(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】レンズ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240527BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20240527BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/08 Z
(21)【出願番号】P 2020089830
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄介
(72)【発明者】
【氏名】早川 誠
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-152315(JP,U)
【文献】特開2015-232596(JP,A)
【文献】特開2015-184398(JP,A)
【文献】特開2015-031774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを光軸方向に沿って移動させるための第1の操作部材と、
前記第1の操作部材に力を伝える第1の弾性部材と、
前記光軸方向に沿った移動に応じて前記第1の弾性部材に加える力を変化させるための押圧部材と、
前記押圧部材を前記光軸方向に沿って移動させる第2の操作部材と、
外装部の少なくとも一部を構成する固定部材と、を有し、
前記押圧部材は、前記固定部材に前記光軸方向に沿って移動可能に保持され、前記第2の操作部材は、
円筒形状であって前記固定部材に回転可能に保持され
、
前記第2の操作部材の外周部は、前記外装部の一部を構成する第1の筒状部と、前記第1の筒状部の内径側に少なくとも1つ以上形成され前記光軸に沿った方向に突出する突出部を含み、
前記突出部を保持する前記固定部材の結合部が前記固定部材の前記外装部の内周側に形成されることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記結合部に結合するための溝部が形成されており、前記溝部の一方は、前記突出部の端部まで連通して形成され、もう一方は端部まで連通していないことを特徴とする請求項
1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記光軸を中心とする円筒形状であり、外周部が前記外装部の一部を構成する第2の筒状部を含むことを特徴とする請求項
1に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記押圧部材もしくは前記固定部材のいずれかは、前記光軸に沿った方向で突出する、少なくとも1つ以上の延長部を含
み、
前記延長部は、前記突出部と重ならないように、前記第2の操作部材の内径側に部分的に切欠かれている第1の切欠き部を挿通し、前記固定部材もしくは前記押圧部材の前記延長部を含まない方の内径側に形成される保持部に保持されることを特徴とする請求項
3に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記第2の操作部材は、回転操作される部材であり、前記第2の操作部材の回転は前記延長部によって制限されることを特徴とする請求項
4に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記押圧部材と前記第2の操作部材の内径は、前記固定部材の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記押圧部材と、前記第2の操作部材と、前記固定部材は、全周で径方向に3
つ重ならないことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記第1の筒状部の内径をR1とし、前記突出部の内周側を端部とした場合の内径をR2とするとき、
前記延長部の外径は、R2以上R1以下であることを特徴とする請求項
4に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記押圧部材が前記光軸方向に沿って移動する移動量に応じて、前記押圧部材に与える力を変化させる第2の弾性部材を有し、
前記第2の弾性部材は、前記第1の操作部材と前記押圧部材との間に少なくとも1つ以上配置されることを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記押圧部材は、第2の切欠き部を少なくとも1つ以上内径側に有し、
前記第2の弾性部材は、前記第2の切欠き部に挿通するように前記押圧部材の内径側に配置されることを特徴とする請求項
