(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】吊り天秤及び吊り天秤を用いた施工方法
(51)【国際特許分類】
B66C 1/10 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
B66C1/10 A
(21)【出願番号】P 2020064229
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】松井 友香
(72)【発明者】
【氏名】仁部 数典
(72)【発明者】
【氏名】南野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 孝
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
(72)【発明者】
【氏名】藤浪 南夏子
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09790058(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第112010157(CN,A)
【文献】特開平06-212802(JP,A)
【文献】特開平07-291572(JP,A)
【文献】実開昭52-066060(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り上げ装置に掛け止めされたスリング部材によって重量物を吊り上げる際に用いられ、前記スリング部材の吊り位置を保持するための吊り天秤であって、
水平方向において所定の間隔を空けて設けられ、互いに対向しながら延びている一対の長尺部材と、
該長尺部材の延出方向において所定の間隔を空けて設けられ、前記一対の長尺部材を連結するとともに、一方の長尺部材に対して他方の長尺部材を水平回転可能となるように取り付けられる一対の連結部材と、を備えており、
前記長尺部材及び前記連結部材の一方には、前記スリング部材を取り付けるためのスリング取り付け部が形成され、
前記吊り天秤は、
前記スリング部材の吊り位置を保持するために、前記一対の長尺部材と前記一対の連結部材とで枠状に展開された展開位置と、
該展開位置から、前記一方の長尺部材に対して前記他方の長尺部材を水平回転させることで、該他方の長尺部材を前記一方の長尺部材側に折り畳んだ折り畳み位置との間で切り替え可能であ
り、
前記連結部材は、前記一対の長尺部材にそれぞれ設けられた連結穴を貫通するように延びており、
前記連結部材において前記一方の長尺部材を貫通した一端部には、前記連結部材の延出方向とは交差方向に屈曲して延びている第1屈曲部が形成され、
前記連結部材において前記他方の長尺部材を貫通した他端部には、前記連結部材の延出方向とは交差方向に屈曲し、かつ、前記第1屈曲部の延出方向とは反対側に延びている第2屈曲部が形成されていることを特徴とする吊り天秤。
【請求項2】
前記吊り天秤は、前記重量物となる内装ユニットを吊り上げる際に用いられ、
前記スリング取り付け部は、前記長尺部材の延出方向において前記一対の連結部材が連結された部分よりも外側に位置する両端部分に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の吊り天秤。
【請求項3】
前記連結部材は、前記一対の長尺部材に対して前記連結部材の延出方向に沿った軸周りに回動可能となるように取り付けられ、
前記吊り天秤が前記展開位置にいるときに、前記一対の連結部材が前記軸周りにおいて互いに異なる回動位置に配置されることで、前記吊り天秤が枠状のまま固定され、
前記吊り天秤が前記展開位置にいるときに、前記一対の連結部材が前記軸周りにおいて同じ回動位置に配置されることで、前記吊り天秤が折り畳み可能となることを特徴とする請求項
1又は2に記載の吊り天秤。
【請求項4】
前記連結部材の延出方向において前記第1屈曲部及び前記第2屈曲部よりも外側に位置する両端部には、前記連結穴よりも幅広となるように形成された抜け防止部が形成されていることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の吊り天秤。
【請求項5】
前記連結部材の延出方向において前記一方の長尺部材に設けられた前記連結穴よりも内側に位置する一端部分には、該一端部分の外側面から前記第1屈曲部の屈曲方向と同じ向きに突出する第1突起部が形成され、
前記連結部材の延出方向において前記他方の長尺部材に設けられた前記連結穴よりも内側に位置する他端部分には、該他端部分の外側面から前記第2屈曲部の屈曲方向と同じ向きに突出する第2突起部が形成されていることを特徴とする請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の吊り天秤。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の吊り天秤を用いた施工方法であって、
重量物となる内装ユニットを組み立てるユニット組み立て工程と、
組み立てられた前記内装ユニットを施工現場へ搬入するユニット搬入工程と、
搬入された前記内装ユニットを前記吊り上げ装置に掛け止めされた前記スリング部材によって吊り上げるユニット吊り上げ工程と、
吊り上げられた前記内装ユニットを建物の躯体内部に設置するユニット設置工程と、を含み、
前記ユニット吊り上げ工程では、枠状に展開された前記吊り天秤によって前記スリング部材の吊り位置を保持することを特徴とする吊り天秤を用いた施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り天秤及び吊り天秤を用いた施工方法に係り、特に、吊り上げ装置に掛け止めされたスリング部材によって重量物を吊り上げる際に用いられる吊り天秤及び吊り天秤を用いた施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、施工現場での施工作業を効率化すべく、重量物となる内装ユニット(例えばユニットバス)を工場で予め組み立てておき、組み立てられた内装ユニットを施工現場へ搬入し、搬入された内装ユニットを吊り上げ装置に掛け止めされたスリングによって吊り上げて、吊り上げられた内装ユニットを建物の躯体内部の所定位置にそのまま据え付ける施工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このとき、上記内装ユニットを吊り上げる工程では、内装ユニットが大型な重量物であることから、吊り上げ時にスリングが内装ユニット側に食い込んでしまい、内装ユニットの変形や損傷を起こすことがある。そのため、スリングの内装ユニット側への食い込みを抑制すべく、スリングの吊り位置を保持する枠状の吊り天秤が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のユニットバスの搬送、据え付け方法では、ユニットバスの吊り上げ姿勢を保持するために、吊り上げフックとユニットバスの上下方向の間に矩形枠状の吊り天秤が設けられており、当該吊り天秤は、シャックルを介してスリングと連結されている。
