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特許7494073印刷装置およびインク吐出用のヘッドのメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】印刷装置およびインク吐出用のヘッドのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240527BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/01 401
B41J2/165 205
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020158432
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052196
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】梶原 快晴
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104124(JP,A)
【文献】特開2007-290264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0215189(US,A1)
【文献】特開2012-51303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからインクを吐出するヘッドを有するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットに下方から対向するベース部材と、
前記ベース部材に昇降可能に支持されて前記ヘッドに下方から対向するキャップと、
前記ベース部材に対して前記キャップを上方へ付勢する付勢部材と、
前記キャップを外側から囲むように前記ベース部材に配置された密着部材と、
前記ヘッドユニットと前記ベース部材との間隔を変更する間隔変更部と
を備え、
前記間隔変更部は、
前記キャップが前記ヘッドユニットに下方から当接した状態で前記付勢部材の付勢力に抗しつつ前記ヘッドユニットと前記ベース部材との間隔を第1間隔に設定することで前記密着部材を前記ヘッドユニットの形状に応じて弾性変形させて前記ヘッドユニットに密着させる第1動作と、
前記ヘッドユニットと前記ベース部材との間隔を前記第1間隔より広い第2間隔に設定することで、前記ヘッドユニットと前記密着部材とを離間させた状態で、前記付勢部材の付勢力によって前記キャップを前記ヘッドユニットに下方から当接させる第2動作と
を実行し、
前記第1動作によって前記ヘッドユニットに密着する前記密着部材は、当該密着部材の外側と内側との間の気体の流れを遮断することで、前記密着部材の内側の前記ノズルを前記密着部材の外側の雰囲気から隔絶し、
前記第2動作によって前記ヘッドユニットに当接する前記キャップは、前記キャップの外側と内側との間の気体の流れを許容し、
前記ヘッド内に貯留されるインクに圧力を加えて前記ノズルからインクを流出させるパージの実行時には、前記間隔変更部は、前記第2動作を実行することで、前記キャップを前記ノズルに対向させつつ前記ノズルから流出するインクを前記キャップにより受ける印刷装置。
【請求項2】
ノズルからインクを吐出するヘッドを有するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットに下方から対向するベース部材と、
前記ベース部材に昇降可能に支持されて前記ヘッドに下方から対向するキャップと、
前記ベース部材に対して前記キャップを上方へ付勢する付勢部材と、
前記キャップを外側から囲むように前記ベース部材に配置された密着部材と、
前記ヘッドユニットと前記ベース部材との間隔を変更する間隔変更部と
前記キャップに固定されたパージガイドブレード
を備え、
前記間隔変更部は、
前記キャップが前記ヘッドユニットに下方から当接した状態で前記付勢部材の付勢力に抗しつつ前記ヘッドユニットと前記ベース部材との間隔を第1間隔に設定することで前記密着部材を前記ヘッドユニットの形状に応じて弾性変形させて前記ヘッドユニットに密着させる第1動作と、
前記ヘッドユニットと前記ベース部材との間隔を前記第1間隔より広い第2間隔に設定することで、前記ヘッドユニットと前記密着部材とを離間させた状態で、前記付勢部材の付勢力によって前記キャップを前記ヘッドユニットに下方から当接させる第2動作と
を実行し、
前記第1動作によって前記ヘッドユニットに密着する前記密着部材は、当該密着部材の外側と内側との間の気体の流れを遮断することで、前記密着部材の内側の前記ノズルを前記密着部材の外側の雰囲気から隔絶し、
前記第2動作によって前記ヘッドユニットに当接する前記キャップは、前記キャップの外側と内側との間の気体の流れを許容し、
前記ノズルからインクを流出させるパージの実行時には、前記間隔変更部は、前記第2動作を実行することで、前記キャップを前記ノズルに対向させつつ前記ノズルから流出するインクを前記キャップにより受け、
前記パージガイドブレードは、前記第2動作の実行中は、前記ヘッドに接触することで、前記パージの実行によって前記ノズルから流出した後に前記ヘッドを伝って前記パージガイドブレードに到るインクを堰き止める一方、前記第1動作の実行中は、前記ヘッドから離間する印刷装置。
【請求項3】
前記キャップには、当該キャップの外側と内側とを連通させる連通孔が設けられている請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第2動作によって前記ヘッドユニットに当接する前記キャップは前記ヘッドユニットに密着せずに、前記キャップと前記ヘッドユニットとの間には隙間が形成され、
前記隙間を介して前記キャップの外側と内側とで気体が流れる請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記キャップのうち、少なくとも前記ヘッドユニットに当接する部分は樹脂である請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
ノズルからインクを吐出するヘッドを有するヘッドユニットに下方から対向するベース部材に昇降可能に支持されて前記ヘッドに下方から対向するキャップが前記ヘッドユニットに当接した状態で、前記ベース部材に対して前記キャップを上方へ付勢する付勢部材の付勢力に抗しつつ前記ヘッドユニットと前記ベース部材との間隔を第1間隔に設定することで、前記キャップを外側から囲むように前記ベース部材に配置された密着部材を前記ヘッドユニットの形状に応じて弾性変形させて前記ヘッドユニットとに密着させる第1動作を実行する工程と、
