(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】修正された構造を有するマウスピースを有するエアロゾル発生物品
(51)【国際特許分類】
A24D 3/04 20060101AFI20240527BHJP
A24D 1/20 20200101ALI20240527BHJP
A24F 40/40 20200101ALI20240527BHJP
【FI】
A24D3/04
A24D1/20
A24F40/40
(21)【出願番号】P 2020520120
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2018082888
(87)【国際公開番号】W WO2019106040
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】エメット ロバート
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-011170(JP,A)
【文献】米国特許第03805801(US,A)
【文献】英国特許出願公開第02102271(GB,A)
【文献】登録実用新案第3208926(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0164654(US,A1)
【文献】特開昭57-132873(JP,A)
【文献】特表2017-506890(JP,A)
【文献】米国特許第04559955(US,A)
【文献】国際公開第2016/107762(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/125846(WO,A1)
【文献】特開昭52-057398(JP,A)
【文献】特開昭59-063179(JP,A)
【文献】特開2001-120249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/04
A24D 1/20
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置で使用するためのエアロゾル発生物品であって、
エアロゾル発生基体と、前記エアロゾル発生基体の下流に配置されたマウスピースとを備え、
前記マウスピースの周辺部が空気の一つ以上の閉じたポケットを含む、
エアロゾル発生物品。
【請求項2】
前記マウスピースがマウスピースセグメントを備え、空気の一つ以上の閉じた前記ポケットが前記マウスピースセグメントの前記周辺部に配置されている、請求項1に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項3】
前記マウスピースセグメントが前記マウスピースの口側端に配置されている、請求項2に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項4】
前記マウスピースセグメントが実質的に円筒状である、請求項2または請求項3に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項5】
前記マウスピースセグメントが、前記マウスピースセグメントの内部領域を形成する第一の構成要素と、前記マウスピースセグメントの前記周辺部を形成する第二の構成要素とを備える、請求項2~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項6】
前記第一の構成要素がガス浸透性である、請求項5に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項7】
前記第一の構成要素が繊維質の濾過材料を含む、請求項5または請求項6に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項8】
前記マウスピースが前記マウスピースセグメントを囲むラッパーをさらに備え、
前記一つ以上のポケットが、長軸方向に延びるチャネルの形態で提供されていて、各チャネルが、前記マウスピースセグメントの外表面の長軸方向に延びる溝と、前記
マウスピースセグメントを囲む
前記ラッパーの上にある部分の内表面との間に画定されている、請求項2~7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項9】
それぞれの長軸方向に延びる溝に、前記溝を充填するための、かつそれぞれの上流端および下流端で前記チャネルを閉じるための第一および第二の間隙を介した遮断部材が提供されている、請求項8に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項10】