また、特許文献2に記載の揚重装置では、2組の対辺が共に平行である四角形をなし、かつ、内角が変形可能に構成された枠状の吊り天秤が開示されている。詳しく述べると、当該吊り天秤は、内角が全て直角である矩形状態と、2組の対角のうちの1組が鋭角で1組が鈍角である平行四辺形の状態とに変形可能に構成されている。そのため、搬入時には吊り天秤を平行四辺形の状態に変形させることで、荷台への積み込み作業を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-269890号公報
【文献】特開2016-55939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2のような吊り天秤において、重量物の搬入時や吊り上げ時においては好適に機能させることができ、不使用時にはコンパクトに収納することが可能な吊り天秤が求められていた。
特に、重量物となる内装ユニット(例えば、ユニットバス)を吊り上げる際に用いられ、シンプルな構成で、スリング部材の吊り位置を好適に保持することが可能な吊り天秤が求められていた。
なお、特許文献2の吊り天秤では、吊り天秤の状態を変形させることができるものの、吊り対象物の搬入時と吊り上げ時の場面を想定して使い分けるものであった。
【0006】
また、工場(施工現場以外の場所)で予め組み立てられた内装ユニットを建物の躯体内部に好適に設置することが可能な吊り天秤を用いた施工方法が求められていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、吊り上げ装置によって重量物を吊り上げる際に用いられ、当該重量物の吊り上げ時には好適に機能させることができ、不使用時にはコンパクトに収納することが可能な吊り天秤及び吊り天秤を用いた施工方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、内装ユニットを吊り上げる際に用いられ、シンプルな構成で、スリング部材の吊り位置を好適に保持することが可能な吊り天秤及び吊り天秤を用いた施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の吊り天秤によれば、吊り上げ装置に掛け止めされたスリング部材によって重量物を吊り上げる際に用いられ、前記スリング部材の吊り位置を保持するための吊り天秤であって、水平方向において所定の間隔を空けて設けられ、互いに対向しながら延びている一対の長尺部材と、該長尺部材の延出方向において所定の間隔を空けて設けられ、前記一対の長尺部材を連結するとともに、一方の長尺部材に対して他方の長尺部材を水平回転可能となるように取り付けられる一対の連結部材と、を備えており、前記長尺部材及び前記連結部材の一方には、前記スリング部材を取り付けるためのスリング取り付け部が形成され、前記吊り天秤は、前記スリング部材の吊り位置を保持するために、前記一対の長尺部材と前記一対の連結部材とで枠状に展開された展開位置と、該展開位置から、前記一方の長尺部材に対して前記他方の長尺部材を水平回転させることで、該他方の長尺部材を前記一方の長尺部材側に折り畳んだ折り畳み位置との間で切り替え可能であり、前記連結部材は、前記一対の長尺部材にそれぞれ設けられた連結穴を貫通するように延びており、前記連結部材において前記一方の長尺部材を貫通した一端部には、前記連結部材の延出方向とは交差方向に屈曲して延びている第1屈曲部が形成され、前記連結部材において前記他方の長尺部材を貫通した他端部には、前記連結部材の延出方向とは交差方向に屈曲し、かつ、前記第1屈曲部の延出方向とは反対側に延びている第2屈曲部が形成されていること、により解決される。
上記構成により、重量物の吊り上げ時には好適に機能させることができ、不使用時にはコンパクトに収納することが可能な吊り天秤を実現することができる。
詳しく述べると、上記吊り天秤であれば、重量物を吊り上げる際には枠状に展開された「展開位置」とし、収納する際には折り畳まれた「折り畳み位置」に切り替えることができる。
また、一対の連結部材が、一方の長尺部材に対して他方の長尺部材を(一方向に)水平回転可能となるように取り付けられており、従来の吊り天秤のように全体が回動可能な構成とはなっていない。そのため、重量物を吊り上げるときには、枠状に展開した吊り天秤が歪みにくい(折り畳まれにくい)設計となっている。
また上記構成により、吊り天秤を折り畳むときには、長尺部材の連結穴が第1屈曲部、第2屈曲部に沿って移動することで、長尺部材を一方向に水平回転させることができる。
すなわち、シンプルな構成で、吊り天秤が「展開位置」と「折り畳み位置」の間で切り替え回転することができる。
【0009】
このとき、前記吊り天秤は、前記重量物となる内装ユニットを吊り上げる際に用いられ、前記スリング取り付け部は、前記長尺部材の延出方向において前記一対の連結部材が連結された部分よりも外側に位置する両端部分に配置されていると良い。
上記構成により、内装ユニットを吊り上げる際に用いられ、かつ、シンプルな構成で、スリング部材の吊り位置を好適に保持することができる。
【0011】
このとき、前記連結部材は、前記一対の長尺部材に対して前記連結部材の延出方向に沿った軸周りに回動可能となるように取り付けられ、前記吊り天秤が前記展開位置にいるときに、前記一対の連結部材が前記軸周りにおいて互いに異なる回動位置に配置されることで、前記吊り天秤が枠状のまま固定され、前記吊り天秤が前記展開位置にいるときに、前記一対の連結部材が前記軸周りにおいて同じ回動位置に配置されることで、前記吊り天秤が折り畳み可能となると良い。
