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特許7494015バリア性積層フィルムおよびバリア性包装体
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  • 特許-バリア性積層フィルムおよびバリア性包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】バリア性積層フィルムおよびバリア性包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20240527BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20240527BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240527BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240527BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B27/26
B32B27/30 102
B32B27/20 Z
B65D65/40 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020094499
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187057
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中村 修
(72)【発明者】
【氏名】湊 翔太郎
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-184138(JP,A)
【文献】特開2000-052501(JP,A)
【文献】特開平08-245816(JP,A)
【文献】特開2005-349769(JP,A)
【文献】特開2018-167867(JP,A)
【文献】特開平10-156996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム層と、第一バリア性樹脂層と、第二バリア性樹脂層と、がこの順番に積層されたバリア性積層フィルムであって、
前記第一バリア性樹脂層を構成するバリア性樹脂と、前記第二バリア性樹脂層を構成するバリア性樹脂とが同じ種類の樹脂を含み、
前記第一バリア性樹脂層に含まれるアンカーコート剤の含有量をWとし、
前記第二バリア性樹脂層に含まれるアンカーコート剤の含有量をWとしたとき、
>Wの関係を満たし、
前記第一バリア性樹脂層中のアンカーコート剤の含有量(W )が、前記第一バリア性樹脂層全体に対し、1.0質量%以上50質量%以下であり、
前記第二バリア性樹脂層中のアンカーコート剤の含有量(W )が、前記第二バリア性樹脂層全体に対し、0.0質量%以上10質量%未満であり、
前記アンカーコート剤がイソシアネート系アンカーコート剤、ウレタン系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、シランカップリング剤、酢酸ビニルおよびエチレン酢酸ビニルからなる群から選択される一種または二種以上を含み、
前記第一バリア性樹脂層および前記第二バリア性樹脂層を構成するバリア性樹脂がポリビニルアルコール系重合体を含むバリア性積層フィルム。
【請求項2】
請求項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記第一バリア性樹脂層および前記第二バリア性樹脂層が無機膨潤性層状化合物をさらに含むバリア性積層フィルム。
【請求項3】
請求項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記第一バリア性樹脂層および前記第二バリア性樹脂層に含まれる前記ポリビニルアルコール系重合体の含有量(A)と前記無機膨潤性層状化合物の含有量(B)との質量比が(A/B)が50/50以上99/1以下であるバリア性積層フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記基材フィルム層がプロピレン系重合体を含むプロピレン重合体組成物により構成された一軸または二軸延伸プロピレン系重合体フィルムを含むバリア性積層フィルム。
【請求項5】
請求項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記プロピレン重合体組成物が粘着付与剤をさらに含むバリア性積層フィルム。
【請求項6】
請求項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記粘着付与剤が石油系炭化水素樹脂および水素添加石油系炭化水素樹脂から選択される少なくとも一種を含むバリア性積層フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
少なくとも一方の最外面にヒートシール性を付与できる熱融着層をさらに有するバリア性積層フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記第一バリア性樹脂層の厚みをXとし、前記第二バリア性樹脂層の厚みをXとしたとき、X/Xが1/99以上50/50以下であるバリア性積層フィルム。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記第一バリア性樹脂層の厚み(X)と前記第二バリア性樹脂層との合計の厚みが0.5μm以上10.0μm以下であるバリア性積層フィルム。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムを備える、バリア性包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性積層フィルムおよびバリア性包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