9に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記押圧部材の最内径をR3とし、前記第2の切欠き部の内周側を端部とした場合の内径をR4とするとき、
前記第2の弾性部材の外径から中心までの距離は、R3/2以上R4/2以下であることを特徴とする請求項1
0に記載のレンズ装置。
【請求項12】
請求項1~1
1のいずれか1項に記載のレンズ装置と、
該レンズ装置からの光を受光する撮像素子を備えることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、操作環(操作リング)を回転させることによって、ズーミングやフォーカシングを行うレンズ鏡筒において、操作環の操作力を調整する手段が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では第1の操作部材と第2の操作部材の間に配置された第1の弾性部材と、第1の操作部材に配置された第2の弾性部材を、第2の操作部材で加圧することで第1の操作部材の操作力を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、外装部を構成する部品よりも内径に配置された案内筒に操作力調整機構の構成部品である進退環とズーム調整環を保持する構成となっている。このような構成の場合、操作力調整機構の配置位置が、案内筒とズーム操作環の位置関係に左右されてしまい、操作力調整機構の配置位置の自由度が低くなる可能性がある。また、フォーカス操作環等の外装部品の配置によっては、操作力調整機構以外の外装部品を外径方向に逃がさないと、進退環やズーム調整環が案内筒にアクセスできない可能性があり、操作力調整機構やレンズ装置等を含む製品の外径が大型化する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、例えば、配置の自由度を向上させた小型なレンズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのレンズ装置は、レンズを光軸方向に沿って移動させるための第1の操作部材と、第1の操作部材に力を伝える第1の弾性部材と、光軸方向に沿った移動に応じて第1の弾性部材に加える力を変化させるための押圧部材と、押圧部材を光軸方向に沿って移動させる第2の操作部材と、外装部の少なくとも一部を構成する固定部材と、を有し、前記押圧部材は、前記固定部材に前記光軸方向に沿って移動可能に保持され、前記第2の操作部材は、円筒形状であって前記固定部材に回転可能に保持され、前記第2の操作部材の外周部は、前記外装部の一部を構成する第1の筒状部と、前記第1の筒状部の内径側に少なくとも1つ以上形成され前記光軸に沿った方向に突出する突出部を含み、前記突出部を保持する前記固定部材の結合部が前記固定部材の前記外装部の内周側に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、配置の自由度を向上させた小型なレンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1のレンズ鏡筒の拡大した部分断面を示す図である。
【
図3】実施例1の操作力調整機構主要部の内径側から見た斜視図である。
【
図4】実施例1の操作力調整機構主要部を示す分解斜視図である。
【
図5】実施例2のレンズ鏡筒の部分断面を示す拡大図である。
【
図7】実施例2の操作力調整機構主要部の内径側から見た斜視図である。
【
図8】実施例2の操作力調整機構主要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例を用いて説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。
【0011】
〔実施例1〕
以下、
図1から
図4を参照して、実施例1に係るレンズ鏡筒100の操作力調整機構について説明する。
【0012】
図1は、実施例1のレンズ鏡筒(レンズ装置)100の操作力調整機構を拡大した図である。
図2は、実施例1のレンズ鏡筒100の断面図である。
図3は、実施例1の操作力調整機構の主要部を内径側から見た際の斜視図を示している。
図4は、実施例1の操作力調整機構の主要部の分解斜視図を示している。
【0013】
これらの
図1から
図4において、レンズ鏡筒100は、被写体から像側(マウント側)に順に第1レンズユニットL1から第8レンズユニットL8までの8つのレンズユニット(光学レンズ、光学素子)を含む撮影光学系を保持(収納、支持)している。撮影光学系は、被写体の光学像を形成する。また、撮影光学系は焦点距離を変更する変倍(ズーム)機能を有する。
【0014】
