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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】混合ゼオライト含有SCR触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/80 20060101AFI20240527BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240527BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240527BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240527BHJP
   C01B 39/02 20060101ALI20240527BHJP
   C01B 39/26 20060101ALI20240527BHJP
   C01B 39/38 20060101ALI20240527BHJP
   C01B 39/44 20060101ALI20240527BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240527BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B01J29/80 A
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 241
B01J37/04
B01J37/08
C01B39/02
C01B39/26
C01B39/38
C01B39/44
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020555786
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 IB2019052968
(87)【国際公開番号】W WO2019198014
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】62/656,008
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユエチン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-205243(JP,A)
【文献】特表2013-523442(JP,A)
【文献】特表2016-536126(JP,A)
【文献】特開平02-293022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
C01B 39/00 - 39/54
F01N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の窒素酸化物を選択的に接触還元するための、未使用の触媒組成物であって、
第1のゼオライトおよび第2のゼオライトを含み、
前記第1のゼオライトが、助触媒金属を含み、第1の骨格構造を有し、
前記第2のゼオライトのうちの少なくとも一部分が、H形態、NH 形態、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、およびそれらの組み合わせから選択された形態であり、第2の骨格構造を有し、
前記第1および第2の骨格構造が異なり、
前記触媒組成物が、650℃超の温度を施されておらず、且つ
第1のゼオライトがCu-CHAであり、
第1のゼオライト中のCuO%が、少なくとも2.1%であり、
第2のゼオライトが、H-モルデナイト及び/又は H-フェリエライトを含む、
触媒組成物。
【請求項2】
前記第2のゼオライトが、H形態である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記第2のゼオライトが、遷移金属を実質的に含まない、請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
第1の骨格構造を有する第1のゼオライトおよび第2の骨格構造を有する第2のゼオライトを含み、
前記第1のゼオライトが、第1の助触媒金属含有量で助触媒金属を含み、前記第2のゼオライトが、第2の助触媒金属含有量で前記助触媒金属を含み、
前記第1の助触媒金属含有量が、前記第2の助触媒金属含有量よりも高く、
前記第1および第2の骨格構造が異なる、内燃機関の窒素酸化物を選択的に接触還元するための、触媒組成物であって、
第1のゼオライトがCu-CHAであり、
第1のゼオライト中のCuO%が、少なくとも2.1%であり、
第2のゼオライトが、H-モルデナイト及び/又は H-フェリエライトを含む、
触媒組成物。
【請求項5】
前記第1のゼオライトの前記助触媒金属が、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記第2のゼオライトが、前記触媒組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約50重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記第2のゼオライトが、前記触媒組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約20重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記第1および第2のゼオライトが、アルミノシリケート、ボロシリケート、ガロシリケート、SAPO、AlPO、MeAPSO、およびMeAPOゼオライトから独立して選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記第1のゼオライトが、アルミノシリケートである、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
第2の骨格構造が、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、BEA、DDR、EAB、EEI、ERI、FAU、FER、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MOR、MWF、MFI、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびUFIから独立して選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記第2の骨格構造が、FAU、MOR、MFI、BEA、およびFERから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項12】
ガス流用の複数のチャネルを有する基材および前記基材上に配設されている請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒組成物を含む、触媒物品。
【請求項13】
前記基材が、壁流フィルターまたはフロースルー基材である、請求項12に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記触媒組成物が、少なくとも約0.1g/インチの前記基材への充填量を有する、請求項12または13に記載の触媒物品。
【請求項15】
排気ガス中のNOレベルを低減するための方法であって、前記排気ガス中のNOの前記レベルを低減するのに十分な時間および温度で、前記排気ガスを請求項12~14のいずれか一項に記載の触媒物品に接触させることを含む、方法。
【請求項16】
前記排気ガス中のNOの前記レベルが、少なくとも40%低減される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記温度が、約150℃~約350℃の範囲である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度が、約450℃~約750℃の範囲である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項19】
排気ガス流を処理するための排出物処理システムであって、
排気ガス流を生成するエンジンと、
前記排気ガス流と流体連通している前記エンジンの下流に位置する、請求項12~14のいずれか一項に記載の触媒物品と、を備える、排出物処理システム。
【請求項20】
ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化煤フィルター(CSF)、煤フィルター、選択的接触還元(SCR)触媒、フィルター上にコーティングされたSCR触媒(SCRoF)、アンモニア酸化(AMOx)触媒、SCR/AMOx触媒、リーンNOトラップ(LNT)、および窒素性還元剤インジェクターのうちの1種以上をさらに備える、請求項19に記載の排出物処理システム。
【請求項21】
(a)前記触媒組成物が、前記DOCの下流かつ前記煤フィルターの上流に位置するか、または
(b)前記触媒組成物が、前記DOCおよび前記煤フィルターの下流に位置するか、または
(c)前記触媒組成物が、前記DOCおよび前記煤フィルターの上流に位置するか、または
(d)前記触媒組成物が、前記LNTの下流に位置するか、または
(e)前記触媒組成物が、前記煤フィルター上にあるか、または
(f)前記触媒組成物が、前記SCR触媒上もしくは前記SCR/AMOx触媒上にある、請求項20に記載の排出物処理システム。
【請求項22】
触媒組成物を作製する方法であって、
第1のゼオライトを第2のゼオライトと混合してブレンドを得ることであって、
前記第1のゼオライトが、助触媒金属を含み、第1の骨格構造を有し、
前記第2のゼオライトが、H形態、NH 形態、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、およびそれらの組み合わせから選択された形態であり、第2の骨格構造を有し、
前記第1および第2の骨格構造が異なる、ブレンドを得ることと、
少なくとも約650℃の温度で前記ブレンドをエイジングまたは焼成して、前記触媒組成物を得ることと、を含み、且つ
第1のゼオライトがCu-CHAであり、
第1のゼオライト中のCuO%が、少なくとも2.1%であり、
第2のゼオライトが、H-モルデナイト及び/又は H-フェリエライトを含む、方法。
【請求項23】
前記第2のゼオライトが、遷移金属を実質的に含まない、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、選択的接触還元触媒の分野、ならびにそのような触媒を調製および使用して、窒素酸化物を選択的に還元する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長い年月にわたり、窒素酸化物(NO)の有害な構成要素が大気汚染を引き起こしてきた。NOは、内燃エンジン(例えば、自動車およびトラック)、燃焼設備(例えば、天然ガス、石油、石炭によって加熱を行う発電所)、ならびに硝酸生成プラントなどからの排気ガスに含有される。
【0003】
NO含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されてきた。1つの処理タイプは、窒素酸化物の接触還元を伴う。2つのプロセスがある:(1)一酸化炭素、水素、または炭化水素が還元剤として使用される非選択的還元プロセス、および(2)アンモニアまたはアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元プロセス。選択的還元プロセスでは、少量の還元剤で高度の窒素酸化物除去が達成され得る。
【0004】
選択的還元プロセスは、SCR(選択的接触還元)プロセスと称される。SCRプロセスは、高レベルの酸素の存在下で還元剤(例えばアンモニア)を用いて窒素酸化物を選択的に還元して、主に窒素および水の形成を生じる。
4NO+4NH+O→4N+6HO(標準SCR反応)
2NO+4NH+O→3N+6HO(低速SCR反応)
NO+NO+2NH→2N+3HO(高速SCR反応)
【0005】
SCRプロセスで用いられる触媒は、理想的には、水熱条件下で、広い温度範囲、例えば、200℃~600℃以上で良好な触媒活性を維持することが可能である必要がある。SCR触媒は、通常、粒子の除去に使用される排気ガス処理システムの構成要素である煤フィルターの再生中などに、高温水熱条件に曝露される。
【0006】
ゼオライトなどのモレキュラーシーブは、酸素の存在下でアンモニア、尿素、または炭化水素などの還元剤とともに窒素酸化物のSCRに使用されてきた。ゼオライトは、ゼオライトのタイプ、ならびにゼオライトに含まれるカチオンのタイプおよび量に応じて、直径が約3~約10オングストロームの範囲の、かなり均一な細孔径を有する結晶材料である。8員環の細孔開口部および二重の6環の二次的構築単位を有するゼオライト、具体的にはケージ様の構造を有するものを、SCR触媒として使用することが近年研究されている。これらの特性を有する特定のタイプのゼオライトは、チャバザイト(CHA)であり、これは、三次元の多孔度からアクセスできる8員環の細孔開口部(約3.8オングストローム)を有する小さな細孔ゼオライトである。ケージのような構造は、二重の6環の構築単位を4環によって接続することから生じる。
