不良を抑制できる仕組みが要望される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における画像形成装置は、感光ドラムと、前記感光ドラムに接触し前記感光ドラム上に現像剤を供給する現像ローラと、前記感光ドラムに接触し前記感光ドラム上に形成された現像剤像を記録材に転写するための転写ローラと、前記感光ドラムに接触し前記感光ドラム上に付着した記録材の一部をクリーニングするためのクリーニングローラと、を有し、前記転写ローラの直径と、前記現像ローラの直径と、前記クリーニングローラの直径の長さは、前記転写ローラの直径>前記現像ローラの直径、且つ前記クリーニングローラの直径>前記現像ローラの直径、を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
感光ドラム上の紙粉が多い状況でも、簡易な設定で現像ローラへの紙粉付着を抑制し、紙粉起因の画像不良を抑制できる仕組みを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例の画像形成装置の断面を示した概略図
図2】本実施例における転写後のドラム表面を示した概略図
図3】本実施例におけるクリーニング後のドラム表面を示した概略図
図4】紙粉が現像ローラに回収されにくい様子を示した概略図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
<画像形成装置の説明>
図1に電子写真方式の画像形成装置の一例を示す。画像形成装置本体Mには、被帯電体としてのドラム型の像担持体1(以下、ドラムと称す)が配置されている。感光ドラム1(像担持体1)は、Φ30mmで有機光半導体感光層を形成したものであり、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動される。
【0011】
感光ドラム1の表面は、バイアスを印加した帯電部材2により所定の極性・電位に均一に帯電される。帯電後の感光ドラム1表面は、露光手段としてのレーザービームスキャナー3から出力されたレーザビームの走査露光を受けて画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0012】
現像器5の中の現像剤4(以下、トナーと称す)は、供給ローラ9を介して現像ローラ6に供給され、現像ブレード12により層厚が所定層厚に規制される。その後、現像バイアスによる静電気力により、静電潜像が形成された感光ドラム1表面(感光ドラム上)に現像剤が現像されて、感光ドラム1上にトナー像(現像剤像)が形成される。なお、現像剤4としては、例えば一成分の非磁性現像剤や、一成分の磁性現像剤が用いられる。
【0013】
一方、記録材17(以下、転写紙と称す)は、搬送ローラ15を介して搬送され、感光ドラム1と転写ローラ8との間(転写ニップ)に送られ、感光ドラム1から転写紙17の表面にトナー像が転写される。トナー像が、感光ドラム1から転写ローラ8には転写バイアスが印加され、この転写バイアスは正あるいは負の直流電圧が印加されトナー像が転写される。転写バイアスの正負は、トナーの正規極性に依存する。そして、転写紙17は、感光ドラム1から分離されて定着器10に搬送され、ここで転写紙上に転写されたトナー像は定着気10により、加熱・加圧されて転写紙上で定着される。
【0014】
ここで、トナー像の転写後に転写紙17に転写されないでドラム1表面に残った転写残トナー7や、転写紙の表面から剥がれた紙粉16は、回収バイアスを印加されたクリーニングローラ11により感光ドラム1の表面から回収される。
【0015】
クリーニングローラ11上の紙粉16は、紙粉のみを回収するバイアスを印加された紙粉回収ローラ13で分離され、回収容器14内に回収される。クリーニングローラ11上に残った転写残トナー7は、非画像形成時に戻しバイアスをクリーニングローラ11に印加することでドラム1上に転移される。以下、クリーニングローラ11、紙粉回収ローラ13、回収容器14をまとめて紙粉回収機構と呼ぶ。
【0016】
上記のバイアスの極性や大きさは、トナーの帯電性や、露光部にトナーを付着させる反転現像方式、非露光部にトナーを付着させる正規現像方式によって上記の挙動をおこなえるように任意に設定される。一般に紙粉の構成要素である填料やパルプ繊維は、マイナス帯電しやすいネガ極性を示すため、トナーと紙粉の分離のし易さや、感光ドラム1の帯電電位の調整のしやすさから、反対のポジ極性のプラス帯電トナーを用い、反転現像方式を選択することが望ましい。
【0017】
