(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】穿孔工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240527BHJP
B25D 16/00 20060101ALI20240527BHJP
B25D 17/00 20060101ALI20240527BHJP
B23B 45/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B25D16/00
B25D17/00
B23B45/02
(21)【出願番号】P 2020140896
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 聖展
(72)【発明者】
【氏名】多田 祥朗
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-260619(JP,A)
【文献】特開2020-040199(JP,A)
【文献】特開2019-005847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 - 5/02
B25D 16/00
B25D 17/00
B23B 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端工具を回転駆動するドリル動作を少なくとも遂行可能な穿孔工具であって、
ステータと、ロータと、前記ロータから延設され、前記ロータと一体的に第1の軸周りに回転可能なモータシャフトとを有するモータと、
前記先端工具を装着可能に構成され、前記モータシャフトから伝達されたトルクによって、前記第1の軸に平行に延在して前記穿孔工具の前後方向を規定する第2の軸周りに回転駆動されるように構成されたツールホルダと、
前記モータおよび前記ツールホルダを収容し、前記前後方向に延在する本体ハウジングと、
前記本体ハウジングの後方で、前記第2の軸に交差する方向に延在する長尺状の把持部であって、前記第2の軸上に配置された第1端部と、前記第1端部とは反対側の端部であって、前記第2の軸から離間した位置にある第2端部とを有する把持部と、
前記把持部と共に環状部を形成するように、前記把持部の前記第2端部と前記本体ハウジングとを接続する中空状の接続部と、
前記接続部に収容され、前記本体ハウジングの前記第2の軸周りの回転状態を検出するように構成された検出装置と
、
前記穿孔工具の動作を制御するように構成された制御装置と、を備え、
前記接続部は、
前記第2端部に接続し、前記第2端部から前方へ延びる第1部分と、
前記第1部分の前端部と前記本体ハウジングとを接続する第2部分とを含み、
前記制御装置は、前記第1部分に収容され、
前記検出装置は、前記第2部分の下端部に収容されていることを特徴とする穿孔工具。
【請求項2】
請求項1に記載の穿孔工具であって、
前記検出装置は、加速度センサを備え、
前記第2の軸に直交し、且つ、前記把持部の延在方向に対応する方向を上下方向と規定し、前記第1端部から前記第2端部に向かう方向を下方向と規定した場合、前記加速度センサは、前記接続部の下端部内に配置されていることを特徴とする穿孔工具。
【請求項3】
請求項
1または請求項2に記載の穿孔工具であって、
前記第1部分は、バッテリを装着可能に構成されたバッテリ装着部を有することを特徴とする穿孔工具。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか1つに記載の穿孔工具であって、
前記検出装置は、少なくとも1つの第1弾性部材を介して前記接続部に支持されていることを特徴とする穿孔工具。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか1つに記載の穿孔工具であって、
前記把持部および前記接続部は、実質的に相対移動不能に一体化されてハンドルハウジングを構成し、
前記ハンドルハウジングは、前記本体ハウジングに対して移動可能に、少なくとも1つの第2弾性部材を介して前記本体ハウジングに連結されていることを特徴とする穿孔工具。
【請求項6】
請求項
5に記載の穿孔工具であって、
前記本体ハウジングと前記ハンドルハウジングとは、前記前後方向に互いに摺動するように構成されていることを特徴とする穿孔工具。
【請求項7】
請求項
6に記載の穿孔工具であって、
前記穿孔工具は、前記ツールホルダに装着された前記先端工具を前記第2の軸に沿って直線状に駆動する打撃動作も遂行可能なハンマドリルであることを特徴とする穿孔工具。
【請求項8】
請求項6に記載の穿孔工具であって、
前記接続部は、
前記本体ハウジングの一部を前記第2の軸周りの周方向に少なくとも部分的に取り巻くカバー部と、
前記把持部の上端部から前方に延在して前記カバー部に接続する上側延在部と、
前記把持部の下端部から前方に延在する下側延在部と、
前記下側延在部の前端部から上方に延在して前記カバー部に接続する前側延在部とを含み、
前記検出装置は、前記前側延在部の下端部内、または、前記下側延在部内に配置されていることを特徴とする穿孔工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端工具を軸周りに回転駆動するように構成された穿孔工具に関する。
【背景技術】
【0002】
穿孔工具は、ツールホルダに取り付けられた先端工具を回転駆動することで穿孔作業を行う。穿孔作業中に、何らかの理由で先端工具が加工材にロックされてしまうと、穿孔工具のハウジングに過大な反動トルクが作用し、ハウジングがツールホルダの回転軸周りに過度に回転してしまう可能性がある。そこで、ハウジングの過度な回転状態を検出し、モータを適切に制御することが可能な穿孔工具が知られている。例えば、特許文献1に開示されているハンマドリルは、ハウジングの過度な回転状態を検出するための検出部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハンマドリルは、比較的大型であって、モータは、ハウジング内で、モータシャフトの回転軸がツールホルダの回転軸に交差する方向に延在するように配置されている。検出部は、ハウジングにおいて、モータの下方に形成されたスペースに配置されている。しかしながら、穿孔工具はこのようなスペースを有するとは限らない。
【0005】
本発明は、穿孔工具において、ハウジングの回転状態を検出するための検出装置の配置の合理化に資する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、先端工具を回転駆動するドリル動作を少なくとも遂行可能な穿孔工具が提供される。この穿孔工具は、モータと、ツールホルダと、本体ハウジングと、把持部と、接続部と、検出装置とを備える。
【0007】
モータは、ステータと、ロータと、モータシャフトとを有する。モータシャフトは、ロータから延設され、ロータと一体的に第1の軸周りに回転可能である。ツールホルダは、先端工具を装着可能に構成されている。また、ツールホルダは、モータシャフトから伝達されたトルクによって、第2の軸周りに回転駆動されるように構成されている。第2の軸は、第1の軸に平行に延在する。また、第2の軸は、穿孔工具の前後方向を規定する。本体ハウジングは、モータおよびツールホルダを収容し、前後方向に延在する。把持部は、長尺状に形成され、本体ハウジングの後方で、第2の軸に交差する方向に延在する。把持部は、第1端部と第2端部とを有する。第1端部は、第2の軸上に配置されている。第2端部は、第1端部とは反対側の端部であって、第2の軸から離間した位置にある。接続部は、中空状に形成されている。接続部は、把持部と共に環状部を形成するように、把持部の第2端部と本体ハウジングとを接続する。検出装置は、接続部に収容されている。検出装置は、本体ハウジングの第2の軸周りの回転状態を検出するように構成されている。
【0008】
本態様の穿孔工具では、モータシャフトとツールホルダの夫々の回転軸(つまり、第1の軸および第2の軸)が平行に延在する。このため、穿孔工具は、第1の軸および第2の軸に沿って前後方向に延在する本体ハウジングを備えており、比較的小型である。このような穿孔工具では、本体ハウジングに検出装置を収容するのは難しい場合が多い。これに対し、本態様の穿孔工具は、把持部の2つの端部のうち、第2の軸から離間した第2端部(つまり、本体ハウジングからより遠い位置にある端部)と本体ハウジングとを接続する接続部に、検出装置が収容されている。これにより、穿孔工具全体を第2の軸の延在方向や第2の軸に交差する方向に大型化することなく、検出装置の合理的な配置が実現される。
【0009】
本発明の一態様において、検出装置は、加速度センサを備えてもよい。第2の軸に直交し、且つ、把持部の延在方向に対応する方向を上下方向と規定し、第1端部から第2端部に向かう方向を下方向と規定した場合、加速度センサは、接続部の下端部内に配置されてもよい。この場合、接続部のうち、第2の軸から最も離れた位置で加速度を検出できるため、本体ハウジングの回転状態を精度よく検出することができる。
【0010】
