(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】電動工具とアタッチメントとの連結構造
(51)【国際特許分類】
B25F 3/00 20060101AFI20240527BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20240527BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20240527BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B25F3/00 Z
F04D29/42 J
F04D29/44 Q
B08B5/02 Z
(21)【出願番号】P 2020128898
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 文年
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-077817(JP,A)
【文献】特開2011-117442(JP,A)
【文献】実開昭51-032373(JP,U)
【文献】特開2013-181575(JP,A)
【文献】登録実用新案第3171841(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 1/00 - 5/02
F04D 29/42
F04D 29/44
B08B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具とアタッチメントとの連結構造であって、
ロック機構を備え、
前記ロック機構は、使用者による前記アタッチメントの取付け操作に応じて、前記アタッチメントが前記電動工具に対して第1方向に移動するのに伴って作動し、前記アタッチメントが前記電動工具に対して取付け位置に配置されるのに応じて、前記アタッチメントを前記第1方向と逆の第2方向へ移動不能に前記取付け位置でロックするように構成され
、
前記取付け操作は、前記アタッチメントを前記電動工具に向かって前記第1方向に直線状に移動させる操作であり、
前記ロック機構は、
前記電動工具に固定された固定部材と、
前記固定部材に対して、所定の軸に沿って前記第1方向および前記第2方向にのみ移動可能に構成された可動部材と、
前記可動部材を前記固定部材に対して前記第2方向に付勢する付勢部材とを備え、
前記アタッチメントは、第1係合部を有し、
前記固定部材は、前記アタッチメントが前記取付け位置に配置されるのに応じて前記第1係合部に係合することで、前記アタッチメントの前記第2方向の移動を禁止するように構成された第2係合部を有し、
前記可動部材は、前記取付け操作に応じて、前記アタッチメントによって前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1方向に移動され、前記第1係合部が前記第2係合部と係合するのに応じて、前記付勢力によって前記第2方向に移動され、前記第1係合部と前記第2係合部との係合を保持するように構成されていることを特徴とする連結構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の電動工具とアタッチメントとの連結構造であって、
前記第1係合部は、弾性変形可能な係止片であり、
前記第2係合部は、前記係止片が係止可能な係止凹部であって、
前記可動部材は、前記アタッチメントが前記取付け位置に配置されている場合、前記係止片の弾性変形を規制するように構成された規制部を有することを特徴とする連結構造。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載の電動工具とアタッチメントとの連結構造であって、
前記ロック機構は、前記取付け位置に配置された前記アタッチメントの前記軸周りの回動を規制するように構成されていることを特徴とする連結構造。
【請求項4】
請求項
3に記載の電動工具とアタッチメントとの連結構造であって、
前記アタッチメントは、突起を有し、
前記可動部材は、前記突起に係合することで前記アタッチメントの前記軸周りの回動を規制するように構成された凹部を有することを特徴とする連結構造。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか1つに記載の電動工具とアタッチメントとの連結構造であって、
前記ロック機構は、前記使用者による前記アタッチメントに対するロック解除操作に応じて、前記アタッチメントのロックを解除可能に構成されていることを特徴とする連結構造。
【請求項6】
請求項
5に記載の電動工具とアタッチメントとの連結構造であって、
前記ロック解除操作は、前記アタッチメントを所定の軸周りに回動させる操作であることを特徴とする連結構造。
【請求項7】
電動工具とアタッチメントとの連結構造であって、
ロック機構を備え、
前記ロック機構は、使用者による前記アタッチメントの取付け操作に応じて、前記アタッチメントが前記電動工具に対して第1方向に移動するのに伴って作動し、前記アタッチメントが前記電動工具に対して取付け位置に配置されるのに応じて、前記アタッチメントを前記第1方向と逆の第2方向へ移動不能に前記取付け位置でロックするように構成されて
おり、
前記取付け操作は、前記アタッチメントを前記電動工具に向かって前記第1方向に直線状に移動させる操作であり、
前記ロック機構は、前記使用者による前記アタッチメントに対するロック解除操作に応じて、前記アタッチメントのロックを解除可能に構成されており、
前記ロック解除操作は、前記アタッチメントを所定の軸周りに回動させる操作であることを特徴とする連結構造。
【請求項8】
請求項
6または請求項7に記載の電動工具とアタッチメントとの連結構造であって、
前記ロック機構は、
前記電動工具に固定された固定部材と、
前記固定部材に対して、所定の軸に沿って前記第1方向および前記第2方向にのみ移動可能に配置された可動部材と、
前記可動部材を前記固定部材に対して前記第2方向に付勢する付勢部材とを備え、
前記アタッチメントは、第1係合部を有し、
前記固定部材は、
前記アタッチメントが前記取付け位置に配置されるのに応じて前記第1係合部に係合することで、前記アタッチメントの前記第2方向の移動を禁止するように構成された第2係合部と、
前記第1係合部の前記第2方向の移動を許容するように構成された開放部とを有し、
前記可動部材は、
前記取付け操作に応じて、前記アタッチメントによって前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1方向に移動され、前記第2係合部が前記第1係合部と係合するのに応じて、前記付勢力によって前記第2方向に移動され、前記第1係合部と前記第2係合部との係合を保持するように構成され、且つ、
