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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】光受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/67 20130101AFI20240527BHJP
   H04B 10/2581 20130101ALI20240527BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20240527BHJP
   H04B 10/69 20130101ALN20240527BHJP
【FI】
H04B10/67
H04B10/2581
H01L31/02 D
H04B10/69
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020076430
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021175062
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391005581
【氏名又は名称】三和テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069213
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 功
(72)【発明者】
【氏名】渡部 信孝
(72)【発明者】
【氏名】平子 史隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】三宅 慎也
(72)【発明者】
【氏名】筑間 直行
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-352363(JP,A)
【文献】特開2004-363360(JP,A)
【文献】特開2010-278085(JP,A)
【文献】特開平05-198835(JP,A)
【文献】特開平09-096742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/66 - 10/69
H04B 10/2581
H01L 31/0232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した光信号を電気信号に変換する受光素子と該受光素子から出力したフォトカレントを低雑音で電圧信号に変換、増幅するトランスインピーダンス型増幅回路と該トランスインピーダンス型増幅回路の出力を増幅し、所定のレベルで信号の0レベル、1レベルを識別する機能を有したリミッタアンプにより構成される光受信装置であって、前記受光素子は、パッケージに前記トランスインピーダンス型増幅回路のチップと共に搭載され、レンズバレルを備えた受光モジュールを構成し、前記受光モジュールを構成するレンズバレルは、光ファイバを挿入するスリーブと非球面レンズを具備し、前記非球面レンズは、コア径980μm前後の光ファイバから入力した信号を結合損失2から4dB程度を許容するように最適化したものであり、前記レンズバレルをTO-CANパッケージに無調芯で接着固定し、コア径980μm前後の光ファイバから入力した光信号を電気信号に変換する機能を有することを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
前記受光素子は、コア径980μm前後の光ファイバから入力された速度1Gbps以上の光信号を入力しても必要な帯域が確保できるように最適化された有効受光エリア及び結合漏れ光の遮光マスクを具備することを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
前記レンズバレルは、コア径200μm以下の光ファイバを介して光信号を入力した場合は、結合損失がほぼゼロとなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に適用するシステムの光受信装置に係り、特にコア径980μm前後の大口径プラスチック光ファイバを伝送媒体として適用するシステムにおいて、伝送速度1Gbpsを超える高速光信号を電気信号に変換する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光受信装置を図6に示す。1Gbpsを超える伝送速度を実現する光受信装置は、伝送速度に対して十分余裕のある広帯域の受光素子9とトランスインピーダンス型増幅回路10、リミッタアンプ14から構成される。そして、従来の光受信装置に搭載される受光素子9には、使用されるLD光源の波長850nm、1310nm、1550nmに合わせてGaAsあるいはInGaAsのピンフォトダイオード(Pin-PD)が採用される。いずれの材料の場合も、ジャンクション容量Cjとパッケージに寄生する寄生容量Csを合わせたトータル容量を1pF以下にするために、受光径を50μmから80μmまで小受光径化して所望帯域を確保している。
