IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成装置 図7
  • 特許-画像形成装置 図8
  • 特許-画像形成装置 図9
  • 特許-画像形成装置 図10
  • 特許-画像形成装置 図11
  • 特許-画像形成装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
G03G15/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020105703
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021196587
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】筧 豊
(72)【発明者】
【氏名】鶴我 諒介
(72)【発明者】
【氏名】河野 達也
(72)【発明者】
【氏名】小林 真奈人
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134718(JP,A)
【文献】特開2014-170023(JP,A)
【文献】特開2019-120830(JP,A)
【文献】特開2017-040690(JP,A)
【文献】特開2011-033826(JP,A)
【文献】特開2005-037871(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0244566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上にトナー像を形成する画像形成部と、
前記像担持体からトナー像が転写される無端状のベルトと、
前記ベルトの内周面に接触して、前記ベルトを張架する内ローラと、
前記ベルトの外周面に接触し、前記内ローラと協働して、前記ベルトから記録材上にトナー像が転写される転写ニップを形成する外部材と、
前記内ローラを移動させることで前記内ローラの周方向に関する前記転写ニップの位置を変更する位置変更機構であって、前記内ローラの位置を、第1の位置と、前記ベルトの回転方向に関して前記第1の位置よりも上流に位置する第2の位置と、を含む複数の位置に変更することが可能な位置変更機構と、
記録材の厚さに関する第1の情報及び記録材の表面性に関する第2の情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記第1の情報及び前記第2の情報に基づいて前記位置変更機構を制御する制御部と、
を有し、
第1の記録材と、前記第1の記録材に続く第2の記録材と、を含む複数の記録材上に画像を形成するジョブの実行中に、前記第1の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置が前記第1の位置であり、前記取得部により取得された前記第1の情報が、前記第2の記録材の厚さが第1の閾値以上かつ第2の閾値以下であることを示す場合において、
前記取得部により取得された前記第2の情報が、前記第1の記録材及び前記第2の記録材の両方がコート紙であることを示す場合は、前記制御部は、前記第2の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置が前記第2の位置に変更されるように、前記位置変更機構を制御し、
前記取得部により取得された前記第2の情報が、前記第1の記録材及び前記第2の記録材の両方が普通紙であることを示す場合は、前記制御部は、前記第2の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置が前記第1の位置に維持されるように、前記位置変更機構を制御する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記取得部により取得された前記第2の情報が、前記第1の記録材及び前記第2の記録材の両方が普通紙であることを示す場合、及び前記取得部により取得された前記第1の情報が、前記第2の記録材の厚さが前記第2の閾値以上であることを示す場合は、前記制御部は、前記第2の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置を前記第2の位置に変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の情報は、記録材の重さに基づく情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記取得部は、操作者による操作により前記第2の情報を入力することが可能な操作部を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記外部材は、ローラ部材又は無端状のベルト部材であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
像担持体上にトナー像を形成する画像形成部と、
前記像担持体からトナー像が転写される無端状のベルトと、
前記ベルトの内周面に接触して、前記ベルトを張架する内ローラと、
前記ベルトの外周面に接触し、前記内ローラと協働して、前記ベルトから記録材上にトナー像が転写される転写ニップを形成する外部材と、
前記内ローラを移動させることで前記内ローラの周方向に関する前記転写ニップの位置を変更する位置変更機構であって、前記内ローラの位置を、第1の位置と、前記ベルトの回転方向に関して前記第1の位置よりも上流に位置する第2の位置と、を含む複数の位置に変更することが可能な位置変更機構と、
記録材の厚さに関する第1の情報及び記録材の表面性に関する第2の情報を取得する取得部と、
前記位置変更機構を制御する制御部と、
を有し、
第1の記録材と、前記第1の記録材に続く第2の記録材と、を含む複数の記録材上に画像を形成するジョブの実行中に、前記第1の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置が前記第1の位置であり、前記取得部により取得された前記第1の情報が、前記第2の記録材の厚さが第1の閾値以上かつ第2の閾値以下であることを示す場合において、
前記取得部により取得された前記第2の情報が、前記第1の記録材及び前記第2の記録材の両方がコート紙であることを示す場合は、前記第2の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、
前記取得部により取得された前記第2の情報が、前記第1の記録材及び前記第2の記録材の両方が普通紙であることを示す場合は、前記第2の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置は前記第1の位置である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記取得部により取得された前記第2の情報が、前記第1の記録材及び前記第2の記録材の両方が普通紙であることを示す場合、及び前記取得部により取得された前記第1の情報が、前記第2の記録材の厚さが前記第2の閾値以上であることを示す場合は、前記第2の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置は前記第2の位置であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1の情報は、記録材の重さに基づく情報であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記取得部は、操作者による操作により前記第2の情報を入力することが可能な操作部を含むことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記外部材は、ローラ部材又は無端状のベルト部材であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリ装置、あるいはこれらのうち複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置には、トナー像を担持する像担持体としての無端状のベルト(以下、単に「ベルト」ともいう。)を有するものがある。このようなベルトとして、例えば、第1の像担持体としての感光体などから1次転写されたトナー像を紙などのシート状の記録材に2次転写するために搬送する、第2の像担持体としての中間転写ベルトがある。以下、主に、中間転写ベルトを有する中間転写方式を採用した画像形成装置を例に説明する。
【0003】
中間転写ベルトを用いた画像形成装置では、画像形成部において感光体などに形成されたトナー像が、1次転写部において中間転写ベルトに1次転写される。また、中間転写ベルトに1次転写されたトナー像は、2次転写部で記録材に2次転写される。中間転写ベルトの内周面側に設けられた内部材(2次転写内部材)と、中間転写ベルトの外周面側に設けられた外部材(2次転写外部材)と、によって、中間転写ベルトと外部材との接触部である2次転写部(2次転写ニップ)が形成される。内部材としては、中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラのうちの1つである内ローラ(2次転写内ローラ)が用いられる。外部材としては、中間転写ベルトを挟んで内ローラと対向する位置に配置され、内ローラに向けて押圧される外ローラ(2次転写外ローラ)が用いられることが多い。そして外ローラにトナーの帯電極性とは逆極性の電圧が印加(あるいは内ローラにトナーの帯電極性と同極性の電圧が印加)されることで、2次転写部において中間転写ベルト上のトナー像が記録材上に2次転写される。一般に、記録材の搬送方向に関して2次転写部よりも上流には、2次転写部に記録材を案内するための搬送ガイドが設けられている。なお、記録材に関して、「先端」、「後端」とは、それぞれ記録材の搬送方向に関する先端、後端のことをいうものである。
【0004】
近年、商業印刷市場における記録材の多様化に伴い、低剛度な薄紙から高剛度な厚紙まで様々な条件で画質仕様を満たすことが要求されている。ここで、記録材の剛度によって、記録材の搬送方向に関する2次転写部の上流近傍や下流近傍での記録材の挙動が変わり、成果物である画像に影響を及ぼすことがある。
【0005】
例えば、記録材が剛度の小さい記録材の一例である「薄紙」の場合に、記録材の搬送方向に関する2次転写部の下流近傍で中間転写ベルトと記録材とが貼り付いて、中間転写ベルトからの記録材の「分離不良」によりジャムが発生することがある。また、記録材が剛度の大きい記録材の一例である「厚紙」の場合に、記録材の後端が搬送ガイドを抜けた際に記録材の後端部(後端、あるいは後端に近接する領域)が中間転写ベルトに衝突することがある。これにより、記録材の搬送方向に関する2次転写部の上流近傍の中間転写ベルトの姿勢が乱れ、記録材の後端部に記録材の搬送方向と略直交する方向に伸びるスジ状の画像乱れなどの画像不良(「跳ね上げ」)が発生することがある。
【0006】
また、例えば、記録材の剛度によっては、記録材の先端や後端が2次転写部に進入する際に中間転写ベルトの回転方向に関し2次転写部の上流近傍の中間転写ベルトが振動することによる画像不良(記録材の先後端の「ショック画像」)が発生しやすくなることがある。また、例えば、記録材が剛度の大きい記録材の一例である「厚紙」の場合に、記録材の剛度が大きいことが原因で、2次転写部の入口近傍において中間転写ベルトと記録材との間に空隙が生じやすくなる。そして、転写電界の影響によって、その空隙において放電が起こり、トナー像が飛び散って画像不良(「飛び散り」)が発生することがある。
【0007】
そこで、2次転写部の位置や2次転写部の入口近傍の中間転写ベルトの張り面の形状(ここでは、これらを単に「転写部の状態」ともいう。)を記録材に合わせて変更する構成が知られている。
【0008】
例えば、特許文献1では、記録材の厚さや坪量の情報に応じて、外ローラの位置を切り替えて2次転写部の位置(2次転写部の形状)を変更し、厚紙の後端部に生じる「跳ね上げ」を軽減する構成が開示されている。
【0009】