前記ロック解除操作に応じて、前記アタッチメントによって前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1方向に移動され、前記第1係合部が前記第2係合部と係合する位置から前記開放部に対応する位置へ周方向に移動するのを許容するように構成されていることを特徴とする連結構造。
【請求項9】
請求項
8に記載の電動工具とアタッチメントとの連結構造であって、
前記第1係合部は、弾性変形可能な係止片であって、
前記固定部材は、前記取付け操作に応じて前記係止片が移動する過程では、前記係止片を弾性変形させるように構成され、且つ、前記ロック解除操作に応じて前記係止片が移動し、更に前記開放部内を前記第2方向に移動する過程では、前記係止片を弾性変形させないように構成されていることを特徴とする連結構造。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか1つに記載の電動工具とアタッチメントとの連結構造であって、
前記電動工具は、吐出口から圧縮空気を吐出するように構成された送風機であって、
前記アタッチメントは、ノズルであって、前記
送風機に連結されると前記吐出口と連通する通路を有することを特徴とする連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具とアタッチメントとの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アタッチメントを選択的に取り付け可能な電動工具が知られている。例えば、圧縮空気を吐出口から吐出可能な送風機(エアダスタ)には、作業に応じて適切な径を有するノズルを付け替えることができる。特許文献1は、エアダスタとノズルの連結構造を開示している。この連結構造は、エアダスタの吐出口の近傍の周壁に設けられた取付け溝と、ノズルの周壁に設けられ、取付け溝に係合可能な突起とを備えている。取付け溝は、軸線方向に延びる部分と、円周方向に延びる部分とを有するL字状の溝である。使用者は、エアダスタに対してノズルを軸線方向に嵌め合わせ、円周方向に相対回転させることによって、ノズルをエアダスタに取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の連結構造は、比較的簡単な操作でノズルをエアダスタに取り付けることを可能とする。しかしながら、この連結構造には、操作性の観点から、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、かかる状況に鑑み、電動工具とアタッチメントとの連結構造における操作性に関する改善を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、電動工具とアタッチメントとの連結構造が提供される。連結構造は、ロック機構を備える。ロック機構は、使用者によるアタッチメントの取付け操作に応じて、アタッチメントが電動工具に対して第1方向に移動するのに伴って作動するように構成されている。ロック機構は、更に、アタッチメントが電動工具に対して取付け位置に配置されるのに応じて、アタッチメントを第1方向と逆の第2方向へ移動不能に取付け位置でロックするように構成されている。
【0007】
本態様の連結構造によれば、使用者がアタッチメントを電動工具に対して取付け位置まで第1方向に移動させるだけで、ロック機構が作動し、アタッチメントを第2方向に移動不能にロックすることができる。よって、アタッチメントを二方向に操作する必要がある場合に比べ、操作性を向上させることができる。
【0008】
本発明の一態様において、取付け操作は、アタッチメントを電動工具に向かって第1方向に直線状に移動させる操作であってもよい。この場合、使用者は、アタッチメントの取付けで想定される操作として最もシンプルでわかりやすい操作によって、アタッチメントを電動工具に取り付けることができる。
【0009】
本発明の一態様において、ロック機構は、固定部材と、可動部材と、付勢部材とを備えてもよい。固定部材は、電動工具に固定されていてもよい。可動部材は、固定部材に対して、所定の軸に沿って第1方向および第2方向にのみ移動可能に構成されていてもよい。付勢部材は、可動部材を固定部材に対して第2方向に付勢してもよい。アタッチメントは、第1係合部を有してもよい。固定部材は、第2係合部を有してもよい。第2係合部は、アタッチメントが取付け位置に配置されるのに応じて第1係合部に係合することで、アタッチメントの第2方向の移動を禁止するように構成されていてもよい。
【0010】
可動部材は、取付け操作に応じて、アタッチメントによって付勢部材の付勢力に抗して第1方向に移動されるように構成されていてもよい。更に、可動部材は、第1係合部が第2係合部と係合するのに応じて、付勢部材の付勢力によって第2方向に移動され、第1係合部と第2係合部との係合を保持するように構成されていてもよい。この場合、アタッチメントの移動に応じて移動する可動部材を用いて、アタッチメントを自動的にロック可能な合理的な構成が実現される。
【0011】
本発明の一態様において、第1係合部は、弾性変形可能な係止片であってもよい。第2係合部は、係止片が係止可能な係止凹部であってもよい。可動部材は、規制部を有してもよい。規制部は、アタッチメントが取付け位置に配置されている場合、係止片の弾性変形を規制するように構成されていてもよい。この場合、規制部が、係止凹部に対する係止片の係止が解除されるのを確実に防止することができる。
【0012】
本発明の一態様において、ロック機構は、取付け位置に配置されたアタッチメントの軸周りの回動を規制するように構成されていてもよい。この場合、ロック機構は、取付け位置に配置されたアタッチメントの第2方向への移動を禁止するのに加え、軸周りの回動を規制するため、アタッチメントをより確実にロックすることができる。
【0013】
本発明の一態様において、アタッチメントは、突起を有してもよい。可動部材は、突起に係合することでアタッチメントの軸周りの回動を規制するように構成された凹部を有してもよい。この場合、シンプルな構成で、アタッチメントの回動を規制することができる。
【0014】
本発明の一態様において、ロック機構は、使用者によるアタッチメントに対するロック解除操作に応じて、アタッチメントのロックを解除可能に構成されていてもよい。この場合、エアダスタの操作なしでアタッチメントの取り外しが可能となるため、操作性を向上させることができる。
【0015】
本発明の一態様において、ロック解除操作は、アタッチメントを所定の軸周りに回動させる操作であってもよい。この場合、取付け操作とは異なる方向の操作で、合理的にロック解除を実現することができる。
【0016】
