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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ブース及び噴出装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 9/00 20060101AFI20240527BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F24F9/00 G
F24F9/00 B
F24F9/00 E
F24F9/00 A
F24F7/06 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020541214
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2019034480
(87)【国際公開番号】W WO2020050228
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2018167305
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】上田 晃
(72)【発明者】
【氏名】増田 克洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅文
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-010237(JP,A)
【文献】特開昭61-105077(JP,A)
【文献】特開昭63-169435(JP,A)
【文献】特開2013-145104(JP,A)
【文献】特開昭53-051559(JP,A)
【文献】実開平07-012838(JP,U)
【文献】特開2007-278577(JP,A)
【文献】特開2017-215110(JP,A)
【文献】特開昭59-004843(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104234113(CN,A)
【文献】特開2007-255879(JP,A)
【文献】実公昭46-023486(JP,Y1)
【文献】中国特許出願公開第108116210(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第2942577(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 9/00
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間から仕切られた内部空間への出入り口となる開口部に空気を噴出する噴出部を備え、
前記噴出部は、ブースの外側に設けられ、
前記噴出部は、前記外部空間からの外乱が、前記内部空間に導入されることを抑制する第1の気流と、前記第1の気流よりも内側に、前記第1の気流が前記内部空間に導入されることを抑制する第2の気流と、を形成し、
前記第1の気流と前記第2の気流は、前記開口部の全範囲に向かって噴出されて前記開口部を覆い、
第1の気流と第2の気流とは同じ向きであることを特徴とするブース。
【請求項2】
前記噴出部は、前記第2の気流が前記第1の気流よりも弱くなるように、空気を噴出することを特徴とする請求項1に記載のブース。
【請求項3】
外部空間から仕切られた内部空間への出入り口となる開口部に設けられた、前記開口部に向けて空気を噴出する噴出部を備え、
前記噴出部は、第1の気流と、前記第1の気流よりも内側に形成され、前記第1の気流よりも弱い第2の気流と、を形成するように空気を噴出し、
前記第1の気流と前記第2の気流は、前記開口部の全範囲に向かって噴出されて前記開口部を覆い、
第1の気流と第2の気流とは同じ向きであることを特徴とするブース。
【請求項4】
前記噴出部は、前記第1の気流を形成するための第1の噴出口と、前記第2の気流を形成するための第2の噴出口とを備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のブース。
【請求項5】
前記第1の気流及び前記第2の気流の方向は、水平方向であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のブース。
【請求項6】
前記第1の気流及び前記第2の気流の方向は、鉛直方向下向きであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のブース。
【請求項7】
前記噴出部に対向して設けられた、空気を吸引する吸引部を備えることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のブース。
【請求項8】
前記噴出部を2つ備え、
前記2つの噴出部は、前記開口部の両側に配置されており、
前記2つの噴出部により形成される前記第1の気流及び前記第2の気流の方向は、前記開口部の方向であり、かつ、外部空間側に向かう方向であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のブース。
【請求項9】
前記開口部の上部を覆う上部カバーを備えることを特徴とする、請求項1から5又は7から8のいずれか1項に記載のブース。
【請求項10】
前記噴出部により形成される前記第1の気流及び前記第2の気流の風速は、高さ方向において異なることを特徴とする、請求項1から5又は7から9のいずれか1項に記載のブース。
【請求項11】
前記噴出部に対向して設けられた、空気を吸引する吸引部を備えることを特徴とする、請求項6に記載のブース。
【請求項12】
前記内部空間の空調制御を行う空調部を更に有し、
前記第1の気流及び前記第2の気流は、前記空調部により供給された空気により形成されることを特徴とする、請求項1から1のいずれか1項に記載のブース。
【請求項13】
前記外部空間と前記内部空間との間には、前記開口部を除いて仕切り部材が設けられていることを特徴とする、請求項1から1のいずれか1項に記載のブース。
【請求項14】
外部空間から仕切られた内部空間への出入り口となる開口部に空気を噴出する噴出装置であって、
前記噴出部は、ブースの外側に設けられ、
