(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240527BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240527BHJP
F01P 5/06 20060101ALI20240527BHJP
F01P 5/04 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
E02F9/00 M
B60K11/04 D
F01P5/06 510Z
F01P5/04 G
(21)【出願番号】P 2020137191
(22)【出願日】2020-08-15
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】濱本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】木村 健人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 聡
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-037872(JP,A)
【文献】特開2014-042467(JP,A)
【文献】特開2012-193521(JP,A)
【文献】特開2014-196717(JP,A)
【文献】特開2007-016667(JP,A)
【文献】特開2018-071405(JP,A)
【文献】特開昭61-229918(JP,A)
【文献】特開2012-002160(JP,A)
【文献】特開平07-077329(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0017901(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60K 11/04
F01P 5/06
F01P 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンに供給される冷却水を冷却するラジエータと、
前記ラジエータの一方面側に配置され、前記機体内部に外気を取り入れる気流を発生させる第1方向と、前記機体内部の空気を外部に排出する気流を発生させる第2方向とに回転可能な第1ファンと、
前記第2方向に回転する第2ファンと、
前記第1ファン及び前記第2ファンの駆動を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第2方向の回転を開始して所定時間経過後に終了させる基本動作と、前記所定時間内に中止条件が満たされた場合に前記第2方向の回転を中止させるキャンセル動作とを、前記第1ファンに実行させることが可能であり、
前記第2ファンは、前記キャンセル動作が実行された場合、前記第1ファンの前記第2方向の回転数が低下して最低回転数となった後、駆動を停止する作業機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記キャンセル動作として、前記第2方向の回転の回転数を徐々に低下させた後、前記第1方向の回転に変更する動作を、前記
第1ファンに実行させる請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記キャンセル動作として、前記第2方向の回転の回転数を徐々に低下させた後、回転を停止させる動作を、前記
第1ファンに実行させる請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記キャンセル動作として、前記第2方向の回転の回転数を最低回転数まで低下させた後、所定時間経過してから回転を停止させる動作を、前記
第1ファンに実行させる請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記機体に装着された作業装置と、
前記作業装置を作動させる作動油の温度を検出する第1センサと、
前記エンジンを冷却する冷却水の温度を検出する第2センサと、
を備え、
前記制御装置は、前記第1センサ又は前記第2センサで検出された温度が所定温度範囲を外れたときに前記中止条件が満たされたと判断して前記
第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項6】
前記制御装置は、エンジン停止時にエンジンの停止のみをもって前記中止条件が満たされたと判断して前記
第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項7】
前記
第1ファンの前記第2方向への回転を許可するオン状態と許可しないオフ状態とを手動で切り替え可能な切り替えスイッチを備え、
前記制御装置は、前記切り替えスイッチがオフ状態に切り替えられたときに前記中止条件が満たされたと判断して前記
第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項8】
前記
第1ファン又は前記第2ファンの駆動に関係する部品の故障を検知する検知部を備え、
前記制御装置は、前記検知部で故障が検知されたときに前記中止条件が満たされたと判断して前記
第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項9】
前記エンジンからの排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置と、
前記フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼させるフィルタ再生処理部と、
を備え、
前記制御装置は、前記フィルタ再生処理部が粒子状物質を燃焼させるフィルタ再生処理を行っているときに前記中止条件が満たされたと判断して前記
第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項10】
前記エンジンの回転数を設定する設定部材と、
前記エンジンの回転数を検出する回転数センサと、
を備え、
前記制御装置は、前記設定部材により設定された回転数である指示回転数から前記回転数センサにより検出された回転数である実回転数を差し引いた差分値が閾値以上となったとき、前記中止条件が満たされたと判断して前記
第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項11】
前記機体に装着された作業装置と、
前記作業装置を作動させる作動油の温度を検出する第1センサと、
前記エンジンを冷却する冷却水の温度を検出する第2センサと、
前記第1センサ又は前記第2センサの故障を検知する故障検知部と、
を備え、
前記制御装置は、前記故障検知部が故障を検知したときに前記中止条件が満たされたと判断して前記
第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項12】
前記機体に搭載されたキャビンと、
前記キャビン内に温度調整された空気を供給するエアコンと、
を備え、
前記制御装置は、前記エアコンの駆動時に前記中止条件が満たされたと判断して前記
第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキッドステアローダやコンパクトトラックローダ等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業機が知られている。
特許文献1に開示された作業機は、ラジエータ等を冷却するための冷却ファンと、この冷却ファンの回転方向を正方向と逆方向とに切り替える制御を行う制御装置と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記作業機では、冷却ファンを正方向に回転させることによりラジエータ等を冷却することができ、冷却ファンを逆方向に回転させることによりラジエータ等に付着したダストを吹き飛ばすことができる。しかしながら、冷却ファンを逆方向に回転させている最中に何らかの異常が生じた場合等に逆方向の回転を中止することができなかった。
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたものであって、冷却用のファンを逆方向に回転させている最中に必要に応じて逆方向の回転を中止することができる作業機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る作業機は、機体と、前記機体に搭載されたエンジンと、前記エンジンに供給される冷却水を冷却するラジエータと、前記ラジエータの一方面側に配置され、前記機体内部に外気を取り入れる気流を発生させる第1方向と、前記機体内部の空気を外部に排出する気流を発生させる第2方向とに回転可能な第1ファンと、前記第2方向に回転する第2ファンと、前記第1ファン及び前記第2ファンの駆動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第2方向の回転を開始して所定時間経過後に終了させる基本動作と、前記所定時間内に中止条件が満たされた場合に前記第2方向の回転を中止させるキャンセル動作とを、前記第1ファンに実行させることが可能であり、前記第2ファンは、前記キャンセル動作が実行された場合、前記第1ファンの前記第2方向の回転数が低下して最低回転数となった後、駆動を停止する。
【0006】
また、前記制御装置は、前記キャンセル動作として、前記第2方向の回転の回転数を徐々に低下させた後、前記第1方向の回転に変更する動作を、前記第1ファンに実行させる。
また、前記制御装置は、前記キャンセル動作として、前記第2方向の回転の回転数を徐々に低下させた後、回転を停止させる動作を、前記第1ファンに実行させる。
また、前記制御装置は、前記キャンセル動作として、前記第2方向の回転の回転数を最低回転数まで低下させた後、所定時間経過してから回転を停止させる動作を、前記第1ファンに実行させる。
【0007】
また、前記機体に装着された作業装置と、前記作業装置を作動させる作動油の温度を検出する第1センサと、前記エンジンを冷却する冷却水の温度を検出する第2センサと、を備え、前記制御装置は、前記第1センサ又は前記第2センサで検出された温度が所定温度範囲を外れたときに前記中止条件が満たされたと判断して前記第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる。
【0008】
また、前記制御装置は、エンジン停止時にエンジンの停止のみをもって前記中止条件が満たされたと判断して前記第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる。
また、前記第1ファンの前記第2方向への回転を許可するオン状態と許可しないオフ状態とを手動で切り替え可能な切り替えスイッチを備え、前記制御装置は、前記切り替えスイッチがオフ状態に切り替えられたときに前記中止条件が満たされたと判断して前記第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる。
【0009】
