(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】溶接部近傍のナット取付構造
(51)【国際特許分類】
F16B 37/04 20060101AFI20240527BHJP
F16B 39/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F16B37/04 M
F16B39/02 E
(21)【出願番号】P 2020081160
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】池田 敏彰
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143399(JP,A)
【文献】実開昭60-174267(JP,U)
【文献】実開昭62-202516(JP,U)
【文献】実開平03-114617(JP,U)
【文献】実開昭59-070915(JP,U)
【文献】特開2002-295435(JP,A)
【文献】特開2020-024030(JP,A)
【文献】特開2012-151691(JP,A)
【文献】特開平10-026037(JP,A)
【文献】特開2018-155312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/02
F16B 37/06
F16B 39/10
F16B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁部に折曲部を有する取付プレートと、
該取付プレートの折曲部を被取付部材に溶接して成る溶接ビードと、
前記取付プレートの前記折曲部以外の部分と前記被取付部材との間に形成された隙間と、
前記取付プレートの前記折曲部以外の部分に貫通形成された多角形状または長孔状の装着孔と、
該装着孔と同形状に形成され前記装着孔にクリアランスを介して回転不能に収容されたナットと、
該ナットから前記隙間に延出されたフランジと、を備え
、
前記取付プレートの装着孔に収容されたナットのフランジが、前記取付プレートに点付け溶接またはロー付けされている、ことを特徴とする溶接部近傍のナット取付構造。
【請求項2】
前記取付プレートの装着孔に収容された前記ナットの厚さが、前記取付プレートの厚さ
以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の溶接部近傍のナット取付構造。
【請求項3】
前記ナットにボルトがネジ込まれ、該ボルトと前記ナットとの間に被締結部材が挟持された状態となっている、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の溶接部近傍のナット取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部近傍のナット取付構造に係り、特に、溶接時の熱によるネジ部の変形を抑制できる溶接部近傍のナット取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1(a)に示すように、溶接部近傍のネジ構造として、プレートaに直接タップ処理を施してネジ孔bを形成しておき、そのネジ孔b付きのプレートaの縁部を被取付部材cに溶接して取り付けたものが知られている。dは溶接ビードである。このように被取付部材cに溶接されたプレートaのネジ孔bには、
図1(b)に示すように、ボルトeがネジ込まれ、ボルトeとプレートaとの間に被締結部材fが挟持される。この構造においては、ネジ孔b付きプレートaを被取付部材cに溶接する際、溶接熱によってネジ孔bに変形が生じ易く、ボルトeを適切にネジ込むことが困難となり得る。この場合、ネジ孔bをリタップ処理して修正する必要がある。
【0003】
しかし、被取付部材cが例えばアクスルケース等の密封性が要求される部品の場合、
図1(b)に示すように、ネジ孔bの下方の被取付部材cに孔を開けることができないため、タップ工具をネジ孔bの奥までネジ込むことができず、リタップ処理によるネジ孔修正に膨大な工数が必要となる。一方、
図1(a)に示す溶接部(溶接ビードd)となるプレートのa縁部とネジ孔bとの距離L1を大きく設定し、溶接の入熱部からネジ孔bを離間させることでネジ孔bの熱変形を抑制することが考えられるが、
図1(b)に示す被取付部材c(例えばアクスルケース)の形状や周辺部品gの制約からプレートaの縁部とネジ孔bとの距離L1を大きくすることができないケースがある。
