IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成装置 図7
  • 特許-画像形成装置 図8
  • 特許-画像形成装置 図9
  • 特許-画像形成装置 図10
  • 特許-画像形成装置 図11
  • 特許-画像形成装置 図12
  • 特許-画像形成装置 図13
  • 特許-画像形成装置 図14
  • 特許-画像形成装置 図15
  • 特許-画像形成装置 図16
  • 特許-画像形成装置 図17
  • 特許-画像形成装置 図18
  • 特許-画像形成装置 図19
  • 特許-画像形成装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20240527BHJP
   G03G 15/06 20060101ALI20240527BHJP
   G03G 15/09 20060101ALI20240527BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G03G15/08 390Z
G03G15/06 101
G03G15/09 Z
G03G21/00 510
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020162159
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054898
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】塚田 佳朗
(72)【発明者】
【氏名】重廣 浩司
(72)【発明者】
【氏名】津田 俊介
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-118359(JP,A)
【文献】特開2015-069190(JP,A)
【文献】特開2015-079097(JP,A)
【文献】特開2009-258276(JP,A)
【文献】米国特許第09454105(US,B1)
【文献】特開2016-099471(JP,A)
【文献】特開2013-020092(JP,A)
【文献】中国実用新案第203490458(CN,U)
【文献】特開2019-101304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/06
G03G 13/08
G03G 13/09
G03G 13/095
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/06
G03G 15/08
G03G 15/09
G03G 15/095
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に静電潜像を形成するために前記像担持体を露光する露光装置と、
トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像するために前記現像剤を担持し搬送する回転可能な現像剤担持体と、前記現像剤担持体の内部に非回転に固定して配置され、前記現像剤担持体に現像剤を担持させるための磁界を発生するマグネットと、前記現像剤担持体が前記像担持体に最も近接する前記現像剤担持体上の位置よりも下方に配置され、且つ、前記現像剤担持体に非接触に対向して配置された、前記現像剤担持体に担持される現像剤の量を規制する規制ブレードと、を有する現像装置と、
前記現像剤担持体が前記像担持体に最も近接する前記現像剤担持体上の前記位置よりも下方に配置され、且つ、前記像担持体に接触して配置された、前記規制ブレードと前記現像剤担持体と前記像担持体とによって仕切られた空間の少なくとも一部を覆うためのシート部材と、
前記現像剤担持体を回転駆動する駆動部と、
画像形成時において前記現像剤担持体を第1方向に回転駆動するよう前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、非画像形成時において、前記現像剤担持体を前記第1方向とは逆方向である第2方向に回転駆動し、その後、前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するよう前記駆動部を制御するモードを実行し、
前記シート部材のうちの前記規制ブレードの先端を通る水平線よりも上方の部分は、前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第2方向に回転駆動した時に、前記現像剤担持体に担持されている現像剤の移動軌跡内に配置されており、且つ、画像形成時において前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動した時に、前記現像剤担持体に担持されている現像剤の移動軌跡内には配置されていない
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第2方向に回転駆動するとき、前記シート部材は、前記像担持体に接触している状態であり、
且つ、
前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するとき、前記シート部材は、前記像担持体に接触している状態である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するときの、前記現像剤担持体と前記像担持体との間の電位差は、画像形成時において前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するときの、前記現像剤担持体と前記像担持体との間の電位差とは異なっている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するときの、前記像担持体の表面電位は、0 [V]である
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するときの、前記現像剤担持体の駆動速度は、画像形成時において前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するときの、前記現像剤担持体の駆動速度よりも遅い
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記モードにおいて、前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第2方向に回転駆動し、その後、前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動する動作を1セットとした場合に、前記動作を複数のセット繰り返すよう前記駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、画像形成された記録材の枚数が所定枚数に達した場合に前記モードを実行する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記シート部材は、第1シート部材であり、
前記現像装置は、前記現像剤担持体に非接触に対向して配置された第2シート部材を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に静電潜像を形成するために前記像担持体を露光する露光装置と、
トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像するために前記現像剤を担持し搬送する回転可能な現像剤担持体と、前記現像剤担持体の内部に非回転に固定して配置され、前記現像剤担持体に現像剤を担持させるための磁界を発生するマグネットと、前記現像剤担持体が前記像担持体に最も近接する前記現像剤担持体上の位置よりも下方に配置され、且つ、前記現像剤担持体に非接触に対向して配置された、前記現像剤担持体に担持される現像剤の量を規制する規制ブレードと、を有する現像装置と、
前記現像剤担持体が前記像担持体に最も近接する前記現像剤担持体上の前記位置よりも下方に配置され、且つ、前記像担持体に接触して配置された、前記規制ブレードと前記現像剤担持体と前記像担持体とによって仕切られた空間の少なくとも一部を覆うためのシート部材と、
前記現像剤担持体を回転駆動する駆動部と、
画像形成時において前記現像剤担持体を第1方向に回転駆動するよう前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、非画像形成時において、前記現像剤担持体を前記第1方向とは逆方向である第2方向に回転駆動し、その後、前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するよう前記駆動部を制御するモードを実行し、