第一の長軸方向に延びる溝に、第一および第二の間隙を介した遮断部材が提供されていて、第二の長軸方向に延びる溝に、それぞれの第一および第二の間隙を介した遮断部材が提供されていて、
前記第一の溝の前記第一および第二の遮断部材が、前記第二の溝の前記第一および第二の遮断部材の位置とは異なる長軸方向の位置に位置付けられている、請求項9に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項11】
長軸方向に延びる溝の少なくとも一部が、前記マウスピースセグメントの長さの一部に沿ってのみ延びる、請求項6または7に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項12】
前記マウスピースが、前記マウスピースセグメントを囲むラッパーをさらに備え、前記マウスピースセグメントの
外表面が、前記
マウスピースセグメントを囲む
前記ラッパーの下にある一つ以上の陥凹したくぼみを含み、
前記一つ以上のポケットのそれぞれが、前記陥凹したくぼみのうちの一つと、前記
マウスピースセグメントを囲む
前記ラッパーの上にある部分の
内表面との間に画定されている、請求項2~7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項13】
前記マウスピースセグメントを囲む前記ラッパーが1000コレスタ単位未満の空隙率を有する、請求項8~12のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項14】
前記一つ以上の閉じたポケットの合計した容積が少なくとも20立方ミリメートルである、請求項1~13のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項15】
前記エアロゾル発生物品が、45ミリメートル以下の長さを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修正された構造を有するマウスピースを有するエアロゾル発生物品に関する。本発明は特に、たばこなどのエアロゾル形成基体が燃焼するのではなく加熱されるエアロゾル発生物品に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
フィルター紙巻たばこはエアロゾル発生物品の一例である。フィルター紙巻たばこは典型的に、紙ラッパーで包囲されたたばこカットフィラーのロッドと、包まれたたばこロッドと端と端を接した関係で整列され、チッピングペーパーによってたばこロッドに取り付けられた円筒状フィルターとを備える。従来のフィルター紙巻たばこにおいて、フィルターは、多孔性のプラグラップ内に包まれた酢酸セルローストウのプラグから成る場合がある。主流煙の粒子状構成成分およびガス状構成成分を除去するために濾過材料の二つ以上のセグメントを備える複数構成要素フィルターを有するフィルター紙巻たばこも周知である。口側端にくぼみを有するエアロゾル発生物品も提案されてきた。
【0003】
たばこなどのエアロゾル形成基体が燃焼するのではなく加熱される多くのエアロゾル発生物品も、当業界で提案されてきた。加熱式エアロゾル発生物品では、エアロゾル形成基体を加熱することによってエアロゾルが発生される。周知の加熱式エアロゾル発生物品には、例えばエアロゾルが電気的加熱によるか、または可燃性燃料要素もしくは熱源からエアロゾル形成基体への熱の伝達によって発生されるエアロゾル発生物品が含まれる。使用中、揮発性化合物は、熱源からの熱伝達によってエアロゾル形成基体から放出され、エアロゾル発生物品を通して引き出された空気中に同伴される。放出された化合物は冷めるにつれて凝縮してエアロゾルを形成し、これが消費者によって吸い込まれる。また、ニコチン含有エアロゾルが、燃焼を用いずに、また一部の場合には加熱を用いずに、例えば化学反応によって、たばこ材料、たばこ抽出物、またはその他のニコチン供与源から発生されるエアロゾル発生物品も周知である。
【0004】
物品の外部表面の一つ以上の部分など、エアロゾル発生物品の特定の部分において許容可能な温度を維持することが望ましい場合がある。物品のこうした一つ以上の部分には、使用中にユーザーの唇または指と接触する可能性が高い一部分または複数の部分を含みうる。
【0005】