前記外部空間からの外乱が、前記内部空間に導入されることを抑制する第1の気流と、
前記第1の気流よりも内側の、前記第1の気流が前記内部空間に導入されることを抑制
する第2の気流と、を形成し、
前記第1の気流と前記第2の気流は、前記開口部の全範囲に向かって噴出されて前記開口部を覆い、
第1の気流と第2の気流とは同じ向きである噴出装置。
【請求項15】
外部空間から仕切られた内部空間への出入り口となる開口部に空気を噴出する噴出装置であって、
第1の気流と、
前記第1の気流よりも内側に形成され、前記第1の気流よりも弱い第2の気流と、を形成するように空気を噴出し、
前記第1の気流と前記第2の気流は、前記開口部の全範囲に向かって噴出されて前記開口部を覆い、
第1の気流と第2の気流とは同じ向きである噴出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブース及び噴出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品・精密部品の組立や、実験等の各種作業、プロセス装置・精密機械の運転などを行うための、ブースが知られている。このようなブースでは、仕切り部材(壁、天井など)により、外部空間から内部空間を隔離し、温度や湿度、清浄度等の環境条件を保つようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-169816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブースにおいて、作業者の出入りや、物品の搬出入のために、内部空間にアクセスできる出入口が必要である。出入口に扉、引き戸、カーテン等の構造物を設けると、アクセスが煩雑になり、作業性が悪化する。そこで出入口を、このような構造物を設けない、単なる開口部とすることが考えられる。しかしこの場合、外部空間との遮断が不十分となり、内部空間における空調制御、例えば、温度制御や湿度制御などを行うことが困難となる。また、開口部から内部空間に塵埃が混入し、内部空間の清浄度を低くしてしまう虞がある。このように、ブースの出入口を単なる開口部とした場合、種々の環境条件(温度、湿度、清浄度等)が低下してしまう。
【0005】
本発明の一態様は、環境条件を低下させることなく、容易に内部空間にアクセスできるブースを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るブースは、外部空間から仕切られた内部空間に通じる開口部に空気を噴出する噴出部を備え、前記噴出部が、前記外部空間からの外乱が、前記内部空間に導入されることを抑制する第1の気流と、前記第1の気流よりも内側に、前記第1の気流が前記内部空間に導入されることを抑制する第2の気流と、を形成する構成を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、環境条件を低下させることなく、容易に内部空間にアクセスできるブースが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係るブースを示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態1に係るブースを示す鉛直断面模式図である。
図3】本発明の実施形態1に係る噴出装置を示す概略構成図である。
図4】本発明の実施形態1に係るブースを示す水平断面模式図である。
図5】本発明の実施形態2に係るブースを示す水平断面模式図である。
図6】本発明の実施形態3に係るブースを示す鉛直断面模式図である。
図7】本発明の実施形態4に係るブースを示す鉛直断面模式図である。
図8】本発明の実施形態5に係るブースを示す鉛直断面模式図である。
図9】本発明の実施形態6に係るブースの正面図である。
図10】本発明の実施形態7に係るブースの正面図である。
図11】本発明の実施形態8に係るブースの正面図である。
図12】本発明の実施形態9に係るブースの正面図である。
図13】本発明のブースの温度分布に関するシミュレーションの結果である。
図14】本発明のブースの温度分布に関するシミュレーションの結果である。
図15】本発明のブースの温度分布に関するシミュレーションの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
(ブースの全体構成)
図1は、実施の形態1に係るブース10の概略構成を示す図である。また、図2は、ブース10の側方から観察した鉛直断面を模式的に示す図である。ブース10は、床90(ブース10の構成物には含まれない)の上に組み立てられた仕切り部材である天井部101、2つの側壁部102、前壁部103、後壁部104によって外部空間から仕切られた内部空間Sを備えている。内部空間Sのサイズは、特定の値に限定されるものではないが、例えば奥行き方向3~20m、幅方向3~20m、高さ方向2~5m程度とすることができる。
【0011】
前壁部103の一部には、中央付近に開口部105が設けられ、内部空間Sへの出入口を構成している。開口部105のサイズは、特定の値に限定されるものではないが、例えば内部空間Sの幅よりは小さく幅方向1~3m、内部空間Sの高さよりは小さく高さ方向2~5m程度とすることができる。
【0012】
またブース10は、内部空間S外に空調装置(空調部)150を備え、内部空間Sの空調制御を行っている。内部空間Sは、電子部品・精密部品の組立や、実験等の各種作業、プロセス装置・精密機械の運転など、雰囲気が空調制御された環境での作業、機械運転等を行うための領域である。空調制御は、実施形態1において具体的には温度制御である。しかしながら、空調制御としては、温度制御のみに限られるもので無く、例えば湿度制御、清浄度制御であってもよい。
【0013】
仕切り部材(天井部101、側壁部102、前壁部103、後壁部104)は、ビニールカーテン、断熱不燃パネル、ガラス、アクリル板、金属板など、ブースの壁材または天井材として用いられている、適宜の公知材料で構成しうる。また、構造的な強度を保つために、フレーム、柱、梁等を適宜に用いて仕切り部材が組み立てられることが好ましい。
【0014】