【0007】
アンモニアによる窒素酸化物の選択的接触還元のための、しばしばイオン交換ゼオライト触媒(例えば、鉄促進および銅促進ゼオライト触媒)とも称される金属促進ゼオライト触媒が知られている。残念なことに、(例えば、局所的に700℃を超える温度での煤フィルターの再生中に呈されるような)過酷な水熱条件下では、多くの金属促進ゼオライトの活性が低下し始めることがわかっている。この低下は、ゼオライトの脱アルミニウムおよびその結果として起こる、ゼオライト内の金属含有活性中心の損失に起因する。
【0008】
CHA構造タイプを有する金属促進、具体的には銅促進アルミノシリケートゼオライトは、窒素性還元剤を使用するリーンバーンエンジンにおける窒素酸化物用のSCRの触媒として、高い関心を集めている。これらの材料は、Bullらの米国特許第7,601,662号に記載されているように、広い温度範囲内での活性、および優れた水熱耐久性を呈する。しかしながら、この特許は、開示のSCR触媒の様々な温度でのアンモニア貯蔵容量について言及していない。一般に、全てのSCR触媒は、低温でアンモニアを貯蔵することが可能であり、アンモニアは、SCR触媒のNO変換を促進するためにエンジン排気ガス流によく導入される。SCR触媒内のアンモニアの量が、その特定のSCR触媒の最大アンモニア貯蔵容量を超えると、消費されなかった過剰なアンモニアは全て、SCR触媒を通過し、大気中に排出される。この過剰分は、アンモニアスリップと称される。したがって、アンモニアの貯蔵容量は、全てのSCR触媒の重要な特性である。
【0009】
したがって、高い動作温度および低い動作温度での触媒効率、ならびにそのような動作温度での高いアンモニア貯蔵容量を呈するSCR触媒を開発することが非常に望ましいであろう。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、一般に、触媒組成物、触媒物品、およびそのような触媒物品を備える触媒系、ならびにそれらを作製および使用する方法を提供する。具体的には、開示の触媒組成物、ならびにそのような組成物を含む物品は、選択的接触還元(SCR)に好適であり、十分なアンモニア貯蔵容量を維持しながら、低温(例えば、およそ200℃)および高温(例えば、およそ600℃)でのNO変換を提供する。本明細書に記載のSCR触媒組成物は、異なる骨格構造を有する2種のゼオライトを含み、2種のゼオライトのうちの少なくとも1種が、助触媒金属(例えば、銅)を含有する。SCR触媒組成物は、SCR触媒を提供するために、例えばフロースルー基材上に配設され得るか、またはSCR触媒化煤フィルター(SCRoF)を提供するためにフィルター上に配設され得る。
【0011】
本開示の一態様は、第1のゼオライトおよび第2のゼオライトを含む、未使用の触媒組成物であって、第1のゼオライトが、助触媒金属を含み、第1の骨格構造を有し、第2のゼオライトのうちの少なくとも一部分が、H形態、NH 形態、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、およびそれらの組み合わせから選択された形態であり、第2の骨格構造を有し、第1および第2の骨格構造が異なり、触媒組成物が、650℃超の温度を施されていない、触媒組成物に関する。
【0012】
本開示の別の態様は、触媒組成物であって、第1のゼオライトを第2のゼオライトと混合してブレンドを得ることであって、第1のゼオライトが、助触媒金属を含み、第1の骨格構造を有し、第2のゼオライトが、H形態、NH 形態、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、およびそれらの組み合わせから選択された形態であり、第2の骨格構造を有し、第1および第2の骨格構造が異なる、ブレンドを得ることと、少なくとも約650℃の温度でブレンドをエイジング(劣化または焼成して、触媒組成物を得ることと、を含むプロセスによって調製される、触媒組成物に関する。いくつかの実施形態では、第2のゼオライトは、H形態である。いくつかの実施形態では、第2のゼオライトは、遷移金属を実質的に含まない。
【0013】
本開示の別の態様は、第1の骨格構造を有する第1のゼオライトおよび第2の骨格構造を有する第2のゼオライトを含む、触媒組成物であって、第1のゼオライトが、第1の助触媒金属含有量で助触媒金属を含み、第2のゼオライトが、第2の助触媒金属含有量で助触媒金属を含み、第1の助触媒金属含有量が、第2の助触媒金属含有量よりも高く、第1および第2の骨格構造が異なる、触媒組成物に関する。いくつかの実施形態では、助触媒金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、助触媒金属は、銅(Cu)であり、第2の助触媒金属含有量は、金属酸化物として計算して、触媒組成物中のCu総含有量の約0.1重量%~約25重量%である。いくつかの実施形態では、助触媒金属は、鉄(Fe)であり、第2のゼオライトは、金属酸化物として計算して、約0.01重量%~約10重量%の量のFeを含む。いくつかの実施形態では、第2のゼオライトは、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約50重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、第2のゼオライトは、触媒組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、第1および第2のゼオライトは、アルミノシリケート、ボロシリケート、ガロシリケート、SAPO、AlPO、MeAPSO、およびMeAPOゼオライトから独立して選択される。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトは、アルミノシリケートである。いくつかの実施形態では、第1および第2の骨格構造は、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IRN、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFW、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、またはそれらの組み合わせから独立して選択される。いくつかの実施形態では、第1および第2の骨格構造は、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、BEA、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、FAU、FER、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MOR、MWF、MFI、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびUFIから独立して選択される。いくつかの実施形態では、第1の骨格構造は、CHAまたはAEIである。いくつかの実施形態では、第2の骨格構造は、FAU、MOR、MFI、BEA、およびFERから選択される。
【0014】
本発明の別の態様は、ガス流用の複数のチャネルを有する基材、および基材上に配設されている開示の触媒組成物を含む、触媒物品に関する。いくつかの実施形態では、基材は、壁流フィルターまたはフロースルー基材である。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、少なくとも約0.1g/インチの基材への充填量を有する。
【0015】
本発明の別の態様は、排気ガス中のNOレベルを低減するための方法であって、排気ガス中のNOのレベルを低減するのに十分な時間および温度で、排気ガスを開示の触媒物品に接触させることを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、排気ガス中のNOのレベルは、少なくとも40%低減される。いくつかの実施形態では、温度は、約150℃~約350℃の範囲である。いくつかの実施形態では、温度は、約450℃~約750℃の範囲である。
【0016】
本発明の別の態様は、排気ガス流を処理するための排出物処理システムであって、排気ガス流を生成するエンジンと、排気ガス流と流体連通しているエンジンの下流に位置する開示の触媒物品と、を備える、排出物処理システムに関する。いくつかの実施形態では、排出物処理システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化煤フィルター(CSF)、煤フィルター、選択的接触還元(SCR)触媒、フィルター上にコーティングされたSCR触媒(SCRoF)、アンモニア酸化(AMOx)触媒、SCR/AMOx触媒、リーンNOトラップ(LNT)、および窒素性還元剤インジェクターのうちの1種以上をさらに備える。いくつかの実施形態では、開示の排出物処理システムは、(a)DOCの下流かつ煤フィルターの上流に位置する触媒組成物、もしくは(b)DOCおよび煤フィルターの下流に位置する触媒組成物、もしくは(c)DOCおよび煤フィルターの上流に位置する触媒組成物を含むか、または(d)触媒組成物がLNTの下流に位置するか、もしくは(e)触媒組成物が煤フィルター上にあるか、もしくは(f)触媒組成物が、SCR触媒もしくはSCR/AMOx触媒上にある。
【0017】
本開示の別の態様は、触媒組成物を作製する方法であって、第1のゼオライトを第2のゼオライトと混合してブレンドを得ることであって、第1のゼオライトが、助触媒金属を含み、第1の骨格構造を有し、第2のゼオライトが、H形態、NH 形態、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、およびそれらの組み合わせから選択された形態であり、第2の骨格構造を有し、第1および第2の骨格構造が異なる、ブレンドを得ることと、少なくとも約650℃の温度でブレンドを劣化または焼成して、触媒組成物を得ることと、を含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、第2のゼオライトは、遷移金属を実質的に含まない。
【0018】
本開示は、限定されないが、以下の実施形態を含む。
実施形態1:第1のゼオライトおよび第2のゼオライトとを含む、未使用の触媒組成物であって、第1のゼオライトが、助触媒金属を含み、第1の骨格構造を有し、第2のゼオライトのうちの少なくとも一部分が、H形態、NH4形態、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、およびそれらの組み合わせから選択された形態であり、第2の骨格構造を有し、第1および第2の骨格構造が異なり、触媒組成物が、650℃超の温度を施されていない、触媒組成物。
実施形態2:触媒組成物であって、第1のゼオライトを第2のゼオライトと混合してブレンドを得ることであって、第1のゼオライトが、助触媒金属を含み、第1の骨格構造を有し、第2のゼオライトが、H形態、NH4形態、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、およびそれらの組み合わせから選択された形態であり、第2の骨格構造を有し、第1および第2の骨格構造が異なる、ブレンドを得ることと、少なくとも約650℃の温度でブレンドを劣化または焼成して、触媒組成物を得ることと、を含むプロセスによって調製される、触媒組成物。
実施形態3:第2のゼオライトが、H形態である、実施形態1または2のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態4:第2のゼオライトが、遷移金属を実質的に含まない、実施形態1~3のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態5:第1の骨格構造を有する第1のゼオライトと、第2の骨格構造を有する第2のゼオライトとを含む、触媒組成物であって、第1のゼオライトが、第1の助触媒金属含有量で助触媒金属を含み、第2のゼオライトが、第2の助触媒金属含有量で助触媒金属を含み、第1の助触媒金属含有量が、第2の助触媒金属含有量よりも高く、第1および第2の骨格構造が異なる、触媒組成物。
実施形態6:助触媒金属が、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせから選択される、実施形態1~5のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態7:助触媒金属が、銅(Cu)であり、第2の助触媒金属含有量が、金属酸化物として計算して、触媒組成物中のCu総含有量の約0.1重量%~約25重量%である、実施形態1~6のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態8:助触媒金属が、鉄(Fe)であり、第2のゼオライトが、金属酸化物として計算して、約0.01重量%~約10重量%の量のFeを含む、実施形態5または6に記載の触媒組成物。