また、前記第1ファン又は前記第2ファンの駆動に関係する部品の故障を検知する検知部を備え、前記制御装置は、前記検知部で故障が検知されたときに前記中止条件が満たされたと判断して前記第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる。
また、前記エンジンからの排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置と、前記フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼させるフィルタ再生処理部と、を備え、前記制御装置は、前記フィルタ再生処理部が粒子状物質を燃焼させるフィルタ再生処理を行っているときに前記中止条件が満たされたと判断して前記第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる。
【0010】
また、前記エンジンの回転数を設定する設定部材と、前記エンジンの回転数を検出する回転数センサと、を備え、前記制御装置は、前記設定部材により設定された回転数である指示回転数から前記回転数センサにより検出された回転数である実回転数を差し引いた差分値が閾値以上となったとき、前記中止条件が満たされたと判断して前記第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる。
【0011】
また、前記機体に装着された作業装置と、前記作業装置を作動させる作動油の温度を検出する第1センサと、前記エンジンを冷却する冷却水の温度を検出する第2センサと、前記第1センサ又は前記第2センサの故障を検知する故障検知部と、を備え、前記制御装置は、前記故障検知部が故障を検知したときに前記中止条件が満たされたと判断して前記第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる。
【0012】
また、前記機体に搭載されたキャビンと、前記キャビン内に温度調整された空気を供給するエアコンと、を備え、前記制御装置は、前記エアコンの駆動時に前記中止条件が満たされたと判断して前記第1ファンに前記キャンセル動作を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
上記作業機によれば、冷却用のファンを冷却時とは逆方向(第2方向)に回転させている最中に必要に応じて逆方向の回転を中止することができる。これにより、ファンの逆方向の回転の継続によって発生し得る不具合(機器のオーバーヒート等)を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1ファン、第2ファン、ラジエータ、コンデンサ、ファンカバー等の配置を示す作業機後部の側面断面図である。
【
図2】第1ファン、第2ファン、ラジエータ、コンデンサ、ファンカバー等の配置を示す正面断面図である。
【
図3A】第1ファンを第1方向に回転したときの空気の流れを説明する図である。
【
図3B】第1ファンを第2方向に回転したときの空気の流れを説明する図である。
【
図4】ボンネットからファンカバーを取り外した状態の平面図である。
【
図5】ボンネットにファンカバーを取り付けた状態の平面図である。
【
図6】ファンカバーを左前上方から見た斜視図である。
【
図7】ファンカバーを左前下方から見た斜視図である。
【
図8】作業機の制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】第1ファン、第2ファン、方向切替弁の動作パターンの一例を示す図である。
【
図10】第1ファン、第2ファン、方向切替弁の動作パターンの別の一例を示す図である。
【
図11】第1ファン、第2ファン、方向切替弁の動作パターンの更に別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る作業機の好適な実施形態について説明する。
図12は、本発明に係る作業機の側面図を示している。
図12では、作業機の一例として、コンパクトトラックローダを示している。但し、本発明に係る作業機はコンパクトトラックローダに限定されず、例えば、スキッドステアローダ等の他の種類のローダ作業機であってもよい。また、ローダ作業機以外の作業機であってもよい。
【0016】
作業機1は、
図12に示すように、作業機1は、機体2と、キャビン3と、作業装置4と、走行装置5とを備えている。本発明の実施形態において、作業機1の運転席8に着座
した運転者の前側(
図12の左側)を前方、運転者の後側(
図12の右側)を後方、運転者の左側(
図12の手前側)を左方、運転者の右側(
図12の奥側)を右方として説明する。また、前後方向K1に直交する水平方向を機体幅方向K2として説明する。
【0017】
キャビン3は、機体2に搭載されている。キャビン3には運転席8が設けられている。作業機1は、キャビン3内に温度調整された空気を供給するエアコン(図示略)を備えている。エアコンの動作は、後述する制御装置60によって制御される。走行装置5は、機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。走行装置5は、本実施形態ではクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置が採用されている。但し、前輪及び後輪を有する車輪型の走行装置を採用してもよい。
【0018】
作業装置4は、機体2に装着されている。作業装置4は、ブーム10と、作業具11と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダ14と、バケットシリンダ15とを有している。ブームシリンダ14及びバケットシリンダ15は、油圧シリンダであって、油圧ポンプから供給される作動油の供給によって駆動(伸縮)する。
ブーム10は、キャビン3の右側及び左側に上下揺動自在に設けられている。作業具11は、例えば、バケットであって、当該バケット11は、ブーム10の先端部(前端部)に上下揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10が上下揺動自在となるように、ブーム10の基部(後部)を支持している。ブームシリンダ14は、伸縮することによりブーム10を昇降させる。バケットシリンダ15は、伸縮することによりバケット11を揺動させる。
【0019】
左側及び右側の各ブーム10の前部同士は、異形の連結パイプで連結されている。各ブーム10の基部(後部)同士は、円形の連結パイプで連結されている。
リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダ14は、左側と右側の各ブーム10に対応して機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、各ブーム10の基部の後部に、縦向きに設けられている。このリフトリンク12の上部(一端側)は、各ブーム10の基部の後部寄りに枢支軸16(第1枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下部(他端側)は、機体2の後部寄りに枢支軸17(第2枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第2枢支軸17は、第1枢支軸16の下方に設けられている。
【0020】
ブームシリンダ14の上部は、枢支軸18(第3枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第3枢支軸18は、各ブーム10の基部であって、当該基部の前部に設けられている。ブームシリンダ14の下部は、枢支軸19(第4枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第4枢支軸19は、機体2の後部の下部寄りであって第3枢支軸18の下方に設けられている。
【0021】
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に設けられている。この制御リンク13の一端は、枢支軸20(第5枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第5枢支軸20は、機体2におけるリフトリンク12の前方に対応する位置に設けられている。制御リンク13の他端は、枢支軸21(第6枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第6枢支軸21は、ブーム10における第2枢支軸17の前方で且つ第2枢支軸17の上方に設けられている。
【0022】
ブームシリンダ14を伸縮することにより、リフトリンク12及び制御リンク13によって各ブーム10の基部が支持されながら、各ブーム10が第1枢支軸16回りに上下揺動し、各ブーム10の先端部が昇降する。制御リンク13は、各ブーム10の上下揺動に伴って第5枢支軸20回りに上下揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下揺動に伴って第2枢支軸17回りに前後揺動する。
【0023】
ブーム10の前部には、バケット11の代わりに別の作業具が装着可能とされている。別の作業具としては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)である。
左側のブーム10の前部には、接続部材50が設けられている。接続部材50は、予備アタッチメントに装備された油圧機器と、ブーム10に設けられたパイプ等の第1管材と
を接続する装置である。具体的には、接続部材50の一端には、第1管材が接続可能で、他端には、予備アタッチメントの油圧機器に接続された第2管材が接続可能である。これにより、第1管材を流れる作動油は、第2管材を通過して油圧機器に供給される。
【0024】
バケットシリンダ15は、各ブーム10の前部寄りにそれぞれ配置されている。バケットシリンダ15を伸縮することで、バケット11が揺動される。
図1に示すように、機体2内の後部には、原動機22が搭載されている。原動機22は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等のエンジン(内燃機関)、電動モータ等である。本実施形態の場合、原動機22は、エンジンであり、具体的にはディーゼルエンジンである。以下、原動機22をエンジン22として説明する。また、機体2内のエンジン22が搭載(収容)された空間をエンジンルームERという。エンジンルームERの上方は、ボンネット9により覆われている。
【0025】
エンジンルームERには、エンジン22からの排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ(Diesel particulate filter:DPF)を備えた排出ガス浄化装置23が配置されている。作業機1は、排出ガス浄化装置23のフィルタに捕集された粒子状物質を燃焼させるフィルタ再生処理部(図示略)を備えている。フィルタ再生処理部は、後述する制御装置60による制御に基づいてフィルタ再生(DPF再生)処理を行う。フィルタ再生処理は、DPFの温度を所定温度以上に上昇させることで堆積したPMを燃焼させてガス化し、排出ガスとともに環境中に排出することで行われる。DPF再生は、例えば、燃料のポスト噴射によって行われる。ポスト噴射とは燃焼後のガスに燃料を噴射することによって、DPFの温度上昇を促進する動作である。
