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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】信号処理回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/34 20060101AFI20240527BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20240527BHJP
   H03G 3/30 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
H03F3/34 210
H03F3/45
H03G3/30 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020159321
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022052839
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間島 秀明
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-288757(JP,A)
【文献】特表2002-507069(JP,A)
【文献】特開2009-38556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
H03G3/00-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側と出力側が電気的に絶縁分離されたアイソレータと、
前記アイソレータの出力信号を増幅する可変利得増幅回路と、
前記可変利得増幅回路のDCオフセットを調整するDCオフセット調整回路と、
前記可変利得増幅回路の利得を調整する利得調整回路と、
前記アイソレータの前記入力側に設けられ、第1の制御信号に基づいて前記アイソレータの入力側の基準電圧を、DCオフセット調整時に出力電圧をゼロに設定し、利得調整時に出力電圧を一定電圧(≠ゼロ)に設定して、前記アイソレータの入力側に出力する第1の電圧設定回路と、
前記アイソレータの前記出力側に設けられ、第2の制御信号に基づいて前記アイソレータの出力側の基準電圧を、DCオフセット調整時に出力電圧をゼロに設定し、利得調整時に出力電圧を一定電圧(≠ゼロ)に設定する第2の電圧設定回路と、
前記第2の電圧設定回路の出力電圧と前記可変利得増幅回路の出力電圧を比較する比較回路と、
記比較回路の出力信号に応答して、前記DCオフセット調整回路の制御及び前記利得調整回路の制御を行う制御回路と、
を具備し、
前記第1の電圧設定回路は、反転入力端と非反転入力端を有し、定電流が前記反転入力端と前記非反転入力端に供給される第1の差動増幅回路と、前記第1の差動増幅回路の反転入力端と非反転入力端との間に設けられる第1のスイッチと、を備え、
前記第2の電圧設定回路は、反転入力端と非反転入力端を有し、定電流が前記反転入力端と前記非反転入力端に供給される第2の差動増幅回路と、前記第2の差動増幅回路の反転入力端と非反転入力端との間に設けられる第2のスイッチと、を備え、
前記制御回路は、前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号を出力し、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのオン/オフを制御して、前記DCオフセット調整回路の制御及び前記利得調整回路の制御を排他的に行う、
とを特徴とする信号処理回路。
【請求項2】
記制御回路は前記第1のスイッチと前記第2のスイッチがオン状態の時の前記比較回路からの出力信号に応じて前記DCオフセット調整回路を制御することを特徴とする請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチがオフの時の前記比較回路からの出力信号に応じて前記利得調整回路を制御することを特徴とする請求項2に記載の信号処理回路。
【請求項4】
前記DCオフセット調整回路は、前記制御回路からの制御信号に応じて電流値が変化する可変電流源を備え、
前記可変利得増幅回路は、前記可変電流源からの電流が入力端に供給される差動増幅回路を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の信号処理回路。
【請求項5】
前記第1の電圧設定回路は、
主電流路が定電流源に直列に接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタの主電流路に生じた電圧を電流に変換する電圧/電流変換回路と、