バリア性フィルムとして、基材フィルム層の表面にポリビニルアルコール系樹脂層を設けた積層フィルムが知られている。
このような積層フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開平08-245816号公報)に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、ポリオレフィンフィルムの表面処理面にポリビニルアルコール(A)と水性アンカー剤(B)の割合がA/B=99/1~80/20の水性コーティング剤を塗布した酸素バリヤー性ポリオレフィンフィルムが記載されている。
特許文献1には、このような積層フィルムは、充分なる酸素ガスバリヤー性と基材フィルムに対するPVAの接着性が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-245816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、基材フィルム層の表面にポリビニルアルコール系樹脂層を設けた積層フィルムは、高湿度下での水蒸気バリア性および層間接着性において、さらなる改善の余地があることが明らかになった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高湿度下での水蒸気バリア性および層間接着性に優れたバリア性積層フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示すバリア性積層フィルムおよびバリア性包装体が提供される。
【0008】
[1]
基材フィルム層と、第一バリア性樹脂層と、第二バリア性樹脂層と、がこの順番に積層されたバリア性積層フィルムであって、
上記第一バリア性樹脂層を構成するバリア性樹脂と、上記第二バリア性樹脂層を構成するバリア性樹脂とが同じ種類の樹脂を含み、
上記第一バリア性樹脂層に含まれるアンカーコート剤の含有量をWとし、
上記第二バリア性樹脂層に含まれるアンカーコート剤の含有量をWとしたとき、
>Wの関係を満たすバリア性積層フィルム。
[2]
上記[1]に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記第一バリア性樹脂層中のアンカーコート剤の含有量(W)が、上記第一バリア性樹脂層全体に対し、0.0質量%以上50質量%以下であり、
上記第二バリア性樹脂層中のアンカーコート剤の含有量(W)が、上記第二バリア性樹脂層全体に対し、0.0質量%以上10質量%未満であるバリア性積層フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記アンカーコート剤がイソシアネート系アンカーコート剤、ウレタン系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、シランカップリング剤、酢酸ビニルおよびエチレン酢酸ビニルからなる群から選択される一種または二種以上を含むバリア性積層フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記第一バリア性樹脂層および上記第二バリア性樹脂層を構成するバリア性樹脂がポリビニルアルコール系重合体を含むバリア性積層フィルム。
[5]
上記[4]に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記第一バリア性樹脂層および上記第二バリア性樹脂層が無機膨潤性層状化合物をさらに含むバリア性積層フィルム。
[6]
上記[5]に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記第一バリア性樹脂層および上記第二バリア性樹脂層に含まれる上記ポリビニルアルコール系重合体の含有量(A)と上記無機膨潤性層状化合物の含有量(B)との質量比が(A/B)が50/50以上99/1以下であるバリア性積層フィルム。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記基材フィルム層がプロピレン系重合体を含むプロピレン重合体組成物により構成された一軸または二軸延伸プロピレン系重合体フィルムを含むバリア性積層フィルム。
[8]
上記[7]に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記プロピレン重合体組成物が粘着付与剤をさらに含むバリア性積層フィルム。
[9]
上記[8]に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記粘着付与剤が石油系炭化水素樹脂および水素添加石油系炭化水素樹脂から選択される少なくとも一種を含むバリア性積層フィルム。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
少なくとも一方の最外面に熱融着層をさらに有するバリア性積層フィルム。
[11]
上記[1]乃至[10]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記第一バリア性樹脂層の厚みをXとし、上記第二バリア性樹脂層の厚みをXとしたとき、X/Xが1/99以上50/50以下であるバリア性積層フィルム。
[12]
上記[1]乃至[11]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記第一バリア性樹脂層の厚み(X)と上記第二バリア性樹脂層との合計の厚みが0.5μm以上10.0μm以下であるバリア性積層フィルム。