【0026】
図1に示すように、エンジン22の上方には、ラジエータ24が配置されている。ラジエータ24は、エンジン22に供給される冷却水を冷却する。ラジエータ24は、一方面が下方を向き、他方面が上方を向くように配置されている。ラジエータ24は、前方から後方に向かうにつれて低くなるように傾斜して配置されている。
エンジン22の上方であって且つラジエータ24の下方には、第1ファン25が配置されている。第1ファン25は、ラジエータ24の一方面側(下面側)に配置されている。本実施形態の場合、第1ファン25は、油圧によって駆動する油圧ファンである。第1ファン25は、第1モータ28によって駆動する。第1モータ28は、作動油によって作動する油圧モータである。第1モータ28の出力軸(以下、「第1出力軸28a」という)は、上方(斜め上後方)に向けて延びている。第1出力軸28aの上部には、第1羽根29が取り付けられている。つまり、第1ファン25は、上側に第1羽根29が配置され、下側に第1羽根29を回転させる第1モータ28が配置されている。
【0027】
第1羽根29は、第1出力軸28aの回転に伴って、当該第1出力軸28a回りに回転する。第1出力軸28aの回転中心(以下、「第1回転軸中心CL1」という)は、下方から上方に向かうにつれて後方に移行するように傾斜している。これにより、第1羽根29の回転により生じる回転面は、ラジエータ24の一方面と略平行になるように、前方から後方に向かうにつれて低くなるように傾斜している。
図1,
図2に示すように、第1羽根29の周囲には第1シュラウド32が配置されている。第1シュラウド31は、第1羽根29の周囲に沿って延びる円筒形である。
【0028】
第1ファン25は、第1方向と、第1方向と逆方向である第2方向に回転可能である。尚、第1ファン25の回転方向とは、第1羽根29の第1出力軸28a回りの回転方向である。
図3Aに示すように、第1ファン25は、第1方向に回転したとき、機体2内部に外気を取り入れる気流(以下、「第1気流FL1」という)を発生させる。
図3Bに示すように、第1ファン25は、第2方向に回転したとき、機体2内部の空気を機体2外部に排出する気流(以下、「第2気流FL2」という)を発生させる。つまり、第1方向の回転は第1気流FL1を発生させる方向の回転であり、第2方向の回転は第2気流FL2を発生させる方向の回転である。第1気流FL1の発生によって、エンジンルームER内に外気(機体2外部の空気)が取り入れられる。第2気流FL2の発生によって、エンジンルームER内の空気が機体2外部に排出される。
【0029】
第1ファン25は、第1方向に回転させたときの風量が、第2方向に回転させたときの
風量よりも大きい。この風量の違いは、例えば、表側(ラジエータ24側)から見た羽根の形状と裏側(ラジエータ24と反対側)から見た羽根の形状を異ならせる等の方法によって実現できる。また、第1方向に回転させるときの回転数と、第2方向に回転させるときの回転数とを異ならせる方法によって実現してもよい。
【0030】
図1,
図2に示すように、ラジエータ24の他方面側(上面側)には、第2ファン26が配置されている。本実施形態の場合、第2ファン26は、電力によって駆動する電動ファンである。第2ファン26を駆動するための電力は、機体2に搭載されたバッテリ等から供給される。第2ファン26は、第2モータ30によって駆動する。第2モータ30は、電力によって作動する電動モータである。第2モータ30の出力軸(以下、「第2出力軸30a」という)は、下方(斜め下前方)に向けて延びている。第2出力軸30aの下部には、第2羽根31が取り付けられている。つまり、第2ファン26は、下側に第2羽根31が配置され、上側に第2羽根31を回転させる第2モータ30が配置されている。
【0031】
第2羽根31は、第2出力軸30aの回転に伴って、当該第2出力軸30a回りに回転する。第2出力軸30aの回転中心(以下、「第2回転軸中心CL2」という)は、下方から上方に向かうにつれて後方に移行するように傾斜している。これにより、第2羽根31の回転により生じる回転面は、ラジエータ24の一方面と略平行になるように、前方から後方に向かうにつれて低くなるように傾斜している。
【0032】
図1、
図2に示すように、第2羽根31の周囲には第2シュラウド38が配置されている。第2シュラウド38は、第2羽根31の周囲に沿って延びる円筒形である。
図1,
図4に示すように、第2シュラウド38の上部には、防護カバー33が設けられている。防護カバー33は、格子状であって、第2羽根31の上方を覆っている。防護カバー33の中央には第2モータ30が取り付けられている。第2モータ30は、防護カバー33の上方に突出している。
【0033】
図3に示すように、第1出力軸28aの回転中心である第1回転軸中心CL1と第2出力軸30aの回転中心である第2回転軸中心CL2とは同一直線上に配置することが好ましい。但し、
図1に示すように、第1回転軸中心CL1と第2回転軸中心CL2とを前後方向にずらして配置してもよい。
図1に示す例では、第1回転軸中心CL1が、第2回転軸中心CL2よりも前方に配置されている。但し、このように配置する場合であっても、
図2に示すように、機体幅方向K2においては、第1回転軸中心CL1と第2回転軸中心CL2とを一致させることが好ましい。
【0034】
図3に示すように、第1ファン25の第1羽根29の回転により生じる回転面と、第2ファン26の第2羽根31の回転により生じる回転面は、互いに平行となっている。第2ファン26の直径(第2羽根31の直径)は、第1ファン25の直径(第1羽根29の直径)よりも小さい。
第2ファン26は、上述した第2方向に回転する。つまり、第2ファン26は、第2気流FL2(機体2内部の空気を機体2外部に排出する気流)を発生させる方向に回転する。尚、第2ファン26の回転方向とは、第2羽根31の第2出力軸30a回りの回転方向である。本実施形態の場合、第2ファン26は、第2方向にのみ回転可能なファンである。言い換えれば、第2ファン26は、第2気流FL2を発生させることができるが、第1気流FL1を発生させることができない。
【0035】
但し、第2ファン26は、第1方向と第2方向のうち少なくとも第2方向に回転可能なファンであればよく、第1方向と第2方向とに回転可能なファンであってもよい。この場合、第2ファン26は、第2方向に回転したときに発生する風量が、第1方向に回転したときに発生する風量よりも大きいものが使用される。
図1、
図2、
図3に示すように、ラジエータ24の上方には、コンデンサ27が配置されている。コンデンサ27は、ラジエータ24と第2ファン26との間に配置されている。具体的には、コンデンサ27は、ラジエータ24の上方であって且つ第2ファン26の下方に配置されている。コンデンサ27は、機体2に搭載されたキャビン3内に温度調整された空気を供給するエアコンの冷媒を凝縮する。
【0036】
図1,
図2に示すように、第1ファン25はダクト34の内部に配置されている。ラジ
エータ24、コンデンサ27、第2ファン26は、ダクト34の上方に配置されている。エンジン22は、ダクト34の下方に配置されている。ダクト34は、空気が流通する通路を構成しており、上部開口35と側部開口36とを有している。上部開口35は、ラジエータ24の一方面側(下面側)を向いて開口している。上部開口35には、第1羽根29の周囲を囲う第1シュラウド32が取り付けられている。側部開口36は、左側の側部開口36Lと右側の側部開口36Rとを含む。側部開口36Lは、機体2の左側壁2Lに形成された左開口部7Lと連通している。側部開口36Rは、機体2の右側壁2Rに形成された右開口部7Rと連通している。左開口部7Lには、当該左開口部7Lをカバーする格子板39Lが装着されている。右開口部7Rには、当該右開口部7Rをカバーする格子板39Rが装着されている。
【0037】
第1ファン25が第1方向に回転することによって第1気流FL1が発生したとき、外気は、後述するファンカバー40に設けられた通気孔40a(
図6参照)から機体2内部に取り入れられ、コンデンサ27とラジエータ24を通過した後、上部開口35からダクト34に入って側部開口36から機体2外部に排出される。これにより、コンデンサ27とラジエータ24が外気によって冷却される。また、エンジンルームER内で温められた空気は、ダクト34の上方であって且つラジエータ24の前方に形成された前部開口37(
図1参照)からダクト34に入り、側部開口36から機体2の外部に排出される。これにより、エンジンルームER内の温度が低下する。
【0038】
図1,
図2,
図5に示すように、第2ファン26の上方には、第2ファン26の上側(コンデンサ27と反対側)を覆うファンカバー40が設けられている。ファンカバー40は、機体2の後上部に設けられたボンネット9に取り付けられている。ファンカバー40は、ボンネット9に形成された通気用の開口9a(
図1,
図4参照)を覆うように取り付けられている。
【0039】
図1に示すように、ファンカバー40は、ボンネット9の上面から上方に突出している。ファンカバー40の上面は、後方に向かうにつれて下方に移行するように傾斜している。
図5に示すように、平面視において、ファンカバー40は、第2ファン26の全体及びコンデンサ27の略全体を覆うように配置されている。従って、ファンカバー40を取り外すことによって、第2ファン26及びコンデンサ27に上方からアクセスしてメンテナンス等を行うことができる。
【0040】
図6に示すように、ファンカバー40は、空気が流通可能な通気孔40aを有している。この通気孔40aは、ボンネット9に形成された通気用の開口9aと連通している。本実施形態の場合、ファンカバー40はパンチングメタルから構成されており、パンチングメタルの開口が通気孔40aを構成している。
図6ではファンカバー40の上面の一部のみに通気孔40aが設けられた状態が描かれているが、通気孔40aはファンカバー40の上面の全域にわたって設けることが好ましい。尚、
図6以外の図では、通気孔40aの図示を省略している。
【0041】
図5,
図6,
図7に示すように、ファンカバー40は、第1部位41と第2部位42とを有している。ファンカバー40は、前方から見た外形が凸形に形成されており、第1部位41は凸形の上部を構成し、第2部位42は凸形の下部を構成している。つまり、第1部位41は、第2部位42よりも上方に形成されている。第1部位41は、ファンカバー40の機体幅方向K2の中央付近に配置されている。第2部位42は、機体幅方向K2において、第1部位41の左側と右側にそれぞれ配置されている。第1部位41と第2部位42とは一体不可分に構成されていてもよいし、第2部位42に対して第1部位41が着脱可能であってもよい。
【0042】
