(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】木質チップ層の表面高さ測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/02 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
G01B11/02 H
(21)【出願番号】P 2020093328
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 慶明
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-351844(JP,A)
【文献】特開2014-222156(JP,A)
【文献】特開2018-105843(JP,A)
【文献】特開2011-214933(JP,A)
【文献】特開2017-223551(JP,A)
【文献】特開2005-083816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーティクルボードの製造ラインにおける木質チップ散布工程で木質チップが散布されて形成された木質チップ層の表面の高さ測定する木質チップ層の表面高さ測定装置であって、
上記木質チップ散布工程で木質チップが散布されて形成された木質チップ層の表面に、該木質チップ層の幅方向に沿って上方から
、出射される各線状光の線方向を一致させ、一部が重畳されている各線状光を照射する
複数の線状光源と、
上記線状光により上記木質チップ層の表面に幅方向に沿って形成される光切断線を上記線状光の照射方向に対して傾斜させて方向から撮像して、上記線状光による上記木質チップ層の表面の光切断画像を取得する
各撮像範囲の一部が重畳されている複数の撮像装置と、
上記
複数の撮像装置により取得される光切断画像に基づいて、上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ測定する画像処理装置と
を備え、
上記画像処理装置は、
上記線状光の照射位置を上記木質チップ層の幅方向直交する方向に沿ってずらしながら、上記撮像装置により
定期的に取得される複数の光切断画像から、上記木質チップ層の幅方向をx方向として、該x方向と直交するy方向への光切断線の変化分(Δy)を
検出することにより、上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を
定期的に得て、上記木質チップ層の表面における高さを2次元解析するにあたり、上記光切断画像について線状光による木質チップ層の表面の切断線の検知幅の重心を求めることにより輝度差を吸収する輝度差吸収処理を行い、輝度差吸収処理済みの光切断画像について、上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を得ることを特徴とする木質チップ層の表面高さ測定装置。
【請求項2】
上記撮像装置よりも上記線状光源の数が多いことを特徴とする請求項
1記載の木質チップ層の表面高さ測定装置。
【請求項3】
上記画像処理装置では、上記撮像装置により得られる光切断画像について、上記撮像装置の光学系の収差補正処理を行い、収差補正処理済みの
光切断画について上記輝度差吸収処理を行うことを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の木質チップ層の表面高さ測定装置。
【請求項4】
上記画像処理装置では、 上記撮像装置により得られる光切断画像について、ピクセル当たりの寸法補正処理を行い、寸法補正処理済みの光切断画から上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を得ることを特徴とする
請求項3記載の木質チップ層の表面高さ測定装置。
【請求項5】
上記画像処理装置では、
上記輝度差吸収処理済みの光切断画像について、有効光切断線を選択する接合処理を行い、接合処理済みの光切断画から上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を得ることを特徴とする
請求項4記載の木質チップ層の表面高さ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティクルボードの製造ラインにおける木質チップ散布工程で木質チップが散布されて形成された木質チップ層の表面の高さを測定する木質チップ層の表面高さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木材その他植物繊維質などの小片(パーティクル)を主な原料として接着剤を用いて成形・熱圧することにより製造されるパーティクルボードは、パーティクルボードを基材として両面に単板を張った単板張りパーティクルボード、両面又は片面に化粧紙等を接着した化粧パーティクルボード、及び構造用パーティクルボードがJISにより規定されている。