[13]
上記[1]乃至[12]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムを備える、バリア性包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高湿度下での水蒸気バリア性および層間接着性に優れたバリア性積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態のバリア性積層フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0012】
[バリア性積層フィルム]
図1は、本発明に係る実施形態のバリア性積層フィルム100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
バリア性積層フィルム100は、基材フィルム層101と、第一バリア性樹脂層102と、第二バリア性樹脂層103と、がこの順番に積層されたバリア性積層フィルム100であって、第一バリア性樹脂層102を構成するバリア性樹脂と、第二バリア性樹脂層103を構成するバリア性樹脂とが同じ種類の樹脂を含み、第一バリア性樹脂層102に含まれるアンカーコート剤の含有量をWとし、第二バリア性樹脂層103に含まれるアンカーコート剤の含有量をWとしたとき、W>Wの関係を満たす。
【0013】
本発明者らの検討によれば、基材フィルム層の表面にポリビニルアルコール系樹脂層を設けた積層フィルムは、高湿度下での水蒸気バリア性および層間接着性において、さらなる改善の余地があることが明らかになった。
そこで、本発明者らはさらに鋭意検討した結果、基材フィルム層101と、第一バリア性樹脂層102と、第二バリア性樹脂層103と、がこの順番に積層された積層構造としつつ第一バリア性樹脂層102に含まれるアンカーコート剤の含有量をWとし、第二バリア性樹脂層103に含まれるアンカーコート剤の含有量をWとしたとき、W>Wの関係を満たす構成とすることにより、高湿度下での水蒸気バリア性および層間接着性のバランスに優れた積層フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本実施形態によれば、第一バリア性樹脂層102と、第二バリア性樹脂層103とをこの順番で基材フィルム層101上に形成し、第一バリア性樹脂層102に含まれるアンカーコート剤の含有量をWとし、第二バリア性樹脂層103に含まれるアンカーコート剤の含有量をWとしたとき、W>Wの関係を満たす構成とすることにより、高湿度下での水蒸気バリア性および層間接着性に優れたバリア性積層フィルム100を実現できる。
【0014】
バリア性積層フィルム100において、第一バリア性樹脂層102の厚みをXとし、第二バリア性樹脂層103の厚みをXとしたとき、X/Xは、好ましくは1/99以上50/50以下であり、より好ましくは5/95以上30/70以下である。X/Xが上記範囲内とすることにより、バリア性能、層間接着性、取り扱い性、生産性および製造コスト等の性能バランスがより一層良好となる。
【0015】
また、第一バリア性樹脂層102の厚み(X)と第二バリア性樹脂層103の厚み(X)との合計の厚み(X+X)は、好ましくは0.5μm以上10.0μm以下、より好ましくは0.6μm以上6.0μm以下、より好ましくは0.8μm以上3.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以上2.5μm以下である。バリア性積層フィルム100はバリア性能に優れるため、合計の厚み(X+X)を上記上限値以下と薄くすることが可能である。また、合計の厚み(X+X)を上記範囲内とすると、バリア性能、層間接着性、取り扱い性、生産性、密着性、取扱い性、生産性および製造コスト等のバランスにより優れるため好ましい。
【0016】
以下、バリア性積層フィルム100を構成する各部材について説明する。
【0017】
(基材フィルム層)
本実施形態の基材フィルム層101は、好ましくは熱可塑性樹脂を含むものであり、より好ましくは熱可塑性樹脂により形成されたシート状またはフィルム状の基材により構成される。上記熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリ塩化ビニル;ポリイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、延伸性、透明性が良好な点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
【0018】
また、熱可塑性樹脂により形成されたフィルム状の基材は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。
また、基材フィルム層101の片面または両面に、他の層との接着性を改良するために、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマーコート処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
基材フィルム層101の厚さは、特に限定はされないが好ましくは1μm以上60μm以下、より好ましくは5μm以上40μm以下である。
【0019】
また、本実施形態の基材フィルム層101としては、バリア性積層フィルム100の高湿度下での水蒸気バリア性をより一層向上させる観点から、プロピレン系重合体を含むプロピレン重合体組成物により構成された一軸または二軸延伸プロピレン系重合体フィルムを含むことが好ましい。また、ポリ塩化ビニリデンなどのバリア性樹脂をコートしたプロピレン系重合体フィルムを使用してもよい。
