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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20240527BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/097 365
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020074474
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021173774
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】北村 伸
(72)【発明者】
【氏名】石上 恒
(72)【発明者】
【氏名】菅原 庸好
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】細井 一人
(72)【発明者】
【氏名】大山 一成
(72)【発明者】
【氏名】辻本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】佐野 仁思
(72)【発明者】
【氏名】西村 悠
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-118310(JP,A)
【文献】特開平08-087127(JP,A)
【文献】特開2002-012657(JP,A)
【文献】特開2000-122341(JP,A)
【文献】特開2003-215834(JP,A)
【文献】特開平07-064330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂として下記一般式(1)で表されるシリコーンユニットを有する変性ポリエステルを含有し、脂肪酸金属塩を含むトナーであって、前記脂肪酸金属塩の脂肪酸の炭素数が8以上28以下であることを特徴とするトナー。
【化1】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素、メチル基または、フェニル基を表す。nは10以上80以下の数を表す。)
【請求項2】
前記脂肪酸金属塩は、該脂肪酸金属塩の金属の価数が2価以上である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記脂肪酸金属塩の前記金属がカルシウムである請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記脂肪酸金属塩は前記結着樹脂100質量部に対し0.5質量部以上10質量部以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記トナーは、結着樹脂100質量部あたり、結晶性ポリエステルを1.0質量部以上10質量部以下含有する請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記変性ポリエステルは、シリコーンユニットを0.5質量%以上5質量%以下含有する請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記シリコーンユニットは、前記一般式〔1〕中、R1およびR2がいずれもメチル基である請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記結着樹脂中、前記変性ポリエステルの含有割合が50質量%以上である請求項1~7のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項9】
前記結着樹脂が前記変性ポリエステルのみを含有している請求項8に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、及び静電記録法などに用いられる静電荷像を現像するためのトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法を用いた画像形成装置は、高速化、高信頼性がより厳しく追及されてきている。例えば、グラフィックデザインのような高細密画像のプリント、さらには、より信頼性が要求される軽印刷(パソコンによる文書の編集からコピー、製本までの多品種少量印刷が可能なプリント・オン・デマンド用途)向けに画像形成装置は使われはじめている。
さらに、トナーが使用される環境は多様化しており、様々な環境下で使用された場合でも、長期に渡って安定した画像を提供できるトナーが求められている。
軽印刷用途では、薄紙に高印字比率で両面印字する機会が増える。また、高速印字に対応するためにトナーは低温定着化され、且つ記録紙は短時間で大量に印刷、積載される。このような場合、記録紙上の熱定着されたトナーが冷却される時間が短い為、積み重なった記録紙上のトナーが固着して、出力された記録紙同士が接着する現象が発生することがある。
この現象は、「排紙接着」と呼ばれる。これは、トナーが溶融定着後に十分冷却されず軟化した状態のままのところに、別の出力された記録紙上の画像(トナー)部分が重なるために生じる現象である。高印字比率で両面印字した場合、記録紙上の広範囲に渡ってトナーが存在することになり、出力された記録紙同士で画像(トナー)部分が重なる面積が増えるため、排紙接着がより発生しやすくなる。
また、このような現象は高温高湿環境下において生じやすくなる。高温高湿環境下では、画像形成装置の周辺雰囲気の温湿度が高いため、定着器を通過したあとの記録紙が冷却されにくく、記録紙上のトナーが軟化した状態のままで存在する時間が長くなる。そのため、別の出力された記録紙上の画像(トナー)部分が重なったときに、排紙接着がより発生しやすくなる。このように、電子写真法を用いた画像形成装置を、軽印刷用途に使用する場合には、排紙接着は大きな問題となってくる。
排紙接着を抑制するためには、画像を形成するトナー層が高温時において高い粘度を有し、高い離形性を有することが求められる。
特許文献1には、低温定着性向上のためトナー中に結晶性ポリエステルを用いる技術が開示されている。
特許文献2には、トナーの結着樹脂組成物を架橋させ高温時の粘度を上昇させる技術が開示されている。
特許文献3には、シリコーン樹脂をグラフトしたポリエステル樹脂を含有するトナーを用いることで、離型性を向上させたトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-120554号公報
【文献】特開2012-173322号公報