上記構成により、シンプルな構成で、吊り上げ時には、吊り天秤を枠状のまま固定し易くすることができ、かつ、折り畳むときには、吊り天秤を容易に折り畳み回転させることができる。
【0012】
このとき、前記連結部材の延出方向において前記第1屈曲部及び前記第2屈曲部よりも外側に位置する両端部には、前記連結穴よりも幅広となるように形成された抜け防止部が形成されていると良い。
上記構成により、長尺部材及び連結部材が一体的に連結されるため、吊り上げ時には好適に機能させることができ、不使用時にはコンパクトに収納することができる。また、吊り天秤を管理し易くなる。
【0013】
このとき、前記連結部材の延出方向において前記一方の長尺部材に設けられた前記連結穴よりも内側に位置する一端部分には、該一端部分の外側面から前記第1屈曲部の屈曲方向と同じ向きに突出する第1突起部が形成され、前記連結部材の延出方向において前記他方の長尺部材に設けられた前記連結穴よりも内側に位置する他端部分には、該他端部分の外側面から前記第2屈曲部の屈曲方向と同じ向きに突出する第2突起部が形成されていると良い。
上記構成により、上記抜け防止部の機能と同様に、長尺部材及び連結部材が一体的に連結されるため、吊り上げ時には、吊り天秤を枠状のまま固定し易くすることができる。
また、上記第1突起部、第2突起部の突出量を調整することで、吊り天秤の折り畳み角度を調整することができる。
【0014】
また前記課題は、上記吊り天秤を用いた施工方法であって、重量物となる内装ユニットを組み立てるユニット組み立て工程と、組み立てられた前記内装ユニットを施工現場へ搬入するユニット搬入工程と、搬入された前記内装ユニットを前記吊り上げ装置に掛け止めされた前記スリング部材によって吊り上げるユニット吊り上げ工程と、吊り上げられた前記内装ユニットを建物の躯体内部に設置するユニット設置工程と、を含み、前記ユニット吊り上げ工程では、枠状に展開された前記吊り天秤によって前記スリング部材の吊り位置を保持することを特徴とする吊り天秤を用いた施工方法によっても解決される。
上記構成により、工場で予め組み立てられた内装ユニットを建物の躯体内部に好適に設置することが可能な吊り天秤を用いた施工方法を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吊り天秤及び吊り天秤を用いた施工方法によれば、吊り上げ装置によって重量物を吊り上げる際に用いられ、当該重量物の吊り上げ時には好適に機能させることができ、不使用時にはコンパクトに収納することが可能となる。
また、特に内装ユニットを吊り上げる際に用いられ、シンプルな構成で、スリング部材の吊り位置を好適に保持することが可能となる。
また、工場で予め組み立てられた内装ユニットを建物の躯体内部に好適に設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の施工システムSを示す図であって、吊り天秤及び吊り治具を用いて内装ユニットを吊り上げた状態を示す説明図である。
【
図2】施工システムSを示す図であって、移動用治具を用いて内装ユニットを仮置きした状態を示す説明図である。
【
図3】
図1の要部拡大図であって、スリング部材及び吊り天秤を示す斜視図である。
【
図4】
図1の要部拡大図であって、スリング部材、ベルト部材及び内装ユニットを示す斜視図である。
【
図5】
図1の要部拡大図であって、スリング部材、吊り治具及び内装ユニットを示す斜視図である。
【
図6】
図2の要部拡大図であって、移動用治具及び内装ユニットを示す斜視図である。
【
図7】吊り天秤が「展開位置」にあって固定された状態を示す平面図である。
【
図8】吊り天秤の斜視図であって、長尺部材と連結部材が連結された部分の要部拡大図である。
【
図9A】吊り天秤が「展開位置」にあって折り畳み可能な状態を示す平面図である。
【
図9B】吊り天秤が「展開位置」から「折り畳み位置」へ水平回転している状態を示す平面図である。
【
図9C】吊り天秤が「折り畳み位置」にある状態を示す平面図である。
【
図12】吊り天秤を用いた施工方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について
図1-
図12を参照して説明する。
本実施形態は、吊り上げ装置に掛け止めされたスリング部材によって内装ユニットを吊り上げる際に用いられ、スリング部材の吊り位置を保持するための吊り天秤であって、水平方向において間隔を空けて設けられ、互いに対向しながら延びている一対の長尺部材と、長尺部材の延出方向において間隔を空けて設けられ、一対の長尺部材を連結するとともに、一方の長尺部材に対して他方の長尺部材を水平回転可能に取り付けられる一対の連結部材と、を備えており、吊り天秤は、スリング部材の吊り位置を保持するために、一対の長尺部材と一対の連結部材とで枠状に展開された「展開位置」と、吊り天秤を収納するために、展開位置から一方の長尺部材に対して他方の連結部材を水平回転させることで、他方の連結部材を一方の長尺部材側に折り畳んだ「折り畳み位置」との間で切り替え可能であることを特徴とする「吊り天秤」の発明に関するものである。また、「吊り天秤を用いた施工方法」の発明に関するものである。
【0018】
本実施形態の吊り天秤100を含む施工システムSは、
図1-
図6に示すように、施工現場での組立作業及び設置作業を効率化すべく、工場で予め組み立てられた内装ユニットUを吊り上げ装置Lによって吊り上げて、建物の躯体内部の所定位置にそのまま据え付けるために用いられる施工システムである。
詳しく述べると、施工システムSでは、吊り上げ装置Lによって内装ユニットUを吊り上げる際にそれぞれ用いられ、吊り上げ装置Lに掛け止めされたスリング部材1と、スリング部材1の吊り位置を保持するための吊り天秤100及び吊り治具200と、を備えている。また、吊り上げられた内装ユニットUを建物内部に床から浮かせた状態で仮置きする際に用いられ、かつ、仮置きされた内装ユニットUを建物内部の所定位置まで移動させる際にも用いられる移動用治具300をさらに備えている。
【0019】
内装ユニットUは、
図1、
図5、
