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特許7493996接触力の変化に応答する高周波(RF)アブレーションにおける灌注速度の適応
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】接触力の変化に応答する高周波(RF)アブレーションにおける灌注速度の適応
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020081011
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2020182845
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】16/403,865
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022388(JP,A)
【文献】特開2018-149301(JP,A)
【文献】特開2017-023732(JP,A)
【文献】特開2018-126516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体組織をアブレーションするシステムであって、
アブレーションシグナルを発生させて、組織に接触しているアブレーションプローブに前記アブレーションシグナルを供給するよう構成されている発生器と、
前記アブレーションシグナルが前記組織に適用されている間に、前記組織の近傍に灌注液を施用するために、前記アブレーションプローブに前記灌注液を送り込むよう構成されている、灌注モジュールと、
プロセッサであって、
前記アブレーションプローブから、前記アブレーションプローブによって前記組織にかけられた瞬間接触力を示すシグナルを受信するように構成されており、かつ
前記灌注モジュールを制御して、灌注による組織からの熱除去の速度が、前記瞬間接触力の増減による熱の増減に一致するように、記瞬間接触力の増減に応答して前記灌注液の流速を反復的に調整し、
前記灌注液の流速を反復的に調整するための繰り返し処理において、事前設定量のアブレーションエネルギーが送達されたかどうかを判定し、前記事前設定量のアブレーションエネルギーに到達したという判定に応じて、アブレーションを終了するように構成されている、プロセッサと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記組織の温度をモニタリングし、前記灌注モジュールを制御して、モニタリングされた前記温度に応答して前記流速を適応させるよう、更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記灌注モジュールを制御して、前記流速を適応させて、最短のアブレーション期間で、最大電力レベルの前記アブレーションシグナルを維持するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
事前定義された定数として前記最大電力レベル及び前記最短のアブレーション期間の値を記憶するように構成されているメモリを備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、アブレーション指数を連続して評価し、前記アブレーション指数がアブレーション指数閾値に到達すると、前記アブレーションシグナルを停止させるよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記アブレーション指数が、前記アブレーションシグナルの電力レベルに依存する、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記アブレーション指数が、前記瞬間接触力に依存する、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高周波(RF)アブレーションに関し、特に、心臓RFアブレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
RFアブレーションを制御するための技術は、これまでに特許文献において提案された。例えば、米国特許出願公開第2016/0213282号は、力-時間積分を利用して、カテーテルベースのアブレーションシステムにおいて病変部サイズを実時間で推定する方法及び装置を記載している。この装置は、接触アブレーションプローブによって標的組織にかけられた力を測定し、接触アブレーションプローブの通電時間にわたる力を積分する。力-時間積分を計算し、利用して、病変部サイズ(深さ、体積及び/又は面積)の推定を実時間で提供することができる。力-時間積分はまた、標的組織に実時間で送達される電力変化の原因も説明し、病変部サイズの推定の一層の改善をもたらすことができる。一実施形態では、力の計量は、スチームポップを防止するためにプローブに送達される所望の電力レベルを設定するためのフィードバックとして使用することができる。更に他の実施形態では、制御システムは、通電を低下若しくは無効にすることに加えて、又はこれらの代わりに、灌注を増加させるように適応され得る。