本発明の一態様において、穿孔工具は、穿孔工具の動作を制御するように構成された制御装置を更に備えてもよい。接続部は、第1部分と第2部分とを含んでもよい。第1部分は、接続部のうち、把持部の第2端部に接続し、第2端部から前方へ延びる部分である。第2部分は、接続部のうち、第1部分の前端部と本体ハウジングとを接続する部分である。そして、制御装置は、第1部分に収容されていてもよい。この場合、制御装置と検出装置の配線が容易となる。また、第2部分を介した制御装置とモータとの配線も可能となる。更に、第1部分は、バッテリ装着部を有してもよい。この場合、制御装置とバッテリ装着部との配線も容易となる。
【0011】
本発明の一態様において、検出装置は、少なくとも1つの第1弾性部材を介して接続部に支持されていてもよい。この場合、精密機器である検出装置を振動から保護することができる。
【0012】
本発明の一態様において、把持部および接続部は、実質的に相対移動不能に一体化されてハンドルハウジングを構成してもよい。そして、ハンドルハウジングは、本体ハウジングに対して移動可能に、少なくとも1つの第2弾性部材を介して本体ハウジングに連結されていてもよい。この場合、使用者によって把持される把持部に本体ハウジングから振動が伝達されるのを抑制でき、且つ、接続部に収容された検出装置を振動から保護することができる。
【0013】
本発明の一態様において、本体ハウジングとハンドルハウジングとは、前記前後方向に互いに摺動するように構成されていてもよい。この場合、本体ハウジングとハンドルハウジングのスムーズな相対移動が実現される。
【0014】
本発明の一態様において、穿孔工具は、ツールホルダに装着された先端工具を第2の軸に沿って直線状に駆動する打撃動作も遂行可能なハンマドリルであってもよい。この場合、打撃動作時に生じる前後方向の支配的な振動から検出装置を効果的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図6】右側の半割体を取り外した状態のハンドルハウジングの斜視図である。
【
図7】
図4のVII-VII線における断面図である。
【
図8】
図4のVIII-VIII線における断面図である。
【
図10】右側の半割体を取り外した状態のハンドルハウジングの部分斜視図であって、可動部材が最前方位置(初期位置)に配置されている状態を示す。
【
図11】可動部材が初期位置に配置されているときの位置検出機構の説明図である。
【
図12】
図4のXII-XII線における断面図である。
【
図13】右側の半割体を取り外した状態のハンドルハウジングの部分斜視図であって、可動部材がオフ位置に配置されている状態を示す。
【
図14】可動部材がオフ位置に配置されているときの位置検出機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、打撃工具の一例、且つ、穿孔工具の一例である手持ち式のハンマドリル1を例示する。ハンマドリル1は、先端工具91を所定の駆動軸A1に沿って直線状に駆動する動作(以下、打撃動作という)と、先端工具91を駆動軸A1周りに回転駆動する動作(以下、ドリル動作という)とを遂行可能に構成されている。
【0017】
まず、ハンマドリル1の概略構成について説明する。
図1および
図2に示すように、ハンマドリル1の外郭は、主に、本体ハウジング11と、ハンドルハウジング15とによって形成されている。本実施形態では、本体ハウジング11およびハンドルハウジング15はいずれも合成樹脂製である。
【0018】
本体ハウジング11は、長尺の中空体であって、駆動軸A1に沿って延在している。本体ハウジング11の長軸方向における一端部内には、ツールホルダ30(
図2参照)が配置されている。ツールホルダ30には、先端工具91が取り外し可能に装着される。また、本体ハウジング11には、モータ2および駆動機構3が収容されている。
【0019】
ハンドルハウジング15は、本体ハウジング11の長軸方向における他端部(ツールホルダ30が配置されている端部とは反対側の端部)に弾性連結されている。ハンドルハウジング15は、使用者によって把持される長尺状の把持部17を含む。把持部17は、本体ハウジング11から離間して、駆動軸A1に交差する方向(詳細には、概ね直交する方向)に延在する。把持部17の長軸方向における一端部は、駆動軸A1上に配置されており、使用者による押圧操作が可能なトリガ171を有する。把持部17の他端部は、駆動軸A1から離れた位置にある。ハンドルハウジング15全体を駆動軸A1および把持部17の長軸に直交する方向にみると、ハンドルハウジング15は、環状(略D字状)に形成されている。
【0020】
使用者によってトリガ171が押圧されると、モータ2が駆動され、駆動機構3によって、打撃動作および/またはドリル動作が遂行される。
【0021】
以下、ハンマドリル1の詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、駆動軸A1の延在方向(本体ハウジング11の長軸方向、または先端工具91の軸方向とも言い換えられる)をハンマドリル1の前後方向と規定する。前後方向において、先端工具91が装着される側(ツールホルダ30が配置されている側)をハンマドリル1の前側、反対側(把持部17が配置されている側)を後側と規定する。また、駆動軸A1に直交し、把持部17の延在方向に対応する方向を上下方向と規定する。上下方向において、トリガ171が配置されている把持部17の一端部側を上側、反対側(駆動軸A1から離れた位置にある端部側)を下側と規定する。更に、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【0022】
まず、本体ハウジング11とその内部構造について説明する。
【0023】
図2および
図3に示すように、本実施形態では、本体ハウジング11は、ギヤハウジング12と、モータハウジング13とを含む。ギヤハウジング12は、主に駆動機構3を収容するハウジングである。モータハウジング13は、主にモータ2を収容するハウジングである。ギヤハウジング12とモータハウジング13とは、夫々に内部機構が組み付けられ、モータハウジング13がギヤハウジング12の後側に配置された状態で、ネジによって前後方向に連結固定されている。ギヤハウジング12とモータハウジング13とが相対移動不能に連結固定されることで、単一のハウジングとしての本体ハウジング11が形成されている。
【0024】
以下、ギヤハウジング12とその内部構造について説明する。
【0025】
図2および
図3に示すように、ギヤハウジング12は、全体としては、長尺の筒状体として形成されている。ギヤハウジング12は、円筒状の前端部(以下、バレル部121という)を有する。ツールホルダ30は、バレル部121内で、駆動軸A1周りに回転可能に支持されている。ギヤハウジング12のうち、バレル部121より後側の部分は、全体としては断面矩形状に形成されており、駆動機構3を収容する。なお、本実施形態では、駆動機構3は、金属製の支持体125によって支持された状態で、ギヤハウジング12内に固定状に保持されている。
【0026】
図2に示すように、本実施形態では、駆動機構3は、運動変換機構31と、打撃要素37と、回転伝達機構38とを含む。
【0027】
運動変換機構31は、モータ2のモータシャフト25の回転運動を直線運動に変換して打撃要素37に伝達するように構成されている。なお、本実施形態では、運動変換機構31は、中間シャフト32と、回転体33と、揺動部材34と、ピストンシリンダ35とを含む。
【0028】
中間シャフト32は、モータシャフト25と平行に、前後方向に延在し、ギヤハウジング12に保持された2つの軸受によって、回転可能に支持されている。回転体33は、中間シャフト32の外周部に取り付けられている。揺動部材34は、回転体33の外周部に取り付けられ、回転体33の回転に伴って前後方向に揺動される。ピストンシリンダ35は、有底円筒状に形成されている。ピストンシリンダ35は、円筒状のシリンダ36内に、前後方向に摺動可能に保持されている。ピストンシリンダ35は、揺動部材34の揺動に伴って前後方向に往復移動される。なお、シリンダ36は、ツールホルダ30の後側に同軸状に連結され、一体化されている。一体化されたツールホルダ30およびシリンダ36は、ギヤハウジング12に保持された2つの軸受によって、駆動軸A1周りに回転可能に支持されている。
【0029】
打撃要素37は、直線状に動作して先端工具91(
図1参照)を打撃することで、先端工具91を駆動軸A1に沿って直線状に駆動するように構成されている。本実施形態では、打撃要素37は、ストライカ371とインパクトボルト373とを含む。ストライカ371は、ピストンシリンダ35内に前後方向に摺動可能に配置されている。インパクトボルト373は、ストライカ371の前方に配置されている。ストライカ371の後方のピストンシリンダ35内部の空間は、空気バネとして機能する空気室として規定されている。
【0030】
モータ2が駆動され、ピストンシリンダ35が前方に向けて移動されると、空気室内の空気が圧縮されて内圧が上昇する。このため、ストライカ371は、高速に前方に押し出されてインパクトボルト373に衝突し、運動エネルギを先端工具91に伝達する。これにより、先端工具91は駆動軸A1に沿って直線状に駆動され、加工材を打撃する。一方、ピストンシリンダ35が後方へ移動されると、空気室内の空気が膨張して内圧が低下し、ストライカ371が後方へ引き込まれる。また、先端工具91は加工材に押圧されて、後方へ戻る。運動変換機構31および打撃要素37は、上述の動作を繰り返すことで、打撃動作を行う。
