(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】情報処理装置、判定方法、検査装置、成形装置、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240527BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20240527BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240527BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G06T7/00 610
G01N21/956 Z
G06T7/00 350C
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020121136
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】川村 亮彦
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-057489(JP,A)
【文献】国際公開第2020/022024(WO,A1)
【文献】Ihar Volkau;Abdul Mujeeb;Dai Wenting;Erdt Marius;Sourin Alexei,Detection Defect in Printed Circuit Boards using Unsupervised Feature Extraction Upon Transfer Learning,2019 International Conference on Cyberworlds (CW),米国,IEEE,2019年,pp.101-108,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8918932
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G01N 21/956
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形処理が行われた基板について、前記成形された組成物の成形不良を検査するための条件の調整の要否を判定する情報処理装置であって、
成形された前記基板上の組成物の画像を取得する画像取得部と、
学習モデルを用いて、前記画像取得部により取得した前記画像に対して、前記組成物の成形不良の検査を行う検査部と、
少なくとも一部に前記成形処理が行われた前記基板であって、前記要否の判定の基準とする基準基板の、前記組成物の成形不良に関する情報を取得する情報取得部と、
前記検査部によって前記基準基板の前記組成物の成形不良が検査されて取得された検査結果と、前記情報取得部によって取得された前記組成物の成形不良に関する情報とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記検査の条件の調整の要否を判定する判定部と、を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記比較の結果、前記検査部において前記組成物の成形不良の誤検出がある場合は、前記検査の条件の調整が必要であると判定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記検査部における前記基準基板の前記組成物の成形不良の検査結果と、前記情報取得部が取得した前記成形不良に関する情報と、に相違がある場合に、前記検査部において前記組成物の成形不良の誤検出があると判定することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判定部において、前記検査の条件の調整が必要であると判定された場合に、前記比較の結果に基づいて、前記検査の条件の調整を行う調整部をさらに有し、
前記検査の条件は、前記取得される前記画像の撮像条件、および、前記学習モデルの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記学習モデルを調整する場合に、前記学習モデルを他の学習モデルに変更する、前記学習モデルの一部を修正する、または成形不良を検出する際の閾値を変更することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記撮像条件を調整する場合に、前記画像の撮像時における照明光、フォーカス、倍率、撮像する領域および撮像を行う手段の少なくとも1つを変更することを特徴とする請求項4または5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記調整部は、前記比較の結果に基づいて、調整する検査の条件の候補を選択可能に表示部に表示させ、選択された前記検査の条件を調整することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記比較の結果に基づいて、前記検査の精度を算出する算出部を含み、
前記調整部は、前記検査に用いられた前記学習モデルと、その検査精度を対応づけて表示部に表示させることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記成形不良は、前記組成物の浸み出し、および前記組成物の未充填のいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記成形不良に関する情報は、前記成形不良がある位置、前記成形不良の大きさ、前記成形不良の種類、前記基準基板の撮像時における前記基準基板を照明する光の波長または光量、撮像位置、明視野/暗視野、解像度、画像の明るさ、および画像のコントラストの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記基準基板の前記成形不良に関する情報を入力するための入力手段を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記基準基板は前記組成物の成形不良を有する基板であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
複数の前記画像に基づいて、前記検査部で用いる前記学習モデルを作成する作成部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記学習モデルを情報処理装置の外部から取得する学習モデル取得部を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記学習モデルは、前記成形された前記基板上の組成物の複数の画像のうち、前記成形不良を含まない画像を教師データとして作成されることを特徴する請求項1乃至14のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記検査部は、前記画像を前記学習モデルに入力し、出力されたデータと、入力した前記画像との差分に基づいて、前記組成物の成形不良の検査を行うことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形処理が行われた基板について、前記成形された組成物の成形不良を検査するための条件の調整の要否を判定する判定方法であって、
成形された前記基板上の組成物の画像を取得する画像取得工程と、
学習モデルを用いて、前記画像取得工程において取得した前記画像に対して、前記組成物の成形不良の検査を行う検査工程と、
少なくとも一部に前記成形処理が行われた前記基板であって、前記要否の判定の基準とする基準基板の、前記組成物の成形不良に関する情報を取得する情報取得工程と、
