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特許7494124直鎖型の炭化水素と分岐型の炭化水素と酸化炭化水素とを含むワックス組成物、ワックス組成物の水性分散物、該ワックス組成物及び該分散物の製造方法、及びカルナウバ蝋置換物としてのその使用
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  • 特許-直鎖型の炭化水素と分岐型の炭化水素と酸化炭化水素とを含むワックス組成物、ワックス組成物の水性分散物、該ワックス組成物及び該分散物の製造方法、及びカルナウバ蝋置換物としてのその使用 図1
  • 特許-直鎖型の炭化水素と分岐型の炭化水素と酸化炭化水素とを含むワックス組成物、ワックス組成物の水性分散物、該ワックス組成物及び該分散物の製造方法、及びカルナウバ蝋置換物としてのその使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】直鎖型の炭化水素と分岐型の炭化水素と酸化炭化水素とを含むワックス組成物、ワックス組成物の水性分散物、該ワックス組成物及び該分散物の製造方法、及びカルナウバ蝋置換物としてのその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 91/06 20060101AFI20240527BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C08L91/06
C08J3/12 A CES
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020556320
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2019063549
(87)【国際公開番号】W WO2019224389
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】18174386.5
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517292860
【氏名又は名称】サソール ワックス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SASOL WAX GMBH
【住所又は居所原語表記】Worthdamm 13-27,20457 Hamburg(DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ゲーアノート
(72)【発明者】
【氏名】ベールマン,インゴ
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-507443(JP,A)
【文献】特表2018-506491(JP,A)
【文献】特開2005-234255(JP,A)
【文献】SASOLWAX6403, [online],2023年06月23日,URL<https://products.sasol.com/pic/products/home/grades/US/5sasolwax-6403/index.html>
【文献】フィッシャー・トロプシュハードワックス, [online],2023年06月23日,URL<http://katoyoko.co.jp/wp-content/themes/katoyoko/pdf/catalog/sasol.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L91/00-91/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
15~110個の炭素原子を有する直鎖型のワックス炭化水素及び15~110個の炭素原子を有する分岐型のワックス炭化水素と、
酸化炭化水素と
を含み、
凝固点が、68℃~110℃であり、
酸価が、3~30mgKOH/gであり、
鹸化価が、20~90mgKOH/gであり
25℃における針入度が、15 1/10mm未満であり、
直鎖型のワックス炭化水素及び前記分岐型のワックス炭化水素は、フィッシャー・トロプシュワックス炭化水素であり、前記酸化炭化水素は、酸化フィッシャー・トロプシュワックス炭化水素であるワックス組成物。
【請求項2】
前記ワックス組成物が、ポリオレフィンワックスを更に含む
請求項1に記載のワックス組成物。
【請求項3】
前記ワックス組成物が、0.1~5重量%、好ましくは0.5~2重量%のポリオレフィンワックスを含む
請求項2に記載のワックス組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンワックスが、ポリアルファオレフィンワックス、好ましくは超分岐ポリアルファオレフィンワックスである