実施形態9:第2のゼオライトが、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約50重量%の量で存在する、実施形態1~8のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態10:第2のゼオライトが、触媒組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約20重量%の量で存在する、実施形態1~9のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態11:第1および第2のゼオライトが、アルミノシリケート、ボロシリケート、ガロシリケート、SAPO、AlPO、MeAPSO、およびMeAPOゼオライトから独立して選択される、実施形態1~10のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態12:第1のゼオライトが、アルミノシリケートである、実施形態1~11のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態13:第1および第2の骨格構造が、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、BEA、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、FAU、FER、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MOR、MWF、MFI、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびUFIから独立して選択される、実施形態1~12のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態14:第1の骨格構造が、CHAまたはAEIである、実施形態1~13のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態15:第2の骨格構造が、FAU、MOR、MFI、BEA、およびFERから選択される、実施形態1~14のいずれかに記載の触媒組成物。
実施形態16:ガス流用の複数のチャネルを有する基材と、基材上に配設されている実施形態1~15のいずれかに記載の触媒組成物と、を含む、触媒物品。
実施形態17:基材が、壁流フィルターまたはフロースルー基材である、実施形態1~16のいずれかに記載の触媒物品。
実施形態18:触媒組成物が、少なくとも約0.1g/インチの基材への充填量を有する、実施形態1~17のいずれかに記載の触媒物品。
実施形態19:排気ガス中のNOレベルを低減するための方法であって、排気ガス中のNOのレベルを低減するのに十分な時間および温度で、排気ガスを実施形態1~18のいずれかに記載の触媒物品に接触させることを含む、方法。
実施形態20:排気ガス中のNOのレベルが、少なくとも40%低減される、実施形態1~19のいずれかに記載の方法。
実施形態21:温度が、約150℃~約350℃の範囲である、実施形態1~20のいずれかに記載の方法。
実施形態22:温度が、約450℃~約750℃の範囲である、実施形態1~20のいずれかに記載の方法。
実施形態23:排気ガス流を処理するための排出物処理システムであって、排気ガス流を生成するエンジンと、排気ガス流と流体連通しているエンジンの下流に位置する実施形態1~22のいずれかに記載の触媒物品と、を備える、排出物処理システム。
実施形態24:ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化煤フィルター(CSF)、煤フィルター、選択的接触還元(SCR)触媒、フィルター上にコーティングされたSCR触媒(SCRoF)、アンモニア酸化(AMOx)触媒、SCR/AMOx触媒、リーンNOトラップ(LNT)、および窒素性還元剤インジェクターのうちの1種以上をさらに備える、実施形態1~23に記載の排出物処理システム。
実施形態25:触媒組成物がDOCの下流かつ煤フィルターの上流に位置するか、または触媒組成物がDOCおよび煤フィルターの下流に位置するか、または触媒組成物が、DOCおよび煤フィルターの上流に位置するか、または触媒組成物がLNTの下流に位置するか、または触媒組成物が煤フィルター上にあるか、または触媒組成物が、SCR触媒もしくはSCR/AMOx触媒上にある、実施形態1~24のいずれかに記載の排出物処理システム。
実施形態26:実施形態1~15のいずれかに記載の触媒組成物を作製する方法であって、第1のゼオライトを第2のゼオライトと混合してブレンドを得ることであって、第1のゼオライトが、助触媒金属を含み、第1の骨格構造を有し、第2のゼオライトが、H形態、NH4形態、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、およびそれらの組み合わせから選択された形態であり、第2の骨格構造を有し、第1および第2の骨格構造が異なる、ブレンドを得ることと、少なくとも約650℃の温度でブレンドを劣化または焼成して、触媒組成物を得ることと、を含む、方法。
実施形態27:触媒組成物を作製する方法であって、第1のゼオライトを第2のゼオライトと混合してブレンドを得ることであって、第1のゼオライトが、助触媒金属を含み、第1の骨格構造を有し、第2のゼオライトが、H形態、NH4形態、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、およびそれらの組み合わせから選択された形態であり、第2の骨格構造を有し、第1および第2の骨格構造が異なる、ブレンドを得ることと、少なくとも約650℃の温度でブレンドを劣化または焼成して、触媒組成物を得ることと、を含む、方法。
実施形態28:第2のゼオライトが、遷移金属を実質的に含まない、実施形態26または27に記載の方法。
【0019】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡潔に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を閲読することで明らかになるだろう。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の任意の組み合わせ、および本開示に記載の任意の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の特徴または要素の組み合わせを、そのような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かに関わらず含む。本開示では、文脈が明らかに他のことを示さない限り、開示される発明の分けることが可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であると考えられるべきであると、全体として読み取られることが意図される。本発明の他の態様および利点は、以下で明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の実施形態についての理解を提供するために、必ずしも縮尺通りに描かれてはいない添付図面が参照され、図内の参照番号は、本開示の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は、単なる例示であり、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0021】
図1】本開示に従った触媒組成物(すなわち、SCR触媒ウォッシュコート組成物)を含み得る、ハニカムタイプの基材の斜視図である。
図2図1と比較して拡大された部分断面図であり、基材がモノリシックフロースルー基材である実施形態において、図1の基材担体の端面に対して平行な平面に沿って切り取った、図1に示される複数のガス流路の拡大図を示す。
図3図1のハニカムタイプの基材が、壁流フィルター基材モノリスを表す、図1と比較して拡大された断面の破断図である。
図4】部分的に重なり合う層を有するゾーン化触媒物品の実施形態の断面図である。
図5】部分的に重なり合う層を有するゾーン化触媒物品の異なる実施形態の断面図である。
図6】重なり合う層を有さないゾーン化触媒物品の実施形態の断面図である。
図7】層状触媒物品の実施形態の断面図である。
図8】異なる層状触媒物品の実施形態の断面図である。
図9】本明細書に開示のSCR触媒物品を備える排出物処理システムの様々な実施形態の概略図を示す。
図10】試験試料1~8の累積NH脱離を示すグラフである。
図11】試験試料1~8の昇温脱離(TPD)プロファイルを示すグラフである。
図12】試験試料1~8のNO変換率とNH吸着との間の相関関係のプロットである。
図13】試験試料1~8の動的NH吸着-脱離中のNHスリッププロファイルを示す折れ線グラフである。
図14】試料1~8の着火データに基づく200℃および600℃でのNO変換率を示す棒グラフである。
図15】着火試験中の低温(230~240℃)および高温(550~580℃)でのNO形成を示す棒グラフである。
図16】20ppmのNHスリップに対するNH貯蔵容量での200℃でのNOx変換率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、例示的な実施形態を参照して、以降より完全に本開示について記載する。本開示が徹底的かつ完全であり、本開示の範囲を当業者に完全に伝えるように、これらの例示的な実施形態について記載する。実際、本開示は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載されている実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすであろうように提供されている。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、別途文脈により明らかに指示されない限り、複数の指示物を含む。
【0023】
本開示は、一般に、触媒組成物、触媒物品、およびそのような触媒物品を備える触媒系、ならびにそのような触媒組成物、触媒物品および系を作製および使用する方法を提供する。本開示の組成物は、窒素酸化物(NO)の選択的接触還元(SCR)に特に好適であり、動作温度の範囲にわたって十分なアンモニア貯蔵容量を維持することが可能である。本明細書で提供されるSCR触媒組成物は、異なる骨格構造を有する2種のゼオライトを含み、2種のゼオライトのうちの少なくとも1種が、助触媒金属(例えば、銅)を含有する。具体的には、そのような触媒組成物は、第1のゼオライトを第2のゼオライトと混合し、混合物を水熱劣化することによって調製することができる。混合物の第1のゼオライトは、例えば、従来のイオン交換プロセスを介してゼオライトに導入される助触媒金属(例えば、銅)を含む。混合物中の第2のゼオライトは、意図的に助触媒金属が添加されていない。理論によって拘束されることを意図しないが、得られる組成物の(例えば、劣化プロセスおよびある特定の高温焼成プロセスに典型的に関連するような)高温処理中に、第1のゼオライトに元来会合している助触媒金属のうちの少なくとも一部分が、第2のゼオライトと会合するようになると考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、混合物中の第1のゼオライトのみと当初会合していた助触媒金属は、そのような高温処理後に第1のゼオライトと第2のゼオライトとの間で分配される。高温に曝露した後の2つのタイプのゼオライト間の助触媒金属の分布は、変動し得る。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトは、高温に曝露した後に、第2のゼオライトよりも多量の助触媒金属を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、第2のゼオライトは、そのような曝露後に、金属酸化物として計算して、触媒組成物中に最大25重量%の助触媒金属(すなわち、CuO)総含有量を含有し得る。いくつかの実施形態では、第2のゼオライトは、高温に曝露した後に、第1のゼオライトよりも多量の助触媒金属を含み得る。
【0024】
驚くべきことに、いくつかの実施形態では、開示のSCR触媒組成物は、高温に曝露した後に、単一の骨格構造を有する金属促進ゼオライトを有するSCR触媒組成物(例えば、金属促進形態の第1のゼオライトまたは第2のゼオライトのみを含む比較組成物)よりも高いNO変換率を呈する。実際、ある特定のゼオライトは、典型的な高温曝露、例えば、劣化条件に効果的な耐久性を有さない(例えば、そのような条件への曝露後に、それらの構造的一体性および/または触媒活性を維持しない)ことが知られている。したがって、いくつかの実施形態のそのようなゼオライトを含む触媒組成物が、そのような条件下で安定であると考えられるゼオライト骨格構造のみを含有する対応する組成物と比較して、向上したNO変換特性を呈することは予想外である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示のように、典型的には熱水劣化条件下で不安定であると理解されている骨格を有する第2のゼオライトと組み合わせたCHA骨格を有する第1のゼオライトを含有する組成物は、驚くべきことに、高温に曝露した後に、CHA骨格を有するゼオライトのみを含有する比較組成物よりも高いNO変換率を呈する。