前記シート部材のうちの前記規制ブレードの先端を通る水平線よりも上方の部分は、前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第2方向に回転駆動した時に、前記マグネットによる前記現像剤担持体上の磁気穂が接触する位置であって、且つ、画像形成時において前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動した時に、前記マグネットによる前記現像剤担持体上の磁気穂が接触しない位置に在る
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第2方向に回転駆動するとき、前記シート部材は、前記像担持体に接触している状態であり、
且つ、
前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するとき、前記シート部材は、前記像担持体に接触している状態である
ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するときの、前記現像剤担持体と前記像担持体との間の電位差は、画像形成時において前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するときの、前記現像剤担持体と前記像担持体との間の電位差とは異なっている
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するときの、前記像担持体の表面電位は、0 [V]である
ことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するときの、前記現像剤担持体の駆動速度は、画像形成時において前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するときの、前記現像剤担持体の駆動速度よりも遅い
ことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記モードにおいて、前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第2方向に回転駆動し、その後、前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動する動作を1セットとした場合に、前記動作を複数のセット繰り返すよう前記駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御部は、画像形成された記録材の枚数が所定枚数に達した場合に前記モードを実行する
ことを特徴とする請求項9乃至14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記シート部材は、第1シート部材であり、
前記現像装置は、前記現像剤担持体に非接触に対向して配置された第2シート部材を更に有する
ことを特徴とする請求項9乃至15のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現像装置は、像担持体に形成された静電潜像を現像する現像領域にトナーとキャリアを含む二成分現像剤(以降、単に現像剤と呼ぶ)を担持搬送する回転可能な現像剤担持体としての現像スリーブを備える。現像スリーブの内部には、複数の磁極を有し且つ現像スリーブの表面上に現像剤を担持させるための磁界を発生するマグネットが、非回転に固定して配置されている。
【0003】
また、現像スリーブに担持される現像剤の量を規制する現像剤規制部材としての規制ブレードが、現像スリーブとの間に所定のギャップ(以降、SBギャップと呼ぶ)を介して、現像スリーブに対向して配置されている。SBギャップとは、現像スリーブと規制ブレードとの間の最短距離のことである。このSBギャップの大きさを調整することにより、現像領域に搬送される現像剤の量が調整される。
【0004】
現像スリーブにより現像領域に担持搬送された現像剤は、マグネットの磁極により現像領域で磁気的に立ち上がることにより、磁気穂が形成される。そして、現像領域で磁気穂から供給された現像剤中のトナーが静電潜像に供給されることにより、静電潜像がトナー像として現像される。
【0005】
現像スリーブ上で形成される現像剤の磁気穂は、SBギャップを通過した後、SBギャップよりも現像スリーブの回転方向下流側で倒れ始める。このとき、現像スリーブ上の現像剤中のキャリアの表面に静電的に付着しているトナーが遠心力によりキャリアから遊離し、遊離したトナーが飛散した場合、現像領域から重力方向下方の空間を浮遊しているトナーが相対的に多くなってしまう。
【0006】
特許文献1に記載の現像装置は、現像領域から重力方向下方に飛散したトナーを捕捉するためのシート部材(以降、トナー捕捉シートと呼ぶ)を備える。このトナー捕捉シートは、現像スリーブの近傍に設けられ、且つ、像担持体に当接して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-69190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現像領域から重力方向下方に飛散したトナーは、経時的にトナー捕捉シートに堆積する。トナー捕捉シートに堆積したトナーは、やがて、緩凝集状態のトナー層となる。一方、画像形成装置の稼働による不規則な振動などの影響により、トナー捕捉シートに堆積したトナーのトナー層が崩れることがある。トナー捕捉シートに堆積したトナーのトナー層が崩れた場合、トナーの凝集塊が現像スリーブ上又は現像スリーブ上の磁気穂上に落下し、磁気穂と共にそのまま現像領域に搬送されて静電潜像に付着すると、画像不良が生じる虞がある。
【0009】
そこで、トナー捕捉シートに堆積したトナーが画像形成中に現像に供されてしまうことを抑制するために、トナー捕捉シートに堆積したトナーを非画像形成中に回収することが望まれる。
【0010】
特許文献1に記載の構成では、現像領域から重力方向下方であって規制ブレードの現像領域側に電磁石を備え、非画像形成中に電磁石に電力を供給し、この状態で、現像スリーブを逆回転動作し、その後、現像スリーブを正回転動作している。即ち、特許文献1に記載の構成では、電力が供給された電磁石から発生した磁界により磁気的に立ち上がった現像剤(磁気穂)を、トナー捕捉シートに堆積したトナーに接触させて、トナー捕捉シートに堆積したトナーを回収するものである。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、現像領域から重力方向下方の空間において、トナー捕捉シートとは別に、電磁石を配置するためのスペースを確保する必要があり、装置の大型化を招いてしまう。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、現像領域から重力方向下方の空間に電磁石等の磁界発生部材を設ける必要のない簡易な構成により、トナー捕捉シートに堆積したトナーを、非画像形成中に回収することが可能な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に静電潜像を形成するために前記像担持体を露光する露光装置と、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像するために前記現像剤を担持し搬送する回転可能な現像剤担持体と、前記現像剤担持体の内部に非回転に固定して配置され、前記現像剤担持体に現像剤を担持させるための磁界を発生するマグネットと、前記現像剤担持体が前記像担持体に最も近接する前記現像剤担持体上の位置よりも下方に配置され、且つ、前記現像剤担持体に非接触に対向して配置された、前記現像剤担持体に担持される現像剤の量を規制する規制ブレードと、を有する現像装置と、前記現像剤担持体が前記像担持体に最も近接する前記現像剤担持体上の前記位置よりも下方に配置され、且つ、前記像担持体に接触して配置された、前記規制ブレードと前記現像剤担持体と前記像担持体とによって仕切られた空間の少なくとも一部を覆うためのシート部材と、前記現像剤担持体を回転駆動する駆動部と、画像形成時において前記現像剤担持体を第1方向に回転駆動するよう前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、非画像形成時において、前記現像剤担持体を前記第1方向とは逆方向である第2方向に回転駆動し、その後、前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するよう前記駆動部を制御するモードを実行し、前記シート部材のうちの前記規制ブレードの先端を通る水平線よりも上方の部分は、前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第2方向に回転駆動した時に、前記現像剤担持体に担持されている現像剤の移動軌跡内に配置されており、且つ、画像形成時において前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動した時に、前記現像剤担持体に担持されている現像剤の移動軌跡内には配置されていないことを特徴とする。