【0004】
また、溶接部近傍のナット取付構造として、
図2(a)に示すように、逆さU字状のプレートhにボルト挿通孔iを貫通形成し、プレートhの内側にボルト挿通孔iの位置に合わせてナットjを溶接し、そのナットj付き逆さU字状プレートhを被取付部材(アクスルケース等)cに溶接したものも知られている。しかし、この構造においては、逆さU字状プレートhにナットjが重なった状態となるため、ナットjの高さ分(厚さ分)だけ逆さU字状プレートhの高さH1が高くなり、被取付部材(アクスルケース等)cの周辺部品g(
図1(b)参照)の高さ方向のレイアウトの制約により成立しないケースがある。
【0005】
別の溶接部近傍のナット取付構造として、
図2(b)に示すように、ボルト挿通孔kが貫通形成された逆さU字状のブラケットmの内方にナットnを収容し、そのブラケットmを被取付部材(アクスルケース等)cに溶接した袋ナットが知られている。しかし、この袋ナットの場合も、逆さU字状ブラケットmにナットnが重なった状態となるため、ナットnの高さ分だけ逆さU字状ブラケットmの高さH2が高くなり、被取付部材(アクスルケース等)cの周辺部品g(
図1(b)参照)の高さ方向のレイアウトの制約により成立しないケースがある。
【0006】
更に別の溶接部近傍のナット取付構造として、
図2(c)に示すように、被取付部材cにボルト挿通孔pを貫通形成し、そのボルト挿通孔pの位置に合わせて被取付部材cの内側面にナットqを溶接し、ナットqに被取付部材cの外側からボルト(図示せず)をネジ込むようにした構造が考えられる。しかし、被取付部材cにボルト挿通孔pが必要となるため、被取付部材cが例えばアクスルケース等のオイル密封性が要求される部品の場合、適用できない。
【0007】
また、特許文献1には、ナットを被取付プレートに溶接する際、溶接熱によるネジ孔の変形を抑制するナットとして、ナット底面のネジ孔の周囲に環状の溝を形成した特殊ナットが開示されている。この特殊ナットは、被取付プレートに貫通形成されたボルト挿通孔の位置に合わせて、被取付プレートに溶接固定される。この溶接の際、溶接熱がナット底面に形成された環状の溝から逃げるため、ネジ孔の熱変形を抑制できる。
【0008】
しかし、被取付プレートが例えばアクスルケース等のオイル密封性が要求される部品の場合、被取付プレートに孔を開けることができないため、このようなナット取付構造は成立しない。また、このナット取付構造においては、ネジ孔にネジ込まれたボルトの締付トルクを溶接部で受けるため、締付トルクを稼ぐためには溶接ビートを大きくする必要があり、その分、入熱量が増え、環状の溝からの放熱があってもネジ孔に熱変形が生じてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、溶接部からナットまでの距離が短い場合であっても溶接熱によるネジ部の変形を抑制でき、ナットの高さ方向の取付スペースを可及的に削減でき、締付トルクを稼ぐことができる溶接部近傍のナット取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく創案された本発明に係る溶接部近傍のナット取付構造によれば、縁部に折曲部を有する取付プレートと、取付プレートの折曲部を被取付部材に溶接して成る溶接ビードと、取付プレートの折曲部以外の部分と被取付部材との間に形成された隙間と、取付プレートの折曲部以外の部分に貫通形成された多角形状または長孔状の装着孔と、装着孔と同形状に形成され装着孔にクリアランスを介して回転不能に収容されたナットと、ナットから隙間に延出されたフランジと、を備え、取付プレートの装着孔に収容されたナットのフランジが、取付プレートに点付け溶接またはロー付けされている、ことを特徴とする溶接部近傍のナット取付構造が提供される。
【0014】
本発明に係る溶接部近傍のナット取付構造においては、取付プレートの装着孔に収容された前記ナットの厚さが、前記取付プレートの厚さ以上であってもよい。
【0015】
本発明に係る溶接部近傍のナット取付構造においては、ナットにボルトがネジ込まれ、ボルトとナットとの間に被締結部材が挟持された状態となっていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る溶接部近傍のナット取付構造によれば、次のような効果を発揮できる。