【0003】
別の例として、米国特許第9,962,217号には、心臓カテーテルが、アブレーション部位に係合すると遠位先端部に機械的力を感知するための圧力検出器を内蔵している、組織アブレーションシステム及び方法を記載している。コントローラは、圧力検出器に応答して、部位に対する接触圧とアブレータの電力出力とエネルギー印加時間との間の関係にしたがって、アブレーション体積を計算する。このシステムは、組織をアブレーションするために、組織に、ある印加時間の間及びある電力レベルで、特定の投入量のエネルギーを印加するものであり、この場合、この投入量の印加時間及び電力レベルのうちの少なくとも1つは、機械的力に依存する。モニターは、算出されたアブレーション体積の画像表示を変化させることにより、アブレーションの進行を動的に表示することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、身体組織をアブレーションする方法であって、アブレーションシグナルを発生させることと、組織に接触しているアブレーションプローブにこのアブレーションシグナルを供給することと、を含む、方法を提供する。灌注液は、アブレーションシグナルが組織に適用されている間に、組織の近傍に灌注液を施用するために、アブレーションプローブに送り込まれる。シグナルは、アブレーションプローブから受信され、このアブレーションプローブが、アブレーションプローブによって組織にかけられた推定瞬間接触力を示す。灌注液の流速は、推定瞬間接触力に応答して適応される。
【0005】
一部の実施形態では、本方法は、組織の温度をモニタリングすることと、モニタリングされた温度に応答して灌注の流速を適応させることと、を更に含む。
【0006】
一部の実施形態では、流速を適応させることは、最短のアブレーション期間で、最大電力レベルのアブレーションシグナルを維持しながら、流速を増大又は低下させることを含む。
【0007】
一実施形態では、アブレーション期間及び最大電力レベルは、所定の定数である。
【0008】
別の実施形態では、本方法は、アブレーションシグナルを適用しながら、アブレーション指数を連続して評価することと、アブレーション指数がアブレーション指数閾値に到達すると、アブレーションシグナルを停止することと、を更に含む。
【0009】
一部の実施形態では、アブレーション指数は、アブレーションシグナルの電力レベルに依存する。
【0010】
一部の実施形態では、アブレーション指数は、瞬間接触力に依存する。
【0011】
実施形態では、推定瞬間接触力に応答して流速を適応させることは、瞬間接触力の個々の推定増加量又は低下量に応答して流速を増大又は低下させることを含む。
【0012】
本発明の実施形態によれば、身体組織をアブレーションするためのシステムであって、発生器、灌注モジュール及びプロセッサを含むシステムが更に提供される。発生器は、アブレーションシグナルを発生させて、組織に接触しているアブレーションプローブにこのアブレーションシグナルを供給するよう構成されている。灌注モジュールは、アブレーションシグナルが組織に適用されている間に、組織の近傍に灌注液を施用するためにアブレーションプローブに灌注液を送り込むよう構成されている。プロセッサは、アブレーションプローブから、アブレーションプローブによって組織にかけられた推定瞬間接触力を示すシグナルを受信し、灌注モジュールを制御して、推定瞬間接触力に応答して灌注液の流速を適応させるよう構成されている。
【0013】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による、心臓の高周波(RF)アブレーション治療用システムの模式的な描写図である。
図2】本発明の実施形態による、図1のRFアブレーションシステムの操作において実施されるアルゴリズムのステップを模式的に記載するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
所与のサイズの病変部を生成することに照準を合わせたアブレーションプロセスを制御するため、高周波(RF)アブレーションシステムなどの心臓アブレーションシステムは、アブレーションされた組織の温度が、最大値を超えないことを確保しながら、灌注速度、アブレーション(例えば、RF)電力投入、及びアブレーション期間を変えることができる。それにも関わらず、生じた病変部サイズは、アブレーション中に、アブレーション電極が組織に接触するのに伴う機械的力の変化により、さまざまになり得る。したがって、接触力の変動は、相殺されない場合、制御されない及び/又は不正確なRFアブレーションの結果を引き起こすおそれがある。
