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特許7494106溶融塩電解装置及び、金属マグネシウムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】溶融塩電解装置及び、金属マグネシウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/02 20060101AFI20240527BHJP
   C25C 3/04 20060101ALI20240527BHJP
   C25C 7/00 20060101ALI20240527BHJP
   C22B 26/22 20060101ALI20240527BHJP
   C22B 4/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C25C7/02 308Z
C25C3/04
C25C7/00 302B
C22B26/22
C22B4/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020216965
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102307
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 純也
(72)【発明者】
【氏名】秋元 文二
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018441(WO,A1)
【文献】特開2019-218595(JP,A)
【文献】特開2001-040493(JP,A)
【文献】特表2015-516514(JP,A)
【文献】特開2000-226685(JP,A)
【文献】特開2013-170290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C1/00-7/08
C22B1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部スペースを区画する周壁及び底壁を有する電解槽と、電解槽の前記内部スペースに配置され、陽極及び陰極を含む電極とを備える溶融塩電解装置であって、
前記陰極が、前記陽極の周囲を取り囲む筒型部分、及び、前記筒型部分の一部から延長されて前記周壁を貫通して電解槽の外部へ突き出る延長部分を有し、
前記筒型部分の、前記周壁に隣接して位置する箇所が、当該周壁に対する接近変位及び離隔変位の可能な周壁側の可動陰極部材で構成された溶融塩電解装置。
【請求項2】
前記周壁が、電極に隣接する後壁を含み、
前記周壁側の可動陰極部材が、前記筒型部分の、前記後壁に隣接して位置する箇所であって、当該後壁に対する接近変位及び離隔変位の可能な後壁側の可動陰極部材である請求項1に記載の溶融塩電解装置。
【請求項3】
電解槽が、前記内部スペースに、前記電極が配置される電解室を区画する隔壁を有し、
前記陰極が鋼製であり、
前記筒型部分の、前記隔壁に隣接して位置する箇所が、当該隔壁に対する接近変位及び離隔変位の可能な隔壁側の可動陰極部材で構成された請求項1又は2に記載の溶融塩電解装置。
【請求項4】
前記筒型部分が、前記可動陰極部材に対して直交もしくは傾斜する方向にそれぞれ延びるとともに陽極を隔てて互いに対向して位置する対をなす固定陰極部材を含み、
前記固定陰極部材の少なくとも一個が、前記延長部分に連続しており、
前記可動陰極部材が、前記固定陰極部材のそれぞれと電気的に接続可能に配置された請求項1~3のいずれか一項に記載の溶融塩電解装置。
【請求項5】
前記固定陰極部材の前記可動陰極部材側の表面に、該表面から窪んで電解槽の深さ方向に延びる溝部が形成されており、
前記溝部が、前記可動陰極部材の端部の幅よりも広い溝幅を有し、
前記可動陰極部材が、当該端部を前記溝部内に入り込ませて配置され、前記溝部の溝幅方向に沿って前記接近変位及び離隔変位を可能に構成された請求項4に記載の溶融塩電解装置。
【請求項6】
前記固定陰極部材の前記溝部の内側面と前記可動陰極部材の端部寄りの表面との間に、前記可動陰極部材を前記接近変位又は離隔変位がなされた位置で固定するストッパー部材が、取出し可能に配置される請求項5に記載の溶融塩電解装置。
【請求項7】
前記ストッパー部材と接触する前記可動陰極部材の端部寄りの表面の少なくとも一方に、当該ストッパー部材を通す溝状凹部が形成された請求項6に記載の溶融塩電解装置。
【請求項8】
