(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】印刷用水溶性樹脂
(51)【国際特許分類】
C09D 11/02 20140101AFI20240527BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20240527BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240527BHJP
C09D 5/20 20060101ALI20240527BHJP
C09D 11/104 20140101ALI20240527BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20240527BHJP
C09D 167/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C09D11/02
B41M1/30 D
C09D5/00 D
C09D5/20
C09D11/104
C09D201/02
C09D167/02
(21)【出願番号】P 2020076649
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2019085036
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019119695
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 玲
(72)【発明者】
【氏名】片柳 豪太
(72)【発明者】
【氏名】吉村 忠徳
(72)【発明者】
【氏名】尾之上 昭弘
(72)【発明者】
【氏名】野呂 尭広
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓二
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5294650(US,A)
【文献】特開2002-265832(JP,A)
【文献】特開平2-235972(JP,A)
【文献】特開2017-30346(JP,A)
【文献】米国特許第5276149(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/02
B41M 1/30
C09D 5/00
C09D 11/104
C09D 201/02
C09D 167/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸塩基を有するモノマーユニットA、及び親水性基を有さないモノマーユニットBを有し、
全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合が5~35mol%である、印刷用水溶性樹脂
を含有する水溶性印刷層を有する印刷物を、30℃以上の中性水で処理し、前記水溶性印刷層を除去する印刷層除去工程を有する、印刷層除去方法。
【請求項2】
スルホン酸塩基を有するモノマーユニットA、及び親水性基を有さないモノマーユニットBを有し、
全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合が5~35mol%である、印刷用水溶性樹脂
を含有する水溶性印刷プライマー層と、
印刷層と、をこの順に有する、印刷物を30℃以上の中性水で処理し、前記水溶性印刷プライマー層及び前記印刷層を除去する印刷層除去工程を有する、印刷層除去方法。
【請求項3】
前記スルホン酸塩基を構成するスルホン酸基の対イオンが、アルカリ金属イオンである、請求項1
又は2に記載の
印刷層除去方法。
【請求項4】
前記水溶性樹脂中の前記スルホン酸塩基の含有量が0.4~3mmol/gである、請求項1
~3のいずれか1項に記載の
印刷層除去方法。
【請求項5】
前記水溶性樹脂の重量平均分子量が1000~80000である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の
印刷層除去方法。
【請求項6】
前記モノマーユニットAがジカルボン酸モノマーユニットAであり、前記モノマーユニットBがジカルボン酸モノマーユニットBである、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の
印刷層除去方法。
【請求項7】
前記水溶性樹脂がジオールモノマーユニットCを有し、当該ジオールモノマーユニットCを誘導するためのジオールCの炭素数が2~31である水溶性ポリエステル樹脂である、請求項
6に記載の
印刷層除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用水溶性樹脂に関し、より具体的には印刷層を中性水で安全かつ効率よく除去可能でありながら耐水性に優れる印刷物を実現できる印刷用水溶性樹脂である。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックは、容器、包装袋等と極めて多岐にわたる用途で使用されており、それらの多くは機能的な理由から、全く異なる種類のフィルムやアルミ等の無機物、インキ等から構成されている。特にインキなどによる印刷物は、容器や包装袋にとって一般消費者に向けた情報伝達や製品の物流管理において無くてはならないものであり、容器等の表面に印刷されたり、印刷加工されたりしている。
【0003】
プラスチックは自然界で分解しにくいこと、省資源、経済性等より一部は分別され回収されており、再生加工されて二次製品として利用されている。しかし、再生に際して印刷等が施されたプラスチック製品が混入すると再生製品全体が着色されたり、あるいは部分的に着色されたりすることから、再生製品の着色は商品価値を著しく低下され、再使用できない場合が多い。また、物性的に致命的な欠点を起こす場合がある。このような印刷等が施されたプラスチック製品は、回収(再使用のための)されず廃棄されているのが現状である。
【0004】
印刷等が施されているプラスチックフィルム、プラスチック容器等は再生利用されることは少なく、ほとんど廃棄されている現状に鑑み、印刷されたプラスチックをリサイクルする観点から、プラスチック製品から印刷物を除去する方法が従来から検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術ではインク層の除去にアルカリ水溶液を用いる。アルカリ水溶液は人体に対する危険性が高く、取扱に注意を要する。また、印刷物をアルカリ水溶液に浸漬すると基材がアルカリに侵食され、リサイクルが困難になるおそれがある。
【0007】
上記課題に対し、インキにポリビニルアルコール等の中性水に溶解する水溶性材料を含有させることが考えられる。しかしながら、従来の水溶性材料は耐水性が劣るため、湿度の比較的高い環境下に置かれることの多い印刷物(例えば、家庭用の洗剤の容器等)に従来の水溶性材料を用いると環境中の湿気によって印刷層が剥がれるおそれがある。
【0008】
本発明は、印刷層を中性水で安全かつ効率よく除去可能でありながら耐水性に優れる印刷物を実現できる印刷用水溶性樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スルホン酸塩基を有するモノマーユニットA、及び親水性基を有さないモノマーユニットBを有し、全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合が5~35mol%である、印刷用水溶性樹脂である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印刷層を中性水で安全かつ効率よく除去可能でありながら耐水性に優れる印刷物を実現できる印刷用水溶性樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<印刷用水溶性樹脂(成分α)>
本実施形態の印刷用水溶性樹脂は、スルホン酸塩基を有するモノマーユニットA、及び前記樹脂の生成に係る重合を構成する親水基以外の親水性基(以下、単に親水性基とも称する。)を有さないモノマーユニットBを有し、全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合が5~35mol%である。本実施形態の印刷用水溶性樹脂によれば、印刷層を中性水で安全かつ効率よく除去可能でありながら耐水性に優れる印刷物を実現できる。なお、本明細書において、水溶性とは、30℃の中性水100gに0.01g以上溶解することをいう。
【0012】
前記樹脂組成物は、印刷層を中性水で安全かつ効率よく除去する観点から、70℃の中性水に、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上溶解する。
【0013】
なお、前記中性水としては、pH6~8の水又は水溶液が挙げられる。前記中性水としては、具体的には、脱イオン水、純水、水道水、工業用水が挙げられ、入手容易性の観点から脱イオン水又は水道水が好ましい。また、前記中性水は水溶性有機溶媒、界面活性剤などの他の成分を含んでいてもよい。前記水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどの低級アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類が挙げられる。前記界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のアニオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド等のノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0014】
前記水溶性樹脂の例としては、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリイミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリアリルアミン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノキシ樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの樹脂の変性物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、本発明の効果発現の観点から、水溶性ポリエステル樹脂及び水溶性ポリアミド樹脂、水溶性アクリル樹脂からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、水溶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0015】
[モノマーユニットA]
前記モノマーユニットAはスルホン酸塩基を有する。また、当該モノマーユニットAを誘導するためのモノマーをモノマーAと称する。
【0016】
前記モノマーユニットAは、スルホン酸塩基を有するモノマーユニットであれば特に限定されないが、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、スルホン酸塩基を有するジカルボン酸モノマーユニット(以下、ジカルボン酸モノマーユニットAとも称する。)が好ましい。
【0017】
前記モノマーAは、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点、並びに水溶性樹脂製造時の重合反応の容易さの観点から、スルホン酸塩基を有するカルボン酸、アミン、アミノ酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、スルホン酸塩基を有するカルボン酸がより好ましい。当該カルボン酸の中でも、同様の観点からスルホン酸塩基を有する芳香族カルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。これらの中でも同様の観点からスルホフタル酸、及びスルホナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、スルホフタル酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上が更に好ましく、スルホイソフタル酸及びスルホテレフタル酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上が更に好ましく、5-スルホイソフタル酸が更に好ましい。