図6に示すように、建物内部に設置される各種設備をユニット化し、そのまま据え付け可能となるように組み立てられたものであって、ユニットバス、ユニットトイレ、ユニットキッチン等の各種ユニット品を含むものである。
内装ユニットUは、箱状のユニット本体U1と、ユニット本体U1の底面に取り付けられる矩形枠状のベースフレームU2と、ベースフレームU2の底面から下方に突出している複数の脚部材U3と、から主に構成されている。
内装ユニットUは、工場から施工現場へ搬入する工程から建物内部に設置する工程までの間、シート状のユニットカバーU4によって上方から被覆されている。
【0020】
ベースフレームU2は、断面四角形状の長尺な角パイプ部材から形成されており、建物の躯体上に内装ユニットUを据え付けるためのフレーム部材である。
また、ベースフレームU2は、内装ユニットUを床上で移動させるときに移動用治具300を取り付けるための部材としても機能する。
脚部材U3は、上下方向に延びている軸状の脚部材であって、建物内部の床パネル上に接着剤を用いて固定される部材である。
また、脚部材U3は、内装ユニットUを吊り上げるときに吊り治具200を取り付けるための部材としても機能する。
ユニットカバーU4は、
図1に示すように、防水性を有する養生カバーであって、ユニットカバーU4の幅方向の一端面には、内装ユニットUを取り出し可能にするためのカバー開閉部U4aが形成されている。カバー開閉部U4aは、線状ファスナーによって開閉可能に構成されている。
【0021】
スリング部材1は、
図1-
図5に示すように、ナイロン製の長尺なベルトスリングであって、吊り上げ装置Lの吊り上げ部L1に一端が掛け止めされ、他端が吊り天秤100に取り付けられる吊りスリング10と、吊り天秤100に上端が掛け止めされ、下端が吊り治具200に取り付けられる支持スリング20と、から主に構成されている。
吊りスリング10、支持スリング20の長尺方向の両端部には、それぞれ環状の環状部11、12、環状部21、22が形成されており、吊りスリング10の中央部には、環状のべろ部23が別途取り付けられている。
【0022】
詳しく述べると、吊りスリング10の環状部11は、公知なシャックルを介して吊り上げ部L1に掛け止めされており、環状部12は、吊り天秤100の四隅に設けられたスリング取り付け部112に直接取り付けられている。
支持スリング20の環状部21は、公知なシャックルを介して吊り天秤100の四隅に設けられたスリング取り付け穴114に掛け止めされており、環状部22は、内装ユニットUの脚部材U3に吊り治具200を介して取り付けられている。
支持スリング20のべろ部23は、ユニット本体U1を囲むように延びている胴ベルト30を挿通させて、当該胴ベルト30を支持する部分である。
なお、胴ベルト30は、ユニット本体U1の外側面に沿って延びているナイロン製の長尺ベルトであって、吊り上げ時に内装ユニットUの転倒を防止する機能を果たす。
【0023】
施工システムSでは、
図1に示すように、内装ユニットUを吊り上げるために、長尺な4本の吊りスリング10と、4本の支持スリング20とが用いられている。
4本の吊りスリング10が、吊り上げ部L1から吊り天秤100の四隅に向かってそれぞれ延びており、矩形枠状の吊り天秤100を吊り上げている。
また、4本の支持スリング20が、吊り天秤100の四隅から内装ユニットUを挟み込むように下方に延びて、内装ユニットUの下端部の四隅に設けられた吊り治具200にそれぞれ取り付けられている。
上記構成によって、内装ユニットUが吊りスリング10、支持スリング20、胴ベルト30によって保持された上で、吊り上げ装置Lによって吊り上げられることになる。
【0024】
吊り天秤100は、
図1、
図3に示すように、スリング部材1の内装ユニットU側への食い込みを抑制し、スリング部材1の吊り位置を保持する部材であって、上下方向において吊り上げ部L1と内装ユニットUの間に配置されている。
吊り天秤100は、
図9A-
図9Cに示すように、スリング部材1の吊り位置を保持するために、矩形枠状に展開された「展開位置」と、吊り天秤100を収納するために、「展開位置」から折り畳まれた「折り畳み位置」との間で切り替え可能となっている。
そのため、内装ユニットUの吊り上げ時にはスリング部材1の吊り位置を保持し、不使用時にはコンパクトに収納することができる。
【0025】
吊り天秤100は、
図7、
図8に示すように、水平方向において所定の間隔を空けて設けられ、互いに対向しながら延びている一対の長尺部材110と、長尺部材110の延出方向において所定の間隔を空けて設けられ、一対の長尺部材110を連結する一対の連結部材120と、から主に構成されている。
一対の連結部材120は、一方の長尺部材110Aに対して他方の長尺部材110Bを水平回転可能となるように取り付けられている。
【0026】
長尺部材110は、角パイプ部材が加工された長尺体からなり、枠状に展開された吊り天秤100の2辺を構成する部材である。
長尺部材110は、長尺に延びている断面四角形状の本体部111と、本体部111の延出方向の両端部からそれぞれ外側に突出し、吊りスリング10を取り付けるためのT字形状のスリング取り付け部112と、から主に構成されている。
詳しく述べると、スリング取り付け部112は、
図9に示すように、本体部111の延出端部から本体部111の延出方向に沿って突出している第1突出部112aと、第1突出部112aの突出端部から連続して、第1突出部112aの突出方向とは交差する方向において互いに反対側に突出している一対の第2突出部112bと、を有している。
【0027】
スリング取り付け部112(第1突出部112a)の外側面には、連結部材120を連結するための連結穴113と、長尺部材110の延出方向において連結穴113よりも外側に設けられ、支持スリング20を掛け止めるためのスリング取り付け穴114とがそれぞれ形成されている。
【0028】
連結部材120は、軸部材が加工された長尺体からなり、枠状に展開された吊り天秤100の残りの2辺を構成する部材である。
連結部材120は、長尺に延びている軸状の本体部121と、本体部121の延出方向の両端部からそれぞれ連続して、連結部材120の延出方向とは交差する方向に屈曲して延びている第1屈曲部122及び第2屈曲部123と、から主に構成されている。
