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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】エアバッグ及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/231 20110101AFI20240527BHJP
【FI】
B60R21/231
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020133078
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029662
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】早崎 拓也
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0217399(US,A1)
【文献】特開2017-024478(JP,A)
【文献】特開2020-125055(JP,A)
【文献】特開2007-030839(JP,A)
【文献】特開2017-178066(JP,A)
【文献】特開2016-049971(JP,A)
【文献】特開2003-054353(JP,A)
【文献】特開2008-149965(JP,A)
【文献】特開2019-031160(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106458135(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0098463(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時はインストルメントパネル内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、
前記車両は、前記インストルメントパネルの中央部にセンタークラスターを有し、
前記エアバッグは、前記乗員の前方に膨張展開される本体部と、前記センタークラスターの前面に膨張展開される突出膨張部と、を有し、
前記本体部及び前記突出膨張部は、膨張展開時に前記乗員側に位置するフロントパネルと、膨張展開時に前記インストルメントパネル側に位置するリアパネルと、に二分割されて構成されており、
前記フロントパネルは、前記エアバッグの前面部及び側面部を構成する第一面部と、前記エアバッグの背面部を構成する第二面部と、前記突出膨張部を構成する第三面部と、を備えている、
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記フロントパネルは、前記第一面部の一部と前記第二面部との一部とを縫合することにより前記エアバッグの上半部を形成するように構成されている、請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
通常時はインストルメントパネル内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、
前記車両は、前記インストルメントパネルの中央部にセンタークラスターを有し、
前記エアバッグは、前記乗員の前方に膨張展開される本体部と、前記センタークラスターの前面に膨張展開される突出膨張部と、を有し、
前記本体部及び前記突出膨張部は、膨張展開時に前記乗員側に位置するフロントパネルと、膨張展開時に前記インストルメントパネル側に位置するリアパネルと、に二分割されて構成されており、
前記リアパネルは、前記エアバッグの底面部及び側面部を構成する第一面部と、前記エアバッグの背面部を構成する一対の第二面部と、前記突出膨張部を構成する第三面部と、を備えている、
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項4】
前記リアパネルは、前記一対の第二面部の一部を互いに縫合することにより前記エアバッグの下半部を形成するように構成されている、請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項5】
通常時はインストルメントパネル内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、
前記車両は、前記インストルメントパネルの中央部にセンタークラスターを有し、
前記エアバッグは、前記乗員の前方に膨張展開される本体部と、前記センタークラスターの前面に膨張展開される突出膨張部と、を有し、
前記本体部及び前記突出膨張部は、膨張展開時に前記乗員側に位置するフロントパネルと、膨張展開時に前記インストルメントパネル側に位置するリアパネルと、に二分割されて構成されており、
前記エアバッグは、前記突出膨張部側に形成された第一ベントホールと、前記第一ベントホールの反対側に形成された第二ベントホールと、を備え、前記第一ベントホールの開口部は前記第二ベントホールの開口部よりも小さい、
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項6】