【0018】
スルホン酸塩基は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び水溶性樹脂製造時の重合反応の容易さの観点から、-SO3M3(ただし、M3はスルホン酸塩基を構成するスルホン酸基の対イオンを示し、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から金属イオン及びアンモニウムイオンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、金属イオンからなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が更に好ましく、アルカリ金属イオンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が更に好ましく、ナトリウムイオン及びカリウムイオンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が更に好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。)で表されるスルホン酸塩基が好ましい。
【0019】
前記水溶性樹脂中のスルホン酸塩基の含有量は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、0.4mmol/g以上が好ましく、0.6mmol/g以上がより好ましく、0.7mmol/g以上が更に好ましく、印刷物の耐水性を向上させる観点から、3mmol/g以下が好ましく、2mmol/g以下がより好ましく、1.5mmol/g以下が更に好ましい。また、前記水溶性樹脂中のスルホン酸塩基の含有量は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、0.4~3mmol/gが好ましく、0.6~2mmol/gがより好ましく、0.7~1.5mmol/gが更に好ましい。
【0020】
前記水溶性樹脂の全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、5mol%以上であり、7mol%以上が好ましく、10mol%以上がより好ましく、12mol%以上が更に好ましく、印刷物の耐水性を向上させる観点から、35mol%以下であり、30mol%以下が好ましく、20mol%以下がより好ましい。また、前記水溶性樹脂の全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、から、5~35mol%であり、7~30mol%が好ましく、10~20mol%がより好ましく、12~20mol%が更に好ましい。
【0021】
[モノマーユニットB]
前記モノマーユニットBは親水性基を有さない。また、当該モノマーユニットBを誘導するためのモノマーをモノマーBと称する。前記モノマーユニットBは、親水性基を有さないモノマーユニットであれば特に限定されないが、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、親水性基を有さないジカルボン酸モノマーユニット(以下、ジカルボン酸モノマーユニットBとも称する)が好ましい。
【0022】
前記親水性基は、親水性を示すものであれば特に限定されない。前記親水性基の例としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基、オキシアルキレン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシル塩基、リン酸基、リン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基等が例示できる。
【0023】
前記ジカルボン酸モノマーユニットBを誘導するためのジカルボン酸(以下、ジカルボン酸モノマーBとも称する。)は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点、並びに水溶性樹脂製造時の重合反応の容易さの観点から、親水性基を有さない芳香族ジカルボン酸及び前記親水性基を有さない脂肪族ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、前記親水基を有さない芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0024】
前記ジカルボン酸モノマーBの合計に対する、芳香族ジカルボン酸の合計の割合は、中性水で前記印刷層を除去できるようにする観点から、好ましくは50mоl%以上、より好ましくは60mоl%以上、更に好ましくは70mоl%以上である。
【0025】
また、前記モノマーBの合計に対する、芳香族ジカルボン酸の合計の割合は、前記印刷層の耐水性を向上させる観点から、好ましくは100mоl%以下、より好ましくは80mоl%以下、更に好ましくは70mоl%以下である。
【0026】
前記親水性基を有さない芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上が例示できる。これらの中でも、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0027】
前記親水性基を有さない脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3-アダマンタンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上が例示できる。これらの中でも、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0028】
前記水溶性樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、前記モノマーユニットBの物質量の割合は、印刷物の耐水性を向上させる観点から、15mol%以上が好ましく、25mol%以上がより好ましく、30mol%以上が更に好ましく、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、45mol%以下が好ましく、42mol%以下がより好ましく、40mol%以下が更に好ましい。また、前記水溶性樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、前記モノマーユニットBの物質量の割合は、印刷物の耐水性を向上させる観点、及び中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、15~45mol%が好ましく、25~42mol%がより好ましく、30~40mol%が更に好ましい。
【0029】
前記水溶性樹脂中の前記モノマーユニットAと前記モノマーユニットBのmol比(前記モノマーユニットA/前記モノマーユニットB)は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、10/90以上が好ましく、15/85以上がより好ましく、18/82以上が更に好ましく、20/80以上が更に好ましく、同様の観点から70/30以下が好ましく、65/35以下がより好ましく、60/40以下が更に好ましく、40/60以下が更に好ましく、35/70以下が更に好ましい。
【0030】
前記水溶性樹脂の重量平均分子量は、印刷層の耐水性を向上させる観点から、1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、4000以上が更に好ましく、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、80000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、30000以下が更に好ましく、20000以下が更に好ましい。なお、本明細書において重量平均分子量は実施例に記載の方法によって測定する。
【0031】
(ジオールモノマーユニットC)
前記水溶性樹脂が水溶性ポリエステル樹脂の場合は、前記モノマーユニットA及び前記モノマーユニットB以外のジオールモノマーユニットCを有する。前記ジオールモノマーユニットCを誘導するためのジオールを、ジオールCとも称する。
【0032】
前記ジオールCとしては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール等を用いることができるが、水溶性ポリエステル樹脂の原料の入手容易性の観点から、脂肪族ジオールが好ましい。
【0033】
前記ジオールCの炭素数は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、2以上が好ましく、同様の観点から、31以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、15以下が更に好ましい。
【0034】
前記脂肪族ジオールとしては、鎖式ジオール、及び環式ジオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上が挙げられるが、原料の入手容易性の観点から、鎖式ジオールが好ましく、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、環式ジオールが好ましい。
【0035】
前記ジオールCの合計に対する、環式ジオールの合計の割合は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、好ましくは1mоl%以上、より好ましくは10mоl%以上、更に好ましくは40mоl%以上であり、原料の入手容易性の観点から、好ましくは90mоl%以下、より好ましくは70mоl%以下、更に好ましくは60mоl%以下である。
【0036】
前記鎖式ジオールの炭素数は、印刷層の耐水性を向上させる観点から、2以上が好ましく、中性水で前記印刷層を除去できるようにする観点から、20以下が好ましく、15以下が更に好ましく、6以下が更に好ましい。
【0037】
前記鎖式ジオールは、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプリピレングリコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、及びトリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及びトリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
【0038】
前記環式ジオールの炭素数は、印刷層の耐水性を向上させる観点から、2以上が好ましく、4以上がより好ましく、6以上が更に好ましく、印刷層の耐水性を向上させる観点から、31以下が好ましく、25以下が更に好ましく、20以下が更に好ましく、12以下が更に好ましく、8以下が更に好ましい。
【0039】
前記環式ジオールは、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、イソソルバイド、ビスフェノキシエタノールフルオレン、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾキシエタノールフルオレン、及びビスクレゾールフルオレンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びイソソルバイドからなる群より選ばれる1種又は2種がより好ましい。
【0040】