前記電圧/電流変換回路からの出力電流が入力端に供給される差動増幅回路と、
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の信号処理回路。
【請求項6】
主電流路が前記第1のトランジスタの主電流路と並列に接続され、負荷に出力電流を供給する第2のトランジスタと、
前記電圧/電流変換回路の入力端の一方の接続先を、前記第1のトランジスタのドレインと前記第2のトランジスタのドレインとの間で切換えるスイッチと、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の信号処理回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイソレータを備えた信号処理回路が開示されている。アイソレータは、入力側と出力側を電気的に絶縁分離する。従って、例えば、高圧側と低圧側を電気的に絶縁分離して信号処理を行う信号処理回路に好適する。しかし、アイソレータを介することで、アイソレータの入力側と出力側で基準とする電圧が不連続となり、信号処理の不安定化が生じる場合がある。アイソレータの利点を生かしつつ、安定した信号処理を行うことが出来る信号処理回路が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-196227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、安定した信号処理を行うことが出来る信号処理回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、信号処理回路は、入力側と出力側が電気的に絶縁分離されたアイソレータと、前記アイソレータの出力信号を増幅する可変利得増幅回路と、前記可変利得増幅回路のDCオフセットを調整するDCオフセット調整回路と、前記可変利得増幅回路の利得を調整する利得調整回路と、前記アイソレータの前記入力側に設けられ、第1の制御信号に基づいて前記アイソレータの入力側の基準電圧を、DCオフセット調整時に出力電圧をゼロに設定し、利得調整時に出力電圧を一定電圧(≠ゼロ)に設定して、前記アイソレータの入力側に出力する第1の電圧設定回路と、前記アイソレータの前記出力側に設けられ、第2の制御信号に基づいて前記アイソレータの出力側の基準電圧を、DCオフセット調整時に出力電圧をゼロに設定し、利得調整時に出力電圧を一定電圧(≠ゼロ)に設定する第2の電圧設定回路と、前記第2の電圧設定回路の出力電圧と前記可変利得増幅回路の出力電圧を比較する比較回路と、前記比較回路の出力信号に応答して、前記DCオフセット調整回路の制御及び前記利得調整回路の制御を行う制御回路と、を具備し、前記第1の電圧設定回路は、反転入力端と非反転入力端を有し、定電流が前記反転入力端と前記非反転入力端に供給される第1の差動増幅回路と、前記第1の差動増幅回路の反転入力端と非反転入力端との間に設けられる第1のスイッチと、を備え、前記第2の電圧設定回路は、反転入力端と非反転入力端を有し、定電流が前記反転入力端と前記非反転入力端に供給される第2の差動増幅回路と、前記第2の差動増幅回路の反転入力端と非反転入力端との間に設けられる第2のスイッチと、を備え、前記制御回路は、前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号を出力し、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのオン/オフを制御して、前記DCオフセット調整回路の制御及び前記利得調整回路の制御を排他的に行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態の信号処理回路の構成を示す図。
図2図2は、可変利得増幅回路の一つの実施形態を示す図。
図3図3は、電圧設定回路の他の一つの実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる信号処理回路を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の信号処理回路の構成を示す図である。本実施形態は、アイソレータ20を有する。アイソレータ20は、入力側と出力側を電気的に絶縁分離する。例えば、容量性、あるいは、誘導性の構成を有する。アイソレータ20の入力側に、電圧設定回路5を有する。
【0009】