前記電解槽の前記周壁又は前記陰極の前記筒型部分が、前記周壁側の可動陰極部材を下方側から支持する載置面を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の溶融塩電解装置。
【請求項9】
前記電極が、陽極と陰極の前記筒型部分との間に配置された一個以上の筒型複極をさらに含む請求項1~8のいずれか一項に記載の溶融塩電解装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の溶融塩電解装置を使用して、塩化マグネシウムから金属マグネシウムを製造する、金属マグネシウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電解槽と陽極及び陰極を含む電極とを備え、陰極が陽極の周囲を取り囲む筒型部分を有する溶融塩電解装置及び、金属マグネシウムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融塩電解では一般に、電解槽の周壁及び底壁で囲まれた内部スペースに、所定の溶融塩を溜めて溶融塩浴を構成する。そして、溶融塩電解の実施に際しては、溶融塩浴に浸漬させた陽極と陰極との間に電圧を印加し、溶融塩の電気分解を行う。この種の溶融塩電解は、クロール法によるスポンジチタンの製造に際して副次的に生成される塩化マグネシウムから金属マグネシウムを生成させるための、塩化マグネシウムの電気分解等に用いられる。
【0003】
たとえば、電解槽の内部スペースが隔壁によって回収室と電解室とに区画された溶融塩電解装置を使用する塩化マグネシウムの電気分解では、溶融塩浴中の塩化マグネシウムを含む溶融塩が電解槽内の回収室から電解室へと流動し、該電解室内にて当該塩化マグネシウムが電気分解されて金属マグネシウム及び塩素が生成される。電解室で生成された金属マグネシウムは電解槽内で回収室へとさらに循環して、溶融塩との密度差によって溶融塩浴の浴面上に浮上した後に回収される。なお、塩素は電解槽に設けられ得るガス排出通路等を経て電解槽の外部に排出される。このようにして得られた金属マグネシウムは、クロール法によるスポンジチタンの製造に使用され得る。
【0004】
かかる溶融塩電解装置には、電極が、たとえば特許文献1に記載されているように、板状ないし柱状の陽極と、その陽極の周囲を取り囲む筒型部分を有する陰極とを含むものがある。電極はさらに、陽極と陰極との間に配置される一個以上の筒型複極を含む場合もある。陰極は、筒型部分の他、該筒型部分の一部から延長されて周壁を貫通して電解槽の外部へ突き出る延長部分を有し、この延長部分にて電解槽の外部の電源に接続される。
【0005】
なお特許文献1には、より詳細には、「メタル回収室と電解室とを有し、前記電解室に2以上の電解セル単位を備えてなる溶融塩電解槽であって、前記電解セル単位は角柱形の空間を有する陰極、角柱形の陽極及び少なくとも1の角筒形の複極を含み、前記複極は前記陰極の内側空間、また前記陽極は前記複極の内側空間に、それぞれ配置され、前記複極のうち陰極に最も近い複極の角筒外側を形成する各平面は、それぞれ、少なくとも一部が陰極の角柱形の空間を形成する平面と対面し、前記複極のうち陽極に最も近い複極の角筒内側を形成する各平面は、それぞれ、少なくとも一部が陽極の角柱を形成する平面と対面し、前記陰極の少なくとも一面が他の電解セル単位の陰極の一面となることを特徴とする溶融塩電解槽」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/018441号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したような溶融塩電解装置を用いて電気分解を継続して行うと、底壁の周囲に立てて設けた耐火煉瓦製等の周壁は熱膨張する他、溶融塩浴の成分が浸潤し、また当該煉瓦が変質する。それらの現象は特に、周壁のうち、電極の近傍に位置する後壁で顕著に生じる。これにより、後壁を含む周壁は、次第に陰極を上方側に向けるように膨張することがある。
【0008】
この場合、陰極は、後壁等の周壁を貫通して電解槽の外部で固定される延長部分に対し、筒型部分の後壁から離れて位置する箇所が当該後壁等の膨張によって上方側に持ち上げられる変位が生じ得る。陰極がこのように変位すると、筒型部分の、後壁等の周壁に隣接して位置する箇所が、特に電解槽の深さ方向の下端部側で、その内側に配置された複極又は陽極に接近する。それにより、陰極の筒型部分の当該箇所が複極又は陽極と接触し、陰極と複極又は陽極との間で短絡が生じるという問題があった。
【0009】