【0020】
本実施形態に係るプロピレン系重合体組成物はプロピレン系重合体を含む。
本実施形態に係るプロピレン系重合体組成物すなわち一軸または二軸延伸プロピレン系重合体フィルムに含まれるプロピレン系重合体の含有量は、プロピレン系重合体組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。これにより、フィルムのコシ、水蒸気バリア性、機械的特性、取扱い性、外観、成形性等のバランスをより良好にすることができる。
【0021】
本実施形態に係るプロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。上記炭素数が4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。これらの中でもエチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、またブロック共重合体を形成してもよい。エチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、プロピレン系重合体の全体を100モル%としたとき、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。基材フィルム層101中のプロピレン系重合体は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、耐熱性、水蒸気バリア性、機械的特性および剛性等の性能バランスにより一層優れたバリア性積層フィルム100を得る観点から、プロピレン系重合体としてはプロピレン単独重合体が好ましい。
【0022】
本実施形態に係るプロピレン系重合体は種々の方法により製造することができる。例えばチーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0023】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される本実施形態に係るプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは10g/10分以下、さらに好ましくは7g/10分以下である。
【0024】
本実施形態に係るプロピレン系重合体組成物は、バリア性積層フィルム100高湿度下での水蒸気バリア性をより一層向上させる観点から、粘着付与剤をさらに含むことが好ましい。
本実施形態に係る粘着付与剤としては、一般的に粘着付与剤として製造・販売されている粘着性を付与する性質を有する樹脂状物質を用いることができる。
このような粘着付与剤としては、例えば、クロマン・インデン樹脂等のクロマン系樹脂;フェノール・ホルムアルデヒド樹脂およびキシレン・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール系樹脂;テルペン・フェノール樹脂、テルペン樹脂(α,β-ピネン樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;合成ポリテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、不飽和炭化水素重合体および炭化水素系粘着化樹脂等の石油系炭化水素樹脂;上記石油系炭化水素樹脂の水素添加物(水素添加石油系炭化水素樹脂とも呼ぶ。);ロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセリン・エステル、水素添加ロジン、水素添加ロジン・エステル、特殊ロジン・エステルおよびロジン系粘着付与剤等のロジン系樹脂等を挙げることができる。
これらの中でも、プロピレン系重合体との相性がよく、バリア性積層フィルム100の厚みムラをより一層抑制しながら、水蒸気バリア性をより効果的に向上させることができる観点から、石油系炭化水素樹脂および水素添加石油系炭化水素樹脂から選択される少なくとも一種が好ましく、水素添加石油系炭化水素樹脂がより好ましい。
ここで、水素添加石油系炭化水素樹脂の水素添加率は特に限定されないが、プロピレン系重合体との相性性により優れる点から、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。
【0025】
JIS K2207に準拠して測定される、本実施形態に係る粘着付与剤の軟化温度の下限値は特に限定されないが、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上であり、さらに好ましくは125℃以上であり、特に好ましくは130℃以上である。軟化温度が上記下限値以上であると、基材フィルム層101の成形時に発煙等が発生することを抑制でき、その結果、成形機の汚れ等を抑制することができる。さらに、軟化温度が上記下限値以上であると、基材フィルム層101におけるプロピレン系重合体の配向を向上できるため、バリア性積層フィルム100の水蒸気バリア性をより一層良好にすることができるとともに基材フィルム層101の厚みムラをより一層抑制することができる。
また、上記軟化温度の上限値は特に限定されないが、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは145℃以下であり、さらに好ましくは140℃以下である。軟化温度が上記上限値以下であると、プロピレン系重合体との相性性がより良好になるとともに基材フィルム層101におけるプロピレン系重合体の配向を向上できるため、基材フィルム層101の厚みムラをより一層抑制することができる。
【0026】