前記ヘッドユニットと前記ベース部材との間隔を前記第1間隔より広い第2間隔に設定することで、前記ヘッドユニットと前記密着部材とを離間させた状態で、前記付勢部材の付勢力によって前記キャップを前記ヘッドユニットに下方から当接させる第2動作を実行する工程と
を備え、
前記第1動作によって前記ヘッドユニットに密着する前記密着部材は、当該密着部材の外側と内側との間の気体の流れを遮断することで、前記密着部材の内側の前記ノズルを前記密着部材の外側の雰囲気から隔絶し、
前記第2動作によって前記ヘッドユニットに当接する前記キャップは、前記キャップの外側と内側との間の気体の流れを許容し、
前記ヘッド内に貯留されるインクに圧力を加えて前記ノズルからインクを流出させるパージの実行時は、前記第2動作を実行することで、前記キャップを前記ノズルに対向させて、前記ノズルから流出するインクを前記キャップにより受ける印刷用ヘッドのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インク吐出用のヘッドに対してメンテナンスを実行する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインクを吐出するインク吐出用のヘッドに対しては、ノズルの目詰まりの防止のために、メンテナンスユニットにより種々のメンテナンスが実行される。例えば、印刷の停止中は、ノズルの乾燥を防止するために、メンテナンスユニットのキャップによってノズルを下方から覆って、ノズルを外側の雰囲気から隔絶する。また、固化したインクを強制的にノズルから排出するために、ノズルからインクを流出させるパージが適宜実行される(特許文献1)。このパージにおいても、メンテナンスユニットはキャップによりノズルを下方から覆って、ノズルから流出するインクをキャップによって受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-240235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ノズルの乾燥防止のためには、キャップによってノズルを封止して、ノズルを外部の雰囲気から隔絶するのが好ましい。一方、このようにキャップでノズルを封止した状態でパージを実行すると、キャップの内部の圧力が過大となって、インクがキャップから噴出する場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、パージに伴うインクの噴出を回避しつつノズルの目詰まりを防止可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、ノズルからインクを吐出するヘッドを有するヘッドユニットと、ヘッドユニットに下方から対向するベース部材と、ベース部材に昇降可能に支持されてヘッドに下方から対向するキャップと、ベース部材に対してキャップを上方へ付勢する付勢部材と、キャップを外側から囲むようにベース部材に配置された密着部材と、ヘッドユニットとベース部材との間隔を変更する間隔変更部とを備え、間隔変更部は、キャップがヘッドユニットに下方から当接した状態で付勢部材の付勢力に抗しつつヘッドユニットとベース部材との間隔を第1間隔に設定することで密着部材をヘッドユニットの形状に応じて弾性変形させてヘッドユニットに密着させる第1動作と、ヘッドユニットとベース部材との間隔を第1間隔より広い第2間隔に設定することで、ヘッドユニットと密着部材とを離間させた状態で、付勢部材の付勢力によってキャップをヘッドユニットに下方から当接させる第2動作とを実行し、第1動作によってヘッドユニットに密着する密着部材は、当該密着部材の外側と内側との間の気体の流れを遮断することで、密着部材の内側のノズルを密着部材の外側の雰囲気から隔絶し、第2動作によってヘッドユニットに当接するキャップは、キャップの外側と内側との間の気体の流れを許容し、ノズルからインクを流出させるパージの実行時には、間隔変更部は、第2動作を実行することで、キャップをノズルに対向させつつノズルから流出するインクをキャップにより受ける。
【0007】
本発明に係る印刷用ヘッドのメンテナンス方法は、ノズルからインクを吐出するヘッドを有するヘッドユニットに下方から対向するベース部材に昇降可能に支持されてヘッドに下方から対向するキャップがヘッドユニットに当接した状態で、ベース部材に対してキャップを上方へ付勢する付勢部材の付勢力に抗しつつヘッドユニットとベース部材との間隔を第1間隔に設定することで、キャップを外側から囲むようにベース部材に配置された密着部材をヘッドユニットの形状に応じて弾性変形させてヘッドユニットとに密着させる第1動作を実行する工程と、ヘッドユニットとベース部材との間隔を第1間隔より広い第2間隔に設定することで、ヘッドユニットと密着部材とを離間させた状態で、付勢部材の付勢力によってキャップをヘッドユニットに下方から当接させる第2動作を実行する工程とを備え、第1動作によってヘッドユニットに密着する密着部材は、当該密着部材の外側と内側との間の気体の流れを遮断することで、密着部材の内側のノズルを密着部材の外側の雰囲気から隔絶し、第2動作によってヘッドユニットに当接するキャップは、キャップの外側と内側との間の気体の流れを許容し、ノズルからインクを流出させるパージの実行時は、第2動作を実行することで、キャップをノズルに対向させて、ノズルから流出するインクをキャップにより受ける。
【0008】
このように構成された本発明(印刷装置、印刷用ヘッドのメンテナンス方法)は、ノズルからインクを吐出するヘッドに下方から対向するキャップとは別に、キャップを外側から囲むように設けられた密着部材を備える。そして、ヘッドを有するヘッドユニットの形状に応じて密着部材を弾性変形させることで、密着部材をヘッドユニットに密着させる第1動作が実行可能である。したがって、密着部材の内側のノズルを密着部材の外側の雰囲気から隔絶して、ノズルの乾燥を防止することができる。また、ヘッドユニットから密着部材を離間させつつ、キャップをヘッドユニットに当接させる第2動作が実行可能である。この第2動作でヘッドユニットに当接するキャップは、当該キャップの外側と内側との間の気体の流れを許容する。そして、パージの際には、第2動作を実行することで、キャップをノズルに対向させて、ノズルから流出するインクをキャップにより受ける。したがって、キャップの内部の圧力が過大になって、インクがキャップから噴出するのを防止できる。こうして、本発明では、パージに伴うインクの噴出を回避しつつノズルの目詰まりを防止することが可能となっている。
【0009】