請求項2又は3に記載のワックス組成物。
【請求項5】
前記超分岐ポリオレフィンワックスの軟化点が、70℃~80℃であり、
ゲル浸透クロマトグラフィによって測定される前記超分岐ポリオレフィンワックスの分子量Mが、4000g・mol-1を超える
請求項4に記載のワックス組成物。
【請求項6】
25℃における前記針入度が、10 1/10mm以下、好ましくは8 1/10mm以下である
請求項1~5のいずれか一項に記載のワックス組成物。
【請求項7】
前記ワックス組成物が、以下の特徴:
凝固点が、76℃~110℃、好ましくは76℃~90℃、より好ましくは76℃~85℃であること、
酸価が、3~20mgKOH/g又は6~20mgKOH/g、好ましくは3~15mgKOH/g又は6~15mgKOH/g、より好ましくは10~15mgKOH/gであること
鹸化価が、25~80mgKOH/g、好ましくは25~35mgKOH/gであること、
ドロップ融点が、80~88℃、好ましくは84~88℃であること、
DSC融解ピークが、82~84℃であること、
ASTM D 1500に従って測定された色が1未満、好ましくは0.5以下であること、及び
明澄かつ透明な融液相であること
のうちの1以上により特徴づけられる
請求項1~6のいずれか一項に記載のワックス組成物。
【請求項8】
数平均として与えられる、前記直鎖型のワックス炭化水素及び前記分岐型のワックス炭化水素、及び/又は前記酸化炭化水素のモル質量が、300~1500g・mol-1、好ましくは400~1300g・mol-1、より好ましくは500~800g・mol-1である
請求項1~7のいずれか一項に記載のワックス組成物。
【請求項9】
炭素鎖が直鎖である前記直鎖型のワックス炭化水素及び前記分岐型のワックス炭化水素、及び/又は前記酸化炭化水素の分子の含有量が、75重量%を超え、好ましくは80重量%を超える
請求項1~8のいずれか一項に記載のワックス組成物。
【請求項10】
前記ワックス炭化水素及び/又は前記酸化炭化水素の分岐分子が、10重量%を超え、より好ましくは25重量%を超える、メチル分岐を有する分子を含み、
選択的には、前記分子が、第四級炭素原子を含まない
請求項1~9のいずれか一項に記載のワックス組成物。
【請求項11】
前記酸化炭化水素が、完全に又は部分的に鹸化される
請求項1~10のいずれか一項に記載のワックス組成物。
【請求項12】
前記ワックス組成物の50重量%超、好ましくは90重量%超の前記組成物が、ポリオレフィンワックス、ワックス炭化水素、及び酸化炭化水素からなる
請求項2~11のいずれか一項に記載のワックス組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のワックス組成物と、カルナウバ蝋とを、1:9~9:1、好ましくは1:3~3:1の重量比で含む
部分置換カルナウバ蝋組成物。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項以上に記載のワックス組成物、又は請求項13に記載の部分置換カルナウバ蝋組成物と、水とを含む
水性分散物。
【請求項15】
少なくとも1種の界面活性剤、好ましくは、1以上の非イオン性乳化剤、又は非イオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との組合せを更に含む
請求項14に記載の水性分散物。
【請求項16】
前記水性分散物は、
固形分が20重量%を超え、
25℃におけるブルックフィールド粘度が、500mPa・s未満であり、
平均粒径(数平均)d50が、1μm未満、好ましくは0.5μm未満である特性を、 共同して有しているか、あるいは互いに共同することなく独立して有している、
請求項14又は15に記載の水性分散物。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか一項に記載の前記ワックス組成物を配合する方法であって、
前記ワックス炭化水素と、前記酸化炭化水素と、選択的に前記ポリオレフィンワックスとを提供する工程と、
前記ワックス炭化水素と、前記酸化炭化水素と、選択的に前記ポリオレフィンワックスとを溶融状態で混合して溶融ワックス組成物を取得する工程と、
好ましくは噴霧冷却、錠剤化、又はスラブ化によって、前記溶融ワックス組成物を固化し、前記ワックス組成物を取得する工程と
を少なくとも含む
方法。
【請求項18】
前記ワックス組成物が、固化後にジェットミルで粉砕される
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか一項に記載の前記ワックス組成物を溶融状態で提供する工程と、
水及び界面活性剤を任意の順で溶融状態の前記ワックス組成物に添加する工程と、