【0003】
そして、例えば三層構造のパーティクルボードの製造ラインでは、
図17の工程図に示すように、搬入工程ST1において原料ヤードに搬入された原料チップは、先ず、一次選別工程ST2において異物が除去され、一次乾燥工程ST3において含水率を15%~20%に落され、粉砕工程ST4において粉砕されて、二次選別工程ST5において表裏層用の細かい小片と、内層用の比較的粗い小片が再配分される。
【0004】
再配分された細かい小片すなわち表裏層用木質チップと比較的粗い小片すなわち内層用木質チップは、接着剤配合・木質チップ散布工程ST6において、硬化剤や防水剤が添加された接着剤がスプレー塗布されて、表裏層用木質チップを散布して堆積させた表裏層と内層用木質チップを散布して堆積させた内層とが別個にマット整形されて重ね合わされて3層構造のマットに成形される。
【0005】
このようにして成形された3層構造のマットは、ホットプレス工程ST7において熱圧縮された後、次の冷却工程ST8においてクーリングターナーにより冷却され、3層構造の素地パーティクルボードとなる。
【0006】
素地パーティクルボードは、次の木口切断工程ST9においてトリミングソーにより木口が切断され、研磨工程ST10においてサンダーにより表面が研磨され、表面研磨パーティクルボードとなる。
【0007】
表面研磨パーティクルボードは、裁断工程ST11カットソーにより所定サイズにカットされ、検査・梱包工程ST12を経て製品として出荷される。
【0008】
従来、合板等のボード製造ラインでは、ボード製造のインライン上にセンサを設けてボードの反りなどを正確に測定し、検査するようにしている(例えば特許文献参照)。
【0009】
上述の如き製造工程を経て製造されるパーティクルボードは、ホットプレス工程ST7において熱圧縮される3層構造のマットに厚さむらがあると、素地パーティクルボードの密度むらを生じるなどの品質低下の原因となるので、接着剤配合・木質チップ散布工程ST6において内層用木質チップを散布して堆積させた表裏層と内層用木質チップを散布して堆積させた内層とが別個にマット整形されて段階でそれらの表面高さを測定して、木質チップを均一に散布して所定の表面高さを維持するように木質チップ散布の状況管理を行うようにしている。
【0010】
例えば
図18に示すように、木質チップ層100の表面の上方に複数台のレーザ変位計110を直線的に配列設置して、木質チップ散布工程で製造された木質チップ層の表面高さを多点計測することにより得るようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述の如く木質チップ散布工程で製造された木質チップ層の表面高さを多点計測することにより得られる表面高さ情報は、レーザ変位計による表面高さ計測精度は十分に高いのであるが、例えば
図19に示すように、点間データが欠落した離散的なでデータあるので、欠落部分の表面状態を推測して把握することになり、木質チップ層の表面プロファイルとして使用して、木質チップを均一に散布して所定の表面高さを維持するように木質チップ散布の状況管理を行うには不十分であった。また、上述の如き従来の測定方法では、木質チップ層の表面高さを広範囲に亘って測定するのに、高価なレーザ変位計を多数使用する必要があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の実情に鑑み、比較的に安価な構成要素にて、木質チップ層の表面高さを広範囲に亘って、欠落部分を生じることなく、連続的に測定できる表面高さ測定装置を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、パーティクルボードの製造ラインにおける木質チップ散布工程で木質チップが散布されて形成された木質チップ層の表面の高さ測定する木質チップ層の表面高さ測定装置であって、上記木質チップ散布工程で木質チップが散布されて形成された木質チップ層の表面に、該木質チップ層の幅方向に沿って上方から、出射される各線状光の線方向を一致させ、一部が重畳されている各線状光を照射する複数の線状光源と、上記線状光により上記木質チップ層の表面に幅方向に沿って形成される光切断線を上記線状光の照射方向に対して傾斜させて方向から撮像して、上記線状光による上記木質チップ層の表面の光切断画像を取得する各撮像範囲の一部が重畳されている複数の撮像装置と、上記複数の撮像装置により取得される光切断画像に基づいて、上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ測定