第1部位41は、第1上板41a、第1前板41b、第1後板41c、第1左板41d、第1右板41eを有している。第1上板41aは、平面視にて長方形状である。第1前板41bは、第1上板41aの前縁に沿って機体幅方向K2に延びている。第1後板41cは、第1上板41aの後縁に沿って機体幅方向K2に延びている。第1左板41dは、第1上板41aの左縁に沿って前後方向K1に延びている。第1右板41eは、第1上板41aの右縁に沿って前後方向K1に延びている。第1前板41b、第1後板41c、第
1左板41d、第1右板41eは、上縁が第1上板41aの上面に沿って配置され、下縁は第1上板41aよりも下方に位置している。
【0043】
第1上板41aの上面である第1上面41fは、第1平坦面41gと第1凹凸面41hとを有している。第1平坦面41gは、第1上面41fの機体幅方向K2の中央に所定幅で形成されている。第1凹凸面41hは、第1平坦面41gの左側と右側にそれぞれ形成されている。第1凹凸面41hは、下方に向けて凹んだ第1凹部41iを有している。第1凹部41iは、前後方向K1に延びる溝状に形成されている。第1前板41b及び第1後板41cは、第1凹部41iに対応する位置に第1開口41jを有している。これにより、第1凹部41iに溜まった雨水やダストを第1開口41jから排出することができる。
【0044】
図5に示すように、平面視において、第1上面41fは、第2ファン26の全体(第2モータ30及び第2羽根31)を覆っている。また、第1平坦面41gは、平面視において、第2ファン26の第2モータ30と重なる位置に配置されている。言い換えれば、第2ファン26の全体の上方を覆うように第1上面41fが配置されており、第2モータ30の上方を覆うように第1平坦面41gが配置されている。
【0045】
第2部位42は、第2上板42a、第2前板42b、第2後板42c、第2左板42d、第2右板42eを有している。第2上板42aは、第1上板41aよりも下方に配置されている。第2上板42aは、機体幅方向K2において、第1上板41aの左側に配置された第2上板42aLと、第1上板41aの右側に配置された第2上板42aRと、を含む。つまり、第2上板42aLと第2上板42aRとは機体幅方向K2に間隔をあけて配置されている。第2上板42aL及び第2上板42aRは、それぞれ平面視にて長方形状である。
【0046】
第2前板42bは、第2上板42aLの前縁と第2上板42aRの前縁とを繋ぐように機体幅方向K2に延びている。第2後板42cは、第2上板42aLの後縁と第2上板42aRの後縁とを繋ぐように機体幅方向K2に延びている。第2左板42dは、第2上板42aの左縁に沿って前後方向K1に延びている。第2右板42eは、第2上板42aの右縁に沿って前後方向K1に延びている。第2前板42b、第2後板42c、第2左板42d、第2左板42dは、上縁が第2上板42aの上面に沿って配置され、下縁は第2上板42aよりも下方に位置している。
【0047】
第2上板42aの上面である第2上面42fは、第2平坦面42gと第2凹凸面42hとを有している。第2平坦面42gは、第2上板42aLの第2上面42fの左部に所定幅で形成されている。第2凹凸面42hは、第2上板42aLの第2上面42fの右部と、第2上板42aRの第2上面42fの全体に形成されている。第2凹凸面42hは、下方に向けて凹んだ第2凹部42iを有している。第2凹部42iは、前後方向K1に延びる溝状に形成されている。第2後板42cは、第2凹部42iに対応する位置に第2開口42jを有している。これにより、第2凹部42iに溜まった雨水やダストを第2開口42jから排出することができる。
【0048】
ファンカバー40に第1凹部41i及び第2凹部42iが設けられていることにより、ファンカバー40の表面積が大きくなり、放熱効率を向上させることができる。これにより、エンジンルームER内の熱を外部に効率良く放出することができる。また、ファンカバー40に第1凹部41i及び第2凹部42iが設けられていることにより、ファンカバー40の強度を向上させることができる。そのため、ファンカバー40に外力が作用した場合でも変形が生じにくい。さらに、ファンカバー40の上面にダストが積もるときに、低くなっている第1凹部41i及び第2凹部42iにダストが溜まり易いため、第1凹部41i及び第2凹部42i以外の高い部分にはダストが積もりにくくなる。そのため、ファンカバー40の上面の全域にわたってダストが積もることを抑制できる。
【0049】
図2に示すように、ファンカバー40は、第1部位41の第1上面41fの下方に形成される第1空間S1が、第2部位42の第2上面42fの下方に形成される第2空間S2に比べて、上方に拡がった空間となる。そのため、ファンカバー40の下方に、第2ファン26を配置可能な広い空間(第1空間S1)を確保することができる。つまり、第1上
面41fの下方に形成された広い第1空間S1に第2ファン26を配置することができる。
【0050】
また、第2ファン26の上方に配置される第1上面41fは第1平坦面41gと第1凹凸面41hとを有しているが、第2モータ30の上方には第1凹部41iがない第1平坦面41gが配置される。これにより、第2モータ30と第1上面41fとの干渉を防ぐことができる。
仮に、第1上面41fが第1凹凸面41hのみから構成されて第1平坦面41gを有さない場合、第2モータ30の上方に第1凹部41iが位置することになる。この場合、第2モータ30と第1凹部41iとの干渉を防ぐために、第1凹部41iの深さ(高さ)分だけ第1上面41fを高くする必要があるが、第1上面41fが高くなると、キャビン3内の運転席8に着座した作業者の後方の視界が悪くなるという不都合が生じる。本実施形態の場合、第1上面41fが第1平坦面41gを有することによって、第2モータ30と第1凹部41iとの干渉が無くなる。そのため、第1凹部41iの深さ分だけ第1上面41fを高くする必要がなく、第1上面41fの高さを低くすることができる。その結果、上述した作業者の後方の視界悪化という不都合が生じることがない。
【0051】
図8に示すように、作業機1は、制御装置60を備えている。制御装置60は、作業機1に関する様々な制御を行うもので、CPU、MPU等の半導体、電気電子回路等から構成されており、各種の制御プログラムを記憶した記憶部を備えている。制御装置60は、走行に関する制御や作業に関する制御を行うメインの電子制御ユニット(以下、「メインECU」という)から構成されている。また、制御装置60には、エンジン用の電子制御ユニット(エンジンECU)59がCAN(Controller Area Network)を介して接続されている。
【0052】
制御装置60は、第1センサ61、第2センサ62、回転数センサ63、切り替えスイッチ64、断線検知部65、アクセル66からの信号(検出信号等)を受信可能に構成されている。また、制御装置60は、第1ファン25及び第2ファン26に対して制御信号を送信可能に構成されている。
第1センサ61は、作業装置4を作動させる作動油の温度を検出する作動油温度センサである。第2センサ62は、エンジン22を冷却する冷却水の温度を検出する冷却水温度センサである。第1センサ61及び第2センサ62には、それぞれのセンサの故障を検知する故障検知部が設けられている。故障検知部は、第1センサ61又は第2センサ62の故障を検知した場合、検知信号を制御装置60に送信する。
【0053】
回転数センサ63は、エンジン22の回転数(実回転数)を検出するセンサである。回転数センサ63で検出されたエンジン22の回転数(実回転数)は、制御装置60に入力(送信)される。
切り替えスイッチ64は、第1ファン25の第2方向への回転を許可するオン状態と許可しないオフ状態とに切り替え可能なスイッチである。切り替えスイッチ64の切り替え信号(オン信号又はオフ信号)は、制御装置60に入力(送信)される。切り替えスイッチ64は、手動でオン状態とオフ状態との切り換えが可能であって、オン状態とすると第1ファン25の回転方向が第1方向から第2方向に切り替えられ、オフ状態とすると第1ファン25の回転方向が第1方向に戻る。この回転方向の切り換えは、切り替えスイッチ64からの信号を受信した制御装置60が、後述する方向切替弁73を切り替えることによって行われる。
【0054】
断線検知部65は、第1ファン25や第2ファン26の駆動を制御する制御信号を伝達するハーネスの断線を検知する。断線検知部65によりハーネスの断線が検知されたとき、検知信号が制御装置60に入力(送信)される。
アクセル66は、運転席8の近傍に設けられている。アクセル66は、エンジン22の回転数(指示回転数)を設定する設定部材である。アクセル66は、例えば、アクセルレバー、アクセルペダル、アクセルボリューム、アクセルスライダー等である。アクセル66により設定されたエンジン22の指示回転数(目標回転数)は、制御装置60に入力(送信)される。
【0055】
第1ファン25は、当該第1ファン25の回転を制御する制御弁70と接続されている。制御弁70は、制御装置60からの制御信号によって制御される。制御弁70は、第1ファン25を駆動する第1モータ28と油圧回路を介して接続されており、第1モータ28に供給される作動油の流れを制御する。本実施形態の場合、
図8に示すように、制御弁70は、アンロード弁71、比例弁72、方向切替弁73を含む。但し、制御弁70は、アンロード弁71を含まなくてもよい。制御弁70には、当該制御弁70の故障を検知する第2故障検知部が設けられている。
【0056】
アンロード弁71は、第1ファン25を回転又は停止させるための弁である。アンロード弁71の閉鎖時には、第1ファン25を駆動する第1モータ28へと作動油が供給される。アンロード弁71の開放時には、第1モータ28への作動油の供給が停止される。従って、アンロード弁71の閉鎖時には第1ファン25が回転し、アンロード弁71の開放時には第1ファン25が停止する。
【0057】
比例弁72は、アンロード弁71の閉鎖時において第1ファン25の回転数を変更(増減)するためのリリーフ弁である。比例弁72は、供給される電流値に対応して開度が変更され、開度に応じて第1モータ28に供給される作動油の量が増減し、第1ファン25の回転数が増減する。具体的には、電流値が大きいと開度が大きくなり、第1モータ28に供給される作動油の量が減少し、第1ファン25の回転数が減少する。電流値が小さいと開度が小さくなり、第1モータ28に供給される作動油の量が増加し、第1ファン25の回転数が増加する。比例弁72が全開状態のとき、第1ファン25の回転数は最低回転数となる。比例弁72が全閉状態のとき、第1ファン25の回転数は最高回転数となる。
【0058】
方向切替弁73は、二方向切替弁であって、第1モータ28に供給する作動油の流れ方向を一方向と他方向とに切り替えることができる。作動油の流れ方向が一方向であるとき、第1モータ28が一方向に回転し、第1ファン25は第1方向に回転する。作動油の流れ方向が他方向であるとき、第1モータ28が他方向に回転し、第1ファン25は第2方向に回転する。
【0059】
図8に示すように、第2ファン26は、当該第2ファン26の回転を制御する回転制御部75を有している。回転制御部75は、インバータ等を含む電気回路から構成されている。第2ファン26は、制御装置60からの制御信号を受けた回転制御部75によって駆動及び停止のタイミング等が制御される。制御装置60は、第1ファン25及び第2ファン26の駆動を制御する。