【0025】
本明細書に開示のSCR触媒組成物はまた、高温に曝露した後に、単一の骨格構造を有する金属促進ゼオライトを有するSCR触媒組成物(例えば、金属促進形態の第1のゼオライトまたは第2のゼオライトのみを含む比較組成物)よりも高いアンモニア貯蔵容量を呈する。開示のSCR触媒組成物のアンモニア貯蔵容量は、高温に曝露した後に、低い反応温度、例えば200℃でのそのNO変換率に対して線形比例する。したがって、高いNO変換率を呈する開示のSCR触媒組成物はまた、劣化後に安定であると理解されているゼオライト骨格構造(例えば、限定されないが、CHA骨格を含む)のみを含有する対応する組成物と比較して、高いアンモニア貯蔵容量を呈する。例えば、いくつかの実施形態では、典型的には水熱劣化条件下で不安定であると理解されている骨格を有する第2のゼオライトと組み合わせた組成物を含有する、開示の組成物、例えば、CHA骨格を有する第1のゼオライトは、驚くべきことに、高温に曝露した後に、CHA骨格を有するゼオライトのみを含有する比較組成物よりも高いアンモニア貯蔵容量を呈する。そのような触媒組成物、物品、系、ならびにそれらを作製および使用する方法は、本明細書で以下により完全に記載されるであろう。
【0026】
本明細書で使用されているように、「選択的接触還元」(SCR)という用語は、窒素性還元剤(例えば、アンモニア、尿素など)を使用して窒素酸化物を二窒素(N)に還元する触媒プロセスを指す。
【0027】
本明細書で使用されているように、「触媒」または「触媒組成物」という用語は、反応を促進する物質を指す。
【0028】
本明細書で使用されているように、「上流」および「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンは上流位置にあり、テールパイプおよび任意の汚染物軽減物品、例えばフィルターおよび触媒は、エンジンの下流にある。
【0029】
本明細書で使用されているように、「流」という用語は、広義的には、固体または液体の微粒子状物質を含み得る流動ガスの任意の組み合わせを指す。「ガス流」または「排気ガス流」という用語は、リーンバーンエンジンの排気などのガス状成分の流れを意味し、これは、液滴、伴われる固体微粒子などの非ガス状構成要素を含有し得る。リーンバーンエンジンの排気ガス流は、典型的には、燃焼生成物(COおよびHO)、不完全燃焼生成物(COおよび炭化水素)、窒素酸化物(NOおよびNO)、可燃性および/または炭素質微粒子状物質(煤)、ならびに未反応の酸素(O)および窒素(N)をさらに含む。
【0030】
本明細書で使用されているように、「基材」という用語は、典型的にはウォッシュコートの形態の、触媒組成物を含有する複数の粒子を含有するモノリス材料を指し、その上に触媒材料が置かれる。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中にある特定の固体含量(例えば10重量%~50重量%)の粒子を含有するスラリーを調製し、次いでこれを基材上にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。
【0031】
本明細書で使用されているように、「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性のある基材材料、例えばハニカムタイプの担体部材に塗布される触媒または他の材料の薄い接着性コーティングの技術分野におけるその通常の意味を有する。
【0032】
本明細書で使用されているように、「触媒物品」という用語は、所望の反応を促進するために使用される要素を指す。例えば、触媒物品は、基材上に触媒組成物を含むウォッシュコートを含み得る。触媒物品は、新品であり、任意の過剰な熱(例えば>500℃)または熱的ストレスに長期間の間曝露されていないことを意味する、「未使用」であり得る。「未使用」とはまた、触媒が最近調製され、任意の排気ガスに曝露されていないことを意味し得る。同様に、「劣化した」触媒物品は、新品ではなく、長時間(すなわち2時間超)の間排気ガスおよび高温(すなわち500℃超)に曝露されている。
【0033】
「軽減する」という用語は量の減少を意味し、「軽減」という用語は、何らかの手段により引き起こされる量の減少を意味する。
【0034】
「助触媒金属」という用語は、イオン交換プロセス、すなわち、助触媒金属が、例えば、モレキュラーシーブの細孔内に位置する水素、またはアンモニウム、またはナトリウムイオンと交換されるプロセスを使用して、モレキュラーシーブ、例えばゼオライトに添加される1種以上の金属を指す。助触媒金属は、助触媒金属を含有しないモレキュラーシーブと比較して、モレキュラーシーブの触媒活性を向上するためにモレキュラーシーブに添加される。助触媒金属は、化学反応の促進に積極的に関与し、例えば、銅は、窒素酸化物の変換に関与し、したがって、多くの場合活性金属と称される。助触媒金属は、液相交換プロセスによってゼオライトに交換され得、ここで、可溶性金属イオンは、ゼオライトに関連するプロトンまたはアンモニウムまたはナトリウムイオンと交換する。交換はまた、固体状態プロセスによっても実行され得、ここで、助触媒金属酸化物または金属塩の固体粒子が、ゼオライト粉末と混合され、蒸気を含有しても、または含有しなくてもよいある特定の温度およびガス環境下で処理される交換プロセスはまた、スラリー調製中にインサイツプロセスを介しても達成され得、ここで、微細な金属酸化物粒子が、固体液体相互作用に好適な条件下でゼオライトスラリー中に懸濁される。
【0035】
触媒組成物
本明細書に開示の触媒組成物は、一般に、モレキュラーシーブを含み、具体的には、異なる骨格構造を有する2種以上のモレキュラーシーブを含む。「モレキュラーシーブ」という用語は、一般に、ゼオライトなどの骨格材料および他の骨格材料(例えば、同形置換材料)を指す。モレキュラーシーブは、一般的に四面体型のサイトを含み、かつ実質的に均一な細孔分布を有し、平均細孔径が20Å以下の、広範な三次元網目構造の酸素イオンに基づく材料である。細孔径は環径により定義される。1つ以上の実施形態によると、モレキュラーシーブをそれらの骨格タイプにより定義することにより、あらゆるゼオライトまたは同形骨格材料、例えば、SAPO、AlPOおよびMeAPO、Geシリケート、全シリカ、および同じ骨格タイプを有する類似材料を含むことが意図されると理解される。
【0036】
一般に、モレキュラーシーブは、角を共有するTO四面体で構成される開口三次元骨格構造を有するアルミノシリケートとして定義され、式中、Tが、AlもしくはSiであるか、または任意選択的にPである。アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格酸素と緩く会合しており、残りの細孔容積は、水分子で満たされている。非骨格カチオンは、一般に交換可能であり、水分子は除去可能である。
【0037】
より具体的な実施形態では、アルミノシリケートゼオライト骨格タイプに言及することで、材料が、骨格内へと置換されたリンまたは他の金属を含まないモレキュラーシーブに限定される。しかしながら、明確にするために、本明細書で使用されているように、「アルミノシリケート」は、SAPO、ALPO、およびMeAPO材料などのアルミノホスフェート材料を含まず、より広範な「ゼオライト」という用語は、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートを含むことが意図される。「アルミノホスフェート」という用語は、アルミニウムおよびリン酸原子を含む、モレキュラーシーブの別の特定の例を指す。
【0038】
1つ以上の実施形態では、モレキュラーシーブは、アルミノシリケート、ボロシリケート、ガロシリケート、MeAPSO、およびMeAPO組成物から選択される。これらとしては、限定されないが、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、Linde D、Linde R、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47、ZYT-6、CuSAPO-34、CuSAPO-44、Ti-SAPO-34、およびCuSAPO-47が挙げられる。
【0039】
1つ以上の実施形態では、本明細書で参照するモレキュラーシーブは、共通の酸素原子によって結合して三次元網目構造を形成する、SiO/AlO四面体を含む。他の実施形態では、モレキュラーシーブは、SiO/AlO/PO四面体を含む。モレキュラーシーブは、主に、SiO/AlO四面体またはSiO/AlO/PO四面体の頑強な網目構造によって形成される空隙の形状に従って区別することができる。空隙への入口は、入口開口部を形成する原子について、6個、8個、10個、または12個の環原子から形成される。1つ以上の実施形態では、モレキュラーシーブは、6、8、10、および12個を含む、12個以下の環径を含む。
【0040】
1つ以上の実施形態では、モレキュラーシーブは、8環小細孔アルミノシリケートゼオライトを含む。本明細書で使用されているように、「小細孔」という用語は、約5オングストロームよりも小さい細孔開口部、例えば約3.8オングストロームオーダーの細孔開口部を指す。例えば、CHA構造は、8環細孔開口部および二重の6環の二次的構造単位を有し、二重の6環の構造単位を4環によって接続することから生じるケージ様構造を有する、「8環」ゼオライトである。1つ以上の実施形態では、モレキュラーシーブは、8個の四面体原子の最大環径を有する小細孔モレキュラーシーブである。
【0041】
本明細書に開示の触媒組成物は、異なる骨格構造を有する2種以上のゼオライトを含む。本明細書で使用されているように、「ゼオライト」という用語は、ケイ素およびアルミニウム原子を含むモレキュラーシーブの特定の例を指す。ゼオライトは、ゼオライトのタイプ、ならびにゼオライト格子に含まれるカチオンのタイプおよび量に応じて、直径が約3~10オングストロームの範囲の、かなり均一な細孔径を有する結晶材料である。
【0042】
本開示に従った触媒組成物の例示的な実施形態は、第1のゼオライトと第2のゼオライトとを含み、第1のゼオライトが、第1の骨格構造を有し、第2のゼオライトが、第2の骨格構造を有し、第1の骨格構造および第2の骨格構造が異なる。触媒組成物中の第1のゼオライトおよび第2のゼオライトの量(すなわち、重量)は、変動し得る。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトの量は、第2のゼオライトの量よりも多い。いくつかの実施形態では、第2のゼオライトの量は、第1のゼオライトよりも多い。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトの量は、第2のゼオライトの量と同じである。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトおよび第2のゼオライトは、第1のゼオライト:第2のゼオライトの重量比が、約1:10~約20:1、約1:1~約20:1、約1:1~約19:1、約1:1~約18:1、約1:1~約17:1、約1:1~約16:1、約1:1~約15:1、約1:1~約14:1、約1:1~約13:1、約1:1~約12:1、約1:1~約11:1、約1:1~約10:1、約1:1~約9:1、約1:1~約8:1、約1:1~約7:1、約1:1~約6:1、約1:1~約5:1、約1:1~約4:1、約1:1~約3:1、または約1:1~約2:1の範囲であるような量で存在する。
【0043】
アルミノシリケートゼオライトは、典型的には、シリカ(Si)およびアルミナ(Al)を含む骨格構造を含み、骨格内のシリカ対アルミナのモル比(SAR)が、広範囲にわたって変動し得るが、一般に2以上である。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトおよび第2のゼオライトは、独立して、約5~約250、約5~約200、約5~約100、および約5~約50を含む、約2~約300の範囲のSARを有する。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトおよび第2のゼオライトは、独立して、約10~約200、約10~約100、約10~約75、約10~約60、および約10~約50、約15~約100、約15~約75、約15~約60、および約15~約50、約20~約100、約20~約75、約20~約60、および約20~約50の範囲のSARを有する。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトのSARおよび第2のゼオライトのSARは同じである。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトのSARおよび第2のゼオライトのSARは異なる。
【0044】