少なくとも溶融状態の前記ワックス組成物、前記水、前記界面活性剤を高圧ホモジナイザー、オートクレーブ、又は超音波ソノトロードで乳化する工程と
を少なくとも含む
請求項14~16のいずれか一項に記載の水性分散物を製造する方法。
【請求項20】
請求項13に記載の前記部分置換カルナウバ蝋組成物を溶融状態で提供する工程と、
水及び界面活性剤を任意の順で溶融状態の前記部分置換カルナウバ蝋組成物に添加する工程と、
少なくとも溶融状態の前記部分置換カルナウバ蝋組成物、前記水、前記界面活性剤を高圧ホモジナイザー、オートクレーブ、又は超音波ソノトロードで乳化する工程を少なくとも含む
請求項14~16のいずれか一項に記載の水性分散物を製造する方法。
【請求項21】
完全又は部分的なカルナウバ蝋又はカンデリラ蝋の置換物としての、請求項1~12のいずれか一項に記載のワックス組成物の使用。
【請求項22】
請求項1~12のいずれか一項に記載のワックス組成物又は請求項13に記載の部分置換カルナウバ蝋組成物を含み、
好ましくは、靴磨き、自動車ワックス、プラスチック研磨剤、金属研磨剤、食品コーティング、リップケア又はケミカルトナーの群から選択される、
研磨剤、パーソナルケア又はトナーの組成物。
【請求項23】
1~50重量%、好ましくは2~30重量%、より好ましくは3~15重量%、最も好ましくは5~12重量%の前記ワックス組成物又は前記部分置換カルナウバ蝋組成物を含む
請求項22に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直鎖型の炭化水素と分岐型の炭化水素と酸化炭化水素とを含み、凝固点が68℃~110℃であり、酸価が3~30mgKOH/gであり、鹸化価が20~90mgKOH/gであり、25℃における針入度が15 1/10mm未満である組成物に関する。本発明は、更に、ワックス組成物を含む水性分散物と、ワックス組成物と分散物の両方の製造方法とに関する。ワックス組成物は、カルナウバ蝋又はカンデリラ蝋を完全に又は部分的に置換するのに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
特異的な凝固点、酸価、鹸化価、及び針入度といった特異的な特性を有するワックス組成物は、果実、紙、錠剤、砂糖菓子、若しくは甘味物用のコーティング、化粧品中の硬化剤若しくは増粘剤、脱臭剤中の成分、研磨剤、革製品の防水剤、ろうそく、木材の仕上剤、又は離型剤などの様々な用途に用いることができる。さらに、これらのワックス組成物は光沢、硬度、融点の相対的な鋭敏性、摩擦/滑り特性、及びポリエステル樹脂との良好な相溶性を組み合わせたその特有の技術的特性に起因して、多くの場合、トナー産業及びインク産業で用いられる。
【0003】
上述の特性を有する天然ワックス(例えば、カルナウバ蝋)は、その入手可能性が限定されるために比較的高価である。さらに、それらは、脂肪族エステル及び脂肪酸、アルコール、芳香族酸、パラフィン、ジオール、鹸化及び不鹸化成分、並びに樹脂を含む複雑な組成物である。
【0004】
一般に、ワックスは、主に、ドロップ融点が40℃を超え、わずかな圧力下で研磨可能であり、混練可能であり、又は脆化し難く、20℃で透明ないし不透明であり、40℃超で分解せずに融解し、一般に50~90℃の間、例外的に最高200℃で融解し、ペースト又はゲルを形成し、熱及び電気の不良導体である、化学組成物として定義される。
【0005】
ワックスは、例えば、その起源といった多様な基準に従って分類できる。ここで、ワックスは、2つの主なグループ、すなわち天然ワックスと合成ワックスとに分けることができる。天然ワックスは、更に、鉱蝋(例えば、石油ワックス)と、非鉱蝋(例えば、カルナウバ蝋などの動物ワックス及び植物ワックス)とに分けることができる。石油ワックスは、マクロ結晶性ワックス(パラフィン蝋)と、微結晶性ワックス(マイクロワックス)とに分けることができる。合成ワックスは、部分合成ワックス(例えば、アミドワックス)と、完全合成ワックス(例えば、ポリオレフィンワックス及びフィッシャー・トロプシュワックス)とに分けることができる。
【0006】
パラフィン蝋は、石油源に由来する。それらは、透明で臭気がなく、食品接触用に精製できる。それらは、ある範囲のn-アルカン及び分岐アルカン、並びに一部のシクロアルカンを含む。未処理のパラフィン蝋又は粗製パラフィン蝋(スラックワックス)は、多数の短鎖アルカン(「油」)を含み、それらは、更に精製すると除去される。様々な構造及び品質のパラフィン蝋が得られる。精製は、脱油、蒸留及び水素化を含むことができる。
【0007】