また、上記目的を達成するために本発明の他態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に静電潜像を形成するために前記像担持体を露光する露光装置と、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像するために前記現像剤を担持し搬送する回転可能な現像剤担持体と、前記現像剤担持体の内部に非回転に固定して配置され、前記現像剤担持体に現像剤を担持させるための磁界を発生するマグネットと、前記現像剤担持体が前記像担持体に最も近接する前記現像剤担持体上の位置よりも下方に配置され、且つ、前記現像剤担持体に非接触に対向して配置された、前記現像剤担持体に担持される現像剤の量を規制する規制ブレードと、を有する現像装置と、前記現像剤担持体が前記像担持体に最も近接する前記現像剤担持体上の前記位置よりも下方に配置され、且つ、前記像担持体に接触して配置された、前記規制ブレードと前記現像剤担持体と前記像担持体とによって仕切られた空間の少なくとも一部を覆うためのシート部材と、前記現像剤担持体を回転駆動する駆動部と、画像形成時において前記現像剤担持体を第1方向に回転駆動するよう前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、非画像形成時において、前記現像剤担持体を前記第1方向とは逆方向である第2方向に回転駆動し、その後、前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動するよう前記駆動部を制御するモードを実行し、前記シート部材のうちの前記規制ブレードの先端を通る水平線よりも上方の部分は、前記モードにおいて前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第2方向に回転駆動した時に、前記マグネットによる前記現像剤担持体上の磁気穂が接触する位置であって、且つ、画像形成時において前記駆動部が前記現像剤担持体を前記第1方向に回転駆動した時に、前記マグネットによる前記現像剤担持体上の磁気穂が接触しない位置に在ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、現像領域から重力方向下方の空間に電磁石等の磁界発生部材を設ける必要のない簡易な構成により、トナー捕捉シートに堆積したトナーを、非画像形成中に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
図2】第1の実施形態に係る現像装置の構成を示す断面図及び模式図である。
図3】従来の現像装置におけるトナー捕捉シートの近傍の構成を示す断面図である。
図4】従来の現像装置においてトナー捕捉シート上にトナーが堆積した状態を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る画像形成装置のシステム構成を示す図である。
図6】第1の実施形態におけるトナー捕捉シートの近傍の構成を示す断面図である。
図7】現像スリーブ上の現像剤の様子を示す模式図である。
図8】第1の実施形態に係るトナー回収モードの制御例を示すシーケンス図である。
図9】第1の実施形態に係るトナー回収モードの制御例を示すフローチャートである。
図10】トナー回収モードを実行するトリガーを説明するためのフローチャートである。
図11】第1の実施形態に係るトナー回収モードの効果を示す図である。
図12】第1の実施形態に係るトナー回収モードの効果を示す図である。
図13】第1の実施形態に係るトナー回収モードの効果を示す図である。
図14】第1の実施形態に係るトナー回収モードの効果を示す図である。
図15】第2の実施形態に係るトナー回収モードの制御例を示すシーケンス図である。
図16】第2の実施形態に係るトナー回収モードの効果を示す図である。
図17】第3の実施形態に係るトナー回収モードの制御例を示すシーケンス図である。
図18】現像スリーブ上のコート量と線速との関係を示す図である。
図19】第3の実施形態に係るトナー回収モードの効果を示す図である。
図20】変形例におけるトナー捕捉シートの近傍の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。本発明は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0017】
[第1の実施形態]
(画像形成装置の構成)
第1の実施形態に係る画像形成装置の概略について、図1の断面図を用いて説明する。画像形成装置100は、電子写真方式を用いたカラー画像形成装置である。近年は、多種多様な転写紙への適応性やプリント生産性に優れるという利点から、4色の画像形成部を中間転写体24上に並べて配置した、中間転写タンデム方式が主流となっている。第1の実施形態でも中間転写タンデム方式を採用している。各色のトナー像作像工程を行うドラムカートリッジをイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色分並列して設け、中間転写体24上で4色重ねてから転写紙に一括転写し、その後、定着器25によって加圧及び加熱をすることでフルカラー画像を得る。
【0018】
尚、以下の説明で、Y、M、C、Kの符号を省略し数字を単に示したものは、図1におけるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各ドラムカートリッジに共通な部分である。
【0019】
1次帯電器21によって帯電された感光体ドラム28(像担持体)の表面をレーザー22によって露光することによって、感光体ドラム28上に静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム28上に形成された静電潜像を、現像装置1によって現像することによりトナー像を得る。トナー像は、1次転写ローラー23によって中間転写ベルト24に多重転写される。転写された後に感光体ドラム28上に残った残トナーは、クリーナー26により除去される。
【0020】
(現像装置の構成)
第1の実施形態に係る現像装置1の構成について、図2の断面図及び模式図を用いて説明する。現像装置1は、トナーとキャリアを含む現像剤(2成分現像剤)を収容する現像容器2と、現像容器2の開口部に設けられた現像スリーブ3を備える。現像剤について述べると、第1の実施形態では現像方式として2成分現像方式を用い、マイナス帯電極性の非磁性トナーと磁性キャリアを混合して現像剤として用いる。非磁性トナーは、ポリエステル、スチレンアクリル等の樹脂に着色料、ワックス成分などを内包し、粉砕あるいは重合によって粉体としたものである。磁性キャリアは、フェライト粒子や磁性粉を混錬した樹脂粒子からなるコアの表層に樹脂コートを施したものである。初期状態の現像剤中のトナー濃度(現像剤中に含まれるトナーの重量比)は、第1の実施形態では8%としている。
【0021】
磁性キャリアは、体積分布基準の平均粒径(50%粒径:D50)が25~50μmである。第1の実施形態では、磁性キャリアとして、体積平均粒径35μmのものを用いた。このようなキャリア粒子としては、フェライト粒子(最大磁化230emu/cm3程度のCu-Znフェライト)、又はこれに薄く樹脂コーティングしたものを良好に使用できる。
【0022】
磁性キャリアの体積分布基準の平均粒径(50%粒径:D50)は、例えば、マルチイメージアナライザー(ベックマン・コールター社製)を用いて、以下のように測定される。
【0023】
粒度分布測定は、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置「マイクロトラックMT3300EX」(日機装社製)にて測定を行った。測定には、鑑識測定用の試料供給機「ワンショットドライ型サンプルコンディショナーTurbotrac」(日機装社製)を装着して行った。Turbotracの供給条件としては、真空源として集塵機を用い、風量約33リットル/sec、圧力17kPaとした。制御は、ソフトウェア上で自動的に行う。粒径は体積分布基準の累積値である50%粒径(D50)を求める。制御及び解析は付属ソフト(バージョン10.3.3-202D)を用いて行う。測定条件は、以下の通りである。
SetZero時間:10秒
測定時間:10秒
測定回数:1回
粒子屈折率:1.81
粒子形状:非球形
測定上限:1208μm
測定下限:0.243μm
測定環境:常温常湿環境(23℃、50%RH)
【0024】
また、磁性キャリアの真比重は、乾式自動密度計アキュピック1330(島津製作所社製)を用いて測定する。まず、23℃、50%RHの環境に24時間放置したサンプル資料を5g精秤し、測定用セル(10cm3)に入れ、本体試料室に挿入する。測定は、試料サンプル質量を本体に入力し測定をスタートさせることにより自動測定できる。
【0025】