ズーミング時には、第1レンズユニットL1、第3レンズユニットL3、第4レンズユニットL4、第5レンズユニットL5、第6レンズユニットL6、第7レンズユニットL7及び第8レンズユニットL8が光軸方向に移動する。ここで光軸方向とは、光軸に沿った方向(撮影光学系の光軸が延びる方向)をいう。また、フォーカシング時には、第6レンズユニットL6が光軸方向に移動する。なお、第3レンズユニットL3、第4レンズユニットL4、第5レンズユニットL5、第6レンズユニットL6及び第7レンズユニットL7は第2保持筒8に保持される。
【0015】
レンズ鏡筒100は、レンズ鏡筒100の本体を構成し、固定筒3と、該固定筒3の被写体側に取り付けられる固定部材としての外装環2を有する。さらに、不図示のカメラ本体(一眼レフカメラ等の撮像装置や光学機器)に取り外し可能に装着されるマウント1を有する。不図示のカメラ本体は、レンズ鏡筒100を通過した光を光電変換する撮像素子を有し、レンズ鏡筒100のレンズを通して撮像を行うことができる。
【0016】
第1レンズユニットL1は、第1保持筒7に保持される。また、レンズ鏡筒100は、案内筒4を有する。案内筒4には、第1保持筒7及び第2保持筒8を光軸方向にガイドするための不図示の直進溝部がそれぞれ光軸回り方向(周方向)にて等間隔に設けられる。実施例1では直進溝部は3本設けられる。
【0017】
カム筒5は、案内筒4の内周に設けられる。カム筒5には、第1保持筒7の移動に伴って回転することで第2保持筒8及び第8レンズユニットL8を光軸方向に駆動する不図示のカム溝部が、それぞれ周方向にて等間隔に設けられる。なお、実施例1では、カム溝は9本設けられる。第1保持筒7が案内筒4の直進溝部によりガイドされながら光軸方向に移動することでカム筒5が周方向に回転すると、第2保持筒8及び第8レンズユニットL8が案内筒4の直進溝部によりガイドされながら光軸方向に移動する。これにより、ズーミングが行われる。
【0018】
案内筒4の内周には、固定レンズユニットである第2レンズユニットL2が配置され、案内筒4に固定される。
【0019】
案内筒4の外周には、第1レンズユニットL1を保持する第1保持筒7が配置される。第1保持筒7は、後述するズーム操作環9に設けられたカム溝部と案内筒4に設けられた直進溝部に係合し、ズーム操作環9の回転に伴って光軸方向にのみ移動可能に保持される。
【0020】
カム筒5の内周には第2レンズユニットL2、第2保持筒8及び第8レンズユニットL8が配置される。第2保持筒8の内周には第3レンズユニットL3から第7レンズユニットL7が配置され、第3レンズユニットL3、第5レンズユニットL5及び第7レンズユニットL7は第2保持筒8に保持される。
【0021】
フォーカス操作環6は、不図示のフォーカスモータユニットと電気的に接続される。このため、フォーカス操作環6を回転操作することで第4レンズユニットL4及び第6レンズユニットL6がフォーカスモータユニットによって移動され、フォーカシングが行われる。
【0022】
ズーム操作環9は、案内筒4の外周に配置される。ズーム操作環9は、不図示のカム溝部が設けられており、第1保持筒7が該カム溝部と係合する。このため、ズーム操作環9が回転操作されると第1保持筒7が光軸方向に移動する。これにより、前述のように第1保持筒7、第2保持筒8及び第8レンズユニットL8が光軸方向に移動する。この移動により焦点距離を変更しうる。このように、ズーム操作環9は、レンズユニットを光軸方向に移動させるための第1の操作部材として構成される。
【0023】
進退環10は、光軸方向に進退可能な押圧部材であり、光軸を中心とする略円筒形状に構成される。ここで、
図3に示すように進退環10は、レンズ鏡筒100の外装を構成する固定部材である外装環2に対して光軸方向にのみ移動可能に保持される。また、進退環10の内径は外装環2の内径より大きく構成される。
【0024】
ズーム調整環11は、光軸回りに回転可能な部材であり、光軸を中心とする略円筒形状に構成される。ズーム調整環11は、進退環10と外装環2に光軸に沿った方向で挟まれるよう(光軸に沿った方向間)に配置される。ズーム調整環11は、外装環2とバヨネット結合により嵌合する。これにより、ズーム調整環11は、外装環2に対して光軸回りに回転可能に保持される。また、ズーム調整環11は、進退環10を光軸方向に移動させるための第2の操作部材として構成される。また、ズーム調整環11の内径は外装環2の内径より大きく構成される。
【0025】
このように、外装環2に操作力調整機構の構成部品である進退環10とズーム調整環11を保持する構成をとることで、従来技術のように操作力調整機構の配置位置が外装部よりも内径にある固定部品の配置に影響されない。そのため、操作力調整機構の配置の自由度を向上させることができる。
【0026】