また、特許文献2では、外ローラの位置を記録材の厚さなどに応じて変化させて、2次転写部からの記録材の排出角を制御して記録材の中間転写ベルトからの「分離性」を向上させる構成が開示されている。
【0010】
また、特許文献3では、中間転写ベルトを裏面から押圧して「ショック画像」を抑制する押圧部材を設け、この押圧部材の中間転写ベルトに対する侵入量を記録材の厚さに応じて変化させる構成が開示されている。また、2次転写部の入口近傍の中間転写ベルトの内周面に接触する押圧部材を設け、2次転写部の入口近傍における中間転写ベルトと記録材と接触領域を増やして空隙を低減することで、「飛び散り」を抑制できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2011-64917号公報
【文献】特開2014-109609号公報
【文献】特許第4680721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、記録材の厚さや坪量などの情報に応じて、2次転写部の位置や2次転写部の入口近傍の中間転写ベルトの張り面の形状を変更する構成を採用した場合、これらの2次転写部の状態を変更するための時間が必要となる。
【0013】
ここで、例えば商業印刷などにおいては、複数の種類の記録材に画像を形成するジョブ(ここでは、「混載ジョブ」ともいう。)が実行されることがある。そのため、2次転写部の状態を変更する必要のない記録材と変更する必要のある記録材との両方に画像を形成する混載ジョブを実行する場合には、記録材と記録材との間で2次転写部の状態を変更するための時間の分だけ生産性が低下するという課題がある。
【0014】
したがって、本発明の目的は、記録材に応じて記録材の搬送性や転写性を向上しつつ、混載ジョブの生産性の低下を抑制することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、像担持体上にトナー像を形成する画像形成部と、前記像担持体からトナー像が転写される無端状のベルトと、前記ベルトの内周面に接触して、前記ベルトを張架する内ローラと、前記ベルトの外周面に接触し、前記内ローラと協働して、前記ベルトから記録材上にトナー像が転写される転写ニップを形成する外部材と、前記内ローラを移動させることで前記内ローラの周方向に関する前記転写ニップの位置を変更する位置変更機構であって、前記内ローラの位置を、第1の位置と、前記ベルトの回転方向に関して前記第1の位置よりも上流に位置する第2の位置と、を含む複数の位置に変更することが可能な位置変更機構と、記録材の厚さに関する第1の情報及び記録材の表面性に関する第2の情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記第1の情報及び前記第2の情報に基づいて前記位置変更機構を制御する制御部と、を有し、第1の記録材と、前記第1の記録材に続く第2の記録材と、を含む複数の記録材上に画像を形成するジョブの実行中に、前記第1の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置が前記第1の位置であり、前記取得部により取得された前記第1の情報が、前記第2の記録材の厚さが第1の閾値以上かつ第2の閾値以下であることを示す場合において、前記取得部により取得された前記第2の情報が、前記第1の記録材及び前記第2の記録材の両方がコート紙であることを示す場合は、前記制御部は、前記第2の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置が前記第2の位置に変更されるように、前記位置変更機構を制御し、前記取得部により取得された前記第2の情報が、前記第1の記録材及び前記第2の記録材の両方が普通紙であることを示す場合は、前記制御部は、前記第2の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置が前記第1の位置に維持されるように、前記位置変更機構を制御する、ことを特徴とする画像形成装置である。
【0016】
本発明の他の態様によると、像担持体上にトナー像を形成する画像形成部と、前記像担持体からトナー像が転写される無端状のベルトと、前記ベルトの内周面に接触して、前記ベルトを張架する内ローラと、前記ベルトの外周面に接触し、前記内ローラと協働して、前記ベルトから記録材上にトナー像が転写される転写ニップを形成する外部材と、前記内ローラを移動させることで前記内ローラの周方向に関する前記転写ニップの位置を変更する位置変更機構であって、前記内ローラの位置を、第1の位置と、前記ベルトの回転方向に関して前記第1の位置よりも上流に位置する第2の位置と、を含む複数の位置に変更することが可能な位置変更機構と、記録材の厚さに関する第1の情報及び記録材の表面性に関する第2の情報を取得する取得部と、前記位置変更機構を制御する制御部と、を有し、第1の記録材と、前記第1の記録材に続く第2の記録材と、を含む複数の記録材上に画像を形成するジョブの実行中に、前記第1の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置が前記第1の位置であり、前記取得部により取得された前記第1の情報が、前記第2の記録材の厚さが第1の閾値以上かつ第2の閾値以下であることを示す場合において、前記取得部により取得された前記第2の情報が、前記第1の記録材及び前記第2の記録材の両方がコート紙であることを示す場合は、前記第2の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、前記取得部により取得された前記第2の情報が、前記第1の記録材及び前記第2の記録材の両方が普通紙であることを示す場合は、前記第2の記録材上にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置は前記第1の位置である、ことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、記録材に応じて記録材の搬送性や転写性を向上しつつ、混載ジョブの生産性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の画像形成装置の概略断面図である。
図2】オフセット機構を示す概略側面図である。
図3】実施例1の画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
図4】実施例1の制御のフローチャート図である。
図5】実施例2の画像形成装置の概略断面図である。
図6】押圧機構を示す概略側面図である。
図7】実施例2の画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
図8】オフセット機構、押圧機構の他の例を示す概略側面図である。
図9】オフセット機構、押圧機構の他の例を示す概略側面図である。
図10】記録材の搬送姿勢を説明するための概略断面図である。
図11】オフセット量を説明するための概略断面図である。
図12】侵入量(押圧量)を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0020】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、中間転写方式を採用したタンデム型の複合機(複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を有する。)である。画像形成装置100は、例えば、外部装置から送信された画像信号に応じて、電子写真方式を用いて紙などのシート状の記録材(転写材、シート材、記録媒体、メディア)Pにフルカラー画像を形成することができる。
【0021】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する4つの画像形成部10Y、10M、10C、10Kを有する。これらの画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、後述する中間転写ベルト7の略水平に配置される画像転写面の移動方向に沿って一列に配置されている。各画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部10は、後述する感光ドラム1(1Y、1M、1C、1K)、帯電器2(2Y、2M、2C、2K)、露光装置3(3Y、3M、3C、3K)、現像器4(4Y、4M、4C、4K)、1次転写ローラ5(5Y、5M、5C、5K)、クリーニング装置6(6Y、6M、6C、6K)などを有して構成される。
【0022】
トナー像を担持する第1の像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、駆動源としてのドラム駆動モータ(図示せず)から駆動力が伝達されて、図1中の矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としての帯電器2によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理時に、帯電器2には、帯電電源(図示せず)により所定の帯電電圧が印加される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段(静電像形成手段)としての露光装置3によって画像信号に応じて走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。本実施例では、露光装置3は、画像信号(画像情報)に応じて変調されたレーザ光を感光ドラム1上に照射するレーザスキャナー装置で構成されている。感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像器4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像(現像剤像)が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。現像器4は、現像剤を担持して感光ドラム1との対向部である現像位置に搬送する、回転可能な現像剤担持体である現像ローラを有している。現像ローラは、例えば感光ドラム1の駆動系から駆動力が伝達されることによって回転駆動される。また、現像時に、現像ローラには、現像電源(図示せず)により所定の現像電圧が印加される。
【0023】
4つの感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと対向するように、トナー像を担持する第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された回転可能な中間転写体である中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての駆動ローラ22、上流補助ローラ23a、下流補助ローラ23b、テンションローラ25、2次転写前ローラ24、及び内ローラ21に掛け回されて、所定のテンション(張力)で張架されている。駆動ローラ22は、中間転写ベルト7に駆動力を伝達する。テンションローラ25は、中間転写ベルト7に所定のテンションを付与し、中間転写ベルト7のテンションを一定に制御する。2次転写前ローラ24は、中間転写ベルト7の回転方向(表面の移動方向、走行方向)に関して2次転写ニップN2(後述)の上流近傍の中間転写ベルト7の面を形成する。内ローラ(2次転写対向ローラ、内部材)21は、外ローラ9(後述)の対向部材(対向電極)として機能する。上流補助ローラ23a、下流補助ローラ23bは、略水平に配置される画像転写面を形成する。駆動ローラ22は、駆動源としてのベルト駆動モータ(図示せず)から駆動力が伝達されて回転駆動される。これにより、中間転写ベルト7は、駆動ローラ22から駆動が入力されて、図1中の矢印R2方向(時計回り)に回転(周回移動)する。本実施例では、中間転写ベルト7は、周速度が150~470mm/secとなるように回転駆動される。複数の張架ローラのうち駆動ローラ22以外の張架ローラは、中間転写ベルト7の回転に伴って従動回転する。中間転写ベルト7の内周面側には、各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対応して、1次転写手段としてのローラ状の1次転写部材である1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kが配置されている。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を感光ドラム1に向けて押圧して、感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触部である1次転写部としての1次転写ニップN1を形成する。