この発明の目的は、電極間での短絡の発生を抑制することができる溶融塩電解装置及び、金属マグネシウムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の溶融塩電解装置は、内部スペースを区画する周壁及び底壁を有する電解槽と、電解槽の前記内部スペースに配置され、陽極及び陰極を含む電極とを備えるものであって、前記陰極が、前記陽極の周囲を取り囲む筒型部分、及び、前記筒型部分の一部から延長されて前記周壁を貫通して電解槽の外部へ突き出る延長部分を有し、前記筒型部分の、前記周壁に隣接して位置する箇所が、当該周壁に対する接近変位及び離隔変位の可能な周壁側の可動陰極部材で構成されたものである。
【0011】
この発明の溶融塩電解装置では、前記周壁が、電極に隣接する後壁を含み、前記周壁側の可動陰極部材が、前記筒型部分の、前記後壁に隣接して位置する箇所であって、当該後壁に対する接近変位及び離隔変位の可能な後壁側の可動陰極部材であることが好ましい。
【0012】
この発明の溶融塩電解装置では、電解槽が、前記内部スペースに、前記電極が配置される電解室を区画する隔壁を有し、前記陰極が鋼製であり、前記筒型部分の、前記隔壁に隣接して位置する箇所が、当該隔壁に対する接近変位及び離隔変位の可能な隔壁側の可動陰極部材で構成されることが好ましい。
【0013】
この発明の溶融塩電解装置では、前記筒型部分が、前記可動陰極部材に対して直交もしくは傾斜する方向にそれぞれ延びるとともに陽極を隔てて互いに対向して位置する対をなす固定陰極部材を含み、前記固定陰極部材の少なくとも一個が、前記延長部分に連続しており、前記可動陰極部材が、前記固定陰極部材のそれぞれと電気的に接続可能に配置されることが好ましい。
【0014】
この場合、前記固定陰極部材の前記可動陰極部材側の表面に、該表面から窪んで電解槽の深さ方向に延びる溝部が形成されており、前記溝部が、前記可動陰極部材の端部の幅よりも広い溝幅を有し、前記可動陰極部材が、当該端部を前記溝部内に入り込ませて配置され、前記溝部の溝幅方向に沿って前記接近変位及び離隔変位を可能に構成されることが好ましい。
【0015】
さらにこの場合、前記固定陰極部材の前記溝部の内側面と前記可動陰極部材の端部寄りの表面との間に、前記可動陰極部材を前記接近変位又は離隔変位がなされた位置で固定するストッパー部材が、取出し可能に配置されることが好適である。
【0016】
その上で、前記ストッパー部材と接触する前記可動陰極部材の端部寄りの表面の少なくとも一方には、当該ストッパー部材を通す溝状凹部が形成されることが好ましい。
【0017】
この発明の溶融塩電解装置では、前記電解槽の前記周壁又は前記陰極の前記筒型部分が、前記周壁側の可動陰極部材を下方側から支持する載置面を有することが好ましい。
【0018】
この発明の溶融塩電解装置では、前記電極が、陽極と陰極の前記筒型部分との間に配置された一個以上の筒型複極をさらに含むことがある。
【0019】
この発明の金属マグネシウムの製造方法は、上記のいずれかの溶融塩電解装置を使用して、塩化マグネシウムから金属マグネシウムを製造するというものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明の溶融塩電解装置によれば、電極間での短絡の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の一の実施形態の溶融塩電解装置を示す、電解槽の深さ方向に沿う断面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】後壁の上方側への膨張に伴う陰極の変位及び変形の態様を示す、図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図3の陰極の変位及び変形が生じた際の当該陰極と複極とのそれぞれの対向する箇所の位置関係を示す断面図である。
図5図1の溶融塩電解装置が備える陰極の筒型部分の可動陰極部材の変位を示す、図1の部分拡大断面図である。
図6図1の溶融塩電解装置が備える陰極の筒型部分の可動陰極部材と固定陰極部材との接続態様及び、その接続態様の他の例を示す、図2の部分拡大断面図である。
図7図6(a)のVI-VI線に沿う断面図である。
図8】他の実施形態の溶融塩電解装置が備える陰極及び後壁を示す、図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態の溶融塩電解装置1は、図1に示すように、内部スペース2aを区画する周壁2b及び底壁2cを有する電解槽2と、電解槽2の内部スペース2aに配置され、陽極3a及び陰極3bを含む電極3とを備える。
【0023】