【0003】
さらに詳述すると、前記ピンフォトダイオード(Pin-PD)の帯域は、ジャンクション容量Cjとパッケージに起因する寄生容量Csの和で制限されるとともに、前記ジャンクション容量Cjは、受光エリアの面積に比例して変化する。そこで受光径を小さくすると、ジャンクション容量Cjが小さくなり、結果として広帯域の特性が得られる。一方で、従来1Gbpsを超える受信装置で適用されてきた光ファイバは、コア径50μmのマルチモード光ファイバ、コア径10μmのシングルモード光ファイバが一般的に採用されている。コア径50μmの光ファイバから出射した光は、出射端でほぼ50μmのビーム径になっており、これを受光素子に結合する際、従来は像倍率1対1になるようなレンズ系を採用しているのが一般的である。従って、受光素子の受光面上に結合した時のビーム径が50μmになり、入射光の全てが受光領域に収まることになる。80μmの場合は、さらに余裕をもって結合できることになるが、受光径が大きい分だけジャンクション容量Cjが大きくなり、帯域特性としては50μmよりも劣ることになる。
【0004】
さらに、従来の光受信装置に搭載されるトランスインピーダンス型増幅回路10は、受光素子9のジャンクション容量Cj+寄生容量Csを考慮して、必要なトランスインピーダンス利得、帯域特性、雑音特性を最適化したものとなっている。
【0005】
上述の通り、1Gbsを超える光伝送システムでは、伝送媒体として石英コアでコア径50μmのマルチモード光ファイバ、あるいは、コア径10μmのシングルモード光ファイバを採用することが一般的である。この場合は、各光ファイバから出射された光を受光素子9に結合する際、レンズの像倍率を約1対1に設定する簡便なレンズ系であれば前記受光素子9の受光径内に収めることが可能で、過剰な結合損失が発生しないように光結合系が設計されている。また、従来の光受信装置では、コストの安いボールレンズをTO-CANパッケージの封止ガラス窓と一体にしたものが広く用いられている。
【0006】
最近、光を通信に適用するシステムは、公衆網を支える光通信システムから、耐ノイズ性、高帯域性が必要な用途へと広がっている。特に、工場内の自動化に不可欠なロボットの制御を行うコンピュータ数値制御、サーボポンプ、プログラマブルコントローラには、以前から耐ノイズ性を重視して、光を制御信号の伝送に適用するシステムが普及している。
【0007】
従来、この種のシステムでは、伝送速度が150Mbps程度で十分であったことから、コア径980μmのアクリル樹脂系のステップインデックス型プラスチック光ファイバが広く採用されてきた。ところが、このアクリル樹脂系のプラスチック光ファイバは、コア径が大きいために接続が容易である反面、帯域が5MHz・km程度と狭いため、150Mbpsの信号を伝送するには20m程度では帯域制限の影響を受け信号伝送ができなくなるおそれがあった。
【0008】
そこで、工場内において100m程度まで伝送する必要がある場合は、石英コアとプラスチッククラッドから構成されるコア径200μmのステップインデックス型(SI)かグレーデッドインデックス型(GI)のハードプラスチッククラッド光ファイバが採用されていた。
【0009】
さらに、従来の光受信装置は、光源の波長650nm帯に合わせてシリコンピンフォトダイオードが受光素子9として採用されるとともに、伝送速度150Mbpsで十分必要な帯域特性を確保できる受光素子9として受光径が500~600μmのシリコンピンフォトダイオードが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特になし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年、工場内のIoT化の進展は、日覚ましいものがあり、ロボットの制御も、生産工程ごとに独立した形態からフィールドネットワークで接続される形態に進化し、かつ各種センサーを配備して、ロボットの稼働状態のモニター、故障検知等をリアルタイムで実施する形態に進化している。
【0012】
このようにフィールドネットワークを流れる情報量が増大するため、当該フィールドネットワークの高速化が求められており、従来150Mbps程度であった信号速度が1Gbpsを超える伝送速度に拡大することが望まれている。一方で、従来装置との混在が必須となるため、従来のコア径980μmのプラスチック光ファイバを採用した150Mbpsのシステムとの相互通信の実現も不可欠の要求になっている。
【0013】
コンピュータ数値制御、サーボアンプ、プログラマブルコントローラ等に広く採用されている光送受信装置は、波長650nm帯のLED光源とシリコンピンフォトダイオードの受光素子を搭載し、それぞれLEDを駆動するLSIと受光回路のLSIを搭載して構成される。
【0014】
