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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240527BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G03G21/00 512
G03G21/00 386
G03G15/16 103
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020161534
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054369
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】相庭 祥造
(72)【発明者】
【氏名】松崎 健太
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 智洋
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072603(JP,A)
【文献】特開2018-004829(JP,A)
【文献】特開2011-237467(JP,A)
【文献】特開2010-276668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
電圧が印加されて前記像担持体から被転写体にトナー像を転写させる転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加する電源と、
前記電源により前記転写部材に電圧を印加した際に前記転写部材に供給される電流又は電圧を検知する検知部と、
温度、湿度及び絶対水分量のうち少なくとも1つの情報である環境情報を取得する環境検知部と、
異なる時期に取得された複数の前記環境情報を含む環境履歴情報を記憶する記憶部と、
前記転写部材の寿命に関する情報を出力する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記環境履歴情報に含まれる複数の前記環境情報の中から選択した所定の環境情報と、前記検知部の検知結果と、に基づいて、該検知結果が示す前記転写部材の電気抵抗に関する値を、前記所定の環境情報が示す所定の環境における前記転写部材の電気抵抗に関する値に補正して、該補正後の前記転写部材の電気抵抗に関する値に基づいて、前記転写部材の寿命に関する情報を出力可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定の環境情報は、前記環境履歴情報に含まれる複数の前記環境情報のうち温度、湿度又は絶対水分量が最小である前記環境情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記転写部材の電気抵抗の環境特性に基づいて予め設定された補正係数を用いて、前記補正を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部に前記補正係数を入力可能な入力部を有し、前記入力部は、前記転写部材が第1の転写部材である場合には前記補正係数として第1の補正係数を前記制御部に入力し、前記転写部材が第2の転写部材である場合には前記補正係数として第2の補正係数を前記制御部に入力することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1、第2の転写部材は、それぞれに与えられた識別情報が互いに異なることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記識別情報は、材料の種類、材料ロット、製造ロット、及び部品コードのうちの少なくとも1つの違いを示すことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記入力部は、前記識別情報の入力を受け付け、入力された前記識別情報に対応する前記補正係数を前記制御部に入力することを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記転写部材は、前記像担持体から前記被転写体としての記録材にトナー像を転写させ、
前記制御部は、前記環境情報及び記録材に関する記録材情報のうち少なくとも1つに基づいて目標電流値Itを決定し、前記目標電流値Itの電流を前記転写部材に流すのに必要な部材分担電圧Vbを決定し、前記環境情報及び前記記録材情報のうち少なくとも1つに基づいて記録材分担電圧Vpを決定することに基づいて、前記転写の際に前記電源が前記転写部材に印加する電圧を決定し、
前記記憶部は更に、異なる時期に決定された複数の前記目標電流値Itを含む目標電流値履歴情報と、異なる時期に決定された複数の前記記録材分担電圧Vpを含む記録材分担電圧履歴情報と、を記憶し、
前記制御部は、前記補正後の前記転写部材の電気抵抗に関する値と、前記目標電流値履歴情報に含まれる複数の前記目標電流値Itのうち絶対値が最大である前記目標電流値Itと、前記記録材分担電圧履歴情報に含まれる複数の前記記録材分担電圧Vpのうち絶対値が最大である前記記録材分担電圧Vpと、に基づいて、前記転写部材の寿命に関する情報を出力可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記補正後の前記転写部材の電気抵抗に関する値と、前記絶対値が最大である前記目標電流値Itと、前記絶対値が最大である前記記録材分担電圧Vpと、に基づいて求めた電圧値Vtrの、前記電源の出力の上限値に対する割合に基づいて、前記転写部材の寿命に関する情報を出力することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記転写部材の使用量に関する指標値の累積値を記憶する使用量記憶部を有し、
前記制御部は、前記使用量記憶部に記録された前記指標値の累積値に基づいて求めた前記転写部材の寿命を示す第1の寿命値と、前記補正後の前記転写部材の電気抵抗に関する値に基づいて求めた前記転写部材の寿命を示す第2の寿命値と、を比較して、前記第2の寿命値が示す前記転写部材の残寿命の方が前記第1の寿命値が示す前記転写部材の残寿命よりも大きい場合に、前記第2の寿命値に基づいて前記転写部材の寿命に関する情報を出力することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1の寿命値と前記第2の寿命値とを比較して、前記第1の寿命値が示す前記転写部材の残寿命の方が前記第2の寿命値が示す前記転写部材の残寿命よりも大きい場合には、前記第1の寿命値に基づいて前記転写部材の寿命に関する情報を出力することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第1の寿命値又は前記第2の寿命値を前記転写部材の寿命に関する情報として更新して記憶する寿命値記憶部を有し、前記制御部は、前記比較の結果に基づく前記転写部材の寿命に関する情報が示す前記転写部材の残寿命が前記寿命値記憶部に記憶されている前記転写部材の寿命に関する情報が示す前記転写部材の残寿命よりも増加する場合には、前記寿命値記憶部に記憶されている前記転写部材の寿命に関する情報の更新を行わないことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、印刷装置、あるいはこれらのうち複数の機能を備えた複合機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式の画像形成装置では、感光体や中間転写体などの像担持体に形成されたトナー像を記録材に転写するための転写部材として、電圧が印加されることで静電的にトナー像の転写を行う、導電性を有する転写ローラが広く用いられている。
【0003】
転写ローラは、一般に、金属で形成された芯金と、芯金の周囲に設けられた導電性の弾性層と、を有する。転写ローラとしては、弾性層が発泡弾性体で形成されたスポンジローラ、弾性層が比較的硬度の高いソリッドゴムで形成されたゴムローラなどが用いられる。また、転写ローラに均一な導電特性を与えるなどのために、弾性層が含有する導電剤としてイオン導電剤が用いられことが多い。
【0004】
イオン導電剤を用いた転写ローラは、周方向の電気特性の振れが小さく、良好な画像を得るのに適している。しかし、イオン導電剤を用いた転写ローラは、装置の長期使用による導電特性の変化で電気抵抗が上昇する、またユーザが装置を使用する環境(使用環境)によって電気抵抗が変化する、という特徴を有する。装置の耐久状態(使用量)により、あるいは使用環境の大きな変化により、転写ローラの電気抵抗が上昇すると、良好な画像が得られなくなる、あるいは装置の高圧電源の使用範囲内の印加電圧で所望の電流を得ることができなくなる可能性がある。そのため、転写ローラの交換が必要となる場合がある。しかし、上述のように、装置の耐久状態のみなならず、使用環境によっても電気特性が変化するという特徴から、転写ローラの交換タイミングを正確に予測することが困難である。
【0005】
そこで、転写ローラの走行距離あるいは通電時間を算出し、その値が所定値以上の場合に転写ローラが寿命に到達したと判定する構成が提案されている(特許文献1、2)。また、使用環境によって転写ローラの電気特性が変化することを考慮し、環境区分を定義して区分ごとに判定基準や算出方法を変えて転写ローラの寿命判定を行うものが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-109340号公報