また、キャップに固定されたパージガイドブレードをさらに備え、パージガイドブレードは、第2動作の実行中は、ヘッドに接触することで、パージの実行によってノズルから流出した後にヘッドを伝ってパージガイドブレードに到るインクを堰き止める一方、第1動作の実行中は、ヘッドから離間するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、パージの実行中(すなわち、第2動作の実行中)は、パージガイドブレードがヘッドに接触する。したがってパージによってノズルから流出したインクが広がって装置各部を汚染するのを、パージガイドブレードによって防止できる。また、第1動作の実行中は、パージガイドブレードがヘッドから離間する。したがって、パージの終了後にパージガイドブレードがヘッドに接触し続けることで、パージガイドブレードに付着したインクが固化して、ヘッドを汚染するのを防止できる。
【0010】
また、キャップには、当該キャップの外側と内側とを連通させる連通孔が設けられているように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、連通孔を介した気体の流れによって、キャップの内部の圧力が過大になるのを回避して、インクがキャップから噴出するのを防止できる。
【0011】
また、第2動作によってヘッドユニットに当接するキャップはヘッドユニットに密着せずに、キャップとヘッドユニットとの間には隙間が形成され、隙間を介してキャップの外側と内側とで気体が流れるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、キャップとヘッドユニットとの間の隙間を介した気体の流れによって、キャップの内部の圧力が過大になるのを回避して、インクがキャップから噴出するのを防止できる。
【0012】
なお、ヘッドユニットに密着しないキャップの素材としては種々考えられる。そこで、キャップのうち、少なくともヘッドユニットに当接する部分は樹脂であるように、印刷装置を構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、パージに伴うインクの噴出を回避しつつノズルの目詰まりを防止することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図。
図2図1の印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図。
図3】ヘッドユニットの構成を模式的に示す底面図。
図4】メンテナンスユニットの構成を模式的に示す斜視図。
図5】プレワイパとキャップとの構成を模式的に示す斜視図。
図6】プレワイパおよびキャップの断面とキャップに接続されたインク排出機構とを模式的に示す図。
図7】メンテナンスユニットによるキャップの実行態様を模式的に示す部分断面図。
図8】メンテナンスユニットによるパージの実行態様を模式的に示す部分断面図。
図9】メンテナンスユニットによるプレワイプの実行態様を模式的に示す部分断面図。
図10】メンテナンスユニットによる移動の実行態様を模式的に示す部分断面図。
図11】メンテナンスユニットの動作のフローを模式的に示す図。
図12】キャップの変形例を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図であり、図2図1の印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図である。図1および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向および鉛直方向であるZ方向を適宜示す。印刷装置1は、ロール・トゥ・ロールで長尺帯状のウェブWを搬送しつつ、インクジェット方式でウェブWにインクを吐出することで、ウェブWに画像を印刷する。ウェブWの素材は紙あるいはフィルムであり、ウェブWは可撓性を有する。印刷装置1は、装置全体を統括的に制御する制御部10を備え、ウェブWへの画像の印刷に要する制御は制御部10によって実行される。この制御部10はCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される。
【0016】
印刷装置1は、ウェブWを搬送する搬送部2を備える。搬送部2は、操出ローラ21と巻取ローラ22とを有し、操出ローラ21が繰り出すウェブWを巻取ローラ22により巻き取ることで、ロール・トゥ・ロールでウェブWを搬送する。この搬送部2は、操出ローラ21から繰り出されたウェブWを取り込む取り込み部23を、操出ローラ21と巻取ローラ22との間に備える。取り込み部23は、2本の駆動ローラ231と、2本のニップローラ232と、2本の駆動ローラ231の間に設けられたエッジ位置調整部234とを有する。各駆動ローラ231はウェブWを巻き掛けつつモータの駆動力によって回転することで、ウェブWを駆動する。2本のニップローラ232はそれぞれ2本の駆動ローラ231に対応して設けられ、各ニップローラ232は対応する駆動ローラ231との間にウェブWを挟む。エッジ位置調整部234は、ウェブWの幅方向であるX方向において、ウェブWの端の位置を調整する。
【0017】
また、搬送部2は、取り込み部23と巻取ローラ22との間でウェブWを支持する複数の支持ローラ24を有する。これら支持ローラ24は、インクジェット方式でインクが吐出されるウェブWを下方から支持しつつ、ウェブWをY方向へ搬送する。特に、複数の支持ローラ24は、ウェブWの搬送方向(Y方向)の下流側の支持ローラ24ほど高い位置に位置するように、傾斜して配列されている。したがって、これら支持ローラ24によって搬送されるウェブWは、Y方向へ向かうに連れて上昇するように傾斜して搬送される。
【0018】
さらに、搬送部2は、これら支持ローラ24と巻取ローラ22との間でウェブWを支持する複数の支持ローラ25と、これら支持ローラ25と巻取ローラ22との間に配置された乾燥部26を有する。乾燥部26はヒートドラム261と、ヒートドラム261から巻取ローラ22へ向かうウェブWを支持する支持ローラ262とを有する。ヒートドラム261はウェブWの搬送に応じて回転駆動され、内蔵するヒータによってウェブWを加熱することでウェブWを乾燥させる。また、搬送部2は、乾燥部26から巻取ローラ22へ向かうウェブWを支持する複数の支持ローラ27を有する。さらに、搬送部2は、これら支持ローラ27と巻取ローラ22との間に配置された駆動ローラ281とニップローラ282とを有する。駆動ローラ281は、ウェブWを巻き掛けつつモータの駆動力によって回転することで、ウェブWを駆動する。ニップローラ282は駆動ローラ281との間にウェブWを挟む。
【0019】