【文献】特開平8-87127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2、3に記載されたトナーは、高温高湿環境下で、写真画像のような高印字比率の印字物を、両面かつ短い紙間隔で排紙し、大量に積載した場合においても、排紙接着が抑制されるという要求を十分に満たすとはいえない。本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、低温定着性に優れ、かつ、排紙接着性が抑制された画像を出力しうるトナーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、結着樹脂として下記一般式()で表されるシリコーンユニットを有する変性ポリエステルを含有し、脂肪酸金属塩を含むトナーであって、前記脂肪酸金属塩の脂肪酸の炭素数が8以上28以下であることを特徴とするトナーに関する。
【0006】
【化1】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素、メチル基または、フェニル基を表す。nは10以上80以下の数を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高温高湿環境下で、写真画像のような高印字比率の印字物を、両面かつ短い紙間隔で排紙し、大量に積載した場合においても、排紙接着が抑制された画像を出力しうるトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0009】
また、モノマーユニットとは、ポリマー又は樹脂中のモノマー物質の反応した形態をいう。
【0010】
本発明者らは、低温定着性と耐排紙接着性の更なる向上を目的として鋭意検討した。その結果、下記一般式(1)で表されるシリコーンユニットを有する変性ポリエステルを含有する結着樹脂と脂肪酸金属塩を含有するトナーを用いることで、従来にない優れた低温定着性と耐排紙接着性が得られることを見出した。
【0011】
【化2】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素、メチル基または、フェニル基を表す。nは10以上80以下の数を表す。)
【0012】
上記構成により、従来にない優れた効果を得られた理由は明確ではないが、以下のように考えている。
【0013】
低極性のシリコーンユニット部は、ポリエステル樹脂などの極性基を有する結着樹脂中において、互いに集合しやすく偏在する傾向にある。シリコーンユニットが偏在した部分は結着樹脂をトナーとして粒子化する際に界面となりやすく、トナー粒子の内部に対しトナー粒子の表面にシリコーンユニットが相対的に高密度に存在した状態となる。また、脂肪酸金属塩の炭素鎖部分はシリコーンユニットと親和性が高いため、結着樹脂中においてシリコーンユニットの偏在部に集まりやすい。よって、シリコーンユニットと脂肪酸金属塩はトナー表面に優先的に配置されることとなる。このシリコーンユニットと脂肪酸金属塩の偏在状態は、定着時の熱履歴を経ることでさらに顕著化され、シリコーンユニットと脂肪酸金属塩が定着画像表層付近に高い割合で存在することとなる。
【0014】
ポリエステル樹脂が有するカルボン酸同士は脂肪酸金属塩を介して架橋を生じる。しかし、上記理由により、その架橋点がトナー表面さらには定着画像表面に選択的に存在するため、低温定着性を阻害することなく、定着画像表面において、ポリエステル樹脂の架橋効果およびシリコーン樹脂による高離形性による、耐排紙接着性を発現させることが可能となったと考えられる。
【0015】
本発明においては、必要に応じて、結着樹脂中に結晶性ポリエステルを含有させてもよい。結晶性ポリエステルは、ポリエステルユニットと相溶性が高い為、定着時に可塑効果を発現して低温定着性が良好となる。一方で、シリコーンユニットとは相溶性が低いため、変性ポリエステル中に存在する結晶性ポリエステルは、融点以下の温度領域では、再結晶化が促進されると考えられる。再結晶化した結晶性ポリエステルは、一部定着画像表面にも存在すると考えられる。再結晶化した結晶性ポリエステルは、耐熱性が高く、排紙接着性の向上にも寄与しているものと思われる。結晶性ポリエステルは、結着樹脂100質量部あたり、1.0質量部以上10質量部以下含有することが好ましい。
【0016】
本発明における変性ポリエステルは、シリコーンユニットを0.5質量%以上5質量%以下含有することが好ましく、2質量%以上4質量%以下含有することがより好ましい。
【0017】
シリコーンユニットの含有量が上記範囲内であることで、トナー表面および定着画像表層にシリコーンユニットをより選択的に存在させることができる。
【0018】
本発明におけるシリコーンユニットは、上記一般式(1)中、R1およびR2がいずれもメチル基であることが好ましい。R1およびR2がいずれもメチル基であることにより、上述した結晶性ポリエステルの再結晶化が促進されて、耐排紙接着性がより良好となる。
【0019】
次に、本発明のトナーに使用される結着樹脂について説明する。
【0020】
本発明のトナーに使用される結着樹脂は、変性ポリエステルを含有することが必要である。本発明において、「変性ポリエステルを含有する」とは、例えば、変性ポリエステルとその他の樹脂を2種以上含有した結着樹脂が含まれる。その他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニル系共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、これら2種以上の樹脂ユニットが化学的に結合したハイブリッド樹脂等が挙げられる。
【0021】
本発明において、結着樹脂中、変性ポリエステルを50質量%以上含有することが好ましい。変性ポリエステルが結着樹脂の主成分であることにより、上述した結晶性ポリエステルとの相互作用を効果的に得ることが可能となる。
【0022】
上記変性ポリエステルのポリエステルユニットを構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
【0023】
ポリエステルユニットを構成する2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;炭素数の平均値が1以上50以下のアルケニルコハク酸類又はアルキルコハク酸類、又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル。
【0024】
一方、ポリエステルユニットを構成する2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、式(I-1)で表されるビスフェノール及びその誘導体:及び式(I-2)で示されるジオール類。
【0025】
【化3】
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