合成ガス(CO及びH)のアルカンへの触媒フィッシャー・トロプシュ合成に由来する合成フィッシャー・トロプシュワックス又は炭化水素は、主に、n-アルカン、少数の分岐アルカンを含み、基本的に、シクロアルカンも、例えば硫黄若しくは窒素のような不純物も含まない。代わりに、オレフィン及びオキシジェネート(すなわち、アルコール、エステル、ケトン及び/又はアルデヒドなどの酸化炭化水素)の数は、石油系ワックスよりも多く、石油系ワックスとは異なり得る。フィッシャー・トロプシュワックスは、一般に、低融点(凝固点20~45℃)、中間融点(凝固点45℃~70℃)、及び高融点(凝固点70~105℃)で分類できる。
【0008】
合成ワックス/炭化水素の別の供給源は、オレフィンモノマーのオリゴマー化/重合化、あるいはそれに次ぐ水素化により得られる生成物である。こうしたポリオレフィンは、高分岐度が高く、及び/又は分子量Mが4.000g・mol-1より高くなり得る。それらは、ワックスのような特性を示すこともあり、したがって、その特性を調節するために別の(炭化水素)ワックスと配合するのに適している。
【0009】
さらに、すべての炭化水素ワックスは、種々の方法で酸化することができ、最も容易な方法は、好ましくは触媒の存在下で、ワックスを酸素又は空気と反応させる工程である。酸化は、種々の官能基(ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基など)を導入し、一般に、分子のアルキル分岐又は全炭素数を変えずに行われる。酸化中に形成される官能基の典型的な比は、ケトン1.5部、酸1部、エステル1部、ヒドロキシル1部である。形成される内部エステル(例えば、ラクトン)は、金属石鹸による鹸化によって開環でき、酸化ワックス分子中の他のカルボキシル部位を更に鹸化する。例えば酸化ワックスの酸価によって示される酸化度は、酸化手順によって調節できる。したがって、酸化炭化水素含有量は、調節可能である。
【0010】
一般に、ポリオレフィンワックス(上記参照)は、パラフィン蝋又はフィッシャー・トロプシュワックスよりも分子量が高く、その結果、粘度が高くなり、異なる化学構造となる。種々のモノマー構成要素(エチレン、プロピレン、アルファオレフィン又はそれらの混合物)及びポリオレフィンワックスの生成に起因して、それらは、例えば、使用される1以上の構成要素に応じて、分子単位で2個の炭素原子が異なる多数の分子を有する。同じことは、その酸化誘導体の大部分に当てはまる。ポリオレフィンワックスは、更に、分岐パターンも異なり、側鎖中の分岐は極めて長くに至る。
【0011】
含浸石膏用ワックス粉体における酸化及び/又は鹸化フィッシャー・トロプシュワックスの使用は、特許文献1により既知である。
【0012】
特許文献2は、本質的に、融点が20℃よりも高い脂肪と、融点が100℃よりも高いクマロン-インデン樹脂とからなり、通常の室温でミネラルスピリットに完全に溶解した「人工カルナウバ蝋」を開示し、脂肪及びクマロン-インデン樹脂は、一方は2:3部、他方は3:2部の概算的な逆比で含まれている。
【0013】
特許文献3は、熱転写インク用酸化フィッシャー・トロプシュ(FT)ワックス(例えば、Duroxon H-110:融点(MP)=90~95℃、酸価(Acid)=15~30、鹸価(Sap)=60~75、針入度(Pen)=2~4)を開示する。
【0014】
特許文献4は、一般式ROOC-C-COORのワックスからなるカルナウバ蝋の置換物を含むカーボン転写インクを開示する。ここで、nは2~8の整数であり、mは2nの整数であり、nが2であるときにはmはnでもよい。Rは、16~22個の炭素原子を有する直鎖脂肪族アルコールに由来するアルキル基であり、RはR又は水素である。その例は、コハク酸ジドコシル、セバシン酸ジドコシル、マレイン酸モノドコシル、コハク酸モノドコシル、又はピメリン酸ジドコシルである。
【0015】
特許文献5は、(a)フェノールのエステル、又は少なくとも1~10個の第一級ヒドロキシル基若しくは第二級ヒドロキシル基を有する芳香族アルコール、脂肪族アルコール、若しくは脂環式アルコールのエステル、(b)アンモニア、又は少なくとも1~15個の第一級アミノ基若しくは第二級アミノ基を有する脂肪族アミン、脂環式アミン、若しくは芳香族アミンのアミド、及び(c)アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、両性金属の塩、重金属の塩、アンモニウムの塩、又は第三級アミノ基を含む化合物の塩からなる、カルナウバ蝋又はモンタン蝋を置換する更に複雑なワックス組成物を開示する。
【0016】
特許文献6は、トナーにおける、カルナウバ蝋の置換物としてのFTワックス、酸化ワックス、又はポリエチレンを有するパラフィン蝋の使用を開示する。
【0017】
特許文献7は、カルナウバ蝋に類似したワックスを得るために、鹸化により酸化FTワックスを硬化することについて記載する。
【0018】
最後に、特許文献8は、カルナウバ蝋の置換品として特異的な酸化FTワックスを開示する。導入部においては、カルナウバ蝋を置換すべく、ポリエチレンを配合して低硬度の酸化ワックスの硬度及び靭性を高めることができることについて記載されているが、エマルジョンの形成特性は、通常悪化する。