前記水溶性ポリエステル樹脂は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、前記ジカルボン酸モノマーユニットA、前記ジカルボン酸モノマーユニットB、及び前記ジオールモノマーユニットC以外のモノマーユニットを有していても良い。
【0041】
前記水溶性ポリエステル樹脂の製造方法には特に限定はなく、従来公知のポリエステル樹脂の製造方法を適用できる。
【0042】
<印刷用水溶性樹脂組成物>
前記印刷用水溶性樹脂は、他の成分を含有させた印刷用水溶性樹脂組成物としてもよい。
【0043】
前記印刷用水溶性樹脂組成物の前記水溶性樹脂の含有量は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点及び印刷物の耐水性を向上させる観点から、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%以下が好ましく、98質量%がより好ましく、96質量%以下が更に好ましい。
【0044】
(前記水溶性樹脂以外の塩(成分β))
前記水溶性樹脂組成物は、前記水溶性樹脂以外の塩(成分β)を含有してもよい。当該成分βとしては、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、印刷物の耐水性及び耐熱性を向上させる観点から、下記一般式(1)で示される有機塩化合物が好ましい。
(R1-SO3
-)nXn+ (1)
(前記一般式(1)中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を示し、nは1又は2の数を示し、nが1のとき、Xn+はナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンを示し、nが2のとき、Xn+はマグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、又は亜鉛イオンを示す。)
【0045】
前記一般式(1)中、R1は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び耐熱性を向上させる観点から、置換基を有していてもよい、置換基を含めた炭素数が1~30の炭化水素基を示す。当該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれであってもよい。当該炭化水素基が芳香族炭化水素基の場合、当該炭化水素基の炭素数は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び耐熱性を向上させる観点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、30以下が好ましく、25以下がより好ましい。
【0046】
また、前記置換基としては、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び耐熱性を向上させる観点から、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、及びケイ素原子、並びにハロゲン原子からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むものが好ましく、中でも炭素数1~22の炭化水素基又は炭素数1~22のハロゲン化アルキル基が好ましく、炭素数1~16の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~12の炭化水素基が更に好ましい。
【0047】
前記一般式(1)中、Xn+は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び耐熱性を向上させる観点から、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、又はホスホニウムイオンを示し、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンが好ましく、ホスホニウムイオンがより更に好ましい。ホスホニウムイオンの中でも、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び耐熱性を向上させる観点から、テトラアルキルホスホニウムイオンが好ましく、テトラブチルホスホニウムイオンがより好ましい。
【0048】
前記一般式(1)中、nは、中性水で印刷層を除去できるようにする観点、及び耐熱性を向上させる観点から、1が好ましい。
【0049】
前記水溶性樹脂組成物中の前記有機塩化合物の含有量は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0050】
前記水溶性樹脂組成物中の前記有機塩化合物の含有量は、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、前記有機塩化合物のアルキルスルホン酸イオン(R1-SO3
-)の物質量(mol)と、前記水溶性樹脂の親水性基の物質量(mol)とスルホン酸塩基の物質量(mol)との合計の比(前記有機塩化合物のアルキルスルホン酸イオンの物質量/前記水溶性樹脂の親水性基の物質量とスルホン酸塩基の物質量の合計)が、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上が更に好ましく、0.03以上が更に好ましく、中性水で印刷層を除去できるようにする観点から、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.2以下が更に好ましい。
【0051】
(相溶化剤(成分γ))
前記水溶性樹脂組成物は、基材や印刷層との接着性を向上させる観点から、相溶化剤を含有してもよい。当該相溶化剤としてはBondfast(登録商標)7B、Bondfast 7M(以上、住友化学社製)、ロタダー(登録商標)AX8840(アルケマ社製)、JONCRYL(登録商標)ADR4370S、JONCRYL ADR4368CS、JONCRYL ADR4368F、JONCRYL ADR4300S(以上、BASF社製)、ARUFON(登録商標)UG4035、ARUFON UG4040、ARUFON UG4070(以上、東亜合成社製)が例示できる。酸無水物基を有する反応性相溶化剤としては、ユーメックス(登録商標)1010(三洋化成社製)、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、モディパー(登録商標)A8200(日本油脂社製)、OREVAC(登録商標)(アルケマ社製)、FG1901、FG1924(以上、クレイトンポリマー社)、タフテック(登録商標)M1911、タフテックM1913、タフテックM1943(以上、旭化成ケミカルズ社製)が例示できる。イソシアネート基を有する反応性相溶化剤としてはカルボジライトLA-1(登録商標)日清紡社製が例示できる。
【0052】
前記水溶性樹脂組成物の前記成分α100質量部に対する前記成分γの含有量は、印刷層の耐水性を向上させる観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましく、同様の観点から、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0053】
前記水溶性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有していても良い。当該他の成分の例としては、前記成分α以外の樹脂、安息香酸ポリアルキレングリコールジエステル等の可塑剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス球、黒鉛、カーボンブラック、カーボン繊維、ガラス繊維、タルク、ウォラストナイト、マイカ、アルミナ、シリカ、カオリン、ウィスカー、炭化珪素等の充填材、エラストマー等が挙げられる。
【0054】
その他必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、密着助剤、レオロジーコントロール剤、防曇剤、着色剤、架橋剤、pH調整剤、皮膜形成剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを適宜添加してもよい。
【0055】
前記エラストマーとしては、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びシリコーン系エラストマーが例示できる。これらの中でもアクリル系エラストマー、及びスチレン系エラストマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アクリル系エラストマーがより好ましい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン共重合体、及びスチレン-ブタジエン-エチレン共重合体からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。アクリル系エラストマーとしてはメタクリル酸-アクリル酸アルキル共重合体が好ましい。前記エラストマーの市販品としては、クラリティ(登録商標)LA2250、クラリティLA2140、クラリティLA4285(以上、クラレ社製)が例示できる。前記オレフィン系エラストマーとしては、Kraton(登録商標)ERSポリマー(クレイトンポリマー社製)、Kraton Aポリマー、Kraton Gポリマー(以上、クレイトンポリマー社製)、「タフテックH」シリーズ、「タフテックP」シリーズ(旭化成ケミカルズ社製)、セプトン(登録商標)、ハイブラー(登録商標)(以上、クラレプラスチックス社)が例示できる。
【0056】
前記成分α100質量部に対する前記水溶性樹脂組成物の前記エラストマーの含有量は、印刷層の耐水性を向上させる観点から、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、同様の観点から、100質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、40質量部以下が更に好ましく、20質量部以下が更に好ましい。
【0057】
前記印刷用水溶性樹脂および前記印刷用水溶性樹脂組成物は、印刷層に含有させることにより、印刷層に中性水への可溶性を付与することができる。すなわち、前記印刷用水溶性樹脂および前記印刷用水溶性樹脂組成物は、印刷層に中性水への可溶性を付与するための可溶性付与剤として用いることができる。また、前記印刷用水溶性樹脂および前記印刷用水溶性樹脂組成物を印刷用ビヒクルとして用いることにより、印刷層に中性水への可溶性を付与することができる。また、前記印刷用水溶性樹脂および前記印刷用水溶性樹脂組成物は、印刷プライマーに用いることにより、印刷層を中性水で安全かつ効率よく除去可能でありながら耐水性に優れる印刷物を実現できる。
【0058】
<印刷物の製造方法、及び印刷層除去方法>
〔第1の実施形態〕
[印刷物の製造方法]
第1の実施形態の印刷物の製造方法は、基材上に前記印刷用水溶性樹脂を含有する水溶性印刷層を形成する水溶性印刷層形成工程を有する。当該印刷物は、前記印刷用水溶性樹脂を含有する水溶性印刷層を有する。
【0059】
(水溶性印刷層形成工程)
前記水溶性印刷層形成工程は、基材上に前記印刷用水溶性樹脂を含有する水溶性印刷層を形成する工程である。
【0060】
前記基材は印刷の対象となるものであれば特に限定されない。また、印刷の対象である前記基材の成分も特に限定されず、樹脂基材、金属基材、ガラス基材、紙基材、木材基材、繊維質基材が挙げられる。さらに樹脂基材ではナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66などのナイロン系樹脂の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)などのポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などのポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂等の合成樹脂が例示できる。
【0061】
