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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】排気配管装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20240527BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240527BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240527BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20240527BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C23C16/44 E
H01L21/302 101G
H01L21/205
H05H1/24
H05H1/46 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020143972
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022039119
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】松葉 博
(72)【発明者】
【氏名】大石 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】福水 裕之
(72)【発明者】
【氏名】栗原 一彰
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508029(JP,A)
【文献】特開2020-033619(JP,A)
【文献】特開2013-084561(JP,A)
【文献】特開2015-213171(JP,A)
【文献】特開平07-245192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/44
H01L 21/3065
H01L 21/205
H05H 1/24
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜チャンバと前記成膜チャンバ内を排気する真空ポンプとの間に配置される排気配管の一部として用いられる排気配管装置であって、
誘電体管と、
前記誘電体管の外周側に配置され、高周波電圧が印加される高周波電極と、
前記誘電体管の端部に配置され、前記高周波電極との距離が前記誘電体管の外部側よりも内部側の方が小さくなるように配置され、グランド電位が印加されるグランド電極と、
前記誘電体管の内側にプラズマを生成させるプラズマ生成回路と、
を備えたことを特徴とする排気配管装置。
【請求項2】
前記誘電体管の外側で前記高周波電極と前記グランド電極との少なくとも一方を被覆する誘電体をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の排気配管装置。
【請求項3】
成膜チャンバと前記成膜チャンバ内を排気する真空ポンプとの間に配置される排気配管の一部として用いられる排気配管装置であって、
誘電体管と、
前記誘電体管の外周側に前記誘電体管との間に空間を開けて配置された外部管と、
前記誘電体管の外周側の前記空間に配置され、高周波電圧が印加される高周波電極と、
前記誘電体管の内側にプラズマを生成させるプラズマ生成回路と、
前記外部管と前記誘電体管との間の空間と前記空間内の部材との少なくとも一方に冷媒を導入し前記誘電体管を冷却する冷却機構と、
を備え
前記外部管にガス導入口及びガス排出口が形成され、
前記冷却機構は、前記外部管のガス導入口及びガス排出口を経由して、前記外部管と前記誘電体管との間の空間に前記冷媒としての冷却ガスを流すことを特徴とする排気配管装置。
【請求項4】
前記誘電体管の端部側に配置され、内部に空洞が形成されたフランジをさらに備え、