第1屈曲部122と第2屈曲部123は、連結部材120の延出方向とは交差する方向において互いに反対側に延びており、それぞれ長尺部材110(連結穴113)を貫通している。
【0029】
連結部材120の延出方向において第1屈曲部122及び第2屈曲部123よりも外側に位置する両端部には、連結穴113よりも幅広となるように形成された板状の抜け防止部124がそれぞれ形成されている。
抜け防止部124は、長尺部材110から連結部材120が抜けることを防止する機能を果たし、また内装ユニットUを吊り上げるときに吊りスリング10(環状部12)を内側から支持する機能を果たす。
【0030】
連結部材120の延出方向において一方の長尺部材110Aに設けられた連結穴113よりも内側に位置する一端部分には、当該一端部分の外側面から第1屈曲部122の屈曲方向と同じ向きに突出する第1突起部125が形成されている。
また、連結部材120の延出方向において他方の長尺部材110Bに設けられた連結穴113よりも内側に位置する他端部分には、当該他端部分の外側面から第2屈曲部123の屈曲方向と同じ向きに突出する第2突起部126が成されている。
すなわち、第1突起部125と第2突起部126は、互いに反対側に突出している。
第1突起部125、第2突起部126は、吊り天秤100が
図7に示す「展開位置」にいるときに、これら突起部125、126の外側面と、長尺部材110の内側面とがそれぞれ当接することで、吊り天秤100の形状を保持する機能を果たす。
また、吊り天秤100が
図9Cに示す「折り畳み位置」にいるときに、これら突起部125、126の突出面と、長尺部材110の内側面とがそれぞれ当接することで、吊り天秤100の折り畳み形状を保持する機能を果たす。
【0031】
上記構成において、
図9A-
図9Cに示すように、吊り天秤100は、一対の長尺部材110と一対の連結部材120とで矩形枠状に展開された「展開位置」と、「展開位置」から一方の長尺部材110Aに対して他方の長尺部材110Bを水平回転させることで、他方の長尺部材110Bを一方の長尺部材110A側に折り畳んだ「折り畳み位置」との間で切り替え可能となっている。
詳しく述べると、連結部材120A、120Bの第1屈曲部122が、長尺部材110Aの連結穴113に沿って移動し、かつ、連結部材120A、120Bの第2屈曲部123が、長尺部材110Bの連結穴113に沿って移動することで、長尺部材110Bを一方向に水平回転させることができる。
【0032】
また上記構成において、連結部材120は、一対の長尺部材110に対して連結部材120の延出方向に沿った軸周りに回動可能となるように取り付けられている。
そのため、吊り天秤100が「展開位置」にいるときに、一対の連結部材120が上記軸周りにおいて互いに異なる回動位置に配置されることで、吊り天秤100が枠状のまま固定される。
例えば、
図7、
図8に示すように、一方の連結部材120Aが、第1屈曲部122及び第2屈曲部123を上下方向に向かせた回動位置に配置され、かつ、他方の連結部材120Bが、第1屈曲部122及び第2屈曲部123を水平方向に向かせた回動位置に配置されることで、吊り天秤100が水平回転することができず、枠状のまま固定されることになる。
【0033】
また上記構成において、吊り天秤100が「展開位置」にいるときに、一対の連結部材120が軸周りにおいて同じ回動位置に配置されることで、吊り天秤100が折り畳み可能となる。
例えば、
図9Aに示すように、一方の連結部材120Aが、第1屈曲部122及び第2屈曲部123を水平方向に向かせた回動位置に配置され、かつ、他方の連結部材120Bが、第1屈曲部122及び第2屈曲部123を水平方向に向かせた回動位置に配置されることで、吊り天秤100が水平回転することができ、折り畳むことが可能となる。
【0034】
吊り治具200は、
図1、
図5に示すように、スリング部材1(支持スリング20)の内装ユニットU側への食い込みを抑制し、スリング部材1の吊り位置を保持する部材であって、内装ユニットUの下端部における四隅に配置されている。
詳しく述べると、吊り治具200は、支持スリング20の吊り位置を保持するために、内装ユニットUの脚部材U3に側方から掛け止めされ、脚部材U3から内装ユニットUの外側に向かって側方に突出した位置で支持スリング20(環状部22)と連結されている。
【0035】
吊り治具200は、
図10に示すように、複数の板状部材を繋ぎ合わせて加工された部材となっている。
吊り治具200は、長尺に延びている治具本体部210と、治具本体部210の長さ方向の一端部に設けられ、脚部材U3に対して着脱可能に掛け止めされる掛け止め部220と、治具本体部210の他端部に設けられ、支持スリング20(環状部22)を取り付けるためのスリング取り付け部230と、治具本体部210の上面に設けられ、弾性を有する第1弾性部材240及び第2弾性部材250と、から主に構成されている。
【0036】
治具本体部210は、
図10に示すように、上下方向に所定の間隔を空けて形成され、吊り治具200の長尺方向に延びている上壁部211及び底壁部212と、上下方向に延びて、上壁部211及び底壁部212を連結する連結壁部213と、上壁部211の延出方向の他端部から、上壁部211から離れるように上方に傾斜しながら突出している突出壁部214と、から主に構成されている。
【0037】
上壁部211と底壁部212は、互いに対向しながら延びており、連結壁部213は、上壁部211の幅方向の中央部分と、底壁部212の中央部分とを連結している。
上壁部211、底壁部212それぞれのうち、連結壁部213が連結された部分と異なる位置には、掛け止め部220が形成されている。
上壁部211のうち、連結壁部213が連結された部分の上面には、第1弾性部材240及び第2弾性部材250が並ぶように取り付けられている。
【0038】
突出壁部214は、上壁部211、底壁部212及び連結壁部213それぞれの他端部を連結し、上方に傾斜しながら突出している第1突出壁部214aと、第1突出壁部214aの突出端部から連続して上方に屈曲し、真上(ほぼ真上)に突出している第2突出壁部214bと、を有している。
突出壁部214のうち、第2突出壁部214bの側面には、スリング取り付け部230が形成されている。
【0039】
掛け止め部220は、