自動測定における測定条件は、20.000psig(2.392×102kPa)で調整されたヘリウムガスを用いる。そして、試料室内を10回パージした後、試料室内の圧力変化が0.005psig(3.447×10-2kPa/min)になる状態を平衡状態として、平衡状態になるまで繰り返しヘリウムガスをパージする。平衡状態の時の本体試料室の圧力を測定する。その平衡状態に達した時の圧力変化により試料サンプル体積が算出できる(ボイルの法則)。試料サンプル体積が算出できることにより、以下の式で試料サンプル真比重が計算できる。
試料サンプルの真比重(g/cm3)=試料サンプル質量(g)/試料サンプル体積(cm3)
【0026】
キャリアとしては、バインダ樹脂と磁性金属酸化物や非磁性金属酸化物などなる樹脂磁性キャリアを用いてもよい。樹脂磁性キャリアは、フェライト粒子に比べて最大磁化が小さく、190emu/cm3程度であることが特徴である。そのため、隣り合う磁気ブラシ(磁気穂)の磁気的な相互作用が小さく、その結果、磁気ブラシの穂が緻密に且つ短くなることで、画像としてはきめムラ等のない解像度が高いものを提供できる。
【0027】
磁化量の算出法は、以下のとおりである。キャリアの磁気特性を理研電子(株)製の振動磁場型磁気特性自動記録装置にて、1KOe(キロエルステッド)の外部磁場中に円筒状にパッキングしたキャリアの磁化の強さを求めた。その後、キャリアの真比重を掛けることで磁化量(emu/cm3)を算出した。
【0028】
現像容器2は、感光体ドラム28に対向した一部分が開口している。現像容器2の開口部には、現像剤担持体としての現像スリーブ3が一部露出するようにして回転可能に配置されている。現像スリーブ3は非磁性材料で構成され、磁界発生手段としての固定のマグネットロール4を内包する。マグネットロール4は、複数の磁極を有し、現像スリーブ3の内部に非回転に固定配置されている。
【0029】
現像スリーブ3に担持される現像剤の量を規制する現像剤規制部材としての規制ブレード5が、現像スリーブ3との間に所定のギャップ(以降、SBギャップと呼ぶ)を介して、現像スリーブ3に対向して配置されている。SBギャップとは、現像スリーブ3と規制ブレード5との間の最短距離のことである。
【0030】
現像スリーブ3は、図2の矢印方向(反時計回り)に回転し、マグネットロール4のN1極(汲み上げ極)の位置で吸着した現像剤を規制ブレード5の方向へ搬送する。マグネットロール4のS1極(規制極)によって磁気的に立ち上がった(穂立ちした)現像剤は、規制ブレード5によってせん断力を受けてその量が規制され、SBギャップを通過すると、現像スリーブ3上に所定の層厚の現像剤層を形成する。現像スリーブ3上の現像剤層は、感光体ドラム28と対向する現像領域に担持搬送され、マグネットロール4のN2極(現像極)によって磁気穂を形成した状態で感光体ドラム28の表面に形成されている静電潜像を現像する。現像に供された後の現像剤は、マグネットロール4のN3極(剥ぎ取り極)とN1極(汲み上げ極)の間にある無磁力帯によって現像スリーブ3より剥離される。
【0031】
現像容器2は、隔壁15により現像室11と攪拌室12に仕切られている。現像室11、攪拌室12は、現像スリーブ3の回転軸方向に沿って延在する。隔壁15の両端は、現像容器2の内部の長手方向両端部の側壁までは達していない。故に、現像室11と攪拌室12との間で現像剤の通過を許す連通部(現像室11から攪拌室12へ現像剤が連通することを許容する第1連通部と、攪拌室12から現像室11へ現像剤が連通することを許容する第2連通部)が形成されている。
【0032】
現像室11、攪拌室12には、現像室11と攪拌室12との間で現像剤を循環させる循環搬送部材としての第1スクリュー13、第2スクリュー14がそれぞれ設けられている。現像スリーブ3、第1スクリュー13、第2スクリュー14は、それぞれギア列によって連結されて駆動が伝達する構成になっている。現像スリーブ3、第1スクリュー13、第2スクリュー14のそれぞれは、現像装置1の駆動ギアからの駆動を受け取ることにより回転する。第1スクリュー13、第2スクリュー14の回転により、現像剤は、現像容器2内を循環しつつ混合及び攪拌される。
【0033】
補給トナーは、第2スクリュー14の搬送方向最上流に設けられた補給口17から補給される。補給口17から補給されたトナーは、第2スクリュー14によって攪拌室12内に搬送された後、現像剤と攪拌混合されることにより、摩擦帯電しながら現像剤中に均一に拡散していく。
【0034】
現像スリーブ3上で形成される現像剤の磁気穂は、SBギャップを通過した後、SBギャップよりも現像スリーブ3の回転方向下流側で倒れ始める。前述した過程の中で、帯電量が低いトナーが規制ブレード5を通過した場合、現像スリーブ3上の現像剤中のキャリアの表面に静電的に付着しているトナーが遠心力によりキャリアから遊離する。また、現像スリーブ3上のキャリアの磁気穂の動きによる力により、現像スリーブ3上の現像剤中のキャリアの表面に静電的に付着しているトナーがキャリアから分離する。これらの遊離したトナーが現像容器2外に飛散した場合、現像領域から重力方向下方の空間を浮遊しているトナーが相対的に多くなってしまう。
【0035】
そこで、遊離したトナーが現像容器2外に飛散することを抑制すべく、遊離したトナーを捕捉するためのトナー捕捉シート19を、規制ブレード5上に設ける。トナー捕捉シート19は、現像スリーブ3の近傍に設けられ、且つ、感光体ドラム28に当接して配置されている。第1の実施形態では、トナー捕捉シート19として、厚さ100μmのウレタンシートを用いている。
【0036】
また、トナー捕捉シート19は、規制ブレード5上に所定の角度となるように、トナー捕捉シート19の貼り付け台を介して両面テープにより貼り付けられている。第1の実施形態では、トナー捕捉シート19の貼り付け台は、樹脂製であり、規制ブレード5に取り付けられている。尚、規制ブレード5が樹脂製である場合、トナー捕捉シート19の貼り付け台と規制ブレード5は樹脂により一体成形されていてもよい。
【0037】
従来の現像装置におけるトナー捕捉シート19の近傍の構成について、図3の断面図を用いて説明する。トナー捕捉シート19は、規制ブレード5、現像スリーブ3、感光体ドラム28の3つの部材に囲まれた空間に対して当該空間を封止するように、且つ、感光体ドラム28に接するように、規制ブレード5に貼り付けられている。
【0038】
従来の現像装置においてトナー捕捉シート19上にトナーが堆積した状態について、図4の断面図を用いて説明する。ここでは、現像スリーブ3上の現像剤(磁気ブラシ)に関しても、併せて図4に示している。図4に示すように、トナー捕捉シート19上には、現像スリーブ3上の現像剤から遊離したトナーが堆積している。トナー捕捉シート19上に堆積したトナーのトナー層がある程度の大きさまで成長すると、画像形成中に現像スリーブ3上の磁気ブラシに接触するようになる。その際、トナー捕捉シート19上に堆積したトナーのトナー層が或る程度の塊で磁気ブラシに掻き取られると、そのトナー塊が感光体ドラム28へと直接運ばれて、結果として画像上にシミのようなトナー画像不良を引き起こしてしまう。
【0039】
また、画像形成装置100の稼働による不規則な振動などの影響により、トナー捕捉シート19に堆積したトナーのトナー層が崩れることがある。トナー捕捉シート19に堆積したトナーのトナー層が崩れた場合、トナーの凝集塊が現像スリーブ3上又は現像スリーブ3上の磁気ブラシ上に落下し、磁気ブラシと共にそのまま現像領域に搬送されて静電潜像に付着すると、画像不良が生じる虞がある。そこで、トナー捕捉シート19に堆積したトナーが画像形成中に現像に供されてしまうことを抑制するために、トナー捕捉シート19に堆積したトナーを非画像形成中に回収することが望まれる。
【0040】
第1の実施形態では、簡易な構成により、トナー捕捉シート19に堆積したトナーを、非画像形成中に回収することができるようにするものである。具体的には、非画像形成中において、現像スリーブ3を逆回転動作し、その後、現像スリーブ3を正回転動作する。これにより、非画像形成中において、トナー捕捉シート19に堆積したトナーを効率的に回収するモード(トナー回収モード)を実行するものである。以下にその詳細を説明する。
【0041】
第1の実施形態を実施するためのブロック図(第1の実施形態に係る画像形成装置100のシステム構成)を、図5を用いて説明する。画像形成装置100は、現像高圧印加手段501、帯電高圧印加手段502、現像駆動手段503、感光体駆動手段504のそれぞれを制御するための制御手段505(CPU)を有する。第1スクリュー13、第2スクリュー14、及び現像スリーブ3は、同一の駆動源(現像駆動手段503)により回転駆動されている。感光体ドラム28は、別の駆動源(感光体駆動手段504)により回転駆動されている。現像スリーブ3には、現像スリーブ3に高圧を印加するための現像高圧印加手段501が繋がれている。帯電ローラー21には、感光体ドラム28を帯電するための帯電高圧印加手段502が接続されている。