エアロゾル発生物品の特定の部分において許容可能な温度に維持する一つの周知の方法は、エアロゾルを冷却することである。エアロゾルは、エアロゾル発生物品上の特定の位置での通気穴を含めることによって冷却されうる。こうした穴は、エアロゾルが消費者に達する前に、外部空気がエアロゾルを希釈および冷却することを可能にする。別の例として、一部のタイプのエアロゾル発生物品において、エアロゾル冷却要素はエアロゾル形成基体の下流に含まれうる。エアロゾル冷却要素は、エアロゾルがエアロゾル冷却要素を通過する際に冷却されるように、大きい表面積を有する材料シートの集合体であってもよい。
【0006】
しかし、こうした冷却機構は必ずしも適切ではない場合がある。例えば、エアロゾルを冷却しようとする時、希釈の追加的な効果を有することは必ずしも適切ではない場合がある。さらに、エアロゾル発生物品内の空間を専用のエアロゾル冷却要素に割り当てることは、必ずしも適切ではない場合がある。従って、エアロゾルが物品を通過する際にエアロゾル発生物品の特定の部分を過度に加熱することを防止する、改善されたまたは代替的な方法を提供することが望ましい。
【0007】
本発明の第一の態様によると、エアロゾル発生基体と、エアロゾル発生基体の下流端に配置されたマウスピースとを備え、マウスピースの周辺部が空気の一つ以上の閉じたポケットを備える、エアロゾル発生物品が提供されている。
【0008】
マウスピースの周辺部に空気の一つ以上の閉じたポケットを提供することによって、エアロゾル発生物品に断熱が提供されうる。断熱は、エアロゾルがエアロゾル発生物品を通過する際に、エアロゾルからエアロゾル発生物品の外表面に伝達される熱の量を低減することができる。これは有利なことに、エアロゾルがエアロゾル発生物品を通過する際に、使用中にユーザーの唇または指と接触する可能性が高い物品の部分が、エアロゾルによって過度に加熱される可能性が低いことを意味する。その結果、消費者は、例えば唇または指で物品に接触する時に、過度に高い温度を感じることなく、本発明による物品を消費することができる。
【0009】
「閉じたポケット」という用語は本明細書において、空気のポケットが一つ以上の周辺の壁によって完全に囲まれていることを示すために使用されている。周辺の壁はポケット内に空気を保持し、空気がポケット内にまたはポケットから引き出されるのを防止する。特に、周辺の壁は、ユーザーがエアロゾル発生物品を吸う時に、空気がポケット内にまたはポケットから引き出されることを防止する。穿孔などの穴は周辺の壁に提供されていない。一つ以上の周辺の壁のそれぞれは約1000コレスタ単位未満の空隙率を有することが好ましく、約500コレスタ単位未満であることがより好ましく、約100コレスタ単位未満であることがさらにより好ましい。空隙率は100コレスタ単位の低さとしうる。加えて、または別の方法として、空隙率は約1コレスタ単位を超えてもよい。
【0010】
ポケットを閉じたポケットとして形成することによって、ポケット内の空気は、エアロゾルが物品を通過する際にエアロゾルと混合することができない。これは、ポケット内の空気が、物品を通して流れるエアロゾルを希釈する働きをしないことを意味する。代わりにエアロゾルは、物品の内部領域を通って、または閉じたポケットを含まない周辺部の部分を通って、またはこれらの両方を通って流れることができる。従って、閉じたポケットの冷却機構は、エアロゾル発生物品の既存の構成要素に組み込まれることができ、それ故にエアロゾル発生物品内に提供されている専用のエアロゾル冷却要素の必要性を低減するまたは無くすことができる。
【0011】
本明細書で使用される「上流」および「下流」という用語は、本発明によるエアロゾル発生物品の特徴の、使用中にマウスピースを通してエアロゾル発生基体から引き出されたエアロゾルの方向に対する相対的な位置を説明するために使用される。例えば、くぼみが口側端セグメントの上流にあるマウスピースにおいて、エアロゾルはまずくぼみを通して、次に口側端セグメントを通して引き出される。
【0012】
「内表面」という用語は本明細書全体を通して、エアロゾル発生物品の内部の方を向いているエアロゾル発生物品の構成要素の表面を指すために使用される。一方で「外表面」という用語は本明細書全体を通して、物品の外部の方を向いている物品の構成要素の表面を指すために使用される。例えば、マウスピースセグメントを囲むラッパーは、エアロゾル発生物品の外部に向いている外表面と、マウスピースセグメントの方を向いている内表面を備える。
【0013】
「長軸方向の」という用語は本明細書で使用される場合、エアロゾル発生物品の長さに平行な方向を指す。
【0014】