図10に示すように、略L字形状の掛け止め溝であって、上壁部211の一端部に形成された第1掛け止め部220Aと、底壁部212の一端部に形成された第2掛け止め部220Bと、を有している。
第1掛け止め部220Aと第2掛け止め部220Bは上面視で互いに重なる位置に配置されている。また、脚部材U3の形状(やや先細り形状)に対応させて、第1掛け止め部220Aは、第2掛け止め部220Bよりも幅広の溝となるように形成されている。
【0040】
掛け止め部220A、220Bは、治具本体部210の幅方向の一端部から他端部側へ向かって切り欠かれた第1溝部221と、第1溝部221から連続して形成され、治具本体部210の長さ方向においてスリング取り付け部230側とは反対側に向かって切り欠かれた第2溝部222と、を有している。
掛け止め部220A、220Bは、第1溝部221から第2溝部222へ脚部材U3を導き入れることで、脚部材U3に対して着脱可能に掛け止めされる。
【0041】
第2掛け止め部220Bの開口部の周辺部分には、当該開口部を閉じた状態にする「閉鎖位置」と、当該開口部を開いた状態にする「開口位置」の間で移動する移動部材223が取り付けられている。
移動部材223は、掛け止め部220に掛け止めされた脚部材U3が掛け止め部220から抜けることを防止するための抜け防止部材である。
【0042】
詳しく述べると、移動部材223は、底壁部212の上面において第2掛け止め部220Bの開口部に近接した位置に取り付けられ、上下方向に延びている回動軸223aと、底壁部212に対して回動軸223aを中心として「閉鎖位置」と「開口位置」の間で水平方向に回動するフック状の移動フック223bと、回動軸223aの外周面に巻き付けられ、移動フック223bを「開口位置」側から「閉鎖位置」側へ付勢する付勢バネ223cと、を有している。
移動フック223bは、「閉鎖位置」にいるときに、第2掛け止め部220B(第1溝部221)の開口部を跨ぐように配置されている。
また、移動フック223bは、「開口位置」にいるときに、脚部材U3を第1溝部221の開口部から第2溝部222の延出端部へ導き入れる経路を形成するように、第2溝部222側へ寄らせて配置されている。
【0043】
スリング取り付け部230は、
図10に示すように、支持スリング20(環状部22)を公知なシャックルを介して取り付けるための取り付け穴であって、第1掛け止め部220A及び第2掛け止め部220Bよりも上方位置に配置されている。
また、スリング取り付け部230は、第1弾性部材240及び第2弾性部材250よりも上方位置に配置されている。
【0044】
第1弾性部材240、第2弾性部材250は、直方体形状のクッション材であって、内装ユニットUの吊り上げ時にベースフレームU2と接触した場合であっても、吊り治具200の揺動を抑制するための部材である。
第1弾性部材240、第2弾性部材250は、治具本体部210から上面に接着剤で取り付けられており、治具本体部210から上方に突出している。
【0045】
第1弾性部材240は、治具本体部210の長さ方向において掛け止め部220側に配置されており、第2弾性部材250は、スリング取り付け部230側に配置されている。
また、第2弾性部材250は、第1弾性部材240よりも大きく、第1弾性部材240よりも上方に突出している。
そのため、第1弾性部材240、第2弾性部材250は、各種内装ユニットUのベースフレームU2の形状に対応して、内装ユニットUの吊り上げ時にベースフレームU2と接触させることが可能となっている。
【0046】
上記構成により、吊り上げ時に内装ユニットUに対して吊り治具200が接触する場合があったとしても、内装ユニットUの変形や損傷を抑制することができる。また、吊り治具200が揺動し、スリング部材1の吊り姿勢が不安定になることを抑制できる。
【0047】
移動用治具300は、
図2、
図6に示すように、内装ユニットUを床から浮かせた状態で仮置きする際に用いられ、かつ、内装ユニットUを床上で移動させる際にも用いられる治具であって、内装ユニットUの下端部における四隅に配置されている。
詳しく述べると、移動用治具300は、内装ユニットUのベースフレームU2に対して着脱可能に取り付けられ、脚部材U3を床Fからやや浮かせた状態で内装ユニットUを保持したまま移動することができ、また、ジャッキのように内装ユニットUの高さ位置を調整することができる。
【0048】
移動用治具300は、
図11に示すように、移動用治具300の本体となる本体部310と、本体部310よりも下方位置に設けられ、床上を移動するためのキャスター部320と、本体部310よりも上方位置に設けられ、内装ユニットUのベースフレームU2を側方から保持するための保持部330と、本体部310と保持部330を連結し、本体部310に対して保持部330の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられる高さ調整部材340と、から主に構成されている。
【0049】
本体部310は、三角形状のプレート体からなる本体プレートであって、水平な平面を有している。
本体部310の上面には、本体部310の中央部分に形成され、高さ調整部材340を組み付けるための組み付け穴311と、本体部310の角部に形成され、キャスター部320を取り付けるための取り付け穴312と、保持部330と上下方向で重なる部分に形成され、保持部330との干渉を避けるための逃げ穴313とがそれぞれ形成されている。
逃げ穴313は、保持部330の外形に対応させて形成された略矩形状の切り欠き穴である。
【0050】
キャスター部320は、自在に向きを変えて回転可能な球状の回転体であって、本体部310において高さ調整部材340を囲むように複数設けられている。
詳しく述べると、キャスター部320は、平面視において高さ調整部材340から略等しい間隔を空けて3つ配置されており、第1キャスター部320Aと、第2キャスター部320Bと、第3キャスター部320Cと、を有している。
【0051】
キャスター部320は、本体部310の取り付け穴312を貫通して軸支され、上下方向に延びているキャスター軸321と、本体部310に対してキャスター軸321を中心として水平方向に回動可能なキャスター本体322と、キャスター本体322を貫通して軸支され、キャスター軸321とは直交方向に延びている車軸323と、キャスター本体322に対して車軸323を中心として回動可能な球状の車輪324と、から主に構成されている。