印刷装置1は、複数の支持ローラ24によって支持されるウェブWに上方から対向する複数(6個)のヘッドユニット3(図3)を有する。図3はヘッドユニットの構成を模式的に示す底面図である。ヘッドユニット3は、複数(5個)のヘッド31を有する。複数のヘッド31は2行千鳥でX方向に配列されており、換言すれば、X方向に平行に配列された3個のヘッドユニット3からなるヘッド列C31と、X方向に平行に配列された2個のヘッドユニット3からなるヘッド列C31とがY方向に設けられている。各ヘッド31では、複数のノズルNがX方向に千鳥状に配列されて上方からウェブWに対向し、各ノズルNはインクジェット方式でインクをウェブWに吐出する。このヘッドユニット3は、各ヘッド31を保持するヘッド保持部材32を有する。ヘッド保持部材32は、複数のヘッド31に対応して設けられた複数のヘッド挿入孔321を有し、複数のヘッド31のそれぞれ対応するヘッド挿入孔321に挿入された状態で、ヘッド保持部材32に固定される。かかるヘッド保持部材32は、金属あるいは樹脂といった非弾性部材で構成することができる。
【0020】
図1に示すように、複数の支持ローラ24によって支持されるウェブWの傾斜に応じて、複数のヘッドユニット3それぞれの姿勢が設定される。つまり、複数のヘッドユニット3のうち、ウェブWの搬送方向の上流側のヘッドユニット3ほどZ方向に対する傾きが大きくなるように、各ヘッドユニット3が配置されている。ただし、ウェブWの搬送方向(Y方向)の最下流のヘッドユニット3は水平に配置されており、Z方向に対して傾いておらず、当該最下流のヘッドユニット3以外のヘッドユニット3が、ウェブWの搬送方向に向かって高くなるように傾く。なお、ヘッドユニット3の傾きは、ノズルNが形成されたヘッド31の底面がZ方向に対してなす角度によって評価できる。
【0021】
複数のヘッドユニット3のそれぞれは、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックを含む互いに異なる色のインクを、制御部10からの指令に応じてノズルNから吐出する。これによって、ウェブWにカラー画像を印刷することができる。ただし、ヘッドユニット3の個数やインクの色は、ここの例に限られない。
【0022】
また、印刷装置1は、複数のヘッドユニット3に対応してそれぞれ設けられた複数の昇降駆動部4を備える。各昇降駆動部4は、対応するヘッドユニット3を制御部10からの指令に応じて昇降させることで、互いに高さの異なる複数の位置のいずれかにヘッドユニット3を位置させることができる。図1では、各ヘッドユニット3はウェブWにもっとも近接する印刷高さh0に位置する。かかる昇降駆動部4は、周知の具体的構成により実現でき、例えばボールネジあるいは偏心カム等をモータで駆動することでヘッドユニット3を昇降するように構成することができる。
【0023】
さらに、印刷装置1は、ヘッドユニット3に対してメンテナンスを実行するメンテナンスユニット5(図4)と、メンテナンスユニット5を水平方向(X方向)に駆動する水平駆動部9とを備える。このメンテナンスユニット5は、水平駆動部9によって清掃方向であるX方向に移動することで、ヘッドユニット3に対してメンテナンスを行う。メンテナンスユニット5および水平駆動部9は、複数のヘッドユニット3のそれぞれに対して設けられる。水平駆動部9は、例えばメンテナンスユニット5を支持するX方向に延設されたレールと、メンテナンスユニット5をX方向に駆動するリニアモータによって構成することができる。また、リニアモータに代えて、メンテナンスユニット5に取り付けられたベルトを巻き掛けるプーリをモータで回転させる機構や、メンテナンスユニット5を直動させるボールネジを用いても構わない。続いては、メンテナンスユニット5の詳細について説明を行う。
【0024】
図4はメンテナンスユニットの構成を模式的に示す斜視図である。上述の通り、メンテナンスユニット5は、複数のヘッドユニット3のそれぞれに対して設けられ、各メンテナンスユニット5は対応するヘッドユニット3に下方から対向する。この際、ヘッドユニット3の傾きに応じて、メンテナンスユニット5も傾いて配置される。ただし、メンテナンスユニット5の傾きは僅かであるため、図4および以下の図では、メンテナンスユニット5の傾きは反映させていない。また、複数のヘッドユニット3に対応して設けられた複数のメンテナンスユニット5は共通の構成を備えるため、1つのメンテナンスユニット5について説明を行うこととする。
【0025】
メンテナンスユニット5は、X方向に長尺な直方体形状を有するベース部材51を有し、水平駆動部9(図2)はベース部材51を支持しつつX方向に駆動する。このベース部材51には、X方向に長尺な直方体形状を有して上方へ開口するキャップ挿入孔511が設けられている。メンテナンスユニット5は、対向するヘッドユニット3の複数のヘッド31に対応して、複数のキャップ挿入孔511を有する。こうして複数のキャップ挿入孔511が2行千鳥でX方向に配列されている。
【0026】
また、メンテナンスユニット5は、複数のキャップ挿入孔511のそれぞれに嵌め込まれたキャップ6を有する。このようにメンテナンスユニット5は、対向するヘッドユニット3の複数のヘッド31に対応して複数のキャップ6を有し、各キャップ6は対応するヘッド31に下方から対向して当該ヘッド31から落下したインクを受ける。複数のキャップ6は2行千鳥でX方向に配列されており、換言すれば、X方向に平行に配列された3個のキャップ6からなるキャップ列C6と、X方向に平行に配列された2個のキャップ6からなるキャップ列C6とがY方向に設けられている。
【0027】
さらに、メンテナンスユニット5は、プレワイパ7を有する。特にキャップ列C6に属する複数のキャップ6のうち、清掃方向(X方向)において最上流のキャップ6に対して、プレワイパ7が設けられる。一方、最上流のキャップ6以外のキャップ6に対してはプレワイパ7が設けられていない。各プレワイパ7は、後述するように、ヘッド31からインクを掻き取る。
【0028】
メンテナンスユニット5は、ベース部材51の上面に配置されたシール部材57を有する。シール部材57は、Z方向からの平面視において直方体形状を有する枠体であり、複数のキャップ6のそれぞれに対して設けられている。このシール部材57は、ベース部材51の上面から所定の高さ突出し、平面視において対応するキャップ6を外側から囲む。また、キャップ6に対して設けられたプレワイパ7も同様に、平面視においてシール部材57によって外側から囲まれる。このシール部材57は、ゴムあるいはシリコン等の弾性部材で構成され、外力に応じて弾性変形する。なお、同様のシール部材をベース部材51の平面縁部に沿って配設してもよい。
【0029】