【0024】
上述のように感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写ニップN1において、1次転写ローラ5の作用によって、回転している中間転写ベルト7上に1次転写される。1次転写時に、1次転写ローラ5には、1次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性(現像時のトナーの帯電極性)とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である1次転写電圧が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト7上の同一画像形成領域に重ね合わされるようにして順次1次転写される。本実施例では、1次転写ニップN1が、中間転写ベルト7にトナー像を形成する画像形成位置である。そして、中間転写ベルト7は、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトの一例である。
【0025】
中間転写ベルト7の外周面側において、内ローラ21と対向する位置には、2次転写手段としてのローラ状の2次転写部材(転写回転体)である外ローラ(2次転写ローラ、外部材)9が配置されている。外ローラ9は、中間転写ベルト7を介して内ローラ21に向けて押圧され、中間転写ベルト7と外ローラ9との接触部である2次転写部としての2次転写ニップN2を形成する。上述のように中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、2次転写ニップN2において、外ローラ9の作用によって、中間転写ベルト7と外ローラ9とに挟持されて搬送されている記録材P上に2次転写される。本実施例では、2次転写時に、外ローラ9には、2次転写電源(高圧印加手段)18により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の定電圧制御された直流電圧である2次転写電圧が印加される。本実施例では、例えば、+1~+7KVの2次転写電圧が印加され、+40~+120μAの2次転写電流が流されることで、中間転写ベルト7上のトナー像が記録材P上に2次転写される。本実施例では、内ローラ21は、電気的に接地(グランドに接続)されている。なお、内ローラ21を2次転写部材として用いてこれにトナーの正規の帯電極性と同極性の2次転写電圧を印加し、外ローラ9を対向電極として用いてこれを電気的に接地してもよい。
【0026】
記録材Pは、中間転写ベルト7上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写ニップN2へと搬送されてくる。つまり、記録材収納部としての記録材カセット11に格納された記録材Pは、給送手段としての給送部材である給送ローラなどによって、搬送手段としての搬送部材であるレジストローラ(レジストローラ対)8まで搬送され、一旦停止させられる。そして、この記録材Pは、2次転写ニップN2において中間転写ベルト7上のトナー像と記録材P上の所望の画像形成領域とが一致するようにレジストローラ8が回転駆動されることで、2次転写ニップN2に送り込まれる。
【0027】
記録材Pの搬送方向に関して、レジストローラ8よりも下流かつ2次転写ニップN2よりも上流には、2次転写ニップN2に記録材Pを案内するための搬送ガイド14が設けられている。搬送ガイド14は、記録材Pのオモテ面(搬送ガイド14を通過した直後にトナー像が転写される面)に接触可能な第1のガイド部材14aと、記録材Pのウラ面(オモテ面とは反対側の面)に接触可能な第2のガイド部材14bと、を有して構成される。第1のガイド部材14aと第2のガイド部材14bとは対向して配置され、これら両部材の間を記録材Pが通過する。第1のガイド部材14aは、記録材Pの中間転写ベルト7に近づく方向への移動を規制する。第2のガイド部材14bは、記録材Pの中間転写ベルト7から遠ざかる方向への移動を規制する。
【0028】
トナー像が転写された記録材Pは、定着前搬送装置41により、定着手段としての定着装置40へと搬送される。定着前搬送装置41は、記録材Pの搬送方向と略直交する方向に関する中央部に、同方向の幅が100~110mm、厚みが1~3mmの、EPDMなどのゴム材料で形成されたベルト体を回動可能に有している。定着前搬送装置41は、このベルト体上に記録材Pを載せて搬送する。このベルト体には、直径3~7mmの穴があいており、内周面側から空気を吸引することで記録材Pの担持力が高められ、記録材Pの搬送性が安定させられている。定着装置40は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを定着回転体対によって挟持して搬送する過程で加熱及び加圧することによって、トナー像を記録材Pの表面に定着(溶融、固着)させる。その後、トナー像が定着された記録材Pは、排出手段としての排出部材である排出ローラなどによって、画像形成装置100の装置本体110の外部(機外)に設けられた排出トレイ15へと排出(出力)される。
【0029】
一方、1次転写後に感光ドラム1上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、クリーニング手段としてのクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。また、2次転写後に中間転写ベルト7上に残留したトナー(2次転写残トナー)や記録材Pから付着した紙粉などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置12によって中間転写ベルト7上から除去されて回収される。本実施例では、ベルトクリーニング装置12は、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーなどの付着物を静電的に回収してクリーニングする。
【0030】
なお、本実施例では、複数の張架ローラに張架された中間転写ベルト7、各1次転写ローラ5、ベルトクリーニング装置12、これらを支持するフレームなどを有して、ベルト搬送装置としての中間転写ベルトユニット20が構成されている。中間転写ベルトユニット20は、メンテナンス又は交換のために装置本体110に対して着脱可能とされている。
【0031】
ここで、中間転写ベルト7としては、単層又は多層構造の樹脂系材料で構成されたもの、弾性材料で構成された弾性層を備えた多層構造のものなどを使用することができる。
【0032】
また、本実施例では、1次転写ローラ5は、金属製の芯金(芯材)の外周に、イオン導電系発泡ゴムで形成された弾性層が設けられて構成されている。また、本実施例では、1次転写ローラ5は、外径が15~20mmであり、電気抵抗値が23℃、50%RH環境で2kVの電圧を印加して測定した場合に1×10~1×10Ωである。
【0033】
また、本実施例では、外ローラ9は、金属製の芯金(芯材)の外周に、イオン導電系発泡ゴムの弾性層が設けられて構成されている。また、本実施例では、外ローラ9は、外径が20~25mmであり、電気抵抗値が23℃、50%RH環境で2kVの電圧を印加して測定した場合に1×10~1×10Ωである。また、本実施例では、外ローラ9は、その回転軸線方向の両端部が軸受9a(図2)によって回転可能に支持されている。軸受9aは、内ローラ21に向かう方向及びその反対方向にスライド移動可能とされており、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である圧縮ばねで構成された押圧ばね9b(図2)によって内ローラ21に向かって押圧される。これにより、外ローラ9は、中間転写ベルト7を挟んで内ローラ21に対して所定の圧力で当接し、2次転写ニップN2を形成する。
【0034】
また、本実施例では、内ローラ21は、金属製の芯金(芯材)外周に、電子導電性のゴムの弾性層が設けられて構成されている。また、本実施例では、内ローラ21は、外径が20~22mmであり、電気抵抗値が23℃、50%RH環境で50Vの電圧を印加して測定した場合に1×10~1×10Ωである。なお、2次転写前ローラ24は、例えば、内ローラ21と同様の構成とすることができる。
【0035】
また、本実施例では、内ローラ21を含む中間転写ベルト7の張架ローラ、外ローラ9のそれぞれの回転軸線方向は互いに略平行である。
【0036】
2.オフセット量
図10(a)は、2次転写ニップN2の近傍での記録材Pの挙動を説明するための模式的な断面図(内ローラ21の回転軸線方向と略直交する断面)である。
【0037】
前述のように、2次転写ニップN2の位置(2次転写ニップN2の形状)や記録材Pの剛度によって、記録材Pの搬送方向に関して2次転写ニップN2の上流近傍や下流近傍での記録材Pの挙動が変わる。そして、例えば、記録材Pが、剛度の小さい記録材Pの一例である「薄紙」の場合に、中間転写ベルト7からの記録材Pの「分離不良」によりジャム(紙詰まり)が発生することがある。この現象は、記録材Pのコシが弱いことによって記録材Pが中間転写ベルト7に貼り付きやすくなるため、記録材Pの剛度が小さい場合に顕著となる。
【0038】
つまり、図10(a)に示す断面において、内ローラ21と2次転写前ローラ24とで張架されて形成される中間転写ベルト7の張り面(張架面)を示す線を張架線Tとする。なお、2次転写前ローラ24は、複数の張架ローラのうち内ローラ21よりも中間転写ベルト7の回転方向に関して上流で内ローラ21に隣接して配置された上流ローラの一例である。また、同断面において、内ローラ21の回転中心と外ローラ9の回転中心とを通る直線をニップ中心線Lcとする。また、同断面において、ニップ中心線Lcと略直交する線をニップ線Lnとする。なお、図10(a)は、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心よりも外ローラ9の回転中心の方が中間転写ベルト7の回転方向の上流側にオフセットされて配置された状態を示している。
【0039】
このとき、記録材Pは、2次転写ニップN2で内ローラ21と外ローラ9との間に挟持された状態では、ほぼニップ線Lnに沿って姿勢を保とうとする傾向がある。そのため、概して、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心と外ローラ9の回転中心とが近い場合には、図10(a)中の破線Aで示すように、記録材Pの排出角度θが小さくなる。つまり、記録材Pの搬送方向の先端は、2次転写ニップN2から排出される際に、中間転写ベルト7の近くに排出されるような姿勢となる。これにより、記録材Pが中間転写ベルト7に貼り付きやすくなり、中間転写ベルト7からの記録材Pの「分離不良」が発生しやすくなる。これに対して、概して、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心よりも外ローラ9の回転中心の方が中間転写ベルト7の回転方向の上流側に配置されるほど、図10(a)中の実線で示すように、記録材Pの排出角度θが大きくなる。つまり、記録材Pの搬送方向の先端は、2次転写ニップN2から排出される際に、中間転写ベルト7から離れる方向に排出されるような姿勢となる。これにより、記録材Pは中間転写ベルト7に貼り付きにくくなり、中間転写ベルト7からの記録材Pの「分離性」が向上する。
【0040】
