(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ワーク姿勢変換装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/00 20060101AFI20240527BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20240527BHJP
B62D 65/10 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B23P19/00 304H
B23P21/00 303C
B62D65/10 A
(21)【出願番号】P 2020061285
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】丸崎 太一
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕義
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-201518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00-21/00
B62D 65/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの姿勢を変換するためのワーク姿勢変換装置であって、
前記ワークを保持する保持装置と、
前記保持装置が前記ワークを保持する状態を切り替え可能な切替装置と、を有し、
前記保持装置は
、前記ワークを載置した状態で、前記ワークと一体的に姿勢を変化可能に構成されており、
前記切替装置が、
前記保持装置
、及び前記保持装置と一体的に姿勢が変化可能な前記ワークの姿勢に応じて、前記保持装置が前記ワークを保持する状態と、前記ワークを解除する状態とに切り替え可能であることを特徴とするワーク姿勢変換装置。
【請求項2】
ワークの姿勢を変換するためのワーク姿勢変換装置であって、
前記ワークを保持する保持装置と、
前記保持装置は、
姿勢を変化可能に構成されると共に、所定の軸線回りに回転可能とされており、
前記ワークを保持する状態を切り替え可能な切替装置と、
基台をなす支持台
と、
前記ワークが積置される支持部と、
前記支持部に対して近接あるいは離反可能とされた押圧部と、
前記押圧部を付勢する付勢部材と、を備え、
前記ワークが前記支持部及び前記押圧部に挟持されて前記保持装置により保持されるものであり、
前記切替装置が、
前記押圧部と連動するように変位可能とされた当接部材と、
前記支持台に対して設けられ、前記当接部材と接触可能なカム部材と、を備え
ると共に、前記保持装置の姿勢に応じて、前記保持装置が前記ワークを保持する状態と、前記ワークを解除する状態とに切り替え可能であり、
前記当接部材が前記カム部材と接触する位置では、前記押圧部が前記付勢部材の付勢力に反して前記支持部から離反して、前記保持装置が前記ワークを解放する状態となり、
前記当接部材が前記カム部材と離反する位置では、前記付勢部材の付勢力により前記押圧部が前記支持部に近接して、前記保持装置が前記ワークを保持する状態となることを特徴とす
るワーク姿勢変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスアクスルケースやエンジンに関する部品等のワークの組み付けや外観チェックの際に、ワークの姿勢を変換するために用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンシリンダ等のワークを搬送しつつ、所定の位置で部品の組み付けや検査等のため、ワークの姿勢を変換することが行われている。また、ワークの姿勢を変換する際、ワーク(エンジンシリンダ等)の後端部に固定した治具部材を介して搬送パレットに位置決め保持するワーク作業装置が用いられている場合がある。
【0003】
このようなワーク作業装置において、その治具部材を搬送パレットから解除した後、反転装置で治具部材を把持しながらワークを反転させ、再び搬送パレットに保持する装置が開示されている。例えば、下記特許文献1には、搬送パレットに積置されたワークを保持してワークの姿勢を上下反転させる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ワークがエンジンブロックやシリンダヘッドなど、上下の面に略平坦な面が形成されているものである場合には、反転装置(反転機)に入ってきたワーク(ブロック、シリンダヘッドなど)は、パレット下面と側面及びワーク上面と側面で押さえることができ、360度の縦回転や横回転をさせ、姿勢を変換することができる。すなわち、エンジンブロックやシリンダヘッドなど、ワークを保持する際の上下の接触場所において平坦面がある場合には、ワークを保持する際の高さ方向が一定となり、押さえのための構造は単純な形状で作成することができる。