電圧設定回路5は、定電流源100を有する。定電流源100は、定電流源101と102を有する。定電流源101は、スイッチ110を介して入力端子1に接続される。定電流源102は、スイッチ111を介して入力端子2に接続される。定電流源101、102は定電流Iref1、Iref2を供給する。定電流源101は、接地側に定電流Iref1を出力し、定電流源102は、定電流Iref2を電源Vd側から入力端子2側に出力する。例えば、定電流Iref1、Iref2は、同じ値に設定される。入力端子1、2間には、入力電圧Vinが印加される。
【0010】
電圧設定回路5は、完全差動型の増幅回路10を有する。増幅回路10の非反転入力端(+)は、入力端子1に接続され、反転入力端子(-)は、入力端子2に接続される。非反転入力端(+)と反転出力端(-)間に帰還抵抗Rf11が接続され、反転入力端(-)と非反転出力端(+)間に帰還抵抗Rf12が接続される。増幅回路10の出力端の電圧は、帰還抵抗Rf11、Rf12と定電流源100から供給される定電流Iref1、Iref2で設定される。増幅回路10の反転出力端(-)の出力電圧は、非反転入力端(+)に供給される定電流Iref1と帰還抵抗Rf11によって設定され、非反転出力端(+)の出力電圧は、反転入力端(-)に供給される定電流Iref2と帰還抵抗Rf12によって設定される。
【0011】
増幅回路10の非反転入力端(+)と反転入力端(-)間には、スイッチ11を有する。スイッチ11をオンすることで、増幅回路10の非反転入力端(+)と反転入力端(-)間が短絡され、増幅回路10の出力電圧は、ゼロになる。定電流源100のスイッチ110、111がオンでスイッチ11がオフの時、電圧設定回路5は、所定の設定電圧をアイソレータ20に供給する。尚、スイッチ11は、増幅回路10の反転出力端(-)、非反転出力端(+)の間に設けても良い。増幅回路10の反転出力端(-)、非反転出力端(+)の間に設けることで、アイソレータ20への入力電圧を正確にゼロに調整することが出来る。
【0012】
本実施形態は、アイソレータ20の出力側には、可変利得増幅回路30を有する。可変利得増幅回路30は、アイソレータ20からの信号を増幅して出力する。可変利得増幅回路30の出力電圧Voutは、出力端子3、4に供給されると共に、比較回路70に供給される。可変利得増幅回路30の構成例については、後述する。
【0013】
本実施形態は、可変利得増幅回路30のDCオフセットを調整するDCオフセット調整回路7を有する。DCオフセット調整回路7は、電流DAC40を有する。電流DAC40は、制御回路80からの制御信号に応答して電流値が調整された電流IDA1、IDA2を可変利得増幅回路30に供給する。電流DAC40は、可変利得増幅回路30から流れ出す電流IDA1と、可変利得増幅回路30に流れ込む電流IDA2を生成する。すなわち、電流DAC40は、可変利得増幅回路30に対して、正と負の関係にある電流IDA1、DA2を生成して出力する。
【0014】
本実施形態は、利得調整回路8を有する。利得調整回路8は、電流DAC41と完全差動型の増幅回路50を有する。電流DAC41は、制御回路80からの制御信号に応答して電流値が調整された電流IDA3、IDA4を増幅回路50に供給する。電流DAC41は、増幅回路50の非反転入力端(+)から流れ出す電流IDA3と、増幅回路50の反転入力端(-)に流れ込む電流IDA4を生成する。すなわち、電流DAC41は、増幅回路50に対して正と負の関係にある電流IDA3、IDA4を生成して出力する。
【0015】
増幅回路50の非反転入力端(+)と反転出力端(-)間には帰還抵抗Rf51が接続され、反転入力端(-)と非反転出力端(+)間には帰還抵抗Rf52が接続される。増幅回路50は、電流DAC41からの電流IDA3、IDA4と帰還抵抗Rf51、Rf52の抵抗値によって定まる調整電圧VDAを出力する。調整電圧VDAによって、可変利得増幅回路30の利得調整を行う。制御回路80からの制御信号に応じて電流DAC41の電流IDA3、IDA4が調整され、利得調整回路8が出力する調整電圧VDAが調整される。
【0016】
本実施形態は、アイソレータ20の出力側の基準電圧を設定する電圧設定回路6を有する。電圧設定回路6は、電流源200と完全差動型の増幅回路60を有する。電流源200は、定電流源201と202を有する。定電流源201、202は定電流Iref3、Iref4を供給する。定電流源201は、接地側に定電流Iref3を出力し、定電流源202は、定電流Iref4を電源Vd側から増幅回路60側に出力する。例えば、定電流Iref3、Iref4は、同じ値に設定される。
【0017】
完全差動型の増幅回路60の非反転入力端(+)と反転出力端(-)間に帰還抵抗Rf61が接続され、反転入力端(-)と非反転出力端(+)間に帰還抵抗Rf62が接続される。増幅回路60の出力端電圧は、帰還抵抗Rf61、Rf62と電流源200から供給される定電流Iref3、Iref4によって設定される。