する画像処理装置とを備え、上記画像処理装置は、上記線状光の照射位置を上記木質チップ層の幅方向直交する方向に沿ってずらしながら、上記撮像装置により定期的に取得される複数の光切断画像から、上記木質チップ層の幅方向をx方向として、該x方向と直交するy方向への光切断線の変化分(Δy)を検出することにより、上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を定期的に得て、上記木質チップ層の表面における高さを2次元解析するにあたり、上記光切断画像について線状光による木質チップ層の表面の切断線の検知幅の重心を求めることにより輝度差を吸収する輝度差吸収処理を行い、輝度差吸収処理済みの光切断画像について、上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を得ることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る木質チップ層の表面高さ測定装置は、上記撮像装置よりも上記線状光源の数が多いものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る木質チップ層の表面高さ測定装置において、上記画像処理装置では、上記撮像装置により得られる光切断画像について、上記撮像装置の光学系の収差補正処理を行い、収差補正処理済みの光切断画について上記輝度差吸収処理を行うとすることができる。
【0020】
また、本発明に係る木質チップ層の表面高さ測定装置において、上記画像処理装置では、上記撮像装置により得られる光切断画像について、ピクセル当たりの寸法補正処理を行い、寸法補正処理済みの光切断画から上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を得るものとすることができる。
【0022】
また、本発明に係る木質チップ層の表面高さ測定装置において、上記画像処理装置では、 上記撮像装置により得られる光切断画像について、ピクセル当たりの寸法補正処理を行い、寸法補正処理済みの光切断画から上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を得るものとすることができる。
【0023】
さらに、本発明に係る木質チップ層の表面高さ測定装置において、 上記画像処理装置では、上記輝度差吸収処理済みの光切断画像について、有効光切断線を選択する接合処理を行い、接合処理済みの光切断画から上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を得るものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、光切断画像を用いて、光切断画像について線状光による木質チップ層の表面の切断線の検知幅の重心を求めることにより輝度差を吸収する輝度差吸収処理を行い、輝度差吸収処理済みの光切断画像について、上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を得て2次元解析することにより木質チップ層の表面高さを広範囲に亘って、欠落部分を生じることなく、連続的に測定できすることができる。
【0025】
したがって、本発明によれば、多数個の高価なレーザ変位計を用いることなく、比較的に安価な構成要素にて、木質チップ層の表面高さを広範囲に亘って、欠落部分を生じることなく、連続的に測定できる表面高さ測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明を適用した木質チップ層の表面高さ測定装置の鳥瞰図である。
【
図2】上記表面高さ測定装置における線光源と撮像装置の設置状態を示す模式図である。
【
図3】上記表面高さ測定装置により作成された断面プロファイルを示す図である。
【
図4】本発明を適用した木質チップ層の表面高さ測定装置の他の構成例を示す鳥瞰図である。
【
図5】上記表面高さ測定装置の他の構成例により作成された断面プロファイルを示す図である。
【
図6】本発明を適用した木質チップ層の表面高さ測定装置の更に他の構成例を示す鳥瞰図である。
【
図7】上記表面高さ測定装置の更に他の構成例における線光源と撮像装置の設置状態を示す平面図である。
【
図8】上記表面高さ測定装置の更に他の構成例における撮像装置の取り付け状態を示す平面図である。
【
図9】上記表面高さ測定装置の更に他の構成例における画像処理装置により実行される画像処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】上記画像処理装置による収差補正処理の説明に供する模式図であり、(A)は被写体の真の形状を示し、(B)は収差補正前の画像歪み示し、(C)は収差補正後の被写体像の形状を示す。