【0006】
しかしながら、ワークがトランスミッションケースやトランスアクスルケースなどである場合に従来の反転装置を適用しようとすると、下面はパレット高さが同じである一方、ワークの上面側には多数の起伏が形成されており高さが揃っておらず、従来の押さえ構造を適用することができない。
【0007】
また、反転装置にワークが進入する際に、ワークと反転装置とが接触しないようにする必要があり、ワーク進入時(搬入時)のワークの避けを考慮すると、押さえ箇所が大きく制限されるといった事情もある。そのため、トランスミッションケース等上方面に起伏(凹凸)が形成されているワークでは従来の反転装置を使用することが困難であり、手持ちやワークの吊り下げ、あるいは横回転のみの旋回治具によりワークの姿勢を変換し、外観チェックが行われている。
【0008】
しかしながら、ワークの姿勢変換を手動で行うとすると、ワークを反転させるために反転装置とワーク(又はワークに固定された治具部材)とを固定する作業が必要となり煩わしい。また、アクチュエータなど別の機構を設けてワークを保持及び解除させようとすると、そのための設備を設けるなど設備導入のために高額なコストが発生しかねない。そのため、上方面に起伏があるトランスミッションケースなどのワークについて、安価なコストでワークの保持及び解除を行うことができる姿勢変換装置に対する要望が高かった。
【0009】
そこで本発明は、安価なコストでワークの保持及び解除を行うことができるワーク姿勢変換装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため提供される本発明のワーク姿勢変換装置は、ワークの姿勢を変換するためのワーク姿勢変換装置であって、前記ワークを保持する保持装置と、前記保持装置が前記ワークを保持する状態を切り替え可能な切替装置と、を有し、前記保持装置は姿勢を変化可能に構成されており、前記切替装置が、前記保持装置の姿勢に応じて、前記保持装置が前記ワークを保持する状態と、前記ワークを解除する状態とに切り替え可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明のワーク姿勢変換装置によれば、別途アクチュエータ等を設けることを要さず、保持装置の姿勢に応じてワークの保持及び解放を切り替えることができる。これにより本発明のワーク姿勢変換装置は、例えば、事前にワークを固定する等の煩わしい作業を行うことなく、ワークを反転させるなど姿勢を変換することができる。また、本発明によれば、高額なコストをかけることなくワークの姿勢を切り替えるための機構を構成することができる。
【0012】
より具体的に説明すると、本発明の姿勢変換装置によれば、上面の高が異なるワーク(例えば上面側に起伏を有するトランスアクスルケースなど)を保持装置内(姿勢変換領域内)に進入させた後に、保持装置の姿勢(回転角度など)に応じて、ワークを保持する状態(例えばクランプ状態)とワークを保持しない状態(例えばアンクランプ状態)とに切り替え可能となる。そのため、作業者がクランプ、アンクランプの操作を行うことを要さない。また、ワークをクランプして姿勢を変換することができ、ガタツキを無くすことができる。
【0013】
また、本発明のワーク姿勢変換装置は、基台をなす支持台を備え、前記保持装置が、所定の軸線回りに回転可能とされており、前記ワークが積置される支持部と、前記支持部に対して近接あるいは離反可能とされた押圧部と、前記押圧部を付勢する付勢部材と、を備え、前記ワークが前記支持部及び前記押圧部に挟持されて前記保持装置により保持されるものであり、前記切替装置が、前記押圧部と連動するように変位可能とされた当接部材と、前記支持台に対して設けられ、前記当接部材と接触可能なカム部材と、を備え、前記当接部材が前記カム部材と接触する位置では、前記押圧部が前記付勢部材の付勢力に反して前記支持部から離反して、前記保持装置が前記ワークを解放する状態となり、前記当接部材が前記カム部材と離反する位置では、前記付勢部材の付勢力により前記押圧部が前記支持部に近接して、前記保持装置が前記ワークを保持する状態となるものであるとよい。
【0014】