【0060】
図9は、制御装置60により制御された第1ファン25、第2ファン26、方向切替弁73の動作パターンの一例を示す図であり、横軸は時間軸である。
図9に示すように、制御装置60は、第1ファン25が第1方向に回転しているとき(期間Tα)は第2ファン26の駆動を停止し、第1ファン25が第2方向に回転しているとき(期間Tβ)は第2ファン26を駆動させる。第2ファン26は、駆動時においては第2方向に回転する。
【0061】
第1ファン25の回転方向の変更は、制御装置60が方向切替弁73を切り替えることにより行われる。第2ファン26の駆動と停止は、制御装置60が回転制御部75を制御することにより行われる。
第2ファン26は、駆動が停止しているとき、第2ファン26を駆動する第2モータの回転が停止している。このとき、第2ファン26の羽根は、全く回転しないようにしてもよいし、第1ファン25の第1方向の回転により生じる気流によって第1ファン25と同じ回転方向に連れ回りをするようにしてもよい。
【0062】
図9に示すように、第1ファン25が第1方向に回転しているとき(期間Tα)、機体2内部に外気を取り入れる第1気流FL1が発生し、ラジエータ24及びコンデンサ27が冷却される。第1ファン25が第2方向に回転しているとき(期間Tβ)、機体2内部の空気を機体2外部に排出する第2気流FL2が発生する。この第2気流FL2によって、ラジエータ24に付着したダストやボンネット9上に堆積したダストを吹き飛ばすことができる。
【0063】
しかし、第1ファン25の第2方向の回転のみでは、ダストを吹き飛ばすために十分な
風量が得られない場合がある。特に、第1ファン25の中心付近(回転軸に近い部分)で発生する風量は、外周付近(回転軸から離れた部分)で発生する風量に比べて小さいため、当該中心付近に対応する部分ではダストを十分に吹き飛ばすことができない場合がある。
【0064】
そのため、制御装置60は、
図9に示すように、第1ファン25が第2方向に回転しているとき(期間Tβ)は、第2ファン26を駆動させて第2方向に回転させる。これによって、第2ファン26からも機体2内部の空気を機体2外部に排出する第2気流FL2が発生する。この第2ファン26の回転により発生する風量によって、第1ファン25の回転のみでは不足する風量を補うことができる。つまり、第2ファン26の回転によって、機体2内部の空気を機体2外部に排出する第2気流FL2の風量が増加する。そのため、第1ファン25の回転のみでは吹き飛ばすことができないダストを吹き飛ばすことができる。
【0065】
また、第1ファン25の回転軸中心と第2ファン26の回転軸中心とが同一直線上に配置され、第2ファン26の直径が第1ファン25の直径よりも小さいことによって、第1ファン25の中心付近に対応する部分に第2ファン26の外周付近が位置する。そのため、第2ファン26において大きい風量が得られる部分(外周付近)を、第1ファン25の風量が小さくなる部分(中心付近)に対応させることができる。これにより、第1ファン25の回転のみでは吹き飛ばすことができないダストをより確実に吹き飛ばすことができる。
【0066】
また、上述したように、第1ファン25は、第1方向に回転させたときの風量が第2方向に回転させたときの風量よりも大きい。これにより、第1ファン25を第1方向に回転させた場合、第1ファン25の風量のみで冷却効果を十分に得ることができる。一方、第1ファン25を第2方向に回転させた場合、第2ファン26も第2方向に回転するため、ダストの吹き飛ばしのための風量が不足することはない。つまり、ラジエータ24等の冷却効果とダストを吹き飛ばす効果の両方を確実に得ることができる。
【0067】
図10は、制御装置60により制御された第1ファン25、第2ファン26、方向切替弁73の動作パターンの別の一例を示す図であり、横軸は時間軸である。
先ず、制御装置60による第1ファン25の動作の制御について説明する。
図10に示すように、制御装置60は、第2方向の回転数を増加させる増速動作aと、この増速動作aにより増加した第2方向の回転数を低下させる減速動作bと、を含む動作プロセスP1を、所定期間T1内に繰り返すように第1ファン25を駆動させる。動作プロセスP1を所定期間T1内に繰り返すとは、動作プロセスP1が所定期間T1内に複数回行われることを意味する。
図10に示す例では、動作プロセスP1が所定期間T1内に3回行われているが、動作プロセスP1の回数は2回でもよいし4回以上であってもよい。
【0068】
増速動作aと減速動作bは、比例弁72に供給される電流値を増減することによって行われる。増速動作aは、比例弁72に供給される電流値を減少させて比例弁72の開度を大きくすることにより行われる。減速動作bは、比例弁72に供給される電流値を増加させて比例弁72の開度を小さくすることにより行われる。つまり、比例弁72に供給される電流値の変化は、第1ファン25の回転数の変化と逆となる。
【0069】
比例弁72に供給される電流値が最大であるとき、第1ファン25は最低回転数となる。この最低回転数は、0に近い低い回転数であるが、0であってもよい。比例弁72に供給される電流値が最小であるとき、第1ファン25は最高回転数となる。
図10において、符号cで示す部分は、第1ファン25の回転数が最高回転数である部分である。符号dで示す部分は第1ファン25の回転数が最低回転数である部分である。
【0070】
図10の左部に示すように、制御装置60は、動作プロセスP1の繰り返し開始前に、第1ファン25の回転方向を第1方向から第2方向に切り替える第1切り替え動作を行う。具体的には、制御装置60は、先ず、第1ファン25を第1方向に最低回転数で回転させる。次いで、第1ファン25の回転方向を第1方向から第2方向に切り替える第1切り替え動作を行う。第1切り替え動作は、方向切替弁73をOFF状態からON状態に切り
替えることによって行われる。第1切り替え動作は、第1ファン25の回転数が最低回転数であるときに行われる。
【0071】
第1切り替え動作が行われた後、即ち第1ファン25が第2方向に最低回転数で回転を開始した後、上記動作プロセスP1の最初の増速動作aが行われ、当該増速動作aを含む動作プロセスP1が所定期間T1内に繰り返される。第1ファン25は、第1切り替え動作によって回転方向が第1方向から第2方向に切り替えられた後、第2方向の回転を所定期間T1の間、継続する。
【0072】
図10の右部に示すように、制御装置60は、動作プロセスP1の繰り返し終了後に、第1ファン25の回転方向を第2方向から第1方向に切り替える第2切り替え動作を行う。第2切り替え動作は、方向切替弁73をON状態からOFF状態に切り替えることによって行われる。第2切り替え動作は、上記動作プロセスP1の最後の減速動作bが行われた後、第1ファン25の回転数が最低回転数であるときに行われる。
【0073】
上述したように、第1ファン25が、増速動作aと減速動作bとを含む動作プロセスP1を所定期間T1内に繰り返すことによって、長時間にわたってダストを確実に吹き飛ばすことができる。第1ファン25の第2方向の回転を一定の高回転数で長時間継続した場合、風が吹き出すボンネット上に負圧(吸い込み圧)が生じてダストを吹き飛ばすことができなくなる場合がある。しかし、上述したように、第1ファン25が第2方向で回転しているときに回転数の増減を繰り返すことによって、風が吹き出すボンネット上に負圧(吸い込み圧)が生じることが防がれる。そのため、長時間にわたってダストを確実に吹き飛ばすことができる。
【0074】
図10に示すように、制御装置60は、増速動作aにて第2方向の回転数を最高回転数まで増加させ、減速動作bにて第2方向の回転数を最低回転数まで低下させる。これによって、上述した負圧の発生をより確実に防ぐことができるとともに、最低回転数から最高回転数への回転数の増加に伴って大きく増加する風量の勢いによってダストを確実に吹き飛ばすことができる。
【0075】
また、制御装置60は、動作プロセスP1において、最高回転数で回転する時間Tcが最低回転数で回転する時間Tdよりも長くなる(Tc>Td)ように、第1ファン25を駆動させる。これによって、ダストを吹き飛ばす第2気流FL2の風量が大きい時間を長く得ることができ、より確実にダストを吹き飛ばすことができる。
また、制御装置60は、動作プロセスP1において、最低回転数で回転する時間Tdが最高回転数で回転する時間Tcよりも長くなる(Td>Tc)ように、第1ファン25を駆動させることもできる。この場合、第1ファン25の回転数が最低回転数から最高回転数に上昇するときの風量の勢いが増すことによって、ダストを効果的に吹き飛ばすことができる。
【0076】
また、制御装置60は、動作プロセスP1において、最高回転数で回転する時間Tcが最低回転数で回転する時間Tdと同じとなる(Tc=Td)ように、第1ファン25を駆動させてもよい。
次に、制御装置60による第2ファン26の動作の制御について説明する。
図10に示すように、制御装置60は、第1ファン25の回転方向を第1方向から第2方向に切り替える第1切り替え動作と同時に、第2ファン26の駆動を開始させる。そして、制御装置60は、上記動作プロセスP1が繰り返されている期間(所定期間T1)中、第2ファン26の駆動を継続する。従って、所定期間T1は、第2ファン26が駆動を継続する期間ということもできる。第2ファン26は、所定期間T1中、駆動を継続して第2方向の回転を継続する。さらに、制御装置60は、第1ファン25の回転方向を第2方向から第1方向に切り替える第2切り替え動作と同時に、第2ファン26の駆動を停止させる。
【0077】
このように、動作プロセスP1が繰り返されている所定期間T1中、第2ファン26の駆動を継続することによって、所定期間T1の間、第1ファン25の第2方向の回転によって生じる風量が不足したとき、この風量不足を第2ファン26の第2方向の回転によって生じる風量によって補うことができる。例えば、第1ファン25が最低回転数にあると
き、第1ファン25の第2方向の回転ではダストを吹き飛ばすために十分な風量に対して不足する風量しか得られないが、この風量不足を第2ファン26の第2方向の回転で生じる風量によって補うことができる。そのため、動作プロセスP1が繰り返されている所定期間T1中、ダストを吹き飛ばすために十分な風量を継続して得ることができる。
【0078】
図10に示す例では、第1切り替え動作と同時に第2ファン26の駆動を開始させているが、第1切り替え動作と時間をずらせて第2ファン26の駆動を開始させてもよい。具体的には、第1切り替え動作の前に第2ファン26の駆動を開始させてもよい。この場合、第1ファン25に先んじて第2ファン26により第2気流FL2を発生させることができるため、ダストを迅速に吹き飛ばすことができる。また、第1切り替え動作の後に第2ファン26の駆動を開始させてもよい。
【0079】