ここで、たとえば主としてAl23等の耐火煉瓦その他の適切な材料からなる電解槽2は、底壁2cの周囲に全周にわたって周壁2bを立てて設けたものである。この溶融塩電解装置1はさらに、電解槽2の上方側開口部を覆蓋するための蓋部材4を備える。電解槽2の内側には、底壁2c及び周壁2b並びに蓋部材4によって取り囲まれる内部スペース2aが区画されている。溶融塩電解を行うには、この内部スペース2aに溶融塩を貯留させて、溶融塩浴を構成する。
【0024】
この実施形態では、電解槽2は、内部スペース2aに後述の陰極3bの延長部分13bが貫通した周壁2bと平行に設けられた隔壁5を有し、この隔壁5により、内部スペース2aが図1の右側に位置して電気分解が行われる電解室2fと、電解室2fでの電気分解により生成された生成物である溶融金属が流れ込んで該溶融金属が溶融塩との密度差により上方側に溜まる回収室2eとに区画されている。隔壁5は、図示の例では、蓋部材4に近接させて配置されている。これにより、隔壁5と電解槽2の底壁2cとの間に、回収室2eから電解室2fへの溶融塩浴の移動を可能にする溶融塩循環路5aを形成する。また、隔壁5に設けた溶融金属流路5bにより、電解室2fから回収室2eへの溶融金属の流入が可能になる。隔壁5は、溶融塩循環路5a及び溶融金属流路5bを設けることができれば、その形状や個数等の構成が適宜変更され得る。
【0025】
なお、内部スペース2aの周囲の周壁2bのうち、電解室2fを隔てて隔壁5の反対側に位置して電極3に隣接する部分を後壁2dという。ここでは、周壁2bのなかでも、主に後壁2dに着目しており、後壁2dのことを周壁2bということもある。周壁2bには、電解室2f側で隔壁5と対向する上記の後壁2dの他、回収室2e側で隔壁5と対向する前壁2h(図1参照)や、後壁2dと隔壁5と前壁2hとをそれらの端部で連結するべく前後方向に延びる側壁2g(図2参照)が含まれ得る。なお、前後方向とは、後壁2d、隔壁5及び前壁2hが並ぶ方向(図1、2の左右方向)を意味し、回収室2e側を前方側とし、電解室2f側を後方側としている。
【0026】
またここで、電極3には、蓋部材4を貫通して電解槽2の内外に延びる板状もしくは柱状等の陽極3aと、図2に示す断面図から解かるように、陽極3aの周囲を取り囲んで陽極3aから間隔をおいて配置された筒型部分13aを有する陰極3bとが含まれる。陰極3bの筒型部分13aは、図示の例のような平面視の内外輪郭形状がともに長方形その他の四角形状になる四角筒型等の角筒型等とすることができる。陰極3bは、筒型部分13aの一部から外側に延長する延長部分13bをさらに有し、この延長部分13bが、周壁2bの一部である後壁2dを貫通して電解槽2の外部へ突き出るように配置されている。電極3は、陰極3bの延長部分13b及び陽極3aのそれぞれの、電解槽2の外部に位置する箇所で、図示しない電源に接続される。
【0027】
電極3は、少なくとも陽極3a及び陰極3bを有するものであれば、溶融塩浴中の溶融塩の電気分解を行うことができる。他方、電気分解による金属マグネシウムの生成効率向上等の観点からは、図1及び2に示すように、陽極3aと陰極3bの筒型部分13aとの間に、電源に接続されておらず陽極3a及び陰極3b間への電圧の印加によって分極する一個以上、たとえば二個の筒型複極3cをさらに有することが好ましい。但し、このような筒型複極3cは必須ではない。陽極3a及び陰極3b、場合によってはさらに筒型複極3cを含む電極3は一組とすることもできるが、図2に示すように複数組を並べて設けることができる。この場合、一個の固定陰極部材23bが、互いに隣り合う二個の陰極3bのそれぞれの筒型部分13aの構成要素として使用されることがある。筒型部分13a及び固定陰極部材23bの詳細については後述する。
【0028】
なお、溶融塩電解装置1はさらに、図示しないが、回収室2e等に配置されて、溶融塩浴の温度調整を行う熱交換器としての温度調整管等を備えることがある。
【0029】
このような溶融塩電解装置1では、陰極3bの筒型部分13a及び延長部分13bが、例えば周壁2bの後壁2dの内面付近を取り囲んで配置されていること等により、後壁2dが溶融塩浴中の回収室2e及び電解室2fを循環する溶融塩と接触しにくくなる。それにより、この種の溶融塩電解装置1は、いずれも板状の陽極及び陰極を並べて配置したものに比して、Al23等からなる後壁2dから当該溶融塩へのアルミニウムの溶出が抑えられて、アルミニウム含有量の少ない金属マグネシウムが得られる。アルミニウム含有量が少ない金属マグネシウムは、高純度のスポンジチタンの製造に有用である。
【0030】