前記検査工程における前記基準基板の前記組成物の成形不良が検査されて取得された検査結果と、前記情報取得工程によって取得された前記組成物の成形不良に関する情報とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記検査の条件の調整の要否を判定する判定工程と、を有することを特徴とする判定方法。
【請求項18】
成形された前記基板上の組成物の画像を撮像する撮像部と、
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の情報処理装置と、を備えることを特徴とする成形不良検査装置。
【請求項19】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、
請求項18に記載の成形不良検査装置を有することを特徴とする成形装置。
【請求項20】
前記成形装置は、前記型のパターンを前記組成物に接触させることにより前記組成物のパターンを形成するインプリント装置、または、前記型の平面部を前記組成物に接触させることにより前記組成物を平坦にする平坦化装置を含むことを特徴とする請求項19に記載の成形装置。
【請求項21】
請求項19または20に記載の成形装置を用いて基板上の組成物を成形する成形工程と、
前記成形工程で前記組成物が成形された基板に対して、前記組成物の成形不良の検査を行う検査工程と、
前記成形工程で前記組成物を成形された基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工された基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項22】
請求項17に記載の判定方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、判定方法、検査装置、成形装置、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に微細なパターンを形成する技術として、原版のパターンを投影光学系を介して基板に転写する露光装置を用いたリソグラフィ技術が知られている。また、近年では、基板上のインプリント材を型(モールド)で成形して、型に形成された微細なパターンを基板上に形成するインプリント技術も注目されている(特許文献1参照)。
【0003】
インプリント技術では、インプリント材の硬化法の1つとして光硬化法がある。光硬化法は、基板上のショット領域に供給されたインプリント材と型とを接触させた状態で光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を引き離すことでインプリント材のパターンを基板上に形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したインプリント技術を用いて基板上にパターンを形成する際には、インプリント材が多いと、かかるインプリント材がショット領域外にはみ出してしまうことがある(以下、「浸み出し」と称する)。一方、基板上に供給されるインプリント材の量が少ないと、ショット領域上に部分的にパターンが形成されていない箇所が発生してしまうことがある(以下、「未充填」と称する)。浸み出しが発生すると、インプリント材がはみ出した箇所が不良となるとともに、インプリント材がはみ出した先のショット領域にパターンを形成する際に、はみ出したインプリント材と型とが接触して型のパターンが破損してしまう可能性がある。また、未充填が発生すると、ショット領域上に部分的にパターンが形成されていないため、半導体デバイスとして不良となる可能性がある。
【0006】
インプリント処理の後に浸み出しや未充填の有無を観察(確認)し、基板上に供給するインプリント材の量や位置を調整して、浸み出しや未充填の発生を抑える必要がある。但し、浸み出しや未充填が発生している箇所は微小な領域であるため、観察範囲が狭く、高倍率の顕微鏡で得られた膨大な数の観察画像を確認する必要があるが、このような膨大な数の観察画像を人が確認することは現実的ではない。従って、人手を介さずに、観察画像から浸み出しや未充填を検査して、浸み出しや未充填に起因するパターンの形成不良や平坦化の成形の不良(以下、「成形不良」と称する)を判定する技術が要求されている。
【0007】
膨大な数の観察画像から浸み出しおよび未充填を検査する手段の一例として、機械学習を用いた手法がある。ここでの機械学習は検査をコンピュータで行うものであり、事前に取得した観察画像のデータをコンピュータを用いて学習する事により、学習モデルを生成する。次に、形成不良の有無等を検査する画像を学習モデルに入力し検査結果を得る。機械学習に用いる学習モデルを生成するためには、学習のためのデータの準備や学習モデルを算出(学習)する処理などに多くのコストが必要となる。物品製造システム(半導体製造工場)では、複数の装置が稼働しており、同一の製品が複数の装置等で並行して製造されている。これらの装置毎に、学習モデルを算出することは非効率である。このため、共通の学習モデルを多くの形成不良検査を行う装置に適用することで、効率的に形成不良の検出を実現している。
【0008】
しかしながら、形成不良検査に使用する装置が異なると、装置の個体差や経時変化によって、形成不良の検査精度が劣化する可能性がある。形成不良の検査精度の劣化の要因は様々であり、形成不良検査に使用する装置の調整の必要性の確認と、調整対象を特定するためには、目視による画像観察(判定)等が必要であり、人手を介する必要がある。このため、装置を継続的に稼働させるために必要な確認・調整作業に時間がかかりうる。
【0009】
そこで、本発明は、基板上に成形された組成物の成形不良の有無を判定する情報処理装置において、判定精度を効率的に維持可能な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての情報処理装置は、型を用いて基板上の組成物を成形する成形処理が行われた基板について、前記成形された組成物の成形不良を検査するための条件の調整の要否を判定する情報処理装置であって、成形された前記基板上の組成物の画像を取得する画像取得部と、学習モデルを用いて、前記画像取得部により取得した前記画像に対して、前記組成物の成形不良の検査を行う検査部と、少なくとも一部に前記成形処理が行われた前記基板であって、前記要否の判定の基準とする基準基板の、前記組成物の成形不良に関する情報を取得する情報取得部と、前記検査部によって前記基準基板の前記組成物の成形不良が検査されて取得された検査結果と、前記情報取得部によって取得した前記組成物の成形不良に関する情報とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記検査の条件の調整の要否を判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、基板上に成形された組成物の成形不良の有無を判定する情報処理装置において、判定精度を効率的に維持可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る成形装置としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
【
図2】リソグラフィシステムの構成を示す概略図である。
【
図3】インプリント装置100の動作を説明するフローチャートである。
【
図4】基板上のインプリント材と型とが接触している状態を示す側面図である。
【
図5】
図3に示す工程S108で取得される画像の一例を示す図である。
【
図6】オートエンコーダの概要を説明する図である。
【
図7】本実施形態における検査精度の取得処理を模式的に示す図である。
【
図8】成形不良検査装置1007のシステム構成を示す概略図である。
【