【0042】
第1の実施形態におけるトナー捕捉シート19の近傍の構成について、図6の断面図を用いて説明する。図6に示すように、第1の実施形態では、規制ブレード5は、現像スリーブ3が感光体ドラム28に最も近接する位置よりも下方であって現像スリーブ3に対向するように現像スリーブ3に対して非接触に配置されている。
【0043】
また、図6に示すように、第1の実施形態では、トナー捕捉シート19は、規制ブレード5の先端を通る水平線よりも鉛直方向上方に配置されている。また、トナー捕捉シート19の先端は、感光体ドラム28に接している。即ち、トナー捕捉シート19は、現像スリーブ3が感光体ドラム28に最も近接する位置よりも下方であって感光体ドラム28に接触して配置され、現像装置1と感光体ドラム28との間で形成される空間の少なくとも一部を遮蔽する。
【0044】
また、トナー捕捉シート19は、現像スリーブ3を逆回転させた際に、N2極(現像極)によって磁気的に引き付けられた現像スリーブ3上の現像剤が規制ブレード5へ移動する際の移動軌跡(逆回転時現像剤高さ軌跡)よりも、現像スリーブ3側に配置される。言い換えれば、規制ブレード5の先端を通る水平線よりも鉛直方向上方において、トナー捕捉シート19は、トナー回収モードにおいて現像スリーブ3を逆回転したときの現像剤の移動軌跡内に配置されている。
【0045】
即ち、画像形成時に現像スリーブ3を正回転させたときはトナー捕捉シート19に磁気穂が接触しないが、非画像形成時に現像スリーブ3を逆回転させたときはトナー捕捉シート19に磁気穂が接触するように、トナー捕捉シート19が配置されている。
【0046】
第1の実施形態では、トナー捕捉シート19のこの様な構成において、非画像形成時に、現像スリーブ3を逆回転させることにより、トナー捕捉シート19上に蓄積したトナーを効率的に回収する。また、規制ブレード5の先端を通る水平線よりも鉛直方向下方に蓄積したトナーは、回収が不十分であっても、現像スリーブ3よりも重力方向下方に位置するため、トナー捕捉シート19に堆積したトナーのトナー塊が現像スリーブ3上に転がってくる虞がない。このため、第1の実施形態では、規制ブレード5の先端を通る水平線よりも鉛直方向上方に堆積したトナーを回収することに着目すればよく、規制ブレード5の先端を通る水平線よりも鉛直方向下方に堆積したトナーの回収に関しては必要条件の範囲外としている。
【0047】
ここで、現像スリーブ3上の現像剤の様子について、図7の模式図を用いて説明する。図7に示すように、現像スリーブ3上には、現像スリーブ3の内部に固定して配置されたマグネットロール4から発生する磁界により、穂立ち部と非穂立ち部が存在する。穂立ち部では、マグネットロール4により局所的にキャリアが集められて磁気穂(磁気ブラシ)を形成している。一方、非穂立ち部では、キャリアが均一に存在しており、磁気穂の高さは穂立ち部に比べて低い。そのため、現像スリーブ3上の現像剤表面の軌跡は、綺麗な円弧状ではなく、図6に示したような曲線状となる。この時、現像スリーブ3に最も近い点は、マグネットロール4の磁界が弱い非穂立ち部となる。
【0048】
次に、非穂立ち部における現像剤表面の位置の算出方法について説明する。算出方法は、カメラなどによる可視化と、現像スリーブ3上の現像剤量から算出する手段がある。カメラなどによる可視化に関しては、現像スリーブ3を所定速度で逆回転させた際の現像スリーブ3の断面方向をカメラなどで録画し、解析することにより現像剤表面の位置を解析可能である。一方、非穂立ち部における現像剤表面の位置を、現像スリーブ3上の現像剤量から算出する方法については以下のとおりである。現像剤表面の位置は、現像スリーブ3の表面からの現像剤の厚みを意味するため、非穂立ち部における単位面積当たりの現像剤量Aと、その密度Bが分かれば厚みを算出することができる。現像領域中の単位面積当たりの現像剤量は、作像動作後に感光体ドラム28を離間し、磁石を使って所定範囲の現像剤を採取して重さを測定することで導出できる。密度についても同様に、採取した現像剤の体積を測定することで導出できる。尚、現像領域とは、マグネットロール4のN2極によって磁気的に立ち上がった磁気穂が感光体ドラム28上の静電潜像に接触する領域のことである。
【0049】
非画像形成中において、トナー捕捉シート19に堆積したトナーを効率的に回収するモード(トナー回収モード)の詳細について以降説明する。
【0050】
トナー回収モードでは、非画像形成中(例えば、前多回転時、紙間、後回転制御時)に、現像スリーブ3を一時的に逆回転させる。これにより、感光体ドラム28が現像スリーブ3に最も近接する位置に対向して配置されたマグネットロール4の磁極N2(即ち、現像領域内に配置されたマグネットロール4の現像極)の位置に搬送された現像剤を、トナー捕捉シート19の対向面まで戻す。現像スリーブ3を逆回転させることにより、磁力が強く且つ現像剤の担持量が多い磁極N2(現像極)の位置の現像剤を、規制ブレード5の位置まで移動させる。そして、現像スリーブ3の逆回転によって、現像スリーブ3の磁極N2(現像極)の位置の現像剤を規制ブレード5で半分堰き止める(半分はSBギャップから現像容器2の内部へと移動する)事で、トナー捕捉シート19に対向した位置の現像剤量を増加させる。
【0051】
図6で前述したように、規制ブレード5の先端を通る水平線よりも鉛直方向上方において、通常の画像形成時における磁気ブラシでは、トナー捕捉シート19上に堆積したトナーに接触することがない。一方、規制ブレード5の先端を通る水平線よりも鉛直方向上方において、トナー捕捉シート19は、以下に述べる配置関係となっている。即ち、トナー捕捉シート19は、現像スリーブ3を逆回転させた際に、現像極によって磁気的に引き付けられた現像スリーブ3上の現像剤が規制ブレード5へ移動する際の移動軌跡(逆回転時現像剤高さ軌跡)よりも、現像スリーブ3側に配置されている。
【0052】
現像スリーブ3の逆回転によって、トナー捕捉シート19に対向した位置の現像剤量を増加させられるので、トナー捕捉シート19上に堆積(付着)したトナーと磁気ブラシとを接触させることが可能となり、堆積したトナー層を除去(回収)することができる。この時、現像スリーブ3を逆回転させる角度は、30~120°とすることが好ましい。その理由について以下に説明する。
【0053】
図2で前述したように、マグネットロール4は、1周のうち5極の磁極を有している。具体的には、マグネットロール4が有する複数の磁極として、感光体ドラム28との最近接位置の磁極N2(現像極)から現像スリーブ3の回転方向下流方向にS2(搬送極)、N3(剥ぎ取り極)、N1(汲み上げ極)、S1(規制極)の順に5極が並んでいる。ここで、規制ブレード5に対向して配置された磁極S1(規制極)と、感光体ドラム28が現像スリーブ3に最も近接する位置に対向して配置された磁極N2(現像極)との間隔は40°となっている。
【0054】
また、現像スリーブ3の回転方向において、トナー捕捉シート19のトナー付着部は、磁極N2(現像極)に対して30°上流に位置している。このため、トナー回収モードでは、現像スリーブ3を、最低でも30°は逆回転させる必要がある。
【0055】
一方、トナー回収モードにおいて、現像スリーブ3を逆回転させる角度が120°を超えた場合、現像スリーブ3に担持された、磁極S2(搬送極)の領域近傍の現像剤までが現像スリーブ3と感光体ドラム28との最近接部の間隙に搬送されてしまう。このため、現像スリーブ3の逆回転により搬送される現像剤量が過剰になり、現像スリーブ3と感光体ドラム28との間隙に現像剤が詰まる虞がある。このことから、トナー回収モードにおいて、トナー捕捉シート19上に堆積したトナーを除去するためには、現像スリーブ3を逆回転させる角度を30~120°とすることが好ましい。第1の実施形態では、トナー回収モードにおいて、現像スリーブ3を60°だけ逆回転させている。
【0056】
また、現像剤スリーブ3上に搬送される現像剤は、磁気穂によって表面に凹凸形状が形成されている。故に、トナー回収モードにおいて、現像スリーブ3を逆回転させた後、現像スリーブ3を順回転させるという1セットの動作では、トナー捕捉シート19上に堆積したトナー層を除去する際に、長手方向に対して均一に除去することが難しい。そこで、トナー回収モードにおいて、現像スリーブ3の逆回転と順回転の1セットの動作を複数セット実行することにより、トナー捕捉シート19上に堆積したトナーを除去する効果を高めることができる。
【0057】
尚、トナー回収モードで除去した堆積トナーは、現像容器2内に取り込むことによって現像室11内を連れまわり、凝集した状態で再び現像領域へと供給された場合、画像不良が生じる虞がある。これを抑制するために、第1の実施形態では、非画像形成時に、現像スリーブ3を逆回転した後の、現像スリーブ3の順回転時に感光体ドラム28の表面電位を0[V]とする。そして、現像スリーブ3の表面に-20[V]程度の電位を印加して、アナログ現像状態を作り出す。これにより、掻き取った堆積トナーを感光体ドラム28上に吐き出すことができるので、凝集したトナーに起因する画像不良を抑制することができる。