前記冷却機構は、前記フランジ内の空洞を経由して、前記冷媒を導入することを特徴とする請求項3記載の排気配管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、排気配管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学気相成長(CVD)装置に代表される成膜装置では、原料ガスを成膜チャンバ内に導入して、成膜チャンバに配置される基板上に所望の膜を成膜する。そして、成膜チャンバ内に残存する原料ガスは、排気配管を経由して真空ポンプにより排気される。その際、原料ガスに起因する生成物が排気配管内に堆積し、排気配管を閉塞させてしまうといった問題や、排気配管よりも下流側の真空ポンプ内に堆積し、真空ポンプを停止させてしまうといった問題があった。かかる堆積物の除去には、リモートプラズマソース(RPS)装置によるクリーニング処理が実施される。しかしながら、RPS装置は一般に成膜チャンバ内のクリーニングを主眼としているので、RPS装置から距離が離れた真空ポンプ近くの排気配管内および真空ポンプ内に堆積する生成物までクリーニングするにはクリーニング性能が不十分であった。
【0003】
ここで、セラミック又はクオーツなどの絶縁性物質の導管の外周に高周波電極を配置し、導管の両端部に設けられた配管用フランジを接地電極として、高周波電極に高周波電圧を印加して、導管内部にプラズマを生成する。そして、このプラズマにより、アッシング、エッチング、蒸着、洗浄及び窒化処理の工程で生じる未反応ガスや廃ガスを除去するといった技術が開示されている。しかしながら、かかる構成では、導管外部でのアーキングといった異常放電を回避するため高周波電極と接地電極との距離を大きくする必要が生じると共に電圧の増加にも制限が生じる。この結果、導管内部でのプラズマ生成が不安定になるといった問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2007/0074662号明細書
【文献】特開2014-508029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、アーキングといった異常放電を回避しながら、真空ポンプ近くの排気配管内部に堆積する生成物を除去することが可能な排気配管装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の排気配管装置は、成膜チャンバと前記成膜チャンバ内を排気する真空ポンプとの間に配置される排気配管の一部として用いられる排気配管装置であって、誘電体管と、高周波電極と、グランド電極と、プラズマ生成回路と、を備える。高周波電極は、前記誘電体管の外周側に配置され、高周波電圧が印加される。グランド電極は、前記誘電体管の端部に配置され、前記高周波電極との距離が前記誘電体管の外部側よりも内部側の方が小さくなるように配置され、グランド電位が印加される。プラズマ生成回路は、前記誘電体管の内側にプラズマを生成させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態における半導体製造装置の排気系の構成の一例を示す構成図である。
図2】第1の実施形態における排気配管装置の一例の正面方向から見た断面図である。
図3】第1の実施形態における排気配管装置の一例の上面方向から見た断面図である。
図4】第1の実施形態の比較例における排気配管装置の一例の正面図である。
図5】第2の実施形態における排気配管装置の一例の正面方向から見た断面図である。
図6】第3の実施形態における内管温度とクリーニング処理時間との関係を説明するためのグラフである。
図7】第3の実施形態における排気配管装置の一例の正面方向から見た断面図である。
図8】第3の実施形態の変形例における冷却機構の構成の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における半導体製造装置の排気系の構成の一例を示す構成図である。図1の例では、半導体製造装置として、成膜装置、例えば、化学気相成長(CVD)装置200を示している。図1の例では、2つの成膜チャンバ202を配置したマルチチャンバ方式のCVD装置200が示されている。CVD装置200では、所望の温度に制御された成膜チャンバ202内に、成膜対象の半導体基板204(204a,204b)を配置する。そして、真空ポンプ400により排気配管150,152を通じて真空引きを行って、調圧バルブ210により所望の圧力に制御された成膜チャンバ202内に原料ガスを供給する。成膜チャンバ202内では、原料ガスの化学反応により所望の膜が基板204上に成膜される。例えば、シラン(SiH)系のガスを主原料ガスとして導入して、シリコン酸化膜(SiO膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)を成膜する。その他、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)ガス等を主原料ガスとして導入して、シリコン酸化膜(SiO膜)を成膜する。これらの膜を成膜する際に、成膜チャンバ202内及び排気配管150,152内には、原料ガスに起因する生成物が堆積する。そのため、成膜プロセスサイクルでは、成膜工程の他にクリーニング工程が実施される。