また、メンテナンスユニット5は、ゴムあるいはシリコン等の弾性変形する弾性部材で構成された本ワイパ59を有する。本ワイパ59は、Y方向に平行に延設された平板形状を有するブレードであり、ベース部材51の上面から立設されている。本ワイパ59は、複数(2列)のキャップ列C6のそれぞれに対応して設けられており、各本ワイパ59は、対応するキャップ列C6のX方向(清掃方向)の上流側に配置されている。こうしてベース部材51のX方向の上流端では、複数(2本)の本ワイパ59がY方向に配列される。各本ワイパ59は、後述するように、ヘッド31からインクを掻き取る。
【0030】
さらに、メンテナンスユニット5は、複数の本ワイパ59のそれぞれに対して設けられたタンク取付部512を有する。このタンク取付部512は、ベース部材51に形成された上方に開口する孔であり、対応する本ワイパ59の下方に位置し、各タンク取付部512には廃液容器81が挿入される。こうして、複数の本ワイパ59のそれぞれの下方に廃液容器81が設けられる。各廃液容器81は、上方に開口する箱体のタンクであり、対応する本ワイパ59に下方から対向する。かかる廃液容器81は、本ワイパ59により掻き取られて本ワイパ59から落下してきたインクを貯留する。なお、廃液容器81は箱体である必要はなく、インクを受けるパンでも構わない。
【0031】
図5はプレワイパとキャップとの構成を模式的に示す斜視図であり、図6はプレワイパおよびキャップの断面とキャップに接続されたインク排出機構とを模式的に示す図である。キャップ6は、X方向に長尺な直方体形状を有するキャップ本体61を有する。キャップ本体61は樹脂製であり、上記の弾性部材と比較して弾性変形しにくい性質を有する。キャップ本体61には上方に開口する凹部62が設けられている。平面視において凹部62は直方体形状を有し、凹部62を囲むキャップ本体61の上面61Uは平面である。キャップ本体61は、凹部62をY方向から規定する一対の側壁63と、凹部62をX方向から規定する一対の側壁64とを有し、キャップ6の各側壁63には挿入孔631が設けられている。この挿入孔631は、Z方向に延設された円筒形状を有し、Z方向の上方に開口する。また、各側壁63には、挿入孔631の上端部と凹部62とを繋ぐ切り欠き632と、挿入孔631から凹部62の逆側へ設けられた切り欠き633とが形成されている。
【0032】
凹部62の底面621には排出口622がZ方向に貫通しており、凹部62の底面621は、Y方向において側壁63から底面621に向けて下降する斜面623により構成されている。したがって、底面621に落下したインクは、斜面623を下降して排出口622に到達する。また、キャップ6は、キャップ本体61の上面61Uの四隅において、当該上面61Uから上方に突出する位置決め突起65を有する。
【0033】
プレワイパ7は、Y方向に平行に延設されたワイパブレード71を有する。ワイパブレード71は、ゴムやシリコン等の弾性部材で構成してもよいし、樹脂や金属等で構成してもよい。ワイパブレード71は、キャップ本体61の凹部62をY方向に跨ぐように配置され、ワイパブレード71の上面(上端)はY方向に平行である。ワイパブレード71は、凹部62のX方向の上流側の端に偏って設けられる。このワイパブレード71は、X方向において、凹部62の上流側の端(辺)より所定距離だけ下流側に離れた位置に配置され、凹部62に上方から対向する。これによって、ワイパブレード71で掻き取ったインクを凹部62により確実に受けることができる。
【0034】
さらに、プレワイパ7は、Y方向の両側からワイパブレード71を支持する2本の支柱72を有する。支柱72は、Z方向に延設された円筒形状を有し、2本の支柱72はそれぞれ、キャップ本体61に設けられた2個の挿入孔631に挿入される。かかる支柱72は、挿入孔631に対してZ方向に昇降可能である。また、キャップ6は、支柱72の底面と挿入孔631の底面との間に設けられた圧縮バネ66(付勢部材)を有し、支柱72は、圧縮バネ66によってキャップ本体61に対して上方へ付勢されている。
【0035】
このプレワイパ7には、Y方向に平行な回転軸Crを中心に回転可能なローラRが取り付けられている。ローラRは、支柱72の外側(Y方向においてワイパブレード71の逆側)に回転可能に取り付けられ、ワイパブレード71の上面より上方へ所定量だけ突出する。かかるローラRは、2本の支柱72のそれぞれに取り付けられており、各支柱72の上端より上方に突出する。すなわち、ローラRはプレワイパ7(ワイパブレード71および支柱72)より上方へ突出する。かかるローラRは、例えばミニチュアベアリング等の回転部材により構成される。
【0036】
また、メンテナンスユニット5は、X方向に平行に延設されたパージガイドブレード68を有する。パージガイドブレード68はゴムあるいはシリコン等の弾性部材であり、キャップ6の凹部62の内壁(換言すれば、凹部62を規定する側壁63の壁面)に固定されている。パージガイドブレード68は、X方向においてワイパブレード71より下流側に設けられており、Z方向からの平面視において、ワイパブレード71とパージガイドブレード68とは重複しない。このパージガイドブレード68は、ヘッド31の底面に付着するインクがヘッド31の傾きによって当該底面を伝って広がるのを堰き止めるために設けられ、ヘッド31のY方向の両端のうちの低い方の端に対して設けられる。つまり、ヘッド31のY方向の両端に対応して設けられた2個の側壁63のうち、低い方の側壁63の内壁面に設けられ、当該側壁63の上面(換言すれば、上面61U)より僅かに上方へ突出する。
【0037】
図5に示す状態では、各支柱72は圧縮バネ66の付勢力(弾性力)によって挿入孔631から上方へ突出し、ワイパブレード71は、キャップ本体61の上面61Uや位置決め突起65の上端より上方に位置する。一方、圧縮バネ66の付勢力に抗してプレワイパ7を押し下げると、各支柱72は挿入孔631に収納される。また、各ローラRは切り欠き633内に収納され、ワイパブレード71の両端のそれぞれは切り欠き632に収納される。その結果、プレワイパ7およびローラRは、キャップ本体61の上面61Uと同じ高さ、あるいは当該上面61Uより低い高さに位置して、当該上面61Uから突出しない。
【0038】
また、図6に示すように、印刷装置1は、キャップ6の凹部62からインクを排出するインク排出機構83を備える。インク排出機構83は、廃液容器84と、ポンプ85と、廃液容器84とポンプ85とを接続する配管86と、排出口622とポンプ85とを接続する可撓性の配管87と、配管87に介装された電磁弁88とを有する。したがって、排出口622に到達したインクは、ポンプ85によって廃液容器84に廃棄される。廃液容器84、ポンプ85および配管86は、メンテナンスユニット5の複数(5個)のキャップ6に共通して設けられ、複数のキャップ6それぞれに設けられた配管87が、ポンプ85に接続される。ただし、複数のキャップ6のそれぞれに、インク排出機構83を設けるように構成しても構わない。