前記水溶性印刷層形成工程で用いられる印刷方法としては特に限定されず、例えば、インクジェット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平板印刷法、孔版印刷法等を用いることができる。
【0062】
前記水溶性印刷層形成工程において印刷に用いられるインキは当該印刷層形成工程で用いられる印刷方法に適したインキであり、前記印刷用水溶性樹脂が含有されていれば特に限定されない。前記水溶性印刷層形成工程において印刷に用いられるインキは、公知のインキに前記印刷用水溶性樹脂を添加したものでもよいし、前記印刷用水溶性樹脂を含有する印刷インキ用ビヒクルに顔料その他の添加剤を添加したものでもよい。
【0063】
(印刷インキ用ビヒクル)
前記印刷インキ用ビヒクルは、前記印刷用水溶性樹脂、水溶性有機溶剤、界面活性剤及び水を含有する。
【0064】
(水溶性有機溶剤)
前記水溶性有機溶剤は、常温(25℃)で液体であっても固体であってもよい。本明細書において、水溶性有機溶剤とは、有機溶剤を25℃の水100mLに溶解させたときに、その溶解量が10mL以上である有機溶剤をいう。
【0065】
前記印刷インキ用ビヒクル中の前記水溶性有機溶剤の総量は、レベリング性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、そして、環境負荷を少なくする観点から、70質量%以下であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。
【0066】
前記水溶性有機溶剤の沸点は、100℃未満であってよい。沸点が100℃未満の前記水溶性有機溶剤としては、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール等の一価アルコールが挙げられ、これらの中でも2-プロパノールが好ましい。
【0067】
前記印刷インキ用ビヒクル中の前記沸点が100℃未満の水溶性有機溶剤の含有量は、レベリング性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、そして、レベリング性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましく55質量%以下である。
【0068】
前記水溶性有機溶剤は、レベリング性を向上させる観点から、沸点が100℃以上260℃以下のグリコールエーテルを含んでいてもよい。
【0069】
前記グリコールエーテルの分子量は、好ましくは70以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは140以上であり、そして、好ましくは200以下、より好ましくは190以下、更に好ましくは180以下である。
【0070】
前記グリコールエーテルの沸点は、レベリング性を向上させる観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上であり、そして、好ましくは240℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましく200℃以下である。ここで、沸点とは標準沸点(1気圧下での沸点)を表す。2種以上のグリコールエーテルを用いる場合には、前記グリコールエーテルの沸点は、各グリコールエーテルの含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
【0071】
前記グリコールエーテルとしては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
【0072】
前記グリコールエーテルのアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。該アルキル基は、好ましくは分岐鎖である。
【0073】
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、乾燥性及びレベリング性を向上させる観点から、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールジアルキルエーテルから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アルキレングリコールモノアルキルエーテルがより好ましく、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルが更に好ましい。
【0074】
前記印刷インキ用ビヒクル中の前記グリコールエーテルの含有量は、レベリング性を向上させる観点から、1質量%以上であり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上であり、そして、レベリング性を向上させる観点から、10質量%以下であり、好ましくは9質量%以下、より好ましく8質量%以下である。
【0075】
前記印刷インキ用ビヒクル中の前記水溶性有機溶剤の総量に対する前記グリコールエーテルの質量比〔グリコールエーテル/水溶性有機溶剤総量〕は、好ましくは5/10~10/10、より好ましくは6/10~10/10、更に好ましくは10/10である。
【0076】
(界面活性剤)
前記界面活性剤は、好ましくはアニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系以外のノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上であり、これらを2つ以上併用してもよい。
【0077】
これらの中でも、レベリング性をより向上させる観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。前記ノニオン性界面活性剤としては、アルコール系、シリコーン系があり、これらを2つ以上併用しても構わない。印刷基材への濡れ性の観点から、シリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0078】
前記シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテル変性シリコーンが印刷基材への濡れ性の観点から好ましく、PEG-11メチルエーテルジメチコンが、更に好ましい。
【0079】
前記界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤を含んでいるのが好ましい。当該アセチレングリコール系界面活性剤としては、レベリング性を向上させる観点から、炭素数8以上22以下のアセチレングリコール及び該アセチレングリコールのエチレン付加物が好ましく、炭素数8以上22以下のアセチレングリコールがより好ましい。前記アセチレングリコールの炭素数は、好ましくは10以上、より好ましく12以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。具体的には、レベリング性を向上させる観点から、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、及び2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオールから選ばれる1種又は2種以上のアセチレングリコール、及び該アセチレングリコールのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらの中でも、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールが好ましい。
【0080】
(水)
前記印刷インキ用ビヒクルの水の含有量は、揮発性有機化合物を低減しつつ、レベリング性を向上する観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは39質量%以上であり、そして、良好な乾燥性を有しつつ、レベリング性を向上する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは82質量%以下である。前記水溶性有機溶剤、前記界面活性剤及び水以外の他の任意成分が前記印刷インキ用ビヒクルに含有される場合は、水の含有量の一部を他の成分に置き換えて含有することができる。
【0081】
(インキ)
前記インキは、前記印刷用水溶性樹脂及び顔料を含有する。
【0082】
(顔料)
前記顔料の種類は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
【0083】
前記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、黒色インキにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。白色インキにおいては、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物等が挙げられる。これらの無機顔料は、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、高級脂肪酸金属塩等の公知の疎水化処理剤で表面処理されたものであってもよい。
【0084】
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
【0085】
前記顔料の色相は特に限定されず、有彩色インキにおいては、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、ブルー、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
【0086】
前記インキ中の顔料の含有量は、印刷濃度の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは9質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0087】
前記顔料は、ポリマー粒子内に分散させて、顔料含有ポリマー粒子として前記インキに含有されていてもよい。
【0088】
前記顔料含有ポリマー粒子を構成するポリマーは、インキに用いられるポリマーであれば特に限定されない。当該ポリマーが、前記印刷用水溶性樹脂以外のポリマー(以下、ポリマーaとも称する。)である場合、当該ポリマーaは、水溶性ポリマー及び水不溶性ポリマーのいずれも好ましく用いることができるが、水不溶性ポリマーがより好ましい。
【0089】
前記水不溶性ポリマーとは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g未満であるポリマーをいい、その溶解量は好ましくは5g未満、より好ましくは1g未満である。アニオン性ポリマーの場合、溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
【0090】
前記ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられ、顔料の分散安定性の観点から、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物等のビニル単量体の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
【0091】
前記ビニル系ポリマーとしては、(a-1)イオン性モノマー(以下「(a-1)成分」ともいう)に由来する構成単位を含有することが好ましく、(a-1)イオン性モノマーと、(a-2)ノニオン性モノマー(以下「(a-2)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物A(以下、単に「モノマー混合物A」ともいう)を共重合させてなる水溶性ビニル系ポリマーがより好ましい。該水溶性ビニル系ポリマーは、(a-1)成分由来の構成単位と(a-2)成分由来の構成単位を有する。
【0092】