「空気」という用語は本明細書において、室温(23℃)で気体である任意の組成物を示すために使用される。従って、「空気」という用語は本明細書において「気体」という用語と互換的に使用されうる。さらに、気体の代わりに、またはそれに加えて、断熱を提供するために、本発明の一つ以上のポケットに液体を使用することができる。
【0015】
よって、本発明の第二の態様は、エアロゾル発生基体と、エアロゾル発生基体の下流に配置されたマウスピースとを備え、マウスピースの周辺部が流体の一つ以上の閉じたポケットを備える、エアロゾル発生物品を提供する。流体は気体または液体であってもよい。
【0016】
マウスピースはマウスピースセグメントを備えうる。空気の一つ以上の閉じたポケットは、マウスピースセグメントの周辺部に配置されうる。マウスピースセグメントは、少なくとも一つの他の目的のために提供されているセグメントであってもよい。例えば、マウスピースセグメントはフィルターセグメントであってもよい。これは、空気の一つ以上のポケットが既存のタイプのセグメント内に組み込まれることを可能にし、それ故にマウスピース内の専用のエアロゾル冷却要素の必要性を低減するまたは無くすことができる。
【0017】
空気の閉じたポケットは、マウスピース上の任意の長軸方向の位置に提供されうる。しかし、空気の一つ以上の閉じたポケットは、少なくともマウスピースの口側端に配置されることが好ましい。従って、空気の一つ以上の閉じたポケットがマウスピースセグメントの周辺部に配置されている場合、マウスピースセグメントはマウスピースの口側端に配置されていることが好ましい。これは有利なことに、エアロゾル発生物品の使用時にユーザーの唇および指の一方または両方と接触する可能性が最も高い物品の一領域または複数領域に断熱が位置しうることを意味する。空気の一つ以上のポケットは、物品の口側端から12ミリメートル以内に配置されうる。
【0018】
マウスピースセグメントは実質的に円筒状であってもよい。マウスピースセグメントはプラグの形態であってもよい。マウスピースセグメントは少なくとも約5ミリメートルの長さを有しうる。マウスピースセグメントは約15ミリメートル以下の長さを有しうる。
【0019】
マウスピースセグメントは、マウスピースセグメントの内部領域を形成する第一の構成要素と、マウスピースセグメントの周辺部を形成する第二の構成要素とを備えうる。第一の構成要素は、ガス浸透性であってもよい。第一の構成要素は繊維質材料を含みうる。繊維質材料は酢酸セルロース繊維を含んでもよい。
【0020】
マウスピースセグメントは、長さ1ミリメートル当たり約0.4mm H2O~約3mm H2Oの引き出し抵抗を有しうる。エアロゾル発生物品は、長さ1ミリメートル当たり約0.6mm H2O~約1.5mm H2Oの総引き出し抵抗、または長さ1ミリメートル当たり約0.8mm H2O~約1.2mm H2Oの総引き出し抵抗を有しうる。
【0021】
マウスピースは、マウスピースセグメントを囲むラッパーをさらに備えてもよく、一つ以上のポケットは、マウスピースセグメント内の長軸方向に延びるチャネルの形態で提供されてもよい。各チャネルは、マウスピースセグメントの外表面に長軸方向に延びる溝と、周囲を囲むラッパーの上にある部分の内表面との間に画定されうる。
【0022】
それぞれの長軸方向に延びる溝には、それぞれの溝を充填するための、かつそれぞれの上流端および下流端でチャネルを閉じるための第一および第二の間隙を介した遮断部材が提供されうる。従って、遮断部材は、空気のポケットが完全に閉じていることを確実にし、従って空気がエアロゾルと混合されることを防止するのに役立ちうる。
【0023】
一部の実施形態において、第一の遮断部材は、複数の長軸方向に延びる溝を横切って延びる単一要素(材料の単一の細片など)として提供されうる。こうした実施形態において、各溝の第一の遮断部材は、その他の溝のそれぞれの第一の遮断と同じ長軸方向の位置を有してもよい。同様に、第二の遮断部材は、複数の長軸方向に延びる溝を横切って延びる単一要素(材料の単一の細片など)として提供されうる。こうした実施形態において、各溝の第二の遮断部材は、その他の溝のそれぞれの第二の遮断と同じ長軸方向の位置を有してもよい。
【0024】