【0031】
回転伝達機構38は、モータシャフト25の回転動力をツールホルダ30に伝達するように構成されている。回転伝達機構38は、複数のギヤからなるギヤ減速機構として構成されており、第1ギヤ381と第2ギヤ382とを含む。第1ギヤ381は、中間シャフト32の前端部に設けられている。第2ギヤ382は、シリンダ36の外周部に設けられ、第1ギヤ381に噛合する。モータ2が駆動されると、回転伝達機構38を介して、シリンダ36およびツールホルダ30が、駆動軸A1周りに一体的に回転される。これにより、ツールホルダ30に保持された先端工具91が駆動軸A1周りに回転駆動される。回転伝達機構38は、上述のように、ドリル動作を行う。
【0032】
本実施形態のハンマドリル1は、ハンマドリルモード、ハンマモード、およびドリルモードの3つの動作モードを有する。使用者は、モード変更レバー39(
図3参照)の操作により、3つのモードのうち1つを選択可能に構成されている。ハンマドリルモードでは、運動変換機構31および回転伝達機構38が駆動されることで、打撃動作およびドリル動作が行われる。ハンマモードでは、回転伝達機構38における動力の伝達が遮断され、運動変換機構31のみが駆動されることで、打撃動作のみが行われる。ドリルモードでは、運動変換機構31における動力の伝達が遮断され、回転伝達機構38のみが駆動されることで、ドリル動作のみが行われる。ギヤハウジング12内には、モード変更レバー39の操作に応じて、運動変換機構31および回転伝達機構38の伝達状態を切り替えるモード切替機構が設けられている。モード切替機構の構成自体については公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0033】
以下、モータハウジング13とその内部構造について説明する。
図2および
図3に示すように、モータハウジング13は、全体としては、前後方向に延在する長尺の中空体として形成されており、モータ2を収容する。モータ2は、ブラシレスモータであって、ステータ21と、ロータ23と、ロータ23から延設され、ロータ23と一体的に回転するように構成されたモータシャフト25とを備えている。モータ2は、モータシャフト25の回転軸A2が駆動軸A1と平行に(前後方向に)延在するように配置されている。モータシャフト25の前端部と後端部は、夫々、軸受251、253によって回転可能に支持されている。なお、前側の軸受251は、上述のギヤハウジング12の支持体125に支持されている。後側の軸受253は、モータハウジング13(詳細には、後述する軸受収容部135)に支持されている。
【0034】
本実施形態では、モータハウジング13は、駆動軸A1と回転軸A2とを含む平面P(
図7参照)に沿って、左右の半割体13Lおよび13Rに分割されている。単一のハウジングとしてのモータハウジング13は、半割体13Lおよび13Rを複数のネジによって左右方向に連結固定することで形成されている。
【0035】
また、モータハウジング13は、前側から順に、連結部131と、ステータ収容部133と、軸受収容部135とを含む。連結部131は、ギヤハウジング12に連結固定される部分である。連結部131は、ギヤハウジング12の形状に対応して断面矩形状に形成されている。連結部131内には、モータシャフト25に固定されたファン28が配置されている。ステータ収容部133は、モータ2のステータ21を収容する部分である。ステータ収容部133は、ステータ21に対応して概ね円筒状に形成されており、連結部131に比べて小径である。軸受収容部135は、モータシャフト25の後端部を支持する軸受253を収容する部分である。軸受収容部135は、軸受253に対応する円筒状に形成されており、ステータ収容部133に比べて小径である。
【0036】
更に、
図3および
図4に示すように、モータハウジング13は、上側延在部141と、下側延在部146とを含む。上側延在部141および下側延在部146は、ステータ収容部133から後方に突出し、軸受収容部135の上側および下側で、夫々、前後方向に延在する。上側延在部141および下側延在部146の後端は、何れも軸受収容部135の後端よりも後方に位置する。また、上側延在部141の後端の方が、下側延在部146の後端よりも後方に位置する。下側延在部146の内部空間は、ステータ収容部133の内部空間と連通している。
【0037】
詳細は後述するが、上側延在部141は、主に、本体ハウジング11とハンドルハウジング15との前後方向の相対移動を案内する部分として機能する。下側延在部146は、主に、本体ハウジング11とハンドルハウジング15との相対的な回動を規制する部分として機能する。また、下側延在部146は、モータ2に接続された電線(図示略)が通る通路を規定する。下側延在部146の後端部の下壁には、開口147が設けられており、電線は、開口147を通ってハンドルハウジング15内(詳細には、後述する前側延在部188内)へ導かれる。
【0038】
以上の構成を有するモータハウジング13のうち、連結部131は、ギヤハウジング12に固定されており、ハンドルハウジング15の外部に露出する。一方、ステータ収容部133の大部分、軸受収容部135、上側延在部141および下側延在部146は、ハンドルハウジング15(詳細には、ベース部18)内に配置されている。
【0039】
以下、ハンドルハウジング15とその内部構造について説明する。
【0040】
図5に示すように、ハンドルハウジング15は、モータハウジング13と同様、駆動軸A1と回転軸A2とを含む平面P(
図7参照)に沿って、左右の半割体15Lおよび15Rに分割されている。単一のハウジングとしてのハンドルハウジング15は、半割体15Lおよび15Rを複数のネジによって左右方向に連結固定することで形成されている。
【0041】
また、
図1および
図2に示すように、ハンドルハウジング15は、把持部17と、ベース部18とを含む。
【0042】
上述のように、把持部17は、本体ハウジング11の後端部から後方に離間して、概ね上下方向に延在しており、把持部17の上端部の前面側にはトリガ171が配置されている。把持部17の上端部およびトリガ171は、駆動軸A1上に配置されている。把持部17の内部には、トリガ171に隣接して、スイッチ173が配置されている。スイッチ173は、常時にはオフ状態で維持され、使用者によるトリガ171の押圧操作に応じてオン状態とされる。スイッチ173は、図示しない電線によってコントローラ41に接続されており、オン状態またはオフ状態を示す信号を、コントローラ41に出力する。
【0043】
ベース部18は、把持部17と本体ハウジング11とを接続し、把持部17と共に環状部(リング)を形成している。ベース部18は、カバー部181と、上側延在部184と、下側延在部186と、前側延在部188とを含む。
【0044】
カバー部181は、前後方向に延在し、本体ハウジング11の一部を駆動軸A1周りの周方向に取り巻く部分である。カバー部181は、概ね有底矩形箱状に形成されている。より詳細には、カバー部181の前端は開放されており、カバー部181の後端は、後壁182によって閉塞されている。カバー部181は、ギヤハウジング12およびモータハウジング13の連結部131と概ね整合する断面形状を有する。カバー部181は、モータハウジング13の連結部131の後方に配置され、モータハウジング13のステータ収容部133の一部と、軸受収容部135と、上側延在部141の一部と、下側延在部146の一部とを収容する。
【0045】
なお、
図2に示すように、カバー部181の前端と、モータハウジング13の連結部131の後端との間には、環状の蛇腹部59が介在している。蛇腹部59は、前後方向に伸縮可能である。蛇腹部59は、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の前後方向の相対移動に応じて伸縮しつつ、本体ハウジング11とハンドルハウジング15の間から粉塵等が進入するのを防止する。
【0046】
図6に示すように、カバー部181には、位置検出機構45が収容されている。位置検出機構45は、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の前後方向の相対位置を検出するように構成されている。なお、位置検出機構45については、後で詳述する。
【0047】
図1および
図2に示すように、上側延在部184は、カバー部181の上後端部から後方に突出し、把持部17の上端部に接続する部分である。上側延在部184は、筒状に形成されており、上側延在部184の内部空間は、後壁182に設けられた開口を介して、カバー部181の内部空間と連通している。上側延在部184の内部空間は、把持部17の内部空間とも連通している。モータハウジング13の上側延在部141の後端部は、上側延在部184内に突出している。
【0048】
下側延在部186は、把持部17の下端部から前方に突出する部分である。下側延在部186は、矩形箱状に形成されている。下側延在部186の内部空間は、把持部17の内部空間と連通している。
【0049】