本発明の一態様において、ロック機構は、固定部材と、可動部材と、付勢部材とを備えてもよい。固定部材は、電動工具に固定されていてもよい。可動部材は、固定部材に対して、所定の軸に沿って第1方向および第2方向にのみ移動可能に構成されていてもよい。付勢部材は、可動部材を固定部材に対して第2方向に付勢してもよい。アタッチメントは、第1係合部を有してもよい。固定部材は、第2係合部と、開放部とを有してもよい。第2係合部は、アタッチメントが取付け位置に配置されるのに応じて第1係合部に係合することで、アタッチメントの第2方向の移動を禁止するように構成されていてもよい。開放部は、第1係合部の第2方向の移動を許容するように構成されていてもよい。
【0017】
可動部材は、取付け操作に応じて、アタッチメントによって付勢部材の付勢力に抗して第1方向に移動され、第2係合部が第1係合部と係合するのに応じて、付勢力によって第2方向に移動され、第1係合部と第2係合部との係合を保持するように構成されていてもよい。可動部材は、更に、ロック解除操作に応じて、アタッチメントによって付勢部材の付勢力に抗して第1方向に移動され、第1係合部が第2係合部と係合する位置から開放部に対応する位置へ周方向に移動するのを許容するように構成されていてもよい。この場合、使用者は、アタッチメントを第1係合部が開放部に対応する位置まで回動させた後、第2方向に移動させる一連の操作で、アタッチメントを電動工具から取り外すことができるため、操作が容易である。
【0018】
本発明の一態様において、第1係合部は、弾性変形可能な係止片であってもよい。固定部材は、取付け操作に応じて係止片が移動する過程では、係止片を弾性変形させるように構成されていてもよい。また、固定部材は、ロック解除操作に応じて係止片が移動し、更に開放部内を第2方向に移動する過程では、係止片を弾性変形させないように構成されていてもよい。この場合、係止片が弾性変形する頻度を減らし、係止片の高寿命化を図ることができる。
【0019】
本発明の一態様において、電動工具は、吐出口から圧縮空気を吐出するように構成された送風機であってもよい。そして、アタッチメントは、ノズルであって、電動工具に連結されると吐出口と連通する通路を有してもよい。この場合、使用者は、作業内容に応じて、適切な長さおよび/または径を有するノズルを容易に交換することができる。また、圧縮空気を利用する比較的風力が強い送風機に、ノズルを確実にロックすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図14】ロックスリーブとスライドスリーブの配置関係の説明図である。
【
図15】前側カバーおよびロック機構の斜視図である。
【
図16】ノズルをエアダスタに取り付ける過程のロック機構の動作の説明図である。
【
図18】ノズルが取付け位置に配置されたときのロック機構の説明図である。
【
図20】ノズルが取付け位置に配置されたときのロック機構の斜視図である。
【
図21】ノズルをエアダスタから取り外す過程のロック機構の動作の説明図である。
【
図22】ノズルをエアダスタから取り外す過程のロック機構の斜視図である。
【
図23】ノズルが取り外し位置に配置されたときのロック機構の説明図である。
【
図24】エアダスタから分離されたノズルとロック機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、実施形態に係るエアダスタ1について説明する。エアダスタ1は、電動工具の一例であって、圧縮空気を吐出することで、塵埃等を吹き飛ばすことが可能な送風機の一種である。
【0022】
まず、エアダスタ1の構成について簡単に説明する。
【0023】
図1に示すように、エアダスタ1は、本体ハウジング11と、ハンドル13とを備えている。エアダスタ1は、電動式の多段送風機として構成されており、本体ハウジング11内には、モータ31と、複数のファン34を含む圧縮機構33とが収容されている。モータ31の出力シャフト32とファン34は、回転軸A1周りに回転駆動される。本体ハウジング11は、回転軸A1に沿って延在しており、その軸方向における一端部に吸込み口110を有し、その軸方向における他端部に吐出口40を有する。ハンドル13は、使用者によって把持される部分であって、本体ハウジング11から突出している。
【0024】
なお、以下の説明では、便宜上、回転軸A1の延在方向をエアダスタ1の前後方向と規定する。前後方向において、吐出口40の側を前側、反対側(吸込み口110の側)を後側と規定する。回転軸A1に直交し、且つ、ハンドル13の延在方向に対応する方向を上下方向と規定する。上下方向において、ハンドル13の突出端の側を下側、反対側(本体ハウジング11の側)を上側と規定する。前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【0025】
ハンドル13の上端部には、トリガ131が設けられている。ハンドル13の内部には、スイッチ132が収容されている。ハンドル13の下端部には、モータ31に電力を供給するためのバッテリ19が取り外し可能に装着されている。使用者によってトリガ131が押圧されると、スイッチ132がオンとされ、モータ31が駆動される。ファンの回転駆動により、吸込み口110から本体ハウジング11内に空気が吸い込まれ、圧縮機構33によって圧縮された空気(以下、圧縮空気という)が吐出口40から吐出される。
【0026】
また、本実施形態のエアダスタ1は、ノズルを取付け可能に構成されている。ノズルは、エアダスタ1に付加的に取り付けられ、エアダスタ1と共に使用されるアタッチメントである。エアダスタ1に取り付け可能なノズルとして、軸方向の長さおよび/または径が異なる複数種類が用意されている。使用者は、作業内容に応じて、ノズルを取り付けることなく、あるいは適切なノズルを取り付けた状態で、エアダスタ1を使用することができる。なお、以下では、エアダスタ1に取り付け可能なノズルの一例であるノズル8を用いて説明する。
【0027】
以下、エアダスタ1とノズル8との連結構造について説明する。
【0028】
まず、ノズル8の構成について説明する。
図2~
図4に示すように、ノズル8は、軸方向に延在する貫通孔を有する筒状部材である。本実施形態のノズル8は、全体が合成樹脂で形成された単一部材である。
【0029】
ノズル8は、同軸状に連結された取付け部81と通路部87とを含む。取付け部81は、エアダスタ1(詳細には、ロック機構5(
図1参照))に連結される部分である。通路部87は、取付け部81の軸方向の一端から軸方向に延びている。なお、以下の説明では、ノズル8がエアダスタ1に連結されたときの向きを基準として、便宜上、ノズル8の軸方向を前後方向と規定する。よって、前後方向において、取付け部81の側(エアダスタ1に連結される側)がノズル8の後側、通路部87の側がノズル8の前側である。