(1)ナットが取付プレートの装着孔にクリアランスを介して収容されているので、そのクリアランスが取付プレートの折曲部を被取付部材に溶接する際の空気断熱層となる。よって、溶接部からナットまでの距離が短い場合であっても、溶接熱によるネジ孔の変形を抑制でき、リタップ作業が不要となる。
(2)ナットが取付プレートの装着孔に収容されているので、ナットの高さ(厚さ)方向の寸法が取付プレートの板厚に吸収され、高さ(厚さ)方向の寸法を削減できる。よって、被取付部材の周辺部品のナット高さ方向のレイアウトの制約が緩和される。
(3)装着孔およびナットが同じ多角形状または長孔状に形成されていて、相互に回転不能となっているので、ナットにボルトをネジ込んだ際の締付トルクを稼ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来例を示す説明図であり、(a)はネジ孔付きのプレートを被取付部材に溶接した平面図、(b)はそのプレートのネジ孔に被締結部材をボルトで締結した側断面図である。
【
図2】別の従来例を示す説明図であり、(a)はナットが溶接された逆さU字状プレートを被取付部材に溶接した側断面図、(b)は所謂袋ナットの側断面図、(c)は被取付部材の内側面にナットを溶接した側断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る溶接部近傍のナット取付構造の説明図であり、(a)は取付プレートの斜視図、(b)は取付プレートの装着孔にナットを収容した斜視図、(c)は取付プレートを被取付部材に溶接した側断面図である。
【
図4】(a)は
図3(c)のナットにボルトをネジ込んで被締結部材を締結した側断面図、(b)は第1変形例を示す側断面図である。
【
図5】(a)は第2変形例を示す側断面図、(b)は第3変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(溶接部近傍のナット取付構造)
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)に示すように、本発明の一実施形態に係る溶接部近傍のナット取付構造1は、縁部に折曲部2を有する取付プレート3と、取付プレート3の折曲部2を被取付部材(例えばアクスルケース)4に溶接して成る溶接ビード5と、取付プレート3の折曲部2以外の部分と被取付部材4との間に形成された隙間Wと、取付プレート3の折曲部2以外の部分に貫通形成された六角形状の装着孔6と、装着孔6と同形状(六角形状)に形成され装着孔6にクリアランスCを介して回転不能に収容されたナット7と、ナット7から隙間Wに延出されたフランジ8と、を備えている。以下、各構成要素について説明する。
【0020】
(取付プレート3、折曲部2)
図3(a)に示すように、取付プレート3は、例えば厚さ8~10mm程度の鋼板が用いられ、幅方向両端の縁部に段差状に形成された折曲部2と、これら折曲部2以外の部分すなわち折曲部2同士の間に平板状に形成された平板部9とを備えている。折曲部2の下面と平板部9の下面との段差Wは、例えば4~6mm程度に設定されている。この段差Wの寸法は、
図3(c)に示すように、取付プレート3の折曲部2を被取付部材4に溶接したとき、取付プレート3の平板部9と被取付部材4との間に形成される隙間Wの寸法となる。
【0021】
(装着孔6)
図3(a)に示すように、取付プレート3の平板部9には、六角形状の装着孔6が四個形成されている。装着孔6の形状は、六角形状に限られず、三角形、四角形、五角形、七角形以上でもよく、楕円形状でも構わない。斯様な装着孔6および段差部2を備えた取付プレート3は、平板状のブランク板をプレス加工することで、中央の平板部9に装着孔6がピアス成形され、両端に折曲部2がフォーム成形(プレス成形)される。なお、装着孔6の数は四個に限られない。
【0022】
(ナット7、クリアランスC、溶接ビード5)
図3(b)、
図3(c)に示すように、取付プレート3の装着孔6には、装着孔6と同形状のナット7が所定のクリアランスCを介して回転不能に収容されている。クリアランスCは、
図4(a)に示すように、ナット7のネジ孔にボルト10がネジ込まれて所定の締付トルクが加えられたとき、ナット7が装着孔6の内部でボルト10と共回りしない寸法であると共に、
図3(c)に示すように、取付プレート3の折曲部2の端面を被取付部材4に溶接したとき(5は溶接ビード)、溶接熱によってナット7のネジ孔が熱変形しない空気断熱層のギャップとして機能し得る寸法に設定されており、例えば、0.5~1.5mm程度に設定されている。