【0019】
したがって、種々の用途で、化学的特性に適合するだけでなく、カルナウバ蝋と同様の物理的特性を有し、カルナウバ蝋と同様の利点を提供する、ワックス組成物の改良に関するニーズが依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】国際公開第2016/096136号
【文献】米国特許第2255242号
【文献】英国特許第844382号
【文献】英国特許第973291号
【文献】米国特許第4293345号
【文献】米国特許出願公開第2011/0223527号明細書
【文献】米国特許第2917392号
【文献】英国特許第860688号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
驚くべきことに、本発明の目的は、
15~110個の炭素原子を有する直鎖型のワックス炭化水素及び分岐型のワックス炭化水素と、
酸化炭化水素
を含み、
凝固点が、68℃~110℃であり、
酸価が、3~30mgKOH/gであり、
鹸化価が、20~90mgKOH/gであり、
25℃における針入度が、15 1/10mm未満
であるワックス配合物を用いて達成できる。
【0022】
ワックス炭化水素は、必要なワックス特性を与える組成物の基剤を形成し、酸化炭化水素は、機能性、並びに必要な酸価及び鹸化価を与える。
【0023】
本発明に係る炭化水素は、炭素及び水素のみからなるアルカン等の分子である。ワックス炭化水素という用語は、本明細書で用いられるように、15~110個の炭素原子を有する炭化水素である。酸化炭化水素は、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシラート、又はラクトンからなる群から選択される少なくとも1の酸素部分を含む炭化水素分子である。炭素鎖が直鎖である分子は、分岐構造及び環状構造のない酸化炭化水素を含む。
【0024】
ワックス炭化水素は、合成炭化水素とすることができ、酸化炭化水素は、合成炭化水素由来とすることができる。双方とも、好ましくはフィッシャー・トロプシュ合成によって得られ、本発明では、合成ガス(CO及びH)のアルカンへのコバルト触媒フィッシャー・トロプシュ合成又は鉄触媒フィッシャー・トロプシュ合成に由来する炭化水素と定義される。この合成した粗製生成物は、蒸留によって、液体と種々の固体画分とに分離される。炭化水素は、主にn-アルカン、少数の分岐アルカンを含み、基本的にシクロアルカンを含まないし、例えば硫黄又は窒素のような不純物を含まない。
【0025】
フィッシャー・トロプシュワックスは、メチレン単位からなり、それらの炭素鎖の長さの分布は、一実施形態においては、関連する特定の炭素原子鎖の長さに対する分子数の規則的な増減により特徴づけられる。これは、ワックスのGC分析で見ることができる。
【0026】
フィッシャー・トロプシュワックスの分岐分子は、好ましくは、10重量%を超えるメチル分岐、より好ましくは25重量%を超えるメチル分岐を有する分子を含む。
【0027】
さらに、フィッシャー・トロプシュワックスの分岐分子は、好ましくは、第四級炭素原子を含まない。これは、ワックスのNMR測定で見ることができる。
【0028】
「フィッシャー・トロプシュワックス」又は「フィッシャー・トロプシュ合成から得られるワックス」という用語は、本明細書においては同義/互換的に用いられる。
【0029】
フィッシャー・トロプシュ合成由来の酸化炭化水素は、所望の酸価及び鹸化価が得られるまで、触媒を用いて又は触媒を用いずに、高温でワックス炭化水素と空気の後続反応によって生成できる。
【0030】
特に好ましい一実施形態においては、ワックス組成物は、ポリオレフィンワックスを更に含む。ポリオレフィンワックスは、25℃における針入度が、好ましくは10 1/10mm以下、より好ましくは8 1/10mm以下であることによって定義される、ワックス組成物の硬度の要求を更に改善する。
【0031】
ワックス組成物は、0.1~5重量%、好ましくは0.5~2重量%の含量で、ポリオレフィンワックスを含むことができる。
【0032】
ポリオレフィンワックスは、好ましくはポリアルファオレフィンワックス、より好ましくは超分岐ポリアルファオレフィンワックス、最も好ましくは軟化点が70℃~80℃であり、ゲル浸透クロマトグラフィで測定した分子量Mnが4000g・mol-1を超える超分岐ポリオレフィンワックスである。ポリアルファオレフィンワックスは、好ましくは、14個以上の炭素原子、好ましくは14~30個の炭素原子を有するアルファオレフィンの重合で生じる。超分岐ポリアルファオレフィンワックスは、側鎖の少なくとも一部に更なる分岐を有し、これは、重合されたアルファオレフィンが、分岐アルファオレフィン又は分岐アルファオレフィンと直鎖アルファオレフィンとの混合物であることを意味する。