また、従来の光送受信装置は、伝送媒体としてコア径980μmのプラスチック光ファイバ、あるいは、コア径200μmのステップインデックス型(SI)およびグレーデッドインデックス型(GI)のハードプラスチッククラッド光ファイバと組み合わせて使用される。コア径980μmのプラスチック光ファイバ、コア径200μmのステップインデックス型およびグレーデッドインデックス型のハードプラスチッククラッド光ファイバを前提にしたフィールドネットワークに従来の1Gbps超の光受信装置を入れて対向した場合、受光素子としてInGaAs系のピンフォトダイオード(PIN-PD)を搭載した光受信装置は、650nm帯で受光感度がほとんどないため使用できない。一方、GaAs系のピンフォトダイオード(Pin-PD)を搭載した光受信装置は、Si系のピンフォトダイオード(Pin-PD)搭載の受信装置に比べて650nm帯における受光感度が劣るのと同時に、受光径が50μm、像倍率が約1対1の結合系のために、入射光のほとんどが受光領域から外れてしまい、光結合系で10から20dB程度の過剰損が発生し最少受信レベルを下回り、光受信装置として正常に動作しないという問題があった。
【0015】
すなわち、従来、FA機器用のフィールドネットワークで採用されてきた光ファイバは、コア径980μmのプラスチック光ファイバ、あるいは、コア径200μmのステップインデックス型(SI)かグレーデッドインデックス型(GI)のハードプラスチッククラッド光ファイバであり、コア径50μm、あるいは、コア径10μmの光ファイバの使用を前提にして像倍率1対1の結合系とした受光モジュールにコア径980μm、コア径200μmの光ファイバから光を入力した場合、レンズの入射端で光ファイバの出射光をすべてレンズの開口数NA(ニュウーメリカルアパーチャー:Numerical Aperture)内に入れることができないために過剰損が発生する。同時に像倍率が1対1であるため、受光面上のビーム径が980μm、200μmと受光領域を外れてしまうことになり、このため大きな過剰損失が発生することになる。つまり、980μm、あるいは、200μmの円形ビームを50μmの受光領域で受けることになるため、ほとんどの信号光が受光領域外に出てしまうことになる。
【0016】
そこで、本発明は、上述のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、従来の650nm帯光源を搭載した光送信装置と対向し動作速度150Mbps以下で相互に通信が可能であり、前記光送信装置の光出力信号をコア径980μmのプラスチック光ファイバ、あるいはコア径200μmのステップインデックス型(SI)およびグレーデッドインデックス型(GI)のハードプラスチッククラッド光ファイバで通信が可能となる光受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、入力した光信号を電気信号に変換する受光素子と該受光素子から出力したフォトカレントを低雑音で電圧信号に変換、増幅するトランスインピーダンス型増幅回路と該トランスインピーダンス型増幅回路の出力を増幅し、所定のレベルで信号の0レベル、1レベルを識別する機能を有したリミッタアンプにより構成される光受信装置であって、前記受光素子は、パッケージに前記トランスインピーダンス型増幅回路のチップと共に搭載され、レンズバレルを備えた受光モジュールを構成し、コア径980μm前後の光ファイバから入力した光信号を電気信号に変換する機能を有することを特徴とする。
【0018】
前記受光素子は、コア径980μm前後の光ファイバから入力された速度1Gbps以上の光信号を入力しても必要な帯域が確保できるように最適化された有効受光エリア及び結合漏れ光の遮光マスクを具備することを特徴とする。
【0019】
前記受光モジュールを構成するレンズバレルは、光ファイバを挿入するスリーブと非球面レンズを具備し、前記非球面レンズは、コア径980μm前後の光ファイバから入力した信号を結合損失2から4dB程度を許容するように最適化したものであり、前記レンズバレルをTO-CANパッケージに無調芯で接着固定することを特徴とする。
【0020】
前記レンズバレルは、コア径200μm以下の光ファイバを介して光信号を入力した場合は、結合損失がほぼゼロとなるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光受信装置18では、伝送媒体をコア径980μmのプラスチック光ファイバ7、コア径200μmのステップインデックス型(SI)およびグレーデッドインデックス型(GI)のハードプラスチッククラッド光ファイバのいずれの場合においても、1Gbpsを超える動作速度において、安定した受信機能を実現することができる。同時に、従来のFA機器で広く適用されている650nm帯LEDを光源とする光送信器と対向させた場合においても安定な伝送特性を保証でき、既存FAシステムの更新においても有効な通信手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は本発明を実施するための一形態を示す光受信装置の全体説明図、(b)は同正面図である。
図2】規格化受信帯域と最小受信感度の関係を示す図である。
図3】受光素子の容量と受信回路の3dB低下帯域の関係を示す図である。
図4】受光径と容量の関係を示す図である。
図5】受光素子の容量と最小受信感度を示す図である。
図6】従来例の光受信装置を示す全体説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態による光受信装置を詳細に説明する。