上述の構成によれば、別途アクチュエータ等を設けることを要さず、保持装置の姿勢に応じてワークの保持及び解放を切り替えることができる。これにより本発明のワーク姿勢変換装置は、作業の煩わしさなく、ワークを反転させるなど姿勢を変換することができる。また、本発明によれば、高額なコストをかけることなくワークの姿勢を切り替えるための機構を構成することができる。
【0015】
ここで、保持装置の枠体を一対の本体フレームにより構成する場合、一方の本体フレームにのみ付勢部材を設けることも可能ではあるが、その場合、押圧部を片側から変位させることとなり、押圧部がワークと離間する位置から接触する位置までのストローク量が大きくなるおそれがある。
【0016】
上述の懸念を払拭するため、本発明のワーク姿勢変換装置は、前記保持装置が、前記保持装置の枠体をなす一対の本体フレームと、前記ワークが積置される支持部と、前記支持部に対して近接あるいは離反可能とされた押圧部と、前記押圧部を付勢する付勢部材と、を備え、前記ワークが前記支持部及び前記押圧部に挟持されて前記保持装置に対して保持されるものであり、前記付勢部材が、前記一対の本体フレームに対してそれぞれ設けられているものであるとよい。
【0017】
上述の構成によれば、ワークを押さえるために押圧部をストロークさせる距離を少なくすることができる。
【0018】
さらに、本発明のワーク姿勢変換装置は、基台をなす支持台を備え、前記保持装置が、前記保持装置の枠体をなす一対の本体フレームを備えており、前記支持台には、前記本体フレームの回転をガイドする回転ガイド部が設けられているものであるとよい。
【0019】
上述の構成によれば、複雑な構造や別途アクチュエータを設けることなく、保持装置及び保持装置に保持されるワークの姿勢を変換することができる。
【0020】
さらに、本発明のワーク姿勢変換装置は、基台をなす支持台を備え、前記保持装置が、所定の軸線回りに回転可能とされており、前記ワークが積置される支持部と、前記支持部に対して近接あるいは離反可能とされた押圧部と、前記押圧部を付勢する付勢部材と、を備え、前記ワークが前記支持部及び前記押圧部に挟持されて前記保持装置に対して保持されるものであり、前記保持装置の回転軸となる軸線が、前記ワークの進入方向に沿うように延びており、前記押圧部が、前記進入方向と交差する方向に変位可能なものであるとよい。
【0021】
本発明のワーク姿勢変換装置によれば、別途アクチュエータ等を設けることを要さず、保持装置の姿勢に応じてワークの保持及び解放を切り替えることができる。これにより本発明のワーク姿勢変換装置は、作業の煩わしさなく、ワークを反転させるなど姿勢を変換することができる。また、本発明によれば、高額なコストをかけることなくワークの姿勢を切り替えるための機構を構成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安価なコストでワークの保持及び解除を行うことができるワーク姿勢変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係るワーク姿勢変換装置の全体を示す図である。(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図2】
図1のワーク姿勢変換装置の保持装置を示す斜視図である。
【
図3】
図1のワーク姿勢変換装置にワークが進入した状態を示す側面図である。(a)は右側面図、(b)は左側面図である。
【
図4】
図3のワーク姿勢変換装置のA2-A2’線で分断した場合の正面図である。
【
図5】
図1のワーク姿勢変換装置のA1-A1’線で分断した場合の平面図である。
【
図6】
図1のワーク姿勢変換装置の保持装置の姿勢と切替装置の配置を示す図である。
【
図7】
図1のワーク姿勢変換装置の押圧部の要部を示す図である。
【
図8】
図1のワーク姿勢変換装置の保持装置及びワークの姿勢の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るワーク姿勢変換装置10について図面を参照しつつ説明する。
【0025】
ワーク姿勢変換装置10は、ワーク1の姿勢を変換するために用いられる。より具体的に説明すると、ワーク姿勢変換装置10は、正立姿勢(下方面2bが下方H2となる姿勢)で搬送されたワーク1を上下反転させるためのものである(
図8参照)。
【0026】
ワーク姿勢変換装置10は、ワーク1を搬送する搬送路4上に設けられている(
図1(b)参照)。なお、以下の説明では、ワーク1の搬送路4における搬送方向を、単に「搬送方向X」又は「奥行き方向X」と記載して説明する場合がある。また、ワーク1の搬送方向Xにおいて、ワーク姿勢変換装置10に進入する方向を、単に「進入方向X1」と記載して説明する場合がある。