通常時はインストルメントパネル内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、
前記車両は、前記インストルメントパネルの中央部にセンタークラスターを有し、
前記エアバッグは、前記乗員の前方に膨張展開される本体部と、前記センタークラスターの前面に膨張展開される突出膨張部と、を有し、
前記本体部及び前記突出膨張部は、膨張展開時に前記乗員側に位置するフロントパネルと、膨張展開時に前記インストルメントパネル側に位置するリアパネルと、に二分割されて構成されており、
前記エアバッグは、前記突出膨張部の背面に形成されたベントホールを備える、
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項7】
通常時はインストルメントパネル内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、
前記車両は、前記インストルメントパネルの中央部にセンタークラスターを有し、
前記エアバッグは、前記乗員の前方に膨張展開される本体部と、前記センタークラスターの前面に膨張展開される突出膨張部と、を有し、
前記本体部及び前記突出膨張部は、膨張展開時に前記乗員側に位置するフロントパネルと、膨張展開時に前記インストルメントパネル側に位置するリアパネルと、に二分割されて構成されており、
前記突出膨張部は、前記エアバッグの折り畳み時に前記本体部内に折り込み可能に構成されている、
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項8】
前記フロントパネル及び前記リアパネルの縫合線は、前記エアバッグが膨張展開した状態の側面視で前記センタークラスターと干渉しないように構成されている、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のエアバッグ。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載されたエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを保持するリテーナと、を備えることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ及びエアバッグ装置に関し、特に、センタークラスターを有する車両に適したエアバッグ及びエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、衝突時や急減速時等の緊急時にエアバッグを車内で膨張展開させて乗員に生ずる衝撃を吸収するためのエアバッグ装置が搭載されることが一般的になってきている。かかるエアバッグ装置は、一般に、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを保持するリテーナと、前記エアバッグを被覆するエアバッグカバーと、を備えている。
【0003】
近年の車両は、インストルメントパネルの中央部にナビゲーションシステムのディスプレイや空調設備のスイッチ等を装備したセンタークラスターが配置されていることが多い。かかるセンタークラスター(特に、ディスプレイ部分)は、インストルメントパネルに対して突出した形状を有していることが多く、エアバッグの膨張展開時に干渉しやすい。
【0004】
エアバッグが膨張展開時にセンタークラスターと干渉した場合、エアバッグの膨張展開時の姿勢(例えば、向きや位置)が崩れてしまう場合がある。また、車両の衝突方向によっては、乗員がセンタークラスターに向かって移動する場合もある。そこで、例えば、特許文献1に記載されたように、センタークラスターの前面を覆うように拡張部を有するエアバッグが既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第10011243号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたエアバッグでは、エアバッグ本体がセンタークラスターと干渉しないように膨張展開させる必要があり、テザー等によりエアバッグ本体の膨張展開形状を制御しなければならない。したがって、エアバッグの構造が複雑化するとともに重量の増加や折り畳み形状の大型化等の問題を生じる。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、簡便な構造でセンタークラスターとの干渉を回避しつつ、センタークラスターの前面にエアバッグの一部を膨張展開することができる、エアバッグ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、通常時はインストルメントパネル内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、前記車両は、前記インストルメントパネルの中央部にセンタークラスターを有し、前記エアバッグは、前記乗員の前方に膨張展開される本体部と、前記センタークラスターの前面に膨張展開される突出膨張部と、を有し、前記本体部及び前記突出膨張部は、膨張展開時に前記乗員側に位置するフロントパネルと、膨張展開時に前記インストルメントパネル側に位置するリアパネルと、に二分割されて構成されており、前記フロントパネルは、前記エアバッグの前面部及び側面部を構成する第一面部と、前記エアバッグの背面部を構成する第二面部と、前記突出膨張部を構成する第三面部と、を備えている、ことを特徴とするエアバッグが提供される。