ゼオライトは、一般に、それらの骨格トポロジーによって識別される。例えば、第1のゼオライト(すなわち第1の骨格)および第2のゼオライト(すなわち第2の骨格)の骨格構造のタイプは、骨格タイプABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IRN、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFW、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、またはそれらの組み合わせから独立して選択することができる。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトおよび第2のゼオライトの骨格は、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびUFIから独立して選択される。いくつかの実施形態では、第1の骨格はCHAであり、第2の骨格は、FAU、MOR、MFI、BEA、およびFERから選択される。
【0045】
開示のゼオライトは、一般に、アルカリ金属形態で調製され、「アルカリ金属形態」とは、ゼオライトイオン交換サイト内に存在するアルカリ金属イオンを有するゼオライトを指す。NH 、H、またはアルカリ土類金属イオンなどの交換可能なカチオンを用いる、アルカリ金属形態のゼオライトのイオン交換には、ゼオライトの骨格構造内部に交換可能なイオンを導入して、ゼオライトの形態を変化させる。例えば、アルカリ金属形態のゼオライトをNH イオンでイオン交換すると、NH 形態のゼオライトが得られる。本明細書に開示の触媒組成物での使用のために調製されるゼオライトは、H、NH 、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の触媒組成物は、部分的または完全にH形態の少なくとも1種のゼオライトを含む。
【0046】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の触媒組成物は、少なくとも1種の促進ゼオライトを含む。本明細書で使用されているように、「促進」とは、ゼオライトに固有であり得る不純物を含むこととは対照的に、意図的に添加される1種以上の助触媒金属を含むゼオライトを指す。
【0047】
いくつかの実施形態では、開示されるゼオライトは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIIIB族、第IB族、および第IIB族の遷移金属、第IIIA族の元素、第IVA族の元素、ランタニド、アクチニド、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される助触媒金属で促進される。いくつかの実施形態では、さらに、開示される触媒組成物の促進ゼオライトを調製するために使用され得る助触媒金属には、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、タングステン(W)、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、第1のゼオライトの助触媒金属は、Cuである。本明細書で詳述されるであろうように、いくつかの実施形態では、本明細書の第2のゼオライトはまた、第1のゼオライトの助触媒金属と同じかまたは異なる助触媒金属を含み得る。1つ以上の実施形態では、開示の触媒組成物中の、酸化物として計算される、少なくとも1種の金属促進ゼオライトの助触媒金属含有量は、独立して、(助触媒金属を含む)対応する焼成ゼオライトの総重量に基づいて、約0.01重量%~約15重量%、約0.1重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%の範囲であり、揮発性物質を含まない基準で報告される。いくつかの実施形態では、助触媒金属は、銅または鉄である。
【0048】
銅は窒素酸化物の変換に関与し、したがっていくつかの実施形態では、本明細書に開示のようにゼオライト内での交換に特に有用な金属であり得る。したがって、特定の実施形態では、例えば開示の組成物中の第1のゼオライトとして、銅で促進されたゼオライト、例えばCu-CHAを含む触媒組成物が提供される。しかしながら、本開示はそれらに限定されることを意図するものではなく、他の助触媒金属を有する他のゼオライトを含む触媒組成物も本明細書に包含される。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1のゼオライトは、助触媒金属を含み、第2のゼオライトは、H形態、NH 形態、アルカリ金属形態、アルカリ土類金属形態、およびそれらの組み合わせから選択された形態である。いくつかの実施形態では、第2のゼオライトは、H形態であり、いくつかのそのような実施形態では、金属、例えば遷移金属を実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、第2のゼオライトは、助触媒金属を実質的に含まない。本明細書で使用されているように、「遷移金属を実質的に含まない」または「助触媒金属を実質的に含まない」という用語は、第2のゼオライトに意図的に添加される追加の金属、例えば遷移金属または助触媒金属がなく、いくつかの実施形態では、第2のゼオライトが触媒組成物内に組み込まれるとき(すなわち、劣化または焼成前に)、第2のゼオライト内に存在する任意の追加の金属、例えば遷移金属または助触媒金属が、約0.01重量%未満であることを意味する。いくつかの実施形態では、遷移金属または助触媒金属を「実質的に含まない」とは、遷移金属または助触媒金属を「含まない」ことを含む。そのような実施形態は、例えば劣化およびある特定の焼成プロセスに通常関連する、本明細書でさらに詳述されるような高温処理/曝露を施されていない触媒組成物の文脈に関連する。本明細書で言及されるように、そのような高温曝露の間、ゼオライト間に金属(例えば、助触媒金属)のいくらかの再分布があり得、したがって、第2のゼオライトは、いくつかの実施形態では、そのような焼成および/または劣化後には、もはや遷移金属または助触媒金属を「実質的に含まない」と特徴付けることはできない。
【0050】
上で言及されているように、助触媒金属は、典型的には、意図的に第2のゼオライトに添加されないが、例えば、触媒組成物の焼成および/または劣化中の高温で、第2のゼオライトに導入されると考えられる。理論によって拘束されることを意図しないが、そのような条件に曝露すると、当初第1のゼオライトに会合していた助触媒金属の一部が、(例えば、焼成および/または劣化プロセス中または使用中に)第2のゼオライトに移動すると考えられる。例えば、第1のゼオライトが銅で促進され、第2のゼオライトが助触媒金属を含まない(例えば、H形態である)触媒組成物では、活性なCuサイトの移動が起こり得る。(例えば、濃縮された活性CuサイトおよびCuクラスターの形態の)第1のゼオライト内に存在するCuは、そのような条件下で少なくとも部分的に(助触媒金属を実質的に含まない)第2のゼオライトに移動し、それにより、第1のゼオライト内のCuの濃度が低減し、触媒組成物全体での交換されるCuサイトの数が増加する。
【0051】
これらの条件に曝露した後の各ゼオライトの助触媒金属含有量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、助触媒金属の大部分は、参照された条件に曝露した後も、第1のゼオライトと会合したままである。他の実施形態では、これらの条件への曝露によって、元来第1のゼオライトと会合していた助触媒金属の半分よりも多くの、第2のゼオライトへの移動を生じる。いくつかの実施形態では、助触媒金属含有量は、2種のゼオライトの間に分布して、約0.1:10~約20:0.1、約20:1~約1:1、約19:1~約1:1、約18:1~約1:1、約17:1~約1:1、約16:1~約1:1、約15:1~約1:1、約14:1~約1:1、約13:1~約1:1、約12:1~約1:1、11:1~約1:1、10:1~約1:1、約9:1~約1:1、約8:1~約1:1、約7:1~約1:1、約6:1~約1:1、約5:1~約1:1、約4:1~約1:1、約3:1~約1:1、約2:1~約1:1、約1:2~約1:1、約1:3~約1:1、約1:4~約1:1、約1:5~約1:1、約1:6~約1:1、約1:7~約1:1、約1:8~約1:1、約1:9~約1:1、または約1:10~約1:1の第1のゼオライトと会合している金属対第2のゼオライトと会合している金属の最終重量比を得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1の助触媒金属含有量は、金属酸化物として計算して、触媒組成物中の助触媒金属総含有量の約0.1重量%~約50重量%、約0.1重量%~約40重量%、約0.1~約30重量%、約0.1~約20重量%、または約0.1~約10重量%(または50重量%の上限で少なくとも0.1重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%)である。いくつかの実施形態では、第2の助触媒金属含有量は、金属酸化物として計算して、触媒組成物中の助触媒金属総含有量の約0.1重量%~約50重量%、約0.1重量%~約40重量%、約0.1~約30重量%、約0.1~約20重量%、約0.1~約25重量%、または約0.1~約10重量%(または50重量%の上限で少なくとも0.1重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%)である。いくつかの実施形態では、助触媒金属は、銅または鉄である。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の触媒組成物は、効率的なアンモニア貯蔵容量を提供する。SCR触媒組成物は、一般に、アンモニアを貯蔵することが可能であり、これは、好適な動作温度でのNO変換を促進するために、排気ガス流に通常導入される。SCR触媒組成物は、典型的には、NO変換の触媒活性が低いと、低い動作温度(例えば250℃未満)でアンモニアを貯蔵し、NO変換の触媒活性が高いと、高い動作温度(例えば3000℃超)でアンモニアを放出する。SCR触媒組成物内に貯蔵することができるアンモニアの量(すなわち、アンモニア貯蔵容量)は変動し得、一般に、組成物中に存在するゼオライト(複数可)、ならびに(例えば高温に長時間曝露後の)ゼオライト(複数可)の化学的および構造的安定性に依存する。高いアンモニア貯蔵容量を有するSCR触媒組成物は、ゼオライト中の金属イオンが高濃度で交換された結果であり、多くの場合、低温で高いNO変換率を有することが見られる。
【0054】
本明細書に開示のSCR触媒組成物は、高温処理/曝露後に、単一の骨格を有する金属促進ゼオライトを含むSCR触媒組成物よりも高いアンモニア貯蔵容量、したがってより高いNO変換活性を呈する。NO変換活性に関して上で言及したように、典型的には高温、例えば、熱水劣化条件に関連する温度に耐えないゼオライト骨格を含む組成物は、そのような温度で安定であると理解されているゼオライトのみを含む同等の組成物を含む触媒と比較して、向上したアンモニア貯蔵容量を呈することは予想外である。
【0055】
基材
本開示の触媒物品の基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用される任意の材料で構築され得、典型的には、金属またはセラミックのハニカム構造を備えるであろう。基材は、典型的には、本明細書に開示の触媒組成物を含むウォッシュコート組成物が適用および接着されている複数の壁面を提供し、それによって、1種以上の触媒組成物の担体として機能する。
【0056】
例示的な金属基材は、チタンおよびステンレス鋼ならびに鉄が実質的なまたは主な構成要素である他の合金などの耐熱性金属および金属合金を含む。そのような合金は、ニッケル、クロム、および/またはアルミニウムのうちの1つ以上を含有してもよく、これらの金属の総量は、少なくとも15重量%の合金、例えば、10~25重量%のクロム、3~8重量%のアルミニウム、および20重量%までのニッケルを有利に含んでもよい。合金はまた、マンガン、銅、バナジウム、およびチタンなどの、少量または痕跡量の1つ以上の他の金属を含有してもよい。金属基材の表面は、高温、例えば1000℃以上で酸化されて、基材の表面上にアルミニウム酸化物層を形成し、合金の耐食性を改善し、金属表面へのウォッシュコート層の接着を容易にすることができる。基材の構築に使用されるセラミック材料には、任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、ムライト、コージライト-αアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、およびアルミノシリケートなどが含まれ得る。チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、および窒化ケイ素などの他のセラミック材料もまた、壁流フィルター基材として使用される。
【0057】