【文献】特開2018-72603号公報
【文献】特開2003-195700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3に記載の技術は、ユーザの使用環境や使用頻度を考慮して転写ローラの寿命予測あるいは寿命判定を行う方法として有効である。しかし、使用環境や使用頻度以外にも、ユーザが使用する記録材、使用環境の範囲によって、転写ローラが使用可能な期間やプリント枚数は異なる。つまり、使用する記録材の電気抵抗によって、良好な画像を得るために必要な転写電流が異なる。また、記録材の坪量、記録材の表面の凹凸、あるいは記録材に含まれる水分量などによって、記録材の電気抵抗が異なる。そのため、実際にユーザが使用する記録材や使用環境によって、転写ローラの真の寿命が変わる。そのため、特許文献1~3に記載されるような方法を用いた場合、例えば、転写ローラの真の寿命を迎える前に転写ローラが交換されるという、もったいない交換がなされる可能性がある。つまり、消耗パーツである転写ローラの長寿命化、転写ローラの寿命予測あるいは寿命判定の精度の向上、計画的に消耗パーツを提供するという計画型サービスにおけるタイムリーな転写ローラの自動配送の精度が十分でないという課題がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、転写部材の寿命予測の精度を向上させることが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、電圧が印加されて前記像担持体から被転写体にトナー像を転写させる転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電源と、前記電源により前記転写部材に電圧を印加した際に前記転写部材に供給される電流又は電圧を検知する検知部と、温度、湿度及び絶対水分量のうち少なくとも1つの情報である環境情報を取得する環境検知部と、異なる時期に取得された複数の前記環境情報を含む環境履歴情報を記憶する記憶部と、前記転写部材の寿命に関する情報を出力する制御部と、を有し、前記制御部は、前記環境履歴情報に含まれる複数の前記環境情報の中から選択した所定の環境情報と、前記検知部の検知結果と、に基づいて、該検知結果が示す前記転写部材の電気抵抗に関する値を、前記所定の環境情報が示す所定の環境における前記転写部材の電気抵抗に関する値に補正して、該補正後の前記転写部材の電気抵抗に関する値に基づいて、前記転写部材の寿命に関する情報を出力可能であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、転写部材の寿命予測の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像形成装置の概略断面図である。
図2】実施例における制御を説明するための制御ブロック図である。
図3】二次転写ローラの寿命値の推移を模式的に示すグラフ図である。
図4】実施例における制御を説明するためのフローチャート図である。
図5】実施例における制御を説明するためのフローチャート図である。
図6】他の実施例における表示画面の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0013】
[実施例1]
1.画像形成装置の構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型のプリンタである。画像形成装置100は、原稿読取装置(スキャナ)、パーソナルコンピュータ(ホストコンピュータ)、デジタルカメラ、スマートフォンなどの外部機器からの画像信号に応じて、フルカラー画像を記録材Pに形成することができる。なお、記録材(シート、転写材、記録媒体)Pは、トナー像が形成されるものであり、具体例として、普通紙、普通紙の代用品である合成樹脂製のシート、厚紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シートなどがある。
【0014】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する4つの画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。各画像形成部SY、SM、SC、SKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを表す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部Sは、後述する感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、一次転写ローラ5、前露光装置11、クリーニング装置6などを有して構成される。
【0015】
第1の像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、駆動手段を構成する駆動源としてのドラム駆動モータ(図示せず)によって、図中矢印R1方向(反時計回り方向)に回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1は、例えば210mm/secの周速度(プロセススピード)で回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1は、外径が30mmの負帯電性の有機感光体(OPC)である。本実施例では、感光ドラム1は、基体としてのアルミニウム製のシリンダの表面に、表面層として次の順番で塗布されて積層された下引き層と、光電荷発生層と、電荷輸送層と、の3層を有する。
【0016】
回転する感光ドラム1の表面(外周面)は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に接触し、感光ドラム1の回転に伴って従動回転する。本実施例では、帯電ローラ2は、金属で形成された芯金と、芯金の周囲に設けられた弾性層としての導電性のゴムと、を有するゴムローラで構成されている。帯電ローラ2には、帯電電圧印加手段としての高圧電源である帯電電源(図示せず)が接続されている。帯電処理時に、帯電電源は、帯電ローラ2に所定の帯電電圧(帯電バイアス)を印加する。本実施例では、帯電電源は、帯電電圧として直流電圧を帯電ローラ2に印加する。
【0017】
帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光装置3によって画像信号に応じて走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。本実施例では、露光装置3は、レーザースキャナであり、後述する制御部50から出力される分解色の画像情報に従ってレーザ光を発する。
【0018】
感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像(現像剤像)が形成される。現像装置4は、現像容器と、現像容器に収容されたトナーを感光ドラム1へと搬送する現像剤担持体としての現像スリーブと、を有する。現像スリーブには、現像電圧印加手段としての高圧電源である現像電源(図示せず)が接続されている。現像時に、現像電源は、現像スリーブに所定の現像電圧(現像バイアス)を印加する。これにより、感光ドラム1上の静電像の画像部と現像スリーブとの間の電位差により、現像スリーブから感光ドラム1へとトナーが移動して、静電像が現像される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。現像装置4には、トナーボトル13からトナーが補給される。
【0019】
4つの感光ドラム1と対向するように、第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された中間転写体である中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての駆動ローラ10a、テンションローラ10b及び二次転写対向ローラ10cに掛け渡されて、所定の張力(テンション)で張架されている。中間転写ベルト7は、駆動手段を構成する駆動源としてのベルト駆動モータ(図示せず)によって駆動ローラ10aが回転駆動されることで、図中矢印R2方向(時計回り方向)に回転(周回移動)する。中間転写ベルト7は、感光ドラム1の周速度に対応する周速度(プロセススピード)で回転駆動される。駆動ローラ10a以外の張架ローラは、中間転写ベルト7の回転に伴って従動回転する。中間転写ベルト7の内周面側には、各感光ドラム1に対応して、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ5が配置されている。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト7の内周面を感光ドラム1に向けて押圧し、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1を形成する。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト7の回転に伴って従動回転する。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において、一次転写ローラ5の作用によって、回転している被転写体としての中間転写ベルト7上に転写(一次転写)される。一次転写ローラ5には、一次転写電圧印加手段としての高圧電源である一次転写電源(図示せず)が接続されている。本実施例では、各一次転写ローラ5に対してそれぞれ独立した一次転写電源が設けられている。一次転写時に、一次転写電源は、一次転写ローラ5にトナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である一次転写電圧(一次転写バイアス)を印加する。本実施例では、一次転写ローラ5に正極性の一次転写電圧を印加することにより、感光ドラム1上の負極性のトナーで形成されたトナー像が中間転写ベルト7上に転写される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト7上に重ね合わされるようにして順次多重転写される。