本実施形態に係るプロピレン系重合体組成物に含まれる粘着付与剤の含有量の下限値は、バリア性積層フィルム100の水蒸気バリア性をより一層向上させ、さらに厚みムラをより一層抑制する観点から、プロピレン系重合体組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上である。
また、本実施形態に係るプロピレン系重合体組成物に含まれる粘着付与剤の含有量の上限値は、バリア性積層フィルム100の加工性、寸法安定性および透明性等を向上させる観点から、プロピレン系重合体組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。また、粘着付与剤の含有量が上記上限値以下であると、フィルム表面への粘着付与剤のブリードアウトが抑制されるため、耐ブロッキング性およびバリア性積層フィルム100のラミネート強度を向上できたり、成形機の汚染を抑制できたりする。
【0027】
本実施形態に係るプロピレン系重合体組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0028】
本実施形態に係るプロピレン系重合体組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0029】
(第一バリア性樹脂層および第二バリア性樹脂層)
第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103はバリア性樹脂を主成分として含む層である。
ここで、バリア性樹脂を主成分として含むとは、第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103がそれぞれバリア性樹脂を50質量%以上含むことを意味する。第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103はそれぞれバリア性樹脂を好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上含む。
第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103に含まれるバリア性樹脂の含有量が上記範囲内であると、バリア性がより一層優れることになるため好ましい。
【0030】
バリア性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリカルボン酸多価金属塩系樹脂、ポリカルボン酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂とポリカルボン酸多価金属塩系樹脂とからなる樹脂、TEOS(テトラエトシキシラン)やTMOS(テトラメトキシシラン)を加水分解し架橋させるゾルゲル法を用いて得られる有機ケイ素系コーティング樹脂等から選択される一種または二種以上の樹脂を含む。
これらの中でも、生産効率、水蒸気バリア性能、透明性等の観点から、ポリビニルアルコール系重合体を含むことが好ましい。
【0031】
本実施形態に係るポリビニルアルコール系重合体とは、ポリ酢酸ビニル重合体をケン化して得られる分子内に水酸基を持ち、好ましくは水に可溶の重合体である。原料であるポリ酢酸ビニル重合体は酢酸ビニルの単独重合体であってもよいし、他の共重合可能なモノマー、例えばエチレン、プロピレンまたは1-ブテン等のα-オレフィン等が例えば30モル%まで共重合されたものであってもよい。共重合のモノマーが30モル%以下であると、バリア性能がより一層良好になる。
【0032】
本実施形態に係るポリビニルアルコール系重合体のケン化度は、得られるバリア性積層フィルム100の高湿度下での水蒸気バリア性をより一層向上させる観点から、好ましくは99%以上、より好ましくは99.5%以上である。
本実施形態に係るポリビニルアルコール系重合体の重合度は特に限定されないが、例えば300~5000、より好ましくは500~2000の範囲である。重合度が上記下限値以上であると、高湿度下での水蒸気バリア性をより一層向上させる。また、重合度が上記上限値以下であると、ポリビニルアルコール系樹脂溶液の塗工性を向上させることができる。
【0033】
第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103は、バリア性積層フィルム100の高湿度下での水蒸気バリア性をより一層向上させる観点から、無機膨潤性層状化合物をさらに含むことが好ましい。
本実施形態に係る無機膨潤性層状化合物とは、無機の単位結晶構造を幾枚にも重ねた多層構造をもって板状粒子を形成しており、水及び/または溶媒に対して膨潤性を有する層状粘土鉱物である。
【0034】
本実施形態に係る無機膨潤性層状化合物としては、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、パイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系の層状粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、テトラシリシックマイカ等のマイカ、これらの弗素化合物等を挙げることができる。
これらは、天然のものでも合成されたものでもよい。特に不純物の少ない合成品が好ましく、その中でも結晶構造が成長し、アスペクト比を大きくできる溶融法で生成したナトリウム型テトラシリシックマイカが特に好ましい。
【0035】
本実施形態における膨潤性とは、無機層状化合物を水及び/または溶媒に浸漬した際、この層間に水分子が配位することにより浸漬前より体積が増加する化合物で、ポリビニルアルコール系重合体も同様にこの無機層状化合物の層間に入り込むと推察される。
【0036】