通路が流体流に開放されるように、基材の入口から出口面まで延在する複数の微細で平行なガス流路を有するモノリシックフロースルー基材などの、任意の好適な基材を用いることができる。入口から出口までの本質的に直線の経路である通路は、通路を通り流れるガスが触媒材料に接触するように、触媒材料がウォッシュコートとしてコーティングされる壁によって画定される。モノリシック基材の流路は、台形、長方形、正方形、正弦波形状、六角形、楕円形、および円形などの任意の好適な断面形状のものであり得る薄壁チャネルである。そのような構造は、約60~約1200以上の断面1平方インチ(cpsi)あたりのガス入口開口部(すなわち、「セル」)、より一般的には、約300~600cpsiを含有し得る。フロースルー基材の壁厚は、変動する可能性があり、典型的な範囲は、0.002~0.1インチである。代表的な市販のフロースルー基材は、400cpsiで6ミルの壁厚、または600cpsiで4ミルの壁厚を有するコーディエライト基材である。しかしながら、本開示は、特定の基材のタイプ、材料、または幾何学的形状に限定されないことが理解されるであろう。
【0058】
代替的な実施形態では、基材は、各通路が、基材本体の一端で非多孔性プラグによって遮断され、交互の通路が反対側の端面で遮断されている、壁流基材であってもよい。これは、出口に到達するために、ガス流が壁流基材の多孔性壁を通ることを必要とする。そのようなモノリシック基材は、約100~400cpsi、より典型的には、約200~約300cpsiなどの、最大約700またはそれよりも多いcpsiを含有し得る。セルの断面形状は、上記に説明されているように、変動する可能性がある。壁流基材は、典型的には、0.002~0.1インチの壁厚を有する。代表的な市販の壁流基材は、多孔性コーディエライトから構築され、その例は、200cpsiおよび10ミルの壁厚、または300cpsiおよび8ミルの壁厚、ならびに45~65%の壁の多孔度を有する。基材が壁流基材である場合、触媒組成物は、壁の表面に配設されることに加えて、多孔性壁の細孔構造内に浸透し得る(すなわち、細孔開口部を部分的または完全に塞ぐ)ことに留意されたい。
【0059】
図1および2は、本明細書に記載のウォッシュコート組成物でコーティングされているフロースルー基材の形態の例示的な基材2を示している。図1を参照すると、例示的な基材2は、円筒形状を有し、円筒外面4、上流端面6、および端面6と同一の対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。図2に見られるように、流路10は、壁12によって形成され、上流端面6から下流端面8まで基材2を通って延在し、通路10は、流体の流れ、例えば、ガス流が、そのガス流路10を介して基材2を長手方向に通ることができるように、障害物がない。図2でより容易に見られるように、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように、壁12は寸法決めおよび構成されている。示されるように、ウォッシュコート組成物は、必要に応じて、複数の別個の層内で適用され得る。例示される実施形態では、ウォッシュコートは、基材部材の壁12に接着された別個の底部ウォッシュコート層14および底部ウォッシュコート層14の上にコーティングされた第2の別個の最上部ウォッシュコート層16との両方から構成される。本開示は、1種以上(例えば、2、3、または4種)のウォッシュコート層を用いて実施することができ、例示された2層の実施形態に限定されない。
【0060】
例えば、一実施形態では、触媒物品は、各層が異なる触媒組成を有する多層の触媒材料を含む。例えば、底部層(例えば、図2の層14)は、AMOx触媒組成物(例えば、支持材料上に配設されている、プラチナなどのPGM構成要素)を含み得、最上層(例えば、図2の層16)は、本開示のゼオライト含有触媒組成物を含み得る。他の実施形態では、触媒物品は、複数の層を有する触媒材料を含み、各層が、同じ触媒組成物のうちの1種以上の異なる触媒構成要素を有する。例えば、いくつかの実施形態では、底部層(例えば、図2の層14)は、第1のゼオライトを含み、最上層(例えば、図2の層16)は、開示の触媒組成物の第2のゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、底部層(例えば、図2の層14)は、第2のゼオライトを含み、最上層(例えば、図2の層16)は、第1のゼオライトを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、1つの層は、全て1種のゼオライトおよび他のゼオライトの一部分を含むことができ、1つの層は、そのゼオライトの残りを含む。いくつかの実施形態では、例えば、底部層(例えば、図2の層14)は、第1のゼオライトの第1の一部分を含み、最上層(例えば、図2の層16)は、第2のゼオライトおよび第1のゼオライトの第2の一部分を含む。いくつかの実施形態では、底部層(例えば、図2の層14)は、第2のゼオライトおよび第1のゼオライトの第1の一部分を含み、最上層(例えば、図2の層16)は、第1のゼオライトの第2の一部分を含む。
【0062】
図3は、本明細書に記載のウォッシュコート組成物でコーティングされている壁流フィルター基材の形態の例示的な基材2を示している。図3に見られるように、例示的な基材2は、複数の通路52を有する。通路は、フィルター基材の内壁53によって管状に囲まれている。基材は、入口端54および出口端56を有する。通路は、入口端で入口プラグ58により、出口端で出口プラグ60により交互に塞がれて、入口54および出口56で逆となる市松模様を形成する。ガス流62は、塞がれていないチャネル入口64を通して入り、出口プラグ60によって止められ、(多孔性である)チャネル壁53を通して出口側66に拡散する。ガスは、入口プラグ58を理由に、壁の入口側に戻って通ることができない。本開示で使用される多孔性壁流フィルターは、該基材の壁が1つ以上の触媒材料をその上に有するか、またはその中に含有するという点で、触媒される。触媒材料は、基材壁の入口側のみ、出口側のみ、または入口側および出口側の両方に存在し得る。本開示は、壁における、ならびに基材の入口壁および/または出口壁上の1つ以上の層の触媒材料の使用を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、基材は、軸方向にゾーン化された構成の2つの別個のウォッシュコートスラリーで、少なくとも2回コーティングされてもよい。例えば、同じ基材が、1つのウォッシュコートスラリーで1回、および2回目は別のスラリーでコーティングされてもよく、各ウォッシュコートは、異なる。いくつかの実施形態では、2つの別個のウォッシュコートは、別個の触媒組成物(すなわち、第1の触媒組成物および第2の触媒組成物)または同じ触媒組成物の触媒構成要素を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1の触媒組成物は、本開示の触媒組成物を含み、第2の触媒組成物は、AMOx触媒組成物(例えば、支持材料上に配設されているプラチナ構成要素などのPGM構成要素)を含む。別の例では、開示の触媒組成物の第1のゼオライトは、1種のコート中に含有され、開示の触媒組成物の第2のゼオライトは、別のコート中に含有される。一実施形態では、1種の触媒構成要素を最初にフィルター入口端からコーティングしてもよく、2番目に別の触媒構成要素をフィルター出口端からコーティングしてもよい。なお別の実施形態では、1種の触媒構成要素を最初にフィルター出口端からコーティングしてもよく、2番目に別の触媒構成要素をフィルター入口端からコーティングしてもよい。
【0064】
第1のウォッシュコート層が、フィルター長の95%未満がウォッシュコートで覆われている入口端にあり、第2のウォッシュコート層が、フィルター長の95%未満がウォッシュコートで覆われている出口端にある、上記のものなどのウォッシュコート層でコーティングされている例示的なゾーン化基材が、図4~8に示されている。例えば、図4を参照すると、入口端25、出口端27、および入口端25と出口端27との間に延在する軸方向長さを有する基材22は、2つの別個のウォッシュコートゾーンを含有する。第1のウォッシュコートゾーン24および第2のウォッシュコートゾーン26が、基材22に適用される。第1のウォッシュコートゾーン24は、入口端25から延在し、第1の触媒組成物または第1の触媒構成要素を含み、第2のウォッシュコートゾーン26は、出口端27から延在し、第2の触媒組成物または第2の触媒構成要素を含む。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートゾーン24は、第2の触媒組成物または第2の触媒構成要素を含み、第2のウォッシュコートゾーン26は、第1の触媒組成物または第1の触媒構成要素を含む。特定の実施形態の第1のウォッシュコートゾーン24は、基材22の前方または入口端25から、基材22の長さの約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%の範囲を通して延在する。第2のウォッシュコートゾーン26は、基材の出口端27の後方から、基材22の総軸長の約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%延在する。図4に示される実施形態では、第2のウォッシュコートゾーン26は、第1のウォッシュコートゾーン24と少なくとも部分的に重なり合う。
【0065】
別の実施形態では、図5に見られるように、第1のウォッシュコートゾーン24は、入口端25から出口端27に向かって延在する。第2のウォッシュコートゾーン26は、第1のウォッシュコートゾーン24に隣接し下流に位置する。第1のウォッシュコートゾーン24は、第2のウォッシュコートゾーン26と少なくとも部分的に重なり合ってもよい。一実施形態では、第1のウォッシュコートゾーン24は、第1の触媒組成物または第1の触媒構成要素を含み、第2のウォッシュコートゾーン26は、第2の触媒組成物または第2の触媒構成要素を含む。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートゾーン24は、第2の触媒組成物または第2の触媒構成要素を含み、第2のウォッシュコートゾーン26は、第1の触媒組成物または第1の触媒構成要素を含む。特定の実施形態の第1のウォッシュコートゾーン24は、基材の前方または入口端25から、基材22の長さの約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%の範囲を通して延在する。第2のウォッシュコートゾーン26は、基材22の出口端27の後方から、基材22の総軸長の約5%約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%延在する。
【0066】
別の実施形態では、図6を参照すると、同じ基材は、2つの別個のゾーンで2つのタイプのウォッシュコートスラリーでコーティングされてもよく、第1の触媒組成物または第1の触媒構成要素のウォッシュコートを含む第1のウォッシュコートゾーン24、および第2の触媒組成物または第2の触媒構成要素のウォッシュコートを含む第2のウォッシュコートゾーン26は、ゾーンが重なり合うことなく、基材22の長さに沿って並んで位置する。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートゾーン24は、第2の触媒組成物または第2の触媒構成要素を含み、第2のウォッシュコートゾーン26は、第1の触媒組成物または第1の触媒構成要素を含む。特定の実施形態の第1のウォッシュコートゾーン24は、基材22の前方または入口端25から、基材22の長さの約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%の範囲を通して延在する。第2のウォッシュコート層26は、基材22の出口端27の後方から、基材22の総軸長の約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%延在する。
【0067】
別の実施形態では、図7に見られるように、基材22は、基材22の前方または入口端25から基材22の後方または出口端27まで延在する第1のウォッシュコートゾーン24、および基材22の前方または入口端25に近接する第1のウォッシュコートゾーン24上にコーティングされ、基材22の部分長のみにわたって延在する(すなわち、基材22の後方または出口端27に到達する前に終了する)第2ウォッシュコート層26でコーティングされてもよい。特定の実施形態では、第2のウォッシュコートゾーン26は、基材22の入口端25の前方から、基材22の総軸長の約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%延在する。
【0068】
別の実施形態では、図8に見られるように、基材22は、基材22の後方または出口端25に近接し、基材22の長さに沿って部分的にのみ延在する(すなわち、基材22の前方または入口端25に到達する前に終了する)第1ウォッシュコートゾーン24でコーティングされてもよい。基材22は、第2のウォッシュコートゾーン26でコーティングされてもよい。図8に見られるように、第2のウォッシュコートゾーン26は、基材22の前方または入口端25から基材22の後方または出口端27まで延在する(したがって、第1ウォッシュコートゾーン26の上に完全にコーティングされる)。特定の実施形態では、第1のウォッシュコートゾーン24は、基材22の出口端27の後方から、基材22の総軸長の約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%延在する。