他方、溶融塩電解の間は、電解槽2の高温に晒される周壁2bの特に後壁2dが、熱膨張等により、図3に白抜き矢印で示すように陰極3bを上方側に向けるように膨張する。それに伴い、延長部分13bが周壁2b、より具体的には後壁2dに挿入された陰極3bにおいては、延長部分13bは電解槽2の外部で電源に接続されて固定されている一方で、筒型部分13aは上方側への変位が規制されていないことから、上方側に膨張する後壁2dによって陰極3bの固定されていない箇所は上方側に持ち上げられる。このことから、陰極3bは、同図に破線で示すように、筒型部分13aの特に後壁2dから離れて位置する箇所(隔壁5に隣接して位置する箇所)が上方側に持ち上がって斜めに変位する。
【0031】
そして、陰極3bが上記のように変位すると、陰極3bの、後壁2dに隣接して位置する箇所が、電解槽2の深さ方向の下端部側で、図4に示すように、その内側の筒型複極3cに接近し、甚だしくは接触して、そこで短絡が生じる。なお、電極が筒型複極を含まない溶融塩電解装置では、陰極の上記の変位により、陰極の当該箇所が内側の陽極に接触し得る。短絡が生じたときは、溶融塩電解装置1の操業停止及び解体作業が必要になる場合がある。
【0032】
かかる問題に対処するため、この実施形態では、陰極3bの筒型部分13aの、周壁2bの後壁2dに隣接して位置する箇所を、図5に示すように、当該周壁2bの後壁2dに対して接近変位及び離隔変位が可能にした周壁2b側の板状等の可動陰極部材23a(「後壁2d側の可動陰極部材23a」ともいう。)で構成する。このことによれば、後壁2dの上方側への膨張によって陰極3bの筒型部分13aが上述したように斜めに持ち上げられた際に、筒型部分13aの可動陰極部材23aを動かして後壁2dに接近する方向(つまり筒型複極3cから離隔する方向)に変位させることで、陰極3bと筒型複極3cとの間での短絡の発生を抑制することができる。このような可動陰極部材23aの変位のみで短絡を回避できるので、溶融塩電解装置1の操業停止及び解体作業を実施する場合と比べ、作業負荷が著しく軽減される。また、溶融塩電解装置1の連続操業時間も長期化できる。
【0033】
溶融塩電解の開始初期等の、後壁2d側の可動陰極部材23aと筒型複極3cとが接触するおそれのない時期には、当該可動陰極部材23aを後壁2dから離れる方向に変位した位置で筒型複極3cに近づけて配置しておくことにより、それらの極間距離が短くなって電圧の上昇が抑えられ、電力コストの増大を抑制することができる。
【0034】
図示の実施形態では、陰極3bの筒型部分13aは、後壁2d側の可動陰極部材23aを両側から挟んで当該可動陰極部材23aに対して直交もしくは傾斜する方向にそれぞれ延びるとともに、陽極3aを隔てて互い対向して位置する対をなす板状等の固定陰極部材23bを含むものである。それらの固定陰極部材23bのうちの少なくとも一個、図示の例では一方の固定陰極部材23bだけが、後壁2dを貫通して電解槽2の外部へ突き出る延長部分13bに連続するように形成されている。延長部分13bの個数は溶融塩電解装置1の構成等に基づき適宜決定すればよい。よって、場合により、すべての固定陰極部材23bが延長部分13bに連続することもあり得る。
【0035】
また、陰極3bが炭素鋼又はステンレス鋼その他の鋼製である場合、陰極3bの筒型部分13aの、隔壁5に隣接して位置する箇所は、上述した周壁2bの後壁2dに隣接する箇所と同様に、図5に示すように、隔壁5に対する接近変位及び離隔変位の可能な隔壁5側の板状等の可動陰極部材23cで構成することが好ましい。溶融塩電解の継続に伴い、鋼製の陰極3bの筒型部分13aにおける固定陰極部材23bは、熱膨張により、図3に黒塗り矢印で示すように、その前後方向に伸長する変形が生じる。固定陰極部材23bのこの変形により、筒型部分13aの、隔壁5に隣接して位置する箇所は、図4に示すように、その内側の筒型複極3cから離れて位置するようになる。このことは、極間距離の増大により、電圧の上昇、ひいては電力コストの増加を招くことがある。これに対し、筒型部分13aの、隔壁5に隣接して位置する箇所を、隔壁5側の可動陰極部材23cで構成すれば、固定陰極部材23bが伸長したときに、当該可動陰極部材23cを隔壁5から離隔する方向(つまり筒型複極3cに接近する方向)に動かすことにより、極間距離の増大による電圧の上昇を抑制することができる。
【0036】
上述した後壁2d側の可動陰極部材23aは、電解槽2の深さ方向の上端部が、図示のように、溶融塩浴の浴面付近で浴面よりもやや低い位置にあってもよいが、浴面よりも高い位置になるように配置することが好ましい。後壁2d側の可動陰極部材23aの可動操作が容易になるからである。可動陰極部材23aの上端部が浴面よりも低い位置であっても、溶融塩浴を一時的に抜き取れば操作可能である。一方、隔壁5側の可動陰極部材23aの上端部は、溶融金属流路5bを通る金属マグネシウムの流れを過度に阻害しないように、浴面よりもやや低い位置に配置することが好適である。