一方、例えば、記録材Pが、剛度の大きい記録材Pの一例である「厚紙」の場合には、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド14を抜けた際に、記録材Pの搬送方向の後端部が中間転写ベルト7に衝突することがある。これにより、記録材Pの搬送方向の後端部に画像不良(「跳ね上げ」)が発生することがある。この現象は、記録材Pのコシが強いことによって記録材Pの搬送方向の後端部が強い勢いで中間転写ベルト7に衝突しやすくなるため、記録材Pの剛度が大きい場合に顕著となる。また、例えば、「厚紙」の場合には、記録材Pの搬送方向に関する2次転写ニップN2の上流で記録材Pと中間転写ベルト7とがこすれる力が大きく、このこすれによる画像不良が発生しやすい。
【0041】
つまり、上述のように、図10(a)に示す断面において、記録材Pは、2次転写ニップN2で内ローラ21と外ローラ9との間に挟持された状態では、ほぼニップ線Lnに沿って姿勢を保とうとする傾向がある。そのため、概して、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心よりも外ローラ9の回転中心の方が中間転写ベルト7の回転方向の上流側に配置されるほど、ニップ線Lnは張架線Tに食い込むような形となる。その結果、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド14を抜けた際に、図10(a)中の破線Bで示すように、記録材Pの搬送方向の後端部が中間転写ベルト7に衝突するようになり、記録材Pの搬送方向の後端部に画像不良(「跳ね上げ」)が発生しやすくなる。これに対して、概して、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心と外ローラ9の回転中心とを近くすれば、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド14から抜けた際に中間転写ベルト7に衝突することは抑制される。これにより、記録材Pの搬送方向の後端部の画像不良(「跳ね上げ」)は発生しにくくなる。
【0042】
このような課題の対策として、記録材Pの種類に応じて、内ローラ21の周方向(中間転写ベルト7の回転方向)に関する内ローラ21と外ローラ41との相対位置を変更することが有効である。
【0043】
図11は、内ローラ21と外ローラ9との相対位置を示すオフセット量Xの定義を説明するための2次転写ニップN2の近傍の模式的な断面図(内ローラ21の回転軸線方向と略直交する断面)である。図11に示す断面において、中間転写ベルト7が掛け回される側の内ローラ21と2次転写前ローラ24との共通の接線を基準線L1とする。基準線L1は、中間転写ベルト7の上記張架線(張り面)Tに対応する。また、同断面において、内ローラ21の回転中心を通り基準線L1と略直交する直線を内ローラ中心線L2とする。また、同断面において、外ローラ9の回転中心を通り基準線L1と略直交する直線を外ローラ中心線L3とする。このとき、内ローラ中心線L2と外ローラ中心線L3との間の距離(垂直距離)をオフセット量X(ただし、外ローラ中心線L3が内ローラ中心線L2よりも中間転写ベルト7の回転方向の上流側にあるとき正の値)と定義する。オフセット量Xは、負の値、0、正の値をとることができる。オフセット量Xを大きくすることで、中間転写ベルト7の回転方向に関する2次転写ニップN2の幅が中間転写ベルト7の回転方向の上流側に広がる。つまり、内ローラ21と中間転写ベルト7との接触領域の中間転写ベルト7の回転方向の上流側の端部よりも、外ローラ9と中間転写ベルト7との接触領域の中間転写ベルト7の回転方向の上流側の端部の方がより上流側に位置するようになる。このように、内ローラ21又は外ローラ9の少なくとも一方の位置を変更し、内ローラ21の周方向に関して、内ローラ21と外ローラ9との相対位置を変更することで、2次転写ニップ(転写部)N2の位置を変更することができる。
【0044】
図11において、外ローラ9は仮想的に基準線L1(張架線T)に対して変形せずに接するように表されている。しかし、前述のように、外ローラ9の最外層の材質はゴムやスポンジなどの弾性体であり、実際には押圧ばね9bによって内ローラ21に向かう方向(図中白矢印方向)に押圧されて変形している。外ローラ9が、内ローラ21に対して中間転写ベルト7の回転方向の上流側にオフセットされて配置され、内ローラ21との間で中間転写ベルト7を挟持するように押圧ばね9bによって押圧されると、略S字形状の2次転写ニップN2が形成される。そして、搬送ガイド14にガイドされて送られてくる記録材Pの姿勢もその2次転写ニップN2の形状にならって決定される。オフセット量Xが大きくなるほど、記録材Pを屈曲させることになる。そのため、上述のように、例えば記録材Pが「薄紙」の場合には、オフセット量Xを大きくすることで、2次転写ニップN2を通過した後の記録材Pの中間転写ベルト7からの分離性を向上させることができる。しかし、オフセット量Xが大きいと、上述のように、例えば記録材Pが「厚紙」の場合には、記録材Pの搬送方向の後端が搬送ガイド14を抜けた際に記録材Pの搬送方向の後端部が中間転写ベルト7に衝突することになる。これにより、記録材Pの搬送方向の後端部の画質を低下させる要因となる。そのため、この場合にはオフセット量Xを小さくすればよい。
【0045】
3.オフセット機構
図2(a)、(b)を参照して、本実施例におけるオフセット機構17について説明する。図2(a)、(b)は、オフセット機構17を説明するための、2次転写ニップN2の近傍を内ローラ21の回転軸線方向の一端部側(図1の紙面手前側)から該回転軸線方向と略平行に見た要部の概略側面図である。図2(a)は、オフセット量Xが相対的に小さい状態、図2(b)は、オフセット量Xが相対的に大きい状態を示している。図2(a)、(b)には、内ローラ21の回転軸線方向の一端部の構成を示しているが、他端部の構成も同様(内ローラ21の回転軸線方向の中央に対して略対称)である。
【0046】
図2(a)、(b)に示すように、本実施例では、画像形成装置100は、外ローラ9の周方向に関する内ローラ21の相対位置を変更してオフセット量X(2次転写ニップN2の位置)を変更する、位置変更機構としてのオフセット機構17を有する。
【0047】
内ローラ21の回転軸線方向の両端部は、支持部材としての内ローラホルダ38によって回転可能に支持されている。内ローラホルダ38は、内ローラ回動軸38aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに支持されている。このように、内ローラホルダ38を内ローラ回動軸38aの周りに回動させ、内ローラ21を内ローラ回動軸38aの周りに回動させることで、外ローラ9に対する内ローラ21の相対位置を変更してオフセット量Xを変更することができるようになっている。
【0048】
内ローラホルダ38は、作動部材としてのオフセットカム39の作用により回動するように構成されている。オフセットカム39は、オフセットカム回動軸39aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに支持されている。オフセットカム39は、駆動源としてのオフセットカム駆動モータ213からの駆動を受けてオフセットカム回動軸39aを中心に回動する。また、オフセットカム39は、内ローラホルダ38に設けられたカムフォロワ38bと接触している。また、内ローラホルダ38は、カムフォロワ38bがオフセットカム39と係合する方向に回動するように、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である引張りばねなどで構成された回動ばねによって付勢されていてよい。なお、中間転写ベルト7のテンション、あるいは外ローラ9による押圧によって、カムフォロワ38bがオフセットカム39と係合する方向に内ローラホルダ38を回動させる十分なモーメントが得られる場合がある。この場合には、上記回動ばねは設けられていなくてよい。また、本実施例では、画像形成装置100には、オフセットカム39の回動方向の位置、特に、回動方向におけるホームポジション(HP)を検知するための位置検知手段として、オフセットカム位置センサ(カムHPセンサ)214が設けられている。オフセットカム位置センサ214は、例えば、オフセットカム39又はオフセットカム39と同軸上に設けられた指示部としてのフラグ、検知部としてのフォトインタラプタなどを有して構成することができる。
【0049】
このように、本実施例では、内ローラホルダ38、オフセットカム39、オフセットカム駆動モータ213、オフセットカム位置センサ214などを有してオフセット機構17が構成されている。
【0050】
図2(a)に示すように、オフセット量Xを相対的に小さくする場合には、オフセットカム39がオフセットカム駆動モータ213によって駆動されて時計回りに回動する。これにより、内ローラ回動軸38aを中心に反時計回りに内ローラホルダ38が回動して、外ローラ9に対する内ローラ21の相対位置が決められる。これにより、オフセット量Xが相対的に小さい位置に、内ローラ21が配置された状態となる。これにより、例えば、記録材Pの搬送方向に関する2次転写ニップN2の上流における記録材Pと中間転写ベルト7とのこすれによる画質の低下、記録材Pの後端部の画質の低下を抑制するのに有利となる。
【0051】
また、図2(b)に示すように、オフセット量Xを相対的に大きくする場合には、オフセットカム39がオフセットカム駆動モータ213によって駆動されて反時計回りに回動する。これにより、内ローラ回動軸38aを中心に時計回りに内ローラホルダ38が回動して、外ローラ9に対する内ローラ21の相対位置が決められる。これにより、オフセット量Xが相対的に大きい位置に、内ローラ21が配置された状態となる。これにより、2次転写ニップN2を通過した後の中間転写ベルト7からの記録材Pの分離性の向上に有利となる。
【0052】
なお、オフセット量Xは、2次転写ニップN2を記録材Pが通過している際(2次転写中)に、所望の値となっていればよい。
【0053】
4.制御態様
図3は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。画像形成装置100は、制御手段としての制御部(制御回路)200を有する。制御部200は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段としてのCPU201、記憶手段としてのRAM210、ROM220などのメモリ(記憶媒体)、図示しないインターフェース部(入出力回路)などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAM210には、制御部200に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROM220には制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU201とRAM210、ROM220などのメモリとは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。インターフェース部は、制御部200とこれに接続された機器との間の信号の入出力(通信)を制御する。
【0054】
制御部200には、画像形成装置100の各部(画像形成部10、中間転写ベルト7及び記録材Pの搬送に関する部材の駆動装置、各種電源など)が接続されている。制御部200には、オフセットカム駆動モータ213、更にはドラム駆動モータ、ベルト駆動モータなどの、画像形成装置100の各部の駆動手段が接続されている。制御部200は、CPU201がRAM210、ROM220に記憶された情報に基づいてオフセットカム駆動モータ213などの画像形成装置100の各部の駆動手段を動作させる。また、制御部200には、画像形成装置100に設けられた操作部(操作パネル、取得部)101が接続されている。操作部101は、制御部200の制御によって情報を表示する表示部(表示手段)、及びユーザーやサービス担当者などの操作者による操作によって制御部200に情報を入力する入力部(入力手段)を有する。操作部101は、表示部及び入力部の機能を有するタッチパネルを有して構成されていてよい。また、制御部200には、画像形成装置100に設けられるか又は画像形成装置100に接続された画像読取装置(図示せず)や、画像形成装置100に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置(図示せず)が接続されていてよい。