図9】学習モデルを作成する際の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図10】検査機能調整の要否を判定する際の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図10の工程S301の詳細な処理を説明するフローチャートである。
【
図12】
図10の工程S302の詳細な処理を説明するフローチャートである。
【
図13】
図10の工程S304の詳細な処理を説明するフローチャートである。
【
図14】第1実施形態に係るユーザインターフェースの画面例を示す模式図である。
【
図15】第1実施形態に係るユーザインターフェースの画面例を示す模式図である。
【
図16】第2実施形態における平坦化装置による処理を説明する図である。
【
図17】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る成形装置としてのインプリント装置100の構成を示す概略図である。
図1(A)は、インプリント装置100の構成を示す概略図である。インプリント装置100は、型(原版、テンプレート)を用いて基板上にインプリント材(組成物)のパターンを形成(成形)するインプリント処理を行うリソグラフィ装置である。インプリント装置100は、基板上に供給された未硬化のインプリント材IMと型Mとを接触させ、インプリント材IMに硬化用のエネルギーを与えることにより、インプリント材IMを硬化させる。そして、インプリント材IMの硬化物と型Mとを分離する(離型)。この一連の処理をインプリント処理という。インプリント処理によって、基板Sの上にパターンが形成される。なお、本明細書において、成形処理という場合、インプリント処理と、平坦化処理を含むものとする。ここで、平坦化処理とは、凹凸パターンがない平面部を有するモールドを用いて基板上に平坦化層を形成する処理である。
【0015】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。
【0016】
基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0017】
本明細書および添付図面では、基板Sを保持する基板保持部102の基板保持面に沿う方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。位置合わせは、基板および型の少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。
【0018】
インプリント装置100は、基板Sを保持する基板保持部102、基板保持部102を駆動することによって基板Sを駆動する基板駆動機構105、基板保持部102を支持するベース104、基板保持部102の位置を計測する位置計測部103を備えうる。基板駆動機構105は、例えば、リニアモータ等のモータを含みうる。
【0019】
インプリント装置100は、型(モールド)Mを保持する型保持部121、型保持部121を駆動することによって型Mを駆動する型駆動機構122、型駆動機構122を支持する支持構造体130を含みうる。型駆動機構122は、例えば、ボイスコイルモータ等のモータを含みうる。
【0020】
基板駆動機構105および型駆動機構122は、基板Sと型Mとの相対位置および相対姿勢を調整する駆動機構を構成する。該駆動機構による基板Sと型Mとの相対位置の調整は、基板Sの上のインプリント材に対する型の接触、および、硬化したインプリント材(硬化物のパターン)からの型の分離のための駆動を含む。基板駆動機構105は、基板Sを複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。型駆動機構122は、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
【0021】
インプリント装置100は、型Mを搬送する型搬送機構140および型クリーナ150を備えうる。型搬送機構140は、例えば、型Mを型保持部121に搬送したり、型Mを型保持部121から原版ストッカ(不図示)または型クリーナ150等に搬送したりするように構成されうる。型クリーナ150は、型Mを紫外線や薬液等によってクリーニング(洗浄)する。
【0022】
型保持部121は、型Mの裏面(基板Sに転写すべきパターンが形成されたパターン領域MPとは反対側の面)の側に圧力制御空間CSを形成する窓部材125を含みうる。
図1(B)は、圧力制御空間CSを含む型Mの周辺の構成を示す概略図である。インプリント装置100は、圧力制御空間CSの圧力(以下、キャビティ圧と呼ぶ)を制御することによって、
図1(B)に模式的に示されるように、型Mのパターン領域MPを基板Sに向かって凸形状に変形させる変形機構123を備えうる。
【0023】
また、インプリント装置100は、アライメント計測部106、広角アライメント計測部151、硬化部107、撮像部112、光学部材111を備えうる。アライメント計測部106は、基板Sのアライメントマークと型Mのアライメントマークを照明するとともにその像を撮像する事によりマーク間の相対位置を計測する。アライメント計測部106は、観察すべきアライメントマークの位置に応じて不図示の駆動機構によって位置決めされうる。
【0024】
広角アライメント計測部151は、アライメント計測部106より広い視野を有する計測器であり、基板Sのアライメントマークを照明するとともにその像を撮像する事により、基板Sの位置を計測する。広角アライメント計測部で基板Sの位置を計測する事により、アライメント計測部106の視野内に基板Sのアライメントマークを移動する事ができる。
【0025】
硬化部107は、インプリント材IMを硬化させるためのエネルギー(例えば、紫外光等の光)を、光学部材111を介してインプリント材IMに照射し、これによりインプリント材IMを硬化させる。撮像部112は、光学部材111および窓部材125を介して基板S、型Mおよびインプリント材IMを撮像する。
【0026】
インプリント装置100は、基板Sの上にインプリント材IMを配置するディスペンサ108を備えうる。ディスペンサ108は、例えば、インプリント材IMの配置を示すドロップレシピに従ってインプリント材IMが基板Sの上に配置されるようにインプリント材IMを吐出する。
【0027】
インプリント装置100は、基板駆動機構105、型駆動機構122、変形機構123、型搬送機構140、型クリーナ150、アライメント計測部106、硬化部107、撮像部112、ディスペンサ108等を制御する制御部110を備えうる。制御部110は、情報処理装置である計算機構113を含む、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
【0028】
図2は、半導体デバイスなどの物品を製造するためのリソグラフィシステム1001の構成を示す概略図である。リソグラフィシステム1001は、1つ又は複数のインプリント装置100と、1つ又は複数の検査装置1005と、1つ又は複数の処理装置1006と、1つ又は複数の成形不良検査装置1007と、制御装置1003とを有する。なお、リソグラフィシステム1001は、1つ又は複数の露光装置を更に有していてもよい。
【0029】
検査装置1005は、例えば、重ね合わせ検査装置、CD(Critical Dimension)検査装置、欠陥検査装置、電気特性検査装置などを含む。処理装置1006は、例えば、エッチング装置や成膜装置などを含む。インプリント装置100と、検査装置1005と、処理装置1006と、成形不良検査装置1007と、制御装置1003とは、ネットワーク1002を介して、互いに接続されている。リソグラフィシステム1001において、インプリント装置100、検査装置1005、処理装置1006及び成形不良検査装置1007は、インプリント装置100とは異なる外部装置である制御装置1003によって制御される。