【0020】
中間転写ベルト7の外周面側において、二次転写対向ローラ(二次転写内ローラ)10cと対向する位置には、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ(二次転写外ローラ)8が配置されている。二次転写ローラ8は、二次転写対向ローラ10cに向けて押圧され、中間転写ベルト7を介して二次転写対向ローラ10cに当接して、中間転写ベルト7と二次転写ローラ8とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成する。二次転写ローラ8は、中間転写ベルト7の回転に伴って従動回転する。中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、二次転写部N2において、二次転写ローラ8の作用によって、中間転写ベルト7と二次転写ローラ8とに挟持されて搬送されている被転写体としての記録材P上に転写(二次転写)される。二次転写ローラ8には、二次転写電圧印加手段としての高圧電源である二次転写電源20が接続されている。また、二次転写対向ローラ10cは、電気的に接地(グラウンドに接続)されている。二次転写時に、二次転写電源20は、二次転写ローラ8にトナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である二次転写電圧(二次転写バイアス)を印加する。本実施例では、二次転写ローラ8に正極性の二次転写電圧を印加することにより、中間転写ベルト7上の負極性のトナーで形成されたトナー像が記録材P上に転写される。記録材Pは、記録材収容部、記録材給送部材などを備えた給送部によって1枚ずつ給送されて、記録材搬送部材としてのレジストローラ対12まで搬送される。この記録材Pは、レジストローラ対12によって、斜行が補正されると共に、中間転写ベルト7上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部N2へと供給される。
【0021】
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置9へと搬送される。定着装置9は、熱源を備えた定着ローラ9aと、定着ローラ9aに圧接する加圧ローラ9bと、を有する。定着装置9は、定着ローラ9aと加圧ローラ9bとで記録材Pを挟持して搬送しながら、記録材Pを加熱及び加圧することで、記録材P上にトナー像を定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、排出経路を搬送されて、排出部から、画像形成装置100の装置本体110の外部に設けられた排出トレイ(図示せず)に排出(出力)されて積載される。
【0022】
一方、一次転写後の感光ドラム1の表面は、前露光装置11によって光を照射されることで除電される。また、一次転写後に感光ドラム1上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、クリーニング手段としてのクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。本実施例では、クリーニング装置6は、クリーニング部材としてクリーニングブレードを備えたカウンターブレード方式のものである。本実施例では、クリーニングブレードは、その自由長が8mmのウレタンゴムを主体とする材料で形成された弾性ブレードであり、感光ドラム1の表面の移動方向に対してカウンター方向となるように、感光ドラム1の表面に対して所定の押圧力で当接されている。また、二次転写後に中間転写ベルト7上に残留したトナー(二次転写残トナー)や紙粉などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置10dによって中間転写ベルト7上から除去されて回収される。本実施例では、ベルトクリーニング装置10dも、カウンターブレード方式のものである。
【0023】
本実施例では、各画像形成部Sにおいて、感光ドラム1と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4、前露光装置11及びクリーニング装置6とは、プロセスカートリッジとして一体的に装置本体110に対し着脱可能に構成されている。また、本実施例では、中間転写ベルト7、複数の張架ローラ10a~10c、各一次転写ローラ5、及びベルトクリーニング装置10dは、中間転写ユニット10として一体的に装置本体110に対して着脱可能に構成されている。
【0024】
2.転写構成
本実施例では、一次転写ローラ5は、材質がSUM(硫黄及び硫黄複合快削鋼)あるいはSUS(ステンレス鋼)などの金属ローラで形成されている。本実施例では、一次転写ローラ5は、スラスト方向にストレートの形状であり、外径は6~10mm程度である。一次転写ローラ5には、一次転写電源(図示せず)が接続されている。一次転写時に、一次転写ローラ5には、一次転写電源からトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の一次転写電圧が印加される。これにより、感光ドラム1の表面電位と一次転写ローラ5の電位との間の電位差である一次転写コントラストが形成される。各一次転写部N1にそれぞれ所定の一次転写コントラストが形成されることで、各感光ドラム1上のトナー像が、中間転写ベルト7上に順次静電吸引され、中間転写ベルト7上に重畳されたトナー像が形成される。
【0025】
本実施例では、中間転写ベルト7は、単層で構成された無端状のベルトである。中間転写ベルト7の材料としては、例えば、次に挙げる材料を使用可能である。ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリアリレート。そして、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルニトリル、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリエーテルエーテルケトンなどの単体樹脂、又はこれらの混合物。また、本実施例では、中間転写ベルト7には、29~118N(約3~12kgf)程度の張力が付与されている。
【0026】
本実施例では、中間転写ベルト7の材料として、ポリイミド樹脂、又はポリエーテルエーテルケトン樹脂を使用している。また、本実施例では、中間転写ベルト7の厚さは、60~70μm程度としている。また、本実施例では、中間転写ベルト7の表面抵抗率は、1.0×10Ω/□以上、2.0×1011Ω/□以下としている。また、本実施例では、中間転写ベルト7の体積抵抗率は、4.0×10Ω・cm以上、6.0×1011Ω・cm以下としている。なお、電気抵抗特性の測定は、測定器としてハイレスタUP(三菱化学製)、測定プローブとしてURS(ガード電極外径φ17.9mm)(三菱化学製)を用いて、印加電圧100V、チャージ10秒の測定条件で行った。
【0027】
本実施例では、二次転写対向ローラ10cは、金属製の芯金の周囲に、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)で形成された弾性層が設けられて構成されている。本実施例では、二次転写対向ローラ10cは、外径が20mm、弾性層の厚さが0.5mmとなるように形成され、硬度は例えば70°(アスカーC)に設定されている。また、二次転写対向ローラ10cは、電気的に接地されている。
【0028】
本実施例では、二次転写ローラ8は、金属製の芯金の周囲に、金属錯体などのイオン導電剤を含有したNBR(ニトリルゴム)やEPDMなどで形成された弾性層が設けられて構成されている。本実施例では、二次転写ローラ8は、芯金の外径が12mm、弾性層を含む二次転写ローラ8の外径が24mmとなるように形成されている。また、本実施例では、二次転写ローラ8の電気抵抗値は、3.0×10~5.0×10Ωとされている。二次転写部N2において、二次転写対向ローラ10cと中間転写ベルト7の電気抵抗値は、二次転写ローラ8の電気抵抗値よりも十分に小さくなっている。二次転写ローラ8には、二次転写電源20が接続されている。二次転写時に、二次転写ローラ8には、二次転写電源20からトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の二次転写電圧が印加される。これにより、中間転写ベルト7上のトナー像が記録材P上に二次転写される。また、二次転写電源20には、後述する電圧電流検知回路21(図2参照)が接続されている。