【0016】
本明細書のこれ以降に記載されている本発明の実施形態は、RFアブレーションのために、改善された方法及びシステムを提供する。開示技法における根本的前提は、事前設定した時間内における、特定の病変部サイズに対するRFアブレーション中の唯一の変数が、組織がアブレーションされている際の瞬間(すなわち、瞬時)接触力、灌注流速及び組織温度であるということである。組織温度がほぼ一定であると仮定すると、一部の実施形態は、送り込まれた電力を実質的に一定に保ち、灌注流速を適応することによって、瞬間接触力の測定される変化を相殺する。
【0017】
通常、瞬間接触力が高まった状態でアブレーションプロセスを継続するために、アブレーション用のアルゴリズムを実行するプロセッサは、許容可能な範囲内で、灌注流速を増大するよう命令する。瞬間接触力が低下した場合、アブレーション用のアルゴリズムを実行するプロセッサは、アブレーションプロセスの継続状態を維持するため、灌注流速の低下を命令する。
【0018】
他の実施形態では、モニタリングされた温度変化もまた、灌注流速を適応することにより相殺される。通常、プロセッサは、組織の温度をモニタリングし、モニタリングされた温度に応答して、(一部の実施形態では、モニタリングされた温度の上昇又は低下のそれぞれに応答して)灌注流速を適応させる(例えば、増大又は低下)よう命令する。
【0019】
一部の実施形態では、本開示方法は、(a)生体体内にカテーテルなどのプローブを挿入するステップ、(b)プローブを身体内の組織に接触させるステップ、(c)電力出力レベル及びアブレーション時間を事前設定するステップ、(d)灌注の許容可能な流速範囲を事前設定するステップ、(e)瞬間接触力を測定するステップ、(f)アブレーションシグナルを発生させて、組織に接触しているアブレーションプローブにアブレーションシグナルを供給する(すなわち、プローブの1つ以上のアブレーション電極により、事前設定量の電力を組織に蓄積させる)ステップ、(g)アブレーションシグナルが組織に適用されている間に、組織の近傍に灌注液を施用するために、アブレーションプローブに灌注液を送り込むステップ、(h)アブレーションプローブから、アブレーションプローブによって組織にかけられた推定瞬間接触力を示すシグナルを受信するステップ、及び(j)推定瞬間接触力に応答して、灌注液の流速を適応させるステップを含む。
【0020】
一部の実施形態では、身体組織をアブレーションするシステムであって、(i)患者の身体内の組織中の特定の病変部を生成するために必要な目標量のアブレーションエネルギーの値を記憶するよう構成されており、かつ最大電力レベル及び最短のアブレーション期間の個々の値を更に記憶するよう構成されているメモリ、(ii)アブレーションプローブに灌注液を送り込むように構成されている灌注モジュールであって、アブレーションプローブが、(iia)組織に接触させるように、(iib)組織の近傍に灌注液を施用するように構成されている灌注モジュールを含むシステムが提供される。アブレーションプローブは、プローブによって組織にかけられた瞬間接触力を検知するための手段を更に含む。
【0021】
提供されるシステムは、アブレーションシグナルを発生させて、アブレーションプローブにアブレーションシグナルを供給するよう構成されている発生器、及び(a)アブレーションプローブから、アブレーションプローブによって組織にかけられた推定瞬間接触力を示すシグナルを受信するように構成されており、かつ(b)灌注モジュールを制御して、推定瞬間接触力に応答して灌注液の流速を適応させるように構成されているプロセッサを更に含む。
【0022】
灌注の流速に応答して変化することにより、電極が組織にかける瞬間接触力の変化を相殺する、開示されているRFアブレーション技法により、最短のアブレーション期間、最大RF電力レベルを維持することが可能になり得、そうすることにより、カテーテルに基づくRFアブレーション手技の臨床的結果を改善することができる。
【0023】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、心臓高周波(RF)アブレーション療法のためのシステム12の概略描写図である。通常、システム20のメモリ45は、図2に記載のプロトコルなどの、異なる臨床的シナリオのための多数のアブレーションプロトコルを記憶する。
【0024】