また、実施例1の構成で従来と同じように、外装部よりも内径にある固定部品に進退環10やズーム調整環11を保持しようとすると、外装環2とズーム操作環9の間に進退環10やズーム調整環11を光軸方向に延長して通さなければならない。これにより、操作力調整機構が外径方向に大型化してしまう。そのため、実施例1では外装環2に進退環10とズーム調整環11を保持する構成としている。これにより、操作力調整機構を小型化することができる。また、操作力調整機構が外装部品よりも内径に配置された部品から独立しているため、外装ユニットとして外装部品を構成することができ、組立性を向上することができる。
【0027】
ズーム調整環11は、その内周部に設けられた斜面部11dが進退環10の外周部に設けられた斜面部10cに当接(接触)している。これにより、ズーム調整環11が回転操作されると、進退環10は光軸方向に移動する。
【0028】
ここで、
図1に示すように、ズーム操作環9と進退環10の間には波ワッシャ12が配置される。波ワッシャ12は、ズーム操作環9に力(押圧力)を伝えるための第1の弾性部材として構成される。また、波ワッシャ12とズーム操作環9の間には波ワッシャ12の押圧力を安定的にズーム操作環9に伝えるための押圧リング13が配置される。
【0029】
押圧リング13は、内周側に設けられた不図示の突起部がズーム操作環9に設けられた不図示の直進溝部と係合している。これにより、押圧リング13は周方向での回転が阻止されながら光軸方向への移動が可能に保持されている。
【0030】
波ワッシャ12は、押圧リング13を光軸方向後方(像面側)に付勢する。この付勢による付勢力により波ワッシャ12はズーム操作環9に押圧力を与える。また、この付勢力は進退環10をズーム調整環11に常に押し付ける。従って、ズーム調整環11の回転による進退環10の光軸方向への移動量に応じてズーム操作環9に押圧力を与えることができる。
【0031】
径方向において、ズーム操作環9と進退環10の間にはズーム調整ゴム14が配置される。ズーム調整ゴム14は、進退環10に押圧力を与える第2の弾性部材として構成される。また、ズーム調整ゴム14はズーム操作環9と進退環10の間に少なくとも1つ以上配置され、実施例1では、周方向に等間隔に3箇所、ズーム操作環9に固定される形で配置される。ズーム調整ゴム14は、ズーム調整環11の回転により進退環10が所定量以上移動することで、進退環10の端面に当接する。そのため、ズーム調整ゴム14は、進退環10が光軸方向に移動する移動量に応じて、進退環10に与える力を変化させることができる。言い換えると、ズーム調整ゴム14は、ズーム操作環9と進退環10の間の距離が所定値より離れている場合、進退環10とは接触しないように構成され、ズーム操作環9に押圧力を与えない。そして、ズーム調整ゴム14が進退環10の端面と接触することで、ズーム操作環9に押圧力を与えることができる。
【0032】
このように、ズーム調整環11の操作により進退環10が光学素子の光軸方向に移動することで、波ワッシャ12およびズーム調整ゴム14の押圧力を変化させることができる。
【0033】
以下、ズーム操作環9の操作力を調整する方法について説明する。ズーム調整環11をマウント側から見て時計回り方向に回転させていくにつれて、進退環10が光軸方向においてズーム操作環9に近づく方向に移動する。それに伴い、波ワッシャ12の圧縮量は増加していく。波ワッシャ12の圧縮量が増加すると、押圧リング13が進退環10を押す力も増加する。この押す力の増加によって、ズーム操作環9と波ワッシャ12との間の摩擦力が増加し、ズーム操作環9の必要操作力が増加する。そして、ズーム調整環11をマウント側から見て反時計回り方向に回転させていくと、ズーム操作環9の必要操作力が減少する。
【0034】
また、ズーム調整環11をマウント側から見て時計回り方向に所定量以上回転操作することで、第2の弾性部材であるズーム調整ゴム14と進退環10が当接し押圧力が発生する。その結果、ズーム調整ゴム14と進退環10との間の摩擦力が上昇し、ズーム操作環9に対してズーム調整ゴム14が固定されていることにより、ズーム操作環9の必要操作力が増加する。ズーム調整ゴム14は、進退環10の移動可能範囲の一部で進退環10と接触するように構成される。従って、進退環10の移動可能範囲は、ズーム調整ゴム14が進退環10と接触するまでの範囲である第1の範囲と、進退環10と接触してからの範囲である第2の範囲とを有する。第1の範囲は、波ワッシャ12がズーム操作環9および進退環10と接触し、かつ、ズーム調整ゴム14が進退環10と接触しない範囲である。また、第2の範囲は、波ワッシャ12がズーム操作環9および進退環10と接触し、ズーム調整ゴム14が進退環10と接触する範囲である。
【0035】
実施例1では、ズーム調整ゴム14の押圧力によって第1の弾性部材である波ワッシャ12のみで得られるズーム操作環9の必要操作力よりも大きくなる。また、ズーム調整ゴム14が当接を開始すると必要操作力の変化量が、波ワッシャ12のみの時よりも大きくなるため、ユーザ(操作者)にズーム操作環9がロック状態になったことを知らせることができる。