【0037】
後壁2d側及び隔壁5側の可動陰極部材23a及び23cはいずれも、固定陰極部材23bのそれぞれと電気的に接続可能であるように配置されることが好適である。
【0038】
より具体的には、たとえば、図6(a)に示すように、固定陰極部材23bの可動陰極部材23a側の表面に、その表面から窪んで電解槽2の深さ方向(図6の紙面表裏方向)に延びる溝部24を形成する。この溝部24は、その溝幅Wgが、可動陰極部材23aの端部の幅Wmよりも広いものとする。そして、可動陰極部材23aの端部を固定陰極部材23bの溝部24内に入り込ませて、可動陰極部材23aを配置する。これにより、可動陰極部材23aを、溝部24(図6の左右方向)に沿って、後壁2dに対して接近変位及び離隔変位させることが可能になる。
この場合、可動陰極部材23aの可動域は、溝部24内で後壁2dに対して最も接近変位した位置と最も離隔した位置との間の領域になる。この可動域で可動陰極部材23aと固定陰極部材23bとの接触が確保されると、可動陰極部材23aは当該可動域で固定陰極部材23bと電気的に接続されることになる。このことは、後述の図6(b)及び(c)の例でも同様である。なお電極3の表面には、意図的に絶縁被膜を設ける場合がある。仮に電極3の表面に絶縁被膜が設けられていても、絶縁被膜で被覆された電極3自体には通電される。このため、陰極3bの一部に絶縁被膜が設けられた場合であっても、可動陰極部材23aの可動域での固定陰極部材23bとの電気的接続は確保され得る。
【0039】
ここでは、固定陰極部材23bの溝部24の内側面と可動陰極部材23aの端部寄りの表面との間に、図6(a)に示すように、ストッパー部材25を取出し可能に挟み込んで配置することができる。ストッパー部材25は、可動陰極部材23aを接近変位又は離隔変位がなされた位置で固定するものであり、棒状、板状又は、先端が先細りになるくさび状等の形状とすることができる。なお、このようなストッパー部材を設けない場合であっても、可動陰極部材の端部と溝部との間をある程度狭く設定することにより、操業中の陰極の熱膨張や磁場の働き等で可動陰極部材と固定陰極部材とを適切に接触させて接続することも可能である。
【0040】
ストッパー部材25の材質は、絶縁体とすることもできるが、導体としてもよい。導体のストッパー部材25は、電極3間への電圧の印加時に陰極3bとほぼ等電位になるように、固定陰極部材23bの溝部24の内側面と可動陰極部材23aの表面との間に可能な限り整合する形状とすることが好ましい。また、ストッパー部材25が導体からなる場合、図示の例のように、ストッパー部材25の全体が溝部24内に収まるようにすることにより、溝部24から出っ張ることによる電流の集中(エッジ効果)を抑制することができる。具体的には、ストッパー部材25は、陰極3bと同様の鋼等の金属製、炭素製又は、煉瓦を含むセラミック製とすることができる。
【0041】
ストッパー部材25を、固定陰極部材23bの溝部24の内側面と可動陰極部材23aの表面との間に挿入し、そこに配置しやすくするため、ストッパー部材25と接触する可動陰極部材23aの端部寄りの表面には、ストッパー部材25を通す溝状凹部26を形成することが好ましい。図6(a)では、可動陰極部材23aの端部寄りの一方の表面だけに、溝状凹部26を形成している。
【0042】
一方、図6(b)では、可動陰極部材123aの端部寄りの、互いに反対側を向く一方及び他方の両表面のそれぞれに、溝状凹部126を形成している。可動陰極部材123aの各表面に溝状凹部126を形成したときは、可動陰極部材123aが周壁2bに対して接近変位した位置及び離隔変位した位置のそれぞれで固定する際のストッパー部材25の配置が容易になる。溝状凹部126以外の構造については、図6(a)に示すものとほぼ同様である。
【0043】
図6(c)に示すところでは、固定陰極部材223bに設けられた溝部224の開口部の内側面に、そこでの溝幅を狭める向きに内側面から突出する突起部227を有する。この場合、ストッパー部材225を、溝部224内の突起部227より奥まった位置に配置することで、ストッパー部材225が突起部227により保持される。その他、図6(c)は、図6(a)及び(b)に示す態様で形成していた可動陰極部材23a、123aの溝状凹部26、126を設けていないことを除いて、図6(a)及び(b)に示すものと実質的に同様である。
【0044】
図6では、周壁2b側の可動陰極部材23a、123a、223aの一方の端部しか示していないが、他方の端部及び、隔壁5側の可動陰極部材23cの各端部についても、上述した一方の端部と実質的に同様の構造とすることができる。
【0045】