【0029】
3.制御態様
図2は、本実施例の画像形成装置100の制御態様を説明するための概略ブロック図である。画像形成装置100には、制御手段としての制御部50が設けられている。制御部50は、コンピュータにより構成され、CPU51と、ROM52と、RAM53と、入出力回路(I/F)54と、不揮発メモリ55と、を備えている。演算処理手段(演算処理部)としてのCPU51は、画像形成装置100の制御全体を司るマイクロプロセッサであり、システムコントローラの主体である。記憶手段(記憶部)としてのROM52は、各部を制御するためのプログラムやデータを記憶する。記憶手段(記憶部)としてのRAM53は、データを一時的に記憶する。入出力回路54は、制御部50と外部の機器との間での信号の入出力を制御する。記憶手段(記憶部)としての不揮発メモリ55は、後述する環境履歴情報などを記憶する。CPU51は、入出力回路54を介して、前述の給送部、画像形成部、排出部、後述する操作部などの画像形成装置100の各部に接続され、各部と信号をやり取りして、各部の動作を制御する。ROM52には、記録材Pに画像を形成するための画像形成制御シーケンスなどが記憶されている。画像形成装置100に設けられた操作部30は、表示手段としての表示部31と、入力手段としての入力部32と、を有している。本実施例では、画像形成装置100は、ユーザやサービス担当者などの操作者が、操作部30(入力部32)を操作することで、操作部30(表示部31)において二次転写ローラ8の寿命などの消耗パーツ(交換パーツ)の寿命を確認できるようになっている。また、画像形成装置100は、操作者が、操作部30(入力部32)を操作することで、二次転写ローラ8などの消耗パーツの発注を行うことが可能とされていてよい。
【0030】
制御部50には、前述の帯電電源と、前述の現像電源と、前述の一次転写電源と、が接続されている(いずれも図示せず)。また、制御部50には、前述の二次転写電源20と、電圧検知手段(電圧検知部)及び電流検知手段(電流検知部)の機能を有する電圧電流検知回路(以下、単に「検知回路」ともいう。)21と、が接続されている。検知回路21は、二次転写電源20が二次転写ローラ8に電圧を印加している際に二次転写ローラ8(すなわち二次転写電源20)に流れる電流を検知することが可能である。また、検知回路21は、二次転写電源20が二次転写ローラ8に電圧を印加している際に二次転写電源20が出力している電圧を検知することが可能である。検知回路21は、電流検知結果や電圧検知結果を示す信号を制御部50に入力する。本実施例では、制御部50は、検知回路21によって検知される電流の値が目標値(目標電流値)となる(近付く)ように二次転写電源20の出力する電圧を調整することで、二次転写電源20が二次転写ローラ8に印加する電圧を定電流制御できる。また、本実施例では、制御部50は、検知回路21によって検知される電圧の値が目標値(目標電圧値)となる(近付く)ように二次転写電源20の出力する電圧を調整することで、二次転写電源20が二次転写ローラ8に印加する電圧を定電圧制御できる。
【0031】
また、制御部50には、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の、温度又は湿度の少なくとも一方を検知するための環境検知手段としての、環境センサ40が接続されている。本実施例では、環境センサ40は、温湿度センサで構成されており、装置本体110の内部に設けられ、画像形成装置100の内部(機内)の温度及び湿度を検知することが可能である。環境センサ40は、温度及び湿度の検知結果を示す信号を制御部50に入力する。制御部50は、環境センサ40による温度及び湿度の検知結果に基づいて、絶対水分量を求めることが可能である。制御部50は、環境センサ40の検知結果を、詳しくは後述する二次転写電圧制御に反映させる。本実施例では、二次転写電圧制御において、環境情報としては、環境センサ40の検知結果に基づいて求められた絶対水分量の情報が用いられる。なお、制御部50は、環境センサ40の検知結果を、例えば一次転写電圧制御などの他の制御にも反映することができる。例えば、制御部50は、環境センサ40の検知結果に基づいて、ROM52に記憶されたテーブルから一次転写電圧を決定することができる。このテーブルは、所望の一次転写電流が流れるように、環境(例えば絶対水分量)と一次転写電圧との関係を予め求めて設定したものとすることができる。
【0032】
また、制御部50には、後述する第1の寿命値2Tr_Life1を求めるために、消耗パーツである二次転写ローラ8の使用量に関する指標値の累積値を更新して記憶する、計数手段としての記憶部で構成されたカウンター60が接続されている。本実施例では、二次転写ローラ8の使用量に関する指標値として、二次転写ローラ8の使用初期(新品時)からのプリント枚数を用いる。制御部50は、プリントジョブを実行するごとに、プリント枚数(所定のサイズの記録材Pの枚数に換算した値でよい)を、逐次積算してカウンター60に記憶させる。また、本実施例では、制御部50は、後述するATVCなどの制御動作(調整動作)における二次転写ローラ8の使用量についても、プリント枚数に換算してカウンター60に逐次積算して記憶させる。なお、二次転写ローラ8の使用量に関する指標値は、プリント枚数に限定されるものではなく、二次転写ローラ8の使用量と相関する指標値であれば用いることができる。二次転写ローラ8の使用量に関する指標値としては、例えば、二次転写ローラ8の走行距離(回転回数、回転時間)、通電量(通電時間、電流値、電力)を用いてもよい。
【0033】
また、制御部50には、スキャナやパーソナルコンピュータなどの外部機器200が接続されていてよい。制御部50は、例えば、スキャナやパーソナルコンピュータなどの外部機器200からプリントジョブの情報を受信すると、画像形成装置100の各部を制御して、プリントジョブを実行するように制御を行う。プリントジョブの情報は、画像信号(画像情報)と、プリント命令信号(画像形成指令信号)と、を含む。プリント命令信号は、プリント開始指示、記録材Pに関する情報やプリント枚数などのプリント条件に関する情報などを含む。なお、記録材Pに関する情報とは、普通紙、上質紙、光沢紙、グロス紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙、紙質などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズ、剛性などの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、商品名、品番などを含む。)などの、記録材Pを区別することのできる任意の情報を包含するものである。記録材Pに関する情報によって区別される記録材Pごとに、記録材Pの種類を構成するものと見ることができる。なお、記録材Pに関する情報は、例えば「普通紙モード」、「グロス紙モード」といった、画像形成装置100の動作設定を指定する画像形成モードの情報に含まれていたり、画像形成モードの情報で代替されたりしてもよい。また、プリントジョブの情報の一部又は全てが、操作部30から制御部50に入力されてもよい。
【0034】
なお、本実施例では、画像形成時とは、スキャナやパーソナルコンピュータなどの外部端末から入力された画像情報に基づいて、感光ドラム1にトナー像を形成している期間である。一方、本実施例では、非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であり、例えば、プリントジョブが実行されていないときの他、プリントジョブ中の前回転時や紙間などである。また、プリントジョブとは、プリント命令信号(画像形成指令信号)に基づいて行う次のような一連の動作のことである。すなわち、画像形成を行うにあたり必要となる予備動作(所謂、前回転動作)を開始してから、画像形成工程を経て、画像形成を終了するにあたり必要となる予備動作(所謂、後回転動作)が完了するまでの一連の動作のことである。具体的には、プリント命令信号を受けた(プリントジョブの情報の入力)後の前回転(画像形成前の準備動作)から、後回転(画像形成後の動作)までのことを指し、画像形成期間、紙間(非画像形成時)を含む。また、紙間とは、複数の記録材Pに連続して画像形成が行われる場合に、1枚の記録材Pに対して形成されるトナー像と次の1枚の記録材Pに対して形成されるトナー像との間に相当する期間である。
【0035】
4.二次転写電圧制御