前記ポリマーaの重量平均分子量は、ポリマーで分散させた顔料粒子のインキ中における分散安定性を向上させる観点、及びインキの印刷基材への定着強度を向上させる観点から、好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは50,000以上であり、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下、更に好ましくは200,000以下、より更に好ましくは100,000以下である。
【0093】
((a-1)イオン性モノマー)
前記イオン性モノマーとしては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられ、アニオン性モノマーが好ましい。
【0094】
前記アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられ、好ましくはカルボン酸モノマー、より好ましくはアクリル酸である。
【0095】
((a-2)ノニオン性モノマー)
前記ノニオン性モノマーとしては、スチレン系モノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシ(エチレングリコール-プロピレングリコール共重合)(n=1~30、その中のエチレングリコール:n=1~29)(メタ)アクリレート等が挙げられ、スチレン系モノマーが好ましい。
【0096】
前記スチレン系モノマーとしては、スチレン、2-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0097】
前記インキ中の前記ポリマーaの含有量は、定着性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下である。
【0098】
前記顔料に対するポリマーaの質量比〔ポリマーa/顔料〕は、インキ安定性を向上させる観点から、好ましくは0.2/99.8~70/30、より好ましくは1/99~50/50、更に好ましくは10/90~40/60、より更に好ましくは20/80~30/70である。
【0099】
前記インキ中の顔料含有ポリマー粒子の含有量は、印刷濃度及び定着性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下である。
【0100】
前記顔料含有ポリマー粒子は、特開2018―83938号公報段落0083製造例IIに記載の方法で製造できる。
【0101】
前記インキは、その用途に応じて、任意成分として、pH調整剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0102】
[印刷層除去方法]
第1の実施形態の印刷層除去方法は、前記印刷物を30℃以上の中性水で処理し、前記水溶性印刷層を除去する印刷層除去工程を有する。
【0103】
前記印刷層除去工程における、印刷物を処理する中性水の温度は、印刷層を効率よく除去する観点から30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましく、60℃以上が更に好ましい。水温の上限、及びリサイクル工程における温度制御の容易性の観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
【0104】
前記印刷物を30℃以上の中性水で処理する方法としては特に限定されず、例えば、浸漬洗浄、電解洗浄、スプレー洗浄、スクラブ洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄等が挙げられる。また、前記印刷物に裁断等の処理を施した後、前記中性水で処理してもよい。
【0105】
前記印刷層除去方法により、前記印刷層が除去された基材を得ることができる。
【0106】
〔第2の実施形態〕
[印刷物の製造方法]
第2の実施形態の印刷物の製造方法は、基材上に前記印刷用水溶性樹脂を含有する水溶性印刷プライマー層を形成する水溶性印刷プライマー層形成工程、及び前記水溶性印刷プライマー層上に印刷層を形成する印刷層形成工程を有する。当該印刷物は、前記基材と、前記印刷用水溶性樹脂を含有する水溶性印刷プライマー層と、前記印刷層と、をこの順に有する。
【0107】
(水溶性印刷プライマー層形成工程)
前記水溶性印刷プライマー層形成工程は、基材上に前記印刷プライマー用水溶性樹脂を含有する水溶性印刷プライマー層を形成する工程である。
【0108】
本実施形態で用いることができる基材は、前記第1の実施形態で用いることができる基材と同様である。
【0109】
前記基材上に前記水溶性印刷プライマー層を形成する方法は特に限定されず、例えば、前記印刷プライマー用水溶性樹脂又は前記印刷プライマー用水溶性樹脂組成物を含有する塗布液を調製し、当該塗布液をグラビア方式、凸版(フレキソ)方式、オフセット方式、ロールコーター方式(転写方式)、スプレー方式、刷毛塗り方式、バーコーター方式、インクジェット方式、スクリーン方式、ダイコート方式、スピンコート方式、ディップ方式、メイヤーバー方式、エアナイフ方式等の従来の塗布方法で塗布した後、乾燥させる方法が挙げられる。
【0110】
前記塗布液中の前記水溶性樹脂の濃度としては、塗布の効率性、及び印刷プライマー層の均一性の向上の観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
【0111】
前記塗布液の調製に用いられる溶剤は、溶剤として用いることができるものであれば特に限定なく用いることができる。
【0112】
基材上に塗布した塗布液を乾燥させる方法は、特に限定なく従来の乾燥方法を適用することができる。
【0113】
前記基材上に形成された水溶性印刷プライマー層の乾燥後の厚さは、前記水溶性印刷プライマー層上に形成される印刷層に係るインク等が前記水溶性印刷プライマー層を透過して基材に付着するのを防ぐ観点、及びコスト低減の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上が更に好ましく、プライマー層の柔軟性、並びに生産性の向上、及びコスト低減の観点から、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましく、10μm以下が更に好ましい。
【0114】
(印刷層形成工程)
前記印刷層形成工程は、前記水溶性印刷プライマー層上に印刷層を形成する工程である。当該印刷層形成工程で用いられる印刷方法としては特に限定されず、例えば、インクジェット印刷法、電子写真印刷法、レーザー印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平板印刷法、孔版印刷法等を用いることができる。
【0115】
印刷に使用するインキに関しては特に限定されず、前記印刷層形成工程で用いられる印刷方法に適したインキが挙げられる。前記印刷層形成工程で用いられるインキは、前記印刷用水溶性樹脂を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
【0116】
なお、水溶性印刷プライマー層の形成と印刷層の形成は連続式(インライン)で行ってもよく、脱離層の形成と印刷とを別々に行ってもよい。
【0117】
[印刷層除去方法]
第2の実施形態の印刷層除去方法は、前記水溶性印刷プライマー層及び前記印刷層を除去する以外は、前記第1の実施形態の印刷層除去方法と同様である。
【0118】
前記印刷層除去方法により、前記水溶性印刷プライマー層及び前記印刷層が除去された基材を得ることができる。
【0119】
本実施形態の印刷プライマーは、家庭用の洗剤等の、湿度の高い環境下に置かれることの多い容器等のラベルの印刷プライマーとして、使用することができる。
【実施例】
【0120】
圧力は、絶対圧力で表記する。「常圧」とは101.3kPaを示す。
【0121】
<合成方法>
水溶性樹脂組成物1~14、アクリル-スチレン共重合体組成物の合成方法を以下に記す。水溶性樹脂の全モノマーユニットの合計に対するモノマーユニットAの割合、水溶性樹脂又はアクリル-スチレン共重合体組成物の重量平均分子量及び原料の添加量から算出された組成物中の水溶性樹脂又はアクリル-スチレン共重合体組成物の含有量を表1に示す。
【0122】
〔水溶性樹脂組成物1の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)に2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(東京化成工業社製、一級)97.7g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)40.6g、エチレングリコール(富士フイルム和光純薬工業社製、特級)76.7g、チタンテトラブトキシド(東京化成工業社製、一級)82mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製、特級)506mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで1時間かけて、ヒーターの表面の温度を140℃から260℃まで昇温し、その温度で6.5時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(竹本油脂社製、エレカットS-418)6.89gを添加し、15分間撹拌した。その後、30分間かけて、ヒーターの表面の温度を260から290℃まで昇温し、同時に常圧から5.3kPaまで減圧し、そのまま1.5時間反応を行った。この後、800Paで30分間撹拌しながら反応を行った後、前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻した。常圧で15分間かけてヒーターの表面の温度を290℃から295℃まで昇温した後、420Paで15分間撹拌しながら反応を行い、この後15分間かけて470Paから100Paまで徐々に減圧度を増しながら撹拌して反応を行った。最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して水溶性ポリエステル樹脂1を含有する水溶性樹脂組成物1を得た。
【0123】
〔水溶性樹脂組成物2の合成〕
ヒーターの表面の温度を260℃に維持して、6.5時間撹拌してエステル交換反応を行った後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加及び15分間攪拌する操作を行わなかった以外は、水溶性樹脂組成物1の合成と同様の操作を行い、水溶性ポリエステル樹脂2を含有する水溶性樹脂組成物2を得た。
【0124】
〔水溶性樹脂組成物3の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)に2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(東京化成工業社製)195.4g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)81.3g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)188.1g、チタニウムテトラブトキシド(東京化成工業社製)0.16g、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)0.41gを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで50分間かけて、ヒーターの表面の温度を160℃から260℃まで昇温し、その温度で6.5時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、常圧から1.5kPaまで減圧し、1時間反応を行った後、1.5から1.0kPaまで減圧し、6時間反応を行った。最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して、水溶性ポリエステル樹脂3を含有する水溶性樹脂組成物3を得た。
【0125】