【0023】
(フランジ8)
図3(c)に示すように、ナット7には、その下部から取付プレート3の平板部9の下面と被取付部材4の上面との隙間Wに延出されたフランジ8が、一体的に形成されている。フランジ8は円板状に形成されており、ナット7が装着孔6から脱落することを防止するため、フランジ8の外径は装着孔(本実施形態では六角形状)6の六角孔の頂点同士の寸法よりも例えば5~7mm程度大きく設定されている。フランジ8の厚さは、取付プレート3の折曲部2の下面と平板部9の下面との段差W(=隙間W)の寸法(例えば4~6mm)より1~2mm程度薄い寸法であり、例えば、例えば3~5mm程度に設定されている。斯様なフランジ8付きのナット7が装着孔6に収容された状態の取付プレート3は、折曲部2の端面が被取付部材4に溶接(溶接ビード5)される。
【0024】
(ナット7の厚さX)
図3(c)に示すように、取付プレート3の平板部9の装着孔6に収容されたナット7の厚さXは、取付プレート3の平板部9の厚さY未満に、例えば厚さYよりも1.5~2.5mm程度小さく設定されている。これにより、
図4(a)に示すように、ナット7のネジ孔にボルト10をネジ込んでボルト10とナット7との間に被締結部材(例えばL字状プレート)11を挟持したとき、ナット7のフランジ8が僅かに撓み、被締結部材11が取付プレート3の平板部9の上面に押し付けられて強固に固定される。このとき、撓んだフランジ8の復元力により、ボルト10のネジ山とナット7のネジ山とが軸方向に押し付けられ、ボルト10の緩み止めとなる。
【0025】
(作用・効果)
以上の構成から成る本実施形態に係る溶接部近傍のナット取付構造1によれば、次のような効果を発揮できる。
【0026】
図3(c)に示すように、ナット7が取付プレート3の装着孔6にクリアランスCを介して収容されているので、そのクリアダンスCが取付プレート3の折曲部2の端面を被取付部材4に溶接する際の空気断熱層となる。よって、溶接部(溶接ビード5)からナット6までの距離Lが短い場合であっても、溶接熱によるナット7のネジ孔の変形を抑制でき、ネジ孔のリタップ作業が不要となる。すなわち、被取付部材4が例えばアクスルケースのように取付プレート3を取り付けるための取付スペースが限られている場合(
図1(b)の周辺部品g参照)であっても、溶接熱によるナット7のネジ孔の変形を抑制でき、ネジ孔のリタップ作業が不要となる。また、被取付部材(アクスルケース)4にリタップのための貫通孔を形成する必要はない。
【0027】
図3(b)、
図3(c)に示すように、ナット7が取付プレート3の装着孔6に収容されているので、ナット7の高さ(厚さ)方向の寸法Xが取付プレート3の板厚Yに吸収され、
図2(a)及び
図2(b)に示す従来例と比べると、取付プレート3の高さ(厚さ)方向の寸法Hを削減できる。よって、被取付部材4が例えばアクスルケースのようにナットの高さ方向に
図1(b)に示す周辺部品gが存在する場合であっても、レイアウトの制約が緩和される。すなわち、被取付部材4のナット7の高さ方向の周辺部品gに対してレイアウトの自由度が向上する。
【0028】
図3(b)、
図3(c)に示すように、六角形状のナット7が六角形状の装着孔6に回転不能に収容されているので、
図4(a)に示すように、ナット7のネジ孔にボルト10をネジ込んだ際の締付トルクを稼ぐことができる。なお、ナット7および装着孔6を同じ多角形状或いは長孔形状とすることで、ナット7が装着孔6に対して回転不能となっていてもよいことは既述の通りである。
【0029】
図3(c)に示すように、装着孔6に収容されたナット7の厚さXが取付プレート3の厚さYよりも小さく設定されているため、
図4(a)に示すように、ナット7のネジ孔にボルト10をネジ込んだとき、ナット7のフランジ8が僅かに撓み、被締結部材(L字状プレート)11が取付プレート3の平板部9に押し付けられて強固に固定される。このとき、撓んだフランジ8の復元力により、ボルト10のネジ山とナット7のネジ山とが軸方向に押し付けられ、ボルト10の緩み止めとなる。
【0030】
(第1変形例)
図4(b)に本発明の第1変形例を示す。この第1変形例に係る溶接部近傍のナット取付構造1aは、ナット7のフランジ8が取付プレート3の下面に点付け溶接またはロー付けされている点(12は点付け溶接部またはロー付け部)が
図4(a)に示す前実施形態と相違し、その他は前実施形態と同様の構成となっている。よって、前実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