医師26は、血管を通して対象22の心室24内にカテーテル28を挿入し、カテーテルの遠位端部32が治療される領域内の心内膜に接触するように、カテーテルを操作する。挿入画25に見られるカテーテル28の先端電極51は、1つ以上の接触力センサ50を備える。
【0025】
アブレーション部位に遠位端部32を位置決めし、先端が心内膜に確実に接触するようにした後、操作者26は、制御コンソール42内のRFエネルギー発生器44を作動させて、ケーブル38を介して遠位端部32にRFエネルギーを供給する。その間に、制御可能な灌注ポンプ48を備える灌注モジュール55は、管40及びカテーテル28内の内腔を介して、標準生理食塩水などの冷却流体を、遠位端部に供給する。通常、アブレーション前及びアブレーション中の両方において、ディスプレイ46は、以下の表Iに列挙されるものなどのアブレーションパラメータの値を、医師26に表示する。
【0026】
システム12を操作するため、プロセッサ41は、以下に更に記載されている灌注モジュール55を制御する。特に、プロセッサ41は、以下で更に説明するとおり、プロセッサ41による開示されるステップの実行を可能にする、図2に含まれている、本明細書において開示されている専用アルゴリズムを実行する。
【0027】
RFエネルギー発生器及び灌注ポンプの操作は、アブレーション中に適切な体積の灌注を与えるために調整されてもよく、これにより、灌注液で心臓に過剰に負荷を与えることなく、カテーテルの先端及び組織を冷却する。接触力センサ50はそれぞれ、灌注流速の制御に使用するためのコンソール42にフィードバックを提供する。
【0028】
実施形態では、アブレーション中に、カテーテル28の先端電極51に位置する1つ以上の温度センサ52は、組織温度を感知して、解析及び使用のために温度表示シグナルをプロセッサ41に送信することができる。
【0029】
プロセッサ41は、メモリ45内に記憶されたソフトウェアを用いてシステム20を操作する。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、プロセッサ41に電子形態でダウンロードすることができるか、又は代替として、又は更には、磁気メモリ、光学メモリ又は電子メモリなどの、非一時的な有形媒体上で提供及び/又は記憶されてもよい。特に、プロセッサ41は、以下で更に説明するとおり、プロセッサ41により開示されるステップの実行を可能にする、図2に含まれている、本明細書において開示されている専用アルゴリズムを実行する。
【0030】
図示されている実施形態は、具体的には、心臓組織のアブレーション用先端アブレーション装置の使用に関するが、本明細書に記載されている方法は、代替的に、各電極による灌注操作がプロセッサ41によって独立して制御される場合に、複数のアブレーション電極を備えるアブレーション装置に適用することができる。代替的な実施形態では、プロセッサ41は、すべての電極によって共有される灌注流れを制御する。すべての電極の間の最大瞬間接触力に関するフィードバックを使用して、プロセッサは、共通した灌注の流速を適応させる。
【0031】
接触力の変化に応答する高周波(RF)アブレーションにおける灌注速度の適応
図2は、本発明の実施形態による、図1のRFアブレーションシステム20の動作において実施されるアルゴリズムのステップを模式的に示すフローチャートである。このプロセスは、パラメータ範囲の事前設定ステップ70で開始され、この間に、医師26は、アブレーション電力及び時間(すなわち、期間)を事前設定する。このようなステップには、異なる臨床的シナリオに合わせて多くのプロトコルを作成することが含まれてもよく、このようなプロトコルは、例えば、システム20のメモリ45に保存される。
【0032】
一実施形態では、それらの値/範囲は、表Iに示すように設定される:
【0033】
【表1】
【0034】
パラメータ範囲の設定ステップ70は、医師26がアブレーションを行う前に実行される。特に、アブレーション時間(すなわち、アブレーション期間)及び最大電力レベルは、所定の定数である。しかし、電力、時間及び流速の値/範囲は、例えば、病変部の深さ目標に応じてさまざまに設定されてもよい。低度の深さ(2mm未満)、中度の深さ(2mm~3.5mm)、高度の深さ(3.5mm~5.0mm)、及び更に高度の深さ(5.0mm超)に関する表は、本特許出願の譲受人に譲渡されており、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、「Energy-Guided Radiofrequency(RF)Ablation」と題する、2019年2月28日出願の米国特許出願第16/288,838号に記載されている。
【0035】