【0009】
クリーニング工程では、成膜チャンバ202の上流側に配置されるリモートプラズマソース(RPS)装置300に三フッ化窒素(NF)ガス等のクリーニングガスやアルゴン(Ar)ガス等のパージガスを供給して、プラズマによりフッ素(F)ラジカルを生成する。そして、成膜チャンバ202内及び排気配管150側にFラジカルを供給(拡散)することで、堆積する生成物のクリーニングを行っている。クリーニングにより堆積物を分解後に生成される、例えば、四フッ化ケイ素(SiF)は、揮発性が高いため、排気配管150,152を通って真空ポンプ400から排気される。
【0010】
しかしながら、排気配管150,152のうち成膜チャンバ202から距離が離れた部分までは、Fラジカルが届き難く、クリーニング性能が劣化してしまう。特に、真空ポンプ400の吸気口に近い位置では、圧力が低くなるためクリーニングレートが低くなってしまう。その結果、排気配管150,152内が堆積した生成物により閉塞してしまう場合がある。また、真空ポンプ400内に堆積した生成物によりローターとケーシングとの間の隙間が埋まってしまい過負荷状態となり真空ポンプ400が停止してしまう場合がある。そこで、第1の実施形態では、図1に示すように、成膜チャンバ202に比べて真空ポンプ400の吸気口に近い位置に排気配管装置100を配置する。
【0011】
図1において、第1の実施形態における排気配管装置100は、成膜チャンバ202と成膜チャンバ202内を排気する真空ポンプ400との間に配置される排気配管150,152を含む排気配管の一部として用いられる。排気配管装置100は、外部管102と、誘電体による内管190(誘電体管)と、プラズマ生成回路106と、を備えている。外部管102は、例えば、通常の排気配管150,152と同じ材料の配管材が用いられる。例えば、SUS304等のステンレス鋼材が用いられる。但し、外部管102の材料としては、クリーニングガスに対する耐食性の観点から、より好ましくは、SUS316鋼材が用いられる。また、外部管102は、例えば、通常の排気配管150,152と同じサイズの配管材が用いられる。但し、これに限るものではない。排気配管150,152よりも大きいサイズの配管であっても構わない。或いは、小さいサイズの配管であっても構わない。
【0012】
内管190と外部管102の両端部には、フランジが配置され、一方の端部が同サイズのフランジが配置された排気配管150に接続され、他方の端部が同サイズのフランジが配置された排気配管152に接続される。図1において、排気配管装置100のフランジと、排気配管150,152の各フランジとを固定する、クランプ等の図示は省略している。以下、各図において同様である。また、排気配管150,152との接続に用いるOリング等のシール材の図示は省略している。以下、各実施形態では、排気配管装置100と真空ポンプ400との間に排気配管152を挟んでいる場合を示しているが、これに限るものではない。真空ポンプ400の吸気口に直接、排気配管装置100が配置される場合であっても構わない。誘電体による内管190は、外部管102の内部に配置される。プラズマ生成回路106は、内管190外周に配置される後述する電極を用いて、誘電体による内管190の内部に容量結合プラズマ(CCP)を生成させる。
【0013】
図2は、第1の実施形態における排気配管装置の一例の正面方向から見た断面図である。図3は、第1の実施形態における排気配管装置の一例の上面方向から見た断面図である。図2において、断面構造は、排気配管装置100について示し、その他の構成は断面を示していない。以下、正面方向から見た各断面図において同様である。図2及び図3において、排気配管装置100は、外部管102と、外部管102の内側に配置される誘電体による内管190との2重管構造に形成される。内管190の形状は、外部管102と同種の形状に形成される。図2及び図3の例では、断面が円形の筒状(環状)の外部管102に対して、断面が同種の円形の筒状(環状)の内管190が用いられる。その他、断面が矩形の筒状の外部管102に対して、同種の矩形の筒状の内管190が用いられても構わない。
【0014】