また、第2切り替え動作と同時に第2ファン26の駆動を停止させているが、第2切り替え動作と時間をずらせて第2ファン26の駆動を停止させてもよい。具体的には、第2切り替え動作の後に第2ファン26の駆動を停止させてもよい。この場合、第2ファン26は、第2切り替え動作の後、しばらくの間(所定の時間)駆動を継続させ、その後に停止させる。これにより、吹き飛ばして空中に舞ったダストが降下してきたときに吹き飛ばすことができ、一旦吹き飛ばしたダストが再びボンネット9上に堆積することを防止できる。また、第2切り替え動作の前に第2ファン26の駆動を停止させてもよい。
【0080】
また、
図10に示す例では、所定期間T1の間、第2ファン26の第2方向の回転の回転数は一定であるが、第2ファン26の第2方向の回転の回転数を増減させてもよい。第2ファン26の第2方向の回転の回転数を増減させる場合、第1ファン25が低回転数であるときに第2ファン26を高回転数とし、第1ファン25が高回転数であるときに第2ファン26を低回転数とすることが好ましい。これにより、所定期間T1の間、第2気流FL2の大きさを一定とすることができる。
【0081】
図11は、制御装置60により制御された第1ファン25、第2ファン26、方向切替弁73の動作パターンの更に別の一例を示す図であり、横軸は時間軸である。
図11に示すように、制御装置60は、第1ファン25に、第2方向の回転を開始して所定時間T2経過後に終了させる基本動作(実線参照)と、所定時間T2内に中止条件が満たされた場合に第2方向の回転を中止させるキャンセル動作(破線参照)とを実行させることが可能である。
【0082】
先ず、制御装置60による第1ファン25の動作の制御について説明する。
制御装置60が第1ファン25に実行させる基本動作は、少なくとも第2方向の回転を開始して所定時間経過後に終了させる動作を含んでいればよい。基本動作は、
図11に実線で示す動作の他に、
図10に示した所定期間T1に行われる動作(増速動作aと減速動作bとを含む動作プロセスP1を所定期間T1内に繰り返す動作)を含む動作であってもよいし、他の動作であってもよい。
【0083】
以下、基本動作が
図11に実線で示す動作である場合を例に挙げて説明する。この基本動作では、先ず、第1ファン25を駆動させて、第1方向に最低回転数で回転させる。次いで、第1ファン25が最低回転数で回転しているときに、方向切替弁73を切り替えることによって、第1ファン25の回転方向を第1方向から第2方向に変更する。続いて、第1ファン25の第2方向の回転数を最高回転数まで増加させる増速動作aを行う。そして、この最高回転数での第2方向の回転を継続した後、第2方向の回転数を減少させる減速動作bを行う。第1ファン25の第2方向の回転数が最低回転数となった後、方向切替弁73を切り替えることによって、第1ファン25の回転方向を第2方向から第1方向に変更し、第2方向の回転を終了させる。
【0084】
この基本動作においては、第1ファン25の回転方向が第1方向から第2方向に変更された時t-1から、第1ファン25の回転方向が第2方向から第1方向に変更された時t-2までの時間が、所定時間T2となる。
制御装置60は、所定時間T2内に中止条件が満たされた場合に、第1ファン25の第2方向の回転を中止させるキャンセル動作を実行させる。キャンセル動作は、制御装置60が第1ファン25を制御する制御弁70にキャンセル信号を送信することによって実行
される。
図11において、時間t-3は、制御装置60がキャンセル信号を送信した時である。中止条件については後述する。
【0085】
キャンセル動作は、第1ファン25の第2方向の回転の回転数を徐々に低下させた後、第1方向の回転に切り替える動作(以下、「第1キャンセル動作」という)であってもよいし、第1ファン25の第2方向の回転の回転数を最低回転数まで低下させた後、所定時間経過してから回転を停止させる動作(以下、「第2キャンセル動作」という)であってもよい。つまり、キャンセル動作によって実行される「第1ファン25の第2方向の回転の中止」には、第1キャンセル動作によって「第1ファン25の回転方向が第2方向から第1方向に切り替わる場合」と、第2キャンセル動作によって「第1ファン25の回転が停止される(回転数が0になる)場合」の2つの場合が含まれる。
【0086】
図11を参照して第1キャンセル動作と第2キャンセル動作について説明する。
先ず、制御装置60が第1キャンセル動作を第1ファン25に実行させる場合について説明する。この場合、時間t-3において制御装置60が制御弁70にキャンセル信号を送信すると、第1ファン25の第2方向の回転の回転数が徐々に低下する(
図11の矢印e部分参照)。詳しくは、時間t-3において制御装置60が制御弁70にキャンセル信号を送信すると、比例弁72に供給される電流値が徐々に増加して、比例弁72の開度が徐々に増加する。これにより、第1ファン25を駆動する油圧モータに供給される作動油の量が徐々に減少し、第1ファン25の第2方向の回転の回転数が徐々に低下する。第1ファン25の第2方向の回転の回転数が最低回転数となった後、方向切替弁73がON状態からOFF状態に切り替えられ(矢印g部分参照)、第1ファン25の回転方向が第2方向から第1方向に変更される。その後、制御装置60は、第1ファン25の第1方向の回転を継続させ、必要に応じて第1ファン25の第1方向の回転数を増加させる(矢印f1部分参照)。
【0087】
次に、制御装置60が第2キャンセル動作を第1ファン25に実行させる場合について説明する。この場合、時間t-3において制御装置60が制御弁70にキャンセル信号を送信すると、上記第1キャンセル動作の場合と同様の作用によって、第1ファン25の第2方向の回転の回転数が徐々に低下する(
図11の矢印e部分参照)。第1ファン25の第2方向の回転の回転数が最低回転数となった後、所定時間T3が経過してから第1ファン25の第2方向の回転が停止される(
図11の矢印f2部分参照)。この場合、方向切替弁73のON状態からOFF状態に切り替え(矢印g部分)は行われず、第1ファン25は第2方向の回転数を減少させて回転を停止する。第1ファン25の第2方向の回転の停止は、アンロード弁71の開放により行うことができる。アンロード弁71の開放により、第1ファン25を駆動する油圧モータへの作動油の供給が停止され、第1ファン25の第2方向の回転が停止される。
【0088】
次に、制御装置60による第2ファン26の動作の制御について説明する。
図11に示すように、制御装置60は、第1ファン25が第2方向の回転を開始したとき、第2ファン26の駆動を開始させる。また、制御装置60は、第1ファン25が第2方向の回転を終了したとき、第2ファン26の駆動を停止させる。第2ファン26は、第1ファン25が第2方向の回転を開始して所定時間T2経過後に終了するまでの間、継続して第2方向に回転する。
【0089】
制御装置60が第1ファン25に基本動作を実行させているとき、第2ファン26の駆動パターンは、
図11の実線で示すパターンとなる。この場合、第1ファン25の第2方向の回転数が最低回転数となった後、方向切替弁73の切り替えと同時に又は切り換えの後、第2ファン26は駆動を停止する。
制御装置60が第1ファン25にキャンセル動作を実行させるとき、第2ファン26の駆動パターンは、
図11の仮想線で示すパターンとなる。第1キャンセル動作が実行された場合、第1ファン25の第2方向の回転の回転数が徐々に低下して最低回転数となった後、第2ファン26は駆動を停止する。
【0090】
以下、上述したキャンセル動作が実行される中止条件の例について説明する。
中止条件の第1例は、第1センサ61又は第2センサ62で検出された温度が予め設定
された所定温度範囲を外れたときである。「所定温度範囲を外れたとき」とは、所定温度範囲の上限温度を上回ったとき又は所定温度範囲の下限温度を下回ったときである。制御装置60は、第1センサ61又は第2センサ62で検出された温度が所定温度範囲を外れたときに中止条件が満たされたと判断して第1ファン25にキャンセル動作を実行させる。制御装置60は、第1センサ61又は第2センサ62で検出された温度が所定温度範囲を外れたとき、第1ファン25に第1キャンセル動作と第2キャンセル動作のいずれか一方のキャンセル動作を実行させる。いずれのキャンセル動作を実行させるかは、第1センサ61で検出された温度が所定温度範囲の上限温度を上回った場合、第1センサ61で検出された温度が所定温度範囲の下限温度を下回った場合、第2センサ62で検出された温度が所定温度範囲の上限温度を上回った場合、第2センサ62で検出された温度が所定温度範囲の上限温度を上回った場合に場合分けして予め設定することができる。
【0091】
例えば、第1センサ61又は第2センサ62で検出された温度が所定温度範囲の上限温度を上回ったとき、第1キャンセル動作によって、第1ファン25の回転方向を第2方向から第1方向に変更することにより、第1ファン25により機体2内部に外気を取り入れる第1気流FL1が発生するため、作業装置4を作動させる作動油の温度又はエンジン22を冷却する冷却水の温度を低下させることができる。これにより、作業機1に搭載された各種機器のオーバーヒート等を防ぐことができる。
【0092】
例えば、第1センサ61で検出された温度が所定温度範囲の下限温度を下回ったとき、第2キャンセル動作によって第1ファン25の回転を中止することにより、油圧回路に発生する異常な圧力上昇等を防ぐことができ、油圧回路に発生するサージ圧が規定の圧力を超えること等を防止できる。
中止条件の第2例は、エンジン22が停止したときである。この場合、制御装置60は、エンジン22が停止したときに中止条件が満たされたと判断して第1ファン25にキャンセル動作を実行させる。エンジン22がエンジンストール等によって停止したときは、第2キャンセル動作により第1ファン25の回転が停止される。この場合、制御装置60は、第1ファン25の回転数を最低回転数まで低下させた後、第1ファン25の回転を停止させる。
【0093】
中止条件の第3例は、切り替えスイッチ64がオフ状態に切り替えられたときである。この場合、制御装置60は、切り替えスイッチ64がオフ状態に切り替えられたときに中止条件が満たされたと判断して第1ファン25にキャンセル動作を実行させる。これにより、作業機1に何らかの異常が発生したとき等に切り替えスイッチ64をオフ状態に切り替えることによって、第1ファン25の第2方向の回転を中止することができる。
【0094】
この第3例によるキャンセル動作は、例えば、第1ファン25を第2方向に回転している最中に、作業機1の近傍に人が接近した場合等に実行される。第1ファン25を第2方向に回転させると、ボンネット9上のダストが吹き飛ばされて接近した人に向けて飛散する可能性があるが、切り替えスイッチ64をオフ状態に切り替えて第2方向の回転を中止することにより、ダストが人に向けて飛散することを防ぐことができる。
【0095】
また、第3例によるキャンセル動作は、作業機1が作業装置4によって馬力を必要とする重作業を行う場合にも行うことができる。作業機1が重作業を行う場合に、切り替えスイッチ64をオフ状態に切り替えて第1ファン25の回転を停止することにより、作業装置4による重作業を行いやすくなる。