【0027】
また、以下の説明では、進入方向X1側からワーク姿勢変換装置10を視認した場合を、ワーク姿勢変換装置10の「正面」として説明する(
図1(a)参照)。
【0028】
さらに、以下の説明では、ワーク姿勢変換装置10の上下方向を、単に「上下方向H」と記載して説明する場合がある。また、上下方向Hにおける上方側を単に「上方H1」と、下方側を単に「下方H2」と記載して説明する場合がある。
【0029】
さらに、以下の説明では、ワーク姿勢変換装置10の正面視における幅方向(搬送路4の幅方向)を、単に「幅方向W」と記載して説明する場合がある。
【0030】
本実施形態のワーク姿勢変換装置10の対象とされたワーク1は、例えば、トランスアクスルケースなどが挙げられる。
図3及び
図4に示すとおり、ワーク1(トランスアクスルケース)は、車両に搭載された状態において、下方となる面(下方面2b)に略平坦となる面が形成されており、上方となる面(上方面2a)には、ボス部2c,2d等の凸状に形成された部分や凹状に形成された部分等の起伏が形成されている。また、
図4に示すとおり、ワーク1は、パレット3等に積載された状態で搬送される。
【0031】
図1(a)及び
図1(b)に示すとおり、ワーク姿勢変換装置10は、支持台20、保持装置30、切替装置60、及び回転ガイド部24を備えている。
【0032】
支持台20は、ワーク姿勢変換装置10の基台をなしている。
図4に示すとおり、支持台20には、一対の回転ガイド部24、及び切替装置60を構成するカムブロック62(カム部)が設けられている。
【0033】
回転ガイド部24は、後述する本体フレーム32の回転をガイドするために設けられている。
図3(a)に示すとおり、一対の回転ガイド部24は、一対の本体フレーム32に対応するように搬送方向Xに離間して配置されている。回転ガイド部24は、環状の枠をなす本体フレーム32をガイドしつつ支持可能とされている。
【0034】
カムブロック62(カム部)は、切替装置60を構成している。
図3(a)に示すとおり、カムブロック62は、一対の回転ガイド部24に対応するように搬送方向Xに離間して設けられている。
【0035】
保持装置30は、ワーク1を保持しつつワーク1に姿勢を変換するために設けられている。
図3(a)及び
図4に示すとおり、保持装置30は、一対の本体フレーム32、ハンドル部34、支持部40、押圧装置50、及び付勢部材58を備えている。また、押圧装置50には、切替装置60をなす当接ローラ64(当接部材)が取り付けられている。
【0036】
本体フレーム32は、保持装置30の枠体をなしている。
図4に示すとおり、本体フレーム32は、正面視において、略円形の外形とされており、環状の枠をなしている。
図2に示すとおり、保持装置30には本体フレーム32が一対設けられており、一対の本体フレーム32は支持台20の奥行き方向(搬送方向X)に沿って離間するように配置されている。
【0037】
図3(a)に示すとおり、一対の本体フレーム32は、支持部40により連結された状態で、それぞれ回転ガイド部24に回転可能に支持されている。これにより、ワーク姿勢変換装置10は、保持装置30を一体的に回転させ、姿勢を変化可能としている。なお、
図2に示すとおり、本体フレーム32は、回転軸となる軸線Lが、進入方向X1(搬送方向X)に沿って延びている。すなわち、保持装置30は、搬送方向Xに沿うように延びる軸線L回りに回転可能とされている。
【0038】
支持部40は、ワーク姿勢変換装置10に進入したワーク1を積置するために設けられている。
図3(a)及び
図5に示すとおり、支持部40にはレール部42が設けられている。
図4に示すとおり、支持部40(レール部42)は、パレット3の幅方向Wの長さと略一致する幅方向の距離D1を備えている。支持部40は、パレット3に積置された状態で搬送路4から進入したワーク1を、レール部42が設けられた上下方向Hの位置(支持位置Pb1)で保持する。
【0039】
また、
図3(a)に示すとおり、支持部40(レール部42)は、一対の本体フレーム32の一方から他方に亘るように設けられており、一対の本体フレーム32を連結するように設けられている。別の観点から説明すれば、支持部40は、本体フレーム32に対して変位しない構成とされている(固定されている)。
【0040】
押圧装置50は、支持部40に対して変位可能に設けられており、本体フレーム32に対して取り付けられている。
図4に示すとおり、押圧装置50は、変位フレーム52、押圧部56a,56b、及び付勢部材58を備えている。