【0055】
制御部200は、ジョブの情報に基づいて画像形成装置100の各部を制御して画像形成動作を行なわせる。ジョブの情報は、操作部101や外部装置から入力される開始指示(開始信号)、記録材Pの種類などの画像形成条件に関する情報(指令信号)を含む。また、ジョブの情報は、画像読取装置、外部装置あるいは操作部101から入力される画像情報(画像信号)を含む。なお、記録材Pの種類に関する情報とは、普通紙、上質紙、光沢紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、用紙カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズ、剛度などの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)などの、記録材Pを区別可能な任意の情報を包含するものである。
【0056】
画像形成装置100は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(プリントジョブ、印刷ジョブ)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程(画像形成動作、プリント動作、印刷動作)、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時(画像形成期間)とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時(非画像形成期間)とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。なお、スリープ状態(休止状態)とは、例えば制御部150(又はその一部)以外の画像形成装置100の各部への電力の供給が停止され、画像形成装置100の電源が投入されジョブを待機しているスタンバイ状態よりも電力消費量が少なくされた状態である。本実施例では、画像形成装置100は、非画像形成時に、オフセット量Xを変更する動作を行うことができるようになっている。
【0057】
5.オフセット量の変更制御
次に、本実施例におけるオフセット量Xを変更する制御について説明する。本実施例では、画像形成装置100は、記録材Pの種類に関する情報としての、記録材Pの剛度と関連する記録材Pの種類に関する情報の一例である記録材Pの厚さに関する情報と、記録材Pの表面性(表面粗さ)に関する情報と、に基づいて、オフセット量Xを変更する制御を実行可能である。
【0058】
図4は、本実施例におけるオフセット量Xの変更制御の手順の概略を示すフローチャート図である。本実施例では、操作部101において操作者が画像形成に使用する記録材Pの種類に関する情報を入力し、制御部200がこの情報に基づいてオフセット量Xを変更する制御を実行する場合について説明する。
【0059】
まず、CPU201は、操作部101において操作者が入力したジョブの情報を所得し、RAM210に格納する(S1)。ジョブの情報は、画像形成を行う記録材Pの種類に関する情報、印刷枚数といった情報を含む。次に、CPU201は、S1で取得したジョブの情報に含まれる画像形成を行う記録材Pの種類に関する情報の中から、記録材Pの厚さに関する情報、及び記録材Pの表面性に関する情報を取得する(S2)。
【0060】
本実施例では、記録材Pの厚さに関する情報として、記録材Pの坪量(ここでは、「用紙坪量」ともいう。)の情報が操作部101において操作者によって入力(複数の選択肢から選択することを含む。)される。また、本実施例では、記録材Pの表面性に関する情報として、いわゆる、用紙カテゴリーの情報が操作部101において操作者によって入力(複数の選択肢から選択することを含む。)される。ここで、用紙カテゴリーとは、上質紙、再生紙、マットコート紙、グロスコート紙といった記録材Pの一般的な特徴に基づく属性を区別する記録材Pの種類に関する情報のことである。本実施例では、上質紙、再生紙といった表面に何らのコート処理も施されていない用紙カテゴリーの記録材Pを表面が粗い記録材P(ここでは、「非コート紙」ともいう。)として扱っている。また、本実施例では、マットコート紙、グロスコート紙といった表面に何らかのコート処理が施されている用紙カテゴリーの記録材Pを表面性が平滑な記録材P(ここでは、「コート紙」ともいう。)として扱っている。
【0061】
また、本実施例の画像形成装置100は、複数の種類の記録材Pに画像形成を行う混載ジョブを実行することが可能になっている。したがって、1回のジョブにおいて操作部101で選択できる記録材Pの種類は、1種類に限定されるものではない。なお、混載ジョブでは、画像形成装置100に設けられた複数の記録材カセット11(図1では図示を省略)にそれぞれ収容された複数の種類の記録材Pを、指定された順番で適宜給送するようになっている。
【0062】
CPU201は、S2で取得した情報に基づいて、次に画像形成を行う記録材Pに適したオフセット量Xを求める(S3)。本実施例では、予め設定された用紙坪量及び表面性(用紙カテゴリー)と、オフセット量Xと、の関係を示す情報であるオフセット量テーブルがROM220に格納されている。CPU201は、このオフセット量テーブルを参照して各記録材Pに適したオフセット量Xを求める。表1は、本実施例におけるオフセット量テーブルを模式的に示している。
【0063】
【表1】
【0064】
表1のオフセット量テーブルは、概して、用紙坪量が大きい記録材Pほどオフセット量Xが小さくなるように、また表面が平滑なコート紙の方が表面が粗い非コート紙よりも小さい用紙坪量からオフセット量Xが小さくなるように設定されている。
【0065】
用紙坪量が大きく剛度の高い記録材Pは、記録材Pの搬送方向に関する2次転写ニップN2の上流で記録材Pと中間転写ベルト7とがこすれる力が大きく、このこすれによる画像不良が発生しやすい。特に、本実施例におけるコート紙などの表面が平滑な記録材Pは、表面が平滑でない記録材Pに比べて、中間転写ベルト7との接触面積が大きくなりやすい。そのため、このような記録材Pでは、本実施例における非コート紙などの表面が粗い記録材Pであれば上記のこすれによる画像不良が発生しにくい用紙坪量でも、該画像不良が発生する可能性がある。一方、オフセット量Xが小さいと、2次転写ニップN2から排出された記録材Pの排出方向が中間転写ベルト7に近づいていく方向になりやすい。そのため、用紙坪量が小さく剛度の低い記録材Pが中間転写ベルト7に静電的に貼りつく分離不良が発生しやすい。これらを考慮して、用紙坪量が小さい記録材Pではオフセット量Xを大きくし、用紙坪量が小さい記録材Pではオフセット量Xを小さくしている。
【0066】
本実施例では、表1のオフセット量テーブルで「オフセット小」となっている場合のオフセット量Xは-0.5~-2.5mm程度とした。また、本実施例では、表1のオフセット量テーブルで「オフセット大」となっている場合のオフセット量Xは2~4mm程度とした。なお、表1における各用紙坪量の区分において、オフセット量Xは同一(例えば、オフセット大=+2.5mm、オフセット小=-1.3mm)であってもよいし、用紙坪量が小さいほどオフセット量Xが大きくなる(用紙坪量が大きいほどオフセット量Xを小さくなる)ように異なっていてもよい。
【0067】
なお、オフセット量Xの設定は、上述の具体例に限定されるものではない。これらは、前述したような記録材Pの中間転写ベルト7からの分離性の向上や2次転写ニップN2の近傍で発生する画像不良の抑制の観点から、実験などを通して適宜設定することができる。また、オフセット量X(内ローラ21の位置)の変更は、2段階に限定されるものではない。オフセット量X(内ローラ21の位置)は、3段階以上や無段階に変更可能であってもよい。また、本実施例では、記録材Pの表面性は2種類に区分しているが、3種類以上に区分してもよい。
【0068】
また、本実施例では、斯界における実績として一般に使用頻度が大きい用紙坪量が100g/m前後の記録材Pでは、分離不良が発生する可能性があるためオフセット量Xが「オフセット大」となるようにオフセット量テーブルを設定している。そして、本実施例では、この「オフセット大」のオフセット量Xとなる位置を内ローラ21(内ローラ21と外ローラ9との相対位置)のホームポジションとしている。ここで、ホームポジションとは、画像形成装置100がスリープ状態又は主電源がOFFされた状態のときの位置のことをいう。したがって、ジョブを開始する時点では、オフセット量Xは「オフセット大」になっている。
【0069】
ここで、ジョブ(混載ジョブ)を開始した後で、オフセット量Xを変更する制御が多く入るとジョブの生産性が低下してしまう。そのため、上記のこすれによる画像不良のリスクが小さい表面の粗い記録材P(非コート紙)では、なるべく広い範囲の用紙坪量の記録材Pに対して内ローラ21のホームポジションに対応する「オフセット大」の状態を維持し得るようにしつつ、上記のこすれによる画像不良のリスクが高い表面の平滑な記録材P(コート紙)では、上記表面の粗い記録材P(非コート紙)の場合よりも小さい用紙坪量の記録材Pでオフセット量Xを「オフセット小」に切り替えるようにしている。これにより、ジョブ(混載ジョブ)の生産性と画質との両方を達成しやすくしている。
【0070】
換言すれば、本実施例では、表面の粗い記録材P(非コート紙)と表面の平滑な記録材P(コート紙)とで、オフセット量Xを「オフセット大」と「オフセット小」とに切り替えるための用紙坪量の閾値(所定値)を異ならせている。本実施例では、該閾値は、表面の粗い記録材P(非コート紙)の場合よりも、表面の平滑な記録材P(コート紙)の場合の方が小さい。例えば、表1に示すように、表面の粗い記録材P(非コート紙)では、用紙坪量が325g/m以下の場合はオフセット量Xを「オフセット大」、用紙坪量が325g/mより大きい場合はオフセット量Xを「オフセット小」とする。一方、表面の平滑な記録材P(コート紙)では、用紙坪量が220g/m以下の場合はオフセット量Xを「オフセット大」、用紙坪量が220g/mより大きい場合はオフセット量Xを「オフセット小」とする。
【0071】
CPU201は、S3で求めたオフセット量Xに対して、ジョブを開始する時点では「オフセット大」となっているオフセット量Xを変更する必要がある否かを判断する(S4)。CPU201は、S4でオフセット量Xを変更する必要が無いと判断した場合は、前述の画像形成プロセスによって記録材P上へ画像形成を行う(S5)。一方、CPU201は、S4でオフセット量Xを変更する必要が有ると判断した場合は、オフセットカム駆動モータ213を所定量だけ動作させて、オフセット量XをS3で求めた所定のオフセット量Xに変更する(S6)。このとき、CPU201は、オフセットカム39の位置を検知しているオフセットカム位置センサ214から、現在のオフセットカム39の位置の情報を取得する。そして、この位置の情報に基づいて、ROM220に格納されているカム駆動量変換テーブルを参照して、所定のオフセット量Xにするために必要なオフセットカム駆動モータ213の動作量を求める。カム駆動量変換テーブルは、例えば、オフセットカム39のホームポジションを基準とした、オフセットカム駆動モータ213の動作量(オフセットカム39の回転角度)とオフセット量Xとの関係を示すように構成されている。その後、CPU201は、前述の画像形成プロセスによって記録材P上へ画像形成を行う(S5)。
【0072】
CPU201は、S5で記録材P上への画像形成が終了した後、ジョブの全ての画像形成が終了しているか否かを判断する(S7)。CPU201は、S7でジョブの全ての画像形成が終了していると判断した場合は、オフセット量Xが内ローラ21のホームポジションに対応する「オフセット大」となるようにオフセットカム駆動モータ213を動作させ(S8)、制御を終了する。すなわち、このときCPU201は、オフセットカム39の位置がホームポジションとなるように、オフセット駆動モータ213を動作させる。
【0073】