下側延在部186には、コントローラ41が収容されている。詳細な図示は省略するが、コントローラ41は、制御回路と、三相インバータと、これらが搭載された回路基板とを含む。制御回路は、CPU、ROM、RAM、タイマ等を含むマイクロコンピュータで構成されている。制御回路は、三相インバータを介してモータ2を駆動する。詳細は後述するが、本実施形態では、コントローラ41(制御回路)は、スイッチ173のオン/オフ状態および各種センサの検出結果に基づいて、モータ2の駆動を制御するように構成されている。
【0050】
また、下側延在部186の下端部には、バッテリ装着部187が設けられている。バッテリ装着部187には、バッテリ93が取り外し可能に装着される。バッテリ93は、モータ2、コントローラ41等に電力を供給するための、繰り返し充電が可能な電源であって、バッテリパックとも称される。バッテリ装着部187は、バッテリ93のガイド溝にスライド係合可能なレールと、バッテリ93の端子と電気的に接続可能な端子とを備えている。なお、バッテリ93およびバッテリ装着部187の構成は周知であるため、詳細な説明および図示は省略する。バッテリ装着部187は、図示しない電線を介してコントローラ41に接続されている。バッテリ装着部187とコントローラ41とは、何れも下側延在部186に設けられており、互いの近傍にあるため、配線は容易である。
【0051】
前側延在部188は、下側延在部186とカバー部181とを接続する部分であある。前側延在部188は、筒状に形成されており、下側延在部186の前端部から概ね上方へ延び、カバー部181の下後端部に接続している。前側延在部188の内部空間は、下側延在部186の内部空間およびカバー部181の内部空間と連通している。モータハウジング13の下側延在部146の下端部は、前側延在部188の上端部内に突出している。
【0052】
図4および
図6に示すように、前側延在部188には、加速度検出ユニット43が収容されている。より詳細には、加速度検出ユニット43は、前側延在部188の下端部内(把持部17の下端部と本体ハウジング11とを接続するベース部18の下端部内)に配置されている。
【0053】
以下、加速度検出ユニット43の構成について説明する。加速度検出ユニット43は、ケース433と、センサ本体431とを含む。ケース433は、矩形箱状に形成されている。センサ本体431は、ケース433内に収容されてモールドされ、ケース433と一体化されている。なお、センサ本体431は、図示しない電線を介してコントローラ41に接続されている。上述のように、コントローラ41は、前側延在部188と接続する下側延在部186に収容されているため、配線は容易である。
【0054】
詳細な図示は省略するが、センサ本体431は、加速度センサと、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータと、これらが搭載された回路基板とを含む。加速度センサは、駆動軸A1周りのハンドルハウジング15の回転状態(ひいては本体ハウジング11の回転状態)に対応する情報(物理量、指標)として、加速度を検出する。なお、加速度検出ユニット43は、駆動軸A1の真下に配置されている。この位置では、ハンドルハウジング15および本体ハウジング11の駆動軸A1周りの回転を、左右方向の動きとしてとらえうる。そこで、センサ本体431には、左右方向の加速度を検出可能な周知の加速度センサが搭載されている。加速度検出ユニット43は、ハンマドリル1において、ベース部18(前側延在部188)の下端部、つまり、駆動軸A1から最も離れた位置に配置されているため、加速度センサは、左右方向の加速度を精度よく検出することができる。
【0055】
センサ本体431のマイクロコンピュータは、加速度センサによって検出された加速度が所定の閾値を超えているか否かについて判断する。そして、加速度が閾値を超えている場合には、特定の信号(以下、エラー信号という)をコントローラ41(
図7参照)に出力する。加速度が閾値を超えた場合とは、ハンマドリル1が駆動軸A1周りに過度に回転している状態に対応する。このような状態は、典型的には、ドリル動作中に先端工具91がロックされ、ツールホルダ30が回転不能な状態(ブロッキング状態ともいう)に陥り、ハンドルハウジング15および本体ハウジング11のに過大な反動トルクが作用している場合に発生するものである。
【0056】
なお、センサ本体431はマイクロコンピュータを備えず、加速度センサの検出結果を示す信号をそのままコントローラ41に出力し、コントローラ41が上述の判断を行ってもよい。センサ本体431から出力された信号に基づくハンマドリル1の動作制御については、後述する。
【0057】
また、加速度検出ユニット43は、弾性部材435を介して前側延在部188に支持されている。より詳細には、複数の弾性部材435が、ケース433に嵌め込まれ、ケース433と前側延在部188の左側壁の間、および、ケース433と前側延在部188の右側壁の間に介在している。なお、本実施形態では、二対の弾性部材435(つまり、合計4つの弾性部材435)が設けられており、そのうち一対はケース433の上端部の左側部と右側部に嵌め込まれ、残る一対はケース433の下端部の左側部と右側部に嵌め込まれている。各対の弾性部材435には、ピン437が挿通されている。ピン437は、前側延在部188の左右の側壁部によって両端を支持されており、前側延在部188内で左右方向に延在する。このような弾性支持構造により、加速度検出ユニット43は、ハンドルハウジング15に対し、前後方向、上下方向、および左右方向を含む全ての方向に移動可能に支持されている。
【0058】
以上に説明したように、本実施形態では、加速度検出ユニット43は、把持部17の2つの端部のうち、駆動軸A1から離間した下端部(つまり、本体ハウジング11からより遠い位置にある端部)と本体ハウジング11とを接続するベース部18(詳細には、前側延在部188)に収容されている。これにより、ハンマドリル1全体を、駆動軸A1の延在方向(前後方向)や駆動軸A1に交差する方向に大型化することなく、加速度検出ユニット43の合理的な配置が実現されている。
【0059】
また、上述のように、加速度検出ユニット43が弾性部材435を介して支持されることで、精密機器である加速度センサが、振動から効果的に保護されている。
【0060】
本実施形態では、ハンドルハウジング15は、本体ハウジング11に弾性連結されており、本体ハウジング11に対して前後方向に移動可能である。以下、本体ハウジング11とハンドルハウジング15との弾性連結構造について説明する。
【0061】
図4に示すように、前後方向において、本体ハウジング11とハンドルハウジング15の間には、弾性部材51が介在している。弾性部材51は、本体ハウジング11とハンドルハウジング15とを互いから離れる方向に(つまり、夫々、前方と後方に)付勢している。弾性部材51には、圧縮コイルバネが採用されている。
【0062】
より詳細には、弾性部材51は、本体ハウジング11に支持されたモータシャフト25の後端部(詳細には、軸受253)と、ハンドルハウジング15の後壁182の前側に設けられた支持壁183の間に配置されている。上述のように、モータハウジング13の軸受収容部135は、円筒状に形成されており、回転軸A2に沿って前後方向に延在する貫通孔136を有する。モータシャフト25の後端部を支持する軸受(詳細には、玉軸受)253は、貫通孔136に嵌め込まれている。また、軸受253の後側には、バネ受け部材53が配置されている。バネ受け部材53の前側部分は貫通孔136に嵌め込まれ、バネ受け部材53の後側部分は、貫通孔136から後方に突出している。バネ受け部材53の前端は、軸受253の後端(詳細には、玉軸受の外輪)に当接している。弾性部材51の一端部は、バネ受け部材53の後端部に嵌め込まれ、弾性部材51の他端部は、支持壁183の前端面に当接している。
【0063】
このような配置により、弾性部材51は、バネ受け部材53、軸受253、モータシャフト25を介して本体ハウジング11を前方へ付勢し、且つ、支持壁183を介してハンドルハウジング15を後方へ付勢している。
【0064】
更に、ハンマドリル1は、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の前後方向の相対移動を案内するためのガイド構造を備えている。以下、ガイド構造について説明する。
【0065】
本実施形態では、
図4、
図7および
図8に示すように、ハンマドリル1は、前後方向に離間して配置された一対の前側ガイド部61と、一対の後側ガイド部62とを備えている。一対の前側ガイド部61は、左右対称(平面Pに対して対称)に配置されている。前側ガイド部61の各々は、本体ハウジング11およびハンドルハウジング15に夫々設けられ、前後方向に摺動可能に互いに係合する一組の係合部で構成されている。同様に、一対の後側ガイド部62も、左右対称に配置されている。後側ガイド部62の各々は、本体ハウジング11およびハンドルハウジング15に夫々設けられ、前後方向に摺動可能に互いに係合する一組の係合部で構成されている。なお、本実施形態では、前側ガイド部61と後側ガイド部62とは、実質的に同一の構成を有する。以下、前側ガイド部61と後側ガイド部62の詳細構成について説明する。
【0066】
図3、
図6および