図4(b)に示す第1変形例によれば、ナット7のフランジ8が取付プレート3に点付け溶接またはロー付けされているので、ナット7と取付プレート3とが一体品となり、この一体品を被取付部材(例えばアクスルケース)4に溶接する際、ナット7が脱落することはなく、作業性が向上する。また、点付け溶接は溶接部が小さく、ロー付けは溶接よりも温度が低いため、点付け溶接またはロー付けによるナット7のネジ孔の熱変形が抑えられる。その他、第1変形例の基本的な作用効果は、前実施形態と同様である。
【0032】
(第2変形例)
図5(a)に本発明の第2変形例を示す。この第2変形例に係る溶接部近傍のナット取付構造1bは、取付プレート3の平板部9の装着孔6に収容されたナット7の厚さXが、取付プレート3の平板部9の厚さY以上であり(例えばX-Y=2~3mm程度)、ナット7のフランジ8が、取付プレート3の下面に点付け溶接またはロー付けされている点(12は点付け溶接部またはロー付け部)が
図4(a)に示す最初の実施形態と相違し、その他は最初の実施形態と同様の構成となっている。よって、最初の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
図5(a)に示す第2変形例によれば、取付プレート3の装着孔6に収容されたナット7の厚さXが、取付プレート3の厚さY以上となっているので、ナット7のネジ孔にボルト10をネジ込んで被締結部材(L字状プレート)11を締結したとき、被締結部材11の下面と取付プレート3の平板部9の上面との間に隙間(X-Y)が形成されるものの、ナット7のフランジ8が取付プレート3に点付け溶接またはロー付けされているので、被締結部材11がガタ付くことを防止できる。また、点付け溶接は溶接部が小さく、ロー付けは溶接よりも温度が低いため、点付け溶接またはロー付けによるナットのネジ孔の熱変形が抑えられる。その他、第2変形例の基本的な作用効果は、最初の実施形態と同様である。
【0034】
(第3変形例)
図5(b)に本発明の第3変形例を示す。この第3変形例に係る溶接部近傍のナット取付構造1cは、取付プレート3の平板部9の装着孔6に収容されたナット7の厚さXが、取付プレートの平板部9の厚さY以上である点は
図5(a)に示す第2変形例と同様であるが、ナット7のフランジ8が取付プレート3に点付け溶接またはロー付けされておらず、取付プレート3と被締結部材9との間にスペーサー片13が介設されている点が第2変形例と相違する。スペーサー片13は、取付プレート3または被締結部材11に接着等によって取り付けられている。スペーサー片13の厚さは、X-Yの寸法より例えば1.5~2.5mm程度大きい。また、スペーサー片13の材質は、取付プレート3の材質および被締結部材(L字状プレート)11の材質よりも柔らかい金属が好ましい。その他、第3変形例の基本的な構成は、
図4(a)に示す最初の実施形態と同様である。
【0035】
図5(b)に示す第3変形例によれば、取付プレート3と被締結部材11との間にスペーサー片13が介設されているので、ナット7のネジ孔にボルト10をネジ込んで被締結部材11を締結したとき、スペーサー片13が僅かに潰れると共にナット7のフランジ8が僅かに撓み、被締結部材11が強固に固定される。このとき、潰れたスペーサー片13および撓んだフランジ8の復元力により、ボルト10のネジ山とナット7のネジ山とが軸方向に押し付けられ、ボルト10の緩み止めとなる。その他、第3変形例の基本的な作用効果は、最初の実施形態と同様である。
【0036】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、溶接部からナットまでの距離が短い場合であっても溶接熱によるネジ部の変形を抑制でき、ナットの高さ方向の取付スペースを可及的に削減でき、締付トルクを稼ぐことができる溶接部近傍のナット取付構造に利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 溶接部近傍のナット取付構造
2 折曲部
3 取付プレート
4 被取付部材
5 溶接ビード
6 装着孔
7 ナット
8 フランジ
9 取付プレートの折曲部以外の部分としての平板部
10 ボルト
11 被締結部材
12 点付け溶接部またはロー付け部
W 隙間
C クリアランス
X 取付プレートの装着孔に収容されたナットの厚さ
Y 取付プレートの厚さ