一部の実施形態において、第一の遮断部材は、それぞれの溝内の個別要素として提供されている。例えば、第一の長軸方向に延びる溝には、第一および第二の間隙を介した遮断部材が提供されてもよく、第二の長軸方向に延びる溝には、第一の長軸方向に延びる溝の第一および第二の間隙を介した閉塞部材とは異なる、それぞれの第一および第二の長軸方向に延びる溝が提供されてもよい。こうした実施形態において、第一の溝の第一および第二の遮断部材は、第二の溝の第一および第二の遮断部材の位置とは異なる長軸方向の位置に位置付けられてもよい。こうした配設は、マウスピースセグメントが連続的なロッドから形成される時に有利である。特に、こうした配設は、連続的なロッドが個別の位置で切断されてマウスピースセグメントを形成する時に有利である。これは、ロッドの長さに沿った任意の位置でロッドからセグメントが切断されることをこの配設が可能にし、依然として前記セグメントに空気の閉じたポケットを形成できる可能性が高いためである。言い換えれば、この配設は、それぞれのセグメントを形成するロッドの切断の位置で遮断部材の位置を登録することの重要性を低減する、またはその必要性を無くす。
【0025】
一部の実施形態において、長軸方向に延びる溝の少なくとも一部は、マウスピースセグメントの長さの一部に沿ってのみ延びる。例えば、マウスピースセグメントの上流端、または下流端、または上流端と下流端の両方は、長軸方向に延びる溝を備えない場合がある。こうした実施形態において、マウスピースセグメントの上流端および下流端のそれぞれまたは両方は、空気がポケットから抜け出るのを防止するバリアを形成しうる。
【0026】
一部の実施形態において、マウスピースは、マウスピースセグメントを囲むラッパーをさらに備え、マウスピースセグメントの外表面は、周囲を囲むラッパーの下にある一つ以上の陥凹したくぼみを備える。一つ以上のポケットのそれぞれは、陥凹したくぼみのうちの一つと、周囲を囲むラッパーの上にある部分の内表面との間に画定されている。こうした実施形態は有利なことに、追加的な遮断部材の提供を必要とせず、代わりに空気の閉じたポケットを、マウスピースセグメントの外表面と上にあるラッパーとの間に単に形成することができる。
【0027】
ラッパーがマウスピースセグメントを囲む実施形態において、前記ラッパーは、約1000コレスタ単位未満の空隙率を有してもよく、約500コレスタ単位未満の空隙率を有することがより好ましく、約100コレスタ単位未満の空隙率を有することがさらにより好ましい。空隙率は100コレスタ単位以下または20コレスタ単位以下であってもよい。加えて、または別の方法として、空隙率は約1コレスタ単位を超えてもよい。こうした低空隙率ラッパーは、閉じたポケットから空気が抜け出るのを防ぐのに特に有効でありうる。
【0028】
一つ以上の閉じたポケットの合計した容積は、少なくとも約10立方ミリメートルであってもよく、少なくとも約20立方ミリメートルであることがより好ましい。こうした値は、約5ミリメートル~約10ミリメートルの長さ、より好ましくは約7ミリメートルの長さを有するマウスピースセグメントに特に適切でありうる。
【0029】
一つ以上の閉じたポケットの合計した容積は、マウスピースセグメントの長さ1ミリメートル当たり少なくとも約1立方ミリメートルであることが好ましく、マウスピースセグメントの長さ1ミリメートル当たり少なくとも約2.5立方ミリメートルであることがより好ましい。
【0030】
一つ以上の閉じたポケットの合計した表面積は、少なくとも約45平方ミリメートルであってもよく、少なくとも約70平方ミリメートルであることがより好ましい。こうした値は、約5ミリメートル~約10ミリメートルの長さ、より好ましくは約7ミリメートルの長さを有するマウスピースセグメントに特に適切でありうる。
【0031】
一つ以上の閉じたポケットの合計した表面積は、マウスピースセグメントの長さ1ミリメートル当たり少なくとも約6平方ミリメートルであることが好ましく、マウスピースセグメントの長さ1ミリメートル当たり少なくとも約10平方ミリメートルであることがより好ましい。
【0032】
一部の実施形態において、一つ以上の閉じたポケットは、少なくとも10個の閉じたポケットを含みうる。一部の実施形態において、一つ以上の閉じたポケットは、少なくとも15個の閉じたポケットを含みうる。一部の実施形態において、一つ以上の閉じたポケットは、少なくとも20個の閉じたポケットを含みうる。こうした値は、約5ミリメートル~約10ミリメートルの長さ、より好ましくは約7ミリメートルの長さを有するマウスピースセグメントに特に適切でありうる。
【0033】
一部の実施形態において、マウスピースセグメントは、マウスピースセグメントの長さ1ミリメートル当たり、少なくとも1つの閉じたポケットを備え、マウスピースセグメントはマウスピースセグメントの長さ1ミリメートル当たり、少なくとも3つの閉じたポケットを備えることがより好ましい。
【0034】
一つ以上の閉じたポケットは、マウスピースセグメントの周囲の少なくとも50パーセントの周りに配置されることが好ましく、マウスピースセグメントの周囲の少なくとも約80パーセントの周りに配置されることがより好ましい。一部の実施形態において、一つ以上の閉じたポケットは、マウスピースセグメントの周囲全体の周りに配置されている。