ブース10には、開口部105に空気を噴出する噴出装置(噴出部)120が設けられている。具体的な噴出装置120の取付位置としては、例えば開口部105の端部となる前壁部103の一部に取り付けることができる。また、噴出装置120と対向する位置(例えば開口部105の縁部となる前壁部103の一部)には空気を吸引する吸引装置(吸引部)130が取り付けられている。噴出装置120及び吸引装置130は、開口部105の左右に、それぞれ鉛直線に沿って前壁部103の外側に配置される。また、噴出装置120の空気の噴出口と、吸引装置130の空気の吸引口とが対向するように配置されている。なお、実施形態1のブース10は、噴出装置120と吸引装置130とを、それぞれ1台ずつ備えている。しかし、開口部105の縁部に沿って、複数の噴出装置120を、並べて設置するように構成し、実質的に大型の1台の噴出装置と同様の役割を果たせるようにしてもよい。吸引装置についても同様である。
【0015】
(内部空間の温度制御)
天井部101の底面には、ブース10の内部空間Sに温度制御された空気を導入するための、導入口111が設けられている。導入口111には、空調装置150から、導入口への配管143を通じて、所定の温度に制御された空気が送り込まれる。導入口111は、内部空間Sに対して、吹き出し方向が下向きに制御され均一化された気流(ダウンフロー)を放出する。図1において、導入口111は、左右に分かれた2つの部材として描かれているが、これは例示であって、単一または2つ以上の複数の部材で構成されても良く、天井部101の略全面に設けられていてもよい。また、導入口111は図1に例示したような後壁部104に取り付けられ、奥行き方向に延在する形状でなくともよく、例えば天井部101から吊るされていたり、天井部101に埋め込まれていたりしてもよい。また、導入口111には塵埃等を除去するためのフィルタやメッシュが設けられていることが好ましい。
【0016】
内部空間Sに送り込まれた空気は、後壁部104の下部に設けられた導出口112に引き込まれ、導出口への配管144を通じて空調装置150に回収される。導出口112の形状も、図1に示されたような横長の長方形であってもよいが、他の形状や、任意の孔の個数とすることは適宜にできる。ここで配管とは、具体的には、円管状の部材、角管状の部材、ダクト等であり得、以下でも同様である。
【0017】
このように、空調装置150により温度制御された空気が、循環することによって、ブース10の内部空間Sが、所定の温度に制御される。導入口111から吹き出される気流は、その風速が特定の値に限定されるものではないが、風速が0.1~1m/sと緩やかであることが望ましい。風速が大きいと、内部空間Sに設置された機器、什器に気流が直接当たることによって部分的に冷却される箇所ができ、温度分布の原因となる怖れがあるからである。なお、本願において、気流の風速は、導入口、噴出口などの吹き出し口直下の風速(吹き出し風速)で定義するものとする。
【0018】
また、外部の空気が直接内部空間Sに流入することは、温度制御上好ましくない。よって、内部空間Sは、空調装置150により、やや陽圧に維持される。そのため、開口部105等を通じて、内部空間Sから、空気がわずかに流出する(図2のEA)。空調装置150は、流出する空気を補って、更に内部空間Sを陽圧に保つため、外気取り入れ口151より空気を取り入れ、内部空間Sから回収した空気とともに温度の調整を行い、所要の箇所に所要の風量で提供する。
【0019】
(開口部の気流制御)
更に、開口部105における特徴的な気流制御について、図3及び図4も併せて用いて説明する。図3は、実施形態1に係る噴出装置120を示す概略図である。図4は、ブース10の水平断面を模式的に示す図である。
【0020】
噴出装置120には、空調装置150から噴出装置への配管141を通じて、温度制御された空気が供給される。噴出装置120は、それぞれが縦長であり開口部105の鉛直方向の長さに対応する、外側噴出口121(第1の噴出口)及び内側噴出口122(第2の噴出口)を備えている。外側噴出口121と内側噴出口122とは、互いに平行である。外側噴出口121は、内側噴出口122よりも、内部空間Sから遠い側に設けられている。外側噴出口121及び内側噴出口122の長さは、特定の値に限定されるものではないが、例えば2~5mであり得る。また、上述の通り、開口部105の縁部に沿って、複数の噴出装置120を、並べて設置するように構成する場合には、外側噴出口121及び内側噴出口122の長さは特定の値に限定されるものではないが、例えば0.5~2m程度であり得る。
【0021】
外側噴出口121は、外側気流126(第1の気流)を開口部105が形成する平面と平行(前壁部103と平行)で、水平の方向に吹き出す。ここで、外側気流126は、開口部105を覆う層状の気流であり、つまりはエアカーテンである。また、内側噴出口122は、内側気流127(第2の気流)を開口部105が形成する平面と平行(前壁部103と平行)で、水平の方向に吹き出す。ここで、内側気流127は、開口部105を覆う層状の気流であり、これもまたエアカーテンである。外側気流126の方向と内側気流127の方向は、平行であり同じ向きである。
【0022】
外側気流126に対して、内側気流127は、より弱い気流である。ここで、より弱い気流とは、風速が相対的に小さい(遅い)ことを意味する。外側気流126の好ましい風速は、4~8m/sであり、典型的には5m/sであり得る。内側気流127の好ましい風速は、外側気流126の風速より相対的に小さい風速であるとともに、3~6m/sであり、典型的には4m/sであり得る。さらに、内圧を陽圧に維持することで、風速を低下することが可能となる。その場合には、好ましい風速は外側気流126で3~6m/s、内側気流127で2~4m/sであり得る。風速を小さくすることにより、空気の流れの乱れが小さくなり、内部空間Sに対する外乱の影響を抑制するという本発明の効果をより一層発揮することができる。
いずれにしても、これらの外側気流126、内側気流127の風速は上記の範囲に限定されるものではなく、適宜異なる値とすることができる。但し、上述のように、外側気流126は内側気流127よりも風速が大きくなっている必要がある。
【0023】
また、より好ましくは、内側気流127の風速は、内部空間Sにおいて導入口111から吹き出される気流の風速より大きいことが望ましい。
【0024】