一部の実施形態では、アブレーション期間であるTは、ある期間にわたる電力レベル×接触力の積分である、最大限許容可能なアブレーション指数(AI)、すなわちアブレーション指数閾値(AIT)を提供し、この積分を解き、所与のAIT入力値の関数としての期間を抽出することにより、アブレーショ中に判定される。プロセッサは、アブレーションプロセスの間にAIを連続的に評価して、AIがAITに到達すると、アブレーションを停止するよう構成されている。
【0036】
AITの式に関する一例は、本特許出願の譲受人に譲渡されており、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2017/0014181号に記載されている。AIT1と表される、この例のアブレーション指数閾値(AIT)は、式
【0037】
【数1】
を有しており、ここでは、この積分は、期間Tにわたる、接触力CFの第1の非単一指数αと電力値Pの第2の非単一指数βとの積であり、kは比例定数であり、γは第3の非単一指数である。α、β、γ及びkの値は、上述の米国特許出願公開第2017/0014181号に開示されている方法により決定される。代替的な実施形態では、プロセッサは、AIT2と表示されるAITの第2の式を使用して、アブレーション期間を判定し、この場合、第2のAITは、
【0038】
【数2】
により与えられる。
【0039】
アブレーションセッションの開始時に、カテーテル導入ステップ72において、医師26は、システム20に内蔵されたカテーテル位置追跡システムを使用して、心臓24内の所望の位置にカテーテル28を挿入する。
【0040】
次に、医師26は、電極-組織接触ステップ74において、電極先端51と心臓内組織との間の物理的接触を行う。プロセッサ41は、接触力判定ステップ76において、カテーテル28上にあるセンサからの接触力表示シグナルを受信して、瞬間接触力、及び/又は接触力が増大又は低下したかどうかを判定する。
【0041】
灌注ステップ78において、プロセッサ41は、灌注モジュール55を制御し、判定された瞬間機械力の増大又は低下のそれぞれに応答して、灌注流速を増大又は低下させる。例えば、瞬間接触力が増大した場合、プロセッサ41は、灌注モジュール55に、電極と組織との間の一層良好な物理的接触のために、灌注による熱除去の速度が、蓄積した熱増加に一致するよう、灌注流れを瞬時に増加させるように命令する。一方、熱がそれほど蓄積しないことを意味する、瞬間接触力が低下(熱がそれほど蓄積しないことを意味する)し、組織が過度に冷却され得る場合、プロセッサ41は、灌注流れを瞬時に低下させるよう灌注モジュール55に命令する。
【0042】
RF送達ステップ80では、医師26は、電極51のアブレーションを行うため、ステップ70において選択したパラメータ値を用いて、システム20を操作する。システム20のディスプレイ46は、当該技術分野で公知の方法によって、医師26に、電極へのRF送達の進行を表示するよう構成され得る。
【0043】
RF送達手技の間、プロセッサ41は、一巡してステップ78に戻すことにより、N回の繰り返し測定を使用して、瞬間接触力をモニタリングする。N回の繰り返し数は、表I中のアブレーション時間と接触力サンプリング速度の積により計算される。この場合、yの例は、N=20である。プロセッサ41は、ステップ78を繰り返すことにより、瞬間接触力に応じて、灌注流速を修正することを、灌注モジュール55に応答可能に命令する。
【0044】
各繰り返し時に、プロセッサ41は、アブレーションエネルギーモニタリングステップ82において、事前設定量のアブレーションエネルギーが送達されたかどうかを確認する。アブレーション終了ステップ84では、プロセッサ84は、ステップ70において事前設定された電力及び時間により生じるアブレーションエネルギーに到達した後に、又は表示した時間が経過した後に、アブレーションを終了する。
【0045】
図2に示されている例となるフローチャートは、単に概念をわかりやすくする目的で選択されている。例として、一層高い速度が使用され得る場合には、接触力のサンプリング速度がもたらされる。本実施形態はまた、一層単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書では意図的に本開示から省略されている、組織温度の確認などのアルゴリズムの追加ステップを含む。
【0046】
本明細書に記述される実施形態は、主に、心臓用途に対処するものであるが、本明細書に記載されている方法及びシステムは、腎臓(例えば、腎臓の脱神経の場合)及び肺などの身体の他の臓器のアブレーションに使用することができる。
【0047】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述のさまざまな特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 身体組織をアブレーションする方法であって、