【0039】
続いては、メンテナンスユニット5によるヘッドユニット3のメンテナンスの実行態様について説明する。このメンテナンスは、制御部10の指令に応じて、昇降駆動部4がヘッドユニット3の位置を制御するとともに水平駆動部9がメンテナンスユニット5の位置を制御することで実行される。複数のメンテナンスユニット5によるメンテナンスの実行態様は共通するため、ここでは、1つのメンテナンスユニット5について説明を行う。
【0040】
図7はメンテナンスユニットによるキャップの実行態様を模式的に示す部分断面図であり、図8はメンテナンスユニットによるパージの実行態様を模式的に示す部分断面図であり、図9はメンテナンスユニットによるプレワイプの実行態様を模式的に示す部分断面図であり、図10はメンテナンスユニットによる移動の実行態様を模式的に示す部分断面図である。
【0041】
上述の通り、昇降駆動部4は、ヘッドユニット3を昇降させる。これによって、ヘッドユニット3は、印刷高さh0(図1)、印刷高さh0より高いキャップ高さh1(図7)、キャップ高さh1より高いパージ高さh2(図8)、パージ高さh2より高いプレワイプ高さh3(図9)およびプレワイプ高さh3より高い移動高さh4(図10)のいずれかに位置する。なお、図7図10に示すように、ヘッド31の底面31Lおよびヘッド保持部材32の底面32Lはいずれも平面であって面一に並ぶ。また、ヘッドユニット3の高さh1~h4は、当該底面31L、32L(換言すればヘッドユニット3の底面)の高さで示されている。
【0042】
ヘッドユニット3が高さh1~h4のいずれかに位置する場合は、ヘッドユニット3とウェブWとの間にメンテナンスユニット5が位置することができる。一方、ヘッドユニット3が印刷高さh0に位置する場合は、ヘッドユニット3とウェブWとの間にメンテナンスユニット5が位置できない。そのため、水平駆動部9がメンテナンスユニット5をウェブWよりX方向へ退避させる。
【0043】
これらの図に示すように、ヘッド保持部材32の底面32Lには、Z方向に延設されて下方に開口する位置決め孔322が設けられている。この位置決め孔322には、キャップ6の位置決め突起65が下方から挿脱可能であり、四隅に設けられた4個の位置決め突起65に対応して4個の位置決め孔322が設けられている。この位置決め孔322は、位置決め突起65よりも長い。また、キャップ6は、ベース部材51のキャップ挿入孔511に対してZ方向に昇降可能である。キャップ6の底面とキャップ挿入孔511の底面との間には、圧縮バネ513(付勢部材)が設けられており、キャップ6は圧縮バネ513によってベース部材51に対して上方へ付勢されている。
【0044】
図7に示すキャップ時は、メンテナンスユニット5の複数のキャップ6は、ヘッドユニット3の複数のヘッド31にそれぞれ下方から対向する。ヘッドユニット3はキャップ高さh1に位置して、ヘッドユニット3のヘッド保持部材32の底面32Lがシール部材57に上方から接触する。シール部材57は、接触するヘッド保持部材32の底面32Lの形状に応じて弾性変形して、当該底面32Lに密着する。これによって、ヘッド保持部材32の底面32Lとシール部材57との間の隙間は消失し、底面視においてシール部材57の内側に存在するヘッド31の底面31LおよびノズルNはシール部材57によって封止される。こうして、ヘッドユニット3に密着するシール部材57は、シール部材57の内側と外側との間の空気の流れを遮断して、シール部材57の内側のノズルNをシール部材57の外側の雰囲気から隔絶する。すなわち、底面視においてヘッド31はシール部材57の内側に位置して、ヘッドユニット3に密着するシール部材57によって外気から遮断される。
【0045】
位置決め突起65の位置と位置決め孔322の位置とは僅かにずれており、位置決め突起65は位置決め孔322に嵌らない。このような位置決め突起65と位置決め孔322との位置関係は、水平駆動部9によってキャップ6の位置を調整することで実現できる。その結果、位置決め突起65の上端は、キャップ高さh1のヘッド保持部材32の底面に、圧縮バネ513の付勢力によって下方から押圧される。したがって、キャップ本体61は、ヘッド保持部材32の底面32Lよりも、位置決め突起65の長さ分だけ下方に位置し、パージガイドブレード68はヘッド31の底面31Lから下方へ離間する。
【0046】
また、プレワイパ7に取り付けられたローラRは、キャップ高さh1のヘッド保持部材32の底面32Lに、圧縮バネ66の付勢力によって下方から押圧される。その結果、ヘッド31とワイパブレード71との間には、ローラRとワイパブレード71との高さの差に相当する間隔が空いている。印刷装置1が印刷を停止している待機時等において、制御部10はヘッドユニット3およびメンテナンスユニット5に図7に示す動作を実行させて、ヘッド31のノズルNの保湿を行う。
【0047】
図8に示すパージ時は、メンテナンスユニット5の複数のキャップ6は、ヘッドユニット3の複数のヘッド31にそれぞれ下方から対向する。ヘッドユニット3はパージ高さh2に位置して、シール部材57から上方へ離間する。位置決め突起65の位置と位置決め孔322の位置とは一致しており、位置決め突起65は位置決め孔322に下方から嵌る。その結果、図7のキャップ時と比較してキャップ6のキャップ本体61はヘッドユニット3に近接し、キャップ6のキャップ本体61の上面61Uがヘッド保持部材32の底面32Lに接触する。キャップ6のキャップ本体61は樹脂製であるため、シール部材57のように弾性変形しない。したがって、キャップ本体61の上面61Uがヘッド保持部材32の底面32Lに当接した状態において、キャップ本体61の上面61Uとヘッド保持部材32の底面32Lとの間には微小な隙間が存在する。つまり、ヘッド保持部材32に当接するキャップ6は、この隙間を介したキャップ6の内側と外側との空気の流れを許容する。
【0048】
さらに、キャップ6のキャップ本体61に取り付けられたパージガイドブレード68は、ヘッド31の底面31Lに当接する。特にパージガイドブレード68はこの当接に伴って弾性変形し、パージガイドブレード68の上端は、ヘッド31の底面31Lとヘッド保持部材32の底面32Lとの間の僅かな隙間に入り込む。なお、パージガイドブレード68の上端は、ヘッド31の底面31Lの外周縁部に接触してもよい。
【0049】
また、プレワイパ7に取り付けられたローラRは、パージ高さh2のヘッド保持部材32の底面32Lに、圧縮バネ66の付勢力によって下方から押圧される。その結果、ヘッド31とワイパブレード71との間には、ローラRとワイパブレード71との高さの差に相当する間隔が空いている。