【0009】
前記フロントパネルは、前記第一面部の一部と前記第二面部との一部とを縫合することにより前記エアバッグの上半部を形成するように構成されていてもよい。
【0010】
また、本発明によれば、通常時はインストルメントパネル内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、前記車両は、前記インストルメントパネルの中央部にセンタークラスターを有し、前記エアバッグは、前記乗員の前方に膨張展開される本体部と、前記センタークラスターの前面に膨張展開される突出膨張部と、を有し、前記本体部及び前記突出膨張部は、膨張展開時に前記乗員側に位置するフロントパネルと、膨張展開時に前記インストルメントパネル側に位置するリアパネルと、に二分割されて構成されており、前記リアパネルは、前記エアバッグの底面部及び側面部を構成する第一面部と、前記エアバッグの背面部を構成する一対の第二面部と、前記突出膨張部を構成する第三面部と、を備えている、ことを特徴とするエアバッグが提供される。
【0011】
前記リアパネルは、前記一対の第二面部の一部を互いに縫合することにより前記エアバッグの下半部を形成するように構成されていてもよい。
【0012】
また、本発明によれば、通常時はインストルメントパネル内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、前記車両は、前記インストルメントパネルの中央部にセンタークラスターを有し、前記エアバッグは、前記乗員の前方に膨張展開される本体部と、前記センタークラスターの前面に膨張展開される突出膨張部と、を有し、前記本体部及び前記突出膨張部は、膨張展開時に前記乗員側に位置するフロントパネルと、膨張展開時に前記インストルメントパネル側に位置するリアパネルと、に二分割されて構成されており、前記エアバッグは、前記突出膨張部側に形成された第一ベントホールと、前記第一ベントホールの反対側に形成された第二ベントホールと、を備え、前記第一ベントホールの開口部は前記第二ベントホールの開口部よりも小さい、ことを特徴とするエアバッグが提供される。
【0013】
また、本発明によれば、通常時はインストルメントパネル内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、前記車両は、前記インストルメントパネルの中央部にセンタークラスターを有し、前記エアバッグは、前記乗員の前方に膨張展開される本体部と、前記センタークラスターの前面に膨張展開される突出膨張部と、を有し、前記本体部及び前記突出膨張部は、膨張展開時に前記乗員側に位置するフロントパネルと、膨張展開時に前記インストルメントパネル側に位置するリアパネルと、に二分割されて構成されており、前記エアバッグは、前記突出膨張部の背面に形成されたベントホールを備える、ことを特徴とするエアバッグが提供される。
【0014】
また、本発明によれば、通常時はインストルメントパネル内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、前記車両は、前記インストルメントパネルの中央部にセンタークラスターを有し、前記エアバッグは、前記乗員の前方に膨張展開される本体部と、前記センタークラスターの前面に膨張展開される突出膨張部と、を有し、前記本体部及び前記突出膨張部は、膨張展開時に前記乗員側に位置するフロントパネルと、膨張展開時に前記インストルメントパネル側に位置するリアパネルと、に二分割されて構成されており、前記突出膨張部は、前記エアバッグの折り畳み時に前記本体部内に折り込み可能に構成されている、ことを特徴とするエアバッグが提供される。
【0015】
前記フロントパネル及び前記リアパネルの縫合線は、前記エアバッグが膨張展開した状態の側面視で前記センタークラスターと干渉しないように構成されていてもよい。
【0017】
また、本発明によれば、段落0008~段落0014の何れかに記載されたエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを保持するリテーナと、を備えることを特徴とするエアバッグ装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明に係るエアバッグ及びエアバッグ装置によれば、突出膨張部を有するエアバッグをフロントパネルとリアパネルとに二分割して構成したことにより、エアバッグを上下方向に膨張展開させやすくすることができ、テザー等の形状制御部材を使用することなく、本体部を乗員の前方に膨張展開させ、突出膨張部をセンタークラスターの前面に膨張展開させることができる。したがって、本発明によれば、簡便な構造でセンタークラスターとの干渉を回避しつつ、センタークラスターの前面にエアバッグの一部を膨張展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るエアバッグ装置を示す全体構成図である。
図2図1に示したエアバッグの膨張展開形状を示す概略図であり、(A)は図1におけるA矢視図、(B)は図1におけるB矢視図、である。