【0069】
この組成物のウォッシュコートまたは触媒金属構成要素または他の構成要素の量を説明する際に、触媒基材の単位体積あたりの構成要素重量の単位を使用することが好都合である。したがって、単位、立方インチあたりのグラム(「g/in」)、および立方フィートあたりのグラム(「g/ft」)は、本明細書において、基材の空隙の体積を含む基材の体積あたりの構成要素重量を意味すべく使用される。g/Lなどの体積あたりの重量の他の単位もまた、使用されることがある。基材上の本開示の触媒組成物の総充填量は、典型的には、約0.1~約6g/インチ、より典型的には、約1~約5g/インチ、または約1~約3g/インチである。基材上の第1の(金属促進)ゼオライトの総充填量は、典型的には、約0.1~約6g/インチ、またはより典型的には約1~約3g/インチである。基材上の第2のゼオライトの総充填量は、典型的には、約0.05~約1g/インチである。単位体積あたりのこれらの重量は、典型的には、触媒ウォッシュコート組成物による処理の前後に基材を秤量することによって計算され、処理プロセスが、高温での基材の乾燥および焼成を伴うため、これらの重量は、ウォッシュコートスラリーの水の本質的に全てが除去されたときの本質的に無溶媒の触媒コーティングを表すことに留意されたい。
【0070】
触媒組成物を製造する方法
上記のように、本明細書に開示の触媒組成物は、最初に第1の(金属促進)ゼオライトおよび第2の(非金属促進)ゼオライト(すなわち、実質的に助触媒金属を含まないゼオライト)を含むように調製される。ゼオライトは、一般に、アルカリ金属形態、またはH形態、またはNH 形態で提供される。第2の(非金属促進)ゼオライトを提供するために、いくつかの実施形態では、さらなる処理は行われない(すなわち、第2のゼオライトは、化学修飾なしで触媒組成物に直接組み込まれる)。形態によっては、組み込む前にゼオライトをさらに修飾してもよい。例えば、アルカリ金属形態のゼオライトを、溶液中でNH イオンと交換して、NH 形態のゼオライトを得てもよい。同様に、HまたはNH 形態のゼオライトをアルカリ金属イオンと交換して、アルカリ金属形態のゼオライトを得てもよい。
【0071】
第1の(金属促進ゼオライト)を提供するために、いくつかの実施形態では、アルカリ形態のゼオライトは、典型的には、1種以上の金属(例えば、銅)でイオン交換される。イオン交換プロセスは、一般に、多孔性支持体に存在するイオンを、外側の目的のプロトンイオンまたは金属イオンと交換することを含む。例えば、細孔内に存在するナトリウムイオンで調製されたゼオライトは、異なるイオンと交換して、イオン交換ゼオライトを形成することができる。これは、所望の助触媒金属を含有する溶液、すなわち金属前駆体溶液中でゼオライトのスラリーを調製することによって達成される。硝酸銅(II)、酢酸銅(II)、硝酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、およびそれらの組み合わせを含む特定の実施例では、典型的には、金属前駆体の金属塩(例えば、リン酸塩、硝酸塩、または酢酸塩)などの金属前駆体の水溶性化合物または錯体の水溶液が利用される。ゼオライトを含浸させるために使用される金属前駆体の濃度は、金属イオン交換ゼオライトの重量に対して、約0.1重量%~約50重量%の範囲であり得る。このプロセス中に、任意選択的に加熱してもよい。助触媒金属イオンは、ゼオライトの細孔内に拡散し、存在するイオン、すなわちナトリウムと交換されて、金属イオン交換ゼオライトを形成することができる。例えば、銅塩から作製された銅金属前駆体溶液は、銅を微粒子形態のゼオライトにイオン交換するために使用することができる。
【0072】
ゼオライトは、通常、実質的に全ての溶液を吸収して湿った固体を形成するために十分に乾燥されている。金属前駆体溶液を用いるゼオライト粒子の処理に続いて、高温(例えば、100~150℃)で一定期間(例えば、1~3時間)の間、ゼオライト粒子を熱処理することなどによって、ゼオライト粒子を乾燥させ、次いで焼成して、金属構成要素をより触媒的に活性な酸化物形態(例えばイオン交換金属)に変換する。例示的な焼成プロセスは、約500~800℃の温度で約1~3時間、空気または蒸気/空気中での熱処理を含む。蒸気の量は変動し得るが、典型的には約0.5%~約15%(または約15%の上限で、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%)の範囲である。上のプロセスは、所望のレベルの助触媒金属含浸に到達するために、必要に応じて繰り返してもよい。得られた材料は、乾燥粉末として、またはスラリーの形態で吸蔵してもよい。
【0073】
2種以上の金属を含む金属促進ゼオライトの場合、ゼオライトへの金属のイオン交換は、同時に、または別個に行うことができる。例えば、1種以上の他の金属前駆体と組み合わせた銅前駆体を用いることができる。ある特定の実施形態では、この方法は、第1の金属で最初に促進されているゼオライト内に第2の金属を交換すること(例えば、第2の金属を銅促進ゼオライト内に交換すること)を含む。銅および/または鉄促進チャバザイトゼオライトの調製の例については、Stiebelsらの米国特許第9,352,307号、Bullらの同第9,162,218号、Seylerらの同第8,821,820号、Bullらの同第8,404,203号、Beutelらの同第8,293,199号、Bullらの同第7,601,662号、Beutelらの同第5,293,198号、Montreuilらの米国特許出願公開第2015/0231620号、Liらの同第2010/0092362号、Bullらの国際特許出願公開第WO2010/054034号、およびTurkhanらの同第WO2009/141324号が参照され、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0074】
基材のコーティングプロセス
第1のゼオライトおよび第2のゼオライトとの組み合わせを含有する開示の触媒組成物は、ハニカムタイプの基材などの触媒基材をコーティングする目的で、水と混合されてスラリーを形成する。上記のように、いくつかの実施形態では、第1のゼオライトおよび第2のゼオライトは、別個のウォッシュコートスラリー中にあり得るが、ある特定の実施形態、好ましい実施形態では、第1および第2のゼオライトは、同じウォッシュコートスラリー中に含有される。第1のゼオライトおよび/または第2のゼオライトに加えて、スラリーは、ウォッシュコート結合剤としてアルミナもしくはジルコニウム塩(酢酸ジルコニウムなど)、水溶性もしくは水分散性安定剤(例えば、酢酸バリウム)、促進剤(例えば、硝酸ランタン)、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性界面活性剤を含む)を任意選択的に含有し得る。存在する場合、ウォッシュコート結合剤は、典型的には、約0.05g/インチ~約1g/インチの量で使用される。アルミナ結合剤は、例えば、ベーマイト、ガンマ-アルミナ、またはデルタ/シータアルミナであり得る。
【0075】
スラリーを粉砕して、粒子の混合および均質な材料の形成を向上することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、ジェットミル、または他の同様の機器で達成することができ、スラリーの固体含有量は、例えば、約10~60重量%、より具体的には、約20~40重量%であってもよい。一実施形態では、フロスルーモノリス基材をコーティングするための、粉砕後のスラリーは、約10~約40ミクロン、好ましくは10~約30ミクロン、より好ましくは約10~約15ミクロンのD90粒径を特徴とする。D90は、粒子の90%がより小さい粒径を有する粒径として定義される。別の実施形態では、壁流フィルターをコーティングするための、粉砕後のスラリーは、約2~約10ミクロン、好ましくは3~約6ミクロン、より好ましくは約4~約5ミクロンのD90粒径を特徴とする。
【0076】
次いで、1種以上のスラリーが、当技術分野で既知のウォッシュコート技術を使用して基材上にコーティングされる。一実施形態では、基材は、同じスラリーかもしくは異なるスラリーに1回以上浸漬されるか、または同じスラリーかもしくは異なるスラリーでコーティングされる。コーティングされた基材は、その後、高温(例えば100~200℃)で一定期間(例えば10分~3時間)の間乾燥され、次いで、例えば400~850℃で、典型的には約10分~約3時間の間加熱することによって焼成される。いくつかの実施形態では、コーティングされた基材は、約850℃の上限で、少なくとも約400℃、少なくとも450℃、少なくとも500℃、少なくとも550℃、少なくとも600℃、少なくとも650℃、少なくとも700℃、少なくとも750℃、または少なくとも約800℃の温度で焼成される。乾燥および焼成の後、最終的なウォッシュコートは、溶剤を本質的に含まないと見なすことができる。
【0077】
そのような焼成は、本明細書で言及される第1のゼオライトと第2のゼオライトとの間の助触媒金属の再分布に影響を与える場合も、与えない場合もある。例えば、いくつかの実施形態では、比較的低い焼成温度(例えば、最大約500℃、または最大約600℃、または最大約650℃)では、焼成後に、助触媒金属の再分布はほとんどまたは全く観察されない場合がある(すなわち、全てまたは実質的に全ての助触媒金属は、第1のゼオライトにのみ会合したままである)。高温(例えば、少なくとも650℃、少なくとも700℃、少なくとも750℃、少なくとも800℃、または少なくとも850℃)では、助触媒金属の一部分が、第1のゼオライトと第2のゼオライトの間に再分配され、再分配される助触媒金属の量は、温度に依存する。例えば、高い焼成温度では、典型的には、第1のゼオライトから第2のゼオライトに再分配される助触媒金属の量が多くなり、低い焼成温度では、一般に、より少量の助触媒金属が第1のゼオライトから第2のゼオライトに再分配される。
【0078】
焼成の後に、上記のウォッシュコート技術により得られる触媒充填量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量の差を計算することにより求めることが可能である。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることにより修正することが可能である。さらに、ウォッシュコートを生成するためのコーティング/乾燥/焼成プロセスを必要に応じて繰り返して、コーティングを所望の充填水準または厚さに構築すること、すなわち1個より多くのウォッシュコートを塗布することが可能である。
【0079】
いくつかの実施形態では、焼成されたコーティング基材は、エイジング(劣化される。エイジング(劣化は、様々な条件下で行うことができ、本明細書で使用されているように、「劣化」は、ある範囲の条件(例えば、温度、時間、および雰囲気)を包含すると理解される。例示的な劣化プロトコルは、約50時間の間650℃の温度の10%蒸気、約20時間の間750℃の10%蒸気、または約16時間の間800℃の10%蒸気、または5時間の間850℃の10%蒸気を焼成されたコーティング基材に施すことを含む。しかしながら、これらのプロトコルは、限定を意図するものではなく、温度はより低くてもより高くてもよく(例えば、限定されないが、約400℃以上、例えば約400℃~約900℃、約600℃~約900℃、または約650℃~約900℃の温度を含む)、時間はより短くてもより長くてもよく(例えば、限定されないが、約1時間~約200時間、または約2時間~約25時間の時間を含む)、雰囲気は(例えば、その中に存在する異なる量の蒸気および/または他の成分を有するように)調整してもよい。いくつかの実施形態では、雰囲気は、約1~約15%または約5~約10%蒸気(または約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下)の蒸気量を有する。いくつかの実施形態では、温度は、約900℃の上限で、少なくとも400℃、少なくとも450℃、少なくとも500℃、少なくとも550℃、少なくとも600℃、少なくとも650℃、少なくとも700℃、少なくとも750℃、少なくとも800℃、少なくとも850℃である。ある特定の実施形態では、触媒は、少なくとも約450℃~約900℃の温度で少なくとも約1~約200時間(例えば、少なくとも約500℃~約850℃、少なくとも約600℃~約850℃、または少なくとも約700℃~約850℃で、少なくとも約5~約50時間、または約5~約20時間の間)劣化される。




【0080】
劣化は、典型的には、常にではないが、第1のゼオライトと第2のゼオライトの間の助触媒金属の再分布に影響を与える。例えば、焼成温度を変動させて起こる再分布の量の変動に関して上で参照したように、劣化の温度は、助触媒金属の再分布の程度(もしあれば)に影響を与え得る。さらに、特定の焼成温度下でいくらかの再分布が既に起こっている場合、劣化時にさらなる再分布は起こる場合と起こらない場合がある(例えば、焼成中に起こる再分布の量、および特定の劣化条件に依存する)と理解されている。
【0081】
排出物処理システム