【0036】
ズーム調整環11を回転させることでズーム操作環9の必要操作力が変化するので、ユーザは希望するズーム操作環9の操作性に合った必要操作力が得られる位置にズーム調整環11を回転させる。また、ズーム調整環11を所定量以上回転操作することで、ズーム操作環9はロック状態となる。ロック状態となることで、誤動作を防止することができる。
【0037】
以下、実施例1における操作力調整機構の主要部について詳しく説明する。進退環10は、進退環10の外周に第2の筒状部として筒状部10aと、部分的に光軸方向に延びて少なくとも1つ以上形成される延長部10bを有する。また延長部10bは、第2の延長部として構成される。さらに進退環10は、部分的に切欠かれている切欠き部10dを少なくとも1つ以上内径側に有する。進退環10は、この切欠き部10dと筒状部10aと延長部10bから構成されうる。また、切欠き部10dは、第2の切欠き部として構成される。実施例1では、延長部10bは周方向に等間隔に3箇所設けられる。そして、
図3に示すように、進退環10の延長部10bが、後述するズーム調整環11の延長部11bと重ならないように、ズーム調整環11の切欠き部11cを挿通し、外装環2の溝部2aに対して光軸方向にのみ移動可能に保持される。また、外装環2の溝部2aは、第1の保持部として構成される。
【0038】
前述のように、ズーム調整環11は進退環10と外装環2に光軸方向で挟まれるように配置される。ズーム調整環11は
図4に示すように、ズーム調整環11の外周に第1の筒状部として構成される筒状部11aと、部分的に光軸方向に延びて少なくとも1つ以上形成され、かつバヨネット溝を有する延長部11bを有する。また、延長部11bは、第1の延長部として構成される。実施例1では延長部11bは、周方向に等間隔に3箇所設けられる。また、延長部11bは、第1の突出部として構成される。さらにズーム調整環11は、部分的に切欠かれている切欠き部11cを少なくとも1以上内径側に有する。ズーム調整環11は、この切欠き部11cと筒状部11aと延長部11bから構成されうる。実施例1では、切欠き部11cは周方向に等間隔に3箇所設けられる。また、切欠き部11cは、第1の切欠き部として構成される。
【0039】
ズーム調整環11は、延長部11bに配置されるバヨネット溝(溝部)を介して不図示の外装環2に配置されるバヨネット爪(結合部)にバヨネット結合され保持される。バヨネット溝の一方は延長部11bの端部まで連通して形成され、もう一方は端部まで連通してないで形成される。したがって、ズーム調整環11はバヨネット溝の端と進退環10の延長部10bによって回転端を決められた状態(回転を制限された状態)で、外装環2に対して光軸回りに回転可能に保持される。
【0040】
また、実施例1では筒状部11aの内径をR1とし、第1の延長部として構成される延長部11bの内周側を端部とした場合の内径をR2とするとき、第2の延長部として構成される延長部10bの外径は、R2以上R1以下として構成する。
【0041】
以上の構成により、外装環2、進退環10及びズーム調整環11は径方向に全周で3部品以上重ならないように配置されうる。
【0042】
前述のようにズーム調整ゴム14は、ズーム操作環9と進退環10の間に配置され、ズーム操作環9に固定される。切欠き部10dは進退環10の筒状部10aの内周に設けられ、被写体側に周方向に等間隔に3箇所設けられた溝部と、全周に設けられた環状部からなる。進退環10は、ズーム操作環9に対して光軸方向像面側から組み込む形式になっており、
図4に示すように進退環10の切欠き部10dの溝部をズーム調整ゴム14が挿通する形で組立が行われる。また、切欠き部10dの環状部はズーム操作環9が回転する際にズーム調整ゴム14が通過するために用いられる。また、進退環10の最内径をR3とし、切欠き部10dの内周側を端部とした場合の内径をR4とするとき、ズーム調整ゴム14の外径から中心までの距離は、R3/2以上R4/2以下として構成する。
【0043】
このように、進退環10に延長部10b、ズーム調整環11に延長部11bと切欠き部11cを設け、かつ外装環2に対して保持する構成にすることで、径方向に全周で重なる部品を減らすことができ、レンズ鏡筒100を径方向に小型化することができる。また、ズーム操作環9にズーム調整ゴム14が通過するための切欠き部10dを設けることで、ズーム調整ゴム14を配置することによる機構の大型化を抑制することができ、レンズ鏡筒100を小型化することができる。
【0044】
以上より、実施例1によれば、配置の自由度を向上させた小型な操作力調整機構を有するレンズ鏡筒100を提供することができる。