一方、CPU201は、S7でジョブの全ての画像形成が終了していない(ジョブが継続する)と判断した場合は、次に画像形成を行う記録材Pが前回画像形成を行った記録材Pと異なる種類の記録材Pであるか否かを判断する(S9)。CPU201は、S9で異なる種類の記録材Pではなく同じ種類の記録材Pであると判断した場合は、S5に戻って記録材P上へ画像形成を行う。また、CPU201は、S9で異なる種類の記録材Pであると判断した場合は、S2に戻ってオフセット量Xを求める処理以降の処理を行っていく。
【0074】
6.効果
以上のように、本実施例の画像形成装置100は、内ローラ21又は外部材9の少なくとも一方(本実施例では内ローラ21)の位置を変更して、内ローラ21の周方向に関する内ローラ21と外部材9との相対位置を変更することが可能な位置変更機構17と、位置変更機構17を制御する制御部200と、制御部200に記録材Pの厚さに関する第1の情報及び記録材Pの表面性に関する第2の情報を入力する入力部101と、を有する。そして、本実施例では、制御部200は、第1の情報が示す厚さが所定値より大きい記録材Pにトナー像を転写する際の上記相対位置を第1の相対位置とし、第1の情報が示す厚さが上記所定値以下の記録材Pにトナー像を転写する際の上記相対位置を第1の相対位置よりも内ローラ21が外部材9に対してベルト7の回転方向の下流側に位置する第2の相対位置とするように、位置変更機構17を制御することが可能であり、第2の情報が示す表面性が上記第1の表面性の記録材Pにトナー像を転写する場合の上記所定値よりも、第2の情報が示す表面性が上記第1の表面性よりも平滑な第2の表面性の記録材Pにトナー像を転写する場合の上記所定値の方が小さくなるように、上記所定値を異ならせることが可能である。本実施例では、第1の情報は、記録材Pの坪量の情報である。また、本実施例では、入力部は、画像形成装置100に設けられた、操作者により操作される操作部101からの情報を制御部200に入力する。ただし、後述するように、入力部は、画像形成装置100に設けられた、記録材Pの厚さに関する指標値及び記録材Pの表面性に関する指標値のうち少なくとも一方を検知する検知手段からの情報を制御部200に入力するものであってもよい。
【0075】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、剛度の高い厚紙などの記録材Pの場合に生じやすい画像不良の抑制と、剛度の低い薄紙などの記録材Pの場合に生じやすい分離不良の抑制との両立のために、オフセット量Xを変更する制御を行う。上記剛度の高い厚紙などの記録材Pの場合に生じやすい画像不良は、記録材Pと中間転写ベルト7とがこすれることで生じやすい画像不良や、記録材Pが搬送ガイド14を抜ける前後で生じやすい画像不良などを含む。このとき、本実施例では、画像形成装置100は、記録材Pの坪量の情報と、記録材Pの表面性の情報と、に基づいて、オフセット量Xを変更する制御を行う。このように、本実施例では、記録材Pの剛度と関連する情報の一例である記録材Pの厚さに関する情報(本実施例では記録材Pの坪量の情報)だけではなく、記録材Pの表面性に関する情報にも基づいて、オフセット量Xを変更する制御を行う。これにより、オフセット量Xを変更する動作を、記録材Pの表面性に応じて画質の問題が生じる可能性があるときだけ行うことができる。本実施例によれば、このような制御を行うことで、混載ジョブの実行時の生産性と画質との両立が可能になる。
【0076】
なお、本実施例では、記録材Pの厚さに関する情報として、操作部101において入力される用紙坪量を取得したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、画像形成装置100内に記録材Pの厚さを検知する検知手段を設け、この検知手段により検知された記録材Pの厚さの情報に基づく制御を行うことも可能である。例えば、記録材Pの坪量や厚さと相関する指標値を検知する検知手段としては、超音波の減衰を利用したセンサが知られている。このセンサは、記録材Pの搬送路を挟むように配置された、超音波発生部と、超音波受信部と、を有する。そして、このセンサは、超音波発生部から発生され、記録材Pを透過することで減衰した超音波を超音波受信部で受信して、その超音波の減衰量に基づいて記録材Pの坪量や厚さと相関する指標値を検知する。なお、記録材の坪量や厚さと相関する指標値を検知できるものであれば、超音波を利用したものに限定されるものではなく、例えば光を利用したものも用いることができる。
【0077】
また、本実施例では、記録材Pの表面性に関する情報として、操作部101において入力される用紙カテゴリーの情報を取得したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、記録材Pの表面粗さの数値情報を操作部101から入力可能にして、取得した表面粗さの数値情報に基づく制御を行うことも可能である。また、画像形成装置100内に記録材Pの表面粗さを検知する検知手段を設け、この検知手段により検知された記録材Pの表面粗さの情報に基づく制御を行うことも可能である。例えば、記録材Pの表面性と相関する指標値を検知する検知手段としては、記録材Pに光を照射し、正反射光、乱反射光の強さを光量センサで読み取る正乱反射光センサが知られている。記録材Pの表面が平滑であると正反射光が強くなり、粗いと乱反射光が強くなる。そのため、このセンサは、正反射光量と乱反射光量とを測定することで、記録材Pの表面の平滑性と相関する指標値を検知することができる。なお、記録材Pの表面の平滑性と相関する指標値を検知できるものであれば、上記の光量センサを用いたものに限定されるものではなく、例えば撮像素子を利用したものも用いることができる。記録材Pの表面の平滑性と相関する指標値は、ベック平滑度などの所定の規格に従う値に換算された値に限定されるものではなく、記録材Pの表面の平滑性と相関性を有する値であればよい。
【0078】
上記記録材Pの厚さや表面性を検知する検知手段は、例えば、記録材Pの搬送方向に関してレジストローラ8よりも上流の記録材Pの搬送路に隣接して配置することができる。また、例えば上記厚さや表面性を検知する検知手段は、1つのユニットとして構成されたもの(メディアセンサ)を用いてもよい。
【0079】
また、本実施例のように、操作部101から記録材Pの種類に関する情報(厚さ、表面性に関する情報)を入力する場合、操作部101から直接的に記録材Pの種類に関する情報を入力(複数の選択肢から選択することを含む。)することに限定されるものではない。例えば、複数の記録材カセット11から所定の記録材カセット11が選択されることで、予め該記録材カセット11に関係付けられて記憶媒体に記憶されている該記録材カセット11に収容された記録材Pの種類に関する情報が取得されてもよい。
【0080】
また、記録材Pの種類に関する情報(厚さ、表面性に関する情報)は、画像形成装置100の操作部101から入力されることに限定されるものではなく、画像形成装置100に通信可能に接続された外部装置から入力きるようになっていてよい。この場合、前述のインターフェース部(入出力回路)などが、制御部200に情報を入力する入力部として機能する。
【0081】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0082】
1.画像形成装置の構成
図5は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、図1に示す実施例1の画像形成装置100と同様の構成を有する。ただし、本実施例では、中間転写ベルト7の内周面側において、中間転写ベルト7の回転方向に関して内ローラ21よりも上流かつ2次転写前ローラ24よりも下流には、押圧部材26が設けられている。押圧部材26は、中間転写ベルト7の内周面に接触して、中間転写ベルト7を内周面側から外周面側へ押圧することができる。これにより、押圧部材26は、内ローラ21と2次転写前ローラ24との間に形成される中間転写ベルト7の張り面(張架面)T(図6)を、中間転写ベルト7の内周面側から外周面側へ張り出させることができる。押圧部材26、及びこの押圧部材26の位置を変更する押圧機構16(図6)については後述して更に説明する。
【0083】
2.侵入量
図10(b)は、2次転写ニップN2の近傍での記録材Pの搬送姿勢を説明するための模式的な断面図(内ローラ21の回転軸線方向と略直交する断面)である。なお、図10(b)は、張架線Tに沿う方向に関して内ローラ21の回転中心と外ローラ9の回転中心とが略同じ位置に配置された状態を示している。
【0084】
前述のように、記録材Pの剛度によって、搬送ガイド14から2次転写ニップN2へと搬送される記録材Pの姿勢が変わる。そして、例えば記録材Pが「厚紙」の場合に、2次転写ニップN2の入口近傍において中間転写ベルト7と記録材Pとの間に空隙Gが生じやすくなり、「飛び散り」が発生しやすくなる。
【0085】
つまり、図10(b)において、2次転写ニップN2の入口近傍(中間転写ベルト7の回転方向に関して内ローラ21の上流近傍)において中間転写ベルト7の移動方向に沿って中間転写ベルト7と記録材Pとが接触している距離を接触距離Dと定義する。より詳細には、接触距離Dは、中間転写ベルト7の移動方向に関する、内ローラ21と中間転写ベルト7との接触開始位置と、記録材Pと中間転写ベルト7との接触開始位置と、の間の距離である。例えば記録材Pが「厚紙」の場合には、記録材Pの剛度が大きいために、2次転写ニップN2の入口近傍で屈曲しにくいことにより、接触距離Dが小さくなる。そのため、中間転写ベルト7と記録材Pとの間に空隙Gが生じ、転写電界の影響によってその空隙Gにおいて放電が起こり、トナー像が飛び散って画像不良(「飛び散り」)が発生することがある。
【0086】
このような課題の対策として、2次転写ニップN2の入口近傍の中間転写ベルト7の内周面に接触して中間転写ベルト7を押圧する押圧部材26を設けることが有効である。押圧部材26によって中間転写ベルト7の張り面Tを外側に張り出させることにより、接触距離Dを大きくして、2次転写ニップN2の入口近傍における中間転写ベルト7と記録材Pとの空隙Gを低減することができる。これにより、「飛び散り」を抑制することができる。
【0087】
押圧部材26の中間転写ベルト7に対する侵入量(押圧量)について説明する。押圧部材26の中間転写ベルト7に対する押圧量は、次のような押圧部材26の中間転写ベルト7に対する侵入量で表すことができる。この侵入量は、概略、押圧部材26が、内ローラ21又は外ローラ9と、2次転写前ローラ24と、で張架されて形成される中間転写ベルト7の張り面(張架面)Tに対して、中間転写ベルト7を外側に張り出させる量である。2次転写前ローラ24は、複数の張架ローラのうち内ローラ21よりも中間転写ベルト7の回転方向に関して上流で内ローラ21に隣接して配置された上流ローラの一例である。この侵入量の定義は、より詳細には、内ローラ21の周方向における内ローラ21と外ローラ9との相対位置を示すオフセット量Xによって変わる。オフセット量Xの定義は、実施例1で説明したとおりである。
【0088】
図12(a)、(b)は、中間転写ベルト7に対する押圧部材26の侵入量Yの定義を説明するための2次転写ニップN2の近傍の模式的な断面図(内ローラ21の回転軸線方向と略直交する断面)である。なお、侵入量Yの定義は、オフセット量Xが正の場合と、0又は負の場合と、で異なる。一般に、押圧部材26によって押圧されない状態での中間転写ベルト7の張り面Tが内ローラ21と2次転写前ローラ24とで形成されるか、又は外ローラ9と2次転写前ローラ24とで形成されるかがオフセット量Xによって変わるからである。図12(a)はオフセット量Xが0又は負の値(特に負の値)である場合を示し、図12(b)はオフセット量Xが正の値である場合を示している。
【0089】
まず、オフセット量Xが0又は負の値である場合について説明する。図12(a)に示す断面において、中間転写ベルト7が掛け回される側の内ローラ21と2次転写前ローラ24との共通の接線を基準線L1とする。基準線L1は、押圧部材26によって中間転写ベルト7が外周面側に張り出されていない場合の中間転写ベルト7の上記張架線(張り面)Tに対応する。また、同断面において、基準線L1と略平行な、押圧部材26が中間転写ベルト7と接触する領域において中間転写ベルト7の外周面に接触する中間転写ベルト7の接線を押圧部接線L4とする。このとき、オフセット量Xが0又は負の値の場合、基準線L1と押圧部接線L4との間の距離(垂直距離)を、中間転写ベルト7に対する押圧部材26の侵入量Y(ただし、押圧部接線L4が基準線L1よりも中間転写ベルト7の外周面側にあるとき正の値)と定義する。この侵入量Yは、0、正の値をとることができる。