内管190は、外部管102の内壁と空間を開けて配置される。内管190となる誘電体の材料は、空気の誘電率よりも大きい材料であれば良い。内管190の材料として、例えば、石英、アルミナ(Al)、イットリア(Y)、ハフニア(HfO)、ジルコニア(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)、或いは窒化アルミニウム(AlN)等を用いると好適である。排気性能に支障が無い範囲であれば、内管190の厚さは適宜設定すればよい。
【0015】
外部管102よりも内側であって、内管190の外周側には高周波電極104が配置される。高周波電極104は、内管190の外周形状に合わせた形状で形成される。断面が円形の筒状(環状)の内管190に対して、断面が同種の円形の筒状(環状)の高周波電極104が用いられる。高周波電極104は、内管190と接触して配置されることが望ましいが、これに限るものではない。
【0016】
内管190の端部側にフランジ19が配置される。図2の例では、内管190の両端部にそれぞれ配管用のフランジ19が配置される。ガスの流れに対して上流側のフランジ19と、排気配管150のフランジとが固定される。ガスの流れに対して下流側のフランジ19と、排気配管152のフランジとが固定される。両フランジ19は、例えば、通常の排気配管150,152と同じ材料の配管材が用いられる。例えば、SUS304等のステンレス鋼材が用いられる。但し、フランジ19の材料としては、クリーニングガスに対する耐食性の観点から、より好ましくは、SUS316鋼材が用いられる。
【0017】
また、第1の実施形態では、図2に示すように、内管190及び内管190の外周側を覆う外部管102の上下端部に配置されるシール機構16によって、外部管102と内管190との間の空間を、大気及び内管190内の空間から遮断する。シール機構16は、例えば、以下のように構成すると好適である。各シール機構16は、凸部10、Oリング抑え11、Oリング12及びOリング14を有している。各凸部10は、内管190の両端部の各フランジ19において、それぞれのフランジ19面にリング状に設けられ、内管190の外部側で各フランジ19面から高周波電極104側に延びる。排気配管150側(上流側)のOリング14は、外部管102の排気配管150側(上流側)のフランジ面とフランジ19との間に配置される。排気配管152側(下流側)のOリング14は、外部管102の排気配管152側(下流側)のフランジ面とフランジ19との間に配置される。かかる場合、排気配管装置100の上流側では、フランジ19を挟んで外部管102のフランジと配管150のフランジがクランプ接続されると良い。排気配管装置100の下流側では、フランジ19を挟んで外部管102のフランジと配管152のフランジがクランプ接続されると良い。Oリング14によって、外部管102内の雰囲気を大気から遮蔽している。
【0018】
また、各Oリング12は、内管190端部の外周面と凸部10の内周面との間に押圧された状態で配置される。そのため、凸部10の内径が内管190外径サイズよりも大きく、凸部10の外径が外部管102の内径サイズよりも小さく形成される。各Oリング12は、Oリング抑え11によって押圧される。Oリング抑え11は、1つの部材で構成されても良いし、図2に示すように、内管190端部の外周面と凸部10の内周面との間に配置されるリング状部材とかかるリング状部材を支持する外側の部材との2つの部材の組み合わせにより構成されてもよい。これにより、Oリング12を介して内管190内の雰囲気を外部管102と内管190との間の空間から遮蔽している。
【0019】
第1の実施形態では、以上のような外部管102と内管190との密閉された2重管構造を形成することにより、誘電体の内管190が破損した場合でも、排気配管を流れるガスが大気中にリークする(漏れる)ことを防止できる。同様に、排気配管内に大気が突入(流入)することを防止できる。なお、外部管102と内管190との間の空間を大気圧に制御する場合でも、外部管102と内管190との間の空間の容量が小さいため、真空ポンプ400の故障を引き起こすほどの大気の流入を起こさないようにできる。
【0020】
図2及び図3の例では、プラズマ生成回路106によって高周波電極104に高周波(RF)電界が印加される。具体的には、外部管102の外周面に接続された導入端子ポート105から導入端子111(高周波導入端子の一例)を外部管102内部に導入し、導入端子111を高周波電極104に接続する。また、第1の実施形態において、フランジ19は、グランド電極(接地電極)として作用する。また、外部管102についても接地する。