【0026】
【化4】
(式中、R’はエチレン又はプロピレン基であり、x’、y’はそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x’+y’の平均値は0以上10以下である。)
【0027】
本発明で使用される、ポリエステルユニットの構成成分は、上述の2価のカルボン酸化合物及び2価のアルコール化合物以外に、3価以上のカルボン酸化合物、3価以上のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。
【0028】
3価以上のカルボン酸化合物としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、3価以上のアルコール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
【0029】
本発明で使用される、ポリエステルユニットの構成成分は、上述した化合物以外に、1価のカルボン酸化合物及び1価のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。具体的には、1価のカルボン酸化合物としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などが挙げられ、また、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、テトラコンタン酸、ペンタコンタン酸などが挙げられる。
【0030】
また、1価のアルコール化合物としては、ベヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、テトラコンタノールなどが挙げられる。
【0031】
前記変性ポリエステルのシリコーンユニットを構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
【0032】
本発明におけるシリコーンユニットは、下記一般式(1)で表されるシリコーンユニットを有することを特徴とする。
【0033】
【化5】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素、メチル基または、フェニル基を表す。nは10以上80以下の数を表す。)
【0034】
シリコーンユニットを構成する成分としては、一般式(1)の末端にポリエステルと化学的に反応する官能基を有するシリコーンオイルを用いることができる。ポリエステルと反応する官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0035】
前記シリコーンオイルの末端の官能基は、ポリエステルとの反応性を制御する上で、官能基はヒドロキシ基またはカルボキシル基を用いることが好ましい。
【0036】
本発明におけるシリコーンオイルの官能基の価数は、1価、2価又は3価以上のシリコーンオイルを用いる事ができる。ポリエステルの主骨格にシリコーンユニットを導入することで、より好ましく定着画像表層にシリコーンユニットを偏在させる事ができることから、シリコーンオイルの両末端に官能基を有する2価のシリコーンオイルを用いることが好ましい。本発明において、変性ポリエステルの製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述の2価のカルボン酸化合物および2価のアルコール化合物及び官能基を有するシリコーンオイルをエステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の重合触媒を用いることができる。
【0037】
続いて、本発明に適用可能な脂肪酸金属塩について説明する。本発明に用いられる脂肪酸金属塩の該脂肪酸の炭素数は、8以上28以下であり、8以上18以下であることが好ましく、8以上12以下であることがより好ましい。炭素数が8未満であるとシリコーンユニットとの親和性が弱くなりシリコーンユニット部に選択的に存在させることができなくなる。炭素数が28より大きいと、結着樹脂中において脂肪酸金属塩自体で偏在しやすい挙動が生じる。
【0038】
炭素数8以上28以下の脂肪酸としては、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデカン酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、9-ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸(オクタデカン酸)、11-オクタデセン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、及びオクタコサン酸などが挙げられる。
【0039】
該脂肪酸カルシウム塩は、一種単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
脂肪酸金属塩の金属としては2価以上の金属が好ましく、例えば、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等がより好ましい。
【0041】
脂肪酸金属塩の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。脂肪酸カルシウム塩の含有量が0.5質量部より少ない場合、架橋効果による耐排紙接着性が発現しにくい。一方、該含有量が10質量部より多い場合、脂肪酸金属塩がトナー粒子から染み出しやすく、画像品質を低下させる恐れがある。該該脂肪酸金属塩の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上3質量部以下であることが更に好ましい。
【0042】
続いて、本発明に適用可能な結晶性ポリエステルについて説明する。
【0043】
前記結晶性ポリエステルの原料モノマーに用いられるアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-イコサンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
これらの中でも、低温定着性及び耐排紙接着性の観点から、炭素数6以上18以下の脂肪族ジオールが好ましく、より好ましくは炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールである。
【0045】
上記脂肪族ジオールの含有量は、結晶性ポリエステルの結晶性をより高める観点から、アルコール成分中に80モル%以上100モル%以下含有されることが好ましい。
【0046】