吸引装置130は、外側気流126と、内側気流127とが、それぞれが層状の気流として流れることを乱さないように空気を吸引する役割を果たす。吸引装置130には、それぞれが外側気流126と内側気流127に対応した、2つの縦長の吸引口を有することが望ましい。しかし、外側気流126と内側気流127の双方の気流を吸い込む1つの縦長の吸引口を有するものであってもよい。縦長の吸引口の長さは、噴出装置120の外側噴出口121または内側噴出口122と同程度であることが望ましい。吸引装置130により吸引された空気は、吸引装置への配管142を通じて、空調装置150に送り込まれる。
【0025】
また、外側気流126及び内側気流127の風速は、噴出装置120と吸引装置130との距離に応じて適宜調整することが可能である。噴出装置120と吸引装置130との距離とは、詳細には、噴出装置120における外側噴出口121(第1の噴出口)と、吸引装置130の外側気流126を吸い込む吸引口との距離、及び、噴出装置120における内側噴出口122(第2の噴出口)と、吸引装置130の内側気流127を吸い込む吸引口である。噴出装置120と吸引装置130との間の距離に対する外側気流126の好ましい風速は、噴出装置120と吸引装置130との間の距離1m当たり2.5~5.5m/sであり、典型的には3.3m/sであり得る。噴出装置120と吸引装置130との間の距離に対する内側気流127の好ましい風速は、噴出装置120と吸引装置130との間の距離1m当たり2~4m/sであり、典型的には2.7m/sであり得る。さらに、内圧を陽圧に維持した場合には、噴出装置120と吸引装置130との間の距離1m当たり、外側気流126で2~4m/s、内側気流127で1~3m/sであり得る。風速を小さくすることにより、空気の流れの乱れが小さくなり、内部空間Sに対する外乱の影響を抑制するという本発明の効果をより一層発揮することができる。
【0026】
(実施形態1における効果)
上記構成により、実施の形態1に係るブース10では、以下のことが実現されている。
【0027】
前壁部103の一部に開口部105を備えるため、作業者の出入りや、物品の搬出入が容易であり、内部空間Sへのアクセスが良い。そのため、ブース10を利用する各種作業の効率が良好となる。
【0028】
一般にこのような開口部を備えたブースでは、外気の流入と内部空間の空気の流出により、内部空間の空調制御が困難である。例えば、空調制御として温度制御を行う場合にあっては、温度制御が不十分な外気(外乱の一例)の流入により、内部空間Sを所定の均一な温度とすることが困難になる。また、風(外乱の一例)の内部空間への流入も、内部空間の空気の流れを乱すもととなる。しかしブース10では、開口部105にエアカーテンとなる気流を形成するように構成されているので、外気の流入と内部空間の空気の流出が抑えられる。つまり、内外を遮断する方向に働く。
【0029】
また、ブース10では、開口部105において、外側気流126(第1の気流)と内側気流127(第2の気流)を形成しており、外側気流126に対し、内側気流127が、より弱い気流であるいう特徴的な構成を有する。以下にこのような特徴的な構成の意義について説明する。
【0030】
本発明者らは、当初、開口部において単層の気流(エアカーテン)が形成される構成について検討を行った。すると、気流の風速が小さいときには、外気の流入と内部空間の空気の流出を抑制する効果に乏しく、内部空間Sにおいて目標とする温度制御ができなかった。ここで目標とする温度制御とは、より具体的には、内部空間Sにおける温度の分布が温度目標値に対して±0.1度以内となるように制御できることである。
【0031】
次に、内外の遮断の効果を高めるために、気流の風速を大きくすることを試みた。しかし、単層の気流の風速を高めてみると、内部空間の空気を引き込み加速させ、気流が内部空間に入り込むような状態になった。その結果、内部空間に部分的に風速の大きい箇所ができ、内部空間において目標とする温度制御ができなかった。それは部分的に風速が大きい箇所が形成されるため、内部空間Sにおける温度分布が乱れてしまうためである。様々な風速について、検討を行ったが、単層の気流(エアカーテン)では、目標とする内部空間の温度分布の実現が出来なかった。
【0032】
また、ここでは内部空間Sの温度分布について説明したが、湿度分布についてもほぼ同様である。
【0033】
また、単相の気流を採用すると、塵埃の混入を好適に防止できないということもわかった。単層の気流の風速を低くすると、気流による塵埃の内部空間Sへの混入防止が十分に作用しない虞がある。一方、単層の気流を高めた場合、上述の内部空間Sへの気流の入り込みに塵埃が巻き込まれ、結果として塵埃が内部空間に混入されてしまう場合がある。
【0034】
そこで、本発明者らは、開口部105において、風速の大きい外側気流126と、外側気流126よりも弱い内側気流127の2層の気流を形成することに想い到り、本発明を完成するに至った。風速の大きい外側気流126は、内外の遮断の効果を十分なものとする役割を果たす。つまり、内部空間Sに対する外乱の影響を抑制する役割を果たす。一方、相対的に弱い内側気流127は、風速の大きい外側気流126が内部空間Sに入り込むことを抑制する役割を果たす。このような独特の気流の構成と配置とすることで、ブース10では、内部空間Sにおいて目標とする温度制御や湿度制御が実現でき、また、塵埃の内部空間への混入を好適に防止できるのである。
【0035】
更に、ブース10では、開口部105の縁部に、噴出装置120に対向して設けられた、空気を吸引する吸引装置130を備えている。本構成により、外側気流126(第1の気流)及び内側気流127(第2の気流)が、開口部105の、それぞれ外側噴出口121、内側噴出口122から離れた領域においても乱されることが抑制される。よって、内部空間Sにおける目標とする温度制御や湿度制御、及び塵埃の混入防止が好適に実現されるようになる。
【0036】
また、外側気流126(第1の気流)及び内側気流127(第2の気流)の方向が水平方向となるようにすることで、噴出装置120及び吸引装置130を開口部105の左右に縦置きできる。よって、噴出装置120及び吸引装置130を備えたブースを容易に製造することができる。
【0037】