【0021】
そして、プラズマ生成回路106は、高周波電極104とグランド電極との容量結合を用いて、内管190の内側にプラズマを生成させる。具体的には、フランジ19をグランド電極として接地(グランド電位を印加)した状態で、プラズマ生成回路106は、導入端子111を介して高周波電極104に高周波(RF)電圧を印加することで、誘電体の内管190内に、容量結合プラズマ(CCP)を生成させる。また、クリーニング工程では、上述したNFガス等のクリーニングガスが上流側において供給されているので、その残りを利用して、内管190の内側にプラズマによるFラジカルが生成される。そして、かかるFラジカルにより、内管190内部に堆積する生成物を除去する。これにより、排気配管内で高いクリーニング性能を発揮できる。
【0022】
その後、Fラジカルによる堆積物の分解後に生成される、例えば、SiFは、揮発性が高いため、排気配管152を通って真空ポンプ400により排気される。また、排気配管装置100で生成されるラジカルの一部が排気配管152を通って真空ポンプ400に侵入し、真空ポンプ400内に堆積する生成物をクリーニングする。これにより、真空ポンプ400内に堆積する生成物の堆積量を低減できる。例えば、内管190の下端部側の内壁面の一部で生じたプラズマにより生成されたFラジカルを、内管190内部での消費が少ない状態で真空ポンプ400に侵入させることができる。
【0023】
図4は、第1の実施形態の比較例における排気配管装置の一例の正面図である。図4の比較例では、誘電体管390の外周側の外部管302と誘電体管390との間の空間に、高周波電極304が配置される場合を示している。また、誘電体管390の両端部には、グランド電極として作用する配管用フランジ319が配置される。そして、フランジ319をグランド電極として、高周波電極304に高周波(RF)電圧を印加することで容量結合プラズマ(CCP)を生成する。かかる構成では、フランジ319と高周波電極304との間で容量結合し、放電することになる。放電は、誘電体管390内部だけではなく、誘電体管390外部の大気側でも生じ得る。そのため、フランジ319(グランド電極)と高周波電極304との間の距離L3を放電しない程度まで大きくする必要が生じる。フランジ319(グランド電極)と高周波電極304との間の距離L3が大きい場合、誘電体管390内のガス流量や圧力が増加するとプラズマの生成が困難となり、不安定な放電になってしまう。これに対して、高周波電極304のガスの流れ方向の電極サイズを小さくし、電圧を上げる、或いは/及びフランジ319(グランド電極)と高周波電極304との間の距離L3を小さくすることでプラズマを生成し易くなるものの、大気側での異常放電(アーキング)が生じてしまう。
【0024】
そこで、第1の実施形態では、図2に示すように、高周波電極104との距離が内管190の外部側よりも内部側の方が小さくなるようにグランド電極を配置する。具体的には、内管190の内部側に各フランジ19面から高周波電極104側に延びるリング状の凸部18がそれぞれ形成される。各凸部18は、導電性材料で形成され、グランド電極の一部を構成する。各凸部18は、例えば、それぞれが接続されるフランジ19と一体で形成される。或いは、フランジ19と導通していればフランジ19と別体として形成されても構わない。また、各Oリング抑え11が導電性材料で形成される場合、各Oリング抑え11は、凸部10と当接されることにより、グランド電極の一部を構成することになる。
そして、図2の例においては、内管190の外部側では、凸部10の先端或いはOリング抑え11の高周波電極104側の露出面が高周波電極104と最も近いため、凸部18の先端と高周波電極104との距離L1が、内管190の外部側の凸部10の先端或いはOリング抑え11の高周波電極104側の露出面と高周波電極104との距離L2よりも小さくなるように凸部18が形成されている。凸部10が無い場合には、凸部18の先端と高周波電極104との距離L1が、内管190の外部側のフランジ面と高周波電極104との距離よりも小さくなるように凸部18を配置する。これにより、高周波電極104に高周波電圧を印加した際、凸部18と高周波電極104との間で先に放電が生じる。そのため、大気側での異常放電(アーキング)を起こすほどの電圧まで印加電圧を高める必要はない。よって、大気側での異常放電(アーキング)を起こさずに内管190内部で容量結合によるプラズマを生成することができる。真空側の電極間距離を小さくすることで、アーキングの抑制の他に、さらに、プラズマの着火性や安定性を高めることができる。