【0033】
更なる好適な実施形態においては、ワックス組成物は、互いに無関係に、以下の特性:
凝固点が、76℃~110℃、好ましくは76℃~90℃、より好ましくは76℃~85℃であること
酸価が、3~20mgKOH/g又は6~20mgKOH/g、好ましくは3~15mgKOH/g又は6~15mgKOH/g、より好ましくは10~15mgKOH/gであること
鹸化価が、25~80mgKOH/g、好ましくは25~35mgKOH/gであること
ドロップ融点が、80~88℃、好ましくは84~88℃であること
DSC融解ピークが、82~84℃であること
色が、1未満、好ましくは0.5以下であること、及び
明澄かつ透明な融液相であること、
のうちの1つ以上を更に有する。
【0034】
更に好適な実施形態によると、ワックス炭化水素及び/又は酸化炭化水素のモル質量(数平均)は、300~1500g・mol-1、好ましくは400~1300g・mol-1、より好ましくは500~800g・mol-1である。
【0035】
炭素鎖が直鎖であるワックス炭化水素及び/又は酸化炭化水素の分子の含有量は、75重量%を超え、好ましくは80重量%を超えてもよい。
【0036】
ワックス炭化水素及び/又は酸化炭化水素の分岐分子は、好ましくは、10重量%を超え、より好ましくは25重量%を超えるメチル分岐を有する分子を含み、選択的には、分子は第四級炭素原子を含まない。
【0037】
好適な実施形態においては、酸化炭化水素は、完全に又は部分的に鹸化される。鹸化は、金属石鹸を酸化炭化水素に添加することによって行うことができ、酸化分子における内部エステル(例えば、ラクトン)を開環し、及び/又はカルボキシル部位を鹸化し、鹸化価を増加させる。
【0038】
ワックス組成物は、好ましくは、50重量%を超えて、より好ましくは90重量%を超える、上で定義されたポリオレフィンワックス、ワックス炭化水素、及び酸化炭化水素のみからなる。
【0039】
更に、ワックス組成物は、カルナウバ蝋と混合して、カルナウバ蝋を部分的にのみ置換してもよい。したがって、本発明は、ワックス組成物が最高75重量%、好ましくは最高90重量%のカルナウバ蝋を含む実施形態も包含する。更なる実施形態によると、ワックス組成物は、本明細書に定義されたワックス組成物とカルナウバ蝋とを重量比1:9~9:1、好ましくは1:3~3:1で含む部分置換カルナウバ蝋組成物とすることができる。
【0040】
本発明の更なる実施形態によると、ワックス組成物は、上述のワックス組成物、水、及び、選択的に界面活性剤を含む水性分散物の一部である。
【0041】
ワックス組成物内の酸化炭化水素によって、例えば水酸化カリウムのような強塩基を添加することで、(外部の)乳化剤なしに乳化が可能になる。
【0042】
界面活性剤は、非イオン性乳化剤、例えばエトキシル化アルコール、又は該非イオン性乳化剤とアニオン性乳化剤、例えば鹸化脂肪酸との組合せとすることができる。
【0043】
分散物の固形分は、20重量%を超えてもよく、25℃におけるブルックフィールド粘度は、500mPa・s未満とし、レーザー回折によって測定された平均粒径(数平均)d50は、1μm未満、好ましくは0.5μm未満とすることができる。
【0044】
該分散物は、木材パーティクルボード、緑黒板、又は他の建設資材を含浸するのに用いることができる。
【0045】
本発明の更なる態様は、上述のワックス組成物を調製する方法であり、少なくとも以下の工程:
ワックス炭化水素と、酸化炭化水素と、選択的にポリオレフィンワックスとを、成分として提供する工程、
成分を溶融状態で混合してワックス組成物を取得する工程、及び
好ましくは噴霧冷却、錠剤化、又はスラブ化によって、ワックス組成物を固化する工程と
を含む。
【0046】
好適な実施形態においては、工程は、次いで、固化後にジェットミルでワックス組成物を粉砕する工程を更に含む。
【0047】
本発明の別の実施形態は、水性ワックス分散物の製造方法であり、以下の工程:
本発明に係るワックス組成物を溶融状態で提供する工程、
水及び界面活性剤を溶融したワックス組成物に添加する工程、
成分を一緒に高圧ホモジナイザー、オートクレーブ、又は超音波ソノトロードで乳化する工程
を少なくとも含む。
【0048】
本発明の更なる別の実施形態は、カルナウバ蝋又はカンデリラ蝋の使用を必要とする既存処方において、カルナウバ蝋又はカンデリラ蝋を完全に又は部分的に置換するワックス組成物の使用である。
【0049】
本明細書に記載の凝固点は、すべてASTM D 938に従って測定された。酸価は、すべてASTM D 1386に従って測定された。鹸化価は、すべてASTM D 1387に従って測定された。25℃又は40℃における針入度は、すべてASTM D 1321に従って測定された。軟化点は、すべてASTM D 36に従って測定された。ドロップ融点は、すべてASTM D 127に従って測定された。色は、ASTM D 1500に従って測定された。