ブース10では、外側気流126(第1の気流)及び内側気流127(第2の気流)が、空調装置150から供給された空気により形成される。空調装置150により空調制御された空気で、外側気流126及び内側気流127を形成することで、内部空間Sの制御を乱す要因を抑え、内部空間Sにおいて目標とする空調制御が確実に実現されるようになる。
【0038】
ブース10で用いられた、実施形態1に係る噴出装置120では、外側気流126(第1の気流)を形成するための外側噴出口121(第1の噴出口)と、外側気流126よりも弱い内側気流127(第2の気流)を形成するための内側噴出口122(第2の噴出口)とを備えている。開口部を備えるブースにおいて、本構成の噴出装置120を適用すれば、内部空間へのアクセスが良好でありながら、内部空間の温度制御を良好なものとさせることが実現できる。
【0039】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0040】
図5は、実施形態2に係るブース20の概略構成を示す図である。図5(1)は、実施形態2に係るブース20の概略構成を示すための、水平方向の断面を模式的に示した図である。ブース20は、実施形態1に係るブース10とは異なり、吸引装置130及び吸引装置への配管142を備えていない。また、ブース10とは異なり、開口部105の左右の縁部の双方に噴出装置120を備える。それぞれの噴出装置120に、空調装置150から空調制御(温度制御)された空気を供給するための噴出装置への配管141が接続されている。
【0041】
左右の噴出装置120は、それぞれが風速の大きい外側気流226(第1の気流)と、外側気流226よりも弱い内側気流227(第2の気流)の2層の気流を形成している。よって、左右の噴出装置120の外形は、互いに鏡面対称である。なお、いずれの気流も、向きは水平方向である。
【0042】
外側気流226の好ましい風速は、2~4m/sであり、典型的には3m/sであり得る。内側気流227の好ましい風速は、外側気流226の風速より相対的に小さい風速であるとともに、1~3m/sであり、典型的には2m/sであり得る。いずれにしても、これらの外側気流226、内側気流227の風速は上記の範囲に限定されるものではなく、適宜異なる値とすることができる。但し、上述のように、外側気流226は内側気流227よりも風速が大きくなっている必要がある。
【0043】
また、外側気流226及び内側気流227の風速は、左右の噴出装置120における各外側噴出口121(第1の噴出口)、各内側噴出口122(第2の噴出口)の間の距離に応じて適宜調整することが可能である。左右の外側噴出口121の間の距離に対する外側気流226の好ましい風速は、左右の外側噴出口121の間の距離1m当たり1~3m/sであり、典型的には2m/sであり得る。左右の内側噴出口122の間の距離に対する内側気流227の好ましい風速は、左右の内側噴出口122の間の距離1m当たり0.5~2m/sであり、典型的には1.3m/sであり得る。
【0044】
実施形態2に係るブース20は、左右の噴出装置120から空気が供給されることから、一方から空気を供給する場合と比べて、外側気流226及び内側気流227の風速を小さくすることができる。そのため、空気の流れの乱れが小さくなり、内部空間Sに対する外乱の影響を抑制するという本発明の効果をより一層発揮する。
【0045】
その他の構成については、実施形態1に係るブース10と同様である。よって、ブース20においても、吸引装置130による効果を除き、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、ブース20においては、開口部105に対して左右から外側気流226及び内側気流227を形成しているから、各気流(エアカーテン)が開口部105を覆いやすい。従って、開口部105の幅を広くすることが容易である。一方、開口部105の幅方向の中央部付近で、左右からの気流が出会うため、気流が乱れやすくなる怖れがある。そこで、外側気流226及び内側気流227の方向を、開口部105が形成する平面に略平行(前壁部103に略平行)であるが、やや外向きとし、内部空間Sに外側気流226及び内側気流227が入り込みにくいようにすることが好ましい。
【0047】
図5(2)は、開口部105が形成する平面Pに対する内側気流227の角度θi1及びθi2を示す説明図である。左右の内側気流227の角度θi1及びθi2は、特に限定されないが、好ましくは0~45°である。下限値としては、例えば、1°以上、3°以上、5°以上又は10°以上である。また、上限値としては、例えば、40°以下、35°以下又は30°以下である。左右の内側気流227の角度θi1及びθi2は、同一の角度でも異なる角度でもよい。
また、外側気流226についても同様、左右の外側気流226の角度θo1及びθo2は、特に限定されないが、好ましくは0~45°である。下限値としては、例えば、1°以上、3°以上、5°以上又は10°以上である。また、上限値としては、例えば、40°以下、35°以下又は30°以下である。左右の外側気流226の角度θo1及びθo2は、同一の角度でも異なる角度でもよい。
さらに、内側気流227の角度と、外側気流226の角度は、同一の角度でも異なる角度でもよい。
なお、この角度(θi1、θi2、θo1、θo2)については、内部空間Sや外部空間の温度や湿度などの条件に応じて可変に制御されてもよい。これによって、例えば外部環境等に変化があった場合でも、より良好に内部空間Sに対する外乱の影響を抑制することができる。具体例としては、例えば、外部空間の気温が上昇すると、床などから発する輻射熱によって外側気流226や内側気流227が暖められ、内部空間Sに対し外側気流や内側気流が入り込みやすくなる。このような場合には、角度をより外部に向かわせることで、外乱の影響を抑えることができる。
【0048】
〔実施形態3〕
図6は、実施形態3に係るブース30の概略構成を示すための、鉛直面での断面を模式的に示した図である。ブース30は、実施形態1に係るブース10とは異なり、吸引装置130及び吸引装置への配管142を備えていない。また、ブース10とは異なり、開口部105の上の縁部に横置きの噴出装置320を備える。噴出装置320に、空調装置150から空調制御(温度制御)された空気を供給するための噴出装置への配管141が接続されている。