結晶性ポリエステルを得るためのアルコール成分としては、上記の脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分を含有していても良い。例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物を含むビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
【0047】
一方、上記結晶性ポリエステルの原料モノマーに用いられるカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられ、さらにこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられる。
【0048】
これらの中でも低温定着性及び耐排紙接着性の観点から、炭素数6以上18以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を用いることが好ましく、より好ましくは、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸化合物である。上記脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中に80モル%以上100モル%以下含有されることが好ましい。
【0049】
結晶性ポリエステルを得るためのカルボン酸成分としては、上記脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分を含有していても良い。例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、3価以上の芳香族多価カルボン酸化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。芳香族ジカルボン酸化合物には、芳香族ジカルボン酸誘導体も含まれる。芳香族ジカルボン酸化合物の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、並びにそれらのアルキル(炭素数1以上3以下)エステルが好ましく挙げられる。該アルキルエステル中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1以上3以下)エステル等の誘導体が挙げられる。
【0050】
結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、0.80以上1.20以下であることが好ましい。
【0051】
本発明のトナーは、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、非磁性二成分トナーのいずれのトナーとしても使用できる。
【0052】
磁性一成分トナーとして用いる場合、着色剤としては、磁性酸化鉄粒子が好ましく用いられる。磁性一成分トナーに含まれる磁性酸化鉄粒子としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
磁性酸化鉄粒子の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、30質量部以上150質量部以下が好ましい。
【0054】
非磁性一成分トナー、及び非磁性二成分トナーとして用いる場合の着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0055】
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックが用いられ、また、マグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0056】
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1,3,20が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0057】
シアン色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、16、17、60、62、66等、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0058】
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48;2、48;3、48;4、49,50,51,52,53,54,55,57,57;1、58,60,63,64,68,81,81;1、83,87,88,89,90,112,114,122,123,144、146,150,163,166、169、177、184,185,202,206,207,209,220、221、238、254等、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35が挙げられる。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52、58、63、81,82,83,84,100,109,111、121、122等、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27等、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40等、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0059】
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0060】
トナーの離型性向上のために、離型剤(ワックス)を加えてもよい。本発明に用いられるワックスの一例としては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化型ワックス;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系共重合モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0061】
本発明において特に好ましく用いられるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックスである。例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒で重合した低分子量の炭化水素;石炭又は天然ガスから合成されるフィッシャートロプシュワックス;高分子量のオレフィンポリマーを熱分解して得られるオレフィンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスがよい。さらにプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。特にアルキレンの重合によらない方法により合成されたワックスがその分子量分布からも好ましいものである。