中止条件の第4例は、第1ファン25又は第2ファン26の駆動に関係する部品の故障が検知部で検知されたときである。検知部は、例えば、ハーネスの断線を検知する断線検知部65や制御弁70の故障を検知する第2故障検知部であるが、これらに限定されない。第4例の一例としては、断線検知部65で断線が検知されたときである。この場合、制御装置60は、断線検知部で断線が検知されたときに中止条件が満たされたと判断して第1ファン25にキャンセル動作を実行させる。このキャンセル動作によって、第1ファン25の回転を停止させることにより、断線によって引き起こされる第1ファン25の異常回転を防ぐことができる。第4例の他の一例としては、第2故障検知部が第1ファン25の回転を制御する制御弁70の故障(ソレノイドの故障等)を検知したときである。この
場合、制御装置60は、第2故障検知部が制御弁70の故障を検知したときに中止条件が満たされたと判断して第1ファン25にキャンセル動作を実行させる。このキャンセル動作によって、第1ファン25の回転を停止させることにより、制御弁70の故障によって引き起こされる第1ファン25の異常回転を防ぐことができる。
【0096】
中止条件の第5例は、排出ガス浄化装置23のフィルタを再生するフィルタ再生処理部が粒子状物質を燃焼させるフィルタ再生処理を行っているときである。この場合、制御装置60は、フィルタ再生処理部が粒子状物質を燃焼させるフィルタ再生処理を行っているときに中止条件が満たされたと判断して第1ファン25にキャンセル動作を実行させる。このキャンセル動作によって、第1ファン25の回転方向を第2方向から第1方向に変更することにより、高温の空気が機体2の外部に排出されることを防止できる。また、第1ファン25により機体2内部に外気を取り入れる第1気流FL1が発生するため、機体2内部の温度を低下させることができる。
【0097】
中止条件の第6例は、アクセル(設定部材)66により設定された回転数である指示回転数から回転数センサ63により検出された回転数である実回転数を差し引いた差分値(ドロップ回転数)が予め定められた閾値以上となったときである。この場合、制御装置60は、ドロップ回転数が閾値以上となったとき(即ち、エンジンドロップが大きく発生したとき)に中止条件が満たされたと判断して第1ファン25にキャンセル動作を実行させる。このキャンセル動作によって、第1ファン25の回転を停止させることにより、エンジンストールを防止することができる。
【0098】
中止条件の第7例は、第1センサ61及び第2センサ62に設けられた故障検知部が、第1センサ61又は第2センサ62の故障を検知したときである。この場合、制御装置60は、故障検知部が故障を検知したときに中止条件が満たされたと判断して第1ファン25にキャンセル動作を実行させる。このキャンセル動作によって、第1ファン25の回転方向を第2方向から第1方向に変更する、或いは、第1ファン25の回転を中止することにより、第1センサ61又は第2センサ62の故障に起因して、作動油や冷却水の温度が過剰に上昇したり油圧回路に異常な圧力上昇等が発生したりすることを防止できる。
【0099】
中止条件の第8例は、エアコンの駆動時である。この場合、制御装置60は、エアコンの駆動時に中止条件が満たされたと判断して第1ファン25にキャンセル動作を実行させる。このキャンセル動作によって、第1ファン25の回転を停止することにより、例えば、作業機1が重作業を行う場合に作業を行いやすくなる。
尚、上述した中止条件は一例であって、中止条件は上述した条件には限定されない。例えば、外気温センサで検出された温度が予め設定された所定温度範囲を外れたときを中止条件として、キャンセル動作を実行するように構成してもよい。また、上述した中止条件と当該中止条件を満たしたことに伴うキャンセル動作の組み合わせも一例であって、他の組み合わせ(例えば、上述した或る中止条件において、第1キャンセル動作の代わりに第2キャンセル動作を実行する、又は、第2キャンセル動作の代わりに第1キャンセル動作を実行する等)を必要に応じて採用してもよい。
【0100】
上述した
図10,
図11に基づいて説明した制御方法は、第1ファン25がラジエータ24の一方面側(下面側)に配置されたファンであり、第2ファン26がラジエータ24の他方面側(上面側)に配置されたファンである場合(
図1,
図3参照)に好適に使用されるが、第1ファン25がラジエータ24の他方面側(上面側)に配置されたファンであり、第2ファン26がラジエータ24の一方面側(下面側)に配置されたファンであってもよい。
【0101】
例えば、
図10に基づいて説明した制御方法において、制御装置60は、ラジエータ24の一方面側(下面側)に配置されたファンとラジエータ24の他方面側(上面側)に配置されたファンのうち、一方又は両方(少なくともいずれか一方)のファンに上記動作プロセスP1を行わせることができる。また、いずれか一方のファンについて動作プロセスP1が繰り返されている所定期間T1中、他方のファンの駆動(第2方向の回転)を継続させる制御を行うことができる。
【0102】
また、
図10,
図11に基づいて説明した制御方法は、第1ファン25が油圧ファンで
あって第2ファン26が電動ファンである場合に好適に使用されるが、第1ファン25が電動ファンであって第2ファン26が油圧ファンであってもよい。また、第1ファン25と第2ファン26の両方が油圧ファン又は電動ファンであってもよい。
また、上記実施形態においては、ラジエータ24の一方面側を下面側、ラジエータ24の他方面側を上面側として説明したが、ラジエータ24の一方面側が上面側、ラジエータ24の他方面側が下面側であるとして読み替えてもよい。
【0103】
作業機1は、機体2と、機体2に搭載されたエンジン22と、エンジン22に供給される冷却水を冷却するラジエータ24と、ラジエータ24の一方面側に配置され、機体2内部に外気を取り入れる気流を発生させる第1方向と、機体2内部の空気を外部に排出する気流を発生させる第2方向とに回転可能な第1ファン25と、ラジエータの他方面側に配置され、第2方向に回転する第2ファン26と、を備えている。
【0104】
この構成によれば、第2ファン26の第2方向の回転により発生する風量によって、第1ファン25の第2方向の回転のみでは不足する風量(例えば、第1ファン25の中央付近(回転軸付近)において不足する風量)を補うことができるため、機体2外部に向けてダストを吹き飛ばすために十分な風量を得ることができる。
また、作業機1は、第1ファン25及び第2ファン26の駆動を制御する制御装置60を備え、制御装置60は、第1ファン25が第1方向に回転しているとき第2ファン26の駆動を停止し、第1ファン25が第2方向に回転しているとき第2ファン26を駆動させる。
【0105】
この構成によれば、第1ファン25が第1方向に回転しているとき第2ファン26の駆動を停止することによって、第1ファン25の第1方向の回転によって生じる気流を第2ファン26が阻害することがない。また、第1ファン25が第2方向に回転しているとき第2ファン26を駆動させることによって、第1ファン25の第2方向の回転のみでは不足する風量を補うことができる。
【0106】
また、作業機1は、機体2に搭載されるエアコンの冷媒を凝縮するコンデンサ27を備え、コンデンサ27は、ラジエータ24と第2ファン26との間に配置されている。
この構成によれば、第1ファン25の第1方向の回転により生じる気流によって、ラジエータ24及びコンデンサ27を冷却することができる。また、第1ファン25及び第2ファン26の第2方向の回転により生じる気流によって、ラジエータ24及びコンデンサ27に付着したダストを吹き飛ばすことができる。
【0107】
また、第1ファン25は、第1方向に回転したときの風量が第2方向に回転したときの風量よりも大きい。
この構成によれば、第1ファン25を第1方向に回転させた場合、第1ファン25の風量のみで冷却効果を十分に得ることができる。第1ファン25を第2方向に回転させた場合、第2ファン26も第2方向に回転するため、ダストの吹き飛ばしのための風量が不足することはない。従って、ラジエータ24等の冷却効果とダストを吹き飛ばす効果の両方を確実に得ることができる。
【0108】
また、第1ファン25の回転軸中心と第2ファン26の回転軸中心とが同一直線上に配置されている。
この構成によれば、第1ファン25と第2ファン26とを第2方向に回転させた場合、第1ファン25の回転によって生じる気流と第2ファン26の回転によって生じる気流とが重なるため、ダストを吹き飛ばすために十分な風量を得ることができる。
【0109】
また、第2ファン26の直径は、第1ファン25の直径よりも小さい。
この構成によれば、第2ファン26において大きい風量が得られる部分(外周付近)を、第1ファン25の風量が小さくなる部分(中心付近)に対応させることができるため、第1ファン25の回転のみでは吹き飛ばすことができないダストを第2ファンの回転によって確実に吹き飛ばすことができる。
【0110】
また、第1ファン25は、油圧により駆動する油圧ファンであり、第2ファン26は、電気により駆動する電動ファンである。
この構成によれば、長時間にわたって冷却用に駆動される第1ファン25を油圧ファン
とし、ダスト吹き飛ばし時にのみ駆動される第2ファン26を電動ファンとすることにより、作業機1に搭載するバッテリの容量を小さくすることができる。
【0111】
また、作業機1は、第2ファン26のコンデンサ27と反対側である上側を覆うファンカバー40を備え、第2ファン26は、下側に羽根(第2羽根31)が配置され、上側に羽根(第2羽根31)を回転させるモータ(第2モータ30)が配置され、ファンカバー40の上面は、平坦面(第1平坦面41g)と凹凸面(第1凹凸面41h)とを有し、平坦面(第1平坦面41g)は、平面視においてモータ(第2モータ30)と重なる位置に配置されている。
【0112】
この構成によれば、ファンカバー40が凹凸面(第1凹凸面41h)を有することによって、ファンカバー40の表面積が増加して放熱効果が向上し、またファンカバー40の強度が向上し、さらにファンカバー40の上面全域にわたってダストが積もることを抑制できる。加えて、平坦面(第1平坦面41g)が平面視においてモータ(第2モータ30)と重なる位置に配置されているため、第2モータ30とファンカバー40との干渉を防ぐことができるとともに、第2モータ30の上方に第1凹凸面41hを配置した場合に比べてファンカバー40の上面の高さを低くすることができ、作業者の後方視界がファンカバー40によって遮られることを防止できる。
【0113】
また、作業機1は、機体2と、機体2に搭載されたエンジン22と、エンジン22に供給される冷却水を冷却するラジエータ24と、ラジエータ24の一方面側に配置され、機体2内部に外気を取り入れる気流を発生させる第1方向と、機体2内部の空気を外部に排出する気流を発生させる第2方向とに回転可能な第1ファン25と、第1ファン25の駆動を制御する制御装置60と、を備え、制御装置60は、第2方向の回転数を増加させる増速動作と、増速動作により増加した第2方向の回転数を低下させる減速動作と、を含む動作プロセスP1を、所定期間T1内に繰り返すように第1ファン25を駆動させる。
【0114】
この構成によれば、第1ファン25が第2方向で回転しているときに回転数の増減を繰り返すことによって、第1ファン25の第2方向の回転によって風が吹き出す部分(ボンネット上)に負圧(吸い込み圧)が生じることが防がれる。そのため、長時間にわたってダストを確実に吹き飛ばすことができる。