【0050】
ヘッド31のノズルNの目詰まりを防止するためにパージを実行する際には、制御部10は、ヘッドユニット3およびメンテナンスユニット5に図8に示す動作を実行させる。パージは、ヘッド31内に貯留されるインクに圧力を加えてノズルNからインクを所定時間流出させることで実行される。一方、ヘッド保持部材32に当接するキャップ6の凹部62は、下方からヘッド31に対向して、ヘッド31のノズルNから流出するインクを受ける。こうして凹部62に受けられたインクは、廃液容器84に回収される。
【0051】
図9に示すプレワイプ時は、ヘッドユニット3はプレワイプ高さh3に位置する。プレワイプ高さh3は、圧縮バネ513の付勢力によってキャップ6が上昇できる最高点よりも高く、位置決め突起65は位置決め孔322から下方へ抜け出し、ヘッドユニット3とキャップ6とはZ方向に離間する。これに伴って、パージガイドブレード68もヘッドユニット3から下方に離間する。
【0052】
また、プレワイパ7に取り付けられたローラRは、プレワイプ高さh3のヘッド保持部材32の底面32Lに、圧縮バネ66の付勢力によって下方から押圧される。その結果、ヘッド31とワイパブレード71との間には、ローラRとワイパブレード71との高さの差に相当する間隔が空いている。後述するプレワイプの実行時には、制御部10は、ヘッドユニット3およびメンテナンスユニット5に図9に示す動作を実行させて、プレワイパ7がヘッド31から掻き取ったインクをキャップ6の凹部62によって受ける。
【0053】
図10に示す移動時は、ヘッドユニット3は移動高さh4に位置する。移動高さh4は、プレワイパ7に取り付けられたローラRが圧縮バネ66の付勢力によって上昇できる最高点よりも高く、ヘッドユニット3は、ローラRおよびプレワイパ7からZ方向に離間する。もちろん、ヘッドユニット3はキャップ6やパージガイドブレード68からもZ方向に離間する。例えばプレワイプの実行後にヘッドユニット3とウェブWとの間にメンテナンスユニット5を移動させる際に、制御部10は、ヘッドユニット3およびメンテナンスユニット5に図10に示す動作を実行させる。これによって、ヘッドユニット3とメンテナンスユニット5との干渉を回避することができる。
【0054】
図11はメンテナンスユニットの動作のフローを模式的に示す図である。ヘッド31がパージを実行する際は、制御部10は、メンテナンスユニット5の複数のキャップ6のそれぞれを複数のヘッド31に対向させつつ、ヘッドユニット3をパージ高さh2に位置させる(図8)。この際、プレワイパ7のワイパブレード71および本ワイパ59は、各ヘッドユニット3の複数のヘッド31よりもX方向(清掃方向)の上流側で停止している。このパージによって、ヘッド31の底面31Lには多量のインクIが付着する(図11の「パージ後」)。
【0055】
パージが完了すると、制御部10は、ヘッドユニット3をプレワイプ高さh3に位置させつつ(図9)、メンテナンスユニット5にX方向への移動を開始させることで、プレワイプを実行する。これによって、ヘッド31の底面31Lに対してZ方向に間隔Dを空けたワイパブレード71がヘッド31の底面31Lの下方を通過して、ヘッド31の底面31Lに付着したインクIを掻き取る(図11の「プレワイプ時」)。上述の通り、当該間隔DはローラRによって規定され、具体的にはインク滴の直径程度の約0.5mmに例えば設定される。こうして、ワイパブレード71によって掻き取られたインクIは、キャップ6の凹部62に落下してから、廃液容器84に回収される。
【0056】
この際、メンテナンスユニット5が備える2個のワイパブレード71は、それぞれのX方向の下流側で並ぶヘッド列C31の各ヘッド31の下方を通過しつつ、当該各ヘッド31からインクを掻き取る。つまり、同一のヘッド列C31に属する複数のヘッド31に対しては、共通のワイパブレード71がインクの掻き取りを実行する。このプレワイプの実行によって、ヘッド31の底面31Lに付着したインクIの下端部分が除去される(図11の「プレワイプ後」。
【0057】
また、プレワイプの完了後も、メンテナンスユニット5のX方向の移動は継続される。その結果、本ワイパ59がヘッド31に到達し、本ワイパ59の上端がヘッド31の底面31Lに摺動される(図11の「本ワイプ時」)。つまり、本ワイパ59は、ヘッド31の底面31Lに下方から接触しつつ、ヘッド31の底面31Lに対してX方向に移動することで、ヘッド31の底面31Lに付着するインクIを掻き取る。この際、ワイパブレード71と同様に、同一のヘッド列C31に属する複数のヘッド31に対しては、共通の本ワイパ59がインクIの掻き取りを実行する。こうして、本ワイパ59によって掻き取られたインクIは、本ワイパ59から落下して、本ワイパ59の下方に設けられた廃液容器81に回収される。
【0058】
以上に説明する実施形態では、ノズルNからインクIを吐出するヘッド31に下方から対向するキャップ6とは別に、キャップ6を外側から囲むように設けられたシール部材57(密着部材)が具備される。そして、シール部材57をヘッドユニット3に密着させることでヘッド31を覆う図7のシール密着動作(第1動作)と、キャップ6をヘッドユニット3に当接させることでヘッド31を覆う図8のキャップ当接動作(第2動作)とが実行可能である。これらの各動作は、昇降駆動部4がヘッドユニット3を昇降させることで、ヘッドユニット3とベース部材51とのZ方向への間隔を変更させて実行される。
【0059】
つまり、図7のシール密着動作では、昇降駆動部4は、キャップ6がヘッドユニット3のヘッド保持部材32に下方から当接した状態で圧縮バネ513(付勢部材)の付勢力に抗しつつヘッドユニット3とベース部材51とのZ方向への間隔を間隔Δ1(第1間隔)に設定することで、シール部材57をヘッド保持部材32の底面32Lに当接させる。これによって、シール部材57は、ヘッド保持部材32の底面32Lの形状に応じて弾性変形して、ヘッド保持部材32の底面32Lに密着する。また、図8のキャップ当接動作では、昇降駆動部4は、ヘッドユニット3とベース部材51とのZ方向への間隔を、間隔Δ1より広い間隔Δ2(第2間隔)に設定することで、ヘッドユニット3とシール部材57とをZ方向に離間させた状態で、圧縮バネ513の付勢力によってキャップ6をヘッドユニット3のヘッド保持部材32の底面32Lに当接させる。
【0060】