上記構成により、移動用治具300は、キャスター部320を旋回させながら回転させることで床上を自在に移動することができる。
【0052】
保持部330は、
図6、
図11に示すように、板状部材をC字形状に折り曲げて形成されており、内装ユニットUのベースフレームU2を上下方向で挟み込むように保持する部分である。
保持部330は、互いに隣り合う第1キャスター部320A及び第2キャスター部320Bの間に配置されており、かつ、平面視において第1キャスター部320Aと第2キャスター部320Bを結ぶ仮想線の延長上に配置されている。
また、保持部330は、本体部310の中央部分に対して第3キャスター部320C側とは反対側の位置に配置され、かつ、本体部310の中央部分と第3キャスター部320Cを結ぶ仮想線の延長上に配置されている。
【0053】
保持部330は、高さ調整部材340の外側面に取り付けられ、移動用治具300の高さ方向とは直交する方向に延びている側壁部331と、側壁部331の上端部及び下端部からそれぞれ高さ調整部材340側とは反対側に突出している上壁部332及び底壁部333と、を有している。
保持部330は、上壁部332及び底壁部333によって、内装ユニットUのベースフレームU2を上下方向で挟み込むように保持する。
【0054】
保持部330において上壁部332、底壁部333それぞれの上面には、上下方向に貫通した締結穴334、335が形成されており、締結穴334と締結穴335は、上面視で互いに重なる位置に配置されている。
保持部330がベースフレームU2を挟み込んだときに、保持部330の締結穴335と、ベースフレームU2に設けられた締結穴とが連通した状態で締結ボルトが下方から締結されることで、移動用治具300がベースフレームU2に取り付けられる。
あるいは、締結穴334と、ベースフレームU2に設けられた締結穴とが連通した状態で締結ボルトが上方から締結されることで、移動用治具300がベースフレームU2に取り付けられる。
【0055】
高さ調整部材340は、
図11に示すように、本体部310の底面に設けられた固定ナット341と、本体部310(組み付け穴311)を貫通して固定ナット341に固定され、上下方向に長尺な固定ボルト342と、固定ボルト342に対して螺合される高さ調整ナット343と、固定ボルト342に取り付けられ、高さ調整ナット343の螺合位置を調整することで、高さ位置を変更可能に移動する移動ブラケット344と、固定ボルト342の上端に取り付けられ、移動ブラケット344の移動を規制する規制ナット345と、から主に構成されている。
【0056】
移動ブラケット344は、固定ボルト342を挿通させた状態で、上下方向において高さ調整ナット343と規制ナット345の間に配置されており、高さ調整ナット343によって下方から支持されている。すなわち、高さ調整ナット343の上面に当接している。
詳しく述べると、移動ブラケット344は、高さ調整ナット343及び規制ナット345の間に配置され、固定ボルト342を挿通可能な第1中空部344aと、規制ナット345及び本体部310の間に配置され、固定ボルト342を挿通可能な第2中空部344bと、第1中空部344a及び第2中空部344bの外側面に取り付けられ、保持部330を取り付けるための連結部344cと、を有している。
【0057】
上記構成において、固定ボルト342に対する高さ調整ナット343の螺合位置を調整することで、移動ブラケット344が、高さ調整ナット343の螺合位置に応じた高さ位置に移動することができる。その結果、移動ブラケット344に取り付けられた保持部330が昇降することができる。
【0058】
上記構成により、移動用治具300は、内装ユニットUのベースフレームU2に対して着脱可能に取り付けられ、脚部材U3を床Fからやや浮かせた状態で内装ユニットUを保持したまま移動することができ、また、ジャッキのように内装ユニットUの高さ位置を調整することができる。
【0059】
<吊り天秤を用いた施工方法>
次に、吊り天秤100、吊り治具200、移動用治具300を用いた内装ユニットUの施工方法について、
図12に基づいて説明する。
まずは、作業者(例えば、メーカー施工者)が、内装ユニットUを事前に組み立てる「ユニット組み立て工程」(ステップS1)から始まる。
【0060】
その後、作業者が、組み立てられた内装ユニットUを施工現場へ搬入する「ユニット搬入工程」を行う(ステップS2)。
このとき、内装ユニットUは、ユニットカバーU4によって被覆され、胴ベルト30を巻き付けた状態でトラックによって搬入される。
【0061】
その後、作業者が、搬入された内装ユニットUを吊り上げ装置Lに掛け止めされたスリング部材1によって吊り上げる「ユニット吊り上げ工程」を行う(ステップS3)。
詳しく述べると、ユニット吊り上げ工程では、
図1に示すように、枠状に展開された吊り天秤100によって吊りスリング10及び支持スリング20の吊り位置を保持することと(ステップS3-1)、内装ユニットUの脚部材U3に対して吊り治具200(掛け止め部220)を掛け止めすることと(ステップS3-2)、支持スリング20の下端部に対して吊り治具200(スリング取り付け部230)を取り付けることと(ステップS3-3)、を行った上で、内装ユニットUを吊り上げる(ステップS3-4)。
なお、ステップS3-1からステップS3-3までの作業については、いずれの順番で行われても良い。
【0062】
その後、作業者が、吊り上げられた内装ユニットUを建物の躯体内部に床から浮かせた状態で仮置きする「ユニット仮置き工程」を行う(ステップS4)。
詳しく述べると、ユニット仮置き工程では、
図2に示すように、内装ユニットUのベースフレームU2に対して移動用治具300を複数取り付けることと(ステップS4-1)、内装ユニットUを床から浮かせた状態で仮置きすることと(ステップS4-2)、内装ユニットUから吊り治具200を取り外すことと(ステップS4-3)、を行う。
なお、仮置きされた内装ユニットUは、例えば、工事の進捗状況に応じて所定の間、建物内部の別の位置に保管される。あるいは、内装ユニットUのメーカー施工者が到着するまでの間、建物内部の別の位置に保管される。
【0063】