【0030】
取付け部81は、略円筒状に形成されている。取付け部81は、ロック機構5に係合可能な一対の係止片82を有する。一対の係止片82は、ノズル8の軸を挟んで対称に配置され、夫々、軸方向に延在する。係止片82は、取付け部81の後端から前方へ向けて延びる2本のスリットの間の部分である。よって、係止片82の後端(以下、係止端部ともいう)は、自由端である。このような構成により、係止片82は、前端を支点としてノズル8の径方向に弾性変形することができる。
【0031】
係止片82の係止端部は、爪83を有する。爪83は、係止片82の後端から径方向内側に突出している。爪83は、前端面831と、後端面833と、傾斜面835とを有する。前端面831および後端面833は、夫々、ノズル8の軸に略直交する面である。傾斜面835は、前端面831の径方向内側の端と後端面833の径方向内側の端とを接続する面であって、後方へ向かって径方向外側に傾斜している。
【0032】
また、係止端部は、作動突起84を有する。作動突起84は、係止端部の外面から径方向外側に突出している。作動突起84の周方向の中心は、爪83の周方向の中心と一致する位置にある。また、作動突起84は、爪83よりも若干前方に配置されており、作動突起84の後端は、係止端部の後端(爪83の後端面833)よりも若干前方に位置する。作動突起84の後端面841は、径方向外側からみると、中央部が後方に突出するU字状に形成されている。つまり、作動突起84の後端面841は、湾曲面として構成されている。
【0033】
通路部87は、前側に向かって外径が小さくなる(つまり、先細りの)円筒状に形成されている。通路部87は、通路870を規定する。通路870は、ノズル8がエアダスタ1に取り付けられると、吐出口40と連通する(
図1参照)。ノズル8がエアダスタ1に取り付けられている場合、圧縮空気は、吐出口40から通路870に流入し、通路部87の先端の吐出口80から吐出される。なお、通路部87の内径、つまり、通路870の径は略均一である。
【0034】
以下、エアダスタ1の吐出口40周辺の構成について説明する。
【0035】
図1に示すように、エアダスタ1の本体ハウジング11は、円筒状の筒状部12と、筒状部12の前端部に連結された前側カバー4とを含む。本実施形態では、前側カバー4は、筒状部12とは別個に形成された部材である。前側カバー4は、筒状部12の前端部に螺合されて、筒状部12の前端の開口を覆っている。前側カバー4は、全体としては先細りの漏斗状(円錐状)に形成されており、円筒状の前端部41を有する。前端部41の後側には、略環状の前端面を有するベース部42が設けられている。前端部41には、ロック機構5が取り付けられている。ノズル8は、ロック機構5を介して前端部41に着脱される。
【0036】
以下、ロック機構5について説明する。ロック機構5は、ノズル8をエアダスタ1に対して所定の取付け位置でロックするように構成されている。ロック機構5は、エアダスタ1に固定されたロックスリーブ51と、ロックスリーブ51に対して、前後方向にのみ移動可能に配置されたスライドスリーブ53と、スライドスリーブ53をロックスリーブ51に対して前方に付勢する付勢バネ55とを備えている。
【0037】
図5~
図9に示すように、ロックスリーブ51は、円筒状の部材である。本実施形態では、ロックスリーブ51は、合成樹脂で形成されている。ロックスリーブ51は、前側カバー4の前端部41(
図1参照)の外径と概ね等しい内径を有する。詳細は後述するが、ロックスリーブ51は、前側カバー4の前端部41に同軸状に嵌め込まれ、前側カバー4に固定される。
【0038】
ロックスリーブ51は、スライドスリーブ53(
図1参照)を、前後方向にのみ(つまり、ロックスリーブ51の軸方向にのみ)移動可能に保持するように構成されている。より詳細には、ロックスリーブ51の外周面には、一対のガイド溝511が形成されている。一対のガイド溝511は、ロックスリーブ51の軸を挟んで対称に配置されている。ガイド溝511は、ロックスリーブ51の外周面から径方向内側に凹む凹部であって、ロックスリーブ51の後端から前方に向けて(軸と平行に)直線状に延びている。ガイド溝511の前端は、ロックスリーブ51の前端と中央部との間に位置する。ガイド溝511の前端を規定する面は、スライドスリーブ53に当接し、スライドスリーブ53のそれ以上前方への移動を禁止するためのストッパ面として機能する。
【0039】
また、ロックスリーブ51は、ノズル8に係合可能に構成されている。より詳細には、ロックスリーブ51は、ノズル8の取付け部81(
図4参照))の内径(爪83を除く部分の内径)と概ね等しい外径を有する。ロックスリーブ51の外周面には、一対の係止溝513が形成されている。一対の係止溝513は、ロックスリーブ51の軸を挟んで対称に配置されている。係止溝513は、ロックスリーブ51の外周面から径方向内側に凹む凹部であって、軸周りの周方向に延びている。係止溝513は、ロックスリーブ51の前端と中央部との間に配置されている。係止溝513は、ノズル8の係止片82の爪83(
図4参照))が係合可能に構成されている。係止溝513の前端を規定する面は、爪83の前端面831に当接し、ノズル8のそれ以上前方への移動を禁止するための係止面514として機能する。
【0040】
各係止溝513の前側には、係止片82の爪83をスムーズに係止溝513へ導くためのガイド部515が設けられている。ガイド部515は、ロックスリーブ51の外周面から径方向内側に凹む凹部であって、ロックスリーブ51の前端から係止溝513の前端の近傍まで延びている。ガイド部515の深さは、ロックスリーブ51の前端から後方へ向かって漸減する。つまり、ガイド部515は、後方へ向かって径方向外側へ緩やかに傾斜する傾斜面516を有する。傾斜面516の後端は、ロックスリーブ51の外周面に接続している。
【0041】
更に、各係止溝513の周方向における一端部には、開放溝517が接続している。より詳細には、開放溝517は、係止溝513の周方向の2つの端部のうち、ロックスリーブ51を前側からみたときに時計回り方向側に位置する端部に接続している。開放溝517は、係止溝513と略同一の深さを有する凹部であって、ロックスリーブ51の前端まで、前方に直線状に延びている。つまり、開放溝517の前端は開放されている。開放溝517は、係止片82の爪83を係止溝513から逃がすため(つまり、ノズル8の前方への移動を許容するため)に設けられており、開放溝517の周方向の幅は、係止片82の爪83の幅より僅かに大きい。
【0042】
図10~
図13に示すように、スライドスリーブ53は、円筒状の部材である。本実施形態では、スライドスリーブ53は、合成樹脂で形成されている。スライドスリーブ53は、ロックスリーブ51の径方向外側に配置される。また、径方向において、ロックスリーブ51とスライドスリーブ53との間には、付勢バネ55(