〔水溶性樹脂組成物4の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)にテレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)150.0g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)99.2g、1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製、シスートランス混合物)109.2g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)77.6g、チタンテトラブトキシド(東京化成工業社製)158mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)391mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで50分間かけてヒーターの表面の温度を160℃から260℃まで昇温し、その温度で6時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、30分間かけてヒーターの表面の温度を260から280℃まで昇温し、同時に常圧から5.0kPaまで減圧し、そのまま3時間反応を行った。その後、280℃のまま3.5kPaまでさらに減圧して1.5時間反応を行い、最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して、水溶性ポリエステル樹脂4を含有する水溶性樹脂組成物4を得た。
【0126】
〔水溶性樹脂組成物5の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)にテレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)100.0g、イソフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)100.0g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)91.5g、1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製、シスートランス混合物)145.6g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)103.4g、チタンテトラブトキシド(東京化成工業社製)210mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)563mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで25分間かけて、ヒーターの表面の温度を160℃から220℃まで昇温し、その温度で6時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、10分間かけて、ヒーターの表面の温度を220から240℃まで昇温し、同時に常圧から1.5kPaまで減圧し、そのまま8時間反応を行った。その後、240℃のまま0.3kPaまでさらに減圧して5.5時間反応を行い、最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して、水溶性ポリエステル樹脂5を含有する水溶性樹脂組成物5を得た。
【0127】
〔水溶性樹脂組成物6の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)にテレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)100.0g、イソフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)100.0g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)45.8g、1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製、シスートランス混合物)128.8g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)91.5g、チタンテトラブトキシド(東京化成工業社製)210mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)563mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで25分間かけて、ヒーターの表面の温度を160℃から220℃まで昇温し、その温度で6時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、20分間かけて、ヒーターの表面の温度を220から240℃まで昇温した。その後、50分かけて常圧から1.0kPaまで減圧し、そのまま10.5時間反応を行い、最後に常圧に戻して、水溶性ポリエステル樹脂6を含有する水溶性樹脂組成物6を得た。
【0128】
〔水溶性樹脂組成物7の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)にテレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)150.0g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)99.2g、1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製、シスートランス混合物)109.2g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)77.6g、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(竹本油脂社製、エレカットS-418)16.6g、チタンテトラブトキシド(東京化成工業社製)158mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)391mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで50分間かけてヒーターの表面の温度を160℃から260℃まで昇温し、その温度で6時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、30分間かけてヒーターの表面の温度を260から280℃まで昇温し、同時に常圧から5.0kPaまで減圧し、そのまま5.5時間反応を行った。最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して、水溶性ポリエステル樹脂7を含有する水溶性樹脂組成物7を得た。
【0129】
〔水溶性樹脂組成物8の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)にテレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)160.0g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)73.2g、1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製、シスートランス混合物)116.4g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)43.9g、トリエチレングリコール(東京化成工業社製)36.4g、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(竹本油脂社製、エレカットS-418)16.8g、チタニウムテトラブトキシド(東京化成工業社製)168mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)417mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで35分間かけて、ヒーターの表面の温度を160℃から230℃まで昇温し、その温度で6.5時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、10分間かけて、ヒーターの表面の温度を230から250℃まで昇温し、同時に常圧から3.0kPaまで減圧し、そのまま4.5時間反応を行った。最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して、水溶性ポリエステル樹脂8を含有する水溶性樹脂組成物8を得た。
【0130】
〔水溶性樹脂組成物9の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)にテレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)200.0g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)91.5g、1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製、シスートランス混合物)101.0g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)105.5g、イソソルビド(東京化成工業社製)45.2g、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(竹本油脂社製、エレカットS-418)21.1g、チタニウムテトラブトキシド(東京化成工業社製)210mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)521mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで30分間かけて、ヒーターの表面の温度を160℃から220℃まで昇温し、その温度で6.5時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、10分間かけて、ヒーターの表面の温度を220から240℃まで昇温し、同時に常圧から3.0kPaまで減圧し、そのまま2時間反応を行った。その後、3.0から2.0kPaまで減圧して5時間反応を行った後、2.0から1.0kPaまで減圧して2.5時間反応を行った。最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して、水溶性ポリエステル樹脂9を含有する水溶性樹脂組成物9を得た。
【0131】
〔水溶性樹脂組成物10の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)にテレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)200.0g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)132.1g、1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製、シスートランス混合物)133.7g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)78.4g、イソソルビド(東京化成工業社製)45.2g、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(竹本油脂社製、エレカットS-418)24.2g、チタニウムテトラブトキシド(東京化成工業社製)210mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)521mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで30分間かけて、ヒーターの表面の温度を160℃から220℃まで昇温し、その温度で6時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、10分間かけて、ヒーターの表面の温度を220から240℃まで昇温し20分間攪拌した後、常圧から1.0kPaまで減圧し、そのまま6.5時間反応を行った。最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して、水溶性ポリエステル樹脂10を含有する水溶性樹脂組成物10を得た。