このように、ヘッド31を有するヘッドユニット3の形状に応じてシール部材57を弾性変形させることで、シール部材57をヘッドユニット3に密着させることができる(シール密着動作)。したがって、シール部材57の内側のノズルNをシール部材57の外側の雰囲気から隔絶して、ノズルNの乾燥を防止することができる。また、ヘッドユニット3からシール部材57を離間させつつ、キャップ6をヘッドユニット3に当接させることができる(キャップ当接動作)。このキャップ当接動作でヘッドユニット3に当接するキャップ6は、当該キャップ6の外側と内側との間の空気の流れを許容する。そして、パージの際には、キャップ当接動作を実行することで、キャップ6をノズルNに対向させて、ノズルNから流出するインクIをキャップ6により受ける。したがって、キャップ6の内部の圧力が過大になって、インクIがキャップ6から噴出するのを防止できる。こうして、本実施形態では、パージに伴うインクIの噴出を回避しつつノズルNの目詰まりを防止することが可能となっている。
【0061】
また、キャップ6に固定されたパージガイドブレード68が設けられ、パージガイドブレード68は、キャップ当接動作の実行中は、ヘッド31に接触することで、パージの実行によってノズルNから流出した後にヘッドを伝ってパージガイドブレード68に到るインクIを堰き止める一方、シール密着動作の実行中は、ヘッド31から離間する。かかる構成では、パージの実行中(すなわち、キャップ当接動作の実行中)は、パージガイドブレード68がヘッド31に接触する。したがってパージによってノズルNから流出したインクIが広がって装置各部を汚染するのを、パージガイドブレード68によって防止できる。また、シール密着動作の実行中は、パージガイドブレード68がヘッド31から離間する。したがって、パージの終了後にパージガイドブレード68がヘッド31に接触し続けることで、パージガイドブレード68に付着したインクIが固化して、ヘッド31を汚染するのを防止できる。
【0062】
また、キャップ当接動作によってヘッドユニット3に当接するキャップ6はヘッドユニット3に密着せずに、キャップ6とヘッドユニット3との間には微小な隙間が形成される。そして、この隙間を介してキャップ6の外側と内側とで空気が流れる。かかる構成では、キャップ6とヘッドユニット3との間の微小な隙間を介した空気の流れによって、キャップ6の内部の圧力が過大になるのを回避して、インクIがキャップ6から噴出するのを防止できる。
【0063】
以上に説明した実施形態では、印刷装置1が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、ヘッドユニット3が本発明の「ヘッドユニット」の一例に相当し、ヘッド31が本発明の「ヘッド」の一例に相当し、昇降駆動部4が本発明の「間隔変更部」の一例に相当し、ベース部材51が本発明の「ベース部材」の一例に相当し、圧縮バネ513が本発明の「付勢部材」の一例に相当し、シール部材57が本発明の「密着部材」の一例に相当し、キャップ6が本発明の「キャップ」の一例に相当し、パージガイドブレード68が本発明の「パージガイドブレード」の一例に相当し、インクIが本発明の「インク」の一例に相当し、ノズルNが本発明の「ノズル」の一例に相当し、間隔Δ1が本発明の「第1間隔」の一例に相当し、間隔Δ2が本発明の「第2間隔」の一例に相当し、図7のシール密着動作が本発明の「第1動作」の一例に相当し、図8のキャップ当接動作が本発明の「第2動作」の一例に相当する。
【0064】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、キャップ6に対して種々の変形を加えることができる。つまり、上記の例では、キャップ6のキャップ本体61は樹脂製であった。しかし、キャップ本体61の全体が樹脂製である必要はなく、キャップ本体61の上面61U(ヘッドユニット3に当接する部分)を少なくとも樹脂製とすることで、上面61Uとヘッドユニット3との間に微小な隙間を形成することはできる。あるいは、キャップ本体61を樹脂以外の材質で構成してもよい。
【0065】
また、図12に示すようにキャップ6を構成してもよい。図12はキャップの変形例を模式的に示す斜視図である。図12の変形例では、キャップ6の上面61Uには、連通孔69が形成されている。連通孔69は、上面61Uに設けられた切り欠きであり、Y方向に平行に延設されている。この連通孔69は、キャップ本体61の2個の側壁63のうち、パージガイドブレード68設けられた側壁63と反対の側壁63に設けられており、キャップ6の内側(すなわち、凹部62)とキャップ6の外側とを連通させる。
【0066】
かかるキャップ6を用いて図8のキャップ当接動作を実行した場合、ヘッドユニット3に当接するキャップ6が下方からヘッド31を覆いつつ、キャップ6の連通孔69が当該キャップ6の外側と内側とを連通させる。かかる構成では、連通孔69を介した空気の流れによって、キャップ6の内部の圧力が過大になるのを回避して、インクIがキャップ6から噴出するのを防止できる。このように連通孔69を設ける場合には、連通孔69は弾性部材で構成されても構わない。
【0067】
また、連通孔69の具体的構成は、図12の切り欠けに限られない。したがって、キャップ本体61の上面61Uに開口しない、側壁63を貫通する円筒形状の孔を連通孔69として設けてもよい。さらに、連通孔69の向き、形状、大きさあるいは個数を適宜変更してもよい。
【0068】
また、上記の実施形態では、シール密着動作(図7)やキャップ当接動作(図8)の実行順序は特に限定しないが、これらは適宜の順序で実行できる。例えば、パージに伴ってキャップ当接動作を実行して、パージが完了するとシール密着動作を実行するように構成してもよい。かかる構成では、パージによってノズルNの目詰まりが解消されたヘッド31に対して、シール密着動作によって保湿を実行することができる。
【0069】
また、印刷装置1に設けるヘッドユニット3の個数や、ヘッドユニット3に設けるヘッド31の個数を適宜変更してもよい。これに応じて、メンテナンスユニット5の個数や、メンテナンスユニット5に設けるキャップ6の個数を適宜変更してもよい。
【0070】
また、平面視におけるキャップ6の形状は、直方体に限られず、多角形、楕円形あるいは円形でも構わない。シール部材57の形状も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、インク吐出用のヘッドに対してメンテナンスを実行する技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…印刷装置
3…ヘッドユニット
31…ヘッド
4…昇降駆動部(間隔変更部)
51…ベース部材
513…圧縮バネ(付勢部材)
57…シール部材(密着部材)
6…キャップ
68…パージガイドブレード
I…インク
N…ノズル
Δ1…間隔(第1間隔)
Δ2…間隔(第2間隔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12