【0030】
成形不良検査装置1007は、汎用又は専用の情報処理装置(コンピュータ)に、成形不良検査に関するプログラムを組み込むことによって構成される。なお、成形不良検査装置1007は、FPGAなどのPLDによって構成されてもよいし、ASICによって構成されてもよい。また、成形不良検査装置1007は、インプリント装置100の計算機構113や制御装置1003を用いて(併用して)実現してもよい。即ち、成形不良検査装置は、インプリント装置に含まれる場合もある。
【0031】
成形不良検査装置1007は、インプリント処理が行われた基板Sについて、パターンの形成不良や平坦化の不良の有無を検査する機能、および、該検査精度を取得して、検査機能調整の要否を判定する機能を有する。成形不良検査装置1007の詳細な構成については後述する。
【0032】
図3を参照して、インプリント装置100やインプリント装置100を含むリソグラフィシステム1001の動作について説明する。本実施形態では、インプリント処理を行った後に、インプリント処理を行ったショット領域(パターンを形成すべき領域)の周辺部の画像を取得する。そして、取得した画像を用いて浸み出し及び未充填(に起因するパターンの形成不良や平坦化の不良(組成物の成形不良))を検査(検出)する。本実施形態では、浸み出し及び未充填を検査する際には、機械学習を用いる。なお、以降、浸み出し及び未充填の検査を成形不良検査と称する。これに加え、本実施形態では、インプリント処理並びに成形不良検査とは別に、成形不良検査の検査精度の確認と成形不良検査に関連する機能の調整を行う。なお、以下では成形不良検査に用いる装置の検査精度の確認を検査精度確認、該装置の成形不良検査に関連する機能の再調整を検査機能調整と称する。具体的には、成形不良検査の精度を確認するための基準として用いる基板(基準基板)の検査部1037における検査結果と、情報取得部1047によって基準基板の成形不良に関する情報を用いることにより、検査精度の確認を行う。さらに、検査精度の確認結果に基づいて、検査機能調整の要否を判定し、調整が必要な場合には調整対象の特定と、調整についても行う。一例としては、この検査精度確認と検査機能調整を定期的に行う。
【0033】
図3は、インプリント装置100の動作を説明するフローチャートである。本図に示される動作は、
図2に示すリソグラフィシステムにも適用されうる。
図3に示される動作は、制御部110または制御装置1003のうちの少なくとも一方によって制御されうる。工程S101では、不図示の基板搬送機構によって基板Sが搬送元(例えば、前処理装置との中継部)から基板保持部102の上に搬送される。搬送された基板Sの基板保持部102上での位置を、広角アライメント計測部151で基板S上のマークを観察する事により計測する。ここで計測した位置に基づいて、基板Sを位置決めする。
【0034】
工程S102~S106は、基板Sの複数のショット領域のうちインプリント対象のショット領域に対するインプリント処理の各工程を示している。
【0035】
まず、工程S102では、基板Sの複数のショット領域のうちインプリント対象のショット領域の上にディスペンサ108によってインプリント材IMを配置(供給)する。具体的には、基板駆動機構105によって基板Sを移動させながら、ディスペンサ108からインプリント材IMを吐出することで、インプリント対象のショット領域にインプリント材IMを配置する。
【0036】
工程S103では、インプリント対象のショット領域上のインプリント材IMと型M(のパターン領域MP)とを接触させる。具体的には、基板駆動機構105及び型駆動機構122の少なくとも一方によって基板Sと型Mとを相対的に移動させることで、インプリント対象のショット領域上のインプリント材IMと型Mとを接触させる。例えば、インプリント対象のショット領域上のインプリント材IMに型Mが接触するように、型駆動機構122によって型Mを移動させる。なお、インプリント対象のショット領域上のインプリント材IMと型Mとを接触させる際には、変形機構123によって、型Mのパターン領域MPを基板Sに向かって凸形状に変形させるとよい。
【0037】
工程S104では、基板Sと型Mとのアライメント(位置合わせ)、具体的には、インプリント対象のショット領域と型Mのパターン領域MPとのアライメントを行う。具体的には、アライメント計測部106によってインプリント対象のショット領域のアライメントマークと型Mのアライメントマークとの相対位置を計測しながら、かかる相対位置が目標相対位置の許容範囲に収まるように、アライメントを行う。例えば、基板駆動機構105及び型駆動機構122の少なくとも一方によって基板Sと型Mとを相対的に移動させることで、それらの相対位置を目標相対位置の許容範囲に収める。目標装置位置は、例えば、重ね合わせ検査装置で得られた過去の結果などから決められた補正値に応じて設定される。
【0038】
工程S105では、インプリント対象のショット領域上のインプリント材IMと型Mとを接触させた状態において、インプリント材IMを硬化させる。具体的には、インプリント材IMを硬化させるためのエネルギーを、硬化部107から基板Sと型Mのパターン領域MPとの間のインプリント材IMに照射する。これにより、インプリント材IMが硬化し、インプリント対象のショット領域にインプリント材IMの硬化物(パターン)が形成される。
【0039】
工程S106では、インプリント対象のショット領域上の硬化したインプリント材IMから型Mを引き離す(離型)。具体的には、インプリント材IMの硬化物と型Mのパターン領域MPとが分離されるように、基板駆動機構105及び型駆動機構122の少なくとも一方によって基板Sと型Mとを相対的に移動させる。例えば、インプリント対象のショット領域上のインプリント材IMの硬化物から型Mが分離するように、型駆動機構122によって型Mを移動させる。なお、インプリント対象のショット領域上の硬化したインプリント材IMから型Mを引き離す際には、変形機構123によって、型Mのパターン領域MPを基板Sに向かって凸形状に変形させるとよい。また、撮像部112によって、基板S、型M及びインプリント材IMを撮像して画像を取得し、かかる画像に基づいてインプリント材IMと型Mとの分離の状態を観察する。
【0040】
工程S107では、制御部110は、基板Sの全てのショット領域に対して工程S102~S106のインプリント処理を実行したかどうかを判断する。そして、制御部110は、基板Sの全てのショット領域に対して工程S102~S106のインプリト処理を実行した場合には工程S108に進み、未処理のショット領域が存在する場合には工程S102に戻る。この場合、未処理のショット領域のうち選択されたショット領域に対して工程S102~S106のインプリント処理を実行する。
【0041】
工程S108では、インプリント処理が行われた基板Sのショット領域(及び周辺部)を撮像して、かかるショット領域に形成されたパターンを含む画像を取得する。基板上の各ショット領域の撮像には、例えば、広角アライメント計測部151を用いればよい。ショット領域に対して、広角アライメント計測部151の視野が狭い場合には、基板駆動機構105によって基板Sの位置を変更しながら複数回の撮像を行うことで所望の領域(ショット領域)の画像を取得すればよい。
【0042】
工程S108で取得された画像は、後述するように、基板Sにおけるパターンの形成不良の有無を検査(判定)する処理に関して、学習用の画像として用いる場合もあるし、検査用の画像として用いる場合もある。本実施形態では、広角アライメント計測部151を用いて画像を取得する場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。例えば、アライメント計測部106や撮像部112などを用いて同様の画像を取得してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、基板上の全てのショット領域に対してインプリント処理を行った後に各ショット領域を撮像して画像を取得しているが、これに限定されるものではない。例えば、基板上の1つのショット領域に対してインプリント処理を行った後(S106の後)に、かかるショット領域を撮像して画像を取得してもよい。また、インプリント装置100から基板Sを搬出した後に、外部装置で基板上の各ショット領域を撮像して画像を取得してもよい。