そして、感光ドラム1上に転移された転写残トナー7は、現像ローラ6により回収される。ここで、現像ローラ6、転写ローラ8、クリーニングローラ11は弾性を持ち、感光ドラム1に対して所定の侵入量(変形量)で接触している。
【0018】
以下、課題としている状況と、その解消方法の概略を説明する。
【0019】
紙粉が発生し易い紙種を連続的に通紙した際には、通常よりも多くの紙粉16が感光ドラム1上に付着し、それが紙粉回収機構の紙粉回収能力を超えるケースが発生し得る。最後のトナー像転写が終わった後でも、感光ドラム1上における紙粉過多の状態が解消されない状況が長引くことで紙粉が現像ローラ6に回収されてしまう。なわち、紙粉コンタミが発生する。いったん回収されてしまった紙粉16は排出が困難で、意図的にトナーとともにドラム上に現像するような動作を行わない限り排出できず、画像不良も長引いてしまう。これが課題である。
【0020】
しかしながら、ドラム1に接触している転写ローラ8と現像ローラ6との相対的な紙粉捕集能力には差があり、その差によって、現像ローラ6に回収される紙粉量を抑制できることが発明者の鋭意検討によりわかった。
【0021】
比較的清浄な状態にある転写ローラ8は、有効な「紙粉一時保持機能=紙粉バッファ機能」を持ち、感光ドラム1上紙粉過多状態において、紙粉16を感光ドラム1上から一時的に除去/保持し得る。効果が一時的で、且つ紙粉捕集量の上限があるものの、この転写ローラ8の一時捕集機能が、感光ドラム1から現像ローラ6への紙粉混入を減少させ、紙粉コンタミの発生を大きく抑制できることを見出した。転写ローラ8に一時捕集された紙粉は、後述で説明するように、時間をおいて紙粉回収機構に回収させることができる。
【0022】
相対的に、転写ローラ8の紙粉バッファ機能を増大させ、現像ローラ6による紙粉回収量を減少させることのできる手段は、感光ドラム1と現像ローラ6の接触面積を、感光ドラム1と転写ローラ8との接触面積よりも小さくなるように設定すればよい。円筒弾性体の接触面積を減少(増大)させる手段はいくつかあるが、最も安直な手法は、円筒弾性体の直径(以下、単に「径」と称する)を小さく(大きく)することである。よって、転写残トナーを現像回収し、紙などの転写紙に感光ドラム1上から直接トナー像を転写し、更にクリーニングローラ11などの紙粉回収機構を持つ構成において、転写ローラ8の径に対する現像ローラ6の径を小さく設定することがよい。即ちこの設定が、有効な「紙粉コンタミ」の防止策となる。
【0023】
次に本件実施例の具体的構成を以下に述べる。実施例1-1として、現像ローラ径がφ13.0mm、転写ローラ径がφ14.8mm、クリーニングローラ14.2mmの条件で検討を行った。なお、供給ローラの径はφ13.0mmである。現像ローラ径の対ドラム径比は0.433になる。また、実施例1-2として、実施例1-1の現像ローラ径をφ14.0mm(現像ローラの径≦14mm)とし、他の条件を実施例1-1と同じにした。現像ローラ径の対ドラム径比は0.467になる。比較例1および比較例2として、実施例1-1の現像ローラ径をφ15.0mmとφ18.0mmとし、他の条件を実施例1-1と同じにした。現像ローラ径の対ドラム径比はそれぞれ0.500及び0.600になる。
【0024】
以下、紙粉16の回収状況を、図2乃至4を用いて説明する。感光ドラム1上に形成されたトナー像を、転写ローラ8の転写バイアスにより転写紙上に転写する際、図2に示すように、転写紙上に付着した紙粉16の一部は、感光ドラム1表面に付着してしまう。
【0025】
そして、図3のようにクリーニングローラ11と感光ドラム1の当接領域(以下、回収領域と呼ぶ)を通過する際、感光ドラム1上の紙粉16はクリーニングローラ11で回収される。通常、想定される紙粉量の場合は、その概ね全てがクリーニングローラ11で回収される。しかし、前述した紙粉過多の状態の場合は、ドラム1上の紙粉量に対してクリーニングローラ11で感光ドラム1上の一部の紙粉しか回収できないこととなる。そして、クリーニングローラ11により回収されず、回収領域を通過した紙粉は、図3に示す現像ローラ6と感光ドラム1の当接領域である現像領域に送られる。
【0026】
現像領域に送られた紙粉16は、その少なくとも一部が現像ローラ6上に転移してしまう。転写残トナーを回収する意図を持った装置構成では、転写残トナーの回収とともに紙粉16も取り込まれてしまうことは避けられない。ただし、この紙粉16が帯電されている場合は、現像ローラ6と感光ドラム1間の印加バイアスの向きによって調整できる。特にトナーの正規帯電極性と紙粉16の帯電極性が逆に場合(紙粉16の帯電極性はマイナス傾向にあるので、トナーの極性がプラスであるポジトナーの場合など)は、比較的に紙粉16の転移を抑制できる。しかしながら、電荷をほとんど持たない紙粉16は、上記のようなバイアス調整は利かない。このような紙粉16の現像ローラ上転移は、表1のように現像領域の周方向幅、すなわち現像ニップの幅に依存する。現像ローラ6との接触長さもしくは接触時間が短いほど感光ドラムから現像ローラへの紙粉16の転移を抑制できる。即ち、感光ドラム1から現像ローラ6への紙粉転移率を下げられる。また、現像ニップ幅が短い方が紙粉転移率をより下げられることもわかった。