【
図11】上記画像処理装置による輝度差吸収処理の説明に供する模式図である。
【
図12】上記画像処理装置により実行される輝度差吸収処理の手順を示すフローチャートである。
【
図13】上記画像処理装置による寸法補正処理の説明に供する模式図である。
【
図14】上記画像処理装置により接合処理の説明に供する模式図である。
【
図15】上記画像処理装置により実行される接合処理の手順を示すフローチャートである。
【
図16】上記画像処理装置により3Dデータとして出力された断面プロファイルを示す図である。
【
図17】三層構造のパーティクルボードの製造ラインを模式的に示す工程図である。
【
図18】従来の多数個のレーザ変位計による表面高さ計測状態を示す鳥瞰図である。
【
図19】多数個のレーザ変位計による表面高さ計測で得られる離散的な計測データを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、共通の構成要素については、共通の指示符号を図中に付して説明する。また、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0028】
本発明は、例えば
図1の鳥瞰図に示すように、パーティクルボードの製造ラインにおける木質チップ散布工程において、木質チップが散布されて形成されたマットすなわち木質チップ層1の表面の高さ測定する木質チップ層の表面高さ測定装置10に適用される。
【0029】
この表面高さ測定装置10は、木質チップ層1の表面に線状光Lを照射する線状光源11と、上記線光源11により線状光Lが測定光として照射された木質チップ層1の表面を撮像するCCDカメラなどの撮像装置12と、上記撮像装置12により上記木質チップ層1の表面を撮像して得られる画像情報が供給される画像処理装置13を備える。
【0030】
上記線光源11は、線状のレーザ光を出射するレーザ光源からなり、木質チップ散布工程で木質チップが散布されて形成された木質チップ層1の表面に、該木質チップ層1の幅方向DLに沿って上方から線状光Lを照射するように設置されている。
【0031】
上記撮像装置12は、上記線状光Lにより上記木質チップ層1の表面に幅方向DLに沿って形成される光切断線CLを上記線状光Lの照射方向に対して傾斜させて方向から撮像して、上記線状光Lによる上記木質チップ層1の表面の光切断画像を取得する。
【0032】
すなわち、上記撮像装置12は、
図2の模式図に示すように、上記木質チップ層1の表面に照射される線状光Lの照射方向Zに対して角度θだけ傾斜させた方向から上記木質チップ層1の表面を撮像するように設置されている。
【0033】
このように線光源11と撮像装置12に角度θを付けて木質チップ層1の上方に設置すると、木質チップ層1の表面の測定対象高さzの変動によって、線光源11から照射された線状光Lが木質チップ層1の表面で反射されて撮像装置12に入射される反射光の入射位置が変動するので、その変動分Δyから次の(1)式により、測定対象高さzを求めることができる。
【数1】
【0034】
上記画像処理装置13は、上記撮像装置12により得られる光切断画像から、上記木質チップ層1の幅方向D
Lをx方向として、該x方向と直交するy方向への光切断線の変化分(Δy)を検出することにより、上記木質チップ層1の表面の幅方向D
Lにおける高さz情報を連続的に求めて、
図3の模式図に示すように、断面プロファイルを作成する。
【0035】
すなわち、この表面高さ測定装置10は、欠落部分を生じることなく、木質チップ層1の表面の幅方向DLにおける高さzを連続的に測定できる。
【0036】
ここで、上記表面高さ測定装置10は、
図4に示すように、上記線状光源11を複数備え、各線状光源11から出射される各線状光の線方向を一致させ、各線状光の一部が重畳されているものとすることにより、上記木質チップ層1の幅方向D
Lに沿って広範囲に亘って線状光を照射することができ、幅の広い木質チップ層1を測定対象とすることができる。
【0037】
また、幅の広い木質チップ層1を測定対象が一台の撮像装置12の画角内に収まらない場合には、上記撮像装置12を複数備え、各撮像装置12の撮像範囲の一部が重畳されているものとすることにより、幅の広い木質チップ層1を測定対象として、欠落部分を生じることなく、木質チップ層1の表面の幅方向における高さzを広範囲に亘って、連続的に測定できる。
【0038】
図4に示す実施形態の表面高さ測定装置10Aでは、3台の線状光源1A、1B、1Cから出射される各線状光L
A、L
B、L
Cの線方向を一致させるように光軸合わせを行い、各線状光L
A、L
B、L
Cの一部が重畳されるようにして、2000mm幅の木質チップ層1の表面に線状光L
A、L
B、L
Cを照射し、各撮像範囲の一部が撮像画像の横方向D