図3図1に示したエアバッグのカットパーツを示す図であり、(A)はフロントパネル、(B)はリアパネル、を示している。
図4図1に示したエアバッグの変形例を示す図であり、(A)はリアパネル、(B)は図1におけるA矢視図に相当する図、を示している。
図5図1に示したエアバッグの折り畳み方法を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は突出膨張部の折り込み工程、(C)は幅方向の折り畳み工程、(D)は縦方向の折り畳み工程、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図1図5(D)を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の一実施形態に係るエアバッグ装置を示す全体構成図である。図2は、図1に示したエアバッグの膨張展開形状を示す概略図であり、(A)は図1におけるA矢視図、(B)は図1におけるB矢視図、である。
【0021】
本発明の一実施形態に係るエアバッグ装置1は、図1に示すように、通常時はインストルメントパネルI内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席Sに着座した乗員Pの前方に膨張展開するエアバッグ2と、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ3と、エアバッグ2及びインフレータ3を保持するリテーナ4と、エアバッグ2を覆い隠すとともにインストルメントパネルIの一部を構成するエアバッグカバー5と、を備えている。
【0022】
図1に示した車両は、インストルメントパネルIの中央部にセンタークラスターCを有している。センタークラスターCは、ナビゲーションシステムのディスプレイや空調設備のスイッチ等を装備する部分である。
【0023】
図1に示したエアバッグ装置1は、いわゆる助手席用エアバッグ装置であり、エアバッグ2は、例えば、乗員P、ウインドシールドW及びインストルメントパネルIにより囲まれた空間に膨張展開される。
【0024】
インフレータ3は、ガス噴出口がエアバッグ2内に挿入された状態でリテーナ4に固定される。インフレータ3は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサ等の計測値に基づいて制御されている。ECUが車両の衝突や急減速等の緊急時を感知した場合には、インフレータ3の内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させ、エアバッグ2にガスを供給する。インフレータ3は、ディスク型形状であってもよいし、円柱形状であってもよい。
【0025】
リテーナ4は、例えば、側面部に接続されたフックにより、エアバッグカバー5に係止されるとともに、接合部材を介してリインフォースメント等の車内構造物6に連結されている。リテーナ4には、バッグリングを介してエアバッグ2及びインフレータ3が固定される。なお、リテーナ4の構成は、図示した構成に限定されるものではない。
【0026】
エアバッグカバー5は、例えば、車両内装面を構成する板状部51と、板状部51の背面に配置されエアバッグ2の放出口を構成するインナーケース52と、を有している。インナーケース52上の板状部51には、エアバッグ2の膨張展開時に開裂可能に形成された扉部53が形成されている。エアバッグカバー5は、インストルメントパネルIに形成された開口部に嵌め込まれるように構成されていてもよいし、インストルメントパネルIと一体に形成されていてもよい。なお、エアバッグカバー5の構成は、図示した構成に限定されるものではない。
【0027】
エアバッグ2は、乗員Pの前方に膨張展開される本体部2aと、センタークラスターCの前面に膨張展開される突出膨張部2bと、を有し、本体部2a及び突出膨張部2bは、膨張展開時に乗員P側に位置するフロントパネル21と、膨張展開時にインストルメントパネルI側に位置するリアパネル22と、に二分割されて構成されている。なお、図示しないが、エアバッグ2は、必要に応じて補強用のパッチパネルを有していてもよい。
【0028】
本体部2aは、エアバッグカバー5から車内に放出された後、ウインドシールドWに接触した状態で乗員Pに向かって膨張展開し、正面に向かって移動する乗員Pの頭部を主に拘束する機能を有している。
【0029】
突出膨張部2bは、本体部2aと連通するように形成された小さい凸部である。図2(A)に示したように、突出膨張部2bは、センタークラスターCが配置されている側に形成される。したがって、右ハンドルの車両と左ハンドルの車両では、突出膨張部2bの位置は反対になる。
【0030】
ところで、図2(A)に示したように、本体部2aの中心線Lから離れた位置にセンタークラスターCが配置されている場合、側面が単一のパネルで構成されたエアバッグでは、エアバッグが球形状に膨張しやすいことからエアバッグがセンタークラスターCに干渉するおそれがある。したがって、側面が単一のパネルで構成されたエアバッグでは、エアバッグの膨張展開形状を制御する手段が必要になる。
【0031】