次に、本実施例における二次転写電圧制御について説明する。本実施例では、制御部50は、次のようなATVC(Auto Transfer Voltage Controlの略)により二次転写電圧を制御する。つまり、制御部50は、非画像形成時に、二次転写部N2に記録材Pが無い状態で、二次転写ローラ8に、二次転写電源20から、所定の目標電流値It(「Itarget」)の電流が流れるように定電流制御で電圧を印加する。本実施例では、このとき、制御部50は、二次転写ローラ8の1周分の時間にわたり二次転写ローラ8に電圧を印加し、検知回路21により検知された電圧値を平均化処理する。制御部50は、この平均化処理した電圧値に基づいて、二次転写時に二次転写ローラ8に定電圧制御で印加する二次転写電圧の目標電圧値を決定する。つまり、制御部50は、ATVCにより、二次転写部N2(本実施例では主に二次転写ローラ8)の電気抵抗に応じた、部材分担電圧Vbを決定する。より詳細には、本実施例では、上記平均化処理により取得した電圧値を、部材分担電圧Vbとして決定する。本実施例では、制御部50は、ATVCを、プリントジョブの前回転動作時に行う。特に、本実施例では、制御部50は、プリントジョブを実行するごとに、各プリントジョブの前回転動作時にATVCを行う。ただし、ATVCは、毎回のプリントジョブの実行時に実行することに限定されるものではなく、所定のプリント枚数ごと、環境の変化が所定の範囲を超えた場合などの、予め設定された所定のタイミングごとに非画像形成時に実行することができる。また、ATVCは、前回転動作時に実行することに限定されるものではなく、紙間や後回転動作時に実行してもよい。
【0036】
ATVCにおける目標電流値Itは、環境、記録材Pの種類(坪量範囲や表面性など)などに応じて予め設定されたItテーブル(2次転写電流テーブル)を用いて決定される。本実施例では、Itテーブルは、環境(本実施例では絶対水分量)、記録材Pの種類に応じて目標電流値Itを決定できるように構成されている。Itテーブルは、予めROM52に記憶されている。本実施例では、制御部50は、ATVCの実行時(プリントジョブの開始時)に、環境センサ40の検知結果に基づいて求めた絶対水分量、プリントジョブの情報に含まれる記録材Pに関する情報に応じて、Itテーブルから対応する目標電流値Itを選択する。なお、2次転写電流テーブルは、更に現像剤の劣化状態などの他の情報に応じて目標電流値Itを決定できるように構成されていてもよい。
【0037】
このように、制御部50は、非画像形成時に、二次転写ローラ8に電圧を印加し、電圧と電流との関係に関する情報を取得することで、二次転写部N2(本実施例では主に二次転写ローラ8)の電気抵抗に関する情報を取得する。なお、二次転写電圧(より詳細には部材分担電圧Vb)を決定する方式は、上記本実施例における方式に限定されるものではない。上記方式以外にも、例えば、定電圧制御で複数の値の電圧を印加することにより電圧と電流との関係(V-I曲線)の近似式を求め、この近似式に基づいて二次転写電圧(部材分担電圧Vb)を算出するなどの方式がある。二次転写部N2(本実施例では主に二次転写ローラ8)の電気抵抗に関する情報を取得できればよい。
【0038】
また、制御部50は、二次転写電圧の目標電圧値を決定するために、上述のようにして決定した部材分担電圧Vbに足し合わせる記録材分担電圧Vpを決定する。記録材分担電圧Vpは、記録材Pの種類(坪量範囲や表面性など)、環境などに応じて予め設定されたVpテーブル(記録材分担電圧テーブル)を用いて決定される。本実施例では、Vpテーブルは、環境(本実施例では絶対水分量)、記録材Pの種類に応じて記録材分担電圧Vpを決定できるように構成されている。Vpテーブルは、予めROM52に記憶されている。本実施例では、制御部50は、ATVCの実行時(プリントジョブの開始時)に、環境センサ40の検知結果に基づく絶対水分量、プリントジョブの情報に含まれる記録材Pに関する情報に応じて、Vpテーブルから対応する記録材分担電圧Vpを選択する。
【0039】
そして、制御部50は、上述のようにして決定した部材分担電圧Vbと記録材分担電圧Vpとから、次式、Vtr=Vb+Vpにより、二次転写時に二次転写ローラ8に定電圧制御で印加する二次転写電圧の目標電圧値Vtrを決定する。
【0040】
5.二次転写ローラの交換
<第1の寿命値(使用量に基づく寿命値)>
上述のようにして決定される二次転写電圧を二次転写ローラ8に印加してプリントジョブを繰り返し行うと、二次転写ローラ8の使用量の増加により、二次転写ローラ8の電気抵抗が上昇する。特に、二次転写ローラ8のゴム層やスポンジ層(本実施例ではスポンジ層)の導電剤がイオン導電剤を含んだ材料の場合は、二次転写ローラ8の使用量の増加により、二次転写ローラ8の電気抵抗が上昇しやすい。つまり、イオン導電性の転写部材は、電子導電性の転写部材と比較して、使用量の増加に伴って電気抵抗が上昇しやすい傾向がある。そして、所望の電流値を得るために必要な電圧の値が高圧基板の出力限界まで達してしまう場合がある。この場合に、二次転写ローラ8の使用を継続しようとすると、二次転写電流が不足した状態になり、良好な画像を得ることができなくなる。そのため、このような場合に、二次転写ローラ8が寿命に到達したと判断し、消耗パーツとして二次転写ローラ8の交換を行うことが必要となる。
【0041】
上述のように、二次転写ローラ8の寿命は、一つは、通電による電気抵抗の変化によって決まる。図3は、プリント枚数と二次転写ローラ8の寿命値LIFE(%)との関係を模式的に示すグラフ図である。図3中のLIFE値(%)は、二次転写電源20の高圧出力上限値(高圧出力限界値)に対する、所定の電流を流すために必要な電圧値の割合(百分率)で表している。すなわち、図3中のLIFE値(%)の推移は、二次転写ローラ8の電気抵抗の推移を示している。
【0042】
ある固定環境下、かつ、同一の電流を印加しつづけた場合、二次転写ローラ8の電気抵抗は、図3中の(1)で示すように推移する。そのため、例えば、所望の電流を得るために必要な電圧値が二次転写電源20の高圧出力上限値に到達したタイミングを二次転写ローラ8の寿命と考えることができる。つまり、二次転写ローラ8の寿命を、二次転写ローラ8の使用量に関する指標値である、プリント枚数、走行距離(回転回数、回転時間)、通電量(通電時間、電流値、電力)の累積値によって定義することができる。そして、例えば、予め二次転写ローラ8の寿命到達基準としての寿命到達プリント枚数を設定し、下記式(1)のように、二次転写ローラ8の第1の寿命値2Tr_Life1を定義することができる。
2Tr_Life1
=100%×(現在のプリント枚数)/(寿命到達プリント枚数) ・・・(1)
【0043】
本実施例では、制御部50は、所定のタイミング(例えば、プリントジョブを実行するごと、あるいはATVCを実行するごとなど)で第1の寿命値2Tr_Life1を求め、不揮発メモリ55に更新して記憶させる。現在のプリント枚数は、上述のようにカウンター60から取得される。なお、本実施例では、累積プリント枚数を用いて第1の寿命値2Tr_Life1を求めているが、前述のように、例えば累積電力や累積通電時間などを用いても同様に求めることが可能である。二次転写ローラ8の使用量と相関する指標値であれば、第1の寿命値2Tr_Life1を求めるために用いることができる。また、上記寿命到達基準(寿命到達プリント枚数など)は、典型的には、画像不良の発生などをより確実に抑制するために、画像形成装置100が比較的二次転写ローラ8の電気抵抗が比較的上昇しやすい使われ方をした場合を想定して設定される。
【0044】
<第2の寿命値(環境履歴に基づく寿命値)>
上述のように、プリント枚数などの二次転写ローラ8の使用量に基づいて、二次転写ローラ8の寿命到達タイミング(交換タイミング)を予測あるいは判定することができる。ただし、二次転写ローラ8、特に、イオン導電剤を含む二次転写ローラ8の電気抵抗は、二次転写ローラ8の使用量のみならず、環境(温度、湿度)によっても変動するという特徴を有する。つまり、イオン導電性の転写部材は、電子導電性の転写部材と比較して、環境によって電気抵抗が変動しやすい傾向がある。そのため、装置本体110の設置環境や動作状態で機内が昇温すると二次転写ローラ8の電気抵抗が変動する。したがって、二次転写ローラ8の使用量のみに基づいて二次転写ローラ8の寿命予測あるいは寿命判定を行う方法では、精度が不十分である。
【0045】
つまり、二次転写ローラ8の寿命は、主に耐久変動、環境変動の2つの要因で決まってくるが、ユーザの使用環境や使い方(主に記録材Pの種類)によって、二次転写ローラ8の実際に使用可能な寿命は変わってくる。そのため、二次転写ローラ8の寿命を耐久変動に基づいてのみ予測あるいは判定する方法では、寿命予測あるいは寿命判定の精度が十分ではない。その結果、ユーザにとってはパーツ交換コストの低減、ダウンタイム頻度の適正化など、またサービス担当者にとっては計画的出動などの点で課題がある。
【0046】
そこで、本実施例では、制御部50は、例えばプリントジョブを実行するごとなどの所定のタイミングで環境情報を取得して、不揮発メモリ55に環境履歴情報として逐次記憶させる。そして、制御部50は、該環境履歴情報の中から選択した環境情報を用いて取得した二次転写ローラ8の電気抵抗に関する情報に基づいて、二次転写ローラ8の第2の寿命値2Tr_Life2を求める。本実施例では、環境履歴情報の中から絶対水分量が最小値となる環境(すなわち、二次転写ローラ8の電気抵抗が最大値となり得る環境)の情報を選択して、第2の寿命値2Tr_Life2を求めるために用いる。
【0047】
また、本実施例では、制御部50は、例えばATVCを実行するごとなどの所定のタイミングで、目標電流値It、記録材分担電圧Vpの情報を不揮発メモリ55にIt、Vpの履歴情報として逐次記憶させる。そして、制御部50は、該It、Vpの履歴情報の中から選択したIt、Vpの情報にも基づいて、二次転写ローラ8の第2の寿命値2Tr_Life2を求める。本実施例では、It、Vpの履歴情報の中から絶対値が最大値であるIt、Vpの情報を選択して、第2の寿命値2Tr_Life2を求めるために用いる。
【0048】