【0058】
尚、電位設定は、アナログ現像状態に限定するものではなく、デジタル潜像を使用して吐き出しても良い。ただし、デジタル潜像を使用して吐き出す場合、アナログ現像に対して現像領域に潜像が到達するまでの時間だけ必要になるため、ダウンタイムが長くなる。そのため、ダウンタイムを短縮する観点では、デジタル現像よりも、アナログ現像を利用することが好ましい。
【0059】
(トナー回収モードの制御例)
第1の実施形態に係るトナー回収モードの制御例について、図8のシーケンス図を用いて説明する。また、図8のシーケンス図に対応する各制御を、図9のフローチャートを用いて説明する。図8図9の制御は、制御手段505(CPU)が、画像形成装置100の記憶媒体に記憶された制御プログラムを読み出して、現像高圧印加手段501、帯電高圧印加手段502、現像駆動手段503、感光体駆動手段504等を制御することにより実行される。また、図9の制御は、図10で後述するトナー回収モードの実行条件を満たしたことを制御手段505(CPU)が判断したことに従って、フローが開始される。
【0060】
[1]:中間転写体24を脱する(一次転写離間する)ことで、各色の感光体ドラム28を中間転写体24から離間させる(Step1)。
【0061】
[2]:現像駆動を通常の回転方向とは逆方向へ60°回転を開始する。ここで、トナー捕捉シート19上に蓄積したトナーを磁気ブラシにより回収を開始する(Step2)。
【0062】
[3]:現像領域内の現像剤を規制ブレード5の近傍まで移動させて、現像駆動を停止する(Step3)。磁気ブラシは規制ブレード5によって滞留し、トナー捕捉シート19上から回収したトナーが磁気ブラシの表面に多く付着している状態である。
【0063】
[4]:感光体ドラム28を通常作像時と同じ回転方向に回転を開始して、同時に現像高圧を印加(ON)にする(Step4)。
【0064】
[5]:現像駆動を通常作像動作時と同一方向に駆動を開始する(Step5)。ここで、磁気ブラシの先端にて、トナー捕捉シート19に堆積したトナーを掻き取って回収する。回収されたトナーは、感光体ドラム28上へと電界の力で吐き出される。
【0065】
[6]、[7]、[8]:現像高圧、現像駆動、感光体ドラム駆動の順で停止する(Step6、Step7、Step9)。
【0066】
そして、Step2~Step8の一連の処理を1セット(1回)とした場合、ここから更に、Step2~Step8の一連の処理を4セット実行し、合計で5セット実行する。磁気ブラシの形状はランダムに変化するため、Step2~Step8の一連の処理を1セットのみ実行する場合よりも、トナー捕捉シート19上のトナーをより効率的に回収することができる。
Step2~Step8の一連の処理を合計で5セット実行したら、Step9に進む。
【0067】
[9]:感光体ドラム28に対して中間転写体24が離間した状態から、感光体ドラム28に対して中間転写体24を着した状態に戻す(Step9)。
【0068】
以上説明したStep1~Step9に係る工程(トナー回収モード)を実行することにより、トナー捕捉シート19上に蓄積したトナーを回収、除去することができる。Step1~Step9に係る工程(トナー回収モード)を実行するトリガー(即ち、トナー回収モードの実行条件)について、図10のフローチャートを用いて説明する。図10の制御は、制御手段505(CPU)が、画像形成装置100の記憶媒体に記憶された制御プログラムを読み出して、各種機器を制御することにより実行される。
【0069】
画像形成動作を開始する(Step101)。図9のStep1~Step9に係る工程(トナー回収モード)を前回実行した後に、画像形成された記録材の枚数が所定枚数に到達したかを判断する(Step102)。ここで、所定枚数は、トナー捕捉シート19にトナーが堆積した状況を鑑みて、温湿度環境や、画像濃度などに応じて適宜変更される。所定枚数に到達していない場合(Step102:No)、画像形成を継続する。所定枚数に到達した場合(S102:Yes)、画像形成動作を一旦停止し(Step103)、図9のStep1~Step9に係る工程(トナー回収モード)を開始する(Step104)。そして、図9のStep1~Step9に係る工程(トナー回収モード)が終了したら、トナー回収モードを実行するためのカウンター(画像形成された記録材の枚数)をゼロにリセットし(Step105)、画像形成動作を再開する(Step106)。
【0070】
尚、トナー回収モードを実行するためのカウンターは、イエロー、マゼンタ、シアン(Y、M、C)の感光体ドラム28と中間転写体24とを離間して作像する黒(K)単色モードを有する機種が多いことから、フルカラーとK、または色毎に有することが好ましい。
【0071】
続いて、第1の実施形態に係るトナー回収モードの効果について、図11図14を用いて説明する。
【0072】
トナー捕捉シート19上に堆積したトナーに起因したシミ画像の発生頻度について、第1の実施形態の構成と、従来例の構成との間で比較した。
【0073】
従来例の構成は、トナー捕捉シート19が現像スリーブ3から1mm程度離れており、且つ、図9のStep1~Step9に係る工程(トナー回収モード)のシーケンス(図8)が入っていない構成である。
【0074】
一方、第1の実施形態の構成では、図6で前述したトナー捕捉シート19の構成となっている。即ち、画像形成時に現像スリーブ3を正回転させたときはトナー捕捉シート19に磁気穂が接触しないが、非画像形成時に現像スリーブ3を逆回転させたときはトナー捕捉シート19に磁気穂が接触するように、トナー捕捉シート19が配置されている。第1の実施形態では、トナー捕捉シート19のこの様な構成において、更に、図9のStep1~Step9に係る工程(トナー回収モード)を実行する構成を有するものである。
【0075】
トナーの帯電量が低い高温高湿環境においてトナーの消費と補給が多く発生する条件が、トナーが最も堆積する条件になる。そこで、温度30℃、湿度80%の環境で、画像面積比率(平均画像DUTY)25%の画像を連続で画像形成した結果で比較する。トナー捕捉シート19上に堆積したトナーに起因するシミ画像は濃いスジ状の画像で現れることから、第1の実施形態では、マゼンタとシアンの2色のハーフトーン画像を用いて評価した。
【0076】
第1の実施形態では、シミの長さが10mm未満の水準1、10mm以上30mm未満の水準2、30mm以上の水準3として区分し、5000枚プリントし、各水準のシミの個数をカウントした。ここで、500枚当たりの発生個数に換算した結果を、図11に示す。
【0077】
第1の実施形態の構成では、従来例の構成に対して異常画像の発生頻度を40%程度まで低減することができる。
【0078】
前述したように、従来例の構成は、トナー捕捉シート19が現像スリーブ3から1mm程度離れており、且つ、図9のStep1~Step9に係る工程(トナー回収モード)のシーケンス(図8)が入っていない構成である。一方、第1の実施形態の構成では、図6で前述したトナー捕捉シート19の構成となっており、且つ、図9のStep1~Step9に係る工程(トナー回収モード)がA4片面250枚に1度入るようになっている。従来例の構成と第1の実施形態の構成の両者を比較するため、A4片面で、記録材に対する画像面積比率(平均画像DUTY)の割合が25%の高濃度画像を連続で通紙し、500枚あたりに発生する、シミ画像の個数をカウントした。両者を比較した結果を、図12に示す。
【0079】
従来例の構成では、1000枚まではシミ画像は確認されなかったが、2000枚以降から発生頻度が増加している。これは、2000枚まではトナー捕捉シート19上にトナーが蓄積はするものの、作像動作中の磁気ブラシに接する距離まで蓄積していないため、トナー層が解砕されないためである。しかし、2000枚以降では、磁気ブラシに接するくらいのトナー層厚になるため、磁気ブラシに解砕されたトナー塊がシミとして画像に出る機会が増えていく。一方、図12に示すように、第1の実施形態の構成では、通紙枚数が増えていっても、シミの発生頻度はほぼ一定である。
【0080】
続いて、トナー捕捉シート19のシート長による品質項目の変化について、図13に示す。トナー捕捉シート19の先端が現像領域に侵入している状態(ケース3)の場合、トナー捕捉シート19が現像スリーブ3と感光体ドラム28との間に挟まれて、感光体ドラム28へ押し付けられる。その際の熱によりトナーが感光体ドラム28へ融着する問題が発生する。
【0081】
逆に、トナー捕捉シート19のシート長が短すぎると、トナー捕捉シート19の先端が感光体ドラム28に非接触状態となり(ケース1)、現像スリーブ3から飛散したトナーをトナー捕捉シート19で捕捉することが不十分となる。その結果、現像装置1の外部(画像形成装置100の機内)にトナーが飛散してしまう。一方、トナー捕捉シート19の先端のみが接触している状態(ケース2)の場合、現像スリーブ3の正回転のみだとシミが発生するが、トナー回収モードにおける現像スリーブ3の逆回転シーケンスを実行することにより、シミを改善することができる。