図7に示すように、前側ガイド部61の各々は、ガイド突起611と、2つのガイド壁615に形成された凹部616とで構成されている。
【0067】
ガイド突起611は、モータハウジング13のステータ収容部133の上端部(つまり、ステータ21の上方)に設けられている。各ガイド突起611は、ハンドルハウジング15の左側壁または右側壁に向かって左方または右方に突出している。ガイド突起611は、前後方向に長い直方体状に形成されている。ガイド突起611の表面は、金属製のカバープレート612で覆われている。
【0068】
2つのガイド壁615は、ハンドルハウジング15のカバー部181の上前端部に設けられている。ガイド壁615の各々は、カバー部181の側壁から内側(平面P)に向かって突出しており、ガイド突起611の断面形状に概ね整合する形状の凹部616を有する。2つのガイド壁615は、夫々の凹部616が前後方向に延びる1直線上に並ぶように、前後方向に離間して配置されている。ガイド突起611は、2つのガイド壁615の凹部616内に配置されており、前後方向に摺動可能である。
【0069】
同様に、
図3、
図6および
図8に示すように、後側ガイド部62の各々は、ガイド突起621と、2つのガイド壁625に形成された凹部626とで構成されている。
【0070】
ガイド突起621は、モータハウジング13の上側延在部141の後端部に設けられている。各ガイド突起621は、ハンドルハウジング15の左側壁または右側壁に向かって左方または右方に突出している。2つのガイド壁625は、ハンドルハウジング15の上側延在部184内に、前後方向に離間して配置されている。ガイド突起621およびガイド壁625は、ガイド突起611およびガイド壁625と実質的に同一の構成を有する。つまり、ガイド突起621は、概ね直方体状に形成され、表面が金属製のカバープレート622で覆われている。なお、ガイドプレート622は、ガイド突起611のカバープレート611と同一の金属部材(共通部品)である。ガイド壁625の各々は、上側延在部184の側壁から内側(平面P)に向かって突出しており、凹部626を有する。ガイド突起621は、2つのガイド壁625の凹部626内に配置されており、前後方向に摺動可能である。
【0071】
以上のような構成により、本体ハウジング11(モータハウジング13)と、ハンドルハウジング15とは、前後方向において異なる2つの位置で、前後方向に摺動案内される。なお、
図4に示すように、前側ガイド部61および後側ガイド部62は、上下方向において、モータシャフト25の回転軸A2よりも上方に配置されている。また、後側ガイド部62は、前側ガイド部61よりも若干上方に配置されているが、後側ガイド部62の下端は、前側ガイド部61の上端よりも下方に位置する。よって、本体ハウジング11(モータハウジング13)と、ハンドルハウジング15とは、上下方向においては概ね同じ、且つ、前後方向においては離間した2つの位置で、前後方向に案内される。
【0072】
更に、ハンマドリル1は、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の最後方位置および最前方位置を規定するための構成を備えている。より詳細には、
図3および
図6に示すように、本体ハウジング11の上側延在部141には、左右一対のストッパ突起631が設けられている。一方、ハンドルハウジング15の上側延在部184には、左右一対のストッパ壁633および左右一対のストッパ壁635が設けられている(左側のストッパ壁633、635のみ図示)。ストッパ突起631、ストッパ壁633および635は何れも、前後方向において、前側ガイド部61と後側ガイド部62の間に配置されている。
【0073】
各ストッパ突起631は、ハンドルハウジング15の左側壁または右側壁に向かって左方または右方に突出している。ストッパ壁633および635の各々は、上側延在部184の側壁から内側(平面P、
図7参照)に向かって突出している。ストッパ壁635は、ストッパ壁633の後方に離間配置されている。ストッパ壁635とストッパ壁633との間の前後方向の間隔は、ストッパ突起631の前後方向の長さよりも大きい。
【0074】
ストッパ突起631は、前後方向において、ストッパ壁633とストッパ壁635の間に配置されている。ストッパ突起631およびストッパ壁633は、互いに当接することで、ハンドルハウジング15の最後方位置を規定する。ストッパ突起631の前面およびストッパ壁633の後面は、夫々、互いに当接可能な一対の当接面として機能する。また、ストッパ突起631およびストッパ壁635は、互いに当接することで、ハンドルハウジング15の最前方位置を規定する。ストッパ突起631の後面およびストッパ壁635の前面は、夫々、互いに当接可能な一対の当接面として機能する。
【0075】
上述のように、ハンドルハウジング15は、弾性部材51によって、常に本体ハウジング11に対して後方に付勢されている。よって、ハンドルハウジング15は、ストッパ壁633の後面がストッパ突起631の前面に当接する最後方位置(初期位置ともいう)で保持される。
図2に示す位置が、ハンドルハウジング15の最後方位置(初期位置)である。
【0076】
打撃動作の遂行中には、駆動軸A1に沿って先端工具91が駆動されることで、本体ハウジング11には、前後方向に比較的大きな振動が発生する。これに対し、弾性部材51を介して連結された本体ハウジング11およびハンドルハウジング15は、前側ガイド部61および後側ガイド部62において互いに摺動しつつ、前後方向に相対移動することで、この前後方向の振動がハンドルハウジング15に伝達されるのを効果的に抑制することができる。
【0077】
本実施形態のように、前後方向に離間配置された前側ガイド部61および後側ガイド部62は、本体ハウジング11とハンドルハウジング15の周方向に離間配置された複数のガイド部に比べ、寸法精度を向上させることができる。よって、本体ハウジング11とハンドルハウジング15との摺動を、前後方向に精度よく安定して案内することができる。
【0078】
特に、本実施形態では、前側ガイド部61は、カバー部181の内部で、ステータ21の径方向外側(より詳細には、ステータ21の上方)に配置されている。このように、重量物であるステータ21およびロータ23の近傍に前側ガイド部61を設けることで、摺動の安定化が図られている。一方、後側ガイド部62は、ハンドルハウジング15の上側延在部184の内部、つまり、ステータ収容部133と把持部17の上端部との間で前後方向に延在する部分に設けられている。そして、このために、本体ハウジング11(モータハウジング13)には、何も収容しないにもかかわらず、上側延在部184内に突出するように、上側延在部141が設けられている。このように、本体ハウジング11の一部を敢えて後方に延ばすことで、把持部17により近い位置での案内を可能とし、操作性の向上が図られている。
【0079】
更に、本実施形態では、直方体状のガイド突起611、621と、2つの矩形状の凹部616、626とが夫々互いに係合し、ガイド突起611、621の三面と、各凹部616、626の三面とが夫々接触した状態で前後方向に相対移動する。よって、特に安定した摺動が実現される。また、ガイド突起611、621の摺動面を含む部分は、夫々、金属製のカバープレート612、622で形成されている。よって、ガイド突起611、621は、夫々、凹部616、626に対して円滑に摺動可能である。更に、本実施形態では、ガイド壁615、625は、金属とは異なる材料(詳細には、合成樹脂)で形成されている。このため、ガイド突起611、621と凹部616、626とが、夫々の摺動に伴って互いに溶着するのが防止され、特に円滑な摺動が実現される。
【0080】
更に、
図4および
図9に示すように、本実施形態では、ハンマドリル1は、前側ガイド部61および後側ガイド部62に加え、規制部67を備えている。規制部67は、モータシャフト25の回転軸A2よりも下方の、前側ガイド部61および後側ガイド部62から比較的離れた位置で、本体ハウジング11とハンドルハウジング15との左右方向の相対移動を規制するように構成されている。なお、規制部67は、前後方向においては、前側ガイド部61と後側ガイド部62の間に配置されている。
【0081】
図3、
図6および
図9に示すように、規制部67は、本体ハウジング11およびハンドルハウジング15に夫々設けられ、互いに当接することで本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の左右方向への移動を規制する一組の当接部で構成されている。より詳細には、規制部67は、本体ハウジング11の下側延在部146に設けられた当接部671と、一対の当接プレート673とで構成されている。
【0082】
当接部671は、下側延在部146のうち、ハンドルハウジング15の前側延在部188の上端部内に突出する部分に設けられている。当接部671の左側面および右側面は、一対の当接面672として機能する。
【0083】