陰極3bの筒型部分13aにおける固定陰極部材23bの周壁2b側の可動陰極部材23a側の表面に設ける溝部24は、図7に示すように、その固定陰極部材23bの、電解槽2の深さ方向(図7の上下方向)の下端部側で終端させてもよい。この場合、溝部24の下端面を載置面28として、その載置面28上に可動陰極部材23aを置くことが可能になる。これはすなわち、陰極3bの筒型部分13aが、周壁2b側の可動陰極部材23aを下方側から支持する載置面28を有するということができる。なお、隔壁5側の可動陰極部材23cも同様にして、筒型部分13aの固定陰極部材23bに設けられ得る図示しない載置面上に置いてもよい。
【0046】
あるいは、図8に示す他の実施形態のように、周壁302b側の可動陰極部材323aは、後壁302dの下端部を電解室302f側に突出させて設けた載置面328上に置くこともできる。この場合、電解槽の周壁302bが、周壁302b側の可動陰極部材323aを下方側から支持する載置面328を有する。
【0047】
以上に述べたような溶融塩電解装置1を用いて、塩化マグネシウムを含む溶融塩浴で溶融塩電解を行う場合、溶融塩浴に含ませる塩化マグネシウムとしては、クロール法で副次的に生成されるものを使用可能である。また、溶融塩浴を構成する溶融塩には、塩化マグネシウム(MgCl2)の他、支持塩を含ませることがある。この支持塩は、塩化マグネシウムと混合した際に晶出温度を低下させ、かつ、粘度を低下させる電解質を意味する。支持塩は具体的には、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)、フッ化マグネシウム(MgF2)及びフッ化カルシウム(CaF2)からなる群から選択される少なくとも一種とすることができる。晶出温度とは、二種類以上の電解質からなる溶融塩を液体の状態から温度を下げたときに、ある一種類の電解質成分が固体として析出し始める晶出という現象が起きる温度をいう。仮に溶融塩が一種類だけである場合、液体の状態から温度を下げたときに、凝固点で全体が固体となるため、晶出温度は凝固点、すなわち融点に相当する。なお、電気分解で塩化マグネシウムを優先的に分解させるため、支持塩としては、塩化マグネシウムより分解電圧が高い電解質を用いることが一般的である。
【0048】
この溶融塩電解では、電解室2fでの塩化マグネシウムの電気分解により、MgCl2→Mg+Cl2の反応に基づいて、陰極3bの筒型部分13aの表面で還元反応により溶融金属である金属マグネシウム(Mg)が生成されるとともに、陽極3aの表面で酸化反応により塩素(Cl2)ガスが発生する。
【0049】
より詳細には、溶融塩浴の対流により、図1に示すように、溶融塩が回収室2eから底壁2c側の溶融塩循環路5aを経て電解室2fに流動する。電解室2fでは、溶融塩中の塩化マグネシウムが電気分解され、金属マグネシウムが生成される。そして、この金属マグネシウムは、隔壁5の浴面側の溶融金属流路5bを通って回収室2eに流入する。その後、溶融塩に対する比重の小さい金属マグネシウムは、回収室2eの浅い箇所に浮上してそこに溜まることになる。回収室2eで浮上した金属マグネシウムは、図示しないポンプ等により回収することができる。これにより、塩化マグネシウムから金属マグネシウムを製造することができ、また、それとともに塩素ガスが得られる。
【0050】
溶融塩電解で得られた金属マグネシウムは、金属チタンを製造するクロール法における四塩化チタンの還元に、また塩素ガスは、チタン鉱石の塩化にそれぞれ用いることができる。
【実施例
【0051】
次に、この発明の溶融塩電解装置を試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
【0052】
実施例1では、図1、2及び5に示すような陰極の筒型部分が周壁側及び隔壁側の可動陰極部材を有する溶融塩電解装置を用いて、溶融塩電解を行った。この溶融塩電解装置は、陽極、二個の筒型複極及び陰極からなる電極を5組有するものとした。
実施例2では、隔壁側の可動陰極部材を固定陰極部材に一体に取り付けて、隔壁側の可動陰極部材のみ可動できないようにしたことを除いて、実施例1と同様の構造を有する溶融塩電解装置を用いて溶融塩電解を行った。
いずれの実施例1及び2も、陰極の筒型部分及び複極は、平面視の内外輪郭形状がともに、後壁に隣接する位置及び隔壁側に隣接する位置にそれぞれ短辺を有する長方形状であるものとした。陰極の筒型部分は、当該長方形の短辺(可動陰極部材の長さ)が0.3m、長辺(固定陰極部材の長さ)が1.0mであり、電解槽の深さ方向に沿う高さが0.7mであった。
【0053】