【0044】
なお、
図3に示すフローは、成形不良検査装置を含むインプリント装置を用いた場合の例について説明したものである。インプリント装置とは別体の成形不良検査装置で成形不良検査を行う場合には、インプリント装置では工程S108を行わず、工程S108と同様の工程を成形不良検査装置で行う。また、インプリント装置とは別体の成形不良検査装置で成形不良検査を行う場合でも、インプリント装置において工程S108を行い、インプリント装置で撮像した画像を用いて別体の成形不良検査装置において成形不良検査を行っても良い。
【0045】
工程S109では、インプリント装置100から基板Sを搬出する。具体的には、基板搬送機構(不図示)を用いて、基板Sを基板保持部102から搬送先(例えば、後処理装置との中継部)に搬送する。
【0046】
なお、複数の基板で構成されるロットを処理する場合には、複数の基板のそれぞれに対して、
図3に示す各工程が行われる。
【0047】
次に、本実施形態において、インプリント処理の後に行われる、基板Sにおけるパターンの形成不良の有無を検査する検査処理(パターンの形成不良の有無を判定する判定方法)について説明する。パターンの形成不良は、上述したように、浸み出しや未充填に起因して発生する。
【0048】
図4は、基板上のインプリント材IMと型Mとが接触している状態を示す側面図である。本図は、例えば、上述の工程S105における状態である。
図4(A)は、浸み出しを説明する図である。浸み出しとは、
図4(A)に示すように、基板上のショット領域(型M)からインプリント材IMがはみ出していること(パターンを形成すべき領域外へのインプリント材IMのはみ出し)を意味する。
図4(B)は、未充填を説明する図である。未充填とは、
図4(B)に示すように、型Mと基板Sとの間にインプリント材IMが充填されていない箇所が発生していることを意味する。
【0049】
図5は、
図3に示す工程S108で取得される画像の一例を示す図である。
図5(A)は、浸み出しおよび未充填が発生していない場合を示す図である。通常、即ち、浸み出しや未充填が発生していない場合には、
図5(A)に示すように、ショット領域の境界161まで、インプリント材IMが充填されてパターンが形成される。なお、
図5(A)乃至
図5(C)では、画像上部のショット領域にパターンを形成した例を示している。一方、未充填が発生した場合には、
図5(B)に示すように、インプリント材IMがショット領域の境界161まで充填されてない箇所が白く(又は黒く)撮像される。また、浸み出しが発生した場合には、
図5(C)に示すように、ショット領域の境界161からはみ出したインプリント材IMが黒く(又は白く)撮像される。
【0050】
次に、本実施形態での成形不良の検査方法について述べる。本実施形態では、成形不良検査方法として機械学習の一手法であるオートエンコーダ(AutoEncoder)を用いる。
図6は、オートエンコーダの概要を説明する図である。オートエンコーダは、
図6(A)に示すように、正常時のデータ(例えば、画像)のみを用いて学習モデルを作成するものである。十分な量のデータで学習した学習モデルに、異常なデータ(正常なデータとは異なる部分を含むデータ)を入力すると、
図6(B)に示すように、異常な部分が除去されたデータが出力(推定)される。
【0051】
本実施形態では、成形不良がない正常なデータ(正常なパターン画像)を入力データ及び教師データとして用いて、学習モデルを事前に作成する。そして、検査処理において、成形不良を検査(判定)すべき画像を学習モデルに入力して、出力データを取得する。上述したように、正常なデータ(成形不良を含まない画像)を入力した場合には、出力データとして、入力データと同一のデータが出力される。一方、異常なデータ(成形不良(浸み出し及び未充填)がある画像)を入力した場合には、出力データとして、入力データから推測される正常なデータ(成形不良を含まない画像)が出力される。従って、
図6(B)に示すように、入力データ(入力画像)と出力データ(出力画像)との差分が成形不良の部分を表しており、かかる差分の有無から、成形不良(浸み出しや未充填)の有無を検査(判定)する。
【0052】
次に、成形不良の検査処理について、より詳細に説明する。浸み出しや未充填などの成形不良検査に使用する画像は、いずれの成形不良検査装置で撮像しても同じ結果になることを想定している。そのため、例えば、
図2に示すようなリソグラフィシステムの成形不良検査に使用する学習モデルは、複数の成形不良検査装置に共通で使用する学習モデルを作成(学習)したあと、ネットワークなどを介してそれぞれの成形不良検査装置に入力される。そして、それぞれの成形不良検査装置で使用される。複数の成形不良検査装置の撮像性能がほぼ同一であれば、同じ学習データを共通して使用することで、複数の成形不良検査装置間の成形不良検査精度を均一にできる。
【0053】
しかし、実際には、装置が異なると、例えば、装置個体差や経時変化によって基板を観察した際の画像が変化して、成形不良の検査精度が劣化する可能性がある。各成形不良検査装置の成形不良検査精度が劣化して再調整が必要であることを調べるためには、各成形不良検査手段の検査結果に対して目視による画像観察(判定)等を行う必要がある。また、成形不良の検査精度が劣化した場合は、例えば、学習モデルの再算出(再学習)等により成形不良検査装置を再調整する必要がある。成形不良検査の検査精度確認及び検査機能調整する作業は人手を介する必要があるため、成形不良検査装置を継続的に稼働させるために必要な確認・調整作業に時間がかりうる。
【0054】
上記問題を解決するため、本実施形態では、成形不良検査精度を確認し、その結果に基づいて検査機能の再調整の要否を判定することを特徴とする。なお、本明細書において、基準基板とは、少なくとも一部に成形処理が行われた基板であって、成形不良検査の精度を確認(検査)するために用いる基板である。つまり、基準基板は、確認用基板であるともいえる。本実施形態では、基準基板として、少なくとも一部のショット領域にインプリント材のパターンが形成された基板を用いる。基準基板に形成されたインプリント材のパターンは、いずれのインプリント装置による処理で形成されたものであっても良い。また、基準基板は、成形不良を含んでいないインプリント処理済みの基板を用いても構わないが、成形不良を含んでいるインプリント処理済みの基板である方が好ましい。また、基準基板として、半導体デバイス等の物品を製造している途中の基板を用いても構わない。
【0055】
図7は、本実施形態における検査精度の取得処理を模式的に示す図である。
図7に示すように、本実施形態における検査精度の確認処理は、学習モデルを作成する際(学習時)の処理と、成形不良の有無を実際に検査する処理を含む検査精度を取得する際(検査時)の処理とに大別される。
図8は、成形不良検査装置1007のシステム構成を示す概略図である。前述した様に、成形不良検査装置1007は、インプリント装置100の計算機構113や制御装置1003を用いて(併用して)実現してもよい。成形不良検査装置1007は、画像取得部1017、作成部1027、検査部1037、情報取得部1047、判定部1057、および調整部1067を含む。
【0056】