それに対して、図1に示したように、エアバッグ2をフロントパネル21とリアパネル22の2ピース構造とすることにより、フロントパネル21とリアパネル22との縫合線23に対して、フロントパネル21を上方側に膨張させることができ、リアパネル22を下方側に膨張させることができ、テザー等の形状制御部材を用いることなく、エアバッグ2の横幅を規制することができる。したがって、図2(a)に示したように、本体部2aをセンタークラスターCと干渉させずに膨張展開させることができる。
【0032】
また、例えば、車両が斜め衝突した場合に、乗員Pの頭部がセンタークラスターCに向かって移動するおそれがある。そこで、本実施形態に係るエアバッグ2は、センタークラスターCの前面の少なくとも一部を覆うことができる突出膨張部2bを備えている。
【0033】
ここで、エアバッグ2を構成するフロントパネル21及びリアパネル22について、図3(A)及び図3(B)を参照しつつ説明する。図3は、図1に示したエアバッグのカットパーツを示す図であり、(A)はフロントパネル、(B)はリアパネル、を示している。なお、図3(A)及び図3(B)において、一点鎖線は区画仮想線、二点鎖線は縫合予定線を示している。
【0034】
フロントパネル21は、例えば、図3(A)に示したように、エアバッグ2の前面部及び側面部を構成する第一面部211と、エアバッグ2の背面部を構成する第二面部212と、突出膨張部2bを構成する第三面部213と、を備えている。
【0035】
第一面部211は、例えば、主にエアバッグ2の前面部を構成する四角形状部211aと、主にエアバッグ2の側面部を構成する二つの三角形状部211bと、を備えている。第一面部211は、全体として略台形状に形成される。
【0036】
第二面部212は、例えば、主にエアバッグ2の背面部を構成する四角形状(具体的には、略台形状)に形成されており、第一面部211の四角形状部211aと隣接する位置に形成されている。
【0037】
第三面部213は、図中の右側に位置する三角形状部211bと隣接する位置に形成されている。第三面部213は、図示したように、略台形状であるが、正規曲線のように滑らかに湾曲した形状であってもよい。第三面部213は、突出膨張部2bの上半部を構成するように形成されている。
【0038】
フロントパネル21は、第一面部211の一部と第二面部212との一部とを縫合することによりエアバッグ2の上半部を形成するように構成されている。具体的には、第一面部211の三角形状部211bの底辺部を211cとし、第二面部212の側辺部を212aとすれば、隣接する底辺部211cと側辺部212aとを縫合する。
【0039】
リアパネル22は、エアバッグ2の底面部及び側面部を構成する第一面部221と、エアバッグ2の背面部を構成する一対の第二面部222と、突出膨張部2bを構成する第三面部223と、を備えている。
【0040】
第一面部221は、例えば、主にエアバッグ2の底面を構成する四角形状部221aと、主にエアバッグ2の側面部を構成する二つの三角形状部221bと、を備えている。第一面部221は、全体として略台形状に形成される。また、突出膨張部2b(第三面部213)側の三角形状部221bに第一ベントホール24が形成され、第一ベントホール24の反対側の三角形状部221bに第二ベントホール25が形成されている。
【0041】
第一ベントホール24及び第二ベントホール25は、例えば、図2(B)に示したように、エアバッグ2の背面寄りの側面部に形成される。また、図3(B)に示したように、第一ベントホール24の開口部は第二ベントホール25の開口部よりも小さく形成されている。かかる構成により、第一ベントホール24及び第二ベントホール25の排気量を調整することができ、突出膨張部2bが形成された側からの排気量を少なくすることができる。したがって、エアバッグ2の膨張展開時における突出膨張部2bの膨張状態を長く保持することができる。
【0042】
なお、図示しないが、第一ベントホール24及び第二ベントホール25に排気調整弁等の流量調整手段を配置した場合には、第一ベントホール24及び第二ベントホール25は、同じ大きさであってもよいし、第一ベントホール24を第二ベントホール25よりも大きく形成してもよい。
【0043】
第二面部222は、例えば、主にエアバッグ2の背面部を構成する四角形状に形成されており、第一面部221の三角形状部221bと隣接する位置に形成されている。図示したように、一対の第二面部222の中間部には凹部222aが形成される。この凹部222aは、インフレータ3を挿入する開口部を形成する。
【0044】
第三面部223は、図中の左側に位置する三角形状部221bと隣接する位置に形成されている。第三面部223は、図示したように、略台形状であるが、正規曲線のように滑らかに湾曲した形状であってもよい。第三面部223は、突出膨張部2bの下半部を構成するように形成されている。
【0045】
リアパネル22は、一対の第二面部222の一部を互いに縫合することによりエアバッグ2の下半部を形成するように構成されている。具体的には、第二面部222の長辺部を222bとすれば、長辺部222b同士を縫合する。
【0046】
例えば、図1及び図2(B)に示したように、フロントパネル21によりエアバッグ2の上半部を形成し、リアパネル22によりエアバッグ2の下半部を形成し、最終的にこれらを縫合線23で縫合することにより袋体であるエアバッグ2が形成される。また、縫合線23は、例えば、図1に示したように、エアバッグ2が膨張展開した状態の側面視でセンタークラスターCと干渉しないように配置される。このようにフロントパネル21とリアパネル22の縫合線23を形成することにより、突出膨張部2bをセンタークラスターCの前面に膨張展開させることができる。