【0049】
噴出装置320は、風速の大きい外側気流326(第1の気流)と、外側気流326よりも弱い内側気流327(第2の気流)の2層の気流を形成している。なお、いずれの気流も、向きは鉛直方向下向きである。
【0050】
その他の構成については、実施形態1に係るブース10と同様である。よって、ブース30においても、吸引装置130による効果を除き、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0051】
ブース30においては、開口部105の上から外側気流326及び内側気流327を形成している。よって、開口部105の幅方向の制限を受けにくく、開口部105の幅を広くすることが容易である。また、開口部105の上の縁部に沿って、複数の噴出装置320を、並べて設置するように構成してもよい。
【0052】
ブース30で用いられた、実施形態3に係る噴出装置320でも、実施形態1に係る噴出装置120と同様に、外側気流326(第1の気流)を形成するための外側噴出口(第1の噴出口)と、外側気流326よりも弱い内側気流327(第2の気流)を形成するための内側噴出口(第2の噴出口)とを備えている。開口部を備えるブースにおいて、本構成の噴出装置320を適用すれば、内部空間へのアクセスが良好でありながら、内部空間の温度制御を良好なものとさせることが実現できる。
【0053】
〔実施形態4〕
図7は、実施形態4に係るブース31の概略構成を示すための、鉛直面での断面を模式的に示した図である。実施形態4に係るブース31は、実施形態3に係るブース30に、噴出装置320に対向するように配置された吸引装置330と、それに接続される吸引装置への配管を加えたものである。実施形態4において吸引装置330は、開口部105の下方に配置される。吸引装置330は、床面90よりも高い位置に配置することができる。この場合、ブースの施工が容易となる。あるいは、吸引装置は、床面90よりも低い位置に配置することができる。この場合、内部空間へのアクセスが妨げられることが無い。実施形態4に係るブースにおいても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
〔実施形態5〕
図8は、実施形態5に係るブース11の概略構成を示すための、鉛直面での断面を模式的に示した図である。実施形態5に係るブース11は、実施形態1に係るブース10から、吸引装置130及び吸引装置への配管142を省いたものである。実施形態5に係るブース11においても、吸引装置130による効果を除き、実施形態1に係るブース10と同様の効果を得ることができる。
【0055】
〔実施形態6〕
図9は、実施形態6に係るブース12の正面図を模式的に示した図である。実施形態6に係るブース60は、実施形態1に係るブース10に、開口部105の上部を覆う上部カバー160を備えたものであり、その他の構成は同様である。
【0056】
噴出装置120から供給された空気が、外部空間より低い温度である場合、噴出装置120から供給された空気は、外部空間の空気より重いことから下方に向かって流れる傾向が認められる。そのため、開口部105の上部から外気が流入しやすいというおそれがある。実施形態6に係るブース12によれば、開口部105の上部を覆う上部カバー160備えるため、開口部105の上部からの外気の流入を抑制することができる。
また、噴出装置120から供給された空気は、上下左右に拡散するため、実施形態1に係るブース10では、開口部105の上部の空気の一部が吸引装置130の方向に向かわずに上部方向へ分散する。しかし、上部カバー160を設けることにより、噴出装置120から供給された空気を吸引装置130の方向へ整流することができる。
【0057】
上部カバー160の形状は、特に限定されないが、例えば、水平方向に設置された板部材である。噴出装置120から供給された空気の流れを整流するという観点から、上部カバー160の開口部105側の面は、噴出装置120から供給された空気が流れる方向に沿って形成されることが好ましい。
【0058】
〔実施形態7〕
図10は、実施形態7に係るブース21の正面図を模式的に示した図である。実施形態7に係るブース21は、実施形態2に係るブース20に、開口部105の上部を覆う上部カバー160を備えたものであり、その他の構成は同様である。実施形態6と同様、上部カバー160を設けることにより、開口部105の上部からの外気の流入を抑制することができる。
また、噴出装置120から供給された空気を開口部105の中心方向へ整流することができる。
【0059】
上部カバー160の形状は、実施形態6と同様、例えば、水平方向に設置された板部材などが挙げられる。噴出装置120から供給された空気の流れを整流するという観点から、上部カバー160の開口部105側の面は、噴出装置120から供給された空気が流れる方向に沿って形成されることが好ましい。
【0060】
〔実施形態8〕
図11は、実施形態8に係るブース13の正面図を模式的に示した図である。実施形態8に係るブース13は、実施形態1に係るブース10において、噴出装置120から供給される空気(外側気流126及び内側気流127)の風速が上部と下部で異なるものである。より詳しくは、実施形態8に係るブース13は、噴出装置120から供給される空気(外側気流126及び内側気流127)の上部の空気の風速が、下部の空気の風速より速いというものである。なお、その他の構成は同様である。
【0061】
噴出装置120から供給された空気が、外部空間より低い温度である場合、噴出装置120から供給された空気は、外部空間の空気より重いことから下方に向かって流れる傾向が認められる。そのため、開口部105の上部から外気が流入しやすいというおそれがある。実施形態8に係るブース13によれば、開口部105の上部側の空気の風速が下部側の空気の風速よりも速いため、開口部105の上部からの外気の流入を抑制することができる。
【0062】
噴出装置120から供給される空気(外側気流126及び内側気流127)の風速を上部と下部で変える場合、高速と低速の2段階の速度で設定してもよいし、複数段階の速度で上方に向かって徐々に速度を高めるように設定してもよい。
【0063】
なお、上部側の空気の風速を下部側の空気の風速よりも速くするという構成には、上部側の空気の線速度を高める手段だけでなく、上部側の空気量を増加する手段も含む。