【0132】
〔水溶性樹脂組成物11の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)にテレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)100.0g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(東京化成工業社製、シスートランス混合物)98.6g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)91.6g、1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製、シスートランス混合物)146.0g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)104.5g、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(竹本油脂社製、エレカットS-418)19.8g、チタンテトラブトキシド(東京化成工業社製)210mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)563mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで25分間かけて、ヒーターの表面の温度を160℃から220℃まで昇温し、その温度で6時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、10分間かけて、ヒーターの表面の温度を220から240℃まで昇温し、同時に常圧から1.5kPaまで減圧し、そのまま3.5時間反応を行った。その後、240℃のまま0.3kPaまでさらに減圧して5.5時間反応を行い、最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して、水溶性ポリエステル樹脂11を含有する水溶性樹脂組成物11を得た。
【0133】
〔水溶性樹脂組成物12の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)にテレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)100.0g、アジピン酸ジメチル(東京化成工業社製)105.7g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)91.6g、1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製、シスートランス混合物)146.0g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)104.5g、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(竹本油脂社製、エレカットS-418)20.2g、チタンテトラブトキシド(東京化成工業社製)210mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)563mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで25分間かけて、ヒーターの表面の温度を160℃から220℃まで昇温し、その温度で6時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、10分間かけて、ヒーターの表面の温度を220から240℃まで昇温し、同時に常圧から2.0kPaまで減圧し、そのまま5時間反応を行った。その後、240℃のまま0.4kPaまでさらに減圧して12時間反応を行い、最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して、水溶性ポリエステル樹脂12を含有する水溶性樹脂組成物12を得た。
【0134】
〔水溶性樹脂組成物13の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)にテレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)100.0g、イソフタル酸ジメチル(東京化成工業社製)100.0g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(三洋化成工業社製)91.5g、1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製、シスートランス混合物)145.6g、1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)103.4g、、チタンテトラブトキシド(東京化成工業社製)210mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)563mgに加えて、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(竹本油脂社製、エレカットS-418)21.6gを仕込んだ以外は、水溶性樹脂組成物5の合成と同様の合成を行い、水溶性ポリエステル樹脂13を含有する水溶性樹脂組成物13を得た。
【0135】
〔水溶性樹脂組成物14の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)に2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(東京化成工業社製、一級)97.7g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)40.6g、エチレングリコール(富士フイルム和光純薬工業社製、特級)76.7g、チタンテトラブトキシド(東京化成工業社製、一級)82mg、酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製、特級)506mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで1時間かけて、ヒーターの表面の温度を140℃から260℃まで昇温し、その温度で6.5時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(竹本油脂社製、エレカットS-418)6.89gを添加し、15分間撹拌した。その後、30分間かけて、ヒーターの表面の温度を260から290℃まで昇温し、同時に常圧から5.3kPaまで減圧し、そのまま1時間半反応を行った。この後、800Paで30分間撹拌しながら反応を行った後、前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻した。常圧で15分間かけて、ヒーターの表面の温度を290℃から295℃まで昇温した後、420Paで15分間撹拌しながら反応を行い、この後15分間かけて470Paから100Paまで徐々に減圧度を増しながら撹拌して反応を行った。最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して水溶性ポリエステル樹脂14を含有する水溶性樹脂組成物14を得た。
【0136】
〔水溶性樹脂組成物15の合成〕
2Lステンレス製セパラブルフラスコ(K字管、撹拌機、窒素導入管付)に2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(東京化成工業社製、一級)182.3g、テレフタル酸ジメチル(東京化成工業社製、一級)80.0g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)25.7g、エチレングリコール(富士フイルム和光純薬工業社製、特級)185.7g、酢酸マグネシウム(富士フイルム和光純薬工業社製)379mgを仕込み、常圧、窒素雰囲気下、撹拌しながらマントルヒータで40分かけて、ヒーターの表面の温度を160℃から240℃まで昇温し、その温度で6.5時間撹拌してエステル交換反応を行った。その後、三酸化アンチモン(富士フイルム和光純薬工業社製)237mg、リン酸トリエチル(富士フイルム和光純薬工業社製)142mg、シリカゲル332mgを添加した後、30分間かけて、ヒーターの表面の温度を240℃から285℃まで昇温し、同時に常圧から500-600Paまで減圧し、そのまま6時間反応を行った。最後に前記ステンレス製セパラブルフラスコに窒素を導入し、常圧に戻して水溶性ポリエステル樹脂15を含有する水溶性樹脂組成物15を得た。
【0137】
〔アクリル-スチレン共重合体組成物の合成〕
反応容器に70質量部のスチレン(富士フイルム和光純薬工業社製)、30質量部のアクリル酸(富士フイルム和光純薬工業社製)、150質量部の酢酸エチル(富士フイルム和光純薬工業社製)、150質量部のイソプロピルアルコール(富士フイルム和光純薬工業社製)、及び1.2質量部のアゾビスイソブチロニトリル(富士フイルム和光純薬工業社製)を加えて混合し、窒素ガス雰囲気下、70℃で8時間重合して、アクリル-スチレン共重合体を含有するアクリル-スチレン共重合体組成物を得た。共重合体中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、モノマーユニットAの物質量の割合は、原料の添加量より算出した。
【0138】
<評価方法>
〔水溶性ポリエステル樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムから誘導されるモノマーユニット(モノマーユニットA)の物質量の割合〕
試料を重クロロホルム、重トリフルオロ酢酸の混合溶媒に溶解し、Agilent社製NMR、MR400を用いたプロトンNMR測定により5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムから誘導されるモノマーユニット(モノマーユニットA)中のベンゼン環由来ピークの積分値Aを、モノマーユニットA中のベンゼン環に対応するプロトンの数で除した物質量A、及びテレフタル酸ジメチルもしくはイソフタル酸ジメチルもしくはその両方から誘導されるモノマーユニット(モノマーユニットB)中のベンゼン環由来ピークの積分値Bを、モノマーユニットB中のベンゼン環に対応するプロトンの数で除した物質量Bを算出した。物質量Aを、物質量A及び物質量Bの和の2倍量で除して求められた値を100分率で表したもの(100×物質量A/(2×(物質量A+物質量B)))を、水溶性ポリエステル樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、モノマーユニットAの物質量の割合とした。
【0139】
ただし、前記モノマーユニットBがシクロヘキサン又はアジピン酸から誘導されるモノマーユニットの場合、水溶性ポリエステル樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムから誘導されるモノマーユニット(モノマーユニットA)の物質量の割合は、以下の方法で求めた。
【0140】