【0025】
なお、凸部18の先端と高周波電極104との距離L1が、さらに、接地された外部管102と高周波電極104との距離よりも小さくなるように凸部18が配置されることが望ましい。
【0026】
以上のように、第1の実施形態によれば、アーキングといった異常放電を回避しながら、真空ポンプ近くの排気配管内部に堆積する生成物を除去できる。
【0027】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、高周波電極104との距離が内管190の外部側よりも内部側の方が小さくなるようにグランド電極を配置する構成を説明したが、大気側での異常放電(アーキング)を回避する手法はこれに限るものではない。第2の実施形態では、大気側での金属部分の露出を無くす構成について説明する。また、以下、特に説明しない点は、第1の実施形態と同様である。
【0028】
図5は、第2の実施形態における排気配管装置の一例の正面方向から見た断面図である。第2の実施形態における排気配管装置の一例の上面方向から見た断面図は省略する。図5の例では、内管190の外側において、少なくとも高周波電極104と対向する位置のグランド電極となる金属部分と高周波電極104との間を空気よりも誘電率の大きい誘電体で遮蔽する。そのために、例えば、内管190の外側において高周波電極104とグランド電極との少なくとも一方を誘電体による電極カバーで被覆する。
具体的には、内管190の外側において高周波電極104の内周面以外を誘電体による高周波電極カバー20で被覆する。また、図5の例では、さらに、内管190の外側において、排気配管150側(上流側)のフランジ19面と凸部10とOリング抑え11とを含むグランド電極の露出面を誘電体によるグランド電極カバー22で被覆する。同様に、内管190の外側において、排気配管152側(下流側)のフランジ19面と凸部10とOリング抑え11とを含むグランド電極の露出面を誘電体によるグランド電極カバー24で被覆する。また、外部管102の内周面を誘電体による外部管カバー26で被覆する。誘電体による各カバーの厚さは、適宜設定すればよい。その他の構成は、図2と同様である。
【0029】
そして、プラズマ生成回路106は、高周波電極104とグランド電極との容量結合を用いて、内管190の内側にプラズマを生成させる。具体的には、フランジ19をグランド電極として接地(グランド電位を印加)した状態で、プラズマ生成回路106は、導入端子111を介して高周波電極104に高周波(RF)電圧を印加することで、誘電体の内管190内に、容量結合プラズマ(CCP)を生成させる。これにより、第1の実施形態と同様、真空ポンプ近くの排気配管内部に堆積する生成物を除去できる。
【0030】
図5の例では、大気側の金属部分を誘電体で被覆しているので、仮に高周波電極104に印加する電圧を上げた場合でも、大気側でのアーキングを抑制しながら内管190内部で容量結合によるプラズマを生成することができる。さらに言えば、凸部18を配置しない場合でも、大気側の金属部分を誘電体で被覆しているので、大気側でのアーキングを抑制しながら内管190内部で高周波電極104とフランジ19面(グランド電極)との容量結合によるプラズマを生成することができる。
【0031】
(第3の実施形態)
上述した各実施の形態では、誘電体による内管190の破損に伴うリーク及び大気突入を回避するべく、2重管構造を構成した。かかる誘電体による内管190の破損の原因として内管190の温度上昇が挙げられる。第3の実施形態では、内管190の温度上昇を抑制可能な構成について説明する。また、以下、特に説明しない点は、第1の実施形態と同様である。
【0032】
図6は、第3の実施形態における内管温度とクリーニング処理時間との関係を説明するためのグラフである。図6において、縦軸に排気配管における内管の温度、横軸にクリーニング工程での排気配管に対する連続処理時間を示す。また、図6の例に示すグラフは、内管190を冷却しないで使用した場合の一例を示す。クリーニング工程では、高周波電極104に高周波電圧を印加するため、高周波電極104の温度が上昇する。これに伴い、プラズマが内部に生成する誘電体である内管190の温度が上昇する。図6のグラフに示すように、冷却しないまま処理を続けると、クリーニング処理時間が長くなるのに伴って温度が上昇していき、最終的に内管190は破損に至る場合がある。誘電体の内管190の温度上昇に伴う破損を抑制するためには、内管190を冷却することが望まれる。