【0064】
ここで、吸引装置130の吸引される空気の風速は、高さ方向で一定の風速としてもよいし、噴出装置120から供給された空気と同様、上部側で吸引される空気の風速を下部側より高く設定してもよい。
【0065】
また、実施形態8に係るブース13の変形例としては、噴出装置120から供給された空気が、外部空間より高い温度である場合には、下部側の空気の風速を上部側の空気の風速よりも速く設定すればよい。噴出装置120から供給された空気は、外部空間の空気より軽いことから上方に向かって流れる傾向が認められる。よって、この場合には、下部側の空気の風速を上部側の空気の風速よりも速く設定することにより、外気の流入を抑制することができる。
【0066】
〔実施形態9〕
図12は、実施形態9に係るブース22の正面図を模式的に示した図である。実施形態9に係るブース22は、実施形態2に係るブース20において、2つの噴出装置120から供給される空気(外側気流226及び内側気流227)の風速が上部と下部で異なるものである。より詳しくは、実施形態9に係るブース22は、噴出装置120から供給される空気(外側気流226及び内側気流227)の上部の空気の風速が、下部の空気の風速より速いというものである。なお、その他の構成は同様である。
また、噴出装置120から供給される空気の風速の設定については、実施形態8と同様であるため、省略する。
【0067】
〔シミュレーション結果〕
図13図15は、本発明のブースの温度分布に関するシミュレーションの結果を示す図である。シミュレーションの条件は、内部空間の温度を23℃、外部空間の温度を28℃とし、内部空間の温度制御として±0.1℃を満足させることを目標として各構成の作用効果について検証した。なお、図13の実施形態1及び実施形態6の片側のみに噴出装置を設置した場合では、外側気流及び内側気流の風速をそれぞれ2m/sとした。また、図14の実施形態2及び図15の実施形態7の両側に噴出装置を設置した場合では、各噴出装置のいずれにおいても、外側気流及び内側気流の風速をそれぞれ2m/sとした。各シミュレーションの結果について、左図は、内側噴出口の位置における開口部の垂直断面の温度分布を示しており、右図は、外側噴出口の位置における開口部の垂直断面の温度分布を示している。
【0068】
図13には、(1)実施形態1のブースを用いた温度分布、(2)実施形態7のブースを用いた温度分布を示す。(1)、(2)のいずれも、内側噴出口の位置において、優れた温度分布が得られた。これは、外側気流によって外乱を遮断しつつ、内側気流によって、外側気流の内部空間への流入を抑制することによると考えられる。
また、(1)と(2)を比較すると、上部カバー160を設けた場合には、より優れた温度分布となることが認められた。これは、噴出装置120から噴出された気流が、上部方向に分散せずに、上部カバー160に沿って吸引装置130に整流されることによると考えられる。
【0069】
図14には、(3)実施形態2のブースで気流の方向(θi1及びθi2、θo1及びθo2)を0°とした場合の開口部の温度分布、(4)実施形態2のブースで気流の方向(θi1及びθi2、θo1及びθo2)を15°とした場合の開口部の温度分布、(5)実施形態2のブースで気流の方向(θi1及びθi2、θo1及びθo2)を30°とした場合の開口部の温度分布を示す。
(3)と(4)と(5)を比較すると、(4)気流の方向(θi1及びθi2、θo1及びθo2)が15°の場合で、ブース内の温度分布(不図示)が最も優れた結果となり、次いで、(5)気流の方向が30°の場合、(3)気流の方向が0°の場合の順で、優れた温度分布となることが認められた。これは、開口部の両側から噴出された気流の方向をやや外側に向けることによって、両側の気流同士が衝突した際に、気流が外部空間側へ誘導されることによると考えられる。
【0070】
図15には、(6)実施形態7のブースで気流の方向(θi1及びθi2、θo1及びθo2)を0°とした場合の開口部の温度分布、(7)実施形態7のブースで気流の方向(θi1及びθi2、θo1及びθo2)を15°とした場合の開口部の温度分布、(8)実施形態7のブースで気流の方向(θi1及びθi2、θo1及びθo2)を30°とした場合の開口部の温度分布を示す。
(6)と(7)と(8)を比較すると、実施形態2のブースの場合と同様、(7)気流の方向(θi1及びθi2、θo1及びθo2)が15°の場合で、ブース内の温度分布(不図示)が最も優れた結果となり、次いで、(8)気流の方向が30°の場合、(6)気流の方向が0°の場合の順で、優れた温度分布となることが認められた。
なお、(6)と(4)を比較すると、(6)の方が優れた温度分布となった。すなわち、開口部の上部を覆う上部カバーは、内部空間の温度を維持する効果に特に優れているといえる。
【0071】
〔付記事項〕
上述した各実施形態において、開口部を覆う気流は、外側の第1の気流と内側の第2の気流とで構成されたが、例えば第1の気流と第2の気流の間に第3の気流を形成することを妨げない。このように2以上の多層の気流を形成するものとすることができる。
【0072】
上述した各実施形態において、各ブースは、工場等の室内に、更に仕切られた内部空間Sを構成するように設置されるものであってよい。しかしながら、本発明におけるブースとは、このようなものに限られるものではなく、工場等の建屋内に建築物の一部として建設される部屋自体を内部空間Sとするものであってもよい。また、空調装置を設けていないブースであっても良く、各実施形態を適用することで塵埃の混入を好適に防止することができる。
【0073】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るブースは、外部空間から仕切られた内部空間に通じる開口部に空気を噴出する噴出部を備え、前記噴出部が、前記外部空間からの外乱が、前記内部空間に導入されることを抑制する第1の気流と、前記第1の気流よりも内側に、前記第1の気流が前記内部空間に導入されることを抑制する第2の気流と、を形成する構成を備えている。
【0074】
上記の構成によれば、環境条件を低下させることなく、容易に内部空間にアクセスできるブースが実現できる。
【0075】