一対の当接プレート673は、ハンドルハウジング15の前側延在部188の上端部に配置されている。当接プレート673の各々は、金属製の矩形状の薄板の長手方向の両端部を同じ方向に折り曲げることで形成されており、可撓性を有する。当接プレート673の両端部は、前側延在部188の左側壁または右側壁に設けられた2つの突起674に嵌め込まれており、当接プレート673は、左右方向の若干の撓みを許容された状態で突起674に支持されている。また、各当接プレート673と前側延在部188の左側壁または右側壁との間には、弾性部材677が介在する。本実施形態では、弾性部材677として、直方体状に形成された合成樹脂製の発泡体(いわゆるスポンジ)が採用されている。一対の当接プレート673は、夫々、弾性部材677によって、当接部671に向けて常に付勢され、一対の当接面672に当接している。
【0084】
以上のような構成により、規制部67は、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の左右方向の移動を規制することができる。これにより、規制部67は、本体ハウジング11とハンドルハウジング15とが、前側ガイド部61と後側ガイド部62を通る軸周りに相対的に回転することを効果的に規制し、ガタつきを抑えることができる。
【0085】
また、当接プレート673は当接面672に対して摺動可能であるため、規制部67は、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の前後方向の摺動を案内するガイド部としても機能する。つまり、本実施形態では、3つのガイド部が、本体ハウジング11とハンドルハウジング15の摺動を安定して案内することができる。特に、上述のように、規制部67は、上下方向においては、前側ガイド部61および後側ガイド部62から比較的離れており、前後方向においては、前側ガイド部61と後側ガイド部62の間にある。よって、規制部67が付加されることで、ガタつきの抑制と、摺動案内の安定化に優れた効果を発揮することができる。
【0086】
また、上述のように、本体ハウジング11とハンドルハウジング15とを互いから離れる方向に付勢する弾性部材51は、モータシャフト25の回転軸A2上にある。つまり、弾性部材51は、上下方向において、前側ガイド部61および後側ガイド部62の下方、且つ、規制部67よりも上方に配置されている。よって、上下方向において、本体ハウジング11およびハンドルハウジング15の弾性連結と、摺動案内とをバランスよく行うことができる。
【0087】
以下、位置検出機構45の詳細構成について説明する。
【0088】
図10~
図12に示すように、本実施形態では、位置検出機構45は、ハンドルハウジング15のカバー部181の内部に取り付けられている。位置検出機構45は、可動部材451と、付勢部材457と、ホールセンサ458とを含む。
【0089】
可動部材451は、全体としては略T字状に形成されており、直線状に延びる長尺のベース部452と、ベース部452の略中央部から突出する凸部453とを含む。可動部材451は、合成樹脂製の単一部材である。ベース部452の長軸方向の一端部には、バネ受け用の突起454が設けられている。凸部453には、磁石456が固定されている。
【0090】
可動部材451は、ハンドルハウジング15のカバー部181内で、ハンドルハウジング15に対して前後方向に移動可能に支持されている。より詳細には、カバー部181の左側壁には、支持部461が設けられている。支持部461は、前側ガイド部61のガイド壁615の後方、且つ、後側ガイド部62のガイド壁625の前方に配置されている。支持部461は、左側壁から内側(
図12に示す平面P)に向かって突出する複数の壁部で構成されている。支持部461は、前後方向に離間して配置された2つの支持壁462に設けられた2つのガイド凹部463を有する。2つのガイド凹部463は、前後方向に延びる1直線上に配置されており、夫々、可動部材451のベース部452の断面形状に概ね整合する形状を有する。
【0091】
可動部材451は、ベース部452が2つのガイド凹部463内に配置された状態で支持壁462に支持されており、支持壁462に対して前後方向に直線状に摺動可能である。なお、可動部材451は、ベース部452のバネ受け用の突起454が後方に突出し、可動部材451の凸部453が下方に突出するように配置されている。また、磁石456は、凸部453の左側面から露出している。詳細な図示は省略するが、ベース部452の後端部には、左方に突出する突起455(
図11参照)が設けられている。可動部材451の2つの支持壁462のうち後側の1つの後面に突起455が当接することで、可動部材451は、それ以上前方への移動することが禁止される。つまり、支持壁462のうち後側の1つは、可動部材451の最前方位置を規定する。
【0092】
付勢部材457は、可動部材451の後方で支持部461によって支持されている。付勢部材457は、圧縮コイルバネである。付勢部材457の一端部は、ベース部452の後端部のバネ受け用の突起454に嵌め込まれ、保持されている。付勢部材457の他端部は、支持部461のストッパ壁465に当接している。このような配置により、付勢部材457は、可動部材451を常に前方へ付勢しており、可動部材451は、後方への外力を受けていない状態(以下、初期状態という)では、上述の最前方位置(以下、初期位置ともいう)で保持される。
【0093】
ホールセンサ458は、ホール素子を備えた周知のセンサである。ホールセンサ458は、回路基板459に搭載されており、回路基板459は、ホールセンサ458が磁石456と向き合うように、可動部材451の左方に配置され、ネジを介して支持部461に固定されている。ホールセンサ458は、図示しない電線を介してコントローラ41に電気的に接続されており、磁石456が所定の検出範囲内に配置されている場合、特定の信号(オン信号)をコントローラ41へ出力するように構成されている。
【0094】
更に、
図6および
図12に示すように、可動部材451の右側には、薄板状のカバープレート467が配置され、ネジを介して支持部461に固定されている。カバープレート467は、可動部材451の右側面の一部を覆っている。カバープレート467は、可動部材451に部分的に接触しており、可動部材451の前後方向の摺動を許容しつつ、可動部材451がガイド凹部463から右方に外れることを防止する。なお、カバープレート467は、アルミニウム製である。このようなカバープレート467を採用することで、可動部材451の組み付けが容易で、磁石456には影響を及ぼさずに可動部材451を保持できる合理的な構成が実現されている。
【0095】
以下、位置検出機構45の動作について説明する。
【0096】
図3に示すように、本体ハウジング11には、可動部材451に当接し、可動部材451を移動させるための押圧突起65が設けられている。より詳細には、押圧突起65は、モータハウジング13のステータ収容部133の左上端部(詳細には、左側のストッパ突起631の後端)から後方に突出している。
【0097】
本体ハウジング11に対してハンドルハウジング15が初期位置(最後方位置)にあるときには、可動部材451は、
図10および
図11に示すように、初期位置(最前方位置)に保持されている。このとき、可動部材451のベース部452の前端は、本体ハウジング11の押圧突起65から僅かに後方に離間している。なお、押圧突起65と、可動部材451と、付勢部材457とは、前後方向に延在する直線上に配置されている。なお、前側ガイド部61の凹部616も、この直線上に配置されている。可動部材451が初期位置にあるとき、磁石456は、ホールセンサ458の右側でホールセンサ458に対向し(
図12参照)、ホールセンサ458の検出範囲内にある。よって、ホールセンサ458は、コントローラ41にオン信号を出力する。
【0098】
一方、ハンドルハウジング15が本体ハウジング11に対して初期位置から前方へ移動すると、
図13および
図14に示すように、本体ハウジング11の押圧突起65が可動部材451のベース部452の前端に当接し、可動部材451を、付勢部材457の付勢力に抗して後方へ移動させる。ハンドルハウジング15が、本体ハウジング11に対して初期位置よりも前方の所定位置に達すると、可動部材451は、初期位置よりも後方の所定位置まで移動する。これに伴い、磁石456はホールセンサ458の検出範囲から離脱し、オン信号の出力を停止する。
【0099】
なお、このときのハンドルハウジング15の所定位置(以下、オフ位置という)は、ハンドルハウジング15の移動可能範囲における最前方位置よりも若干後方に設定されている。同様に、可動部材451の所定位置(以下、オフ位置という)は、可動部材451の移動可能範囲の最後方位置よりも若干前方に設定されている。可動部材451がオフ位置から最後方位置の間にあるときには、ホールセンサ458はオン信号を出力しない。
【0100】
以上のように、ホールセンサ458は、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の移動に伴って直線状に移動する可動部材451の位置を、磁石456を介して検出することができる。つまり、ホールセンサ458は、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の相対位置を検出することができる。詳細は後述するが、ホールセンサ458の検出結果は、コントローラ41によるモータ2の駆動制御に使用される。
【0101】