本実施形態においは、図1に示すように、光受信装置18は、コア径980μmのプラスチック光ファイバ7、あるいはコア径200μmのステップインデックス型(SI)およびグレーデッドインデックス型(GI)のハードプラスチッククラッド光ファイバ8を介して受光モジュール5に入力した光信号が、レンズバレル17を介して受光素子1に結合される。この受光素子1は、後述する最適化された有効受光エリア1A、及びその外周部に配置された、樹脂もしくは金属による遮光マスク1Bを具備している。受光素子1で光電気変換されたフォトカレントは、トランスインピーダンス型増幅回路2で増幅されて、後段に接続されたリミッタアンプ6に入力されるとともに、該リミッタアンプ6の内部で増幅された信号は、リミッタアンプ6が具備する識別機能で入力したデジタル信号の0レベル、1レベルを判定して出力される。本実施例では、トランスインピーダンス型増幅回路2とリミッタアンプ6の間をAC結合としたが、両回路を1チップに集積してDC結合とすることも可能である。
【0024】
図2は、信号速度で規格化した受信帯域と最小受信感度(Pr)の関係を模式的に表したグラフである。一般に最小受信感度は(Pr)、雑音と帯域との関係で最適な値が求められる。通常は、符号間干渉と信号対雑音比(S/N)がバランスする点として信号速度Bの0.75倍前後に受信帯域を設定する。受信帯域がこれよりも少ない場合は信号対雑音比S/Nは改善するが、受信帯域不足による符号間干渉が支配要因となり最小受信感度が劣化する。逆に受信帯域が0.75×Bよりも広い場合は、信号対雑音比S/Nが劣化して最小受信感度が劣化する。
【0025】
すなわち、受信回路の帯域を下げるとパルスの「1」が上がりきらないし、「0」が下がりきらないというような応答特性になる。因みに、このとき、振幅方向にアイパターンの開口が狭くなることを、一般的に符号間干渉と呼ぶ。一方、受信回路の帯域を延ばすと、広帯域に渡る雑音成分が信号に重畳されることになり、信号対雑音比(S/N)を落として受信感度を劣化させる要因になる。
上記要因による受信感度の劣化を模式的に示したものが、図2になる。0.75×Bよりも受信帯域が狭い場合は、符号間干渉が支配要因になって受信感度が劣化し、逆に0.75×Bよりも受信帯域が広い場合は、信号対雑音比(S/N)劣化が支配要因になって受信感度が劣化する。図2のペナルティーが一番少ない点が、両者がバランスした最適な受信帯域ということになり、一般的に信号速度の0.75倍とされている。
【0026】
従来、1Gbps以上の光通信装置に適用してきた光受信回路は、適用する光ファイバが、短距離用途の場合はコア径50μmのマルチモード光ファイバ(石英コア)が用いられ、長距離用途の場合はコア径10μmのシングルモード光ファイバ(、石英コア)が用いられている。
【0027】
図6に示すように、従来の光受信装置19では、受信帯域を上述の0.75×B前後に最適化するために、受光素子9の受光径を50μm~80μmと小さくして、受光素子9のジャンクション容量Cjと受光素子パッケージに寄生する寄生容量Csを小さくすることで、所望の受信帯域が得られるように設計されている。
【0028】
そして、前記従来の光受信装置19に搭載される受光モジュール13は、コア径50μmのマルチモード光ファイバと接続される形態が一番コア径の大きい光ファイバとの組み合わせとなるため、受光素子9に入力信号光を絞り込むためのレンズは、ボールレンズ12を用いて像倍率を1前後に設定するのが一般的である。受光素子9の受光径が50μmから80μmであるため、受光領域にすべての入力光を結合することが可能となり、光結合系の過剰損失の発生をほぼゼロに抑えることができる構成となっている。
【0029】
一方、図1に示す本実施形態の光受信装置18は、伝送媒体である光ファイバとしてコア径980μmのプラスチック光ファイバ7、あるいは、コア径200μmのステップインデックス型(SI)やグレーデッドインデックス型(GI)のハードプラスチッククラッド光ファイバ8を採用した場合において、伝送速度1Gbpsを超える速度で安定動作することを狙っている。
【0030】
受光素子1と該受光素子1で変換されたフォトカレントを電圧信号に変換するトランスインピーダンス型僧幅回路2を組みわせた光受信回路3の帯域は、前述した通り受光素子1のジャンクション容量Cjと受光素子1のパッケージに寄生する寄生容量CsとトランスインピーダンスZtによって決まる。トランスインピーダンスZtは、伝送速度と目標とする最小受信感度(Pr)から、これに最適な値になるように選定される。この時の光受信回路3の帯域は、(1/2)x{GBW/π(Cj+Cs)Zt}1/2となる。GBWは、利得帯域幅積を示す。従って、光受信回路3の帯域を伸ばすには、トランスインピーダンスZtを下げるか、ジャンクション容量Cj+寄生容量Csを小さくすることが有効となるが、トランスインピーダンスは、所望の受信感度を得るために必要な値が一義的に決まってしまうため、ジャンクション容量Cjを小さくすることが必要になる。
【0031】