上記層状化合物の層と層との間には通常陽イオンが保持されている。このような層間イオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオンを例示することができる。特に陽イオンが膨潤性を向上させるためにナトリウムで置換されていることが好ましい。
【0037】
無機膨潤性層状化合物の平均粒径は特に限定されないが、透明性および高湿度下での水蒸気バリア性のバランスを向上させる観点から、長さ方向が300Å以上、5μm以下のものが好ましく用いられる。また、アスペクト比(長さ径と厚みの比)は大きいほど透明性、バリア性が良好であるが、他の層との密着性を向上させる観点から、20~2000が好ましい。
【0038】
第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103に含まれるポリビニルアルコール系重合体の含有量(A)と無機膨潤性層状化合物の含有量(B)との質量比が(A/B)が、透明性および層間接着性のバランスを向上させる観点から、好ましくは50/50以上99/1以下であり、より好ましくは70/30以上97/3以下である。
【0039】
本実施形態において、第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103に含まれるアンカーコート剤としては、例えば、イソシアネート系アンカーコート剤、ウレタン系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、シランカップリング剤、酢酸ビニルおよびエチレン酢酸ビニルからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。アンカーコート剤としては、高湿度下でも密着性低下しないことからイソシアネート系アンカーコート剤が好ましい。
イソシアネート系アンカーコート剤としては、例えば、水性イソシアネート等が挙げられる。
【0040】
本実施形態に係るバリア性積層フィルム100において、第一バリア性樹脂層102中のアンカーコート剤の含有量(W)が、基材フィルムとの密着性及びバリア性の観点から、第一バリア性樹脂層102全体に対し、好ましくは0.0質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下である。
また、本実施形態に係るバリア性積層フィルム100において、第二バリア性樹脂層103中のアンカーコート剤の含有量(W)が、バリア性の観点から、第二バリア性樹脂層103全体に対し、好ましくは0.0質量%以上10質量%未満であり、より好ましくは0質量%以上5質量%未満であり、さらに好ましくは0質量%以上1質量%未満である。
【0041】
第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103は、本発明の目的を阻害しない範囲で濡れ性向上剤、帯電防止剤、その他各種添加剤を含んでもよい。特に、アンチブロッキング剤として粒径が0.1~10μm程度の酸化珪素、カオリン等の無機系微粒子やポリメチルメタクリレート、メラミン等の有機系微粒子を好ましく用いることができる。
【0042】
第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103の形成方法としては、例えば、バリア性樹脂溶液により形成されたバリア性樹脂フィルムを他の層上に積層させることにより第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103を形成する方法、バリア性樹脂溶液を他の層上に塗布し、乾燥させることにより第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、バリア性、密着性、生産性等の観点から、バリア性樹脂溶液を他の層上に塗布し、乾燥させることにより第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103を形成する方法が好ましい。
【0043】
また、第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103の形成方法としては、バリア性樹脂の微粒子を含むラテックスにより形成されたバリア性樹脂フィルムを他の層上に積層させることにより第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103を形成する方法、バリア性樹脂の微粒子を含むラテックスを他の層上に塗布し、乾燥させることにより第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、バリア性、密着性、生産性の観点から、バリア性樹脂の微粒子を含むラテックスを他の層上に塗布し、乾燥させることにより第一バリア性樹脂層102および第二バリア性樹脂層103を形成する方法が好ましい。
【0044】
第一バリア性樹脂層102の厚みは、層間接着性、透明性、コスト、可撓性等の観点から、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.6μm以下である。バリア性積層フィルム100はバリア性能に優れるため、第一バリア性樹脂層102の厚みを上記上限値以下と薄くすることが可能である。
また、第一バリア性樹脂層102の厚みは、バリア性、取扱い性等の観点から、0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。
【0045】
第二バリア性樹脂層103の厚みは、層間接着性、透明性、コスト、可撓性等の観点から、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。バリア性積層フィルム100のバリア性能を向上させるためには、第二バリア性樹脂層103の厚みを上記下限値以上とすることが好ましい。