これにより、本実施例では、消耗パーツである二次転写ローラ8について、ユーザの使用条件(環境、記録材Pの種類)に合わせた寿命予測あるいは寿命判定を行うことを可能とする。その結果、二次転写ローラ8の寿命予測あるいは寿命判定の精度の向上を図り、ユーザにとってはダウンタイムの低減など、またサービス担当者にとっては計画的出動などにつなげることを可能とする。以下、更に詳しく説明する。
【0049】
本実施例では、制御部50は、プリントジョブを実行するごとに、環境履歴情報として、環境センサ40によって検知された温度及び湿度を不揮発メモリ55に逐次記憶させる。また、本実施例では、制御部50は、プリントジョブを実行するごとに、環境履歴情報として、上記温度及び湿度から求めた絶対水分量を不揮発メモリ55に逐次記憶させる。また、本実施例では、制御部50は、不揮発メモリ55に記憶された絶対水分量の履歴の中から最小値を選び出す。そして、制御部50は、この絶対水分量の最小値を、二次転写ローラ8の寿命予測あるいは寿命判定の精度を向上させるために第2の寿命値2Tr_Life2を求める環境(ここでは「所定の環境」ともいう。)の情報として決定する。
【0050】
また、本実施例では、制御部50は、ATVCを実行するごとに、該ATVCにおける目標電流値It、及び該ATVCによって決定される部材分担電圧Vbに基づいて、二次転写ローラ8の電気抵抗を、次式、R=Vb/Itに基づいて求める。また、制御部50は、ATVCを実行するごとに、該ATVCの実行時の絶対水分量(温度及び湿度から求める)と紐づけて、上記二次転写ローラ8の電気抵抗Rを不揮発メモリ55に逐次記憶させる。
【0051】
また、本実施例では、制御部50は、ATVCを実行するごとに求められる二次転写ローラ8の電気抵抗Rを、上記所定の環境における電気抵抗である寿命予測用抵抗R_Lifeに換算する。つまり、二次転写ローラ8の電気抵抗は環境依存性を有するが、材料由来の固有特性であるため、予め二次転写ローラ8の電気抵抗の環境特性に応じた、環境特性変換テーブルを設定することができる。表1は、本実施例における環境特性変換テーブルを示す。本実施例では、環境特性変換テーブルは、環境を絶対水分量で複数に区分し、各区分の環境における二次転写ローラ8の電気抵抗の相対比を示す環境補正係数を対応付けたものとなっている。
【0052】
【表1】
【0053】
制御部50は、ATVCを実行するごとに求められる二次転写ローラ8の電気抵抗Rを、下記式(2)により、上記所定の環境における二次転写ローラ8の電気抵抗(寿命予測用抵抗)R_Lifeに変換する。なお、下記式(2)中の「Vb÷It」は、ATVCを実行するごとに求められる二次転写ローラ8の電気抵抗Rに相当する。
R_Life
=α×(Vb÷It) ・・・(2)
【0054】
ここで、制御部50は、上記式(2)中の変換係数αを、下記式(3)により求める。下記式(3)中のKrは、環境変換特性テーブル(表1)から選択した当該ATVCの実行時の環境に対応する環境補正係数K(すなわち、現在の環境に対応するK)である。また、下記式(3)中のKmは、上記所定の環境に対応する環境補正係数K(すなわち、環境履歴における最小絶対水分量環境に対応するK)である。
α=Kr/Km ・・・(3)
【0055】
一方、制御部50は、ATVCを実行するごとに、該ATVCにおいて決定される目標電流値It、記録材分担電圧Vpを、不揮発メモリ55に逐次記憶させる。つまり、目標電流値It、記録材分担電圧Vpは、ユーザの使用環境(装置の設置環境)や使用する記録材Pによって変わる。そのため、本実施例では、部材分担電圧Vbと同様に、It、Vpの履歴の中から、二次転写ローラ8の寿命予測あるいは寿命判定の精度を向上させるために第2の寿命値2Tr_Life2を求めるために用いるIt、Vpを選択する。本実施例では、ユーザが使用履歴のある環境範囲の中の、絶対水分量が最小値の場合に対応する、Itの最大値であるIt_Lifeと、Vpの最大値であるVp_Lifeと、を選択する。
【0056】
そして、下記式(4)のように、二次転写ローラ8の第2の寿命値2Tr_Life2を定義することができる。つまり、下記式(4)中の「R_Life×It_Life」は、部材分担電圧Vbの最大値であるVb_Lifeに相当する。そして、第2の寿命値2Tr_Life2は、この「Vb_Life」と上記「Vp_Life」とを足し合わせた電圧値の、二次転写電源20の高圧出力上限値に対する割合(百分率)として定義することができる。
2Tr_Life2
=100%×(R_Life×It_Life+Vp_Life)÷(高圧出力上限値)
・・・(4)
図4は、以上で説明した本実施例における第2の寿命値2Tr_Life2を求める制御の手順の一例を示すフローチャート図である。図4のS101~S106の処理は、制御部50がプリントジョブの情報が入力されてから画像形成を開始するまでに行う、第2の寿命値2Tr_Life2の計算に関連する処理の概略を示す。また、図4のS201~S205の処理、S301~S306の処理は、それぞれ制御部50が上記S101~S106の処理と並行して行う、情報記憶処理、第2の寿命値計算処理の概略を示す。
【0057】
制御部50は、画像信号と記録材Pに関する情報やプリント枚数の情報などのプリント命令信号とを含むプリントジョブの情報が入力されると(S101)、環境センサ40による機内の温度及び湿度の検知結果を取得する(S102)。次に、制御部50は、二次転写部N2におけるATVCを実行するか否かを判断する(S103)。制御部50は、S103で実行すると判断した場合は、二次転写部N2においてATVCを実行する(S104)。そして、制御部50は、ATVCにおいて、目標電流値It、部材分担電圧Vb、記録材分担電圧Vp、二次転写電圧の目標電圧値Vtrを取得する。制御部50は、このATVCの結果を用いて、後述するように第2の寿命値2Tr_Life2の計算を行う。一方、制御部50は、S103で実行しないと判断した場合は、第2の寿命値2Tr_Life2の計算は行わない。なお、本実施例では、プリントジョブが実行されるごとに、各プリントジョブの前回転動作時に2次転写部N2におけるATVCが実行される。
【0058】
制御部50は、上記S101~S106の処理と並行して、次のような情報記憶処理を実行する。制御部50は、S101でプリントジョブの情報を取得すると、記録材Pに関する情報やプリント枚数の情報などをRAM53に記憶させる(S201)。この情報は、ATVCや画像形成の制御に用いられる。また、制御部50は、S102で環境センサ40による温度及び湿度の検知結果を取得すると、この温度及び湿度の検知結果を不揮発メモリ55に記憶させる(S202)。また、制御部50は、この温度及び湿度に基づいて求めた絶対水分量を、不揮発メモリ55に記憶させる(S203)。これらの情報は、ATVCや第2の寿命値2Tr_Life2の計算に用いられる。また、制御部50は、S104でATVCを実行すると、二次転写ローラ8の使用量に関する情報をプリント枚数に換算してカウンター60に積算して記憶させる(S204)。また、制御部50は、S105で取得した目標電流値It、部材分担電圧Vb、記録材分担電圧Vpを不揮発メモリ55に記憶させる(S205)。この情報は、第2の寿命値2Tr_Life2の計算に用いられる。
【0059】
制御部50は、上記S101~S106の処理と並行して、次のような第2の寿命値計算処理を実行する。制御部50は、S203で求めた絶対水分量が、過去の絶対水分量と比較して最小値であるか否かを判断する(S301)。制御部50は、S301で今回求めた絶対水分量が最小値ではないと判断した場合は、次のようにする。つまり、環境特性変換テーブル(表1)から、過去の絶対水分量のうちの最小値に対応する環境補正係数Km(すなわち、環境履歴における最小絶対水分量環境に対応するK)を選択する(S302)。なお、制御部50は、選択した最小絶対水分量に対応する環境補正係数Kmを不揮発メモリ55に記憶させ、これを読み出して用いることができるようになっていてもよい。また、制御部50は、この環境補正係数Kmと、今回のATVCの結果とを用いて、前述のようにして二次転写ローラ8の電気抵抗を寿命予測用抵抗R_Lifeに変換する(S303)。一方、制御部50は、S301で今回求めた絶対水分量が最小値であると判断した場合は、次のようにする。つまり、環境特性変換テーブル(表1)から、今回の絶対水分量(最小値)に対応する環境補正係数Km(すなわち、環境履歴における最小絶対水分量環境に対応するK)を選択する(S304)。なお、最小絶対水分量に対応する環境補正係数Kmを不揮発メモリ55に記憶させるようになっている場合、制御部50は新たに選択したKmを不揮発メモリ55に更新して記憶させる。また、制御部50は、新たに選択した環境補正係数Kmと、今回のATVCの結果とを用いて、前述のようにして二次転写ローラ8の電気抵抗を寿命予測用抵抗R_Lifeに変換する(S304)。そして、制御部50は、前述のようにして第2の寿命値2Tr_Life2を計算し、不揮発メモリ55に更新して記憶させる(S306)。つまり、制御部50は、S303又はS305で求めた寿命予測用抵抗R_Life、不揮発メモリ55に記憶されている目標電流値Itの履歴及び記録材分担電圧Vpの履歴の情報などを用いて、第2の寿命値2Tr_Life2を計算する。
【0060】
<二次転写ローラの寿命情報の報知>
次に、二次転写ローラ8の寿命予測あるいは寿命判定について説明する。