【0035】
一つ以上のポケットの断熱効果は、長さが比較的短いエアロゾル発生物品の状況において特に有益である。こうした物品には、たばこなどのエアロゾル形成基体が燃焼されるのではなく加熱されるエアロゾル発生物品を含む。これは、物品が比較的短い時にエアロゾルが物品を通して移動する距離がより短く、それ故に物品が通過する際に冷却する機会が少なくなるためである。よって、エアロゾル発生物品は約70ミリメートル以下の長さを有することが好ましく、約45ミリメートル以下の長さを有することがより好ましい。
【0036】
本発明のエアロゾル発生物品はエアロゾル形成基体を含む。本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体に関する。こうした揮発性化合物は、エアロゾル形成基体を加熱することによって放出されてもよい。エアロゾル形成基体は、担体または支持体の上に吸着、被覆、含浸またはその他の方法で装填されてもよい。エアロゾル形成基体は好都合なことに、エアロゾル発生物品または喫煙物品の一部であってもよい。
【0037】
本発明のエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生装置で使用するために構成されてもよい。本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」は、エアロゾル形成基体と相互作用してエアロゾルを発生する装置に関する。本発明のエアロゾル発生物品はそれ自体、熱源と、熱源から物品のエアロゾル形成基体に熱を伝達するための少なくとも一つの熱伝導性要素とを備えうる。
【0038】
本発明のエアロゾル発生物品は、喫煙物品(フィルター付き紙巻たばこまたは他の喫煙物品など)であってもよく、その中でエアロゾル発生基体は、燃焼されて煙を形成するたばこ材料を含む。従って、上述の実施形態のうちのいずれかにおいて、エアロゾル発生基体はたばこロッドを備えてもよい。さらに、上述の実施形態のうちのいずれかにおいて、マウスピースはフィルターであってもよい。こうした実施形態において、フィルターはチッピングペーパーによってたばこロッドに固定されてもよい。
【0039】
マウスピースは、マウスピースセグメントの上流に配置された一つ以上のセグメントを備えうる。一つ以上のセグメントは、支持要素、エアロゾル冷却要素、およびフィルターセグメントのうちの一つ以上を含みうる。
【0040】
支持要素はエアロゾル形成基体のすぐ下流に位置することができ、またエアロゾル形成基体に隣接することができる。支持要素は任意の適切な材料または材料の組み合わせから形成されてもよい。例えば、支持要素は、酢酸セルロース、ボール紙、捲縮した紙(捲縮した耐熱紙または捲縮した硫酸紙など)、および高分子材料(低密度ポリエチレン(LDPE)など)から成る群から選択される一つ以上の材料から形成されてもよい。好ましい実施形態において、支持要素はセルロースアセテートから形成されている。支持要素は中空の管状要素を備えてもよい。好ましい実施形態において、支持要素は中空のセルロースアセテートチューブを備える。支持要素はエアロゾル発生物品の外径とほぼ等しい外径を有することが好ましい。支持要素は、およそ5ミリメートル~およそ12ミリメートルの外径、例えばおよそ5ミリメートル~およそ10ミリメートルの外径、またはおよそ6ミリメートル~およそ8ミリメートルの外径を有してもよい。好ましい実施形態において、支持要素は7.2ミリメートル±10%の外径を有する。支持要素は、およそ5ミリメートル~およそ15mmの長さを有してもよい。好ましい実施形態において、支持要素は、およそ8ミリメートルの長さを有する。
【0041】
エアロゾル冷却要素はエアロゾル形成基体の下流に位置することができ、例えばエアロゾル冷却要素は支持要素のすぐ下流に位置することができ、および支持要素と隣接することができる。
【0042】
本明細書で使用される「エアロゾル冷却要素」は、使用中にエアロゾル形成基体から放出された揮発性化合物によって形成されたエアロゾルが、ユーザーによって吸入される前にエアロゾル冷却要素を通過し、かつエアロゾル冷却要素によって冷却されるように、エアロゾル形成基体の下流に位置するエアロゾル発生物品の構成要素を指す。エアロゾル冷却要素は、エアロゾル形成基体とマウスピースの間に位置付けられていることが好ましい。エアロゾル冷却要素は広い表面積を有するが、低い圧力降下を生じさせる。高い圧力降下を生じさせるフィルターおよびその他のマウスピース(例えば繊維の束で形成されたフィルター)は、エアロゾル冷却要素とは見なされない。エアロゾル発生物品内のチャンバーおよびくぼみは、エアロゾル冷却要素であるとは見なされない。