【0018】
増幅回路60の反転出力端(-)の出力電圧は、非反転入力端(+)に供給される定電流Iref3と帰還抵抗Rf61によって設定され、非反転出力端(+)の出力電圧は、反転入力端(-)に供給される定電流Iref4と帰還抵抗Rf62によって設定される。電圧設定回路6の出力電圧は、例えば、既述した電圧設定回路5の出力電圧と等しくなる様に設定される。
【0019】
増幅回路60の非反転入力端(+)と反転入力端(-)間には、スイッチ61を有する。スイッチ61をオンすることで、増幅回路60の入力端間が短絡され、増幅回路60の出力電圧は、ゼロになる。電流源200のスイッチ210、211がオンで、スイッチ61がオフの時、電圧設定回路6は、所定の設定電圧を比較回路70に供給する。尚、スイッチ61は、増幅回路60の反転出力端(-)、非反転出力端(+)の間に設けても良い。増幅回路60の反転出力端(-)、非反転出力端(+)の間に設けることで、比較回路70への入力電圧を正確にゼロに調整することが出来る。
【0020】
比較回路70は、電圧設定回路6の出力電圧と可変利得増幅回路30の出力電圧を比較し、比較結果に応じた信号を制御回路80に供給する。
御回路80は、比較回路70からの信号に応答してDCオフセット調整回路7と利得調整回路8を制御する。制御回路80は、電圧設定回路6の各スイッチ61、210、211を制御する信号を生成して供給し、電圧設定回路5の各スイッチ11、110、111を制御する信号を生成して、アイソレータ21を介して供給する。
より具体的には、制御回路80は、DCオフセット調整を実施する際に、電圧設定回路5の各スイッチ11をオン、スイッチ110、111をオフに設定し、電圧設定回路6の各スイッチ61をオン、スイッチ210、211をオフに設定し、比較回路70からの信号に応答してDCオフセット調整回路7を制御する。
また、制御回路80は、利得調整を実施する際に、電圧設定回路5の各スイッチ11をオフ、110、111をオンに設定し、電圧設定回路6の各スイッチ61をオフ、210、211をオンに設定し、比較回路70からの信号に応答して利得調整回路8を制御する。
すなわち、制御回路80は、DCオフセット調整と利得調整を排他的に実施する。
【0021】
(DCオフセット調整)
制御回路80による可変利得増幅回路30のDCオフセット調整は、以下の手順で行う。アイソレータ20の入力側の電圧設定回路5のスイッチ11をオンにし、スイッチ110、111をオフにする。これにより、増幅回路10からアイソレータ20に供給される出力電圧はゼロに設定される。
【0022】
アイソレータ20の出力側の電圧設定回路6のスイッチ61をオンにし、スイッチ210、211をオフにする。これにより、増幅回路60から比較回路70に供給される出力電圧はゼロに設定される。
【0023】
即ち、可変利得増幅回路30のDCオフセット調整は、電圧設定回路5と6からの出力電圧をゼロに設定した状態で行う。制御回路80は、比較回路70の出力信号に応答してDCオフセット調整回路7を制御する。DCオフセット調整回路7の電流DAC40の電流IDA1、IDA2の値を調整して、ゼロに設定されている電圧設定回路6の出力電圧と可変利得増幅回路30の出力電圧が等しくなる様に、DCオフセット調整回路7の電流DAC40の電流IDA1、IDA2を調整する。
【0024】
電流DAC40は、既述した様に、電流IDA1、IDA2が正と負の関係になる様に構成される。係る構成により、例えば、電流IDA1、IDA2を増やす制御により、可変利得増幅回路30に供給される電流IDA1、IDA2の差分値は2倍になる為、可変利得増幅回路30のDCオフセット調整を効率的に行うことが出来る。
【0025】
尚、電流DAC40の個数を増やし、例えば、可変利得増幅回路30のDCオフセットの微調整用と租調整用として設けても良い。まず粗調整用の電流DAC(図示せず)を用いてDCオフセットを調整し、次に微調整用の電流DAC(図示せず)を用いてDCオフセットを調整する構成とすることで、効率的に、且つ、精度良く可変利得増幅回路30のDCオフセットを調整することが出来る。
【0026】
(利得調整)
制御回路80による可変利得増幅回路30の利得調整は、以下の手順で行う。電圧設定回路5のスイッチ110、111をオンにし、スイッチ11をオフにする。これにより、定電流源100の定電流Iref1、Iref2と帰還抵抗Rf11、Rf12で設定される出力電圧が増幅回路10からアイソレータ20に供給される。可変利得増幅回路30は、アイソレータ20の出力電圧を増幅して比較回路70に供給する。
【0027】