【0061】
本実施例では、二次転写ローラ8の第1の寿命値2Tr_Life1及び第2の寿命値2Tr_Life2が逐次求められて不揮発メモリ55に記憶されている。本実施例では、制御部50は、これら第1の寿命値2Tr_Life1及び第2の寿命値2Tr_Lifeを用いて、二次転写ローラ8の寿命値2Tr_Lifeを予測あるいは判定して、ユーザやサービス担当者などの操作者に報知できるようになっている。
【0062】
本実施例では、制御部50は、第1の寿命値2Tr_Life1と第2の寿命値2Tr_Life2とを比較し、2Tr_Life2<2Tr_Life1(ただし、2Tr_Life2<100%)の場合は、2Tr_Life=2Tr_Life2とする。つまり、第2の寿命値2Tr_Life2を二次転写ローラ8の寿命値2Tr_Lifeとして決定する。第1の寿命値2Tr_Life1により電力積算値上は二次転写ローラ8が寿命に到達したと判定される場合でも、第2の寿命値2Tr_Life2により二次転写電源20の実使用範囲が高圧出力上限値に達していないと判定される場合がある。例えば、装置の設置環境が低温低湿環境ではなかったり、記録材分担電圧Vpが低い記録材Pを使うユーザであったりする場合などである。このような場合には、第2の寿命値2Tr_Life2を二次転写ローラ8の寿命値2Tr_Lifeであるものとすることで、二次転写ローラ8を更に継続して使用することが可能となる。
【0063】
一方、制御部50は、第1の寿命値2Tr_Life1と第2の寿命値2Tr_Life2とを比較し、2Tr_Life2>2Tr_Life1(ただし、2Tr_Life1<100%)の場合は、2Tr_Life=2Tr_Life1とする。つまり、第1の寿命値2Tr_Life1を二次転写ローラ8の寿命値2Tr_Lifeとして決定する。装置本体110が想定された使用環境以外の極低温環境に設置された場合などに、二次転写ローラ8の温度特性のために二次転写ローラ8の電気抵抗が非常に高く測定されることがある。例えば、装置本体110がほぼ未使用の状態であったり、二次転写ローラ8の交換直後であったりしても、二次転写ローラ8が温度変化によって高抵抗化し、第2の寿命値2Tr_Life2が100%を超えるような条件になってしまうことがある。このような状態では、二次転写ローラ8の交換を行ったとしても、想定外に二次転写ローラ8の電気抵抗が上昇しているため、二次転写ローラ8の電気抵抗の判断が困難である。そのため、このような場合には、第1の寿命値2Tr_Life1を二次転写ローラ8の寿命値2Tr_Lifeであるものとして用いる。
【0064】
図5は、以上で説明した本実施例における二次転写ローラ8の寿命予測あるいは寿命判定の手順の一例を示すフローチャート図である。制御部50は、不揮発メモリ55に記憶されている第1の寿命値2Tr_Life1及び第2の寿命値2Tr_Life2を読み出す(S401)。次に、制御部50は、第2の寿命値2Tr_Life2が第1の寿命値2Tr_Life1よりも小さいか否かを判断する(S402)。そして、制御部50は、S402で第2の寿命値2Tr_Life2の方が小さいと判断した場合は、第2の寿命値2Tr_Life2を二次転写ローラ8の寿命値2Tr_Lifeとして決定し、不揮発メモリ55に記憶させる(S403)。一方、制御部50は、S402で第2の寿命値2Tr_Life2の方が小さくないと判断した場合は、第1の寿命値2Tr_Life1を二次転写ローラ8の寿命値2Tr_Lifeとして決定し、不揮発メモリ55に記憶させる(S404)。その後、制御部50は、操作部30の表示部31などに二次転写ローラ8の寿命値2Tr_Lifeを表示するなどして操作者に報知することができる(S405)。
【0065】
ここで、上述のような二次転写ローラ8の寿命予測あるいは寿命判定の制御は、上述の第1、第2の寿命値が更新されるごとに行われてもよいし、操作部30などからの操作者の指示に応じて二次転写ローラ8の寿命値を表示する際に行われてもよい。また、二次転写ローラ8の寿命に関する情報(二次転写ローラ8の交換時期に関する情報)は、操作者の指示に応じて表示することに限定されるものではない。二次転写ローラ8の寿命に関する情報(警告など)を、制御部50が自動的に操作部30の表示部31などにおいて行ってもよい。例えば、制御部50は、上述のようにして決定した二次転写ローラ8の寿命値が予め設定された閾値を超えた場合に、二次転写ローラ8の交換を促す情報を操作部30の表示部31などにおいて行うことができる。上記閾値は、100%に限定されるものではなく、例えば80%、90%などのより早い段階(単一でも複数でもよい)で、二次転写ローラ8の寿命が近づいたことを報知してもよい。また、情報の報知は、操作部30の表示部31における表示に限定されるものではない。例えば、画像形成装置100に接続された外部機器200において行ってもよく、また警告音や警告メッセージなどの音声による報知、あるいは光の点灯や点滅などによる報知であってもよい。また、二次転写ローラ8の寿命に関する情報は、寿命到達までの残寿命で表してもよい(例えば、100%から順次減っていき、寿命到達時に0%となる)。
【0066】
また、上述のように第1の寿命値2Tr_Life1と第2の寿命値2Tr_Life2とが状況に応じて切り替わるため、計算上は二次転写ローラ8の寿命値が増減することが考えらえる。これに対し、例えば、寿命値の更新が行われるのは、前回値と比較して寿命値が増えた場合のみとし、寿命値が前回値よりも減った場合には前回値からの更新を行わないようにしてもよい。このようにすることで、寿命値は、単調増加の推移を辿ることになり、100%に到達するタイミングの予測がしやすくなる。
【0067】
また、例えば操作部30において、第1の寿命値2Tr_Life1、第2の寿命値2Tr_Life2のそれぞれを表示できるようにしてもよい。
【0068】
なお、前述のような極端な環境で画像形成装置100が使用されることを想定する必要性が十分に低い場合などには、上述の第1、第2の寿命値のうち第2の寿命値のみを求めて、これを二次転写ローラの寿命値とするように構成されていてもよい。
【0069】
また、本実施例では、環境情報として、温度及び湿度の検知結果に基づいて求められる絶対水分量を用いたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、二次転写ローラ8の電気抵抗が温度又は湿度の少なくとも一方と十分の相関を有する場合、環境情報として温度又は湿度の少なくとも一方を用いた制御としてもよい。
【0070】
また、本実施例では、二次転写ローラ8の電気抵抗の値を環境補正係数Kを用いて補正して、第2の寿命値2Tr_Life2を求めたが、電気抵抗自体を補正する代わりに電気抵抗と相関する値を環境補正係数Kを用いて補正するような制御としてもよい。例えば、二次転写ローラ8に所定の電流を流すのに必要な電圧の値、あるいは二次転写ローラ8に所定の電圧を印加している際に流れる電流の値は、それぞれ二次転写ローラ8の電気抵抗と相関する。
【0071】
また、画像形成装置100が複数の異なるプロセススピードで動作可能な場合、プロセススピードごとに二次転写ローラ8の寿命値を求めるようにしてもよい。そして、複数のプロセススピードごとに求めた二次転写ローラ8の寿命値のうちいずれか、例えば、最大の寿命値(残寿命は最小)あるいは最小の寿命値(残寿命は最大)を選択して表示するようにすることができる。
【0072】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、トナー像を担持する像担持体7と、電圧が印加されて像担持体7から被転写体にトナー像を転写させる転写部材8と、転写部材8に電圧を印加する電源20と、電源20により転写部材8に電圧を印加した際に転写部材8に供給される電流又は電圧を検知する検知部21と、温度、湿度及び絶対水分量のうち少なくとも1つの情報である環境情報を取得する環境検知部40と、異なる時期に取得された複数の環境情報を含む環境履歴情報を記憶する記憶部55と、転写部材8の寿命に関する情報を出力する制御部50と、を有する。そして、本実施例では、制御部50は、環境履歴情報に含まれる複数の環境情報の中から選択した所定の環境情報と、検知部21の検知結果と、に基づいて、該検知結果が示す転写部材8の電気抵抗に関する値を、上記所定の環境情報が示す所定の環境における転写部材8の電気抵抗に関する値に補正して、該補正後の転写部材8の電気抵抗に関する値に基づいて、転写部材8の寿命に関する情報を出力可能である。本実施例では、上記所定の環境情報は、環境履歴情報に含まれる複数の前記環境情報のうち温度、湿度又は絶対水分量が最小である環境情報である。
【0073】
本実施例では、転写部材8は、像担持体7から被転写体としての記録材Pにトナー像を転写させ、制御部50は、環境情報及び記録材Pに関する記録材情報のうち少なくとも1つに基づいて目標電流値Itを決定し、目標電流値Itの電流を転写部材8に流すのに必要な部材分担電圧Vbを決定し、環境情報及び記録材情報のうち少なくとも1つに基づいて記録材分担電圧Vpを決定することに基づいて、転写の際に電源20が転写部材8に印加する電圧を決定し、記憶部55は更に、異なる時期に決定された複数の目標電流値Itを含む目標電流値履歴情報と、異なる時期に決定された複数の記録材分担電圧Vpを含む記録材分担電圧履歴情報と、を記憶し、制御部50は、上記補正後の転写部材8の電気抵抗に関する値と、目標電流値履歴情報に含まれる複数の目標電流値Itのうち絶対値が最大である目標電流値Itと、記録材分担電圧履歴情報に含まれる複数の記録材分担電圧Vpのうち絶対値が最大である記録材分担電圧Vpと、に基づいて、転写部材8の寿命に関する情報を出力可能である。また、本実施例では、制御部50は、上記補正後の転写部材8の電気抵抗に関する値と、上記絶対値が最大である目標電流値Itと、上記絶対値が最大である記録材分担電圧Vpと、に基づいて求めた電圧値Vtrの、電源20の出力の上限値に対する割合に基づいて、転写部材8の寿命に関する情報を出力する。