本発明の態様2に係るブースは上記態様1において、前記噴出部が、前記第2の気流が前記第1の気流よりも弱くなるように、空気を噴出する構成を有していても良い。
【0076】
上記の構成によれば、第1気流が内部空間に導入されることを抑制する第2の気流を具体的に実現できる。
【0077】
本発明の態様3に係るブースは、外部空間から仕切られた内部空間に通じる開口部に設けられた、前記開口部に向けて空気を噴出する噴出部を備え、前記噴出部が、第1の気流と、前記第1の気流よりも内側に形成され、前記第1の気流よりも弱い第2の気流と、を形成するように、空気を噴出する構成を有している。
【0078】
上記の構成によれば、環境条件を低下させることなく、容易に内部空間にアクセスできるブースが実現できる。
【0079】
本発明の態様4に係るブースは、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記噴出部が、前記第1の気流を形成するための第1の噴出口と、前記第2の気流を形成するための第2の噴出口とを備える構成を有していても良い。
【0080】
上記の構成によれば、所要の第1の気流及び第2の気流を形成させることが具体的に実現できる。
【0081】
本発明の態様5に係るブースは、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記第1の気流及び前記第2の気流の方向が、水平方向である構成を有していても良い。
【0082】
上記の構成によれば、吸引装置を備えたブースを容易に製造することができる。
【0083】
本発明の態様6に係るブースは、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記第1の気流及び前記第2の気流の方向が、鉛直方向下向きである構成を有していても良い。
【0084】
上記の構成によれば、開口部の幅方向の制限を受けにくく、開口部の幅を広くすることが容易となる。
【0085】
本発明の態様7に係るブースは、上記態様1から6のいずれかにおいて、前記噴出部に対向して設けられた、空気を吸引する吸引部を備える構成を有していても良い。
【0086】
上記の構成によれば、内部空間において目標とする空調制御が確実に実現されるようになる。
【0087】
本発明の態様8に係るブースは、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記噴出部を2つ備え、前記2つの噴出部は、前記開口部の両側に配置されており、前記2つの噴出部により形成される前記第1の気流及び前記第2の気流の方向は、前記開口部の方向であり、かつ、外部空間側に向かう方向であることを特徴とする構成を有していても良い。
【0088】
上記の構成によれば、外気の流入を抑制することができるため、内部空間において目標とする空調制御が確実に実現されるようになる。
【0089】
本発明の態様9に係るブースは、上記態様1から8のいずれかにおいて、前記開口部の上部を覆う上部カバーを備える構成を有していても良い。
【0090】
上記の構成によれば、外気の流入を抑制することができるため、内部空間において目標とする空調制御が確実に実現されるようになる。
【0091】
本発明の態様10に係るブースは、上記態様1から9のいずれかにおいて、前記噴出部により形成される前記第1の気流及び前記第2の気流の風速は、高さ方向において異なることを特徴とする構成を有していても良い。
【0092】
上記の構成によれば、外気の流入を抑制することができるため、内部空間において目標とする空調制御が確実に実現されるようになる。
【0093】
本発明の態様11に係るブースは、上記態様1から10のいずれかにおいて、前記内部空間の空調制御を行う空調部を更に有し、前記第1の気流及び前記第2の気流が、前記空調部により供給された空気により形成される構成を有していても良い。
【0094】
上記の構成によれば、内部空間において目標とする空調制御が確実に実現されるようになる。
【0095】
本発明の態樣12に係るブースは、上記態樣1から11のいずれかにおいて、前記外部空間と前記内部空間との間には、前記開口部を除いて仕切り部材が設けられている構成を有していても良い。
【0096】
上記の構成によれば、所要の内部空間を形成することが、具体的に実現できる。
【0097】
本発明の態様13に係る噴出装置は、外部空間から仕切られた内部空間に通じる開口部に空気を噴出する噴出装置であって、前記外部空間からの外乱が、前記内部空間に導入されることを抑制する第1の気流と、前記第1の気流よりも内側の、前記第1の気流が前記内部空間に導入されることを抑制する第2の気流と、を形成する構成を備えている。
【0098】
上記の構成によれば、開口部を備えるブースにおいて、内部空間へのアクセスが良好でありながら、内部空間の環境条件を低下させることがない噴出装置を提供できる。
【0099】
本発明の態樣14に係る噴出装置は、外部空間から仕切られた内部空間に通じる開口部に空気を噴出する噴出装置であって、第1気流と、前記第1の気流よりも内側に形成され、前記第1の気流よりも弱い第2の気流と、を形成するように空気を噴出する構成を備えている。
【0100】
上記の構成によれば、開口部を備えるブースにおいて、内部空間へのアクセスが良好でありながら、内部空間の環境条件を低下させることがない噴出装置を提供できる。
【0101】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
10、11、12、13、20、21、22、30 ブース
101 天井部(仕切り部材)
102 側壁部(仕切り部材)
103 前壁部(仕切り部材)
104 後壁部(仕切り部材)
105 開口部
111 導入口
112 導出口
120、320 噴出装置(噴出部)
121 外側噴出口(第1の噴出口)
122 内側噴出口(第2の噴出口)
126、226、326 外側気流(第1の気流)
127、227、327 内側気流(第2の気流)
130、330 吸引装置(吸引部)
141 噴出装置への配管
142 吸引装置への配管
143 導入口への配管
144 導出口への配管
150 空調装置(空調部)
151 外気取り入れ口
S 内部空間
P 開口部が形成する平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15