【0041】
押圧装置50は、変位フレーム52が付勢部材58により付勢された状態で本体フレーム32に取り付けられている。また、押圧部56a,56bは変位フレーム52に取り付けられている。すなわち、押圧部56a,56bは、変位フレーム52が本体フレーム32に対して位置を変化させるのに連動して、本体フレーム32に対する位置を変化させる。
【0042】
変位フレーム52は、押圧部56a,56bの位置を変化させるために設けられている。
図4に示すとおり、変位フレーム52は、ワーク姿勢変換装置10にワーク1が進入した状態において、ワーク1の上下左右を取り囲むような枠をなしている。
【0043】
図2に示すとおり、変位フレーム52には、奥行き方向Xに延びる連結フレーム54a,54bが設けられている。
図2及び
図4に示すとおり、連結フレーム54aと連結フレーム54bとは、幅方向Wに離間するように設けられている。
【0044】
付勢部材58は、変位フレーム52を付勢するために設けられている。付勢部材58は、変位フレーム52を支持部40に近接する方向に付勢している。付勢部材58は、変位フレーム52の搬送方向Xの両側に取り付けられている。すなわち、付勢部材58は、一対の本体フレーム32にそれぞれ対応するように設けられており、押圧装置50(変位フレーム52)を保持装置30の奥行き方向Xの両側から付勢している。なお、以下の説明では、付勢部材58の付勢力が働く方向を、単に「付勢方向F」と記載して説明する場合がある。
【0045】
押圧部56a,56bは、ワーク1を上方H1から支持部40に向けて押圧してワーク1を挟持するために設けられている。
図4に示すとおり、押圧部56a,56bは、連結フレーム54a,54b(変位フレーム52)に対して取り付けられている。すなわち、押圧部56a,56bは、変位フレーム52の位置変化に伴って、支持部40に対して近接あるいは離反可能とされている。
【0046】
図3(b)及び
図7(b-1)に示すとおり、押圧部56aは、ワーク1において最も高い位置にあるボス部2cに対応している。また、
図3(a)及び
図7(a-1)に示すとおり、押圧部56bは、ボス部2dに対応している。
【0047】
図4に示すとおり、押圧装置50の変位フレーム52には、付勢部材58及び切替装置60を構成する当接ローラ64(当接部材)が取り付けられている。当接ローラ64は、押圧装置50(変位フレーム52)と一体的に変位するように取り付けられている。
【0048】
後で
図6(b)を用いて説明するとおり、ワーク姿勢変換装置10に進入したワーク1は、下方面2b側を支持部40により支持され、上方面2a側が押圧部56a,56bにより押圧されて、保持装置30により保持(ロック)された状態(保持状態)となる。すなわち、ワーク1は、支持部40及び押圧部56a,56bに挟持されて保持装置30により保持される。
【0049】
切替装置60は、保持装置30がワーク1を保持する状態(ロック状態)と解放する状態(アンロック状態)とを切り替えるために設けられている。本実施形態の切替装置60は、当接ローラ64(当接部材)及びカムブロック62(カム部材)により構成されている。
【0050】
上述のとおり、当接ローラ64は、押圧装置50に対して取り付けられている(
図4等参照)。また、カムブロック62は、支持台20に取り付けられている(
図4等参照)。当接ローラ64は、保持装置30(本体フレーム32)の回転軌道に従って位置を変化させ、所定の位置においてカムブロック62に乗り上げる。
【0051】
<ワーク姿勢変換装置の動作について>
次に、ワーク姿勢変換装置10の動作について図面を参照しつつ説明する。
【0052】
なお、以下の説明では、ワーク姿勢変換装置10の正面視において、保持装置30の時計回りの回転を「正回転」と記載して説明する。さらに、保持装置30の回転角度(姿勢)について、当接ローラ64が最下方に位置している状態(当接ローラ64がカムブロック62の中央に乗り上げている状態)を「回転角度が0度」又は「待機位置Pa1」として記載して説明する。
【0053】
図6(a)に示すとおり、回転角度0度(待機位置Pa1)の状態では、当接ローラ64がカムブロック62に乗り上げて、押圧部56a,56bが付勢部材58の付勢力に反して持ち上げられた状態となる(
図6(a)中の矢印E1参照)。すなわち、回転角度0度(待機位置Pa1)の状態では、支持部40のパレット3が積置される位置(支持位置Pb1)から押圧部56aまでの離間距離(受入範囲R)が、拡大された状態(距離D3)となる。別の言い方をすれば、保持装置30が待機位置Pa1にあるときは、カムブロック62の高さD2分、押圧部56a,56bが上方H1に押し上げられて、受入範囲Rが拡張する。