画像取得部1017は、基板のショット領域(パターンを形成すべき領域)の周辺部の画像を取得する機能を実現する。画像取得部1017は、基板を撮像する撮像部を備えていても良いが、外部の撮像装置によって撮像された画像を取得する構成であっても良い。画像取得部1017が取得する画像は、2種類ある。一つは、学習モデルを作成するための教師データとして用いる画像である。本実施形態において、教師データとして用いる画像は、上述の通り、成形不良を含まないパターンが形成されたショット領域の周辺部の画像である。もう一つは、成形不良検査を行う画像、即ち、検査用(検査対象)の画像(検出画像)
である。
【0057】
作成部1027は、画像取得部1017に入力された教師データ用の画像を用いて、基板Sにおけるパターンの成形不良の有無を検査する検査処理に用いる学習モデル作成する機能を実現する。
【0058】
検査部1037は、画像取得部1017に入力された検査対象の画像を作成部1027で作成された学習モデルに入力して、パターンの形成不良の有無を示す検査結果を取得する機能を実現する。検査精度の取得処理を行う場合には、画像取得部1017に基準基板のショット領域(パターンを形成すべき領域)の周辺部の画像(基準画像)を入力し、基準画像のパターンの形成不良の有無の検査結果を取得する。なお、検査部1037におい用いられる学習モデルは、外部装置によって作成された学習モデルであっても良い。この場合、検査部1037は、例えば、ネットワークなどを介して学習モデルを取得する。その場合、学習モデルを情報処理装置の外部から取得(例えば、ダウンロード)するための学習モデル取得部を設ける。
【0059】
情報取得部1047は、基準基板の成形不良に関する情報を取得する。ここで、基準基板の成形不良に関する情報とは、例えば、以下の(A)~(C)の少なくとも1つを含む。なお、基準基板が成形不良を含んでいる場合には、(A)の中の少なくとも1つを含むことが好ましい。また、基準基板の成形不良に関する情報に(A)が存在しない場合には、基板基準が成形不良を含んでいないことを示す。
(A)成形不良がある位置、成形不良の大きさ、浸み出しや未充填などの成形不良の種類などの成形不良情報
(B)基準画像の撮像時における波長情報・光量・解像度・撮像位置・明視野/暗視野などの撮像条件の情報
(C)基準画像の明るさ・コントラストなどの基準画像の特徴情報
基準基板の成形不良に関する情報は、重ね合わせ検査装置、CD検査装置、欠陥検査装置、及び電気特性検査装置のうち少なくとも1つの検査装置1005において基準基板を検査した結果から取得される。また、基準基板の成形不良に関する情報は、人間が目視で基準基板が撮像された画像を検査した結果から取得されてもよい。また、基準基板の成形不良に関する情報は、成形不良検査装置1007がキーボードやタッチパネル等の入力手段を有する場合には、入力手段を介して成形不良検査装置1007の操作画面から入力されても良い。また、基準基板の成形不良に関する情報は、ネットワーク1002を介して取得されても良いし、ハードディスクやUSBのような可搬メディアを介して取得されても良い。成形不良に関する情報は、基準基板について既に検査された結果から取得された成形不良に関する情報であると言える。また、成形不良に関する情報は、基準基板に関する既知の成形不良に関する情報であるとも言える。さらに、成形不良に関する情報は、基準基板の成形不良に関する正しい情報であるともいえる。
【0060】
判定部1057は、検査部1037において取得された基準基板の成形不良の有無の検査結果と、情報取得部1047において取得された基準基板の成形不良に関する情報とを比較する。そして、比較結果に基づいて検査機能調整の要否を判定する。
【0061】
調整部1067は、判定部1057において、検査機能調整が必要であると判定された場合に、判定部1057における比較結果に基づいて、成形不良検査装置1007の成形不良検査に関連する機能のうち、調整すべき機能を特定し、調整する。なお、本明細書において、成形不良検査に関連する機能とは、画像取得部1017、作成部1027、および検査部1037において実現される機能が含まれる。
【0062】
まず、
図7乃至
図9を用いて、学習モデルを作成する際の処理について説明する。
図9は、本実施形態における学習モデルを作成する際の処理を説明するためのフローチャートである。
図9のフローチャートは、工程S201から工程S203を実施する事で、学習モデルを作成および保存する。
【0063】
工程S201では、画像取得部1017は学習用の画像を取得する。具体的には、基板を撮像して得られたパターンを含む画像(学習用の画像)を、画像取得部1017が取得する。学習用の画像の取得は、複数の基板のそれぞれに対して、且つ、かかる基板の各ショット領域に対して行われる。学習用の画像は多い方が好ましい。S201は、
図7に示す170の部分に相当する。
【0064】
工程S202では、作成部1027は、工程S201で取得した複数の画像に基づいて、学習モデルを作成する。具体的には、事前に作成したニューラルネットワークの入力データ及び出力データ(教師データ)として、同一の画像181を用いて、かかるニューラルネットワークの最適化を行う。これにより、学習モデル182(ニューラルネットワーク)を作成する。S202は、
図7に示す171の部分に相当する。
【0065】
工程S203で、作成部1027は、作成した学習モデル182を保存する。この工程は、
図7の172に相当する。
【0066】
次に、
図7、
図8、および
図10乃至
図13を用いて、検査機能調整の要否を判定する処理について述べる。
図10は、検査機能調整の要否を判定する際の処理を説明するためのフローチャートである。
【0067】
工程S301では、検査部1037が基準基板に対して成形不良検査を行う。本工程の詳細については、
図11を用いて後述する。
【0068】
工程S302では、工程S301で行われた基準基板に対する成形不良検査の結果と、情報取得部1047により取得した基準基板の成形不良に関する情報とを比較し、比較結果を取得する。本工程の詳細については、
図12を用いて後述する。
【0069】
工程S303では、判定部1057は取得した比較結果に基づき、検査機能調整の要否を判定する。具体的には、判定部1057は、基準基板に対する成形不良検査の結果と、基準基板の成形不良に関する情報との間に相違がある場合、即ち、不一致の場合には、成形不良の誤検出があると判定し、検査機能調整が必要であると判定する。一方、基準基板に対する成形不良検査の結果と、情報取得部1047により取得した基準基板の成形不良に関する情報との間に相違がない場合、即ち、一致の場合には、成形不良の誤検出がないと判定し、検査機能調整は不要であると判定する。なお、基準基板に対する成形不良検査の結果と、情報取得部1047により取得した基準基板の成形不良に関する情報間の相違が少ないまたは小さい程、検査精度が高いと言える。工程S303において、検査機能調整が必要であると判定された場合(Yes)は、工程S304へ処理を移行する。一方、工程S303において、検査機能調整が必要でないと判定された場合(No)は、検査機能調整の要否判定の処理を終了する。
【0070】
工程S304では、成形不良の誤検出をなくして、成形不良検査の精度の向上させるため、工程S302で取得された比較結果に基づいて、検査機能調整を行う。本工程の詳細については、
図13を用いて後述する。
【0071】
なお、本実施形態では工程S303誤検出の有無によって、検査機能調整の要否を判定した。しかし、基準基板に対する成形不良検査の結果と、基準基板の成形不良に関する情報と、の相違に基づいて検査精度を算出し、検査精度が閾値以下の場合に、検査機能調整が必要であると判定しても良い。この場合、判定部1057は検査精度を算出する算出部として機能する。
【0072】
図11は、