【0062】
ワックスを添加するタイミングは、トナー製造時に添加してもよいし、結着樹脂の製造時に添加してもよい。また、これらワックスは、一種類を単独で使用してもよいし二種類以上を併用して使用してもよい。ワックスは、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下添加することが好ましい。
【0063】
本発明のトナーは、荷電制御剤として、既知の荷電制御剤を用いることができる。既知の荷電制御剤としては、アゾ系鉄化合物、アゾ系クロム化合物、アゾ系マンガン化合物、アゾ系コバルト化合物、アゾ系ジルコニウム化合物、カルボン酸誘導体のクロム化合物、カルボン酸誘導体の亜鉛化合物、カルボン酸誘導体のアルミ化合物、カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物が挙げられる。前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、荷電制御樹脂も用いることもできる。必要に応じて一種類又は二種類以上の荷電制御剤を併用してもかまわない。荷電制御剤は結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下添加することが好ましい。
【0064】
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアや樹脂コートキャリアを使用することができる。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
【0065】
樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。被覆材に用いられる樹脂としては、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン-アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルブチラール;アミノアクリレート樹脂が挙げられる。その他には、アイオモノマー樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0066】
本発明のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のために、シリカ微粉体をトナー粒子に外添することが好ましい。シリカ微粉体は、窒素吸着によるBET法による比表面積が30m2/g以上500m2/g以下であることが好ましく、50m2/g以上400m2/g以下であることがさらに好ましい。また、トナー粒子100質量部に対して、シリカ微粉体を0.01質量部以上8.00質量部以下用いることが好ましく、0.10質量部以上5.00質量部以下用いることがより好ましい。
【0067】
シリカ微粉体のBET比表面積は、例えば比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)、GEMINI2360/2375(マイクロメティリック社製)、トライスター3000(マイクロメティリック社製)を用いてシリカ微粉体の表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
【0068】
シリカ微粉体は、必要に応じ、疎水化、摩擦帯電性コントロールの目的で未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物又は、その他の有機ケイ素化合物のような処理剤で、あるいは種々の処理剤を併用して処理されていることも好ましい。
【0069】
さらに本発明のトナーには、必要に応じて他の外添剤を添加してもよい。このような外添剤としては、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粉体が挙げられる。帯電補助剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物が挙げられる。滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられる。
【0070】
本発明におけるトナー粒子を製造する方法としては、公知の方法によって製造することができる。例えば、粉砕法、乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法などが挙げられる。
【0071】
粉砕法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。変性ポリエステル、脂肪酸金属塩、必要に応じて結晶性ポリエステル、着色剤、及びその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミルのような混合機により充分混合する。混合物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練する。その際、ワックス、磁性酸化鉄粒子及び含金属化合物を添加することもできる。溶融混練物を冷却固化した後、粉砕及び分級を行い、トナー粒子を得る。この際、微粉砕時の排気温度を調整することで、トナー粒子の平均円形度を制御することができる。さらに必要に応じて、トナー粒子と外添剤をヘンシェルミキサーのような混合機により混合し、トナーを得ることができる。
【0072】
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
【0073】
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
【0074】
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
【0075】
また、必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)、メカノミル(岡田精工社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)を用いて、トナー粒子の表面処理を行い、トナー粒子の平均円形度を制御することもできる。
【0076】
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
【0077】