図13参照)が配置される。なお、本実施形態の付勢バネ55は、圧縮コイルバネである。このため、スライドスリーブ53は、ロックスリーブ51の外径および付勢バネ55の径よりも大きい内径を有する。また、スライドスリーブ53の内部には、バネ受け部531が設けられている。バネ受け部531は、スライドスリーブ53の内周面から径方向内側に突出する環状の部分である。バネ受け部531の内径は、ロックスリーブ51の外径と概ね等しい。
【0043】
上述のように、スライドスリーブ53は、ロックスリーブ51によって、前後方向にのみ移動可能に保持される。このため、スライドスリーブ53は、ロックスリーブ51の一対のガイド溝511に夫々係合可能な一対のガイド突起533を有する。ガイド突起533は、バネ受け部531から更に径方向内側に突出する突起であって、ガイド溝511に整合する形状を有する。ガイド突起533がガイド溝511に係合することで、ロックスリーブ51に対するスライドスリーブ53の回転は禁止される(つまり、スライドスリーブ53が、ロックスリーブ51に対して周方向に位置決めされる)。スライドスリーブ53は、ガイド突起533がガイド溝511内を摺動可能な範囲内で、ロックスリーブ51に対して前後方向にのみ移動することができる。
【0044】
また、スライドスリーブ53は、ノズル8の取付け部81に設けられた作動突起84(
図2参照)に係合可能な一対の受け凹部535を有する。一対の受け凹部535は、スライドスリーブ53の軸を挟んで対称に配置されている。受け凹部535は、スライドスリーブ53の前端から後方に凹む凹部であって、径方向外側からみると、ノズル8の作動突起84に概ね整合するU字状に形成されている。受け凹部535を規定する面は、作動突起84の後端面841に当接可能な当接面536であって、湾曲面として構成されている。但し、当接面536のうち、スライドスリーブ53を前側からみたときに時計回り方向側に位置する端部は、反対側の端部よりも緩やかな傾斜でスライドスリーブ53の前端面に接続している。なお、受け凹部535の後端は、バネ受け部531よりも前方に位置する。
【0045】
以上のような構成を有するロックスリーブ51と、スライドスリーブ53と、付勢バネ55とは、次のような手順で前側カバー4の前端部41に組み付けられる。
【0046】
図14に示すように、まず、作業者は、ガイド溝511とガイド突起533とを周方向に位置合わせし、ロックスリーブ51の後端側から、ロックスリーブ51の径方向外側にスライドスリーブ53を嵌め込む。これにより、スライドスリーブ53の受け凹部535は、周方向において、ロックスリーブ51のガイド部515および係止溝513と概ね同じ位置に(つまり、側方からみて、前後方向に延在する一直線上に)配置される。
【0047】
図13に示すように、作業者は、後端側から、ロックスリーブ51とスライドスリーブ53の間に付勢バネ55を挿入する。なお、
図7および
図8に示すように、ロックスリーブ51の後端部の外周面には、4つの突起519が周方向に等間隔で設けられている。突起519は、ロックスリーブ51の外周面から径方向外側に突出しており、ロックスリーブ51の後端から前方に向けて(軸と平行に)直線状に延びている。軸を挟んで対向する2つの突起519の突出端の間の距離は、付勢バネ55の内径よりも僅かに大きい。よって、付勢バネ55の後端部がロックスリーブ51の後端部に嵌め込まれると(
図16参照)、付勢バネ55は、突起519によって安定して保持され、付勢バネ55の倒れや曲がりが抑制される。なお、
図10および
図11に示すように、スライドスリーブ53のバネ受け部531には、ロックスリーブ51の突起519に対応する4つの凹部539が設けられている。上述のように、スライドスリーブ53がロックスリーブ51に嵌め込まれるときには、凹部539が突起519の通過を許容する。
【0048】
更に、作業者は、ロックスリーブ51、スライドスリーブ53および付勢バネ55を、前側から、前側カバー4の前端部41に嵌め込む。作業者は、ロックスリーブ51の後端がベース部42の前端面に当接する位置までこれらの部材を後方に押し込み、前端部41の前端部に設けられた雄ネジ部に、ナット59を締め付ける。なお、ナット59は、ロックスリーブ51の外径よりも小さい外径を有する。ナット59の軸力により、ロックスリーブ51は、前側カバー4に対して実質的に移動不能に固定される。
【0049】
付勢バネ55は、その前端と後端とが、夫々、スライドスリーブ53のバネ受け部531の後端面とベース部42の前端面とに当接した状態で圧縮され、スライドスリーブ53を前方へ付勢する。これにより、スライドスリーブ53は、ノズル8がロック機構5に取り付けられていない状態では、ガイド突起533の前端面が、ガイド溝511の前端を規定する面に当接する位置(つまり、最前方位置)で保持される。また、
図15に示すように、スライドスリーブ53の受け凹部535は、ロックスリーブ51のガイド部515の径方向外側に配置される。
【0050】
以下、ロック機構5の動作について説明する。
【0051】
まず、ノズル8のエアダスタ1への取り付け時のロック機構5の動作について説明する。
【0052】
使用者は、エアダスタ1にノズル8を取り付けるときには、ノズル8をエアダスタ1に向けて後方に直線状に移動させる操作(以下、取付け操作ともいう)を行う。より詳細には、使用者は、ロック機構5に対してノズル8の周方向位置を適切に調整した状態で、ノズル8を、回転軸A1に沿って前方からロック機構5に押し込む操作を行う。なお、位置調整のための目印には、ノズル8の係止片82の外面に設けられた作動突起84(
図2参照)と、スライドスリーブ53の受け凹部535(
図15参照)を用いることができる。上述したように、作動突起84の径方向内側には、爪83が設けられており、受け凹部535の径方向内側には、ロックスリーブ51のガイド部515が配置されている。よって、周方向において作動突起84と受け凹部535の位置を合わせることは、爪83とガイド部515、ひいては爪83と係止溝513の位置を合わせることに等しい。
【0053】
使用者がノズル8をロック機構5に押し込むと、一対の係止片82の爪83が、ロックスリーブ51の一対のガイド部515に当接する。より詳細には、爪83の傾斜面835がガイド部515の傾斜面516に当接する。この状態でノズル8が後方に移動するのに伴って、係止片82は、係止端部が径方向外側に移動するように弾性変形する。使用者が更にノズル8を後方へ押し込む(移動させる)と、
図16および
図17に示すように、爪83の後端面833が、スライドスリーブ53の受け凹部535の当接面536に当接し、付勢バネ55の付勢力に抗して、スライドスリーブ53をロックスリーブ51に対して後方へ移動させる。ノズル8の取付け部81のうち、係止片82以外の部分は、ロックスリーブ51とスライドスリーブ53の間の隙間に進入する。