Cで重畳されるように設置位置合わせを行った2台の撮像装置12A、12Bにより、上記2000mm幅の木質チップ層1の表面を撮像して得られる光切断画像から、画像処理装置13により、
図5の模式図に示すように、2000mm幅の断面プロファイルを作成することができる。
【0039】
図4に示す実施形態の表面高さ測定装置10Aでは、3台の線状光源から射出さる線方向に一致した光軸と、撮像装置12A、12Bの相対位置関係を後述する
図7、
図8に示す位置微調整機構15A、15Bからなる位置調整装置によって精緻な調整を行う。位置調整は光軸からの距離、光軸の撮像角θ、撮像装置12Aと12B間の距離である。
【0040】
また、
図6に示す実施形態の表面高さ測定装置10Bは、
図1に示した表面高さ測定装置10における線状光源1と撮像装置12による測定範囲を1200mmとしたスキャンユニットを2個連結して、有効測定幅が2000mmの表面高さ測定装置を構成したものである。
【0041】
この表面高さ測定装置10Bは、例えば、三層構造パーティクルボードの製造ラインの接着剤配合工程において内層用木質チップを散布して堆積させた表裏層と内層用木質チップを散布して堆積させた内層とが別個にマット整形されて段階でそれらの表面高さを測定して、木質チップを均一に散布して所定の表面高さを維持するように木質チップ散布工程の状況管理を行うのに使用されるもので、木質チップが散布されて形成された2000mm幅のマットすなわち木質チップ層1の搬送路を跨いで構築された高さ600mmの設置台50に連結された2個のスキャンユニット20A、20Bが設置されている。
【0042】
スキャンユニット20A、20Bには、それぞれ、
図7に示すように、撮像装置12A、12Bが線状光源11A、11Bから300mm離れた位置において、
図8に示すように、位置微調整機構15A、15Bにより4軸方向(X、Y、Z、θ)に位置調整可能に60°の狙い角θで設置されている。
【0043】
そして、この表面高さ測定装置10Bでは、2個のスキャンユニット20A、20Bにより、線状光源11A、11Bから線状光L
A、L
Bを照射することにより木質チップ層1の表面に形成される切断線を撮像装置12A、12Bで撮像することにより得られる一部が重畳された2つの光切断画像から、画像処理装置13により、
図9のフローチャートに示す手順にしたがって、上記木質チップ層1の幅方向をx方向として、該x方向と直交するy方向への光切断線の変化分(Δy)を上記木質チップ層の表面の幅方向における高さzを算出して、2000mm幅の木質チップ層1の表面の断面プロファイルを作成する画像処理を行う。
【0044】
画像処理装置13では、二台の撮像装置12A、12Bにより得られる2つの光切断画像の画像情報を取得すると(ステップS1)、先ず、各光切断画像について収差補正処理(ステップS2)を行う。
【0045】
すなわち、撮像装置12A、12Bにより得られる2つの光切断画像には、
図10の(A)に示すように被写体の真の形状に対して、(B)に示すように、撮像装置12A、12Bの各撮像光学系の収差による画像歪みがあるので、収差補正処理により、
図10の(C)に示すように被写体の真の形状になるように収差補正処理が施される。
【0046】
この収差補正処理(ステップS2)は、例えば、オープンソースのコンピューター・ビジョン・ライブラリであるOpenCV(Open Source Computer Vision Library)により実行される。
【0047】
次の輝度差吸収処理(ステップS3)では、例えば重心法により光切断画像の輝度差吸収処理を行う。
【0048】
すなわち、線状光源11A、11Bから照射することにより木質チップ層1の表面に照射される線状光L
A、L
Bは、中央に近いほど輝度が高く、撮像装置12A、12Bにより得られる2つの光切断画像の切断線の検知幅が例えば
図11に示すように、中央に近いほど広くなるので、光切断画像のピクセル解析により光切断画像における線状光L
A、L
Bによる木質チップ層1の表面の切断線の検知幅の重心を求める。
【0049】
この輝度差吸収処理(ステップS3)は、例えば
図12のフローチャートに示す手順にしたがって実行される。
【0050】
すなわち、輝度差吸収処理(ステップS3)では、光切断画像の画像データについて、ピクセルの輝度値が閾値以上であるか否かを判定する輝度値判定(S31)を行い、光切断画像の縦方向のピクセル列毎に輝度値が閾値以上のピクセルの座標とピクセル数を求める検知幅カウント処理(S32)を行う。
【0051】