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
【0078】
次に本発明に関わるトナー粒子の粒度分布の測定方法に関して記載する。
【0079】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0080】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0081】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例
【0082】
以上、本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下、実施例に基づいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、本発明は何らこれに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り部及び%は、質量基準である。
【0083】
<結着樹脂1の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 40.0モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 60.0モル部
・テレフタル酸: 90.0モル部
・無水トリメリット酸: 10.0モル部
上記ポリエステルユニットを構成するモノマー97部及び両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイル(KF-6001、信越化学工業(株)製)3部を、チタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに混合した。
【0084】
そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で縮重合反応を行った。所望の軟化点になるように反応時間を調整し、反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂1を得た。
【0085】
<結着樹脂2~6の製造例>
表1に示すようにシリコーンオイルの添加量を変更した以外は結着樹脂1の製造例に従い、結着樹脂2~6を得た。
【0086】
<結着樹脂7の製造例>
シリコーンオイルの添加量を0に変更した以外は結着樹脂1の製造例に従い、結着樹脂7を得た。
【0087】
【表1】
【0088】
<結晶性ポリエステルの製造例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した反応槽中に、カルボン酸モノマーとして1,10-デカンジカルボン酸100.0モル部、アルコールモノマーとして1,9-ノナンジオール100.0モル部を投入した。撹拌しながら140℃に昇温し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。次いで、ジオクチル酸スズを0.57部添加加えた後、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。更に、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で分子量を見ながら反応させて結晶性ポリエステル1を得た。結晶性ポリエステル1の融点は75℃、重量平均分子量は2.5×104であった。
【0089】
〔実施例1〕
(トナー1の製造例)
・結着樹脂1 100部
・結晶性ポリエステル1 5.9部
・ラウリン酸カルシウム 1.2部
・フィッシャートロプシュワックス(融点:90℃) 6.0部
・C.I.ピグメントブルー 15:3 4.0部
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、二軸混練押し出し機によって、160℃で溶融混練した。
【0090】
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルで微粉砕した。
【0091】
得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.0μmの負摩擦帯電性のトナー粒子を得た。
【0092】
該トナー粒子100部に対して、疎水化処理したシリカ微粒子(BET法で測定した窒素吸着による比表面積が140m2/g)2.0部を外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。
【0093】
(磁性コア粒子の製造例)
・Fe23 62.7部
・MnCO3 29.5部
・Mg(OH)2 6.8部
・SrCO3 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。
【0094】
その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕及び混合した。得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。
【0095】
このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りであった。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe23d
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
【0096】
該仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。さらに、得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
【0097】
該フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム1.0部、及び、バインダーとしてのポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子の粒度を調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0098】
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
【0099】
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)が37.0μmの磁性コア粒子を得た。
【0100】
(被覆樹脂の製造例)
・シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8%