本開示はまた、本明細書に記載の触媒物品を組み込む排出物処理システムを提供する。典型的には、一体型の排出物処理システムは、排気ガス排出物、例えばディーゼルエンジンからの排気ガス排出物を処理するための1種以上の触媒物品/構成要素を備える。例えば、排出物処理システムは、本明細書に記載の触媒物品に加えて、ディーゼル酸化(DOC)触媒、触媒化煤フィルター(CSF)、選択的接触還元(SCR)触媒、および選択的接触還元/アンモニア酸化(SCR/AMOx)触媒のうちの1種以上をさらに備え得る。いくつかの排出物処理システムは、リーンNOトラップ、CSF触媒、SCR触媒、および/またはSCR/AMOx触媒を含む。CO/HC変換もしくはNO酸化用のPGM含有触媒、またはSCR反応(SCRoF)用のSCR触媒のいずれかを充填されているCSFは、典型的にはDOCまたはLNT触媒の下流に位置するが、排出物処理システムの様々な構成要素の相対的な位置は変動させることができる。DOCは、未燃焼のガス状および不揮発性の炭化水素(すなわちSOF)、ならびに一酸化炭素を燃焼させて、二酸化炭素および水を形成するために従来使用されている任意の触媒であり得、典型的には、酸素貯蔵構成要素(セリアなど)、および/または耐火性金属酸化物担体(例えば、アルミナ)に支持されているプラチナ族金属を含む。SCR触媒は、エンジン排気中に存在するNOを軽減するために従来使用されている任意の触媒であり得、典型的には、混合金属酸化物組成物(例えば、バナジア/チタニア)、または金属イオン交換モレキュラーシーブ組成物(例えば、Cuおよび/またはFe促進モレキュラーシーブ)を含む。触媒化煤フィルター(CSF)は、煤をトラップし燃焼させるように設計されており、トラップした煤を燃焼させ、排気ガス流排出物を酸化するための1種以上の触媒(例えば、プラチナ、パラジウム、および/またはロジウムなどの1種以上の貴金属触媒)を含有するウォッシュコート層でコーティングされている。SCR/AMOx触媒は、SCR触媒と組み合わせた、排気ガス処理システムからスリップしたアンモニアを除去するために使用されるアンモニア酸化触媒(例えば、PGMを含む底部コートがSCR機能を有する触媒のトップコートと層状になっているAMOx触媒)を指す。排出物処理システムは、アンモニア前駆体用の還元剤注入器、ディーゼル燃料用の炭化水素注入器、さらなる微粒子濾過構成要素、ならびに/またはNO貯蔵および/もしくは捕捉構成要素などの構成要素をさらに含んでいてもよい。前述の構成要素の列挙は、単なる例であり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0082】
1つの例示的な排出物処理システムが、排出物処理システム100の概略図である図9に示されている。示されるように、ガス状汚染物質および微粒子物質を含有する排気ガス流は、排気管101を介してエンジンから触媒構成要素Aに運ばれる。排気管102は、触媒構成要素Aを出た処理済み排気ガス流を触媒構成要素Bに送る。次に、排気管103は、触媒構成要素Bを出た処理済み排気ガスを、触媒構成要素Dの上流に位置する触媒構成要素Cに送る。限定されないが、表1は、1つ以上の実施形態の様々な排気ガス処理システム構成を提示する。
【表1】
【0083】
SCRプロセスに関して、本明細書で提供されるのは、排気ガス流中のNOのレベルを低減するのに十分な時間および温度で、排気ガスを本明細書に記載の触媒組成物に接触させることを含む、排気ガス中のNOを還元するための方法である。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、排気ガス流に接触する前に高温に曝露されている。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、未使用である。いくつかの実施形態では、温度範囲は、約150℃~約600℃である。いくつかの実施形態では、温度範囲は、約150℃~約350℃、または約450℃~約750℃である。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、約150℃~約350℃の温度範囲で、約30%~約99%、または約40%~約60%(または少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%)の量の排気ガス流中のNOを低減する。例えば、約200℃の温度で、本開示の高温処理された触媒組成物は、排気ガス中のNOのレベルを約40%~約60%(または少なくとも約40%、または少なくとも約50%)の量低減する。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、約450℃~約750℃の温度範囲で、約30%~約99%、または約40%~約60%(または少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%)の量の排気ガス流中のNOを低減する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の触媒組成物は、約600℃の温度で、排気ガス中のNOのレベルを600℃の温度で約40%~約60%(または少なくとも約40%、または少なくとも約50%)の量低減する。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、第1の温度および第2の温度で、約40%~約60%の範囲の量のNOを低減し、第1の温度が、約150℃~約350℃の範囲であり、第2の温度が、約450℃~約750℃の範囲である。そのような値は、本明細書で参照されるように、劣化された形態の開示の(ゼオライト含有)触媒組成物の文脈において特に関連がある。
【実施例
【0084】
本開示の態様は、以下の実施例によってより完全に示され、これらは、本開示のある特定の態様を示すために記載され、態様を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0085】
実施例1-触媒物品の調製および試験
壁流フィルター基材上に触媒スラリーをウォッシュコートすることによって、SCRoF試料を調製した。Cu-CHA構成要素を、個々にD90<5μm(90%の粒子が5μm未満)に粉砕されたH-ゼオライト構成要素と混合することによって、触媒スラリーを調製した。得られたスラリーをフィルター基材に2回コーティングして、目的のウォッシュコートの充填量を得、第1および第2の両方の触媒を適用した後に、最初に入口から、次いで出口から焼成(450℃/1時間)した。基材は、63%の多孔度、23μmの平均孔径、300セル/インチのセル密度、および0.3mmの壁厚を有するSiCフロースルーフィルターセグメント(34mmx34mmx153mm)である。
【0086】
表2は、試料1~8のコーティング組成、および実験で決定したウォッシュコートの充填量を示している。参照試料(試料1)は、27のSAR、および3.2重量%のCuO充填量を有する1.5g/インチのCu-CHAを含有する、単一構成要素触媒である。試料2~8は、1.5g/インチのCu-CHAに加えて、0.15g/インチのH-ゼオライトを含む、2構成要素触媒である。したがって、全ての試料は、ほぼ同じ量のCu-CHAを含有する。
【表2】
【0087】
触媒試験:
試験の前に、触媒を850℃で5時間、空気中10%のHOで劣化させた。次いで、NHの吸着および脱離、ならびに定常状態のSCR性能を評価した。NH吸着は、200℃の標準的なSCR条件下(500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、5%のHO、5%のCO、および残部)のGHSV=60,000時間-1で行った。非反応性ガスとともに、最初にNOをシステムに導入した。NOフローが安定したら、NHをシステムに導入し、SCR反応およびNH吸着を同時に開始した。NHの差し引き(NHイン-NHアウト-SCRによって消費したNH-NH酸化)によって、触媒が吸着したNHの量を算出した。NO変換率およびNH吸着の両方を、連続的に測定し、時間と相関させて計算した。触媒が定常状態に到達した後、すなわち、NO変換率が、安定したした後、GHSV=60,000時間-1で1時間の間、200℃の非反応性ガス(10%のO2、5%のH2O、5%のCO2、、および残部N)の流れで触媒をパージし、温度を550℃に上げて、NHを触媒から脱離させた(温度プログラム脱離またはTPD)。等温期間(200℃)の間に脱離したNHの量とTPD(200~550℃)を積分することによって、累積NH脱離量を得た。
【0088】
定常状態SCR反応は、GHSV=60,000時間-1で、200~600℃の、500ppmのNO、500ppmのNH、10%O、5%のHO、5%のCO、および残部Nを含有する供給物で行った。温度上昇速度は2.5℃/分であった。温度試験実験中、NO変換率およびNOの形成を連続的に監視し記録した。
【0089】
試験結果:
図10は、試料1~8の累積NH脱離量(等温+TPD)を示している。参照SCRoF(試料1)は、最も低いNH容量(0.72g/L)を示しているが、試料6(Cu-CHA+H-FER)は、最も高く(1.06g/L)、参照(試料1)と比較して47%増加している。他のSCRoF試料も、NH容量の変動的な増加の程度を示している。試料8(SAR>100を有するCu-CHA+H-ベータ)は、参照(試料1)に匹敵するが、より良好なNH容量を示している。
【0090】
図11は、これらの試料のTPDプロファイルを示している。NH脱離強度の順序は、累積NH脱離量の順序に正確に従う。TPDプロファイルに示されているように、全てのSCRoF試料は、単一の脱離ピークを示し、これは、交換されたCuサイトでのNH吸着に起因する。H-ゼオライトの多くは、850℃の熱水劣化後は安定ではない。したがって、本開示の混合試料のNH貯蔵容量の実質的な増加は、高温劣化中に起こる予期しない相乗効果、すなわちCu-CHA参照と比較して、交換されたCuサイトの数の増加を示唆している。
【0091】
図12は、20ppmのNHスリップでのNO変換率と、この時点までに吸着されたNHとの間の相関関係を提供する。NO変換率は、吸着されたNHに線形比例する。試料1と比較して、試料6は、109%高い、200℃でのNH吸着容量、および16%高いNO変換率を示している。
【0092】
図13は、200℃での動的NH吸着-脱離試験中のNHスリッププロファイルを示している。20ppmのNHスリップレベルで測定すると、試料6は、試料1(109秒)と比較してNHスリップの最も遅い遅延を示し、試料3(90秒)、試料7(85秒)、試料2(60秒)、試料4(54秒)、試料5(34秒)、試料8(23秒)が続く。
【0093】
図14は、着火データから取得した、200℃および600℃でのNO変換率を示している。試料2~7は全て、参照(試料1)と比較して200℃でのNO変換率の増加を示している。とりわけ、試料6は、最も高いNO変換率の増加(ΔNO変換率=12%)を示し、試料3(10%)、5(9%)、7(7%)、3(5%)、および4(5%)が続く。いくつかの試料はまた、600℃でNO変換率の増加も示している(例えば、試料6、2、および3では、それぞれ12%、7%、および7%)。興味深いことに、試料6は、参照(試料1)と比較して、200℃と600℃の両方で最も高いNO変換率の増加を示している。
【0094】
図15は、着火試験中の低温(230~240℃)および高温(550~580℃)でのピークNO形成を示している。より高いNO変換率にもかかわらず、試料6のピークNO形成は、低温では参照(試料1)と同じであり、高温ではわずかに低い。
【0095】
実施例2
別の組の試料は、試料1のものと同様の方法で調製した。試料9および10は、それぞれ2.5%および1.7%低減したレベルのCuOを含有する。試料11および12は、試料1(3.2%のCuO)をH-CHAゼオライトと、それぞれ1:2および2:1のCu-CHA/H-CHA比で混合することによって作製したので、これらの触媒中の全体的なCuO濃度は、それぞれ2.1%および1.1%である。全ての試料中のCHAゼオライトは、同じ親ゼオライト材料に由来し、全ての試料は同じウォッシュコート充填量(1.6g/インチ)を有する。これらの試料を、NHの吸着および脱離、ならびにSCR活性について200℃で試験した。図16は、20ppmのNHスリップでのNO変換率に対する200℃でのその時点までのNH貯蔵容量をプロットしている。試料がCu-CHA/H-CHAのブレンドによって作製されたのか、Cu-CHAのみを単独でブレンドして作製されたのかに関わらず、NO変換率およびNH貯蔵容量の両方は、触媒への全体的なCuO充填量に従う。理論によって拘束されることを意図しないが、H-CHAは、Cu-CHA触媒に対して希釈の役割を果たすと思われる。
【表3】
【0096】
本明細書に開示の発明は、特定の実施形態およびその用途の手段によって説明されているが、特許請求の範囲に記載の開示の範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの修正および変更を行うことができる。さらに、本開示の様々な態様は、それらが本明細書で具体的に説明されたもの以外の用途で使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16