比較例1では、いずれも並び順で、平板状の陰極、二枚の複極、陽極、二枚の複極、および平板状の陰極を一組とする電極を5組並べたものとしたことを除いて、実施例1と同様の溶融塩電解装置を用いて溶融塩電解を行った。比較例1の陰極の長さは1.0m、高さは0.7mとした。
比較例2では、周壁側及び隔壁側の可動陰極部材の両方を可動できないようにしたことを除いて、実施例1と同様の構造を有する溶融塩電解装置を用いて溶融塩電解を行った。
比較例3では、周壁側及び隔壁側の可動陰極部材の両方を可動できないようにしたこと、並びに、陰極の、後壁側に隣接して位置する箇所を、その内側の複極からさらに3cm離して配置したことを除いて、実施例1と同様の構造を有する溶融塩電解装置を用いて溶融塩電解を行った。
【0054】
実施例1及び2は、溶融塩電解の開始時の陰極-複極間、複極-複極間及び複極-陽極間の距離を1cmとした。その後、溶融塩電解の途中で可動陰極部材の少なくとも一方を変位させたので、その箇所での陰極-複極間の距離が変化した。なお、この距離は、平面視の長方形状の陰極の筒型部分ないし複極における各辺の中央部で、その辺に直交する方向に沿って測定した距離とした。
比較例1及び2は、陰極-複極間、複極-複極間及び複極-陽極間の距離を1cmとした。
比較例3は、後壁側に隣接して位置する陰極箇所を複極からさらに3cm離して位置させたので、その箇所での陰極-複極間の距離は4cmであった。陰極の他の箇所における陰極-複極間の距離並びに、複極-複極間及び複極-陽極間の距離は、比較例1及び2と同様とした。
【0055】
いずれの溶融塩電解装置も、電解槽の周壁、底壁及び隔壁がAl23の含有率が95%以上の煉瓦からなり、電解室が2m3、回収室が1m3であった。溶融塩浴の浴組成については、MgCl2、CaCl2、NaCl、MgF2がそれぞれ質量比で20%、30%、49%、1%からなる溶融塩とし、電流密度0.48A/cm2で通電し、1年間の期間にわたって操業を行った。
【0056】
実施例1及び2並びに比較例1~3のそれぞれについて、溶融塩電解の間における短絡の発生の有無、電流効率、並びに、溶融塩電解で生成された金属マグネシウム中のアルミニウム含有量を確認した。その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
なお、表1中、電流効率は、下記の式により算出したものであり、比較例1の電流効率を100とし、実施例1及び2並びに比較例2及び3を比較例1の電流効率に対する相対値で示したものである。
電流効率=電解槽から回収した金属マグネシウム質量/理論金属マグネシウム生産量
理論金属マグネシウム生産量は、ファラデーの法則から求める金属の理論生成量であり、以下の式により算出する。
理論金属マグネシウム生産量=((電流(A)×通電時間(秒))/(マグネシウムイオンの電荷数n×ファラデー定数F))×(電気分解回数N)×マグネシウムの原子量
【0059】
表1より、比較例2では短絡が発生したのに対し、実施例1及び2では、周壁側の可動陰極部材を変位させたので短絡が発生しなかったことが解かる。
比較例2では短絡が発生したことから、短絡発生時から溶融塩電解装置が使用できなくなり寿命が短かった。一方、実施例1及び2では、隔壁側の可動陰極部材を動かしたことによって短絡が発生しなかったので、溶融塩電解装置の寿命が比較例2のものに対して2倍ほど長かった。
【0060】
また、表1から解かるように、筒型を含む陰極及び複極を用いた場合は、板状の陰極及び複極を用いた比較例1に比して、電流効率が向上するとともに、溶融塩電解で得られる金属マグネシウム中のアルミニウム含有量が少なくなった。なお、比較例3は、実施例1及び2と比較すると、陰極の、後壁側に隣接して位置する箇所が常に、その内側の複極から離れて位置していたことにより、実施例1及び2ほどの高い電流効率が得られなかった。


【符号の説明】
【0061】
1 溶融塩電解装置
2 電解槽
2a 内部スペース
2b、302b 周壁
2c 底壁
2d、302d 後壁
2e 回収室
2f 電解室
3 電極
3a 陽極
3b、303b 陰極
3c 筒型複極
4 蓋部材
5 隔壁
5a 溶融塩循環路
5b 溶融金属流路
13a、313a 陰極の筒型部分
13b、313b 陰極の延長部分
23a、123a、223a、323a 周壁側の可動陰極部材
23b、123b、223b、323b 固定陰極部材
23c、323c 隔壁側の可動陰極部材
24、124、224 溝部
25、125、225 ストッパー部材
26、126 溝状凹部
227 突起部
28、328 載置面
Wg 溝部の溝幅
Wm 可動陰極部材の端部の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8