アブレーションシグナルを発生させて、組織に接触しているアブレーションプローブに前記アブレーションシグナルを供給することと、
前記アブレーションシグナルが前記組織に適用されている間に、前記組織の近傍に灌注液を施用するため、前記アブレーションプローブに前記灌注液を送り込むことと、
前記アブレーションプローブから、前記アブレーションプローブによって前記組織にかけられた推定瞬間接触力を示すシグナルを受信することと、
前記推定瞬間接触力に応答して、前記灌注液の流速を適応させることと、
を含む、身体組織をアブレーションする方法。
(2) 前記組織の温度をモニタリングすることと、モニタリングされた前記温度に応答して灌注の前記流速を適応させることと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記流速を適応させることが、最短のアブレーション期間で、最大電力レベルの前記アブレーションシグナルを維持しながら、前記流速を増大又は低下させることを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記アブレーション期間及び前記最大電力レベルが、所定の定数である、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記アブレーションシグナルを適用しながら、アブレーション指数を連続して評価することと、前記アブレーション指数がアブレーション指数閾値に到達すると、前記アブレーションシグナルを停止することと、を含む、実施態様3に記載の方法。
【0049】
(6) 前記アブレーション指数が、前記アブレーションシグナルの電力レベルに依存する、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記アブレーション指数が前記瞬間接触力に依存する、実施態様5に記載の方法。
(8) 前記推定瞬間接触力に応答して前記流速を適応させることが、前記瞬間接触力の個々の推定増加量又は低下量に応答して、前記流速を増大又は低下させることを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 身体組織をアブレーションするシステムであって、
アブレーションシグナルを発生させて、組織に接触しているアブレーションプローブに前記アブレーションシグナルを供給するよう構成されている発生器と、
前記アブレーションシグナルが前記組織に適用されている間に、前記組織の近傍に灌注液を施用するために、前記アブレーションプローブに前記灌注液を送り込むよう構成されている、灌注モジュールと、
プロセッサであって、
前記アブレーションプローブから、前記アブレーションプローブによって前記組織にかけられた推定瞬間接触力を示すシグナルを受信するように構成されており、かつ
前記灌注モジュールを制御して、前記推定瞬間接触力に応答して前記灌注液の流速を適応させるように構成されている、プロセッサと、
を含む、システム。
(10) 前記プロセッサが、前記組織の温度をモニタリングし、前記灌注モジュールを制御して、モニタリングされた前記温度に応答して前記流速を適応させるよう、更に構成されている、実施態様9に記載のシステム。
【0050】
(11) 前記プロセッサが、前記灌注モジュールを制御して、前記流速を適応させて、最短のアブレーション期間で、最大電力レベルの前記アブレーションシグナルを維持するよう構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(12) 事前定義された定数として前記最大電力レベル及び前記最短のアブレーション期間の値を記憶するように構成されているメモリを備える、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記プロセッサが、前記灌注モジュールを制御して、前記灌注モジュールに前記瞬間接触力の個々の推定増加量又は低下量に応答して前記流速を増大又は低下させるよう命令することにより、前記推定瞬間接触力に応答して前記流速を適応させるよう構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(14) 前記プロセッサは、アブレーション指数を連続して評価し、前記アブレーション指数がアブレーション指数閾値に到達すると、前記アブレーションシグナルを停止させるよう構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(15) 前記アブレーション指数が、前記アブレーションシグナルの電力レベルに依存する、実施態様14に記載のシステム。
【0051】
(16) 前記アブレーション指数が、前記瞬間接触力に依存する、実施態様14に記載のシステム。
図1
図2