試料を重クロロホルム、重トリフルオロ酢酸の混合溶媒に溶解し、Agilent社製NMR、MR400を用いたプロトンNMR測定により5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムから誘導されるモノマーユニット(モノマーユニットA)中のベンゼン環由来ピークの積分値Aを、モノマーユニットA中のベンゼン環に対応するプロトンの数で除した物質量A、テレフタル酸ジメチルもしくはイソフタル酸ジメチルもしくはその両方から誘導されるモノマーユニット(モノマーユニットB)中のベンゼン環由来ピークの積分値Bを、モノマーユニットB中のベンゼン環に対応するプロトンの数で除した物質量B、及び脂肪族カルボン酸ジメチルから誘導されるモノマーユニット(モノマーユニットC)中のカルボニルα位に相当するピークの積分値Cを、モノマーユニットC中のエステル近傍に対応するプロトンの数で除した物質量Cを算出した。物質量Aを、物質量A、物質量B及び物質量Cの和の2倍量で除して求められた値を100分率で表したもの(100×物質量A/(2×(物質量A+物質量B+物質量C)))を、水溶性ポリエステル樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、モノマーユニットAの物質量の割合とした。
【0141】
〔重量平均分子量(Mw)〕
下記条件により、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用いて標準ポリスチレン、または標準ポリメチルメタクリレートから校正曲線を作成し、重量平均分子量(Mw)を求めた。
(測定条件1:水溶性ポリエステル樹脂1~7、9~14、アクリル-スチレン共重合体)
・装置:HLC-8320 GPC(東ソー社製、検出器一体型)
・カラム:α-M×2本(東ソー社製、7.8mmI.D.×30cm)
・溶離液:60mmol/Lリン酸+50mmol/L臭素化リチウムジメチルホルムアミド溶液
・流量:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・検出器:RI検出器
・標準物質:ポリスチレン
(測定条件2:水溶性ポリエステル樹脂8)
・装置:HLC-8320 GPC(東ソー社製、検出器一体型)
・カラム:TSK-Gel Super AWM-H(東ソー社製)
・溶離液:HFIP/0.5mMトリフルオロ酢酸ナトリウム
・流量:0.2mL/min
・カラム温度:40℃
・検出器:RI検出器
・標準物質:ポリメチルメタクリレート(PMMA)
(測定条件3:水溶性ポリエステル樹脂15)
・装置:HLC-8320 GPC(東ソー社製、検出器一体型)
・カラム:ShodexGPCHFIP-604、ShodexGPCHFIP-605(昭和電工社製)
・溶離液:HFIP/0.5mMトリフルオロ酢酸ナトリウム
・流量:0.2mL/min
・カラム温度:40℃
・検出器:RI検出器
・標準物質:ポリメチルメタクリレート(PMMA)
【0142】
〔ガラス転移温度〕
260℃に加熱したホットプレートにポリイミドフィルムに挟んだサンプルを置き、上からスパチュラを押し付けて、厚さ約0.2mmのシートを作成した。このシートから5~10mgのサンプルをハサミで切り出し、アルミパンに精秤して封入し、DSC装置(セイコーインスツル社製DSC7020)を用い、30℃から250℃まで10℃/minで昇温させた後、設定温度を30℃にして冷却した。再び10℃/minで250℃まで昇温させて得られたDSC曲線より、各樹脂組成物のガラス転移温度(℃)を求めた。
【0143】
<プライマー層の評価>
〔サンプルの作成〕
(実施例1~10、22~23、比較例1~4)
表1及び2に記載の基材フィルム上に、表1及び2に記載の水溶性樹脂組成物:20質量%、脱イオン水:80質量%の水溶液を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で5分間加熱することで乾燥させ、印刷プライマー層を形成させた。さらにこの印刷プライマー層上に、希釈液(東洋インキ社製、PN102溶剤)でザーンカップ#3で15秒となるように粘度を調整した油性グラビアインキ(東洋インキ社製、PANNECO AМ)を使用して卓上グラビア印刷機(松尾産業社製、Kプリンティングプルーファー)にて印刷を行い、サンプルを作成した。なお、表1及び表2中の水溶性樹脂組成物16はポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA-424H)である。
【0144】
(実施例11~21、24~34)
表1及び2に記載の水溶性樹脂組成物:10質量%、脱イオン水:90質量%の水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、サンプルを作成した。
【0145】
表1及び表2に記載の基材は以下のとおりである。
PET:2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(フタムラ社製)
OPP:2軸延伸ポリプロピレン(東洋紡社製)
ONy:2軸延伸ナイロン(パナック社製)
HDPE:高密度ポリエチレン(タマポリ社製)
LLDPE:直鎖状低密度ポチエチレン(大倉工業社製)
【0146】
〔印刷物の脱離試験方法〕
作成した各サンプルを表1に記載の温度の水道水に浸漬させ、撹拌をしながら印刷物を有する印刷プライマー層の脱離状態を観察した。該印刷物が自発的にほぼ完全に10分以内に基材フィルムから脱落した場合にはその時間(分)を表記した。
【0147】
〔除去率(熱水溶解性試験)〕
作成した各サンプルを表1に記載の温度の水道水200mL中に浸漬して10分間撹拌した後、各サンプルを80℃の熱風で1時間乾燥した。水道水に浸漬前及び乾燥後の印刷物の面積を測定して得られた印刷物の面積比から印刷物の除去率を測定した。なお、印刷物の面積の測定にはRICOH社製デジタルフルカラー複合機MP C5504を使用して画質を200dpiに設定したスキャナ機能にて画像を取り込み、三谷商事社製画像処理ソフト「WinRoof」を用いて、スキャン画像を閾値236に設定して二値化処理した画像を使用して印刷物の面積を測定した。除去率は以下に示す式を用いて算出した。
除去率(%)={(M-M´)/M}×100
M:水道水に浸漬前の印刷物の面積 M´:乾燥後の印刷物の面積
【0148】
〔耐水性試験〕
各サンプルを、25℃の水道水に24時間浸漬後、基材フィルム表面の印刷物を有する脱離層の浮き上がりの有無、スパチュラを用いた引っかきによる脱離のしやすさを観察した。結果を下記の指標で評価した。
3:印刷物を有する脱離層に浮き上がりはなく、印刷物も脱離しにくい。
2:印刷物を有する脱離層に浮き上がりはないが、印刷物はやや脱離しやすい。
1:印刷物を有する脱離層に浮き上がりがあり、印刷物は軽い力で容易に脱離する。
【0149】
評価結果を表1及び表2に示す。
【0150】
【0151】
【0152】
<印刷層の評価>
〔顔料水分散体の調製方法〕
(1)2Lフラスコに脱イオン水236質量部を計量し、水不溶性スチレン-アクリルポリマー(BASF社製、ジョンクリル690、重量平均分子量:16500、酸価:240mgKOH/g)を60質量部、及び5N水酸化ナトリウム溶液36.5質量部(ナトリウム中和度:60モル%)を投入した。アンカー翼を用いて200rpmで2時間撹拌し、スチレン-アクリルポリマー水溶液332.5質量部(固形分濃度:19.9%)を得た。ディスパー翼を有する容積が2Lのベッセルに上記水溶液331.7部及び脱イオン水448.3質量部を添加し、0℃の水浴で冷却しながら、ディスパー(浅田鉄工社製、ウルトラディスパー)を用いて1400rpmで15分間撹拌した。
(2)次いでシアン顔料(C.I.ピグメント・ブルー15:3)220部を加え、6400rpmで1時間撹拌した。その分散液をジルコニアビーズ(ニッカトー社製、XTZボール、0.3mmφ)を80%充填した湿式分散機(広島メタル&マシナリー社製、ウルトラアペックスミル UAM05)に投入し、5℃の冷却水で冷却しながら周速8m/s、流量200g/分で5パス分散後、200メッシュ金網を用いて濾過を行った。
(3)上記で得られた濾液500質量部(顔料:110質量部、ポリマー:33質量部)にトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、デナコール EX-321L)7.3質量部(ポリマー中のアクリル酸に含有する架橋反応点となるカルボン酸に対し40mol%相当)、防黴剤(ロンザジャパン社製、プロキセルLV(S)、有効分:20%)1質量部を添加し、更に固形分濃度が27.3質量%になるように脱イオン水43.2部を添加し、70℃で3時間攪拌した後、200メッシュ金網で濾過し、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(顔料含有ポリマー粒子の含有量:27.3質量%、平均粒径:280nm)550.5質量部を得た。なお、顔料含有ポリマー粒子を構成するポリマーは水不溶性ポリマーである。
【0153】
〔インキ組成物1の調製方法〕
前記にて合成した水溶性樹脂組成物14を4.00g計り取り、80℃に加温した脱イオン水27.45gに溶解させ、得られた水溶液に前記記載の顔料水分散体13.47g、増粘剤(ADEKA社製、アデカノールUH-420)を1.10g加え、150rpmで撹拌した。さらにそこへジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(富士フイルム和光純薬工業社製)3.50gに2,4,7,9‐テトラメチル‐5-デシン‐4,7‐ジオールのプロピレングリコール50質量%溶液(エアープロダクツアンドケミカルズ社製、サーフィノール104PG-50)0.30g、PEG‐11メチルエーテルジメチコン(信越シリコーン社製、KF-6011)0.15gを加えた混合溶液を加えて、室温下で30分間撹拌後、ステンレス金網(200メッシュ)で濾過し、インキ組成物1を得た。
【0154】
〔インキ組成物2の調製方法〕
前記にて合成した水溶性樹脂組成物14を2.00g計り取り、80℃に加温した脱イオン水8.00gに溶解させ、得られた水溶液に2-プロパノール(富士フイルム和光純薬工業社製)10.00g加えて、希釈液を調製した。市販水性グラビアインキ40.00gに前記にて調製した希釈液を20.00g加えて、室温下で30分間撹拌後、ステンレス金網で濾過し、インキ組成物2を得た。
【0155】
〔インキ組成物3の調製方法〕
2-プロパノールを添加しなかった以外はインキ組成物1の調製方法と同様にしてインキ組成物3を得た。
【0156】
[サンプルの作成]
表3に記載の各インキ組成物を用いて、PETフィルム(フタムラ化学社製、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)のコロナ処理面にグラビア印刷を行った。印刷は、卓上グラビア印刷機(松尾産業社製、Kプリンティングプルーファー)を用いて付属の電子彫刻プレート(線数175線/インチ、版深度31μm)で印刷濃度100%のベタ印刷を行った。
【0157】
〔印刷物の脱離試験方法〕
作成した各サンプルを表3に記載の温度の水道水に浸漬させ、撹拌をしながら印刷物を有する印刷物の脱離状態を観察した。該印刷物が自発的にほぼ完全に10分以内に基材フィルムから脱落した場合にはその時間(分)を表記した。
【0158】
〔除去率(熱水溶解性試験)〕
作成した各サンプルを表3に記載の温度の水道水200mL中に浸漬して10分間撹拌した後、各サンプルを80℃の熱風で1時間乾燥した。水道水に浸漬前及び乾燥後の印刷物の面積を測定して得られた印刷物の面積比から印刷物の除去率を測定した。なお、印刷物の面積の測定にはRICOH社製デジタルフルカラー複合機MP C5504を使用して画質を200dpiに設定したスキャナ機能にて画像を取り込み、三谷商事社製画像処理ソフト「WinRoof」を用いて、スキャン画像を閾値236に設定して二値化処理した画像を使用して印刷物の面積を測定した。除去率は以下に示す式を用いて算出した。
除去率(%)={(M-M´)/M}×100
M:水道水に浸漬前の印刷物の面積 M´:乾燥後の印刷物の面積
【0159】
〔耐水性試験〕
各サンプルを、25℃の水道水に24時間浸漬後、基材フィルム表面の印刷物を有する脱離層の浮き上がりの有無、スパチュラを用いた引っかきによる脱離のしやすさを観察した。結果を下記の指標で評価した。
3:印刷物を有する脱離層に浮き上がりはなく、印刷物も脱離しにくい。
2:印刷物を有する脱離層に浮き上がりはないが、印刷物はやや脱離しやすい。
1:印刷物を有する脱離層に浮き上がりがあり、印刷物は軽い力で容易に脱離する。
【0160】
前記評価結果を表3に示す。
【0161】