【0045】
〔実施例2〕
以下、実施例2として、
図5から
図8を参照して、実施例1にて説明した操作力調整機構の変形例を示す。実施例2において、実施例1と共通する構成要素については、実施例1と同符号を付して説明に代える。
【0046】
図5は、実施例2のレンズ鏡筒200の断面図の部分拡大図を示している。
図6は、実施例2のレンズ鏡筒200の断面図を示している。
図7は、実施例2の操作力調整機構主要部の内径側から見た斜視図を示している。
図8は、実施例2の操作力調整機構主要部の分解斜視図を示している。
【0047】
なお、実施例2は実施例1において外装環2、進退環10及びズーム調整環11を後述する外装環202、進退環210及びズーム調整環211に変形したものである。そのため、実施例1と同様の構成の箇所は説明を省略する。
【0048】
レンズ鏡筒200は、
図6に示すようにレンズ鏡筒200の本体として構成される部材である。
図5に示すように実施例2における操作力調整機構の構成部品は、実施例1の構成部品と同様の順番で配置される。
【0049】
実施例2において、外装環202は第3の突出部として構成される延長部202aを有する。また、進退環210は、第2の保持部として構成される溝部210aを有する。実施例2では、溝部210aは周方向に等間隔に3箇所設けられている。
図7及び
図8に示すように、外装環202の延長部202aが、後述するズーム調整環211の切欠き部211cを挿通し、進退環210の溝部210aに保持される。
外装環202の延長部202aが、進退環210の溝部210aに保持されることによって、進退環210は外装環202に対して光軸方向にのみ移動可能に配置される。
【0050】
前述のように、ズーム調整環211は進退環210と外装環202に光軸方向で挟まれるように配置される。ズーム調整環211は、
図8に示すように筒
状部211aと部分的に光軸方向に延び、バヨネット溝を有する延長部211b及び、ズーム調整環211の内径側に部分的に切欠かれている切欠き部211cから構成される。実施例2では、延長部211bと切欠き部211cは、周方向に等間隔に3箇所設けられる。また、延長部211bは第4の突出部として構成される。ズーム調整環211は、延長部211bに配置されるバヨネット溝を介して不図示の外装環202に配置されるバヨネット爪にバヨネット結合され保持される。また、ズーム調整環211はバヨネット溝の端と外装環202の延長部202aによって回転端を決められた状態で、外装環202に対して光軸回りに回転可能に保持される。
【0051】
以上の構成により、外装環202、進退環210及びズーム調整環211は径方向に全周で3部品以上重ならないように配置されうる。
【0052】
このように、外装環202に延長部202a、ズーム調整環211に延長部211bと切欠き部211c、進退環210に溝部210aを設ける。これにより、延長部202aが切欠き部211cを挿通するように溝部210a保持される構成であっても、実施例1と同様に配置の自由度を向上させた小型な操作力調整機構を有するレンズ鏡筒200を提供することができる。
【0053】
なお、上記各実施例では、第1の弾性部材として波ワッシャ12を選択したが、摩擦クラッチを用いた構成としてもよい。即ち、ズーム調整環11やズーム調整環211が回転操作されることによりズーム操作環9に加えられる押圧力が変化すればよい。
【0054】
また、上記各実施例では、第2の弾性部材として、ゴムを選択したが、板バネや波ワッシャを用いるようにしてもよく、弾性変形してズーム操作環9に加えられる押圧力が変化する部材であればよい。
【0055】
また、上記各実施例では、ズーム調整ゴム14を周方向に3個配置したが、少なくとも1個以上配置すればよく、3個以上配置するようにしてもよい。複数個配置する際には等間隔に配置するのが望ましい。
【0056】
また、上記各実施例では、ズーム操作環9の操作力を調整する操作力調整機構について説明したが、これをフォーカス操作環等のその他の操作環に適用して、その操作力を調整するようにしてもよい。
【0057】
また、上記各実施例では、進退環10の移動に進退環10とズーム調整環11の斜面部を利用したが、進退環10の移動手段は他の手段を用いて実施してもよい。
【0058】
上記各実施例の操作力調整機構は、レンズ鏡筒に適用する場合で説明したが、レンズ一体型撮像装置等の他の光学機器にも適用することができる。
【0059】
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【符号の説明】
【0060】
2、202 外装環
6 フォーカス操作環
9 ズーム操作環
10、210 進退筒
11、211 ズーム調整環
12 波ワッシャ
13 押圧リング
14 ズーム調整ゴム
100、200 レンズ鏡筒