そして、輝度値判定(S31)における判定結果が「No」、すなわち、縦方向のピクセル列の輝度値が閾値以上でない場合に、検知幅カウント処理(S32)で得られたピクセル数が設定値以上であるか否かを判定処理(S33)を行い、その判定結果が「No」、すなわち、縦方向のピクセル列の輝度値が閾値以上のピクセル数が設定値以上でない場合には、次の縦方向のピクセル列について上記輝度値判定(S31)と検知幅カウント処理(S32)を繰り返し行う。
【0052】
上記判定処理(S33)の判定結果が「Yes」、すなわち、縦方向のピクセル列の輝度値が閾値以上のピクセル数が設定値以上である場合には、検知幅消失判定処理(S34)を行い、その判定結果が「No」、すなわち、検知幅が消失していない場合には縦方向の次のピクセルについて上記輝度値判定(S31)と検知幅カウント処理(S32)を繰り返し行う。
【0053】
上記判定処理(S34)の判定結果が「Yes」、すなわち、検知幅が消失している場合には、上記検知幅カウント処理(S32)にて得られた縦方向のピクセル列の輝度値が閾値以上のピクセルの座標とピクセル数を用いて検知幅の重心算出処理(S35)を行う。
【0054】
そして、上記輝度値判定(S31)から重心算出処理(S35)の処理を繰り返し行うことにより、縦方向の全ピクセル列について検知幅の重心を求める。
【0055】
画像処理装置13では、このような輝度差吸収処理(S3)により、輝度差に左右されにくい切断線検出を可能にしている。
【0056】
次の寸法補正処理(S4)では、検知高さの変動に連動した寸法補正を行う。
【0057】
すなわち、
図13の模式的に示すように、同じ大きさの被写体であっても、検知高さの変動により、計測点(A点)よりも検知高さの低い計測点(B点)では被写体が小さく見えるので、撮像装置12A、12Bの画角に基づいて作成される寸法補正式を用いて、撮像装置12A、12Bにより得られる光切断画像について、計測高さからピクセル当たり寸法を補正演算することにより、切断線の検出精度を高めるようにしている。
【0058】
次の接合処理(S5)では、二台の撮像装置12A、12Bで撮像することにより得られる一部が重畳された2つの光切断画像について、例えば
図14に模式的に示すように、一方の撮像装置12Aをマスター、他方の撮像装置12Bをスレーブとして計測高さに応じてスレーブ側の撮像装置12Bにより得られた光切断画像の切り捨てを行うマスター優先切捨モードを採用して、重畳領域における有効光切断線を選択する処理を行う。
【0059】
また、二台の撮像装置12A、12Bにより得られる2つの光切断画像について、計測データの特徴が一致する箇所を見つけて重ね合わせる特徴点重点モードを予備としている。
【0060】
この接合処理(S5)は、例えば
図15のフローチャートに示す手順にしたがって実行される。
【0061】
すなわち、この接合処理(S5)では、二台の撮像装置12A、12Bにより得られる2つの光切断画像の画像座標データA、Bについて、第1のステップS51において、中心付近の平均高さ[mm]を算出し、第2のステップS52において、
[x1、y1]=(mm、合成座標) (a)
[x2、y2]=(mm、合成座標) (b)
なる(a)、(b)の設定値より係数を算出した一次方程式より合成座標を算出する。
【0062】
次の第3のステップS53において、4の倍数に調整した合成座標を求める。
【0063】
次の第4のステップS54において、 求めた合成座標より、画像座標データAについて座標情報を合成し、画像座標データBの画像データを結合して合成画像を作成する。
【0064】
次の第5のステップS55において、マスター側の撮像装置12Aにより得られた光切断画像の画像座標データAについて、合成重複範囲の長さを(c)、重複削除範囲の長さを(d)とし、(c)=(d)として、 合成重複範囲の座標情報を(c)+(d)に拡張する座標情報拡張処理を行う。
【0065】
そして、次の第5のステップS56において、座標情報拡張処理の施された光切断画像に基づいて、上記木質チップ層の表面に幅方向をx方向として、該x方向と直交するy方向への光切断線の変化分(Δy)を上記木質チップ層の表面の幅方向における高さ(z)を算出して断面プロファイルを作成する。
【0066】
また、この表面高さ測定装置10Bでは、上記線状光源11A、11Bにより線状光の照射位置を上記木質チップ層1の幅方向直交する方向に沿ってずらしながら、上記撮像装置12A、12Bにより定期的に取得される複数の光切断画像に基づいて、上記画像処理装置13により、上記木質チップ層1の表面の幅方向における高さ(z)を定期的に測定して断面プロファイルを得て、
図16に示すように、上記木質チップ層1の表面における高さ変化を2次元解析するための時間経過とともに変化する断面プロファイルを3Dデータとして出力する。
【符号の説明】
【0067】
10、10A、10B 表面高さ測定装置、11、11A、11B 線状光源、12、12A、12B 撮像装置、13 画像処理装置