【0082】
ここで、穂立ち部における、磁気ブラシの穂の長さについて説明する。磁気ブラシの穂の長さを制御する因子としては、現像スリーブ3上の単位面積当たりの現像剤量、マグネットロール4のN2極(現像極)における磁束密度、キャリアの粒径、キャリアの磁化量などが支配的である。磁気ブラシの穂の長さを測定する手段として、現像スリーブ3上の現像剤を、光学顕微鏡(KEYENCE社製 VR3000)で観察して測定した。まず、現像装置1を単体で駆動できる装置を用いて10秒間駆動を行い、現像スリーブ3上の現像剤を顕微鏡で観察し、観察範囲(10mm×10mm)における各々の磁気ブラシの最大長さの平均値を、磁気ブラシの穂の長さとして求めた。
【0083】
第1の実施形態の構成における現像装置1では、マグネットロール4のN2極(現像極)における磁束密度が1050G、半値幅が42°であった。また、現像剤中のキャリアの粒径は40μm、磁化量は190emu/cm3であった。この条件において、現像スリーブ3上の単位面積当たりの現像剤量を20、30、40、50mg/cm2と変化させたときの磁気ブラシの長さを測定した。このときの測定結果を図12に示す。
【0084】
第1の実施形態においては、現像スリーブ3上の単位面積当たりの現像剤量は、現像スリーブ3の正回転時には30mg/cm2であるのに対し、現像スリーブ3を逆回転させた際には50mg/cm2であった。通常、規制ブレード5により現像スリーブ3上の現像剤量は決まり、それは30mg/cm2である。しかし、現像スリーブ3と感光体ドラム28との間(現像領域)を通過する際に、現像スリーブ3と感光体ドラム28との間のギャップが狭いために、現像剤の滞留が発生し、局所的に現像剤量が増える。そのため、逆回転させた際には、この滞留した現像剤量となるため、現像剤量が50mg/cm2となる。
【0085】
図14に示すように、現像剤量が30mg/cm2であるとき(現像スリーブ3の正回転時)の磁気ブラシの穂の長さは500μmであり、現像剤量が50mg/cm2であるとき(現像スリーブ3の逆回転時)の磁気ブラシの穂の長さは700μmである。
【0086】
以上説明したように第1の実施形態では、以下の構成を有する。画像形成時に現像スリーブ3を正回転させたときはトナー捕捉シート19に磁気穂が接触しないが、非画像形成時に現像スリーブ3を逆回転させたときはトナー捕捉シート19に磁気穂が接触するように、トナー捕捉シート19が配置されている。また、第1の実施形態では、トナー捕捉シート19のこの様な構成において、更に、図9のStep1~Step9に係る工程(トナー回収モード)を実行する構成を有する。
【0087】
そして、第1の実施形態では、トナー回収モードにおいて、現像スリーブ3を逆回転させた際に、現像領域内の現像剤を、トナー捕捉シート19上のトナーに接触させる事ができるので、トナー捕捉シート19上に堆積したトナーを効率的に回収する事ができる。故に、第1の実施形態では、現像領域から重力方向下方の空間に電磁石等の磁界発生部材を設ける必要がないことから、現像領域から重力方向下方の空間において、トナー捕捉シートとは別に、電磁石を配置するためのスペースを確保する必要がない。第1の実施形態では、この様な簡易な構成により、トナー捕捉シート19上に堆積したトナーを、非画像形成中に回収することができる。
【0088】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。尚、第2の実施形態における画像形成プロセスは、第1の実施形態とほぼ同一であるため、重複する説明は適宜省略する。第2の実施形態は、第1の実施形態とハード構成が同一であり、トナー回収モードのシーケンスのみが異なる。このため、第2の実施形態では、ハード構成の説明は割愛し、差分となるトナー回収モードのシーケンスについてのみ詳細に説明する。
【0089】
第2の実施形態に係る回収モードの制御例について、図15のシーケンス図を用いて説明する。
[1]:中間転写体24を脱する(一次転写離間する)ことにより、感光体ドラム28を中間転写体24から離間させる。
[2]:現像高圧のみを印加する。この際、感光体ドラム28は、未帯電であるため表面電位は略0[V]である。現像高圧は+200[V]を印加する。これにより、現像領域中のトナーは、感光体ドラム28上へ電界により移動する。その結果、現像領域の現像剤はトナーが少ないキャリアリッチな状態となる。
[3]:現像高圧を停止(OFF)する。
[4]:現像駆動を通常の回転方向とは逆方向へ回転を開始する。ここで、トナー捕捉シート19上に堆積したトナーを磁気ブラシにより回収を開始する。
[5]:現像領域内の現像剤を規制ブレード5近傍まで移動させて、現像駆動を停止する。このとき、磁気ブラシ上には、トナー捕捉シート19上から回収したトナーが多く付着している状態である。[2]の動作によりキャリアリッチになった現像剤中の磁気ブラシによってトナーを回収するため、トナーの回収効率が向上する。
[6]:感光体ドラム28を通常作像時と同じ回転方向で回転開始、同時に現像高圧をON。
[7]:通常作像動作時と同一方向に現像駆動を開始する。ここで、磁気ブラシの先端にて回収されたトナーは、感光体ドラム28上へと電界の力で吐き出される。
[8]、[9]、[10]:現像高圧、現像駆動、感光体駆動の順で停止する。
[11]:感光体ドラム28に対して中間転写体24が離間した状態から、感光体ドラム28に対して中間転写体24を着した状態に戻す。
【0090】
第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なり、トナー回収モードのシーケンスにおいて、現像駆動を通常の回転方向とは逆方向へ回転を開始する[3]の動作の前に、現像高圧のみを印加する期間([1]、[2])を設けた。これにより、キャリアリッチになった現像剤中の磁気ブラシによってトナーを回収するため、トナーの回収効率が向上させることができる。
【0091】
続いて、第2の実施形態に係るトナー回収モードの効果について、図16を用いて説明する。
【0092】
第2の実施形態では、トナー回収モードを前回実行してから画像形成された記録材の枚数が250枚に到達した場合に、トナー回収モードを実行するようにしている(即ち、トナー回収モードの実行頻度は250枚に一回である)。生産性向上(ダウンタイム低減)の観点からトナー回収モードの実行頻度を500枚に一回にした場合、図16に示すように、第1の実施形態に係るトナー回収モードのシーケンスでは、シミ画像の発生頻度が高くなってしまう。これは、第1の実施形態に係るトナー回収モードのシーケンスでは、トナー捕捉シート19上に堆積したトナーを回収する量に限界があるためである。
【0093】
一方、第2の実施形態に係るトナー回収モードのシーケンスでは、トナー回収モードの実行頻度を500枚に一回にしても、第1の実施形態に係るトナー回収モードのシーケンスで実行頻度を250枚に一回にしたときと同等の効果が得られている。故に、第2の実施形態では、第1の実施形態と比べて、トナー回収モードの効果を維持しつつ、生産性向上(ダウンタイム低減)の効果が得られる点で有利であると言える。
【0094】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。尚、第3の実施形態における画像形成プロセスは、第1の実施形態とほぼ同一であるため、重複する説明は適宜省略する。第3の実施形態は、第1の実施形態とハード構成が同一であり、トナー回収モードのシーケンスのみが異なる。このため、第3の実施形態では、ハード構成の説明は割愛し、差分となるトナー回収モードのシーケンスについてのみ詳細に説明する。
【0095】
第3の実施形態では、トナー回収モードにおいて現像スリーブ3を逆回転した後の順回転時の動作が、第1の実施形態とは異なる。第3の実施形態に係るトナー回収モードの制御例について、図17のシーケンス図を用いて説明する。
【0096】
第3の実施形態に係るトナー回収モードでは、第1の実施形態に係るトナー回収モードの[1]から[9]に示したシーケンスに対して、[5]のシーケンスを変更した([5”])。具体的に、第3の実施形態では、第1の実施形態の[5]のシーケンスに対して、通常時作像動作時と同一方向に現像駆動する際に、現像スリーブ3の駆動速度を低速にするシーケンスとした([5´])。現像スリーブ3の駆動速度を低速にすることで、現像スリーブ3上の現像剤量(M/S)が増加し、現像スリーブ3の表面からの厚みが増加して、トナー捕捉シート19に堆積したトナーをより多く掻き取ることが可能になる。
【0097】
ここで、現像装置1の駆動速度と現像スリーブ3上に薄層コートされたときの単位面積当たりの現像剤重量(M/S)の関係(現像スリーブ上のコート量と線速との関係)について、図18を用いて説明する。