また、第二バリア性樹脂層103の厚みは、生産性、取扱い性等の観点から、10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0046】
(熱融着層)
本実施形態のバリア性積層フィルム100は、ヒートシール性を付与するために、少なくとも一方の最外面に熱融着層をさらに有してもよい。
上記熱融着層としては、熱融着層として公知のものが使用できる。例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンの単独重合体若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン-1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン-1ランダム共重合体等から選択される一種または二種以上のポリオレフィンを含む樹脂組成物により形成される層、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む樹脂組成物により形成される層、EVAおよびポリオレフィンを含む樹脂組成物により形成される層等が挙げられる。
【0047】
(無機物層)
本実施形態のバリア性積層フィルム100は、バリア性能をより一層向上させるために、基材フィルム層101と第一バリア性樹脂層102との間に、無機物層をさらに有してもよい。
本実施形態の無機物層を構成する無機物は、例えば、バリア性を有する薄膜を形成できる金属、金属酸化物等が挙げられる。
無機物層を構成する無機物としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル等の周期表遷移元素;亜鉛等の周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表3A族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表4A族元素;セレン、テルル等の周期表6A族元素等の単体または酸化物等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
なお、本実施形態では、周期表の族名は旧CAS式で示している。
【0048】
さらに、上記無機物の中でも、バリア性、コスト等のバランスに優れていることから、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素等のケイ素化合物、酸化アルミニウム、アルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物を含むことが好ましい。
なお、酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の他、一酸化ケイ素、亜酸化ケイ素が含有されていてもよい。
【0049】
無機物層は上記無機物により形成されている。無機物層は単層の無機物層から構成されていてもよいし、複数の無機物層から構成されていてもよい。また、無機物層が複数の無機物層から構成されている場合には同一種類の無機物層から構成されていてもよいし、異なった種類の無機物層から構成されていてもよい。
【0050】
無機物層の厚さは、バリア性、密着性、取扱い性等のバランスの観点から、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは2nm以上50nm以下、さらに好ましくは5nm以上30nm以下である。
本実施形態において、無機物層の厚さは、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察画像により求めることができる。
【0051】
無機物層の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD法)等の真空プロセスや、ゾルゲルプロセス等により基材フィルム層101の片面または両面に無機物層を形成することができる。
【0052】
(その他の層)
本実施形態のバリア性積層フィルム100には、例えば、滑性層、帯電防止層等の種々のコーティング層やラミネート層をさらに設けてもよい。
【0053】
(用途)
本実施形態のバリア性積層フィルム100は、例えば、バリア性能が要求される、食品、医薬品、日常雑貨等を包装するための包装用フィルム;真空断熱用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。
また、本実施形態のバリア性積層フィルム100はバリア性包装体を構成するバリア性フィルムとして好適に用いることもできる。本実施形態に係るバリア性包装体は、例えば、内容物を充填することを目的として使用される本実施形態のバリア性積層フィルム100により構成されたバリア性包装袋自体または当該袋に内容物を充填したものである。また、本実施形態に係るバリア性包装袋は用途に応じその一部にバリア性積層フィルム100を使用してもよいし、バリア性包装袋全体にバリア性積層フィルム100を使用してもよい。
本実施形態のバリア性積層フィルム100は内容物として飲食物が用いられる食品用包装体を構成するバリア性フィルムとして特に好適に用いることもできる。
【0054】
[バリア性積層フィルムの製造方法]
本実施形態に係るバリア性積層フィルム100の製造方法は、基材フィルム層101と、第一バリア性樹脂層102と、第二バリア性樹脂層103と、がこの順番に積層されてなるバリア性積層フィルム100の製造方法であり、以下の工程を含んでいる。
(1)基材フィルム層101上に、バリア性樹脂を溶媒に溶解または分散してなるバリア性樹脂溶液あるいはバリア性樹脂の微粒子を含むラテックスを塗布し、乾燥することにより第一バリア性樹脂層102を形成する工程