【0090】
次に、オフセット量Xが正の値である場合について説明する。図12(b)に示す断面において、中間転写ベルト7が掛け回される側の外ローラ9と2次転写前ローラ24との共通の接線を基準線L1’とする。また、同断面において、基準線L1’と略平行な、押圧部材26が中間転写ベルト7と接触する領域において中間転写ベルト7の外周面に接触する中間転写ベルト7の接線を押圧部接線L4’とする。このとき、オフセット量Xが正の値の場合、基準線L1’と押圧部接線L4’との間の距離(垂直距離)を、中間転写ベルト7に対する押圧部材26の侵入量Y(ただし、押圧部接線L4’が基準線L1’よりも中間転写ベルト7の外周面側にあるとき正の値)と定義する。この侵入量Yは、0、正の値をとることができる。
【0091】
3.押圧部材、押圧機構
次に、本実施例における押圧部材26、及びこの押圧部材26の位置を変更する押圧機構16について説明する。図6(a)、(b)は、本実施例における2次転写ニップN2の近傍を内ローラ21の回転軸線方向の一端部側(図5の紙面手前側)から該回転軸線方向と略平行に見た要部の概略側面図である。図6(a)は押圧部材26が中間転写ベルト7を所定の押圧力で押圧した状態、図6(b)は押圧部材26が中間転写ベルト7から離間した状態を示す。図6(a)、(b)には、内ローラ21の回転軸線方向の一端部の構成を示しているが、他端部の構成も同様(内ローラ21の回転軸線方向の中央に対して略対称)である。
【0092】
本実施例では、画像形成装置100は、シート状の押圧部材(バックアップシート)26を有する。押圧部材26は、2次転写ニップN2の入口近傍において、中間転写ベルト7の内周面を押圧して中間転写ベルト7を外周面側に張り出させることができる。押圧部材26は、中間転写ベルト7の回転方向に関して、内ローラ21よりも上流、かつ、2次転写前ローラ24よりも下流で中間転写ベルト7の内周面に接触可能なように配置されている。特に、本実施例では、押圧部材26は、記録材Pの搬送方向に関して、内ローラ21よりも上流、かつ、搬送ガイド14(第1のガイド部材14a)の下流側の先端よりも下流の位置に対応する中間転写ベルト7の内周面に接触可能なように配置されている。
【0093】
押圧部材26は、樹脂材料を用いて形成することができる。押圧部材26を形成する樹脂材料としては、例えば、PET樹脂などのポリエステル樹脂などを好適に用いることができる。本実施例では、押圧部材26は、中間転写ベルト7の幅方向(表面の移動方向と略直交する方向)と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する板状の部材で構成されている。押圧部材26の長手方向の長さは、中間転写ベルト7の幅方向の長さと同等である。そして、押圧部材26は、その短手方向の一端部(中間転写ベルト7の回転方向の下流側の端部)である自由端部が、中間転写ベルト7の略全幅にわたり、中間転写ベルト7の内周面に接触可能であり、中間転写ベルト7を押圧可能である。また、一例として、押圧部材26の厚さは0.4~0.6mm程度である。
【0094】
ここで、押圧部材26としては、例えば、中抵抗の電気抵抗(例えば、体積抵抗率が1×10~1×10Ω・cm)に調整されたPET樹脂シートを用いることができる。これにより、押圧部材26に電流が流れることを抑制し、また押圧部材26と中間転写ベルト7との摩擦によって生じる静電気(摩擦帯電)により押圧部材26に中間転写ベルト7が吸着して中間転写ベルト7の回転を妨げることを抑制することができる。
【0095】
なお、押圧部材26は、樹脂製のシート状の部材に限定されるものではない。押圧部材26は、例えば、金属製の薄板で構成されたシート状の部材であってもよい。また、押圧部材26は、シート状の部材に限定されるものではない。押圧部材26は、例えば、スポンジやゴムなどの弾性体(パッド状のものなど)であってもよい。また、押圧部材26は、例えば、樹脂製や金属製の回転可能なローラなどの剛体であってもよい。また、押圧部材26は、本実施例のように所定の位置に配置されて中間転写ベルト7に当接されるものに限定されるものではない。例えば、押圧部材26として上記回転可能なローラなどの剛体を用いる場合などには、付勢手段としてのばねなどで押圧部材26を中間転写ベルト7に向けて付勢してもよい。
【0096】
そして、本実施例では、画像形成装置100は、位置変更機構としての押圧機構16を有する。押圧機構16は、押圧部材26の位置を変更して、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する侵入量(押圧量)、及び押圧部材26の中間転写ベルト7に対する当接又は離間の状態のうち少なくとも一方(本実施例では当接又は離間の状態)を変更する。なお、ここでは、簡単のため、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する侵入量(押圧量)を変更することには、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する当接又は離間の状態を変更することが含まれるものとして説明することがある。
【0097】
押圧部材26は、支持部材としての押圧部材ホルダ28によって支持されている。押圧部材26は、その短手方向の一端部(中間転写ベルト7の回転方向の上流側の端部)である固定端部が長手方向の略全幅にわたって押圧部材ホルダ28に固定されている。押圧部材ホルダ28は、押圧部材回動軸28aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに保持されている。このように、押圧部材ホルダ28を押圧部材回動軸28aの周りに回動させ、押圧部材26を押圧部材回動軸28aの周りに回動させることで、押圧部材26の位置を変更することができる。これにより、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する侵入量(押圧量)、及び押圧部材26の中間転写ベルト7に対する当接又は離間の状態のうち少なくとも一方(本実施例では当接又は離間の状態)を変更することができる。
【0098】
押圧部材ホルダ28は、作動部材としての押圧カム27の作用により回動するように構成されている。押圧カム27は、押圧カム回動軸27aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット20のフレームなどに保持されている。押圧カム27は、駆動源としての押圧カム駆動モータ211からの駆動を受けて押圧カム回動軸27を中心に回動する。また、押圧カム27は、押圧部材ホルダ28に設けられたカムフォロワ28bと接触している。また、押圧部材ホルダ28は、カムフォロワ28bが押圧カム27と係合する方向に回動するように、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である引張りばねなどで構成された回動ばね29によって付勢されている。また、本実施例では、画像形成装置100には、押圧カム27の回動方向の位置、特に、本実施例では回動方向におけるホームポジション(HP)を検知するための位置検知手段として、押圧カム位置センサ(カムHPセンサ)212が設けられている。押圧カム位置センサ212は、例えば、押圧カム27又は押圧カム27と同軸上に設けられた指示部としてのフラグ、検知部としてのフォトインタラプタなどを有して構成することができる。
【0099】
このように、本実施例では、押圧部材ホルダ28、押圧カム27、押圧カム駆動モータ211、押圧カム位置センサ212、回動ばね29などを有して押圧機構16が構成されている。
【0100】
図6(a)に示すように、押圧部材26によって中間転写ベルト7を押圧する際には、押圧カム27が押圧カム駆動モータ211によって駆動されて時計回りに回動する。これにより、押圧部材回動軸28aを中心に反時計回りに押圧部材ホルダ28が回動して、押圧部材26の中間転写ベルト7に対する侵入量が所定の侵入量となる位置に、押圧部材26が配置された状態となる。このとき押圧部材26の先端が2次転写ニップN2の入口近傍の中間転写ベルト7の内周面に当接し、中間転写ベルト7を外周面側に張り出させる。
【0101】
また、図6(b)に示すように、押圧部材26を中間転写ベルト7から離間させる際には、押圧カム27が押圧カム駆動モータ211により駆動され反時計回りに回動する。これにより、押圧部材回動軸28aを中心に時計回りに押圧部材ホルダ28が回動して、押圧部材26が中間転写ベルト7から離間する位置に、押圧部材26が配置された状態となる。
【0102】
なお、これに限定されるものではないが、侵入量Yは3.5mm以下程度が好適である。これよりも侵入量(押圧量)大きい場合、押圧部材26と中間転写ベルト7との接触面にかかる負荷が増加するため、中間転写ベルト7がスムーズに回転しにくくなる可能性がある。また、押圧部材26は、内ローラ21にできる限り近接させることが望ましいが、内ローラ21と接触しないように配置することが望まれる。押圧部材26は、内ローラ21と中間転写ベルト7とが接触する位置から中間転写ベルト7の回転方向上流側へ例えば2mm程度以上、典型的には10mm程度以上離した位置で中間転写ベルト7の内周面と押圧部材26の先端とが接触するように配置できる。また、押圧部材26は、内ローラ21と中間転写ベルト7とが接触する位置から中間転写ベルト7の回転方向上流側へ40mm以下程度、典型的には25mm以下程度離した位置で中間転写ベルト7の内周面と押圧部材26の先端とが接触するように配置できる。また、侵入量Yは、記録材Pが、2次転写ニップN2の入口近傍及び2次転写ニップN2を通過している際に、所望の値となっていればよい。2次転写ニップN2の入口近傍は、より詳細には、記録材Pの搬送方向に関する、押圧部材26が中間転写ベルト7と接触する位置から2次転写ニップN2までの間の、中間転写ベルト7の領域に対応する領域である。
【0103】
4.オフセット量と侵入量との関係
実施例1では、オフセット量Xを変更する構成について説明したが、例えば記録材Pの剛度が大きい(厚さが大きい)場合に生じる前述の「飛び散り」や、記録材Pの先後端の画像不良(「ショック画像」)は、中間転写ベルト7の回転方向に関する2次転写ニップN2の上流に押圧部材26を配置して中間転写ベルト7を外側に張り出させるとことで効果的に抑制することができる。そのため、記録材Pの剛度が大きい(厚さが大きい)場合にオフセット量Xを小さくするように変更する場合に、同期して押圧部材26で中間転写ベルト7を外側に張り出すようにすることが望ましい。一方、例えば記録材Pの剛度が小さい(厚さが小さい)場合に、オフセット量Xを大きくし、かつ、押圧部材26によって中間転写ベルト7を外周面側に張り出させていると、次のようになる。つまり、接触距離Dが大きくなりすぎて、中間転写ベルト7上のトナー像と記録材Pとの摩擦によってトナー像が力学的に乱れてしまう画像不良、いわゆる、「がさつき」(あるいは「トナー像のずれ」)が発生することがある。
【0104】
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、内ローラ21又は外ローラ9の少なくとも一方の位置(本実施例では内ローラ21の位置)を変更してオフセット量Xを大きく変更した場合、同期して押圧部材26の位置を変更して侵入量Yが小さくなるように侵入量Yを変更する構成とする。
【0105】
なお、オフセット量Xと侵入量Yとを同期して変更するとは、次のようなことをいう。典型的には、ある記録材Pに画像を形成する場合に、該記録材Pが2次転写ニップN2に到達する前にオフセット量Xを変更した場合には、該記録材Pが2次転写ニップN2に到達する前に侵入量Yも変更することをいう。また、別の例として、例えば2次転写電圧の制御などのために2次転写電圧を印加するなどの所定の調整動作を行う場合に、該調整動作の開始前にオフセット量Xを変更した場合には、該調整動作の開始前に侵入量Yも変更することをいう。