【0027】
【表1】
【0028】
また、様々な紙粉の中でも、画像ムラやポチ等の原因になりやすいトナーに比べて大きなパルプ繊維などの異物(紙粉)の転移は、感光ドラム1と現像ローラ6の曲率差にも依存する傾向がある。このような長尺状の異物(紙粉)は、曲面を持った部材に当接すると曲率に沿わずに浮き上がり、接触面積が大きくて曲率が少ない(平面に近い)ドラム側に残りやすい。そのため、表2に示すように、画像ムラやポチ等を抑制するため、現像ローラ径/ドラム径の比を0.467以下にすることが望ましい。また、現像ローラ径とドラム径が同じだった時の接触面積を1とした時に、現像ローラ径だけを小さくして、接触面積が下がる割合を接触面積比とすると、接触面積比を0.80以下にすることで画像ムラやポチ等を抑制できることがわかった。
【0029】
【表2】
【0030】
よって、紙粉取り込みを抑制するためにはできるだけ当接時間を短くし、現像ローラの径を小さくすること、すなわち感光ドラム1と現像ローラ6の曲率の差を大きくすることが紙粉取り込みに対して有効な手段である。図4は、紙粉が現像ローラに回収されにくい様子を示した概略図である。紙粉が現像ローラ6に回収されることなく、現像領域を通過した様子が示される。
【0031】
そして、現像領域で現像ローラ6に転移しなった大半の紙粉16は、転写ローラ8とドラム1の接触領域、すなわち転写領域に送られる。転写ローラ8は前述の通り、紙粉一時保持部材=紙粉バッファとして機能する。
【0032】
一般に転写ローラ8は、紙の搬送を確実に行うために、その表面を紙が滑らない程度に荒らされている。表面が発泡部材で構成されているものも多い。感光ドラム1との表面移動速度差が付いていれば、転写ローラ8は物理的に紙粉16を感光ドラム1上から掻き取る能力を潜在的に持っている場合が多い。しかしながら、トナー像を乱すことなく紙上に転写させるために表面移動速度差は、1%以内に設定されているため、感光ドラム1上の異物除去効率は低いまま利用されている。それでも、転写ローラ8は、転写領域を通過する紙粉16の一部を取り除き、その表面に取り除いた紙粉を保持する機能を持っている。
【0033】
そして、転写領域を通過した感光ドラム1上の紙粉16は、再びクリーニングローラ11を含む紙粉回収機構で除去される。まだ、感光ドラム1上の紙粉16の量が多ければ、回収領域を通過し、再び上記の現像ローラ6での紙粉取り込み、転写ローラ8での紙粉取り込み/一時保持を繰り返し、感光ドラム1上の紙粉量が紙粉回収機構の回収能力を下回るまで続くことになる。
【0034】
ここで、注目すべきは、転写ローラ8の紙粉保持量と、現像ローラ6での紙粉取り込みと転写ローラ8での紙粉取り込みの比率である。まず転写ローラ8の紙粉保持量が上限に達しないように、転写ローラ8の保持量を底上げする。そして、転写ローラ8での紙粉取り込みを促進する場合、物理的に感光ドラム1との接触面積を大きくして曲率差を少なくすることが、最も簡易かつ効率的である。その具体的な方策は、転写ローラ8の径を大きくすることである。転写ローラ8の周面の面積は、転写ローラ8の径を大きくした比率の二乗倍になる。例えば径を1割増しにすれば、周面は1.21倍/2割増しになるので、転写ローラ8の紙粉保持量も効率的に増大できる。また、転写ローラ8に紙粉16を引き付けるバイアスを印加することでも、転写ローラ8での紙粉取り込み効率を増大できる。ただし、上記のバイアス印加だけでは紙粉保持量の上限を引き上げることは十分ではなく、帯電していない紙粉16や画像弊害の大きなパルプ繊維の保持は、転写ローラ8の径を大きくすることでしか解決しにくい。転写ローラ8の表面に保持された紙粉は、感光ドラム1上の紙粉過多状態を解消したのちに、従来公知の方法で処理することで、転写ローラ8の表面を清浄な状態に回復できる。例えば、転写ローラ8からドラム1上に紙粉16を転移させるバイアスを印加することでドラム1を介し、クリーニングローラ11を含む紙粉回収機構に回収させる方法などが従来から知られている。
【0035】