【0050】
本発明のワックス組成物又は部分置換カルナウバ蝋組成物は、研磨剤、パーソナルケア、又はトナー、好ましくは、靴磨き、自動車ワックス、プラスチック研磨剤、金属研磨剤、食品コーティング、リップケア、又はケミカルトナーの一部として用いることができる。上述の研磨剤、パーソナルケア又はトナー組成物は、好ましくは、1~50重量%、より好ましくは、2~30重量%、最も好ましくは、3~15重量%又は5~12重量%のワックス組成物又は部分置換カルナウバ蝋組成物を含む。
【0051】
本発明に係るカルナウバ蝋及び/又はワックス組成物を用いることができる典型的処方例を以下に列挙する。
【0052】
家具ワックス:
カルナウバ蝋(薄片又は顆粒) 113g
蜜蝋(薄片又は顆粒) 453g
テレピン 0.946l
【0053】
木材ワックス:
カルナウバ蝋 25g
カンデリラ蝋 25g
漂白蜜蝋又は微結晶性ワックス 100g
二重煮沸亜麻仁油 25ml
無臭希釈剤 700ml
柑橘系溶媒 75ml
【0054】
自動車ワックス:
ヤシ油 25ml
カルナウバ蝋 20g
蜜蝋 10g
白酢 37.5ml
精油 3ml(例えば、ヨーロッパアカマツ 1.5ml+ファーニードル 1.5ml)
【0055】
ワックス研磨剤:
カルナウバ蝋 10g
蜜蝋 89g
コロホニー 1g
バルサムテレピン油T 150g
【0056】
非多孔性車両表面のケア及び清浄化の同時併行のためのワイプケア製品:
架橋ポリアクリル酸ポリマー(Lubrizol製のCarbopol EZ-31) 0.2重量%
シリコーン混合物(Dow Corning 200 Fluid 90重量%、及びDow Corning 2-1912 Fluid 10重量%) 0.95重量%
カルナウバ蝋エマルジョン(固形分 22%) 1.98重量%
脱イオン水 96.08重量%
二酸化チタン 0.04重量%
防腐剤(ジメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、Lonza製のDantoguard Plus) 0.1重量%
トリエタノールアミン(99%) 0.25重量%
低分子シリコーンエーテル 0.4重量%
【0057】
無溶剤促進研磨剤:
リン酸化アルコールエトキシラート(多機能性界面活性剤、Neochem製のTENSAN P894P) 3重量%
非イオン界面活性剤(Neochem製のPOLYGON PC1711) 2重量%
分散剤(Neochem製のPOLYGON PC1395) 2重量%
メチル(クロル)イソチアゾリノン 0.1重量%
芳香剤 0.1重量%
水 77.5重量%
カルナウバ蝋エマルジョン 15重量%
非イオン性増粘剤(Neochem製のPOLYGON PC2020) 0.3重量%
【0058】
リップケア:
蜜蝋(白色、漂白) 7g
精製アーモンド油 37.5ml
カルナウバ蝋 2.5g
真珠光沢顔料 0.1g
Fluidlecithin CM(液体レシチン) 1.5ml
【0059】
靴磨き:
カルナウバ蝋 7.9重量%
部分鹸化エステルワックス(Clariant製のLicowax O) 7.9重量%
モンタン酸と多官能アルコールのエステル(Clariant製Licowax E) 1.0重量%
非極性ポリエチレンワックス(Clariant製のLicowax PE520) 2.0重量%
オゾケライトワックス(Ozokerit 2089) 1.2重量%
パラフィン蝋(Sasolwax 5603) 14.8重量%
石油スピリット73.1 重量%
【0060】
トナー組成物:
a)スチレン-アクリル樹脂(Mitsui製のCPR100) 90重量%
カーボンブラック 4重量%
電荷制御剤(Clariant製のCopy charge N4S) 1重量%
カルナウバ蝋 4重量%
流動化剤(シリカ系、Wacker製のHDK) 1重量%
鉄粉95gと混合された、その5g
b)ポリエステル樹脂 17.2重量%
スチレン-アクリル樹脂 69重量%
カルナウバ蝋 3.9重量%
カーボンブラック 8.6重量%
ジルコニウム化合物 0.9重量%
親水性シリカ 0.4重量%
c)スチレン樹脂 28.2重量%
環化ゴム 5.6重量%
電荷制御剤 1.1重量%
カーボンブラック 1.2重量%
パラフィン蝋 28.2重量%
カルナウバ蝋 28.2重量%
ステアリン酸亜鉛粉体 0.1g、疎水性シリカ 0.1g、並びにマグネタイト及びエポキシ樹脂90gと混合された、その10g
【実施例
【0061】