【0033】
これに対し、例えば、図4に示した比較例において、誘電体管390及び高周波電極304の外周側に配置された外部管302の外周面を、冷却水の供給により冷却することも考えられる。しかしながら、外部管302の外側を冷却しても、外部管302を介して外部管302と誘電体管390との間の空間を十分に冷却することは困難である。そのため、外部管302の冷却では、誘電体管390の温度は上昇していき、破損するおそれがある。そこで、第3の実施形態では、排気配管装置に冷却機構を配置する。そして、冷却機構が、外部管と内管との間の空間とかかる空間内の部材との少なくとも一方に冷媒を導入することによって内管を冷却する。
【0034】
図7は、第3の実施形態における排気配管装置の一例の正面方向から見た断面図である。第3の実施形態における排気配管装置の一例の上面方向から見た断面図は省略する。図7の例では、高周波電極104内に空洞34が形成される。空洞34は、高周波電極104内全体にわたって形成されると好適である。
【0035】
そして、図7の例では、外部管102と内管190との間の空間36内の部材の一例である高周波電極104内の空洞34に冷却水(冷媒の一例)を供給する。具体的には、以下のように構成する。図7の例において、排気配管152側(下流側)のフランジ19内部に、空洞31が形成される。同様に、排気配管150側(上流側)のフランジ19内部に、空洞33が形成される。空洞31,33は、それぞれのフランジ19内全体にわたって形成されても良いし、一部に形成されてもよい。例えば、直線上に延びる円筒状の2つの空洞がL字型に繋がるように形成されてもよい。空洞31は、フランジ19の側面に流入口が設けられると共に、外部管102と内管190との間の空間36側に流出口が形成される。空洞33は、外部管102と内管190との間の空間36側に流入口が設けられると共に、フランジ19の側面に流出口が形成される。空洞31の流出口と高周波電極104内の空洞34下部との間を冷却配管30が繋いでいる。そして、高周波電極104内の空洞34上部と空洞33の流入口との間を冷却配管32が繋いでいる。空洞31が形成されたフランジ19、空洞33が形成されたフランジ19、冷却配管30,32、及び空洞34が形成された高周波電極104は、第3の実施形態における冷却機構の一部を構成する。
【0036】
図7の例では、排気配管152側(下流側)のフランジ19の側面に供給された冷却水は、排気配管152側(下流側)のフランジ19内の空洞31を経由し、冷却配管30を通って高周波電極104内の空洞34下部に進む。高周波電極104内の空洞34下部に供給された冷却水は、空洞34内を下部から上部に向けて溜まっていく。高周波電極104内の空洞34上部から溢れた冷却水は、冷却配管32を通って排気配管150側(上流側)のフランジ19内の空洞33に進む。そして、フランジ19内の空洞33を経由し、フランジ19側面の流出口から排水される。
【0037】
かかる冷却水が流れている状態で、プラズマ生成回路106は、高周波電極104を用いて、内管190の内側にプラズマを生成させる。プラズマ生成回路106は、高周波電極104に高周波電圧を印加する。
【0038】
具体的には、プラズマ生成回路106は、フランジ19及び凸部18をグランド電極として接地した状態で、高周波電極104に導入端子111を介して高周波電圧を印加することで、高周波電極104の内側に配置される誘電体の内管190内に、容量結合プラズマ(CCP)を生成させる。このとき、高周波電極104内を流れる冷却水を用いて、プラズマ生成により温度が上昇する誘電体である内管190、及び内管109と外部管102との間の空間36を冷却する。これにより、高周波電圧が印加され、温度が上昇する高周波電極104を直接冷却すると共に、高周波電極104の内周面と接触する内管109を冷却する。よって、外部管102の外側から冷却する場合に比べて、内管190の温度上昇を抑制できる。
【0039】
また、第3の実施形態の冷却機構は、図7に示すように、さらに、ガス導入口41、バルブ40(或いは逆止弁42)、ガス排出口43、及びバルブ44(或いは逆止弁46)を有する。冷却機構は、バルブ40(或いは逆止弁42)を介して、外部管102の外周面の下部側に配置されたガス導入口41から冷却ガス(冷媒の他の一例)を内管109と外部管102との間の空間36内に導入する。そして、外部管102の外周面の上部側に配置されたガス排出口43から、バルブ44(或いは逆止弁46)を介して、冷却ガスを外部に排出する。かかる冷却ガスを内管109と外部管102との間の空間36内に流すことで、プラズマ生成により温度が上昇する誘電体である内管190、及び内管109と外部管102との間の空間36を冷却する。冷却ガスにより内管109が冷却されることで、内管109の破損を抑制できる。冷却ガスとして、例えば、空気が用いられる。