【0054】
爪83がガイド部515の傾斜面516からロックスリーブ51の外周面に乗り上げた後、係止溝513に到達すると、
図18~
図20に示すように、係止片82の復元力で、爪83は径方向内側に移動して初期位置に戻り、係止溝513に係合する。このとき、爪83の後端面833が受け凹部535の当接面536から外れ、スライドスリーブ53に対する後方への押圧が解除される。このため、スライドスリーブ53は、付勢バネ55の付勢力によって前方に移動され、受け凹部535の当接面536が、ノズル8の作動突起84の後端面841に当接する位置(以下、ロック位置ともいう)で保持される。つまり、
図20に示すように、作動突起84が受け凹部535に嵌合した状態で保持される。
【0055】
図19に示すように、スライドスリーブ53がロック位置に配置されると、スライドスリーブ53のうち、受け凹部535の後端(凹部の最深部)とバネ受け部531の前端との間にある部分(壁部)が、係止片82の後端部(爪83)の径方向外側に配置される。この壁部は、爪83が係止溝513から外れる方向に係止片82が弾性変形することを規制することで、爪83と係止溝513との係合を保持する規制部538として機能する。また、上述のように、スライドスリーブ53が前方に付勢された状態で、受け凹部535が作動突起84と係合することで、ノズル8が回転軸A1周りに回動することが規制される。
【0056】
このようにして、ロック機構5は、ノズル8を、爪83が係止溝513に係合する位置(詳細には、前端面831が係止溝513の係止面514に当接する位置。以下、このときのノズル8の位置を取付け位置ともいう。)で、前方へ移動不能にロックする。また、ロック機構5は、取付け位置に配置されたノズル8が回動することを規制する。
【0057】
以下、ノズル8のエアダスタ1からの取り外し時のロック機構5の動作について説明する。
【0058】
使用者は、
図18~
図20に示すように取付け位置でロックされたノズル8をエアダスタ1から取り外すときには、まず、ロック機構5によるロックを解除するために、ノズル8をエアダスタ1に対して軸周りに回動させる操作(以下、ロック解除操作ともいう)を行う。より詳細には、使用者は、ノズル8を掴んで、前側からみて時計回り方向に回転軸A1周りに回動させる。上述のように、スライドスリーブ53は回動不能な状態で前方に付勢されており、作動突起84は受け凹部535に嵌合している。使用者が、付勢バネ55の付勢力に抗してノズル8を回動させると、作動突起84の後端面841(湾曲面)のうち回動方向側(前側からみて時計回り方向側)の端部と、受け凹部535の当接面536(湾曲面)のうち回動方向側の端部との協働により、周方向の力が軸方向の力に変換されてスライドスリーブ53に作用し、スライドスリーブ53は後方に移動する。なお、受け凹部535の当接面536のうち回動方向側の端部は緩やかに傾斜しているため、使用者は、付勢バネ55の付勢力に抗してノズル8を比較的容易に回動させることができる。
【0059】
図21および
図22に示すように、ノズル8は、作動突起84が受け凹部535から離脱した後、爪83が係止溝513内を周方向に移動する間は、作動突起84の後端面841がスライドスリーブ53の前端面に当接した状態で回動される。使用者がノズル8を回動させ続けると、爪83は、開放溝517(
図6参照)内に進入する。
図23に示すように、爪83が完全に開放溝517内に配置されると(このときのノズル8の位置を、取外し位置ともいう)、係止溝513に対する爪83の係止が解除され、爪83は開放溝517に沿って前方へ移動することが許容される。つまり、ロック機構5によるロックが解除される。
【0060】
使用者は、ノズル8を取り外し位置まで回動させた後、ノズル8をエアダスタ1に対して前方へ直線状に移動させ、エアダスタ1から分離する操作(以下、分離操作ともいう)を行う。より詳細には、使用者は、ノズル8を、回転軸A1に沿って、ロック機構5から前方へ引き抜く操作を行う。上述のように、開放溝517は、係止溝513と略同一の深さを有する。よって、分離操作に応じてノズル8が前方に移動されるときには、係止片82は弾性変形することなく、爪83が開放溝517内を前方へ移動することができる。また、スライドスリーブ53は、ノズル8の前方への移動およびエアダスタからの分離に伴って、付勢バネ55によって付勢され、最前方位置まで移動する(
図13参照)。
図24に示すように、ノズル8がエアダスタ1(ロック機構5)から分離されると、ノズル8の取外しが完了する。
【0061】
以上に説明したように、本実施形態のエアダスタ1とノズル8との連結構造は、ロック機構5を備えている。ロック機構5は、使用者の取付け操作、つまり、ノズル8をエアダスタ1に対して後方に移動させる操作に応じて、作動するように構成されている。よって、使用者は、ノズル8をエアダスタ1に取り付けるときには、ノズル8を一方向(後方)に移動させるだけでよい。よって、本実施形態の連結構造は、ノズル8を二方向(例えば、ノズル8の軸方向および軸周りの周方向)に操作する必要がある場合に比べ、操作性に優れている。特に、本実施形態では、ノズル8の取付け操作は、ノズル8をエアダスタ1に向かって後方に直線状に移動させる操作(ノズル8をロック機構5に押し込む操作)である。よって、使用者は、ノズル8の取付けで想定される操作として、最もシンプルでわかりやすい操作によって、ノズル8をエアダスタ1に取り付けることができる。
【0062】
また、ロック機構5は、ノズル8がエアダスタ1に対して取付け位置に配置されるのに応じて、ノズル8を前方へ移動不能に取付け位置でロックするように構成されている。ロック機構5は、ノズル8の取付け操作のみで自動的に作動するため、使用者は、エアダスタ1やロック機構5自体を操作する必要がない。よって、この点でも、操作性に優れた連結構造が実現されている。更に、ロック機構5は、ノズル8が前方へ移動するのを禁止するため、使用者が、ノズル8を取付け操作とは逆に前方へ引っ張っても、エアダスタ1から外れることがない。よって、ノズル8の確実なロックが可能である。特に、エアダスタ1のように、圧縮空気を利用して比較的強い風力を発揮する送風機において、ノズル8を確実にロックできることは有用である。
【0063】
本実施形態のロック機構5は、エアダスタ1に固定されたロックスリーブ51と、ロックスリーブ51に対して前後方向にのみ移動可能に構成されたスライドスリーブと、スライドスリーブ53をロックスリーブ51に対して前方に付勢する付勢バネ55とを備えている。スライドスリーブ53は、ノズル8の取付け操作に応じて、ノズル8によって付勢バネ55の付勢力に抗して後方に移動される。そして、スライドスリーブ53は、ノズル8が取付け位置に配置され、ノズル8の係止片82(詳細には爪83)が係止溝513と係合するのに応じて、付勢バネ55の付勢力によって前方に移動され、係止片82と係止溝513との係合を保持する。このように、本実施形態では、ノズル8の移動に応じて移動可能なスライドスリーブ53を用いて、ノズル8を自動的にロック可能な合理的な構成が実現されている。