その後、作業者が、仮置きされた内装ユニットUを躯体内部の所定位置まで移動させる「ユニット移動工程」を行う(ステップS5)。
詳しく述べると、ユニット移動工程では、建物の躯体内部の所定位置まで内装ユニットUを移動させることと(ステップS5-1)、内装ユニットUから移動用治具300を取り外すことと(ステップS5-2)、を行う。
なお、
図2に示すように、建物の躯体内部にある床F(パネル床F)の上面には、躯体に対し床Fを固定するための固定用穴F1が所定の間隔を空けて形成されている。そうすると、移動用治具300のキャスター部320が固定用穴F1内部に落下する虞がある。そのため、移動用治具300が固定用穴F1に落下する場合を想定して、移動用治具300が3つのキャスター部320を備えている。
【0064】
その後、作業者が、内装ユニットUを躯体内部の所定位置に設置する「ユニット設置工程」を行う(ステップS6)。
詳しく述べると、内装ユニットUの高さ合わせ及び位置調整を行い、内装ユニットUの脚部材U3を床F上に接着剤を用いて固定し、内装ユニットUの配管作業を行う。
上記ステップS6の工程を終えて、一連の作業工程を終了する。
【0065】
上記施工方法であれば、工場で予め組み立てられた内装ユニットUを建物の躯体内部に好適に設置することが可能な施工方法を実現することができる。
特に、吊り天秤100を用いることで、スリング部材1の吊り位置を好適に保持することができ、内装ユニットUを安定して吊り上げることができる。
【0066】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図1に示すように、吊り天秤100は、内装ユニットUを吊り上げる際に用いられるが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、箱状の重量物を吊り上げる際に用いられても良いし、重量物以外の吊り対象物を吊り上げる際に用いられても良い。
【0067】
上記実施形態では、
図3に示すように、長尺部材110の延出方向の両端部においてスリング取り付け部112(スリング取り付け穴114)が形成されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、スリング取り付け部112が、連結部材120の延出方向の両端部にそれぞれ形成されていても良い。
また例えば、スリング取り付け部112が長尺部材110の中央部分に形成され、スリング取り付け穴114が連結部材120の中央部分に形成されていても良い。
なお、
図3に示す本実施形態であれば、吊りスリング10(環状部12)が、長尺部材110の延出方向において連結部材120と、支持スリング20(シャックル付き環状部21)との間に挟み込まれている。そのため、吊りスリング10及び支持スリング20が吊り天秤100から外れてしまうことを防止できる。
【0068】
上記実施形態では、
図9Aに示すように、吊り天秤100が「展開位置」にいるときに矩形枠状に展開されており、長尺部材110と連結部材120とのなす角度(展開角度)が略90度となっている。また、
図9Cに示すように、吊り天秤100が「折り畳み位置」にいるときに、長尺部材110と連結部材120とのなす角度(折り畳み角度)が略15度となっているところ、展開角度及び折り畳み角度について特に限定されることなく変更可能である。
例えば、長尺部材110と連結部材120とのなす展開角度が60~90度、好ましくは、75~90度に設定されていると良い。また、折り畳み角度が0~45度、好ましくは0~30度に設定されていると良い。
上記のように設定されることで、吊り上げ時にはより好適に機能させることができ、不使用時にはよりコンパクトに収納可能な吊り天秤100を実現できる。
【0069】
上記実施形態では、
図7に示すように、連結部材120が、抜け防止部124と、第1突起部125(第2突起部126)とを有しているが、特に限定されることなく、どちらか一方を有していれば良い。
すなわち、第1突起部125(第2突起部126)が、抜け防止部124と同様に、長尺部材110から連結部材120が抜けることを防止する機能を果たすため、例えば抜け防止部124を不要の構成としても良い。
【0070】
上記実施形態では、主として本発明に係る吊り天秤及び吊り天秤を備えた施工方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
S 施工システム
U 内装ユニット
U1 ユニット本体
U2 ベースフレーム
U3 脚部材
U4 ユニットカバー
U4a カバー開閉部
1 スリング部材
10 吊りスリング
11、12 環状部
20 支持スリング
21、22 環状部
23 べろ部
30 胴ベルト
100 吊り天秤
110(110A、110B) 長尺部材
111 本体部
112 スリング取り付け部
112a 第1突出部
112b 第2突出部
113 連結穴
114 スリング取り付け穴
120(120A、120B) 連結部材
121 本体部
122 第1屈曲部
123 第2屈曲部
124 抜け防止部
125 第1突起部
126 第2突起部
200 吊り治具
210 治具本体部
211 上壁部
212 底壁部
213 連結壁部
214 突出壁部
214a 第1突出壁部
214b 第2突出壁部
220 掛け止め部
220A 第1掛け止め部
220B 第2掛け止め部
221 第1溝部
222 第2溝部
223 移動部材
223a 回動軸
223b 移動フック
223c 付勢バネ
230 スリング取り付け部
240 第1弾性部材
250 第2弾性部材
300 移動用治具
310 本体部
311 組み付け穴
312 取り付け穴
313 逃げ穴
320 キャスター部
320A 第1キャスター部
320B 第2キャスター部
320C 第3キャスター部
321 キャスター軸
322 キャスター本体
323 車軸
324 車輪
330 保持部
331 側壁部
332 上壁部
333 底壁部
334、335 締結穴
340 高さ調整部材
341 固定ナット
342 固定ボルト
343 高さ調整ナット
344 移動ブラケット
344a 第1中空部
344b 第2中空部
344c 連結部
345 規制ナット
L 吊り上げ装置
L1 吊り上げ部
F 床(パネル床)
F1 固定用穴