【0040】
冷却ガスは、大気圧よりも高い圧力で内管109と外部管102との間の空間36内に導入される。よって、内管109と外部管102との間の空間36内の圧力は、内管109の内側の空間の圧力及び大気圧よりも高い圧力に制御される。内管109と外部管102との間の空間36内の圧力は、外部管102の外周面に配置された通気口47を介して圧力センサ48によって測定され、空間36内の圧力の変動がモニタされる。ここで、プラズマ生成により温度が上昇する誘電体である内管190が仮に破損した場合、真空側に多くの冷却ガスが流れ込むと真空破壊が生じてしまう。そこで、圧力センサ48によって内管190の破損を検知する。
【0041】
具体的には、圧力センサ48によって圧力低下が検知された場合に、バルブ40,44を遮断するように制御する。これにより、冷却ガスの排気ラインへの流入を最小限に留めることができる。バルブ40の代わりに逆止弁42が用いられる場合、1次圧と2次圧の圧力差が0.1MPaより高い圧力であって、冷却ガスの供給圧よりも低い圧力で遮断するようにクラッキング圧が設定された逆止弁42を用いる。冷却ガスの供給が供給元において停止すると、1次圧(逆止弁の1次側)が大気圧、2次圧(外部管102内部)が大気圧以下(破損により圧力が大気圧より低下)、差圧が0.1MPa以下となるので、0.1MPa<クラッキング圧力<供給圧としておけば、冷却ガスは流れない。よって、内管190の破損の検知に応じて冷却ガスの供給が供給元において停止していれば、1次側が大気に開放された場合でも大気を外部管102内部へと流入させないようにできる。また、バルブ44の代わりに逆止弁46を用いる場合、内管190が破損すれば1次圧が2次圧よりも低くなるので流路を遮断できる。よって、大気を外部管102内部へと流入させないようにできる。
【0042】
その他の構成は、図2と同様である。
【0043】
なお、図7の例では、内管109を冷却するための冷媒として、冷却水及び冷却ガスを導入する冷却機構を説明したがこれに限るものではない。例えば、内管109を冷却するための冷媒として、冷却水及び冷却ガスの一方のみを導入する冷却機構を搭載した構成としても良い。
【0044】
図8は、第3の実施形態の変形例における冷却機構の構成の一例を示す構成図である。図8の変形例では、冷却機構として、高周波電極104の外周面上に冷却パイプ35を螺旋状に巻き付けた構成にしている。冷却パイプ35の下端部には冷却配管30が接続される。冷却パイプ35の上端部には冷却配管32が接続される。そして、排気配管152側(下流側)のフランジ19の側面に供給された冷却水は、排気配管152側(下流側)のフランジ19内の空洞31を経由し、冷却配管30を通って冷却パイプ35内を流れ、冷却パイプ35内を下部から上部に向けて溜まっていく。冷却パイプ35上部から溢れた冷却水は、冷却配管32を通って排気配管150側(上流側)のフランジ19内の空洞33に進む。そして、フランジ19内の空洞33を経由し、フランジ19側面の流出口から排水される。かかる冷却パイプ35内を流れる冷却水によって、高周波電極104が冷却されると共に内管190が冷却される。さらに、内管109と外部管102との間の空間36も冷却できる。その他の構成は図7と同様である。
【0045】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0046】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての排気配管装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0047】
18 凸部、19 フランジ、30,32 冷却配管、31,33,34 空洞、35 冷却パイプ、40,44 バルブ、41 ガス導入口、42,46 逆止弁、43 ガス排出口、100 排気配管装置、102 外部管、104 高周波電極、105 導入端子ポート、106 プラズマ生成回路、111 導入端子、150,152 配管、190 内管、202 成膜チャンバ、400 真空ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8