まとめると、紙粉回収機構の回収能力を超え、感光ドラム1上が紙粉過多状態になった場合、ドラム1上の紙粉16は紙粉過多状態が解消されるまで、感光ドラム1の回転により、紙粉回収機構、現像ローラ6、転写ローラ8で配分する形で夫々に取り込まれる。紙粉回収機構の回収分を除いた紙粉16の取り込み配分を、相対的に転写ローラ8が多く、現像ローラ6が少なくなるように設定するには、単純に現像ローラ6に対する転写ローラ8の径の比率(径の差)を大きくすればよい。よって、直径の長さにおいて、「転写ローラ径(直径)>現像ローラ径(直径)」となるサイズ設定が選択される。なお、クリーニングローラ11の径も現像ローラ6の径に対して大きい方が望ましいのは、現像ローラ6と転写ローラ8の関係と同様である。つまり直径の長さにおいて「クリーニングローラの径(直径)>前記現像ローラの径(直径)」となるサイズ設定が選択されている。
【0036】
また、転写ローラ8の紙粉保持能力は、長期の使用による汚損で徐々に低下してしまう。このため、他の消耗品(例えば、ドラム1や現像装置)とともに、定期的に交換されることが望ましい。よって、転写ローラ8とドラム1もしくは現像装置と一体化された交換ユニットとして構成されることが望ましい。
【0037】
以上より、各ローラの径と紙粉コンタミのレベルを確認した結果を以下の表にまとめた。下表より、紙粉コンタミの発生を抑制するためには、現像ローラ径は転写ローラ径とクリーニングローラ径よりも小さいことが必要である。
【0038】
【表3】
【0039】
なお、上表のドラム径はΦ30mmで検討を行ったが、現像ローラの径が転写ローラやクリーニングローラよりも小さい条件を前提として、ドラム径が変わっても上記ローラ径の対ドラム比が同じであれば、相似形なので、曲率差に変化はない。その場合、紙粉コンタミの発生レベルは殆ど変わらなかった。よって、現像ローラ径とドラム径の比が重要であり、本実施例のドラム径はΦ30に限定されるものではない。
【0040】
そこで、実際にドラム径がΦ24mmで確認を行った結果を下表に示す。下表より、紙粉コンタミの発生を抑制するためには、現像ローラ径は転写ローラ径とクリーニングローラ径よりも小さく、且つ現像ローラ径の対ドラム径比は0.467以下であれば良いことがわかった。いいかえると、現像ローラの径/像担持体の径≦0.467である。
【0041】
【表4】
【0042】
次に本実施例の検討条件について述べる。前提として紙粉コンタミ、ならびに画像ムラやポチの画像不良が出やすくするため以下の条件で検討を行った。具体的には画像形成の印字パターンは複数の横線が印字されたパターンで、10000枚を連続通紙してドラム上に連続的に紙粉を供給した。紙はキヤノン製Red Label Presentationの80g/m2(A4サイズ、1束500枚)を使用した。
【0043】
上記条件により、転写後のドラム上には転写残トナー1gに対し、紙粉が約20mg存在する状態となった。これは、一般的な普通紙であるXEROX製VitaLityの75g/m2(LETTERサイズ、1束500枚)を使用した場合に比べて、2倍の紙粉が転写後のドラム上に存在する状態である。この状態で紙粉コンタミ、ならびに画像ムラやポチの画像不良が発生するか確認した。
【0044】
また、上記条件はその値に限定されるものではない。つまり、本件は現像ローラ径を小径化(転写ローラやクリーニングローラとの大小関係を維持)して紙粉コンタミ、ならびに画像ムラやポチの画像不良に対して効果があれば、検討条件は上記の値に限定されるものではない。具体的には、各ローラ径の絶対値、現像ニップ幅、プロセススピードに関して上記の値に限定されるものではない。
【実施例2】
【0045】
次に、実施例2は、現像ローラ径が転写ローラ径やクリーニングローラ径よりも小さいことは共通であり、ドラム、現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラが同一プロセスカートリッジ内に配置されているという点だけが異なる。
【0046】
そのため本実施例の記載内容については、実施例1-1とドラム、現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラが同一プロセスカートリッジ内に配置されていること以外は同一の内容であるため、重複部分の記載は省略するものとする。
【0047】
具体的に本実施の形態に係る画像形成装置は、図1のように、クリーニングローラ、転写ローラ、現像器内の現像ローラがドラムに当接しながら、画像形成装置本体に対して着脱交換自在(着脱可能)のプロセスカートリッジを構成している。なお、ここでのプロセスカートリッジは現像ローラを有する現像器(現像ユニット)とドラムを含む転写ローラ、クリーニングローラを有するドラムユニットの2つのユニットが合体した後の状態も含まれる。その理由は2ユニット化でも剛性が上がるためで、特に紙粉付着部である転写ローラがドラムと同じユニット内にあることが重要である。