【0106】
本実施例では、オフセット量Xを実施例1で説明した「オフセット小(第1のオフセット量X1)」とする場合は、侵入量Yを「侵入量大(第1の侵入量Y1)」である1.0~3.0mm(代表として例えば1.5mm)とする。また、本実施例では、オフセット量Xを実施例1で説明した「オフセット大(第2のオフセット量X2)」とする場合は、侵入量Yを「侵入量小(第2の侵入量Y2)」である0mm(離間)とする。つまり、オフセット量Xが第1のオフセット量X1となる第1の内ローラ位置に内ローラ21を配置する場合、同期して侵入量Yが第1の侵入量Y1となる第1の押圧部材位置に押圧部材26を配置する。また、オフセット量Xが第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2となる第2の内ローラ位置に内ローラ21を配置する場合、同期して侵入量Yが第1の侵入量Y1よりも小さい第2の侵入量Y2となる第2の押圧部材位置に押圧部材26を配置する。第1のオフセット量X1は、正の値、0、負の値であってよく、第2のオフセット量X2は、典型的には正の値である。また、第1の侵入量Y1は正の値であり、第2の侵入量Y2は0、正の値であってよい。
【0107】
なお、本実施例では、押圧部材26は、中間転写ベルト7の内周面から離間することが可能とされているが、これに限定されるものではない。侵入量Yが0の場合に、押圧部材26が中間転写ベルト7に接触していてもよい。また、第2の侵入量Y2は第1の侵入量Y1よりも小さければよく、侵入量Yが0をとらない構成とされていてもよい。
【0108】
また、オフセット量X及び侵入量Yの設定は、上述の具体例に限定されるものではない。これらは、前述したような記録材Pの中間転写ベルト7からの分離性の向上や2次転写ニップN2の近傍で発生する画像不良の抑制の観点から、実験などを通して適宜設定することができる。また、オフセット量X、侵入量Yの変更は、2段階に限定されるものではない。オフセット量Xの変更は、3段階以上や無段階に変更可能であってもよい。なお、オフセット量Xが3段階以上に変更可能な場合、オフセット量Xが大きくなるにつれて、必ずしも侵入量Yを小さくする構成でなくてもよい。例えば、オフセット量Xの変更量が少ない場合や、オフセット量Xが負の範囲で変更される場合は、前述した接触距離Dの変動が小さい。この場合は、必ずしも侵入量Yを小さくしなくてもよい。
【0109】
5.制御態様
図7は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。図7において、図3に示すものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同一の符号を付している。本実施例では、制御部200には、押圧カム駆動モータ211、押圧カム位置センサ212が接続されている。本実施例では、制御部200のCPU201は、ROM220に格納されたオフセット量・侵入量テーブル、カム(オフセットカム、押圧カム)駆動量変換テーブルを用いて、オフセット駆動モータ213、押圧カム駆動モータ211の動作を制御することができる。
【0110】
本実施例における画像形成プロセス、オフセット量Xの変更制御(図4)は実施例1と同様である。そして、本実施例では、オフセット量Xを変更する動作と同期して侵入量Yを変更する動作を行う。表2は、本実施例におけるオフセット量・侵入量テーブルを模式的に示している。
【0111】
【表2】
【0112】
6.変形例
図8及び図9は、本実施例におけるオフセット機構17、押圧機構17の変形例を示す、2次転写ニップN2の近傍を内ローラ32の回転軸線方向の一端部側(図1の紙面手前側)から該回転軸線方向と略平行に見た要部の概略側面図である。図8は、主にオフセット機構7の構成及び動作を説明するための図であり、理解を容易とするために、押圧機構16に関する幾つかの構成は二点鎖線で示されている。また、図9は、主に後述する押圧機構16の構成及び動作を説明するための図であり、理解を容易とするために、オフセット機構17に関する幾つかの構成は二点鎖線で示されている。図8(a)及び図9(a)は、「オフセット小」、「侵入量大」の状態、図9(b)及び図9(b)は、「オフセット大」、「侵入量小」の状態を示している。
【0113】
図8及び図9に示す変形例のオフセット機構17、押圧機構16では、オフセット機構16の動作に連動して押圧機構17が動作し、オフセット量Xと侵入量Yとを連動して変更することができるようになっている。
【0114】
図8及び図9において、図2及び図6にそれぞれ示したオフセット機構17、押圧機構16と同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。ただし、本変形例では、オフセットカム39と押圧カム27とは、それぞれ内ローラ21と押圧部材26とを所定の関係で連動して移動させることができるように、共通のカム回転軸110に対して位相が固定されて設けられている。つまり、オフセットカム39と押圧カム27とは、オフセット機構17及び押圧機構16を構成する共通のカム回転軸110を中心として同軸上で連動して回転可能である。カム回転軸110は、オフセット機構17及び押圧機構16を構成する共通のカム駆動モータ113によって回転させられる。これにより、押圧機構16は、オフセット機構17の動作に連動して、侵入量Yを変更することができる。このように、本変形例では、オフセット量Xと侵入量Yとを同期して変更することを、1つの(共通の)駆動源で行うことできる。そのため、本変形例によれば、装置の構成の簡易化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0115】
7.効果
以上のように、本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例によれば、例えば記録材Pの剛度が大きい(厚さが大きい)場合に生じる記録材Pの先後端の画像不良などを、より効果的に抑制することができる。
【0116】
なお、本発明は、オフセット機構17及び押圧機構16のうち押圧機構16のみを有している画像形成装置100にも適用することができる。この場合、例えば本実施例においてオフセット機構17の動作に同期して動作させていたのに代えて、同様の条件(記録材Pの厚さ、表面性)で押圧機構16のみを動作させることができる。このような構成においても、本発明を適用することで、混載ジョブの生産性と画質との両立が可能になる。つまり、制御部200は、第1の情報が示す厚さが所定値より大きい記録材Pにトナー像を転写する際の押圧部材26のベルト7に対する押圧量を第1の押圧量とし、第1の情報が示す厚さが上記所定値以下の記録材Pにトナー像を転写する際の上記押圧量を第1の押圧量よりも小さい第2の押圧量とするか又は押圧部材26をベルト7から離間させるように、位置変更機構16を制御することが可能であり、第2の情報が示す表面性が上記第1の表面性の記録材Pにトナー像を転写する場合の上記所定値よりも、第2の情報が示す表面性が上記第1の表面性よりも平滑な第2の表面性の記録材Pにトナー像を転写する場合の上記所定値の方が小さくなるように、上記所定値を異ならせることが可能である。
【0117】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0118】
上述の実施例では、画像形成装置は、内ローラの位置を変更することでオフセット量を変更する構成とされていたが、外ローラの位置を変更することでオフセット量を変更する構成とされていてもよい。また、内ローラ又は外ローラのいずれかを移動させる構成に限らず、内ローラと外ローラとの両方を移動させてオフセット量を変更するようにしてもよい。
【0119】
上述の実施例では、内部材としての内ローラと共に2次転写ニップを形成する外部材として、中間転写ベルトの外周面に直接当接する外ローラが用いられていた。これに対して、外部材として外ローラ及び該外ローラと他のローラとに張架された2次転写ベルトが用いられる構成とされていてもよい。つまり、画像形成装置は、外部材として、張架ローラと、外ローラと、これらのローラ間に張架された2次転写ベルトと、を有していてよい。そして、外ローラが2次転写ベルトを介して中間転写ベルトの外周面に当接するようにすることができる。斯かる構成においては、中間転写ベルトの内周面に接触する内ローラと、2次転写ベルトの内周面に接触する外ローラとで、中間転写ベルト及び2次転写ベルトを挟持することによって2次転写ニップを形成する。この場合、中間転写ベルトと2次転写ベルトとの接触部が2次転写部としての2次転写ニップである。なお、この場合も、オフセット量Xは、前述と同様に、内ローラと外ローラとの相対位置によって定義される。また、侵入量Yも、内ローラと2次転写前ローラとで形成される基準線L1及び押圧部接線L4、あるいは外ローラと2次転写前ローラとで形成される基準線L1’及び押圧部接線L4’を用いて前述と同様に定義される。
【0120】
また、上述の実施例では、記録材の剛度と関連する記録材の種類に関する情報の一例である、記録材の厚さに関する情報を用いる場合について説明した。用紙カテゴリーあるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)が同じである場合、記録材の坪量と記録材の厚さとは略比例関係にあることが多い(厚さが大きいほど坪量が大きい。)。また、用紙カテゴリーあるいは銘柄が同じである場合、記録材の剛度と、記録材の坪量あるいは厚さと、は略比例関係にあることが多い(坪量あるいは厚さが大きいほど剛度が大きい。)。したがって、記録材の厚さに関する情報として、坪量や剛度の情報を用いることができる。また、記録材の厚さに関する情報及び記録材の表面性に関する情報として、例えば、銘柄、あるいは用紙カテゴリーと銘柄との組み合わせといった定性的な情報のみを用いることもできる。例えば、銘柄、あるいは用紙カテゴリーと銘柄との組み合わせに応じて、オフセット量や侵入量を設定することができる。この場合も、それぞれの記録材の厚さに関する指標値(厚さ、坪量、剛度など)、表面性に関する指標値(表面粗さ、コート処理の有無など)の違いに基づいて、オフセット量や侵入量を割り当てておくことになる。なお、記録材の剛度は、ガーレー剛度(MD/縦目)[mN]で代表することができ、市販のガーレー剛度試験機で測定することができる。
【0121】
また、上述の実施例では、オフセット機構や押圧機構として、カムにより可動部を作動させるアクチュエータを用いたが、これに限定されるものではない。オフセット機構や押圧機構は、それぞれ上述の実施例に準じた動作を実現できるものであればよく、例えば、ソレノイドを用いて可動部を作動させるアクチュエータを用いてもよい。
【0122】
また、上述の実施例では、ベルト状の像担持体が中間転写ベルトである場合について説明したが、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する無端状のベルトで構成された像担持体であれば、本発明を適用することができる。このようなベルト状の像担持体としては、上述の実施例における中間転写ベルトの他、感光体ベルトや静電記録誘電体ベルトが例示できる。
【0123】
また、本発明は、上述の実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。したがって、ベルト状の像担持体を用いる画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、帯電方式、静電像形成方式、現像方式、転写方式、定着方式の区別無く実施できる。上述の実施例では、トナー像の形成/転写に係る主要部を中心に説明したが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途で実施できる。
【符号の説明】
【0124】
7 中間転写ベルト
9 外ローラ
16 押圧機構
17 オフセット機構
21 内ローラ
26 押圧部材
100 画像形成装置
200 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12