【0098】
マグネットロール4の磁極の構成が同一である場合、現像スリーブ3の回転速度によって現像スリーブ3上の現像剤のコート量は変化する。現像スリーブ3の回転速度が速い場合、遠心力によって磁気穂の立ち上がりが早くなり、磁気穂がより立ち上がった状態で規制ブレード5による穂切りが行われる。このため、現像スリーブ3の回転速度が速い場合、現像スリーブ3と規制ブレード5の間のギャップ(SBギャップ)を通過後の現像剤コート量は少なくなる傾向がある。一方、現像スリーブ3の回転速度が遅い場合、遠心力が小さいため磁気穂の立つ速度が遅く、磁気穂は回転速度が速い場合より寝た状態で規制ブレード5を通過する。このため、現像スリーブ3の回転速度が遅い場合、SBギャップを通過後の現像スリーブ上の現像剤載り量(M/S)は多くなり、磁気穂の高さは高くなる傾向がある。
【0099】
現像スリーブ3の回転速度を小さくしてSBギャップを通過する現像剤量を多くすることで、トナー捕捉シート19に対向した位置の現像剤の磁気穂高さが高くなる。即ち、現像スリーブ3の回転速度が遅いときは、現像スリーブ3の回転速度が速いときと比べて、トナー捕捉シート19上に堆積したトナーとより多くの磁気穂が接触する事になるので、トナー捕捉シート19上のトナーを回収する効率をより高めることができる。第3の実施形態では、トナー回収モードで現像スリーブ3を逆回転動作した後の順回転動作において、現像スリーブ3を低速で順回転させる制御を実行する事により、第1の実施形態の構成よりもトナー捕捉シート19上のトナーを効率的に回収することができる。
【0100】
尚、トナー回収モードで現像スリーブ3を逆回転動作した後の順回転動作において、現像スリーブ3を回転させる速度は、画像形成装置100が有する制御速度の最低速の設定であると制御が実施しやすい。例えば、厚紙時の画像形成速度に対応した線速設定は普通紙に対して半分の線速設定であることが多く、トナー回収モードで現像スリーブ3を逆回転動作した後の順回転動作時にも利用することができる。現像スリーブ3をより低速で回転させることで、現像スリーブ3上の現像剤載り量(M/S)はより多くなる。
【0101】
このため、第3の実施形態に係るトナー回収モードのシーケンスを実行する際には、例として示した速度に規定するものではなく、より遅い速度で実施しても構わない。また、現像スリーブ3の逆回転と順回転との組合せを複数セット繰り返す場合、最後の順回転時の後、すぐに次の作像動作に移ることができるように順回転時の線速を通常時の線速に戻すことが望ましい。
【0102】
また、トナー回収モードで現像スリーブ3を逆回転した後に順回転する一連の動作を繰り返す回数を増やすことによっても、トナー捕捉シート19上のトナーを回収する効果を高める効果が得られる。なぜなら、トナー捕捉シート19に堆積したトナーを掻き取った時に発生するトナー層の崩れや磁気穂表面に担持できる許容量を超えた堆積トナーがある場合があるからである。例えば、磁気穂形状ムラによる掻き取りムラが発生することや磁気穂表面積に対してトナー堆積量が多い場合には、一度の現像スリーブ3の逆回転では十分に解消できないことが要因として挙げられる。
【0103】
続いて、第3の実施形態に係るトナー回収モードの効果を説明する上で、トナー回収モードで現像スリーブ3を逆回転動作した後の順回転動作時に低速にした場合のシミ画像の発生頻度を比較した結果を、図19に示す。図19は、第1の実施形態と同様に、温度30℃、湿度80%の環境で、画像面積比率25%の画像を連続で画像形成することにより、シミ画像の発生頻度を比較したものである。
【0104】
第3の実施形態の構成によると、トナー回収モードで現像スリーブ3を逆回転動作した後の順回転動作時に、現像スリーブ3を低速で回転させることで、異常画像の発生頻度を、従来例の構成に対して約80%低減させることができる。また、トナー回収モードで現像スリーブ3を逆回転した後に順回転する一連の動作を繰り返す回数を3回(第2の実施形態(a))から5回(第2の実施形態(b))に増やす事で、異常画像の発生頻度を、従来例の構成に対して約90%低減させることができる。
【0105】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0106】
上記実施形態では、トナー回収モードを、非画像形成中として、例えば、前多回転時、紙間、後回転制御時)に実行する例について説明した。また、トナー回収モードの実行条件として、トナー回収モードを前回実行してから画像形成された記録材の枚数が所定枚数に到達した場合に、トナー回収モードを実行する例について説明した。一方、前多回転時と、紙間と、後回転制御時のそれぞれで、トナー回収モードの実行条件を異ならせる変形例であってもよい。
【0107】
例えば、紙間でトナー回収モードを実行する場合と、後回転制御時にトナー回収モードを実行する場合とで、トナー回収モードの実行のトリガーとする画像形成枚数(トナー回収モードを前回実行してから画像形成された記録材の枚数)を異ならせてもよい。例えば、紙間では、生産性を優先させる(ダウンタイムを抑制する)ために、トナー回収モードを前回実行してから画像形成された記録材の枚数が500枚に到達した場合に、紙間でトナー回収モードを実行する。これに対して、後回転制御時は、紙間時と比べて、トナー回収モードの実行頻度を高めるべく、トナー回収モードを前回実行してから画像形成された記録材の枚数が250枚に到達した場合に、後回転制御時にトナー回収モードを実行する。
【0108】
また、例えば、前多回転時にトナー回収モードを実行する場合は、現像装置1が稼働していない状態が所定時間以上続き、且つ、温度と湿度が所定の条件を満たしたときを、トナー回収モードの実行条件とする。また、例えば、紙間と、後回転制御時にトナー回収モードを実行する場合は、トナー回収モードを前回実行してからの湿度と温度の変動量が所定値以上となったときを、トナー回収モードの実行条件とする。
【0109】
また、例えば、紙間と、後回転制御時にトナー回収モードを実行する場合は、トナー回収モードを前回実行してからの平均画像DUTYの変動量が所定値以上となったときを、トナー回収モードの実行条件とする。また、例えば、紙間と、後回転制御時にトナー回収モードを実行する場合は、トナー回収モードを前回実行してからの長期平均画像DUTYが所定値以上となったときを、トナー回収モードの実行条件とする。また、例えば、紙間と、後回転制御時にトナー回収モードを実行する場合は、トナー回収モードを前回実行してからの短期平均画像DUTYが所定値以下となったときを、トナー回収モードの実行条件とする。
【0110】
上述したこれらのトナー回収モードの実行条件を適宜組み合わせてもよく、これらのトナー回収モードのいずれの実行条件を適用するかを、サービスモードで任意にON/OFFできるようにしてもよい。また、トナー回収モードのいずれかの実行条件を満たして、トナー回収モードが実行された場合には、トナー回収モードを前回実行してから画像形成された記録材の枚数をゼロにリセットすればよい。
【0111】
また、上記実施形態では、図4に示すように、規制ブレード5に貼り付けられたトナー捕捉シート19が1枚である現像装置を例に説明したが、これに限られない。図20に示すように、規制ブレード5に貼り付けられたトナー捕捉シート19が2枚である現像装置の変形例にあってもよい。規制ブレード5に貼り付けられた2枚のトナー捕捉シート19(19a、19b)のうちの1枚は、現像領域から重力方向下方に飛散したトナーを捕捉するためのシート部材19aであり、感光体ドラム28に接触して配置される。もう1枚は、SBギャップを通過する現像剤の層厚が規制ブレード5によって規制される際に飛散したトナーを捕捉するためのシート部材19bであり、現像スリーブ70に対向するように現像スリーブ70に対して非接触に配置される。図20に示すように、規制ブレード5に貼り付けられたトナー捕捉シート19が2枚である現像装置の変形例にあっては、トナー回収モードにおいて、シート部材19aに堆積したトナーを回収することを意味する。
【0112】
また、上記実施形態では、図1に示したように、中間転写体24を用いる構成の画像形成装置を例に説明したが、これに限られない。感光体ドラム28に順に記録材を直接接触させて転写を行う構成の画像形成装置に本発明を適用することも可能である。感光体ドラム28に順に記録材を直接接触させて転写を行う構成においては、トナー回収モードにおいて、中間転写体24を感光体ドラム28から脱するシーケンス(一次転写離間するシーケンス)を省略すればよい。
【符号の説明】
【0113】
1 現像装置
2 現像容器
3 現像スリーブ
4 マグネットロール
5 規制ブレード
19 トナー捕捉シート
28 感光体ドラム
100 画像形成装置
503 現像駆動手段
505 制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20