アイソレータ20の出力側の電圧設定回路6においては、スイッチ210、211をオンにし、スイッチ61をオフにする。これにより、増幅回路60から電流源200の定電流Iref3、Iref4と帰還抵抗Rf61、Rf62で設定される出力電圧が比較回路70に供給される。
【0028】
比較回路70は、電圧設定回路6からの出力電圧と可変利得増幅回路30からの出力電圧を比較して、その比較結果に応じた出力信号を制御回路80に供給する。制御回路80は、比較回路70の出力信号に応答して、電圧設定回路6の出力電圧と可変利得増幅回路30の出力電圧が等しくなる様に、利得調整回路8を制御する。
【0029】
例えば、可変利得増幅回路30の利得を「1」に設定した場合には、アイソレータ20からの出力電圧がそのまま出力端子3、4間から出力されるように可変利得増幅回路30の利得が、利得調整回路8からの調整電圧VDAによって調整される。
【0030】
利得調整回路8の電流DAC41は、既述した様に、電流IDA3、IDA4が正と負の関係になる様に構成される。係る構成により、例えば、電流IDA3、IDA4を増やす制御により、増幅回路50に供給される電流IDA3、IDA4の差分値は2倍になる為、利得調整回路8により効率的に調整電圧VDAを生成して、可変利得増幅回路30に供給することが出来る。
【0031】
第1の実施形態は、アイソレータ20の入力側と出力側に、夫々、所定の基準電圧を設定する電圧設定回路5、6と、アイソレータ20の出力信号を増幅する可変利得増幅回路30のDCオフセットを調整するDCオフセット調整回路7と利得を調整する利得調整回路8を有する。DCオフセット調整回路7と利得調整回路8は、電圧設定回路6の出力電圧と可変利得増幅回路30の出力電圧を比較する比較回路70の比較結果に基づいて、制御回路80により制御される。アイソレータ20の出力側に、例えば、アイソレータ20の入力側の電圧設定回路5と同じ電圧を設定する電圧設定回路6を備え、その設定電圧を用いて可変利得増幅回路30のDCオフセット、及び利得を調整する。この為、アイソレータ20の入力側と出力側が電気的に絶縁分離されていても、可変利得増幅回路30のDCオフセット、及び利得を安定した状態で調整することが出来る為、安定した信号処理を行う信号処理回路を提供することができる。尚、可変利得増幅回路30のDCオフセット調整、及び利得調整は、信号処理回路の起動時に、制御回路80の制御の下で自動的に実施する構成とすることが出来る。
【0032】
図2は、可変利得増幅回路の一つの実施形態を示す図である。既述した、第1の実施形態の可変利得増幅回路30として用いることができる。既述した実施形態に対応する構成には、同一符号を付し、重複した記載は必要な場合にのみ行う。以降、同様である。可変利得増幅回路30は、Gmセル300を有する。Gmセル300は、例えば、OTA(Operational Transconductance Amplifer)で構成され、アイソレータ20から供給される電圧を電流に変換して出力する。
【0033】
Gmセル300の出力電流は、完全差動型の増幅回路310に供給される。増幅回路310の非反転入力端(+)と反転出力端(-)には帰還抵抗Rf31が接続され、反転入力端(-)と非反転出力端(+)には帰還抵抗Rf32が接続される。
【0034】
増幅回路310の非反転入力端(+)と反転入力端(-)には、DCオフセット調整回路7からの電流IDA1、IDA2が供給される。Gmセル300からの出力電流とDCオフセット調整回路7からの電流IDA1、IDA2が加算された電流と帰還抵抗Rf31、Rf32の値で設定される電圧が、増幅回路310の非反転出力端(+)、反転出力端(-)から出力される。すなわち、増幅回路310は、DCオフセット調整回路7によって調整された出力電圧を出力する。
【0035】
増幅回路310の出力電圧は、可変利得増幅器320に供給される。可変利得増幅器320の利得は、利得調整回路8からの調整電圧VDAによって調整される。可変利得増幅器320の利得を調整することで、可変利得増幅回路30の利得を調整することが出来る。
【0036】
可変利得増幅器320の出力電流は、完全差動型の増幅回路330に供給される。可変利得増幅器320の出力電流と、非反転入力端(+)と反転出力端(-)間に接続される帰還抵抗Rf33、反転入力端(-)と非反転出力端(+)間に接続される帰還抵抗Rf34によって定まる増幅回路330の出力電圧が、出力端子3、4に供給される。
【0037】
本実施形態の可変利得増幅回路30は、DCオフセット調整回路7からの信号でDCオフセットが調整される増幅回路310と、利得調整回路8からの調整電圧VDAで利得が調整される可変利得増幅器320を有する。制御回路80の制御の下、DCオフセット調整回路7、及び利得調整回路8を調整することで、可変利得増幅回路30のDCオフセットと利得を調整することが出来る。