【0064】
特に、本実施形態では、弾性変形可能な係止片82が係止溝513に係止することで、ノズル8の前方への移動が禁止される。スライドスリーブ53の規制部538は、ノズル8が取付け位置に配置され、係止片82が係止溝513と係合すると、係止片82の径方向外側に配置され、係止片82の弾性変形を規制する。このような構成により、係止溝513に対する係止片82の係止が解除されるのを確実に防止することができる。
【0065】
更に、本実施形態のロック機構5は、取付け位置に配置されたノズル8の前方への移動を禁止するのに加え、ノズル8の軸周りの回動も規制するように構成されている。よって、ロック機構5は、ノズル8をより確実にロックすることができる。特に、本実施形態では、スライドスリーブ53に設けられ、ノズル8の作動突起84に係合することでノズル8の軸周りの回動を規制可能な受け凹部535というシンプルな構成によって、かかる機能が実現されている。
【0066】
また、ロック機構5は、使用者によるノズル8に対するロック解除操作、つまり、ノズル8を軸周りに回動させる操作に応じて、ノズル8のロック(つまり、ノズル8の前方への移動禁止)を解除可能に構成されている。よって、使用者は、ノズル8の取付け操作時と同様、エアダスタ1やロック機構5自体を操作することなく、ノズル8を回動させるだけでロックを解除できるため、操作が容易である。また、ノズル8を回動させるロック解除操作と、ノズル8を後方に移動させる取付け操作とは、まったく異なる方向の操作であるため、操作がわかりやすい。
【0067】
更に、スライドスリーブ53は、ロック解除操作に応じて、ノズル8によって付勢バネ55の付勢力に抗して後方に移動され、係止片82(詳細には爪83)が係止溝513と係合する位置から開放溝517に対応する位置へ周方向に移動するのを許容するように構成されている。よって、使用者は、爪83が開放溝517に対応する位置までノズル8を回動させた後、前方に移動させるという一連の操作で、ノズル8をエアダスタ1から容易に取り外すことができる。なお、本実施形態では、ノズル8の作動突起84とスライドスリーブ53の受け凹部535(詳細には、後端面841と当接面536の回動方向側の湾曲面)とが協働することで、ノズル8の回動に応じてスライドスリーブ53が後方に移動される。つまり、作動突起84と受け凹部535は、ノズル8が取付け位置に配置されているときにノズル8の軸方向の回動を規制する機能と、ノズル8の回動をスライドスリーブ53の直線状の移動に変換する機能とを有する。このように、作動突起84と受け凹部535というシンプルな構成で、2つの機能が合理的に実現されている。
【0068】
また、本実施形態では、ロックスリーブ51は、取付け操作に応じて係止片82がロックスリーブ51に対して移動する過程では、係止片82を弾性変形させる一方、ロック解除操作に応じて係止片82が移動し、更に開放溝517内を前方に移動する過程では、係止片82を弾性変形させない。具体的には、ロックスリーブ51のうち、係止溝513の前側には、爪83に当接して係止片82を径方向外側に移動させる部分(傾斜面516および外周面)が設けられている。一方、係止溝513と開放溝517は周方向において連続的に形成されており、係止片82を弾性変形させることなく爪83を受け入れ可能な深さを有する。このような構成により、係止片82が弾性変形する頻度を減らし、係止片82の高寿命化を図ることができる。
【0069】
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。
【0070】
エアダスタ1は、「電動工具」および「送風機」の一例である。ノズル8は、「アタッチメント」および「ノズル」の一例である。ロック機構5は、「ロック機構」の一例である。ロックスリーブ51、スライドスリーブ53、付勢バネ55は、夫々、「固定部材」、「可動部材」、「付勢部材」の一例である。係止片82は、「第1係合部」および「係止片」の一例である。係止溝513は、「第2係合部」および「係止凹部」の一例である。規制部538は、「規制部」の一例である。作動突起84は、「突起」の一例である。受け凹部535は、「凹部」の一例である。開放溝517は、「開放部」の一例である。
【0071】
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る電動工具とアタッチメントとの連結構造は、例示されたエアダスタ1とノズル8との連結構造に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。また、これらの変更のうち少なくとも1つが、実施形態に例示される連結構造、および各請求項に記載された発明の何れかと組み合わされて採用されうる。
【0072】
例えば、電動工具は、多段送風機であるエアダスタ1に限られず、アタッチメントを取り付け可能な他の種類の電動工具であってもよい。また、アタッチメントも、ノズル8に限られず、アタッチメントが連結される電動工具に応じて、その種類は適宜変更されうる。例えば、本発明に係る連結構造は、ブロワおよび集塵機のような、空気を吹き出すまたは吸引するように構成された電動工具と、各種ノズルとの連結構造や、粉塵が発生する作業を遂行可能な回転工具(例えば、電動ドリル、ハンマドリル)と、先端工具を覆う集塵カバーとの連結構造等に好適に適用されうる。電動工具は、バッテリ19ではなく、外部の交流電源から供給される電力で動作するように構成された電動工具であってもよい。
【0073】
上記実施形態では、アタッチメントの一例として、全体が合成樹脂で形成されたノズル8を例示したが、エアダスタ1、ブロワ、集塵機等に取り付け可能なノズルの構成は、適宜、変更されうる。例えば、ノズル8のうち、取付け部81のみが合成樹脂で形成され、通路部87がエラストマで形成されていてもよい。この場合、取付け部81と通路部87とは、一体成形されてもよいし、別部材として形成され、互いに溶着等の方法で一体化されていてもよい。このような変形例のノズルによれば、ノズルの前側部分を構成する通路部87が弾性変形可能であるため、ノズルが何かにぶつかったときに、ノズル(例えば、係止片82)が破損する可能性を低減することができる。また、通路部87の長さや径が異なる複数種類のノズルを製造する場合でも、取付け部81については同じ金型を用いて製造できるため、コスト面でもメリットがある。
【0074】