なお、本実施形態では、上述のように、位置検出機構45の可動部材451およびホールセンサ458の両方が、ハンドルハウジング15に設けられている。可動部材451が本体ハウジング11およびハンドルハウジング15のうち一方に設けられ、ホールセンサ458が他方に設けられる場合、本体ハウジング11およびハンドルハウジング15の夫々の寸法誤差に起因して、可動部材451とホールセンサ458との位置関係が本来の設定とは異なってしまい、ホールセンサ458の誤検出が生じうる。これに対し、本実施形態のように、可動部材451およびホールセンサ458の両方を、同じハンドルハウジング15に配置することで、可動部材451とホールセンサ458との位置関係をより安定化し、誤検出の可能性を低減することができる。特に、本実施形態では、可動部材451およびホールセンサ458が、本体ハウジング11ではなくハンドルハウジング15に配置されることで、振動からの保護も図られている。
【0102】
また、可動部材451およびホールセンサ458は、ハンドルハウジング15のうち、モータハウジング13の後部を周方向に取り巻くカバー部181の内部に取り付けられている。これにより、本体ハウジング11およびハンドルハウジング15を前後方向に大型化することなく、可動部材451およびホールセンサ458の合理的な配置が実現されている。更に、カバー部181とモータハウジング13(詳細には、上側延在部141)との間で前後方向に直線状に移動する可動部材451を採用することで、径方向の大型化も抑制されている。
【0103】
更に、可動部材451およびホールセンサ458は、前後方向において、前側ガイド部61と後側ガイド部62との間にある。また、可動部材451およびホールセンサ458は、上下方向において、前側ガイド部61および後側ガイド部62と概ね同じ位置にある。つまり、可動部材451およびホールセンサ458は、本体ハウジング11とハンドルハウジング15とが前後方向に最も安定して相対移動する位置に配置されている。これにより、更なる検出精度の向上が図られている。
【0104】
また、上述のように、押圧突起65と、可動部材451と、付勢部材457とが、前後方向に延在する一直線上に配置されているため、押圧突起65は、可動部材451を精度よく直線状に移動させることができる。一方で、ホールセンサ458の検出対象である磁石456は、この直線からは外れた位置で可動部材451に取り付けられている。これにより、ホールセンサ458の配置位置をより自由に設定することが可能となる。
【0105】
なお、本実施形態では、ホールセンサ458は、上述のように、検出範囲内に配置された磁石456を検出するように構成されている。これに代えて、ホールセンサ458は、磁石456のS極とN極とを区別して検出可能であってもよい。この場合、例えば、可動部材451には、N極が前側、S極が後側に位置するように、磁石456が取付けられる。ホールセンサ458は、可動部材451が初期位置と所定位置の間にあるとき(所定位置は含まない)には、S極を検出し、可動部材451が所定位置と最後方位置の間にあるときには、N極を検出する。そして、ホールセンサ458は、磁石456のS極を検出した場合とN極を検出した場合とで、異なる信号をコントローラ41に出力すればよい。この場合も、ホールセンサ458は、可動部材451の位置、ひいては本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の相対位置を、磁石456を介して検出することができる。
【0106】
以下、コントローラ41によるモータ2の駆動制御について説明する。
【0107】
本実施形態では、コントローラ41(より詳細には、制御回路)は、いわゆるソフトノーロード制御を行うように構成されている。ソフトノーロード制御とは、スイッチ173がオン状態にある場合、無負荷状態では、モータ2の回転速度を、予め定められた比較的低い回転速度(以下、初期回転速度という)以下に制限する一方、負荷状態では、モータ2の回転速度が初期回転速度を超えることを許容する駆動制御手法である。なお、無負荷状態とは、先端工具91に負荷が加えられていない状態のことをいい、負荷状態とは、先端工具91に負荷が加えられている状態のことをいう。ソフトノーロード制御によれば、無負荷状態におけるモータ2の無駄な電力消費を低減することができる。
【0108】
本実施形態では、ソフトノーロード制御における無負荷状態と負荷状態の判別に、位置検出機構45(詳細には、ホールセンサ458)の検出結果が用いられる。先端工具91が加工材に押し付けられると、本体ハウジング11に弾性連結されたハンドルハウジング15は、本体ハウジング11に対して相対的に前方へ移動する。つまり、ハンドルハウジング15の前方への相対移動、ひいては可動部材451の後方への直線移動は、無負荷状態から負荷状態への移行に対応する。よって、ホールセンサ458は、可動部材451の動き(詳細には、磁石456の検出の有無)を介して、加工材に対する先端工具91の押付け(つまり、無負荷状態から負荷状態への移行)を適切に検出することができる。特に、本実施形態では、上述のような可動部材451およびホールセンサ458の構成により、ホールセンサ458は無負荷状態から負荷状態への移行を精度よく検出することができる。
【0109】
より詳細には、無負荷状態では、弾性部材51の付勢力により、ハンドルハウジング15および可動部材451は、夫々の初期位置(最後方位置および最前方位置)に配置される。よって、ホールセンサ458が磁石456を検出し、位置検出機構45はオン信号を出力する。コントローラ41は、位置検出機構45からの出力がオンの場合、モータ2は無負荷状態にあると判定する。コントローラ41は、スイッチ173がオフ状態からオン状態とされると、モータ2の駆動を開始する。
【0110】
なお、本実施形態では、速度変更ダイヤル(図示略)によって設定された回転速度が、トリガ171の最大操作量に対応する回転速度(つまり、最高回転速度)として用いられる。そして、モータ2の回転速度は、最高回転速度と、実際のトリガ171の操作量(押圧量)に基づいて設定される。無負荷状態では、コントローラ41は、最高回転速度とトリガ171の操作量に基づいて算出される回転速度が初期回転速度以下であれば、算出された回転速度をそのままモータ2の回転速度として設定する。一方、算出される回転速度が初期回転速度を超える場合、コントローラ41は、初期回転速度をモータ2の回転速度として設定する。
【0111】
モータ2の駆動に伴い、モード変更レバー39を介して選択された動作モードに応じて駆動機構3が駆動され、打撃動作およびドリル動作のうち少なくとも一方が遂行される。
【0112】
使用者が、把持部17を把持した状態で先端工具91を加工材に押し付けると、ハンドルハウジング15は、ハンドルハウジング15に対し、弾性部材51を圧縮しつつ、初期位置から前方へ移動する。このとき、前側ガイド部61および後側ガイド部62が、本体ハウジング11とハンドルハウジング15との前後方向の相対的な摺動を案内する。ハンドルハウジング15の前方への相対移動に伴って、押圧突起65に押圧され、可動部材451が初期位置から後方へ移動される。ハンドルハウジング15および可動部材451がオフ位置へ到達すると、ホールセンサ458はオン信号の出力を停止する。コントローラ41は、ホールセンサ458からの出力のオンからオフへの変化を、無負荷状態から負荷状態への移行と認識する。
【0113】
コントローラ41は、負荷状態への移行を認識すると、最高回転速度とトリガ171の操作量に基づいて算出される回転速度でモータ2を駆動する。無負荷状態とは異なり、算出された回転速度が初期回転速度を超えていても、コントローラ41は回転速度を制限しない。
【0114】
また、ホールセンサ458からの出力がオフの状態で(つまり、負荷状態で)スイッチ173がオン状態にされた場合には、コントローラ41は、最高回転速度とトリガ171の操作量に基づいて算出される回転速度で、モータ2の駆動を開始する。
【0115】
何れの場合も、コントローラ41は、トリガ171の引き操作が解除され、スイッチ173がオフ状態となると、モータ2の駆動を停止する。
【0116】
なお、コントローラ41は、スイッチ173がオン状態で、ホールセンサ458からの出力のオフ状態からオン状態への変化(つまり、ハンドルハウジング15および可動部材451のオフ位置から初期位置へ向かう相対移動、負荷状態から無負荷状態への移行)を認識した場合、モータ2の回転速度を初期回転速度以下に制限するように構成されていてもよい。この場合、例えば、コントローラ41は、タイマにより、変化後のホールセンサ458のオン状態の継続時間を監視する。そして、所定時間に亘ってオン状態が継続した場合に限り、モータ2の回転速度を初期回転速度以下に制限すればよい。これは、加工作業に伴って本体ハウジング11が振動しているときの一時的なオン状態への変化と、負荷状態から無負荷状態への変化とを確実に区別するためである。
【0117】