・メチルメタクリレートモノマー 0.2%
・メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
・トルエン 31.3%
・メチルエチルケトン 31.3%
・アゾビスイソブチロニトリル 2.0%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、及びメチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れた。セパラブルフラスコ内に、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加し、5時間還流して重合させた。
【0101】
得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させた。
【0102】
得られた沈殿物を濾別後、真空乾燥して樹脂を得た。
【0103】
30部の該樹脂を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部の混合溶媒に溶解して、樹脂溶液(固形分濃度30%)を得た。
【0104】
(被覆樹脂溶液の調製)
・樹脂溶液(固形分濃度30%) 33.3%
・トルエン 66.4%
・カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3%
(一次粒子の個数平均粒径:25nm、窒素吸着比表面積:94m2/g、DBP吸油量:75ml/100g)
上記材料を、ペイントシェーカーに投入し、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過を行い、被覆樹脂溶液を得た。
【0105】
(磁性キャリアの製造例)
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、被覆樹脂溶液及び磁性コア粒子を投入した(被覆樹脂溶液の投入量は、磁性コア粒子100部に対して、樹脂成分として2.5部)。
【0106】
投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後に冷却した。
【0107】
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.2μmの磁性キャリアを得た。
【0108】
<現像剤1の製造例>
トナー1と磁性キャリアを、磁性キャリア90部に対して、トナー1が10部になるように、V型混合機(V-10型:株式会社徳寿製作所)を用いて、0.5s-1、回転時間5minの条件で混合して現像剤1を調製した。
【0109】
得られた現像剤1を用いて以下の評価を行った。
【0110】
[低温定着性の評価]
画像形成装置として、キヤノン(株)製のカラー複写機(商品名:imageRUNNER ADVANCE C9075 PRO)の改造機を用いた。
【0111】
この評価機の定着プロセススピード、現像プロセススピード、通紙間隔を変更し、60枚/分の速度で印刷できるように改造した。
【0112】
この改造機のシアン位置の現像器に現像剤1を入れ、静電潜像担持体または、紙上のトナーの載り量が所望になるように現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、レーザーパワーを調整し、後述の評価を行った。
紙:CS-520(52.0g/m2紙、A4、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:0.80mg/cm2
評価画像:上記A4用紙の中心に10cm2の画像を配置
定着試験環境:低温低湿環境:温度15℃/湿度10%RH
【0113】
定着温調を調節して定着画像を出力し、定着画像の様子を目視にて評価した。
(評価基準)
A:115℃以下の温度領域で定着が可能。
B:115℃より高く、120℃以下の温度領域で定着が可能。
C:120℃より高く、125℃以下の温度領域で定着が可能。
D:125℃より高く、130℃以下の温度領域で定着が可能。
E:130℃より高い温度領域にしか定着可能領域がない。
【0114】
[排紙接着の評価]
排紙接着の評価には、「低温定着性」の評価と同じ評価機を用いた。
紙:CS-520(52.0g/m2紙、A4、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:0.80mg/cm2
定着試験環境:高温高湿環境:温度32℃/湿度80%RH
全面ベタ画像(感光ドラムの画像形成可能領域の全面に形成したトナー像であり、画像比率(印字率)が100%の場合をいう)を両面印刷で、3000枚の連続出力試験を行った。3000枚出力後、10分間放置した。10分間放置後、印刷画像が接着しているか否かを積載された画像の下から100枚ごとに2900枚目まで合計29枚評価した。
【0115】
評価結果を表3に示す。
(評価基準)
A:接着した画像がなく、良好な画質を維持している。
B:接着した画像はあるが、容易に分離し、良好な画質を維持している。
C:接着した画像があり、分離後に接着跡がある画像は1枚である。
D:接着した画像があり、分離後に接着跡がある画像は2枚又は3枚である。
E:接着した画像があり、分離後に接着跡がある画像は4枚以上である。
【0116】
以上の評価項目において、現像剤1は両方ともA判定であった。
【0117】
〔実施例2~8〕
<トナー2~8の製造例>
結着樹脂、結晶性ポリエステルの量、脂肪酸金属塩の量と炭素数及び金属種を表2のように変更した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2~8を得た。
【0118】
【表2】
【0119】
<現像剤2~8の製造例>
トナーを表3のように変更した以外は、現像剤1の製造例と同様にして、現像剤2~8を得た。さらに、現像剤1と同様に評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0120】
【表3】
【0121】
〔比較例1、2〕
<トナー9、10の製造例>
結着樹脂、結晶性ポリエステルの量、脂肪酸金属塩の量と炭素数及び金属種を表4のように変更した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー9、10を得た。
【0122】
【表4】
【0123】
<現像剤9、10の製造例>
トナーを表5のように変更した以外は、現像剤1の製造例と同様にして、現像剤9、10を得た。さらに、現像剤1と同様に評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0124】
【表5】