図10の工程S301の詳細な処理を説明するフローチャートである。つまり、基準基板に対する成形不良検査処理のフローチャートである。工程S311では、画像取得部1017は、基準基板の画像184(基準画像)を取得する。この工程は、
図7の173の部分に相当する。
【0073】
工程S312では、検査部1037は工程S203で保存した学習モデル182を読み込む。この工程は、
図7の174に相当する。なお、学習モデル182は、別の成形不良検査装置で算出した学習モデルを使用しても良い。
【0074】
工程S313では、検査部1037は工程S311で取得した画像184を、工程S312で読み込んだ学習モデル182に入力し、出力画像185(出力データ)を得る。この工程は、
図7の175に相当する。
【0075】
工程S314では、検査部1037は工程S311で取得した検査対象の画像184と、工程S313の出力画像の差分を求め、かかる差分に基づいて、成形不良の有無の検査結果186を取得する。例えば、検査対象の画像184と出力画像185との差分が事前に設定した閾値よりも大きい場合には、成形不良(浸み出しや未充填)があるという検査結果186が得られる。一方、検査対象の画像184と出力画像185との差分が事前に設定した閾値以下である場合には、成形不良がないという検査結果186が得られる。この工程は、
図7の176の部分に相当する。
【0076】
図12は、
図10の工程S302の詳細な処理を説明するフローチャートである。つまり、基準基板に対する成形不良検査の結果と、情報取得部1047により取得した基準基板の成形不良に関する情報とを比較する処理のフローチャートである。工程S321では、判定部1057は、
図11の工程S314で取得した基準基板の検査結果を取得する。
【0077】
工程S322では、判定部1057は、情報取得部1047から基準基板の成形不良に関する情報188を取得する。この工程は、
図7の177の部分に相当する。
【0078】
工程S323では、判定部1057は、工程S321で得られた基準基板の検査結果186と、工程S322で得られた基準基板の成形不良に関する情報188と、を比較する。そして、比較結果189が取得される。この工程は、
図7の178の部分に相当する。
【0079】
図13は、
図10の工程S304の詳細な処理を説明するフローチャートである。つまり、検査機能調整処理のフローチャートである。工程S331では、調整部1067は、比較結果189に基づいて、成形不良検査装置1007の成形不良検査に関連する機能のうち、調整すべき機能を特定する。具体的には、成形不良検査に関連する機能を実現する画像取得部1017、作成部1027、および検査部1037のうち、いずれの機能を調整すべきかを特定する。
【0080】
工程S332では、調整部1067は、工程S331で特定した調整対象に対して検査の条件を調整する指示を出す。ここで、調整される検査の条件には、画像取得部1017において取得される検査用の画像の撮像条件、並びに、検査部1037において用いられる学習モデルおよび閾値等が含まれる。検査用の画像の撮像条件には、検査用の画像の撮像時における照明光、フォーカス、倍率、撮像する領域および撮像を行う手段等が含まれる。具体的な調整対象と調整指示の例として以下のものがあげられる。
(1)成形不良を誤検出した画像の、工程S314で求められた差分が、工程S314の閾値周辺に集中していた場合は、検査部1037に対して閾値を調整する指示をする。
(2)成形不良に関する情報に含まれる基準画像の特徴情報と、検査用の画像のコントラストや明るさなどの特徴との差が所定の閾値より大きい場合は、画像取得部1017に対して検査用の画像の撮像時における照明光の波長を調整する指示をする。
(3)成形不良に関する情報に含まれる基準画像の特徴情報と、検査用の画像のコントラストや明るさなどの特徴との差が所定の閾値より大きい場合は、画像取得部1017に対して検査用の画像の撮像時の照明光の光量を調整する指示をする。
(4)類似の学習モデルが他にある場合は、検査部1037に対して工程S312で類似の学習モデルを読み込むように調整する指示をする。
(5)作成部1027に対して調整対象の成形不良検査装置で撮像した画像を追加して、学習モデルの再学習を調整する。
例えば、検査用の画像の撮像時における照明光、フォーカス、倍率、撮像する領域および撮像を行う手段の少なくとも1つが含まれる。
【0081】
工程S333では、調整部1067は、学習モデル再学習が必要か否かを判定する。具体的には、調整部1067は、工程S332の調整指示の中に学習モデルの再学習が含まれているかを確認する。調整指示の中に学習モデルの再学習が含まれていない場合は、学習モデルの再学習が必要ない判定し、処理を工程S335に移行する。一方、調整指示の中に学習モデルの再学習が含まれている場合は、学習モデルの再学習が必要であると判定し、処理を工程S334に移行する。
【0082】
工程S334では、学習モデルの再学習を実施する。具体的には、
図9を用いて説明した処理をデータの追加または変更して再実行する。これにより、学習モデルの少なくとも一部が修正(変更)される。学習モデルの再学習は、他の成形不良検査装置で実施しても構わない。
【0083】
工程S335では、検査機能調整を行った後、検査精度を確認するために基準基板に対する成形不良検査を再度実施する。基準基板に対する成形不良検査を再度実施する場合、工程S311から実施することが好ましい。ただし、工程S332の調整指示が工程S312~S314係る機能にしか影響しない場合、その直前の工程から実施しても構わない。工程S331~S335は、
図7の179の部分に相当する。
【0084】
なお、工程S332において、成形不良検査装置1007の表示部に、調整対象を選択するためのユーザインターフェースを表示させ、ユーザによって入力された指示に基づいて、調整対象を選択しても良い。
図14および
図15は、第1実施形態に係るユーザインターフェースの画面例を示す模式図である。
図14(A)は、成形不良検査装置1007の調整方法を選択するためのユーザインターフェースの画面例を示す模式図である。例えば、
図14(A)に示すように、成形不良の誤検出があることを画面に表示することによってユーザに通知する。そして、ユーザが調整方法、即ち、調整する検査の条件の候補を選択可能に表示画面に表示する。このユーザインターフェースにおいて、ユーザは検査機能調整をしないことを選択することも可能である。このとき、基準基板の成形不良の有無の検査結果と、基準基板の成形不良に関する情報と、の詳細な比較結果を含む比較結果のリスト1401を表示しても良い。
【0085】
図14(B)は、使用する学習モデルを選択するためのユーザインターフェースの画面例を示す模式図である。例えば、
図14(B)に示すように、ユーザが複数の学習モデルから、成形不良検査に使用する学習モデルを選択可能なユーザインターフェースを表示しても良い。このとき、例えば、複数の学習モデルと、判定部1057によって算出された学習モデルの検査精度と、をそれぞれ対応付けて表示させる。これにより、ユーザは学習モデルのそれぞれの検査精度を直感的に把握することが可能となる。
また、
図14(C)に示すように、学習モデルの再学習が必要な場合において、ユーザが学習モデルの再学習をする・しないを選択可能なユーザインターフェースを表示しても良い。
【0086】
さらに、ユーザインターフェースには、
図15(A)に示すように、比較結果のリスト1401とともに、ユーザが学習モデルの再学習をする・しないを選択可能な表示しても良い。また、ユーザインターフェースには、
図15(B)に示すように、成形不良の検出誤差がある画像を表示しても良い。このような画像を表示させることにより、ユーザによる目視の確認も容易に行うことが可能となる。
【0087】