また、制御装置60は、増速動作にて第2方向の回転数を最高回転数まで増加させ、減速動作にて第2方向の回転数を最低回転数まで低下させる。
【0115】
この構成によれば、上述した負圧の発生をより確実に防ぐことができるとともに、最低回転数から最高回転数への回転数の増加に伴って大きく増加する風量の勢いによってダストを確実に吹き飛ばすことができる。
また、制御装置60は、動作プロセスP1において、最高回転数で回転する時間Tcが最低回転数で回転する時間Tdよりも長くなる(Tc>Td)ように、第1ファン25を駆動させる。
【0116】
この構成によれば、第1ファン25が第2方向に最高回転数で回転する時間Tcが長くなることにより、ダストを吹き飛ばす方向の気流の風量が大きい時間を長く得ることができ、より確実にダストを吹き飛ばすことができる。
また、作業機1は、ラジエータ24の他方面側に配置され、第2方向に回転する第2ファン26を備え、制御装置60は、動作プロセスP1が繰り返されている所定期間T1中、第2ファン26の駆動を継続させる。
【0117】
この構成によれば、動作プロセスP1が繰り返されている所定期間T1中、第2ファン26が継続的に駆動することによって、所定期間T1の間は常に(第1ファン25が最低回転数で回転しているときでも)ダストを吹き飛ばすために十分な風量を確保することができる。
また、制御装置60は、動作プロセスP1の繰り返し開始前に回転方向を第1方向から第2方向に切り替える第1切り替え動作を行い、動作プロセスP1の繰り返し終了後に回転方向を第2方向から第1方向に切り替える第2切り替え動作を行うように、第1ファン25を駆動させる。
【0118】
この構成によれば、動作プロセスP1の繰り返しの前後において、第1ファン25を第
1方向に回転させることができるため、ラジエータ24等の冷却効果を確実に得ることができる。
また、制御装置60は、第1ファン25の回転数が最低回転数にあるときに第1切り替え動作及び第2切り替え動作を行う。
【0119】
この構成によれば、第1ファン25の回転方向の第1方向から第2方向への切り替え動作及び第2方向から第1方向への切り替え動作を円滑に行うことができる。
また、制御装置60は、第1切り替え動作と同時に第2ファン26の駆動を開始させる。
この構成によれば、第1ファン25が第2方向に切り替えられると同時に第2ファン26が第2方向の回転を開始するため、ダストを吹き飛ばすために十分な風量を速やかに得ることができる。
【0120】
また、制御装置60は、第2切り替え動作と同時に第2ファン26の駆動を停止させる。
この構成によれば、第1ファン25が第1方向に切り替えられると同時に第2ファン26が第2方向の回転を停止するため、第1ファン25の第1方向の回転によって生じる気流の効果(冷却効果)が、第2ファン26の回転によって生じる気流によって減じられることが防がれる。
【0121】
また、制御装置60は、第2切り替え動作の後に第2ファン26の駆動を停止させることができる。
この構成によれば、第2切り替え動作と同時に第2ファン26を停止するのではなく、第2切り替え動作の後、暫くの間、第2ファン26を駆動してから停止することによって、吹き飛ばしたダストが降下して再びボンネット等の上に堆積することを防止できる。
【0122】
また、作業機1は、機体2と、機体2に搭載されたエンジン22と、エンジン22に供給される冷却水を冷却するラジエータ24と、ラジエータ24の一方面側に配置され、機体2内部に外気を取り入れる気流を発生させる第1方向と、機体2内部の空気を外部に排出する気流を発生させる第2方向とに回転可能なファン(第1ファン)25と、ファン25の駆動を制御する制御装置60と、を備え、制御装置60は、第2方向の回転を開始して所定時間T2経過後に終了させる基本動作と、所定時間T2内に中止条件が満たされた場合に第2方向の回転を中止させるキャンセル動作とをファン25に実行させることが可能である。
【0123】
この構成によれば、ラジエータ24等の冷却用のファン25を冷却時とは逆方向(第2方向)に回転させている最中に、必要に応じて逆方向の回転を中止することができる。詳しくは、ファン25を逆方向に回転させている基本動作の実行中に、逆方向の回転を中止すべき中止条件が満たされた場合に、逆方向の回転を中止することができる。これにより、ファン25の逆方向の回転の継続によって発生し得る不具合(機器のオーバーヒート等)を回避することができる。
【0124】
また、制御装置60は、キャンセル動作として、第2方向の回転の回転数を徐々に低下させた後、第1方向の回転に変更する動作をファン25に実行させる。
この構成によれば、第2方向の回転の回転数を徐々に低下させることによって、騒音や第1ファン25に作動油を供給する油圧回路に発生するサージ圧の上昇を防ぐことができる。また、キャンセル動作後に、ファン25が第1方向に回転することにより、冷却効果を得ることができる。
【0125】
また、制御装置60は、キャンセル動作として、第2方向の回転の回転数を徐々に低下させた後、回転を停止させる動作をファン25に実行させる。
この構成によれば、第2方向の回転の回転数を徐々に低下させることによって、騒音や第1ファン25に作動油を供給する油圧回路に発生するサージ圧の上昇を防ぐことができる。また、キャンセル動作後に、ファン25が停止することにより、ファン25の異常回転等を防ぐことができる。
【0126】
また、制御装置60は、キャンセル動作として、第2方向の回転の回転数を最低回転数まで低下させた後、所定時間T3経過してから回転を停止させる動作をファン25に実行
させる。
この構成によれば、例えば中止条件としてエンジン停止が生じた場合等に、ファン25を安全に停止させることができる。
【0127】
また、作業機1は、機体2に装着された作業装置4と、作業装置4を作動させる作動油の温度を検出する第1センサ61と、エンジン22を冷却する冷却水の温度を検出する第2センサ62と、を備え、制御装置60は、第1センサ61又は第2センサ62で検出された温度が所定温度範囲を外れたときに中止条件が満たされたと判断してファン25にキャンセル動作を実行させる。
【0128】
この構成によれば、作業機1に搭載された機器のオーバーヒート等を防ぐことができる。また、油圧回路に発生する異常な圧力上昇等を防ぐことができ、油圧回路に発生するサージ圧が規定の圧力を超えること等を防止できる。
また、制御装置60は、エンジン22停止時に中止条件が満たされたと判断してファン25にキャンセル動作を実行させる。
【0129】
この構成によれば、エンジン22が停止したときは、キャンセル動作によりファン25の回転を停止することができる。
また、作業機1は、ファン25の第2方向への回転を許可するオン状態と許可しないオフ状態とを手動で切り替え可能な切り替えスイッチ64を備え、制御装置60は、切り替えスイッチ64がオフ状態に切り替えられたときに中止条件が満たされたと判断してファン25にキャンセル動作を実行させる。
【0130】
この構成によれば、ファン25を第2方向に回転している最中に作業機1の近傍に人が接近した場合に、切り替えスイッチ64をオフ状態に切り替えてキャンセル動作を実行することにより、ダストが人に向けて飛散することを防ぐことができる。また、作業機1が作業装置4で重作業を行う場合に、切り替えスイッチ64をオフ状態に切り替えてキャンセル動作を実行することにより、作業装置4による重作業を行いやすくなる。
【0131】
また、作業機1は、ファン25の駆動に関係する部品の故障を検知する検知部(断線検知部65、第2故障検知部等)を備え、制御装置60は、検知部で故障が検知されたときに中止条件が満たされたと判断してファン25にキャンセル動作を実行させる。
この構成によれば、検知部でファン25の駆動に関係する部品の故障が検知されたときにキャンセル動作を実行してファン25の回転を停止させることにより、部品の故障によって引き起こされるファン25の異常回転を防ぐことができる。
【0132】
また、作業機1は、エンジン22からの排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置23と、フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼させるフィルタ再生処理部と、を備え、制御装置60は、フィルタ再生処理部が粒子状物質を燃焼させるフィルタ再生処理を行っているときに中止条件が満たされたと判断してファン25にキャンセル動作を実行させる。
【0133】
この構成によれば、キャンセル動作の実行により、ファン25の回転方向を第2方向から第1方向に変更することによって、高温の空気が機体2の外部に排出されることを防止できる。また、機体2内部に外気を取り入れる気流が発生するため、機体2内部の温度を低下させることができる。
また、作業機1は、エンジン22の回転数を設定する設定部材(アクセル66)と、エンジン22の回転数を検出する回転数センサ63と、を備え、制御装置60は、設定部材(アクセル66)により設定された回転数である指示回転数から回転数センサ63により検出された回転数である実回転数を差し引いた差分値が閾値以上となったとき、中止条件が満たされたと判断してファン25にキャンセル動作を実行させる。
【0134】
この構成によれば、キャンセル動作の実行によって、ファン25の回転を停止させることにより、エンジンストールを防止することができる。
また、作業機1は、機体2に装着された作業装置4と、作業装置4を作動させる作動油の温度を検出する第1センサ61と、エンジン22を冷却する冷却水の温度を検出する第2センサ62と、第1センサ61又は第2センサ62の故障を検知する故障検知部と、を備え、制御装置60は、故障検知部が故障を検知したときに中止条件が満たされたと判断
してファン25にキャンセル動作を実行させる。
【0135】
この構成によれば、キャンセル動作の実行によって、ファン25の回転方向を第2方向から第1方向に変更する、或いは、ファン25の回転を中止することにより、第1センサ61又は第2センサ62の故障に起因して、作動油や冷却水の温度が過剰に上昇したり油圧回路に異常な圧力上昇等が発生したりすることを防止できる。
また、作業機1は、機体2に搭載されたキャビン3と、キャビン3内に温度調整された空気を供給するエアコンと、を備え、制御装置60は、エアコンの駆動時に中止条件が満たされたと判断してファン25にキャンセル動作を実行させる。
【0136】
この構成によれば、キャンセル動作の実行によって、ファン25の回転を停止することにより、例えば、作業機1が重作業を行う場合に作業を行いやすくなる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0137】
1 作業機
2 機体
3 キャビン
4 作業装置
22 エンジン
23 排出ガス浄化装置
24 ラジエータ
25 ファン(第1ファン)
60 制御装置
61 第1センサ
62 第2センサ
63 回転数センサ
64 切り替えスイッチ
65 断線検知部
66 設定部材(アクセル)
T2 所定時間
T3 所定時間