表1は、酸化フィッシャー・トロプシュワックス(Sasolwax NCM9381、Sasol Wax社から入手可能)及び酸化ポリエチレンワックス(Honeywell製のAC6702)と比較した、T3等級のカルナウバ蝋の物理的データを示す。示したように、酸価、滴点などの特性の一部はすでに良好な適合を示しているが、特に、硬度(針入度)は、適切なカルナウバ蝋置換物の要件を満たしていない。
【0062】
【表1】
【0063】
表2は、本発明に係る明確な特性を有し、炭素数分布が典型的である、市販ワックス炭化水素と酸化炭化水素とを含むワックス組成物(炭素数に対する重量%で示した表3~5及び図1~3参照。炭素数は、欧州ワックス連合(European Wax Federation)のEWF法001/03に従って、ガスクロマトグラフィで測定した。)、並びにポリオレフィンワックスとのそれらの混合物の処方を示す。それらは、個々の成分を一緒に溶融配合し、その後、固化して製造された。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
Polyboost 165は、ASTM D 36による軟化点が74℃であり、25℃における針入度が、5 1/10mmであり、ゲル浸透クロマトグラフィで共に測定した分子量M及び多分散性M/Mが、M=4400gmol-1及びM/M=8であるLimdon Specialty社製の超分岐(多量の分岐及び長い分岐)ポリアルファオレフィンワックスである。
【0069】
【表6】
【0070】
本発明に係るワックス組成物、特に、本発明の配合物2は、硬度及び融解挙動(例えば、DSC融解ピーク、表6参照)について、カルナウバ蝋よりもはるかに優れた適合を示した。さらに、色は、純粋なカルナウバ蝋よりも極めて明るく、融液相は、不溶性の濁った外観と比較して明澄かつ透明であり、明澄かつ透明であることの双方が、コーティングなどの特定用途では利点となり得る。鹸化酸化フィッシャー・トロプシュワックス(Sasolwax NCM 9383)は、ドロップ融点が非常に高いが、鹸化価を改変する更なる配合物成分として用いることができる。
【0071】
本発明の配合物2は、PETフィルム上で極めて良好なコーティング挙動を示す。
【0072】
表7においては、カルナウバ蝋と配合物2のワックス組成物との混合物の物理的データが示されている。したがって、カルナウバ蝋T3は、本発明の配合物2では、完全に又は部分的に置換される。
【0073】
【表7】
【0074】
種々の材料でのカルナウバ蝋組成物の光沢は、多くの用途で重要な基準であるため、紙及び鉄鋼での本発明のワックス配合物の光沢を純粋なカルナウバ蝋と比較した(表8参照)。
【0075】
【表8】
【0076】
光沢測定のために、紙及び鉄鋼をそれぞれのワックス配合物で膜厚120μm(湿潤)で被覆した。その後、光沢をASTM D 523に従って研磨前後に反射角60°でBYK Gardener Micro-Tri-Glossメーターを用いて測定した。ナトリウムD線に対する屈折率1.567の高研磨の平らな黒色ガラスを光沢単位(GU)100とする。すなわち、値が100GUに近いほど光沢が良好である。光沢値(表8)から分かるように、ワックス配合物2及びそのカルナウバ蝋との混合物は、純粋なカルナウバ蝋と比較して、特に研磨なしで、より良好又は少なくとも類似の光沢値を示す。
【0077】
更なる工程においては、カルナウバ蝋、酸化フィッシャー・トロプシュワックス、及び発明配合物2の水性分散物を超音波ソノトロード(Hielscher Sonotrode UP400st)を用いて製造した(表9参照)。成分を95℃に加熱し、撹拌によって適切に混合して、プレエマルジョンを形成した。次いで、撹拌したプレエマルジョンは、振幅100%で200W(結果として100~150W)に調節したソノトロードを用いて、脈動なしで3分間乳化された。続いて、エマルジョンを氷浴で冷却して、分散物を得た。生成した分散物の安定性及び粒径分布を試験し(表9)、本発明のワックス配合物2の分散物が、これらのパラメータについて、カルナウバ蝋と比較して類似の結果、更なる良好な結果を示すことを見出した。
【0078】
【表9】
【0079】
遠心試験は、分散物の迅速な安定性試験である。ワックス分散物10mlを0.1ml目盛のガラス器に充填し、3100min-1(2300g)で1時間遠心分離した。その後、ガラス器の底部に形成された遊離水の含有量を測定し、パーセント単位で上に示した。値が低いほど、分散物の安定性が高い。
【0080】
粒径は、蒸留水30mlで希釈した分散物5滴を用い、Beckman Coulter製の機器(LS13320)を用いたレーザー回折によって測定した。粒径が小さいほどワックス組成物の分散性が良好である。
【0081】
したがって、本発明のワックス配合物は、その物理的データに関してだけでなく、多くの場合、先行技術から公知であるカルナウバ蝋の置換物の問題となっていたその使用適合性(例えば、分散性)に関しても、カルナウバ蝋の置換物として用いることができる。
図1
図2
図3