【0054】
図6(b)に示すとおり、回転角度0度から、保持装置30が回転ガイド部24にガイドされつつ正方向に所定角度(例えば15~20度)回転すると、当接ローラ64がカムブロック62から離反する位置(保持位置Pa2)に到達する。そうすると、当接ローラ64及び押圧部56a,56bは、付勢部材58の付勢力により、支持部40に近接する方向(付勢方向F)に変位する(
図6(b)中の矢印E2参照)。
【0055】
また、保持装置30(当接ローラ64)が保持位置Pa2となると、変位フレーム52が付勢方向Fに変位するのに伴って押圧部56a,56bが支持部40(レール部42)に近接するように変位して、ワーク1の上方面2aに形成されたボス部2c,2dを押圧する(
図7(a-2)、及び
図7(b-2)参照)。
【0056】
これにより、保持装置30がワーク1の下方面2b側及び上方面2a側の双方から挟持した状態となり、ワーク1が保持装置30により保持される。
【0057】
このように、ワーク姿勢変換装置10では、当接ローラ64がカムブロック62に接触して乗り上げる位置(待機位置Pa1)となると、押圧部56a,56bが付勢部材58の付勢力に反して支持部40から離反してワーク1を解放する状態(アンロック状態)となる。言い方を換えれば、保持装置30が待機位置Pa1となっていると、当接ローラ64とカムブロック62との接触により付勢部材58の付勢力が制限されて、支持部40と押圧部56a,56bとが離反する。これにより、ワーク姿勢変換装置10は、保持装置30が待機位置Pa1となっている場合(回転角度0度の場合)に、ワーク1と保持装置30とが接触しないように受入範囲Rの離間距離を確保することができる(
図8(a)参照)。
【0058】
また、ワーク姿勢変換装置10では、保持装置30が所定角度以上回転して、当接ローラ64がカムブロック62から離反する位置(保持位置Pa2)となると、押圧部56a,56bが付勢部材58の付勢力により支持部40に近接してワーク1を保持する状態となる(
図8(b)参照)。すなわち、ワーク1が傾くように保持装置30が所定角度(例えば15~20度)回転すると、自動的にワーク1が保持装置30にクランプされる。
【0059】
図8(c)に示すとおり、保持装置30にワーク1を保持させた状態で、保持装置30(本体フレーム32)を回転させて(例えば正方向に180度)、ワーク1の姿勢を正立姿勢から逆向きの姿勢へと反転させて変換することができる。
【0060】
このように、ワーク姿勢変換装置10によれば、別途アクチュエータ等を設けることを要さず、保持装置30の姿勢(回転角度)に応じてワーク1の保持及び解放を切り替えることができる。これによりワーク姿勢変換装置10は、作業の煩わしさなく、ワーク1を反転させるなど姿勢を変換することができる。また、ワーク姿勢変換装置10によれば、高額なコストをかけることなくワーク1の姿勢を切り替えるための機構を構成することができる。
【0061】
より具体的に説明すると、ワーク姿勢変換装置10によれば、上方面2aの高が異なるワーク1(例えば上方面2a側に起伏を有するトランスアクスルケースなど)を保持装置30内(姿勢変換領域内)に進入させた後に、保持装置30の姿勢(回転角度)に応じて、ワーク1を保持する状態(クランプ状態)とワーク1を保持しない状態(アンクランプ状態)とに切り替え可能となる。そのため、作業者がクランプ、アンクランプの操作を行うことを要さない。また、ワークをクランプして姿勢を変換することができ、ガタツキを無くすことができる。
【0062】
また、上述のとおり、本実施形態のワーク姿勢変換装置10では、一対の本体フレーム32のそれぞれに対応するように付勢部材58が設けられている。これにより、ワーク1を押さえるために押圧装置50をストロークさせる距離を少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、ワークの姿勢を変換するための装置として、好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ワーク
10 ワーク姿勢変換装置
20 支持台
24 回転ガイド部
30 保持装置
32 本体フレーム
40 支持部
42 レール部
50 押圧装置
52 変位フレーム
56a 押圧部
56b 押圧部
58 付勢部材
60 切替装置
62 カムブロック
64 当接ローラ
L 軸線
Pa1 待機位置
Pa2 保持位置
X 搬送方向
X1 進入方向