【0074】
また、本実施例では、画像形成装置100は、転写部材8の使用量に関する指標値の累積値を記憶する使用量記憶部55を有し、制御部50は、使用量記憶部55に記録された上記指標値の累積値に基づいて求めた転写部材8の寿命を示す第1の寿命値と、上記補正後の転写部材8の電気抵抗に関する値に基づいて求めた転写部材8の寿命を示す第2の寿命値と、を比較して、第2の寿命値が示す転写部材8の残寿命の方が第1の寿命値が示す転写部材8の残寿命よりも大きい場合に、第2の寿命値に基づいて転写部材8の寿命に関する情報を出力する。また、本実施例では、制御部50は、第1の寿命値と第2の寿命値とを比較して、第1の寿命値が示す転写部材8の残寿命の方が第2の寿命値が示す転写部材8の残寿命よりも大きい場合には、第1の寿命値に基づいて転写部材8の寿命に関する情報を出力する。また、本実施例では、第1の寿命値又は第2の寿命値を転写部材8の寿命に関する情報として更新して記憶する寿命値記憶部55を有し、制御部50は、比較の結果に基づく転写部材8の寿命に関する情報が示す転写部材8の残寿命が寿命値記憶部55に記憶されている転写部材8の寿命に関する情報が示す転写部材8の残寿命よりも増加する場合には、寿命値記憶部55に記憶されている転写部材8の寿命に関する情報の更新を行わない。
【0075】
以上説明したように、本実施例によれば、消耗パーツである二次転写ローラ8について、ユーザの使用条件(環境、記録材Pの種類)に合わせた寿命予測あるいは寿命判定を行うことが可能となる。その結果、二次転写ローラ8の寿命予測あるいは寿命判定の精度の向上を図り、ユーザにとってはダウンタイムの低減など、またサービス担当者にとっては計画的出動などにつなげることが可能となる。特に、本実施例では、累積電力や累積通電時間(プリント枚数)から二次転写ローラ8の寿命を計算する方式と、ユーザの使用環境を反映して二次転写ローラ8の寿命を計算する方式と、で寿命の計算を行う。また、本実施例では、それぞれの方式で計算した寿命を比較した上で、二次転写ローラ8の寿命を表示させる。これにより、二次転写ローラ8が真の寿命を迎える前に交換されるという、もったいない交換がなされることを抑制することができる。また、高精度な二次転写ローラ8の寿命予測あるいは寿命判定を行うことが可能となり、ユーザにとってはダウンタイムの低減などが可能となり、またサービス担当者にとっては計画的出動を行うことが可能になる。
【0076】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0077】
本実施例では、材料などが異なることで環境特性が異なる二次転写ローラ8が画像形成装置100において用いられる場合について説明する。
【0078】
前述の環境特性変換テーブルは、二次転写ローラ8の材料の違いあるいは製造ロットの違いによって異ならせることが望ましい場合がある。その一つ例として、表2に、二次転写ローラ8の弾性層の材料が材料Aと材料Bとで異なる場合の環境特性変換テーブルを示す。
【0079】
【表2】
【0080】
材料Aと材料Bとは異なる材料であり、いずれの材料を用いた二次転写ローラ8も同等の性能を有し、いずれも良好な画像を得ることができる材料であるが、環境特性がそれぞれ異なる。そのため、実施例1で説明した第2の寿命値2Tr_Life2の計算を行う際には、それぞれの材料に対応した環境特性変換係数を用いることが望ましい。
【0081】
例えば、制御部50のROM52に、表2に示すような材料Aに対応する環境補正係数Kのテーブル、及び材料Bに対応する環境補正係数K’のテーブルを、予め記憶させておく。そして、二次転写ローラ8の交換時に、例えば操作部30に表示される図6(a)に示すような入力画面において、二次転写ローラ8の材料などに応じた環境特性変換テーブルの切り替えを制御部50に指示することができる。これによって、二次転写ローラ8の材料などに応じた寿命予測あるいは寿命判定を行うことができる。その結果、二次転写ローラ8の材料などの違いによって異なる環境特性の差に起因する、寿命予測あるいは寿命判定のずれを改善することが可能になる。
【0082】
また、例えば画像形成装置100がネットワークに接続されている設置環境下などでは、図6(b)に示すように、操作部30の入力画面などから、部品コード、製造ロット番号、あるいは材料ロット番号などの識別情報を入力できるようになっていてもよい。この場合、予め部品コード、製造ロット番号、あるいは材料ロット番号ごとの環境特性変換係数を、上記ネットワークに接続された管理サーバーの記憶部に記憶させておく。これにより、画像形成装置100は、上記操作部30の入力画面から入力された情報と、管理サーバー上の情報とを照合し、入力された情報に対応する環境特性変換係数に切り替えて二次転写ローラ8の寿命値の計算に用いることが可能である。
【0083】
なお、上述のように二次転写ローラ8の材料や製造ロットなどに応じて環境補正係数Kを切り替えることに加えて又は代えて、二次転写ローラ8の寿命判定基準(前述の閾値)をそれぞれの二次転写ローラ8の特性に応じて切り替えるようにしてもよい。
【0084】
このように、本実施例では、制御部50は、転写部材8の電気抵抗の環境特性に基づいて予め設定された補正係数を用いて、転写部材8の電気抵抗に関する値の補正を行う。本実施例では、画像形成装置100は、制御部50に上記補正係数を入力可能な入力部32を有し、入力部32は、転写部材8が第1の転写部材である場合には上記補正係数として第1の補正係数を制御部50に入力し、転写部材8が第2の転写部材である場合には上記補正係数として第2の補正係数を制御部55に入力する。上記第1、第2の転写部材は、それぞれに与えられた識別情報が互いに異なるものであってよい。また、上記識別情報は、材料の種類、材料ロット、製造ロット、及び部品コードのうちの少なくとも1つの違いを示すものであってよい。また、入力部32は、上記識別情報の入力を受け付け、入力された上記識別情報に対応する上記補正係数を制御部50に入力するものであってよい。
【0085】
以上説明したように、材料固有特性を反映させることで、二次転写ローラ8の寿命判定の更なる精度向上を図ることが可能となる。また、上述のうに操作部30の入力画面などにおいて部品コードなどの材料情報を与えることで、二次転写ローラ8の材料特性を寿命計算に反映させて寿命判定精度を向上させることができるだけではなく、次のような利点がある。つまり、上市後に設計変更などにより二次転写ローラ8の特性が変化したり、コストダウンなどのために材料の異なる二次転写ローラ8への切り替えが行われたりした場合にも、高精度な寿命予測あるいは寿命判定を行うことが可能となる。
【0086】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0087】
上述の実施例では、本発明を二次転写ローラの寿命予測に適用したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、一次転写ローラ(上述の実施例における二次転写ローラと同様の弾性層を有するものなど)の寿命予測に適用することもでき、上記同様の効果を得ることができる。また、感光体などの像担持体に形成されたトナー像を、無端状のベルトで構成された記録材担持体に担持されて搬送される記録材に直接転写させる直接転写方式の画像形成装置が斯界にて周知である。本発明は、直接転写方式における転写部材としての転写ローラの寿命予測にも適用することができ、上記同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、本発明は、タンデム型の画像形成装置に限らず、他の方式の画像形成装置にも適用することができる。例えば、本発明は、フルカラー画像形成装置に限らず、モノクロあるいはモノカラー画像形成装置にも適用することができる。この場合、典型的には、像担持体としての感光体から記録材にトナー像を転写させる転写部材としての転写ローラに関して、本発明を適用することになる。また、画像形成装置は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途で用いられるものであってよい。
【0089】
また、上述の実施例では、転写部材は、導電性の弾性層を備えたローラ状の部材であったが、転写部材はローラ状の部材に限定されるものではない。転写部材は、導電性の樹脂などで形成されたシート状の部材、導電性のブラシ繊維を有するブラシ状の部材などであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 感光ドラム
7 中間転写ベルト
8 二次転写ローラ
20 二次転写電源
30 操作部
50 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6