【0048】
このように本実施例では、ドラムに当接している現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラは同一カートリッジ内(同一プロセスカートリッジ内)に配置されており、上記ローラの位置精度や剛性を向上させている。
【0049】
そのため、現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラが同一のプロセスカートリッジに配置されてない構成よりも紙粉コンタミが良化する。具体的には、画像形成時の駆動による振動を受けると、ローラ間の押圧バラツキや当接位置のずれでドラム上に付着している紙粉量にバラツキが生じる。しかしながら、ドラムに当接している現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラが同一のプロセスカートリッジに配置されているとローラの位置精度や剛性が上がっているのでドラム上の紙粉の付着状態が安定し、下表のように紙粉コンタミが良化する。下表より転写ローラがプロセスカートリッジに無い場合に比べ、転写部でのドラム上の紙粉の付着量が約10%程度改善できていることがわかった。そのため、紙粉クリフリの発生に対するマージンを増やせることが可能となった。
【0050】
【表5】
【実施例3】
【0051】
<比較例に対する本実施例の優位性について>
次に比較例(従来例)に対する本実施例の構成と優位性について表6にまとめたので説明する。
【0052】
【表6】
【0053】
[比較例1、2に対する実施例1の優位な点]
比較例1や2の現像ローラの径は、クリーニングローラや転写ローラよりも径が大きい構成である。この場合、紙粉が多く発生する状況で、クリーニングローラで回収できなかった紙粉は、現像ローラとドラム間のニップ幅が大きいため、ドラムから現像ローラへ紙粉が行きやすい。また、現像ローラに対して転写ローラの径が小さいと紙の搬送性に悪化し、現像ローラに対してクリーニングローラの径が小さいと紙粉の回収しにくくなるという弊害もある。
【0054】
これに対し、実施例1の現像ローラの径はクリーニングローラや転写ローラよりも径が小さい構成(対ドラムの径の比が0.467以下と小さく、Φ14mm以下)である。このため、クリーニングローラで回収できなかった紙粉を、ドラムから現像ローラへ紙粉が行きにくくでき、紙粉コンタミ、画像ムラやポチ等の画像不良を抑制できるというメリットがある。
【0055】
[比較例1、2に対する実施例2、3の優位な点]
比較例の現像ローラの径はクリーニングローラや転写ローラよりも径が大きい構成であり、この場合、紙粉が多く発生する状況で、クリーニングローラで回収できなかった紙粉は、ドラムから現像ローラへ紙粉が行きやすい。
【0056】
これに対し、実施例2、実施例3の現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラにおいては、現像ローラの径が小さく、且つ同一プロセスカートリッジ内に配置されている。これにより、小径化による紙粉付着抑制だけでなく、画像形成駆動時の振動(特に転写部)に対し、剛性が上がることによる振動が抑制されるため、各ローラ当接位置での紙粉の付着を抑制できる。よって、更に紙粉コンタミに対して効果がある。
【0057】
また、比較例1、2に対して上記の各ローラが同一プロセスカートリッジにある場合も確認したが、紙粉コンタミは発生した。よって、本現象に関して、剛性アップの効果は非常に軽微であり、現像ローラ径の小径化が支配的であることがわかった。
【0058】
以上のように、上記実施例によれば、現像ローラの直径を、転写ローラや、クリーニングローラの直径よりも小さくすることで、ドラム上の紙粉を、相対的に転写ローラやクリーニングローラよりも現像ローラに回収されにくくする。これにより、現像ローラ上の紙粉とトナーのコンタミを抑制して、画像ムラやポチ等の画像不良を抑制し、良好な画質をより維持できる。
【符号の説明】
【0059】
M 画像形成装置
1 ドラム
2 一次帯電器
3 レーザー露光
4 トナー
5 プロセスカートリッジ(現像ユニット)
6 記録紙(紙)
7 転写残トナー
8 転写ローラ
9 供給ローラ
10 定着器
11 クリーニングローラ
12 現像ブレード
13 紙粉回収ローラ
14 プロセスカートリッジ(ドラムユニット)
15 搬送ローラ
16 紙粉
図1
図2
図3
図4