【0043】
本明細書で使用される「ロッド」という用語は、実質的に円形、長円形、または楕円形の断面の概して円筒状の要素を示すために使用される。
【0044】
複数の長軸方向に延びるチャネルは、チャネルを形成するために捲縮、ひだ付け、集合、または折り畳みの加工がなされているシート材料によって画定されうる。複数の長軸方向に延びるチャネルは、複数のチャネルを形成するために、ひだ付け、集合、または折り畳みの加工がなされている単一のシートによって画定されうる。シートはまた、捲縮されていてもよい。別の方法として、複数の長軸方向に延びるチャネルは、複数のチャネルを形成するために捲縮、ひだ付け、集合、または折り畳みの加工がなされている複数のシートによって画定されうる。
【0045】
本明細書で使用される「シート」という用語は、その厚さよりも実質的に大きい幅および長さを有する薄層状の要素を意味する。
【0046】
本明細書で使用される「長軸方向」という用語は、ロッドの円筒軸に沿って、またはそれと平行に延びる方向を意味する。
【0047】
本明細書で使用される「捲縮」という用語は、複数の実質的に平行した隆起またはコルゲーションを有するシートを意味する。エアロゾル発生物品が組み立てられた時に、実質的に平行な隆起またはコルゲーションは、ロッドに対して長軸方向に延びることが好ましい。
【0048】
本明細書で使用される「集合」、「ひだ付け」、または「折り畳み」という用語は、材料シートがロッドの円筒軸に対して実質的に横方向に渦巻き状にされるか、折り畳まれるか、または別の方法で圧縮または収縮されていることを意味する。シートは集合、ひだ付け、または折り畳みの前に捲縮されうる。シートは事前に捲縮されることなく、集合され、ひだ付けされ、または折り畳まれうる。
【0049】
一部の実施形態において、エアロゾル発生物品はエアロゾル冷却要素を有しない場合がある。この場合、マウスピースセグメントは、エアロゾル形成基体のすぐ下流に、または支持要素(存在する場合)のすぐ下流に位置しうる。くぼみは、マウスピースセグメントとエアロゾル形成基体の間の、またはマウスピースセグメントと支持要素(存在する場合)の間のエアロゾル発生物品の中に提供されうる。くぼみは、エアロゾル発生基体からマウスピースセグメントに、または支持要素(存在する場合)からマウスピースセグメントに延びることが好ましい。
【0050】
マウスピースは、エアロゾル形成基体に直接隣接していてもよい。マウスピースは、エアロゾル形成基体の少なくとも下流部分に固定されてもよい。例えば、チッピングラッパーなどのラッパーは、マウスピースおよびエアロゾル形成基体の少なくとも下流端部分を囲み、マウスピースおよびエアロゾル形成基体を接合しうる。
【0051】
当然のことながら、本発明の一態様に関して上述した好ましい特徴は、本発明の他の態様にも適用されてもよい。
【0052】
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生物品の概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第二の実施形態によるエアロゾル発生物品の概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第三の実施形態によるエアロゾル発生物品のマウスピースの斜視図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の第四の実施形態によるエアロゾル発生物品のマウスピースの斜視図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の第五の実施形態によるエアロゾル発生物品のマウスピースセグメントの外表面の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生物品1物品を図示したものである。エアロゾル発生物品1は4つのセグメントを備える。セグメントは、エアロゾル発生基体2と、支持要素3と、エアロゾル冷却要素4と、セルロースアセテート繊維を含むフィルターセグメントの形態のマウスピースセグメント5とである。
【0055】