ロック機構5の配置やその構成は、電動工具およびアタッチメントの変更にかかわらず、あるいは変更に応じて適宜変更されうる。以下に、ロック機構5に加えうる変更を例示する。
【0075】
例えば、ロック機構5の少なくとも一部は、電動工具ではなく、アタッチメントに設けられていてもよい。
【0076】
ロック機構5は、取付け位置に配置されたアタッチメントを、電動工具に対する取付け操作時の移動方向と逆方向に移動不能にロック可能であれば足りる。例えば、アタッチメントをロックするための構成は、係止片82(爪83)と係止溝513には限られず、この例とは逆に、アタッチメントが凹部を有し、ロック機構5(ロックスリーブ51)が弾性変形可能な係止片を有してもよい。
【0077】
ロック機構5は、必ずしもアタッチメントの回動を規制する必要はない。また、アタッチメントの回動は、ロック機構5以外の構成によって規制されてもよい。あるいは、ロック機構5は、取付け位置に配置されたアタッチメントを回動不能にロックするように構成されてもよい。
【0078】
例えば、上記実施形態の作動突起84および受け凹部535は、径方向外側からみて矩形状に構成され、取付け位置に配置されたノズル8の回動を禁止してもよい。この場合、例えば、ロック解除操作のために、使用者がスライドスリーブ53を後方に移動させるための操作部(例えば、摘み)がスライドスリーブ53に設けられれればよい。あるいは、例えば、係止溝513が、爪83を周方向に移動不能に保持するように構成されていてもよい。つまり、係止溝513に接続する開放溝517は省略されてもよい。この場合、ロックスリーブ51は、スライドスリーブ53の規制部538が爪83の後方まで移動された後、係止片82が弾性変形しつつロックスリーブ51から前方へ離脱するのを許容するように構成されればよい。
【0079】
また、ロック解除操作に応じてスライドスリーブ53を後方に移動させる機能のみに着目すれば、作動突起84の後端面841および受け凹部535の当接面536は、周方向の両端部が湾曲面である必要はない。具体的には、後端面841および当接面536のうち少なくとも一方が、ロック解除操作時のノズル8の回動方向に向かうにつれて前方へ傾斜する傾斜面を含んでいればよい。なお、傾斜面は、上記実施形態のような湾曲面であってもよいし、平面であってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ノズル8(アタッチメント)の作動突起84および受け凹部535は、夫々、爪83および係止溝513と周方向において概ね同じ位置にあり、且つ、使用者の視認可能な位置に配置されているため、係止片82(爪83)と係止溝513との周方向の位置合わせの目印となる。しかしながら、作動突起84および受け凹部535は、夫々、周方向において、係止片82(爪83)および係止溝513とは異なる位置に設けられてもよい。また、ノズル8とロック機構5との周方向の位置合わせの目印は、作動突起84および受け凹部535に限られない。操作を容易にする観点からは、何らかの目印が設けられていると好ましい。
【0081】
更に、ロックスリーブ51、スライドスリーブ53および付勢バネ55の構成、材質、係合構造、配置等は、適宜変更されうる。例えば、ロックスリーブ51は、電動工具の一部として構成されてもよい。つまり、電動工具のうち、アタッチメントが取付けられる部分(例えば、エアダスタ1の前端部41)が、ガイド溝511、係止溝513、開放溝517等を有していてもよい。ロックスリーブ51とスライドスリーブ53とは、ロックスリーブ51に設けられた突起とスライドスリーブ53に設けられた溝との係合によって、前後方向にのみ相対移動可能であってもよい。付勢バネ55は、圧縮コイルバネ以外の弾性部材(例えば、他の種類のバネ(例えば、捩じりバネ、板バネ)、ゴム)であってもよい。
【0082】
更に、本発明、上記実施形態およびその変形例の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様のうち少なくとも1つが、上述の実施形態およびその変形例、ならびに各請求項に記載された発明の何れかと組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記ロック機構は、前記電動工具に設けられている。
[態様2]
前記可動部材は、少なくとも部分的に前記固定部材の径方向外側に配置された筒状部材であって、
前記アタッチメントが前記取付け位置に配置されている場合、前記アタッチメントは、前記径方向において、少なくとも部分的に前記固定部材と前記可動部材の間に配置される。
[態様3]
前記係止凹部は、前記固定部材の外周部に形成されており、
前記可動部材は、前記固定部材の径方向外側に配置された筒状部材であって、
前記規制部は、前記アタッチメントが前記取付け位置に配置されている場合、前記係止片の前記径方向外側に配置され、前記係止片の前記径方向外側への弾性変形を規制するように構成されている。
[態様4]
前記係止片は、前記取付け操作に応じて、前記固定部材に沿って弾性変形しつつ移動し、前記係止凹部に対向する位置に到達すると、復元力で前記係止凹部に係合するように構成されている。
[態様5]
前記固定部材は、前記係止凹部の前記第2方向側に設けられ、前記第1方向側に向かって前記径方向外側に傾斜する第1傾斜面を有する。
傾斜面516は、本態様の「第1傾斜面」の一例である。
[態様6]
前記アタッチメントの前記突起および前記可動部材の前記凹部のうち少なくとも一方は、前記ロック解除操作時の前記アタッチメントの回動方向に向かうにつれて前記第2方向に傾斜する第2傾斜面を有する。
作動突起84の後端面841および受け凹部535の当接面536の各々は、本態様の「第2傾斜面」の一例である。
[態様7]
前記第2係合部は、前記周方向に延在する溝であって、前記開放部は、前記第2係合部の端部に接続し、前記固定部材の前記第2方向側の端まで前記第2方向に直線状に延びる溝である。
【符号の説明】
【0083】
1:エアダスタ、4:前側カバー、5:ロック機構、8:ノズル、11:本体ハウジング、110:吸込み口、12:筒状部、13:ハンドル、、131:トリガ、132:スイッチ19:バッテリ、31:モータ、32:出力シャフト、33:圧縮機構、34:ファン、40:吐出口、41:前端部、42:ベース部、51:ロックスリーブ、511:ガイド溝、513:係止溝、514:係止面、515:ガイド部、516:傾斜面、517:開放溝、519:突起、53:スライドスリーブ、531:バネ受け部、533:ガイド突起、535:受け凹部、536:当接面、538:規制部、539:凹部、55:付勢バネ、59:ナット、80:吐出口、81:取付け部、82:係止片、83:爪、831:前端面、833:後端面、835:傾斜面、84:作動突起、841:後端面、87:通路部、870:通路、A1:回転軸