【0047】
次に、エアバッグ2の変形例について、図4(A)及び図4(B)を参照しつつ説明する。ここで、図4は、図1に示したエアバッグの変形例を示す図であり、(A)はリアパネル、(B)は図1におけるA矢視図に相当する図、を示している。
【0048】
図4(A)及び図4(B)に示したエアバッグ2は、突出膨張部2bの背面に形成された第三ベントホール26を備えている。第三ベントホール26は、例えば、図4(A)に示したように、リアパネル22の第三面部223に形成される。また、第三ベントホール26の開口部は第二ベントホール25の開口部よりも小さく形成されている。
【0049】
かかる第三ベントホール26を形成することにより、エアバッグ2の膨張展開時に、図4(B)に示したように、センタークラスターCの前面に第三ベントホール26を配置することができる。したがって、乗員Pが突出膨張部2bに衝突した際に、第三ベントホール26をセンタークラスターCの前面に密着させて封止することができ、突出膨張部2bで乗員Pを受け止めることができる。また、乗員Pが本体部2aに衝突した際には、第三ベントホール26からガスを排気することができ、乗員Pの進入方向に応じてエアバッグ2の内圧を調整することができる。
【0050】
ここでは、第二ベントホール25と第三ベントホール26を形成した場合を図示しているが、第二ベントホール25及び第三ベントホール26に加えて第一ベントホール24を形成するようにしてもよい。また、第一ベントホール24~第三ベントホール26を形成した場合には、第一ベントホール24と第二ベントホール25の開口部を同じ大きさに形成してもよい。
【0051】
次に、上述したエアバッグ2の折り畳み方法について、図5(A)~図5(D)を参照しつつ説明する。ここで、図5は、図1に示したエアバッグの折り畳み方法を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は突出膨張部の折り込み工程、(C)は幅方向の折り畳み工程、(D)は縦方向の折り畳み工程、を示している。
【0052】
最初に、図5(A)に示したように、フロントパネル21側を上面にした状態で縫製されたエアバッグ2を平面展開する。
【0053】
次に、図5(B)に示したように、突出膨張部2bを構成する部分を本体部2a内に折り込む。具体的には、フロントパネル21により構成される突出膨張部2bの表面と、リアパネル22により構成される突出膨張部2bの表面とが密着するように折り込まれる。
【0054】
次に、図5(C)に示したように、エアバッグ2の横幅を狭くするように左右両側の部分を折り畳む。このとき、エアバッグ2の右側部分は、中心線Lの右側の範囲内で蛇腹折りされ、エアバッグ2の左側部分は、中心線Lの左側の範囲内で蛇腹折りされる。
【0055】
最後に、図5(D)に示したように、図5(C)に示した長手方向(縦方向)の部分の長さを短くするように折り畳む。このときの折り畳みは、ロール折りであってもよいし、蛇腹折りであってもよいし、ロール折りと蛇腹折りの組み合わせであってもよい。
【0056】
上述した折り畳み方法によれば、エアバッグ2の膨張展開時に本体部2aを円滑に膨張展開させることができるとともに、本体部2aの膨張展開状態に応じて突出膨張部2bを円滑に膨張展開させることができる。
【0057】
上述した本実施形態に係るエアバッグ装置1によれば、突出膨張部2bを有するエアバッグ2をフロントパネル21とリアパネル22とに二分割して構成したことにより、エアバッグ2を上下方向に膨張展開させやすくすることができ、テザー等の形状制御部材を使用することなく、本体部2aを乗員Pの前方に膨張展開させ、突出膨張部2bをセンタークラスターCの前面に膨張展開させることができる。
【0058】
したがって、本実施形態に係るエアバッグ装置1によれば、簡便な構造でセンタークラスターCとの干渉を回避しつつ、センタークラスターCの前面にエアバッグ2の一部(突出膨張部2b)を膨張展開することができる。
【0059】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 エアバッグ装置
2 エアバッグ
2a 本体部
2b 突出膨張部
3 インフレータ
4 リテーナ
5 エアバッグカバー
6 車内構造物
21 フロントパネル
22 リアパネル
23 縫合線
24 第一ベントホール
25 第二ベントホール
26 第三ベントホール
51 板状部
52 インナーケース
53 扉部
211 第一面部(フロントパネル)
211a 四角形状部
211b 三角形状部
211c 底辺部
212 第二面部(フロントパネル)
212a 側辺部
213 第三面部(フロントパネル)
221 第一面部(リアパネル)
221a 四角形状部
221b 三角形状部
222 第二面部(リアパネル)
222a 凹部
222b 長辺部
223 第三面部(リアパネル)
C センタークラスター
I インストルメントパネル
L 中心線
P 乗員
S 座席
W ウインドシールド


図1
図2
図3
図4
図5