四つのセグメントは連続的に、かつ同軸に整列して配設されていて、紙巻たばこ用紙6によって組み立てられてロッドを形成する。ロッドは、ユーザーが使用中に自分の口の中に挿入する口側端7と、口側端7に対してロッドの反対側の端に位置する遠位端8とを有する。口側端7と遠位端8の間に位置するセグメントは、口側端7の上流にある、または別の方法として、遠位端8の下流にあると説明することができる。ロッドは組み立てられた時に、長さ52ミリメートルであり、7.2ミリメートルの直径を有する。
【0056】
マウスピースセグメント5は、マウスピースセグメント5の周辺部に配置された、空気の少なくとも2つの閉じたポケット55を有する。各ポケットは、マウスピースセグメント5の外表面の一部分、ラッパー6の内表面の一部分、およびそれぞれの第一および第二の遮断部材51、52によって囲まれている。
【0057】
図2は、本発明の第二の実施形態によるエアロゾル発生物品の概略断面図である。
図2の物品1は、
図2のマウスピースセグメント5が、閉じたポケットのための遮断部材を含まないという点で、
図1の物品1とは異なる。代わりに、マウスピースセグメントの上流端および下流端251、252の両方は、空気がポケットから抜け出るのを防止するバリアを形成する。これは、物品1の口側端から見た時に、マウスピースが従来的な外観を有することを可能にすることができる。
【0058】
図3は、本発明の第三の実施形態によるエアロゾル発生物品1のマウスピースの斜視図を示す。マウスピースは、マウスピースセグメント305を完全に囲まないラッパー6を有する、包まれていない構成にある。
【0059】
マウスピースセグメント305は、マウスピースセグメント305の内部領域を形成する第一の構成要素353と、マウスピースセグメント305の周辺部を形成する第二の構成要素354とを備えうる。第一の構成要素353は、セルロースアセテート繊維で形成されたガス浸透性構成要素である。従って、エアロゾルは、マウスピースセグメント305の第一の構成要素354を通って流れることができる。第二の構成要素は、第一の構成要素を囲む成形プラスチックシース456である。シース456の外表面は、複数の閉じたポケットを画定するための複数の長軸方向に延びる溝456で形成されている。
【0060】
それぞれの長軸方向に延びる溝456には、それぞれの溝を充填するための、かつそれぞれの上流端および下流端でチャネルを閉じるための第一および第二の間隙を介した遮断部材451、452が提供されている。
【0061】
第一および第二の遮断部材451、452は、それぞれの溝内の個別要素として提供されている。
図3から分かる通り、第一の溝の第一および第二の遮断部材351、352は、第二の溝の第一および第二の遮断部材の位置とは異なる長軸方向の位置に位置付けられてもよい。こうした配設は、マウスピースセグメントが連続的なロッドから形成される時に有利である。特に、こうした配設は、連続的なロッドが個別の位置で切断されてマウスピースセグメントを形成する時に有利である。これは、ロッドの長さに沿った任意の位置でロッドからセグメントが切断されることをこの配設が可能にし、依然として前記セグメントに空気の閉じたポケットを形成できる可能性が高いためである。言い換えれば、この配設は、それぞれのセグメントを形成するロッドの切断の位置で遮断部材の位置を登録することの重要性を低減する、またはその必要性を無くす。
【0062】
図4は、本発明の第四の実施形態によるエアロゾル発生物品1のマウスピースの斜視図を示す。マウスピースは、マウスピースセグメント405を完全に囲まないラッパー6を有する、包まれていない構成にある。
【0063】
図4のマウスピースセグメント405は
図3のマウスピースセグメント305と類似しているが、
図4のマウスピースセグメント405が第一および第二の遮断部材451、452を有し、これらの部材が複数の長軸方向に延びる溝456を横切って延びる材料の単一の細片の形態で単一要素として提供されているという点で異なる。各溝の第一の遮断部材451は、その他の溝のそれぞれの第一の遮断と同じ長軸方向の位置を有する。同様に、各溝の第二の遮断部材452は、その他の溝のそれぞれの第二の遮断と同じ長軸方向の位置を有する。
【0064】
図5は、本発明の第五の実施形態によるエアロゾル発生物品1のマウスピースセグメント505の一部分の外表面の斜視図を示す。
図3および
図4などに示す実施形態とは対照的に、空気の閉じたポケットは、マウスピースセグメントの外表面の長軸方向の溝によって形成されていない。代わりに、一つ以上の閉じたポケットのそれぞれは、マウスピースセグメント505の外表面上の複数の陥凹したくぼみ555のうちの一つと、周囲を囲むラッパー(
図5に図示せず)の上にある部分の内表面との間に画定されている。結果として、
図5の実施形態において遮断部材は不要である。