図3に、1.25Gbpsで動作することを想定して設計した光受信回路において、トランスインピーダンスZtを一定にして、ジャンクション容量Cj+寄生容量Csを変化した時の光受信回路の3dB低下帯域の変化を一例として示す。図中の黒丸で示す点が、一般的に受信帯域の最適点とされる信号速度の0.75倍に相当する。図3からジャンクション容量Cj+寄生容量Csが0.8pF程度が1.25Gbps動作において最適なジャンクション容量Cj+寄生容量Csの値であることが判る。
【0032】
一方、上記ジャンクション容量Cj+寄生容量Csは、受光素子1の受光径を変えることで変化する。厳密には、受光素子1のパッケージに起因する寄生容量Csは、一定値であるが、ジャンクション容量Cjは、受光素子1に印加する逆バイアスの値によって変化する。図4は、逆バイアスが十分印加されてジャンクション容量Cjのバイアス依存性がほぼ飽和する点まで逆バイアスがかかった状態での変化を示している。
【0033】
最小受信感度Prは、光受信回路3の帯域特性に大きく依存し、信号速度Bの0.75倍以下の帯域になると、当該最小受信感度Prが劣化する。すなわち、前記したように受信帯域が狭くなると振幅方向でのアイパターンの開口が狭くなり、これが原因で受信感度が劣化することになる。
【0034】
次に、信号速度1.25GbpsでトランスインピーダンスZtを一定にして種々のジャンクション容量Cj+寄生容量Csに対して最小受信感度Prを測定した結果を図5に示す。ジャンクション容量Cj+寄生容量Csが0.8pFよりも大きくなり、光受信回路3の所要帯域0.75×Bよりも下がると最小受信感度Prが劣化する。本実施例では、動作速度1.25Gbpsで最小受信感度Prが-22dBm程度の実現を目指した。
【0035】
図5からジャンクション容量Cj+寄生容量Csが1.4pFから1.5pF程度で所望の最小受信感度Prが実現できることが判る。このジャンクション容量Cj+寄生容量Csが1.5pFは、図4に示すように、受光素子1の受光径で260μm前後に相当する。
【0036】
コア径200μmのステップインデックス型(SI)やグレーデッドインデックス型(GI)のハードプラスチッククラッド光ファイバ8を介して受光モジュール5に入力した信号の光結合系に関わる過剰損失をほぼゼロに抑えるためには、ハードプラスチッククラッド光ファイバ8から受光モジュール5に入力した光信号の全てが受光径に収まるようにレンズの像倍率を約1倍とすれば良い。
【0037】
すなわち、本実施例で記載した通り、受光径を260μm前後に設定すると、コア径200μmのステップインデックス型(SI)およびグレーデッドインデックス型(GI)のハードプラスチッククラッド光ファイバのファイバ出射端でのビーム径は、200μmになるので、レンズの開口数NA(ニューメリカルアパーチャー:Numerical Aperture)ですべての光をレンズ内に取り込み、像倍率を1対1に設定すれば、受光径260μmよりも小さい200μmのビーム径として受光面上に結像することになる。この場合は、受光素子に入力する光信号の全てが受光面上に結合するため、過剰損失の発生はなくなる。
【0038】
一方、コア径980μmのプラススチック光ファイバ7と組み合わせた場合は、大きな過剰損失が発生することになる。本実施例では、従来例で一般的に採用されているボールレンズ12からレンズバレル17の非球面レンズ4に変えることにより、コア径200μmの光ファイバと組み合わせた時の過剰損失をほぼゼロに、コア径980μmの光ファイバと組み合わせた時の過剰損失を2から4dBとするように非球面レンズ4の最適化を行った。ちなみに、コア径980μmのプラスチック光ファイバ7を介して接続した場合、前記非球面レンズ4を採用しても、全ての入力光が有効受光エリア内に入らないため、受光エリア外に漏れてしまい、その結果漏れ光が受光素子1の有効受光エリア外で光電気変換されると本来の非常に応答の遅い成分として電気信号に変換され、結果として雑音となる。
【0039】
本発明では、高速動作を阻害する要因を排除するため、有効受光エリア1Aの外周部に樹脂もしくは金属による遮光マスク1Bを設けて、これを防止する構成とした。これらにより動作速度1.25Gbpsにおいて、コア径200μmの光ファイバと組み合わせた時の最小受信感度を-22dBm、コア径980μmの光ファイバと組み合わせた時の最小受信感度-18dBmを実現した。
【符号の説明】
【0040】
1 受光素子
1A 有効受光エリア
1B 遮光マスク
2 トランスインピーダンス型増幅回路
3 受光回路
4 非球面レンズ
5 受光モジュール
6 リミッタアンプ
7 プラスチック光ファイバ
8 ステップインデックス型ハードプラスチッククラッド光ファイバ及び
グレーデッドインデックス型ハードプラスチッククラッド光ファイバ
9 受光素子
10 トランスインピーダンス型増幅回路
11 受光回路
12 ボールレンズ
13 受光モジュール
14 リミッタアンプ
15 マルチモード光ファイバ
16 シングルモー光ドファイバ
17 レンズバレル
18 光受信装置
19 光受信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6