別の実施形態として、リソグラフィシステムに含まれる複数の成形不良検査装置のそれぞれの検査精度を比較することで、検査精度が高い成形不良検査装置を特定することができる。リソグラフィシステムにおける検査精度を向上させるため、インプリント処理した基板に対して、検査精度がより高い成形不良検査装置で成形不良検査を実施することも可能である。このとき、リソグラフィシステムに含まれる装置のうち、検査精度が最も高い成形不良検査装置を成形不良検査に用いることが好ましいが、検査精度が閾値を超える成形不良検査装置で用いても良い。
【0088】
以上、本実施形態の情報処理装置を適用した成形不良検査装置、インプリント装置、リソグラフィシステムについて述べた。本実施形態によれば、インプリント装置における基板上に形成されたパターンの成形不良の有無を判定するため検査精度の確認および検査機能調整を効率的に実現することが可能となる。
<第2実施形態>
第2実施形態は、成形装置の例として、基板の上に平坦化層を形成する形成処理(平坦化処理)を行う平坦化装置について説明する。なお、ここで言及しない事項は、前述の実施形態に従い得る。
【0089】
前述の実施形態では、型Mとして、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用の型について述べたが、凹凸パターンがない平面部を有するモールド(平面テンプレート)であってもよい。平面テンプレートは、平面部によって基板上の組成物を平坦化するように成形する平坦化処理(組成物の成形処理)を行う平坦化装置(成形装置)に用いられる。平坦化処理は、基板上に供給された硬化性組成物に平面テンプレートの平坦部を接触させた状態で、光の照射によって、或いは、加熱によって硬化性組成物を硬化させる工程を含む。
【0090】
図16は、第2実施形態における平坦化装置による処理を説明する図である。平坦化装置では、平面テンプレートを用いて、基板Sの上に平坦化層を形成する。基板上の下地パターン402は、前の工程で形成されたパターン起因の凹凸プロファイルを有しており、特に近年のメモリ素子の多層構造化に伴いプロセス基板は100nm前後の段差を持つものも出てきている。基板全体の緩やかなうねりに起因する段差は、フォト工程で使われているスキャン露光装置のフォーカス追従機能によって補正可能である。しかし、露光装置の露光スリット面積内に収まってしまうピッチの細かい凹凸は、そのまま露光装置のDOF(Depth Of Focus)を消費してしまう。基板の下地パターン402を平滑化する従来手法としてSOC(Spin On Carbon)、CMP(Chemical Mechanical Polishing)のような平坦化層を形成する手法が用いられている。しかし従来技術では十分な平坦化性能が得られない問題があり、今後多層化による下地の凹凸差は更に増加する傾向にある。
【0091】
この問題を解決するために、本実施形態の平坦化装置は、基板に予め塗布された未硬化の組成物に対して平面テンプレート(平面プレート)を押し当てて基板面内の局所平面化を行う。本実施形態において、平坦化装置の構成は、
図1に示したインプリント装置100と概ね同様とすることができる。ただし、平坦化装置では、凹凸パターンが形成されたパターン部を有する型Mの代わりに、基板Sと同じかそれより大きい面積の平面プレート401を使用し、基板Sの上の組成物層の全面に接触させる。型保持部は、そのような平面プレートを保持するように構成される。
【0092】
図16(A)は、基板上に組成物を供給し、平面プレート401を接触させる前の状態を示している。この組成物の供給パターンは、基板全面での凹凸情報を考慮して計算されたものである。
図16(B)は、平面プレート401が基板上の組成物403と接触した状態を示している。
図16(C)は、組成物403に光を照射して組成物403を硬化させた後、平面プレート401を引き離した状態を示している。
【0093】
上記したように、実際の基板はパターンの段差のみでなく、基板全面で凹凸をもっているため、その凹凸の影響により、平面プレート401が組成物403と接触するタイミングが異なる。本実施形態では、最初に接触した位置では、接触直後から組成物の移動が始まるが、その程度に応じて組成物を多く配置している。また、最後に接触した位置では、組成物の移動の始まりが遅く、周辺から流入する組成物が加わるが、その程度に応じて組成物の量を減らしている。このような対処により、基板全面で均一な厚みの平坦化層を形成することができる。なお、本実施形態では、処理対象の基板Sの全面に対して平坦化処理を一括して行う場合について説明したが、基板Sのショット領域ごとに平坦化処理を行ってもよい。
【0094】
前述の実施形態に係る発明は、本実施形態の平坦化装置についても同様に適用することができる。本実施形態では、平坦化処理を行った後に、平坦化処理を行った基板またはショット領域(平坦化層を形成すべき領域)及びその周辺部の画像を取得し、かかる画像を用いて浸み出し及び未充填(に起因する成形不良)を検査(検出)する。なお、本実施形態では、基準基板として、少なくとも一部に平坦化処理が行われた基板を用いる。
【0095】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0096】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0097】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。
図17(A)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面に組成物3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になった組成物3zが基板上に付与された様子を示している。
【0098】
図17(B)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上の組成物3zに向け、対向させる。
図17(C)に示すように、組成物3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。組成物3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、組成物3zは硬化する。
【0099】
図17(D)に示すように、組成物3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上に組成物3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、組成物3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0100】
図17(E)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図17(F)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。なお、型4zとして、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用の型を用いた例について述べたが、凹凸パターンがない平面部を有する型(平面テンプレート)であってもよい。
【0101】
<その他の実施形態>
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0102】
本発明は、上述の実施形態の1つ以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0103】
100 インプリント装置
1007 成形不良検査装置
1017 画像取得部
1027 作成部
1037 検査部
1047 情報取得部
1057 判定部
1067 調整部
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