更に、本実施形態では、コントローラ41は、ソフトノーロード制御に加え、加速度検出ユニット43(詳細には、加速度センサ)の検出結果に基づく制御も行うように構成されている。より詳細には、コントローラ41は、加速度検出ユニット43から出力されたエラー信号を認識した場合、モータ2の駆動を停止するように構成されている。上述のように、エラー信号は、本体ハウジング11の駆動軸A1周りの過度な回転状態を示すものである。よって、コントローラ41は、エラー信号を認識した場合、それ以上の回転を防止するために、モータ2の駆動を停止する。あるいは、コントローラ41は、エラー信号に加え、他の情報(例えば、先端工具91に作用しているトルク、モータ2の駆動電流)に基づいて、過度な回転が生じているか否かを判断してもよい。
【0118】
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。
【0119】
ハンマドリル1は、「穿孔工具」の一例である。先端工具91は、「先端工具」の一例である。モータ2、ステータ21、ロータ23、モータシャフト25、回転軸A2は、夫々、「モータ」、「ステータ」、「ロータ」、「モータシャフト」、「第1の軸」の一例である。ツールホルダ30、駆動軸A1は、夫々、「ツールホルダ」、「第2の軸」の一例である。本体ハウジング11は、「本体ハウジング」の一例である。把持部17は、「把持部」の一例である。把持部17の上端部および下端部は、夫々、「第1端部」および「第2端部」の一例である。ベース部18(前側延在部188)は、「接続部」の一例である。センサ本体431および加速度センサは、夫々、「検出装置」および「加速度センサ」の一例である。
【0120】
コントローラ41(制御回路)は、「制御装置」の一例である。下側延在部186および前側延在部188は、夫々、「第1部分」および「第2部分」の一例である。バッテリ装着部187は、「バッテリ装着部」の一例である。弾性部材435は、「第1弾性部材」の一例である。ハンドルハウジング15は、「ハンドルハウジング」の一例である。弾性部材51は、「第2弾性部材」の一例である。
【0121】
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る穿孔工具は、例示されたハンマドリル1に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。また、これらの変更のうち少なくとも1つが、実施形態に例示されるハンマドリル1、および各請求項に記載された発明の何れかと組み合わされて採用されうる。
【0122】
上記実施形態では、穿孔工具として、ハンマドリル1が例示されているが、本発明は、ハンマドリル1以外の穿孔工具(例えば、電動ドリル、震動ドリル、ドライバドリル)に適用されてもよい。また、ハンマドリル1は、ハンマモードおよびドリルモードの2つの動作モードのみを有してもよい。本発明が適用される穿孔工具に応じて、モータ2および駆動機構3は、適宜変更されうる。
【0123】
本体ハウジング11およびハンドルハウジング15の構成は、適宜変更されうる。例えば、本体ハウジング11のギヤハウジング12およびモータハウジング13は、夫々、実施形態とは異なる形状を有してもよいし、連結態様が異なっていてもよい。ハンドルハウジング15についても同様である。また、本体ハウジング11とハンドルハウジング15の弾性連結構造は、適宜、変更されてもよい。例えば、弾性部材51の配置が変更されてもよい。また、複数の弾性部材が、本体ハウジング11とハンドルハウジング15の間に介在してもよい。なお、弾性部材は、圧縮コイルバネのほか、各種バネ、ゴム、合成樹脂を採用することができる。
【0124】
更に、本体ハウジング11とハンドルハウジング15とは、弾性連結されていなくてもよい。例えば、左半割体と右半割体とが、左右方向に連結されることで形成される単一のハウジングに、モータ2、ツールホルダ30、駆動機構3、スイッチ173、加速度検出ユニット43等が収容されていてもよい。
【0125】
また、前側ガイド部61、後側ガイド部62、規制部67の構成、数、配置位置等も、適宜、変更または省略されうる。
【0126】
加速度検出ユニット43は、ベース部18内で別の位置(例えば、下側延在部186)に配置されてもよい。なお、駆動軸A1周りの回転状態の適切な検出のためには、加速度検出ユニット43は、できるだけ駆動軸A1から離れた位置に配置されることが好ましい。また、ハンマドリル1の駆動軸A1周りの回転状態に対応する情報(物理量、指標)は、必ずしも加速度である必要はなく、他の物理量(例えば、変位量、速度、角速度等)が採用されてもよい。そして、検出される情報に応じて、加速度センサに代えて、適切な検出器が採用されうる。
【0127】
また、加速度センサユニット43の弾性支持構造は、上記実施形態の例に限られない。弾性部材435の形状、数、配置位置、材質は、適宜変更されうる。また、加速度センサユニット43は、弾性支持されることが好ましいが、ハンドルハウジング15に直接支持されていてもよい。
【0128】
上記実施形態では、位置検出機構45による、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の相対位置の検出結果が、ソフトノーロード制御で利用される。しかしながら、位置検出機構45に代えて、本体ハウジング11に対するハンドルハウジング15の相対位置を検出可能な他の検出機構が採用されてもよい。例えば、磁界検出式以外の非接触方式(例えば、光学式)のセンサが採用されてもよいし、接触方式の検出機構(例えば、機械式のスイッチ)が採用されてもよい。また、位置検出機構45の配置は変更されてもよい。また、位置検出機構45が省略され、ソフトノーロード制御は行われなくてもよい。
【0129】
ハンマドリル1は、バッテリ93ではなく、外部の交流電源から供給される電力で動作するように構成されていてもよい。つまり、バッテリ装着部187は、省略されてもよい。
【0130】
コントローラ41の配置位置は、適宜、変更可能である。また、上記実施形態では、コントローラ41の制御回路は、CPU等を含むマイクロコンピュータによって構成される例が挙げられているが、他の種類の制御回路が採用されてもよい。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブル・ロジック・デバイスが採用されうる。また、上記実施形態の制御処理は、複数の制御回路で分散処理されてもよい。
【0131】
更に、本発明、上記実施形態およびその変形例の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様のうち少なくとも1つが、上述の実施形態およびその変形例、ならびに各請求項に記載された発明の何れかと組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記検出装置は、前記接続部のうち、前記第2部分の下端部内に配置されている。
[態様2]
前記接続部は、
前記本体ハウジングの一部を前記第2の軸周りの周方向に少なくとも部分的に取り巻くカバー部と、
前記把持部の上端部から前方に延在して前記カバー部に接続する上側延在部と、
前記把持部の下端部から前方に延在する下側延在部と、
前記下側延在部の前端部から上方に延在して前記カバー部に接続する前側延在部とを含み、
前記検出装置は、前記前側延在部の下端部内、または、前記下側延在部内に配置されている。
カバー部181、上側延在部184、下側延在部186、前側延在部188は、夫々、「カバー部」、「上側延在部」、「下側延在部」、「前側延在部」の一例である。
【符号の説明】
【0132】
1:ハンマドリル、2:モータ、3:駆動機構、11:本体ハウジング、12:ギヤハウジング、121:バレル部、125:支持体、13:モータハウジング、13L、13R:半割体、131:連結部、133:ステータ収容部、135:軸受収容部、136:貫通孔、141:上側延在部、146:下側延在部、147:開口、15:ハンドルハウジング、15L、15R:半割体、17:把持部、171:トリガ、173:スイッチ、18:ベース部、181:カバー部、182:後壁、183:支持壁、184:上側延在部、186:下側延在部、187:バッテリ装着部、188:前側延在部、21:ステータ、23:ロータ、25:モータシャフト、251:軸受、253:軸受、28:ファン、30:ツールホルダ、31:運動変換機構、32:中間シャフト、33:回転体、34:揺動部材、35:ピストンシリンダ、36:シリンダ、37:打撃要素、371:ストライカ、373:インパクトボルト、38:回転伝達機構、381:第1ギヤ、382:第2ギヤ、39:モード変更レバー、41:コントローラ、43:加速度検出ユニット、431:センサ本体、433:ケース、435:弾性部材、437:ピン、45:位置検出機構、451:可動部材、452:ベース部、453:凸部、454:突起、455:突起、456:磁石、457:付勢部材、58:ホールセンサ、459:回路基板、461:支持部、462:支持壁、463:ガイド凹部、465:ストッパ壁、467:カバープレート、51:弾性部材、53:バネ受け部材、59:蛇腹部、61:前側ガイド部、611:ガイド突起、612:カバープレート、615:ガイド壁、616:凹部、62:後側ガイド部、621:ガイド突起、622:カバープレート、625:ガイド壁、626:凹部、631:ストッパ突起、633:ストッパ壁、635:ストッパ壁、65:押圧突起、67:規制部、671:当接部、672:当接面、673:当接プレート、674:突起、677:弾性部材、91:先端工具、93:バッテリ、A1:駆動軸、A2:回転軸