【0038】
図3は、アイソレータ20の入力側に設けられる電圧設定回路5の他の一つの実施形態を示す図で有る。本実施形態の電圧設定回路5は、定電流IREFを出力する定電流源14を有する。定電流源14は、スイッチ15を介して電源Vdに接続される。主電流路で有るソース・ドレイン路が定電流源14に直列に接続されたNMOSトランジスタQ3を有する。NMOSトランジスタQ3は、例えば、Si(シリコン)で構成されたSiトランジスタである。
【0039】
電圧設定回路5は、Gmセル12を有する。Gmセル12の非反転入力端(+)は、スイッチ17を介してNMOSトランジスタQ3のドレインに接続される。Gmセル12は、非反転入力端(+)と反転入力端(-)間に印加される電圧を電流に変換して出力する。Gmセル12の出力電流は、完全差動型の増幅回路10に供給される。増幅回路10は、Gmセル12から供給される電流と帰還抵抗Rf11、Rf12の抵抗値で設定される電圧を出力し、アイソレータ20に供給する。定電流IREFと、NMOSトランジスタQ3のオン抵抗RONQ3で設定されるドレイン電圧Vによって電圧設定回路5の電圧を設定し、アイソレータ20の入力側の設定電圧とすることが出来る。
【0040】
本実施形態は、NMOSトランジスタQ3と並列に接続されたNMOSトランジスタQ2を有する。NMOSトランジスタQ2のソースは、NMOSトランジスタQ3のソースに接続され、ゲートはNMOSトランジスタQ3のゲートに接続される。NMOSトランジスタQ2は、例えば、Siトランジスタである。
【0041】
NMOSトランジスタQ2の主電流路で有るソース・ドレイン路に直列に接続されたソース・ドレイン路を有するトランジスタQ1を有する。トランジスタQ1は、例えば、GaN(窒化ガリウム)で構成されるGaNトランジスタである。トランジスタQ1のドレインは、負荷13に接続される。負荷13には電源電圧VDDが印加される。駆動回路16は、トランジスタQ1、及び、NMOSトランジスタQ2、Q3のオン/オフを制御する駆動信号を供給する。
【0042】
既述した様に、可変利得増幅回路30の利得調整において、NMOSトランジスタQ3のドレイン電圧V(=IREF×RONQ3)を可変利得制御回路の電圧利得Av倍した電圧が、電圧設定回路6の設定電圧(=IREF3×Rf61)に等しくなる制御が行われる。すなわち、可変利得増幅回路30の利得調整の後の出力電圧Voutは、式(1)で示される。
【0043】
Vout=V×A
=IREF×RONQ3×A
=IREF3×Rf61 ・・・ (1)
【0044】
式(1)から、式(2)が得られる。
=IREF3×Rf61/IREF×RONQ3 ・・・ (2)
【0045】
可変利得増幅回路30の利得調整の後、スイッチ17をNMOSトランジスタQ2のドレイン側に切替える。NMOSトランジスタQ2のドレイン電圧Vは、負荷電流Iに応じてNMOSトランジスタQ2のオン抵抗RONQ2によって生じた電圧である。
【0046】
この時の出力電圧Voutは、式(3)で示される。
Vout=I×RONQ2×A ・・・ (3)
【0047】
式(3)に式(2)を代入すると、式(4)が得られる。
Vout=I×RONQ2×IREF2×Rf61/IREF1×RONQ3 ・・・(4)
【0048】
NMOSトランジスタQ2とQ3のオン抵抗の比RONQ3/RONQ2をRatioで示すと、式(5)が得られる。
Vout=I×Rf61×IREF2/IREF1×Ratio ・・・(5)
【0049】
すなわち、出力電圧Voutは、負荷電流I、帰還抵抗Rf61、電圧利得Aと定電流の比(IREF2/IREF1)、及び抵抗比Ratioで示される。電圧利得AVは、既述した利得調整により所定の利得、例えば、「1」に調整される。従って、出力電圧Voutを検出することで負荷電流Iの状態を検出することが出来る。例えば、トランジスタQ1としてGaNトランジスタを用いた場合、印加される電源電圧VDDは、600V程度の高電圧である。トランジスタQ1が設けられるアイソレータ20の入力側と可変利得増幅回路30が設けられる低圧側が絶縁分離された構成において、アイソレータ20の入力側である高電圧側の負荷電流Iを、アイソレータ20の出力側である低電圧側で安定した状態で検出することが出来る。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1、2 入力端子、3、4 出力端子、5、6 電圧設定回路、7 DCオフセット調整回路、8 利得調整回路、16 駆動回路、20、21 アイソレータ、70 比較回路、80 制御回路。
図1
図2
図3