(2)第一バリア性樹脂層102上に、バリア性樹脂を溶媒に溶解または分散してなるバリア性樹脂溶液あるいはバリア性樹脂の微粒子を含むラテックスを塗布し、乾燥することにより第二バリア性樹脂層103を形成する工程
【0055】
上記(1)および(2)の工程において、上記バリア性樹脂溶液や上記ラテックス等の溶液を塗布する方法としては、特に限定されず、通常の方法を用いることができる。例えば、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディップコーター、ダイコーター等の公知の塗工機を用いて塗工する方法が挙げられる。
【0056】
上記(1)および(2)の工程において、塗布後の乾燥方法としては特に限定されず、通常の方法を用いることができる。例えば、アーチドライヤー、ストレートバスドライヤー、タワードライヤー、ドラムドライヤー、フローティングドライヤー等の公知の乾燥機を用いて乾燥する方法が挙げられる。
乾燥温度は、基材の耐熱性により異なるが、例えばOPPの場合、50℃以上130℃以下が好ましく、さらに70℃以上120℃以下がより好ましい。乾燥時間は、好ましくは5秒間以上10分間以下、より好ましくは5秒間以上3分間以下、さらに好ましくは5秒間以上1分間以下である。
【0057】
乾燥後、必要によりオーブン等によって熱処理を行うことが好ましい。例えば、上記乾燥後のフィルムを好ましくは35℃以上60℃以下、より好ましくは40℃以上50℃以下のオーブン中で、好ましくは5時間以上70時間以下、より好ましくは10時間以上50時間以下程度熱処理する。このような熱処理により、アンカーコート剤の反応が促進され層間密着性をより一層向上させることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例
【0059】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0060】
実施例および比較例における各評価は以下の方法で行った。
【0061】
(1)水蒸気透過度の測定
厚さ50μmのLLDPEフィルム(三井化学東セロ社製、商品名:T.U.XFCS)に接着剤(三井化学社製、タケラックA-310(商品名)/タケネートA-3(商品名)=12/1(重量比))を3.0g/m塗布した。次いで、実施例および比較例で得られたバリア性積層フィルムの基材フィルム層とは反対側の表面とLLDPEフィルムの接着剤塗布面が接するようにして、バリア性積層フィルムとLLDPEフィルムとを積層し、積層体を得た。
次いで得られた積層体を用いて、内表面積が0.01mになるように製袋し、得られた袋内に内容物として塩化カルシウムを10g入れ、袋の入り口をヒートシールした。
次いで得られた袋を温度40℃、湿度90%RHの環境下に72時間保管した。
保管前後の塩化カルシウムの重量を測定し、その差から水蒸気透過度(g/(m・24h))を算出した。
【0062】
(2)層間剥離強度の測定
水蒸気透過度の測定法と同様にして、バリア性積層フィルムにLLDPEフィルムを積層し、積層体を得た。次いで得られた積層体からフィルムのMD方向に幅15mm長さ10cmの短冊サンプルを切り出し、基材層側にOPP粘着テープ(厚み50μm)を貼った。その後、バリア性積層フィルムとLLDPEフィルムの間でT字剥離したときの剥離強度を引張試験機(オリエンテック社製RTM-100)を用いて測定した。このとき、剥離速度は300mm/minとした。
【0063】
<実施例1>
基材層1として、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、商品名:HE-1#20)を用いた。この基材層1のコロナ処理面上に、ポリビニルアルコール系樹脂層1(PVA層1)、ポリビニルアルコール系樹脂層2(PVA層2)を順次形成することによりバリア性積層フィルムを得た。
ここで、PVA層1、PVA層2の形成方法は以下のとおりである。
まず、ポリビニルアルコール(日本酢ビポバール社製、商品名:PVA-V)を熱水に溶解しPVA濃度5質量%水溶液を作製した。これに無機層状化合物(トピー工業社製、合成ナトリウムヘクトライト、濃度5質量%水分散液)を固形分比率で100:5(PVA:合成ナトリウムヘクトライト)になるように添加し、これをPVA層2コート液とした。また、PVA層2コート液に界面活性剤(花王社製、商品名:G-15、濃度15質量%水溶液)を固形分比率で100:0.25(PVA:G-15)になるように添加した後、さらにイソシアネート系アンカーコート剤(三井化学社製、商品名:WD726)を固形分比率で100:8(PVA:WD726)になるように添加してPVA層1コート液とした。
次いで、このPVA層1コート液を、乾燥後の厚みが0.5μmになるように基材層1のコロナ処理面上にアプリケーターで塗工し、乾燥させて溶媒を除去することによりPVA層1を形成した。
次いで、PVA層2コート液を乾燥後の厚みが0.5μmになるようにPVA層1上にアプリケーターで塗工し、乾燥させて溶媒を除去することによりPVA層2を形成した。
得られたバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。ここで、表1において、基材フィルム層上に形成された2つの樹脂層は、基材フィルム層側から第一樹脂層、第二樹脂層と呼ぶ。
【0064】
<実施例2~3および比較例1~2>
PVA層1およびPVA層2の厚みを表1に示す値に変えた以外は実施例1と同様にしてバリア性積層フィルムを得た。得られたバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【符号の説明】
【0066】
100 バリア性積層フィルム
101 基材フィルム層
102 第一バリア性樹脂層
103 第二バリア性樹脂層
図1